JP2007084814A - エポキシ樹脂組成物、半導体素子収納用中空パッケージ及び電子部品装置 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、半導体素子収納用中空パッケージ及び電子部品装置 Download PDF

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Abstract

【課題】吸水能力に優れるベース樹脂(エポキシ樹脂/硬化剤)を用いた樹脂組成物と、それを封止材料として使用して耐湿性(耐結露性)に優れた半導体素子収納用中空パッケージ、電子部品装置を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂組成物の硬化物中にC−O−Si結合を含むエポキシ樹脂組成物であって、好ましくは、
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤を含有し、一般式(I−1)
SiR (4−n) (I−1)
で示されるシラン化合物及び/又はその部分縮合物を(A)及び/又は(B)に反応させて得られる化合物を含む。
(式中、nは0又は1で、Rは水素原子又は炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基であり、Rはフェノール性水酸基と反応可能な官能基で、ハロゲン原子、水酸基、置換又は非置換の、炭素数1〜18のオキシ基、炭素数0〜18のアミノ基及び炭素数1〜18のカルボニルオキシ基から独立に選ばれる。)
【選択図】なし

Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物、そのエポキシ樹脂組成物によって成形された半導体素子収納用中空パッケージ、及びその中空パッケージに収納された素子を備える電子部品装置に関する。
従来から、成形材料、積層板用及び接着剤用材料、各種電子電気部品、塗料及びインキ材料等の分野において、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂が広く使用されている。特に、トランジスタ、IC等の電子部品素子の封止技術に関する分野では、封止材料としてエポキシ樹脂組成物が広く使用されている。その理由としては、エポキシ樹脂は、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性においてバランスがとれているためである。また、近年、CCDイメージセンサー、MOSイメージセンサー、CMOSイメージセンサー、CPD、EPROM等の光半導体用中空パッケージ用封止材料にも、エポキシ樹脂組成物が使用されている。
光半導体用中空パッケージ用エポキシ樹脂組成物には、容器内部への水分の侵入による結露を防ぐため、透湿を防ぐ特性が要求されている。このような要求に対応するため、吸湿性のあるシリカゲルやゼオライト等をエポキシ樹脂組成物に含有させ、外部からの水分を吸収し、内部に侵入させない方法が提案されている(特許文献1及び2を参照)。
特開平6−232292号公報 特開平7−126494号公報
上記方法によれば、無機吸湿剤により吸水能力を高め、耐湿性(耐結露性)を向上させることが可能となる。しかしながら、成形性の観点からは、無機吸湿剤の充填量に限界があり、更なる耐湿性(耐結露性)を向上のためには、ベース樹脂の吸水能力を向上させることが要求されている。
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであり、吸水能力に優れるベース樹脂(エポキシ樹脂/硬化剤)を用いたエポキシ樹脂組成物を提供することを課題とする。さらに本発明では、それらエポキシ樹脂組成物を封止材料として使用して、耐湿性(耐結露性)に優れた半導体素子収納用中空パッケージ、さらにその中空パッケージに収納された素子を備える電子部品装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、硬化物中に、C−O−Si結合を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物を用いることが、吸水能力に優れ、中空パッケージ用エポキシ樹脂組成物として有用であり、所期の目的が達成可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の(1)〜(13)に関する。
(1).エポキシ樹脂組成物の硬化物中に、C−O−Si結合を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(2).(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、(a-1)下記一般式(I−1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物の中から選ばれる少なくとも一種類の化合物を、(A)及び(B)の少なくとも一方に反応させて得られる化合物を含有する前記(1)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(化1)
SiR (4−n) (I−1)
(式(I−1)中、nは0又は1であり、Rは、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、1以上のRと結合して環状構造を形成してもよく、Rは、フェノール性水酸基と反応可能な官能基を示し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
(3).(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、(a-2)下記一般式(I−5)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物の中から選ばれる少なくとも一種類の化合物を、(A)及び(B)の少なくとも一方に反応させて得られる化合物を含有する前記(1)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(化2)
1’(SiR2’ 3’ (3−m) (I−5)
(式(I−5)中、mは0又は1、nは2以上の整数であり、R1’は炭素数1〜18の置換又は非置換のn価の炭化水素基から選ばれ、R1’と結合する2つ以上のSiR2’ 3’ (3−m)基は全てが同一でも異なっていてもよく、R2’は水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、R1’又はR3’と結合して環状構造を形成してもよく、R3’は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換の一価のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数1から18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のR3’が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
(4).(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、(B)硬化剤はアリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物を含有する前記(1)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(5).アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物が、下記一般式(I−2)で示される構造部位及び下記一般式(I−3)で示される構造部位の少なくとも一方を含む化合物である前記(4)に記載のエポキシ樹脂組成物。
Figure 2007084814
(式(I−2)中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す。)
Figure 2007084814
(式(I−3)中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示し、nは0以上の数を示す。)
(6).アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物におけるアリールオキシシリル結合の全数を基準として、上記一般式(I−2)及び上記一般式(I−3)の少なくとも一方の構造部位を形成するアリールオキシシリル結合が、30%以上である前記(5)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(7).アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物が、(a)(a-1)下記一般式(I−1)で示されるシラン化合物、その部分縮合物、(a-2)下記一般式(I−5)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物から選ばれる少なくとも一種と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる前記(4)〜(6)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(化5)
SiR (4−n) (I−1)
(式(I−1)中、nは0又は1であり、Rは、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、1以上のRと結合して環状構造を形成してもよく、Rは、フェノール性水酸基と反応可能な官能基を示し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
(化6)
1’(SiR2’ 3’ (3−m) (I−5)
(式(I−5)中、mは0又は1、nは2以上の整数であり、R1’は炭素数1〜18の置換又は非置換のn価の炭化水素基から選ばれ、R1’と結合する2つ以上のSiR2’ 3’ (3−m)基は全てが同一でも異なっていてもよく、R2’は水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、R1’又はR3’と結合して環状構造を形成してもよく、R3’は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換の一価のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数1から18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のR3’が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
(8).(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤に存在する揮発性成分が、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の全質量を基準として10質量%以下である前記(4)〜(7)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(9).さらに(C)硬化促進剤を含有する前記(2)〜(8)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(10).さらに(D)無機充填剤を含有する前記(2)〜(9)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(11).前記(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、及びアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含有する前記(2)〜(10)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(12).前記(1)〜(11)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物によって成形されたことを特徴とする半導体素子収納用中空パッケージ。
(13).前記(12)に記載の中空パッケージに収納された半導体素子を備えることを特徴とする電子部品装置。
本発明によるエポキシ樹脂組成物は吸水能力に優れることから、耐湿性(耐結露性)が要求される用途のエポキシ樹脂組成物として有用であり、本発明によるエポキシ樹脂組成物を用いることによって、耐湿性(耐結露性)に優れた半導体素子収納用中空パッケージを提供することが可能となるため、その工業的価値は高い。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明によるエポキシ樹脂組成物は、硬化物中に、C−O−Si結合を含有することを特徴とする。その含有量は、特に制限されるものではないが、(A)エポキシ樹脂(以下、(A)成分ともいう。)と(B)硬化剤(以下、(B)成分ともいう。)の合計を母数として、0.1モル/kg以上含有していることが好ましく、0.5モル/kg以上含有していることがより好ましく、1.0モル/kg以上含有していることがさらに好ましい。
本発明によるエポキシ樹脂組成物は、硬化物中に、C−O−Si結合を含有するものであれば特に制限されるものではないが、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、
(a-1)下記一般式(I−1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物(以下、化合物(a-1)ともいう。)、
の中から選ばれる少なくとも一種類の化合物を(A)及び(B)の少なくとも一方に反応させて得られる化合物または、
(a-2)下記一般式(I−5)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物(以下、化合物(a-2)ともいう。)、
の中から選ばれる少なくとも一種類の化合物を(A)及び(B)の少なくとも一方に反応させて得られる化合物
を含有するのが好ましい。
特に、アルコール性水酸基を含有するエポキシ樹脂に、前記化合物(a-1)及び化合物(a-2)の中から選ばれる少なくとも一種類の化合物を反応させて得られる化合物並びに
フェノール性水酸基を含有する化合物に、前記化合物(a-1)及び化合物(a-2)の中から選ばれる少なくとも一種類の化合物を反応させて得られる化合物
から選ばれるC−O−Si結合を有する化合物を少なくとも1種類含有することがより好ましい。
アルコール性水酸基を含有するエポキシ樹脂に前記化合物(a-1)及び化合物(a-2)の中から選ばれる少なくとも一種類の化合物を反応させて得られる化合物とは、例えば一般式(I−1)で示されるシラン化合物の場合、アルコール性水酸基部位がシラン化合物のRと置換し、脱RHによりR−O−Siが生成した化合物であり、これをエポキシ樹脂組成物に含有させた場合、そのままC−O−Si結合が残存すると考えられる。
フェノール性水酸基を含有する化合物に前記化合物(a-1)及び化合物(a-2)の中から選ばれる少なくとも一種類の化合物を反応させて得られる化合物とは、例えば同じく一般式(I−1)で示されるシラン化合物の場合、フェノール性水酸基部位がシラン化合物のRと置換し、脱RHによりAr−O−Siが生成した化合物であり、これをエポキシ樹脂組成物に含有させた場合、樹脂組成物の硬化時に、(A)エポキシ樹脂におけるアルコール性水酸基と反応し、R−O−Siが生成すると考えられる。
(ここで、R−O−Siは脂肪族炭素に−OSiが結合した基、Ar−O−Siはアリールオキシシリル基を示す。)
(化7)
SiR (4−n) (I−1)
(式(I−1)中、nは0又は1であり、Rは、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、1以上のRと結合して環状構造を形成してもよく、Rは、フェノール性水酸基と反応可能な官能基を示し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
(化8)
1’(SiR2’ 3’ (3−m) (I−5)
(式(I−5)中、mは0又は1、nは2以上の整数であり、R1’は炭素数1〜18の置換又は非置換のn価の炭化水素基から選ばれ、R1’と結合する2つ以上のSiR2’ 3’ (3−m)基は全てが同一でも異なっていてもよく、R2’は水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、R1’又はR3’と結合して環状構造を形成してもよく、R3’は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換の一価のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数1から18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のR3’が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
上記一般式(I−1)で示されるシラン化合物において、Rとして記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基」は、炭素数1〜18を有し、置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含むことを意味する。
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、及びイソシアネート基等で置換したものが挙げられる。
また、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等で置換したものが挙げられる。
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基等が挙げられ、それらはさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等で置換したものであってもよい。
なお、上記一般式(I−1)のRとしては、特に限定されるものではないが、置換されていてもよいアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1価の置換基であることが好ましい。中でも、原料の入手しやすさの観点から、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換のアリール基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、エポキシシクロヘキシルエチル基、グリシドキシプロピル基、クロロプロピル基、メタクリルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基、N−フェニルアミノプロピル基、N−アミノプロピルアミノプロピル基、ウレイドプロピル基、イソシアネートプロピル基等の置換又は非置換の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がより好ましい。
一般式(I−1)のRとして記載した「ハロゲン原子」には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が含まれる。
また、一般式(I−1)のRとして記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基」には、例えば「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素オキシ基」、及び「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素オキシ基」等が含まれる。より具体的な例示は以下の通りである。
上記「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素オキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等のRとして先に説明した脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造のオキシ基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
上記「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素オキシ基」としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等のRとして先に説明した芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造のオキシ基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
上記一般式(I−1)のRとして記載した「炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基」には、例えば、非置換のアミノ基、炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素アミノ基、芳香族炭化水素アミノ基、ジ脂肪族炭化水素アミノ基、ジ芳香族炭化水素アミノ基、脂肪族炭化水素芳香族炭化水素アミノ基、及び炭素数0〜18の置換又は非置換のシリルアミノ基が含まれる。より具体的な例示は以下の通りである。
「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素アミノ基」としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、シクロヘプチルアミノ基、アリルアミノ基、ビニルアミノ基、シクロペンテニルアミノ基、シクロヘキセニルアミノ基等のRとして先に説明した脂肪族炭化水素基により置換されたアミノ基、及びこれらの脂肪族炭化水素基部分にアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子等が置換したものが挙げられる。
「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素アミノ基」としては、例えば、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、トリルアミノ基、ジメチルフェニルアミノ基、エチルフェニルアミノ基、ブチルフェニルアミノ基、tert−ブチルフェニルアミノ基、メトキシフェニルアミノ基、エトキシフェニルアミノ基、ブトキシフェニルアミノ基、tert−ブトキシフェニルアミノ基等のRとして先に説明した脂肪族炭化水素基により置換されたアミノ基、及びこれらの芳香族炭化水素基部分にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が置換したものが挙げられる。
「炭素数1〜18の置換又は非置換のジ脂肪族炭化水素アミノ基」としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘプチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルイソプロピルアミノ基、メチル−n−ブチルアミノ基、メチル−sec−ブチルアミノ基、メチル−tert−ブチルアミノ基、メチルシクロヘキシルアミノ基、ジアリルアミノ基、ジビニルアミノ基、ジシクロペンテニルアミノ基、ジシクロヘキセニルアミノ基、アリルメチルアミノ基等のRとして先に説明した2つの脂肪族炭化水素基により置換されたアミノ基、及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子等が置換したものが挙げられる。
「炭素数1〜18の置換又は非置換のジ芳香族炭化水素アミノ基」としては、例えば、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビス(ジメチルフェニル)アミノ基、ビス(エチルフェニル)アミノ基、ビス(ブチルフェニル)アミノ基、ビス(tert−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(メトキシフェニル)アミノ基、ビス(エトキシフェニル)アミノ基、ビス(ブトキシフェニル)アミノ基、ビス(tert−ブトキシフェニル)アミノ基等のRとして先に説明した2つの芳香族炭化水素基により置換されたアミノ基、及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が置換したものが挙げられる。
「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素芳香族炭化水素アミノ基」としては、例えば、メチルフェニルアミノ基、メチルナフチルアミノ基、ブチルフェニルアミノ基等の、Rとして先に説明した脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基により置換されたアミノ基が挙げられる。
「炭素数0〜18の置換又は非置換のシリルアミノ基」としては、例えば、非置換のシリルアミノ基、トリメチルシリルアミノ基、トリエチルシリルアミノ基、トリフェニルシリルアミノ基、メチル(トリメチルシリル)アミノ基、メチル(トリフェニルシリル)アミノ基、フェニル(トリメチルシリル)アミノ基、フェニル(トリフェニルシリル)アミノ基等のシリル基及び/又はアミノ基にRとして先に説明した脂肪族炭化水素基又は/及び芳香族炭化水素基により置換されたシリルアミノ基等、及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が置換したものが挙げられる。
また、一般式(I−1)のRとして記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基」には、例えば「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基」、及び「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基」等が含まれる。より具体的な例示は以下の通りである。
上記「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基」としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、シクロプロピルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、ビニルカルボニルオキシ基等のRとして先に説明した脂肪族炭化水素基のカルボニルオキシ基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
上記「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基」としては、例えば、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基、エチルフェニルカルボニルオキシ基、メトキシフェニルカルボニルオキシ基、ブトキシフェニルカルボニルオキシ基、フェノキシフェニルカルボニルオキシ基等のRとして先に説明した芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造のオキシ基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
また、一般式(I−1)のRとして記載した「2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2以上のRが互いに結合し、全体としてそれぞれ2価以上の有機基となる場合を意味する。例えば、Si原子と結合して環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基のジオキシ基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン等で置換されていてもよい。
上記一般式(I−1)のRは、特に限定されるものではないが、入手が容易であることから、塩素原子、水酸基、炭素数1〜8を有する置換又は非置換の1価のオキシ基が好ましい。中でも、反応性の観点からは、塩素原子、水酸基又はオキシ基がより好ましく、シラン化合物とフェノール化合物及び/又はアルコール性水酸基を有するエポキシ樹脂を反応させて得られる化合物の製造の簡便さに及ぼす影響を考慮すると、Rの少なくとも1つが水酸基又は炭素数1〜8の1価のオキシ基であることがさらに好ましい。
また、一般式(I−1)に記載した「R及びRの2以上が結合して環状構造を形成してもよい」とは、R及びRが互いに結合し、全体としてそれぞれ2価以上の有機基となる場合を意味する。例えば、2つのRがSi原子と結合して環状構造を形成する場合、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基が、1つのRと1つのRとがSi原子と結合して環状構造を形成する場合、上記アルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基、アリーレン基のオキシ基が、2つのRがSi原子と結合して環状構造を形成する場合、上記アルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基のジオキシ基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等で置換されていてもよい。
上記一般式(I−1)の具体的な化合物の例示としては、以下に限られるものではないが、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(エトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラプロポキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラアセトキシシラン、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン等のn=0のシラン化合物、
フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリフルオロシラン、フェニルアセトキシシラン、フェニルビス(ジメチルアミノ)クロロシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルアセトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルアセトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のn=1のシラン化合物が挙げられる。
また、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメシチルジメトキシシラン等の置換又は非置換のジアリールジアルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、デシルメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等の置換又は非置換のジアルキルジアルコキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン等のアリールアルキルジアルコキシシラン、ジフェニルシランジオール等の置換又は非置換のジアリールシランジオール、ジフェニルジクロロシラン、ジトリルジクロロシラン、ジメシチルジクロロシラン等の置換又は非置換のジアリールジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ジイソプロピルジクロロシラン等の置換又は非置換のジアルキルジクロロシラン、フェニルエチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン等の置換又は非置換のアリールアルキルジクロロシラン、ジメチルジアセトキシシラン等のジアルキルジアセトキシシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジエチルシラン等の置換又は非置換のジアルキルジアミノシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン等の置換又は非置換のジアリールジアミノシラン、フェニルメチルビス(ジメチルアミノ)シラン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等の環状シラン化合物、ジメチルメトキシクロロシラン等のジアルキルアルコキシクロロシラン等が挙げられる。
これら具体例は、いずれも工業製品又は試薬として入手可能である。上記一般式(I−3)で示される化合物は、工業製品又は試薬として購入可能な化合物を用いても、公知の方法で合成した化合物を用いても構わない。これらシラン化合物の中でも、シラン化合物とフェノール化合物及び/又はアルコール性水酸基を有するエポキシ樹脂を反応させて得られる化合物の製造の簡便さ等の観点から、Rがオキシ基であるシラン化合物が好ましい。
上記一般式(I−1)で示されるシラン化合物の部分縮合物は、上記一般式(I−1)で示される1種の化合物が自己縮合した化合物、又は2種以上の化合物が互いに反応し縮合して生成した化合物が含まれる。特に限定されるものではないが、縮合反応は、必要であれば水を用い、また、必要に応じて、酸、アルカリ等の縮合反応を促進する公知の物質を加えて行うことができる。通常の縮合反応では、下記の反応式(A)のように、1分子の水を消費して、1つの縮合反応が起こり、2分子のRHが副生成物として生じる。
(化9)
2≡Si−R+HO→≡Si−O−Si≡+2RH (A)
(式(A)中、Rは一般式(I−1)と共通。)
縮合の度合いは、反応条件により調節することが可能であり、縮合してできる化合物の分子数は、特に限定されるものではないが、平均で1.5分子以上であることが好ましく、2〜50分子であることがより好ましく、2〜20分子であることがさらに好ましい。
本発明で使用可能なシラン化合物は、上述のようにそれらが部分的に縮合した化合物を含めばよく、その一部は縮合せずに上記一般式(I−1)で示される化合物のままであってよい。
本発明において使用される特定のシラン化合物の部分縮合物は、予め上記一般式(I−1)で示されるシラン化合物を縮合させて用いても、フェノール化合物と反応させるときに同時に縮合させても、市販品として入手可能なものを用いても、これらを組み合わせても構わない。市販品として入手可能な上記一般式(I−1)で示される化合物の部分縮合物の具体例としては、式(I−1)のRがメトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が3〜5のMシリケート51(多摩化学工業株式会社製商品名)、Rがメトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が8〜12のMシリケート56(多摩化学工業株式会社製商品名)、Rがエトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が約5のシリケート40(多摩化学工業株式会社製商品名)、Rがエトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が6〜8のシリケート45(多摩化学工業株式会社製商品名)、Rがメチル基、Rがメトキシ基であり、n=1、縮合分子数が2の1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン(アズマックス株式会社販売試薬)、Rがn−オクチル基、Rがエトキシ基であり、n=1、縮合分子数が2の1,3−ジ−n−オクチルテトラエトキシジシロキサン(アズマックス株式会社販売試薬)等が挙げられる。
アルコール性水酸基を含有するエポキシ樹脂に(a-1)下記一般式(I−1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物の中から選ばれる少なくとも一種類の化合物を反応させて得られる入手可能な化合物としては、例えば、アルコール性水酸基を含有したビスフェノールA型エポキシ樹脂又はフェノールノボラック型エポキシ樹脂とテトラメトキシシランの部分縮合物又はメチルトリメトキシシランの部分縮合物との反応により得られる揮発成分含有のコンポセランEシリーズ(荒川化学工業株式会社商品名)が挙げられる。
フェノール性水酸基を含有する化合物に(a-1)下記一般式(I−1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物の中から選ばれる少なくとも一種類の化合物を反応させて得られる入手可能な化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂とテトラメトキシシランの部分縮合物又はメチルトリメトキシシランの部分縮合物との反応により得られる揮発成分含有のコンポセランPシリーズ(荒川化学工業株式会社商品名)が挙げられる。
上記一般式(I−5)のR1’として記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換のn価の炭化水素基(nは2以上の整数)」は、炭素数1〜18を有し、置換されても又は非置換であってもよいn価の脂肪族炭化水素基及びn価の芳香族炭化水素炭素基を含むことを意味する。
より具体的には、上記置換又は非置換のn価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、ビニレン基、エチリデン基、ビニリデン基、プロペニレン基、ブタジエニレン基等の2価の脂肪族炭化水素基、メチリデン基、エチリデン基、1,2,3−プロパントリイル基等の3価の脂肪族炭化水素基、ブタンジイリデン基、1,3−プロパンジイル−2−イリデン等の4価の脂肪族炭化水素基及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
また、上記置換又は非置換のn価の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基、シクロヘキシリデン基等の2価の脂環式炭化水素基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基等の3価の脂環式炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
また、上記置換又は非置換のn価の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換のヘテロ原子含有脂肪族炭化水素基も含まれる。置換又は非置換のヘテロ原子含有脂肪族炭化水素基としては、例えば、2−オキサプロピレン基、2−オキサブチレン基、3−オキサペンチレン基、2−チオプロピレン基、2−チオブチレン基、3−チオペンチレン基、4−チオヘプチレン基、2,3−ジチオブチレン基、4,5−ジチオオクチレン基、4,5,6,7−テトラチオノニレン基、4−アザヘプチレン基等の2価のヘテロ原子含有脂肪族炭化水素基、2−アザプロパンジイル−2−メチレン基、3−アザペンタンジイル−3−エチレン基等の3価のヘテロ原子含有脂肪族炭化水素基及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
上記置換又は非置換のn価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基等の2価の芳香族炭化水素基、ベンゼントリイル基、ビフェニルトリイル基等の3価の芳香族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
また、上記置換又は非置換のn価の芳香族炭化水素基には、置換又は非置換の多環芳香族炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の多環芳香族式炭化水素基としては、ナフチレン基、アントラセニレン基等の2価の多環芳香族炭化水素基、ナフタレントリイル基等の3価の多環芳香族炭化水素基及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
また、上記置換又は非置換のn価の芳香族炭化水素基には、置換又は非置換のヘテロ原子含有芳香族炭化水素基も含まれる。置換又は非置換のヘテロ原子含有芳香族炭化水素基としては、ジフェニレンオキシド基、ジフェニレンスルフィド基等の2価のヘテロ原子含有芳香族炭化水素基、トリフェニレンアミノ基等の3価のヘテロ原子含有芳香族炭化水素基及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
また、上記置換又は非置換のヘテロ原子含有脂肪族炭化水素基又は/及びヘテロ原子含有芳香族炭化水素基には、置換又は非置換の複素環含有基も含まれる。置換又は非置換の複素環含有基としては、フランジイル基、チオフェンジイル基、ピロールジイル基、イミダゾールジイル基、モルホリンジイル基等の2価の複素環含有基、フラントリイル基、チオフェントリイル基、ピロールトリイル基、イミダゾールトリイル基、モルホリントリイル基、トリアジントリイル基、イソシアヌレートトリイル基、イソシアヌレートトリプロピレン基等の3価の複素環含有基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
また、上記置換又は非置換のn価の脂肪族炭化水素基及びn価の芳香族炭化水素基には、脂肪族部分と芳香族部分とが混在した置換基も含まれる。このような置換基として、例えば、メチレンビスフェニレン基、プロピレンビスフェニレン基、フェニレンビスメチレン基、フェニレンビスエチレン基、フェニレンメチレン基等の2価の置換基、ベンゼントリイルトリスメチレン基等の3価の置換基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
なお、上記一般式(I−5)のR1’としては、特に限定されるものではないが、本発明のC−O−Si結合を含有する(B)成分の粘度の観点からは、2価又は3価の炭化水素基であることが好ましい。中でも、原料の入手のしやすさの観点から、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、フェニレンビスエチレン基等の2価の炭素原子及び水素原子のみからなる脂肪族炭化水素基、2−チオプロピレン基、4−チオヘプチレン基、4,5−ジチオオクチレン基、4,5,6,7−テトラチオノニレン基、4−アザヘプチレン基等の2価のヘテロ原子含有脂肪族炭化水素基、イソシアヌレートトリプロピレン基等の3価の複素環含有基がより好ましい。
上記一般式(I−5)のR2’として記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基」は、炭素数1〜18を有し、置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素炭素基を含むことを意味する。より具体的には、上記一般式(I−1)で示されるシラン化合物において、Rとして記載した置換基が挙げられる。一般式(I−5)のR3’として記載した「ハロゲン原子」には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が含まれる。
また、一般式(I−5)のR3’として記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基」には、例えば「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素オキシ基」、及び「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素オキシ基」等が含まれる。より具体的には、上記一般式(I−1)で示されるシラン化合物において、Rとして例示した「炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基」が挙げられる。
上記一般式(I−5)のR3’として記載した「炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基」には、例えば、非置換のアミノ基、炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素アミノ基、芳香族炭化水素アミノ基、ジ脂肪族炭化水素アミノ基、ジ芳香族炭化水素アミノ基、脂肪族炭化水素芳香族炭化水素アミノ基、及び炭素数0〜18の置換又は非置換のシリルアミノ基が含まれる。
より具体的には、上記一般式(I−1)で示されるシラン化合物において、Rとして例示した「炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基」が挙げられる。
また、一般式(I−5)のR3’として記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基」には、例えば「炭素数2〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基」、及び「炭素数2〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基」等が含まれる。より具体的には、上記一般式(I−1)で示されるシラン化合物において、Rとして例示した「炭素数2〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基」が挙げられる。
また、一般式(I−5)のR3’として記載した「2以上のR3’が互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2以上のR3’が互いに結合し、全体としてそれぞれ2価以上の有機基となる場合を意味する。例えば、Si原子と結合して環状構造を形成し得るR1’として先に例示した2価の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のジオキシ基、R1’として先に例示した3価の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のトリオキシ基、が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン等で置換されていてもよい。
上記一般式(I−5)のR3’は、特に限定されるものではないが、入手が容易であることから、塩素原子、水酸基、炭素数1〜8を有する置換又は非置換の1価のオキシ基が好ましい。中でも、反応性の観点からは、塩素原子、水酸基又はオキシ基がより好ましく、シラン化合物とフェノール化合物及び/又はアルコール性水酸基を有するエポキシ樹脂を反応させて得られる化合物の製造の簡便さに及ぼす影響を考慮すると、R3’の少なくとも1つが水酸基又は炭素数1〜8のオキシ基であることがさらに好ましい。
上記一般式(I−5)の具体的な化合物の例示としては、以下に限られるものではないが、ビス(ジクロロシリル)メタン、ビス(メチルジクロロシリル)メタン、ビス(メチルジクロロシリル)エタン、ビス(メチルジフルオロシリル)エタン等の置換又は非置換のビス(アルキルジハロシリル)アルカン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)アミン等の置換又は非置換のビス(アルキルジアルコキシシリルアルキル)アミン等のm=1のシラン化合物が挙げられる。また、ビス(トリクロロシリル)メタン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,3−ビス(トリクロロシリル)プロパン、1,6−ビス(トリクロロシリル)へキサン、1,8−ビス(トリクロロシリル)オクタン等の置換又は非置換のビス(トリハロシリル)アルキル、ビス(トリクロロシリル)エチレン等の置換又は非置換のビス(トリハロシリル)アルケン、ビス(トリクロロ)アセチレン等の置換又は非置換のビス(トリハロシリル)アルキン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)デカン等の置換又は非置換のビス(トリアルコキシシリル)アルカン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン等の置換又は非置換のビス(トリアルコキシシリル)アルケン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン等のビス(アルコキシシリル)アレーン、1,4−ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリルプロピル)ベンゼン等のビス(アルコキシシリルアルキル)アレーン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン等の置換又は非置換のビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等の置換又は非置換のビス(トリアルコキシシリルアルキル)スルフィド等のm=0のシラン化合物が挙げられる。これら具体例は、いずれも工業製品又は試薬として入手可能である。上記一般式(I−5)で示される化合物は、工業製品又は試薬として購入可能な化合物を用いても、公知の方法で合成した化合物を用いても構わない。これらシラン化合物の中でも、シラン化合物とフェノール化合物及び/又はアルコール性水酸基を有するエポキシ樹脂を反応させて得られる化合物の製造の簡便さ等の観点から、Rがオキシ基であるシラン化合物が好ましい。
上記一般式(I−5)で示されるシラン化合物の部分縮合物は、上記一般式(I−5)で示される1種の化合物が自己縮合した化合物、又は2種以上の化合物が互いに反応し縮合して生成した化合物が含まれる。特に限定されるものではないが、縮合反応は、必要であれば水を用い、また、必要に応じて、酸、アルカリ等の縮合反応を促進する公知の物質を加えて行うことができる。通常の縮合反応では、下記の反応式(B)のように、1分子の水を消費して、1つの縮合反応が起こり、2分子のR3’Hが副生成物として生じる。
(化10)
2≡Si−R3’+HO→≡Si−O−Si≡+2R3’H (B)
(式(B)中、R3’は一般式(I−5)と共通。)
縮合の度合いは、反応条件により調節することが可能であり、縮合してできる化合物の分子数は、特に限定されるものではないが、平均で1分子より大きいことが好ましく、1.05〜50分子であることがより好ましく、1.1〜20分子であることがさらに好ましい。本発明で使用可能なシラン化合物は、上述のようにそれらが部分的に縮合した化合物を含めばよく、その一部は縮合せずに上記一般式(I−5)で示される化合物のままであってよい。
本発明において使用される特定のシラン化合物の部分縮合物は、予め上記一般式(I−5)で示されるシラン化合物を縮合させて用いても、フェノール化合物と反応させるときに同時に縮合させても、市販品として入手可能なものを用いても、これらを組み合わせても構わない。
本発明によるエポキシ樹脂組成物に用いる(A)成分及び(B)成分には、硬化物中のボイドを抑えるために、(A)成分と(B)成分の合計に対して、揮発成分が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。なお、未反応の上記一般式(I−1)のR又は/及び上記一般式(I−5)のR3’基が存在する場合、その質量は、それらが反応して、例えば、水、アルコール、アンモニア、アミン、カルボン酸といった揮発性成分になったと想定して算出される。
また、本発明によるエポキシ樹脂組成物には、製造方法によらず、アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物を前記(B)成分に含むのが好ましい。アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物の中でも、製造時及び製造後の取り扱いの観点、揮発成分を少なくして硬化物中のボイドを抑える観点からは、本発明によるアリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物が、が、一般式(I−2)及び(I−3)で示される構造部位のうち少なくとも1種類を含有することが好ましい。
Figure 2007084814
(式(I−2)中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す。)
Figure 2007084814
(式(I−3)中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示し、nは0以上の数を示す。)
本発明による(B)成分の少なくとも一部が上記一般式(I−2)及び/又は上記一般式(I−3)で示される環状の構造部位として存在している場合、(B)成分自体を比較的小さい分子量とすることが可能であり、その製造及び製造後の取り扱いが容易となる傾向がある。また、分子量を小さく保ちながら未反応基(例えばR基)を少なくすることができるため、硬化反応時に生成する揮発成分を少なくすることができ、これを硬化剤として用いて得られる硬化物は、ボイドレス性に優れるものとなる。
このような観点から、本発明による(B)成分が、一般式(I−2)及び(I−3)で示される部分構造のうち少なくとも1種類を含有する場合、(B)成分中のアリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物におけるアリールオキシシリル(ArO−Si)結合の全数を基準として、上記一般式(I−2)及び/又は上記一般式(I−3)の構造部位となるアリールオキシシリル結合が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上であることが望ましい。なお、上記一般式(I−2)及び上記一般式(I−3)で示される構造部位は、各々その構造部位内に2つのアリールオキシシリル結合を含むものと見なす。アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物において上記構造部位となるアリールオキシシリル結合の割合が30%未満となると、本発明によって達成可能な製造及び製造後の取り扱いの容易さと硬化物のボイドレス性の効果が発揮されにくい傾向がある。なお、上記一般式(I−2)及び上記一般式(I−3)で示される構造部位におけるSi原子の配位数は特に限定されない。例えば、4配位、5配位、6配位であってよい。
上記一般式(I−2)及び(I−3)のArとして記載した「炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基」とは、特に限定されるものではなく、ひとつの前記環状化合物から水素原子2個を除いた2価の基であってもよい。例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基、ビナフチレン基、メチレンビスフェニレン基、メチレンビスナフチレン基、オキシビスフェニレン基、スルホニルビスフェニレン基、チオビスフェニレン基等のアリール基を両側に有する2価の有機基、及びフラニレン、チオフェニレン、イミダゾリレン、メチレンビスフラニレン、メチレンビスチオフェニレン、メチレンビスイミダゾリレン等の複素環基を両側に有する2価の有機基、一方にアリール基を有し他方に複素環基を有する2価の有機基等の有機基が含まれる。このような有機基は、例えば、シラン化合物と環化可能なフェノール化合物に由来するものであって、より具体的には一般式、HO−Ar−OH(式中、Arは先に記載した通りである。)で示される2価フェノール化合物に由来するものである。
上記一般式(I−3)における「n」は、0以上の数を示すが、環状構造の生成し易さの観点からは、nは好ましくは0〜10の範囲、より好ましくは0〜5の範囲、さらに好ましくは0〜3の範囲であることが望ましい。
一般式(I−2)及び(I−3)で示される部分構造のうち少なくとも1種類を含有するアリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば
(a-1)下記一般式(I−1)で示されるシラン化合物、その部分縮合物と、(a-2)下記一般式(I−5)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物との中から選ばれる少なくとも一種類の化合物と、
(b)フェノール化合物とを反応させることによって製造することが可能である。
(化13)
SiR (4−n) (I−1)
(式(I−1)中、nは0又は1であり、Rは、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、1以上のRと結合して環状構造を形成してもよく、Rは、フェノール性水酸基と反応可能な官能基を示し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
なお、式(I−1)中、n、R及びRの詳細については、先に説明した通りである。上記一般式(I−1)における「n」は、0又は1であれば、特に限定されるものではないが、高吸水性の観点からはn=0であることが好ましい。
(化14)
1’(SiR2’ 3’ (3−m) (I−5)
(式(I−5)中、mは0又は1、nは2以上の整数であり、R1’は炭素数1〜18の置換又は非置換のn価の炭化水素基から選ばれ、R1’と結合する2つ以上のSiR2’ 3’ (3−m)基は全てが同一でも異なっていてもよく、R2’は水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、R1’又はR3’と結合して環状構造を形成してもよく、R3’は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換の一価のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数1から18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のR3’が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
なお、式(I−5)中、n、m、R1’、R2’及びR3’の詳細については、先に説明した通りである。上記一般式(I−5)における「m」は、0又は1であれば、特に限定されるものではないが、高吸水性の観点からはm=0であることが好ましい。
上記方法により、一般式(I−2)及び(I−3)で示される部分構造のうち少なくとも1種類を含有するアリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物を製造する場合、使用可能な(b)フェノール化合物としては、(a-1)一般式(I−1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物と、(a-2)一般式(I−5)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物とから選ばれる少なくとも一種との反応によってアリールオキシシリル(ArO−Si)結合を誘導可能な化合物であればよく、特に限定されるものではない。
なお、上記化合物(a-1)及び化合物(a-2)から選ばれる少なくとも一種の化合物を、以下、(a)特定のシラン化合物ともいう。また、一般式(I−2)及び(I−3)で示される部分構造のうち少なくとも1種類を含有する、アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物を、以下、(B−1)成分ともいう。
すなわち、(b)フェノール化合物としては、分子内に1以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物を使用することが可能であるが、前記(a)特定のシラン化合物との反応によって得られる(B−1)成分が、下記一般式(I−2)及び/又は(I−3)で示される構造部位を含むように、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物を含むことが好ましい。
Figure 2007084814
(式(I−2)中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す。)
Figure 2007084814
(式(I−3)中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示し、nは0以上の数を示す。)
なお、式(I−2)及び(I−3)中、Arの詳細は先に説明した通りである。
(B−1)成分を製造する場合、使用可能な(b)フェノール化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クミルフェノール、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン等のナフトール類等の1分子中に1個のフェノール性水酸基を有する化合物(すなわち、1価フェノール化合物);
レゾルシン、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の1分子内に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(すなわち、2価フェノール化合物);
フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;
メラミン変性フェノール樹脂;
テルペン変性フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;
多環芳香環変性フェノール樹脂;
ビフェニル型フェノール樹脂;
トリフェニルメタン型フェノール樹脂;および
上記樹脂の2種以上を共重合して得たフェノール樹脂
などの分子内に2以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物が挙げられる。上記フェノール化合物の1種を単独で使用しても、それら化合物の2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(B−1)成分を製造する場合、使用可能な(b)フェノール化合物は、(B)成分の粘度の観点では、1分子中に2個以下のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。1分子中のフェノール性水酸基の数が多いほど、生成する(B)成分の粘度が高くなり、製造及び/又は製造後の取り扱いが困難となる傾向がある。特に、ノボラック型フェノール樹脂又はレゾール型フェノール樹脂を用いた場合、1分子中のフェノール性水酸基が多く、反応点間の分子量が小さいことからゲル化が起こりやすい傾向がある。
一方、前記使用可能な(b)フェノール化合物は、(B)成分を硬化剤として用いて得られる硬化物の耐熱性の観点では、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。しかし、上記粘度の観点を考慮すると、フェノール化合物の全量を基準として、2価フェノール化合物の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であることが望ましい。例えば、2価フェノール化合物の含有量が70質量%以下、分子内に3以上のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量が30質量%以上となると、原料として使用するフェノール化合物の粘度が高くなり、取り扱い性に劣る傾向がある。そのため、本発明におけるアリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物を製造することが困難となるだけでなく、(B)成分の粘度も高くなり取り扱い性に劣る結果となる。
以上の観点から、(b)フェノール化合物として2価のフェノール化合物を使用することが好ましい。2価フェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ジヒドロキシナフタレン、置換又は非置換のビフェノールが挙げられ、これら化合物の1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B−1)成分は、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂組成物として使用する際の流動性の観点から、その数平均分子量が200〜5000であることが好ましく、200〜3000であることがより好ましく、200〜2000であることがさらに好ましい。
(a)特定のシラン化合物との反応によって上記一般式(I−2)及び/又は(I−3)で示される構造部位を誘導可能な(b)フェノール化合物の具体例としては、例えば、一般式(I−1a)〜(I−1d)に示されるようなフェノール化合物が挙げられ、それらの1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 2007084814
(式(I−1a)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが結合して環状構造を形成してもよい。)
上記一般式(I−1a)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、カテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。
Figure 2007084814
(式(I−1b)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが結合して環状構造を形成してもよい。)
上記一般式(I−1b)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,2´−ビフェノール、1,1´−ビ−2−ナフトールが挙げられる。
Figure 2007084814
(式(I−1c)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが結合して環状構造を形成してもよく、Rは、炭素数0〜18の2価の有機基を示す。)
上記一般式(I−1c)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,2´−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2´−ジヒドロキシ−5,5´−ジメチルジフェニルメタン、2,2´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2´−ジヒドロキシジフェニルスルフォンが挙げられる。
Figure 2007084814
(式(I−1d)中、R10は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR10が結合して環状構造を形成してもよい。)
上記一般式(I−1d)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、1,8−ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。
上記一般式(I−1a)〜(I−1d)のR、R、R、及びR10として記載した用語「炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基」は、炭素数1〜18を有し、かつ置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、及びカルボニルオキシ基が結合したものを含むことを意味する。
上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、及びビニル基等の脂肪族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン等で置換したものなどが挙げられる。
上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン等で置換したものなどが挙げられる。
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基等が挙げられ、それらはさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したもの等であってもよい。
上記脂肪族炭化水素オキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の上述の脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造のオキシ基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。上記芳香族炭化水素オキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等の上述の芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造のオキシ基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したもの等が挙げられる。
上記カルボニル基としては、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、ブチリル基、シクロヘキシルカルボニル基、アリルカルボニル等の脂肪族炭化水素カルボニル基、フェニルカルボニル基、メチルフェニルカルボニル基等の芳香族炭化水素カルボニル基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したもの等が挙げられる。
上記オキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の脂肪族炭化水素オキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、メチルフェノキシカルボニル基等の芳香族炭化水素オキシカルボニル基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したもの等が挙げられる。
上記カルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基等の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基等の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したもの等が挙げられる。
さらに、R、R、R、及びR10として記載した「2以上のR、R、R、及びR10が互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2以上のR、R、R、又はR10が結合し、全体としてそれぞれ2〜4価の有機基となる場合を意味する。例えば、それらが結合するベンゼン環と併せて、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の多環芳香族環を形成するような基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン等で置換されてもよい。
上記一般式(I−1a)〜(I−1d)のR、R、R、及びR10としては、特に限定されるものではないが、水素原子、水酸基、及び1価の有機基であるアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。中でも、原料の入手しやすさの観点からは、水素原子、水酸基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換の芳香族基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がより好ましく、水素原子、水酸基、フェニル基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基から選ばれる置換基がさらに好ましい。
2以上のR、R、R、又はR10が結合して環状構造を形成する場合、それらが結合するベンゼン環と併せて、ナフタレン環となることが好ましい。
上記一般式(I−1c)のRは、炭素数0〜18の2価の有機基を示すが、炭素数0〜18の有機基としては特に制限はなく、例えば、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、炭素数1〜18の2価の炭化水素基等が挙げられる。炭素数1〜18の2価の炭化水素基としては特に制限はなく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基等の脂肪族炭化水素基及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したもの、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等の芳香族炭化水素基及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したものが挙げられる。
中でも、入手しやすさの観点からは、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基等のアルキレン基、これらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基が置換したものが好ましい。酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、メチレン基、メチルメチレン基、イソプロピルメチレン基、フェニルメチレン基、シクロヘキシルメチレン基、ジメチルメチレン基、メチルジイソピルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基、シクロペンチレン基がより好ましい。
(B−1)成分を製造する場合、(a)特定のシラン化合物と、(a)特定のシラン化合物と環化可能な(b)フェノール化合物との反応は、目的とする(B−1)成分が生成する方法であれば、その反応手段などの制限は特にないが、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。溶媒は、反応後に、ろ別、蒸留等によって除去することが好ましい。使用できる溶媒としては、上記(a)と(b)との反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限されるものではなく、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒等の公知の溶媒を用いることができる。使用した溶媒は、加熱及び/又は減圧留去、ろ過等によって、除去されることが好ましい。
また、(B−1)成分を製造する場合、(a)特定のシラン化合物と、(b)フェノール化合物との比率は、反応が進行し目的の化合物が得られる範囲において、特に限定されるものではない。例えば、(a)におけるR又は/及びR3’基と、(b)におけるフェノール性水酸基との当量比(すなわち、[(b)フェノール化合物の水酸基数]/[(a)のシラン化合物におけるR又は/及びR3’基数])が、0.1〜10の間であることが好ましく、0.5〜5.0の間であることがより好ましく、0.9〜3.0の間であることがさらに好ましく、1付近であることが最も好ましい。上記当量比が0.1未満となる場合、未反応のR基が残りやすい傾向がある。一方、上記当量比が10よりも大きくなると、反応生成物のエポキシ硬化剤としての有用性が低下し、硬化物の高吸水性が低下する傾向がある。なお、「当量比」とは、仕込み比のことではなく、製造後に生成物中に含有されている(b)のフェノール性水酸基由来の基および(a)のR又は/及びR3’基由来の基の比([(b)フェノール化合物の未反応フェノール性水酸基数+(b)フェノール化合物のフェノール性水酸基が反応して生成した結合の数]/[(a)のシラン化合物におけるR又は/及びR3’基数+(a)のシラン化合物におけるR又は/及びR3’基が反応して生成した結合の数])を意味する。すなわち、揮発、ろ過、洗浄等によって除去されたものは、含まないものとする。また、当量比が「1付近」とは、秤量誤差、純度のずれ等によって実際には1.0から少しずれていても良いことを意味する。
具体的には、0.9〜1.1が好ましく、0.95〜1.05がより好ましい。
また、(B−1)成分を製造する場合、(a)特定のシラン化合物と、(b)フェノール化合物との反応率は、特に限定されるものではないが、反応開始時のシラン化合物及び/又はその部分縮合物における全R又は/及びR3’基数を基準として、未反応のR又は/及びR3’基数が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。反応開始時の全R又は/及びR3’基数を基準として、10%を超える数のR又は/及びR3’基が未反応となると、反応生成物のエポキシ硬化剤としての有用性は低下し、硬化物のボイドの発生を招く傾向がある。
(B−1)成分を製造する場合、目的とする(B−1)成分とともに、上記(a)と(b)との反応の副生成物としてRH又は/及びR3’Hが生成することになる。そのため、必要に応じて加熱して、反応生成物からRH又は/及びR3’Hを除去する工程を設けることが好ましい。より具体的な例示としては、以下の通りである:
(a)特定のシラン化合物のうちR又は/及びR3’がハロゲン原子であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のハロゲン化水素を除去する;
(a)のうちR又は/及びR3’が水酸基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物の水を除去する;
(a)のうちR又は/及びR3’がオキシ基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のアルコール又はアリールオールを除去する;
(a)のうちR又は/及びR3’がアミノ基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のアンモニア又はアミンを除去する;
(a)のうちR又は/及びR3’がカルボニルオキシ基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のカルボン酸を除去する。
一般式(I−2)及び(I−3)で示される部分構造のうち少なくとも1種類を含有する(B)成分を製造する場合、上記(a)と(b)との反応を促進するために、必要に応じて、触媒を使用しても良い。触媒なしで反応が進行する場合は、触媒を使用せずに反応を実施することが好ましい。しかし、反応が進行しない場合は勿論のこと、反応の進行が遅い場合にも触媒を用いることが好ましい。使用可能な触媒は、反応が促進されれば制限されるものではないが、好ましい触媒としては、例えば、次のものが挙げられる。1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケンなどの環状アミジン化合物、その誘導体、
それらのフェノールノボラック塩などの環状アミジニウム塩及び
これらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、
ピリジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、
2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類、
テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、
2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩、
トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類などのホスフィン化合物、
又はこれらホスフィン化合物と有機ボロン類との錯体や、これらホスフィン化合物と無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどのπ結合をもつ化合物を付加してなる、分子内分極を有する化合物、
これらホスフィン化合物と4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4´−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる分子内分極を有する化合物(例えば特開2004−156035号公報及び特開2004−156036号公報記載。)等のホスホニウム化合物などが挙げられる。
ホスフィン化合物、ホスホニウム化合物、環状アミジン化合物、及び環状アミジニウム塩からなる群より選ばれるのがより好ましく、中でも、一般式(I−4)で示されるホスホニウム化合物又はその分子間塩を触媒として用いることがより好ましい。
(B−1)成分を製造する場合、用いるシラン化合物と触媒の組み合わせは、特に限定されるものではないが、反応の簡便さ及び反応生成物の使用によって達成される硬化物の長期安定性、電子部品の長期信頼性等の観点から、下記一般式(I−4)で示されるホスホニウム化合物又はその分子間塩を触媒として用いて多価フェノール化合物と一般式(I−1)のR又は/及び一般式(I−5)のR3’がオキシ基であるシラン化合物とを反応させ、80℃〜300℃に加熱して副生成物のアルコールを除去することによって実施することが好ましい。副生成物となるRH又は/及びR3’Hの除去容易性の観点からは、R又は/及びR3’が炭素数1〜3のアルコキシ基であることがさらに好ましい。上記触媒は用いなくとも反応は進行するが、上記で示した理由により、用いるのが好ましい。
Figure 2007084814
(式(I−4)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよく、Rは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよく、Yは、1以上の放出可能なプロトン(H)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した有機基であり、1以上のRと互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
なお、上記一般式(I−4)のRとして記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基」は、炭素数1〜18を有し、置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含むことを意味する。
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン原子等で置換したものなどが挙げられる。
また、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン原子等で置換したものなどが挙げられる。
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基等が挙げられ、それらはさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものであってもよい。
一般式(I−4)のRとして記載した用語「2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2又は3つのRが結合し、全体としてそれぞれ2又は3価の炭化水素基となる場合を意味する。例えば、リン原子と結合して環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
なお、上記一般式(I−4)のRとしては、特に限定されるものではないが、置換されていてもよいアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1価の置換基であることが好ましい。中でも、原料の入手しやすさの観点から、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、o−ヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、4−(4−ヒドロキシフェニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−(2−ヒドロキシナフチル)基、1−(4−ヒドロキシナフチル)基、等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換のアリール基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がより好ましい。フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、o−ヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、4−(4−ヒドロキシフェニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−(2−ヒドロキシナフチル)基、1−(4−ヒドロキシナフチル)基、等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換のアリール基であることがさらに好ましい。
上記一般式(I−4)のRとして記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基」は、炭素数1〜18を有し、かつ置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、及びカルボニルオキシ基が結合したものを含むことを意味する。
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基としては、Rとして先に説明した通りである。
上記脂肪族炭化水素オキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の上述の脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造のオキシ基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。上記芳香族炭化水素オキシ基としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等の上述の芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造のオキシ基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
上記カルボニル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、ブチリル基、シクロヘキシルカルボニル基、アリルカルボニル等の脂肪族炭化水素カルボニル基、フェニルカルボニル基、メチルフェニルカルボニル基等の芳香族炭化水素カルボニル基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
上記オキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の脂肪族炭化水素オキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、メチルフェノキシカルボニル基等の芳香族炭化水素オキシカルボニル基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が置換したものが挙げられる。
上記カルボニルオキシ基としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基等の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基等の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
上記一般式(I−4)のRとして記載した用語「2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2〜4つのRが結合し、全体としてそれぞれ2〜4価の有機基となる場合を意味する。例えば、環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基、これらアルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基、アリーレン基のオキシ基又はジオキシ基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
上記一般式(I−4)のRとしては、特に限定されるものではないが、水素原子、水酸基、置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。中でも原料の入手しやすさの観点からは、水素原子、水酸基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換のアリール基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がさらに好ましい。2以上のRが互いに結合して環状構造を形成する場合は、特に限定されないが、Rが結合しているベンゼン環と併せて、1−(−2−ヒドロキシナフチル)基、1−(−4−ヒドロキシナフチル)基等の多環芳香族基を形成する有機基が好ましい。
上記一般式(I−4)におけるYは、1以上の放出可能なプロトン(H)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した有機基であり、1以上のRと互いに結合して環状構造を形成してもよい。例えば、Yは水酸基、メルカプト基、ハイドロセレノ基等の16族原子に水素原子が結合した1価の有機基からプロトンが脱離した基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシフェニル基カルボキシナフチル基等のカルボキシル基を有する炭素数1〜18の1価の有機基からカルボン酸のプロトンが脱離した基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシフリル基、ヒドロキシチエニル基、ヒドロキシピリジル基等のフェノール性水酸基を有する炭素数1〜18の1価の有機基からフェノール性プロトンが脱離した基等が挙げられる。
また、上記一般式(I−4)中のYが1以上のRと結合して環状構造を形成する場合、例えば、Yは、それが結合しているベンゼン環と併せて、2−(−6−ヒドロキシナフチル)基等のヒドロキシ多環芳香族基の水酸基からプロトンが脱離した基を形成する2価の有機基が挙げられる。
先に例示したYの中でも、特に限定されるものではないが、水酸基からプロトンが脱離してなる酸素アニオン、又はヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシフリル基、ヒドロキシチエニル基、ヒドロキシピリジル基等のフェノール性水酸基からプロトンが脱離してなる酸素アニオンを有する1価の有機基であることが好ましい。
また、上記一般式(I−4)中のYが1以上のRと結合して環状構造を形成する場合、例えば、Yは、それが結合しているベンゼン環と併せて、2−(−6−ヒドロキシナフチル)基等のヒドロキシ多環芳香族基の水酸基からプロトンが脱離した基が好ましい。
また、上記一般式(I−4)で示されるホスホニウム化合物の分子間塩としては、限定されるものではないが、式(I−4)で示されるホスホニウム化合物とフェノール、ナフトール、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物として先に例示した化合物等のフェノール性水酸基を有する化合物、トリフェニルシラノール、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール等のシラノール基を有する化合物、シュウ酸、酢酸、安息香酸等の有機酸、塩酸、臭化水素、硫酸、硝酸等の無機酸等との分子間塩化合物が挙げられる。
また、上記一般式(I−4)で示されるホスホニウム化合物の具体例としては、限定されるものではないが、3級ホスフィンと1,4−ベンゾキノン、メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4ベンゾキノン、2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、メトキシ−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、メチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチル−1,4−ベンゾキノン、t−ブチル−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン、1,4−ナフトキノン等の付加反応物が挙げられる。
3級ホスフィンとして、トリス−(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス−(o−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、ビス−(p−メトキシフェニル)フェニルホスフィン、ビス−(o−メトキシフェニル)ホスフィン、ジ−p−トリルフェニルホスフィン、ジ−o−トリルフェニルホスフィン、ジ−m−トリルフェニルホスフィン、ジフェニル−(p−メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル−(o−メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル−p−トリルホスフィン、ジフェニル−o−トリルホスフィン、ジフェニル−m−トリルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のトリアリールホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、オクチルジフェニルホスフィン等のアルキルジアリールホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ジオクチルフェニルホスフィン等のジアルキルアリールホスフィンなどが挙げられる。
また、これら3級ホスフィンと4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4´−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる分子内分極を有する化合物(例えば特開2004−156035号公報及び特開2004−156036号公報記載。)などが挙げられる。
これらの中でも原料の入手し易さ及び上記一般式(I−4)で示されるホスホニウム化合物の安定性からは、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、トリ−p−トリルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、トリス−(p−メトキシフェニル)ホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、ジフェニル−p−トリルホスフィと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、トリブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、トリシクロヘキシルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、特開2004−156036記載の合成例1〜9で製造した下記構造式(1)〜(7)に記載の構造で示される化合物が好ましい。
Figure 2007084814
本発明によるエポキシ樹脂組成物は、硬化物中に、C−O−Si結合を含有するものであれば特に制限されるものではないが、好ましくは、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤とを含有するものであって、(A)成分及び(B)成分の少なくともいずれか一方にC−O−Si結合を含有するものである。C−O−Si結合を含有する(A)成分及び(B)成分の好ましい形態については上記に示したが、本発明によるエポキシ樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分の少なくともいずれか一方にC−O−Si結合を含有していれば、上記成分以外の(A)及び/又は(B)を含有していてもよい。さらに(C)硬化促進剤及び(D)無機充填剤を含有するものであってもよい。また、必要に応じて、カップリング剤、イオン交換体、離型剤、応力緩和剤、難燃剤、着色剤といった各種添加剤を追加したものであってもよい。以下、本発明によるエポキシ樹脂組成物を構成する主な成分について説明する。
(A)エポキシ樹脂
本発明において使用可能なC−O−Si結合を含有する(A)成分以外の(A)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であればよく、特に限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂;
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール、スチルベン系フェノール類等のジグリシジルエーテル(ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂)、
ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;
フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸類のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
アニリン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したもの等のグリシジル型又はメチルグリシジル型のエポキシ樹脂;
分子内のオレフィン結合をエポキシ化して得られるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;
ハイドロキノン型エポキシ樹脂;
トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;
オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂;
フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物;
硫黄原子含有エポキシ樹脂
等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記エポキシ樹脂の中でも、耐リフロークラック性及び流動性の点でビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物が好ましく、それらのいずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、それらの性能を発揮するためには、エポキシ樹脂全量に対して、それらを合計で30質量%以上使用することが好ましく、50質量%以上使用することがより好ましい。以下、好ましいエポキシ樹脂の具体例を示す。
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(II)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。
下記一般式(II)で示されるエポキシ樹脂の中でもRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子であるYX−4000H(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、全てのRが水素原子である4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル、全てのRが水素原子の場合及びRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子である場合の混合品であるYL−6121H(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2007084814
(式(II)中、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
スチルベン型エポキシ樹脂としては、スチルベン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂の中でも、Rのうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子でありR10の全てが水素原子の場合と3,3´,5,5´位のうちの3つがメチル基、1つがtert−ブチル基でそれ以外が水素原子でありR10の全てが水素原子の場合の混合品であるESLV−210(住友化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2007084814
(式(III)中、R及びR10は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、ジフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(IV)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(IV)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R11の全てが水素原子でありR12のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子であるYSLV−80XY(新日鐵化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2007084814
(式(IV)中、R11及びR12は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
硫黄原子含有型エポキシ樹脂としては、硫黄原子を含有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば下記一般式(V)で示されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(V)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R13のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´位がtert−ブチル基で6,6´位がメチル基でそれ以外が水素原子であるYSLV−120TE(新日鐵化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2007084814
(式(V)中、R13は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
ノボラック型エポキシ樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化したエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではないが、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ナフトールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂をグリリシジルエーテル化等の手法を用いてエポキシ化したエポキシ樹脂が好ましく、例えば下記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R14の全てが水素原子でありR15がメチル基でi=1であるESCN−190、ESCN−195(住友化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2007084814
(式(VI)中、R14及びR15は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料としてエポキシ化したエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(VII)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(VII)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0であるHP−7200(大日本インキ化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2007084814
(式(VII)中、R16は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂としては、サリチルアルデヒド骨格を持つ化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば特に制限はないが、サリチルアルデヒド骨格を持つ化合物とフェノール性水酸基を有する化合物とのノボラック型フェノール樹脂等のサリチルアルデヒド型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂等のサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(VIII)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(VIII)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、k=0である1032H60(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、EPPN−502H(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2007084814
(式(VIII)中、R17及びR18は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂としては、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではないが、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を用いたノボラック型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R21がメチル基でi=1であり、j=0、k=0であるNC−7300(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2007084814
(式(IX)中、R19〜R21は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示し、pは平均値で0〜1の数を示し、l、mはそれぞれ平均値で0〜11の数であり(l+m)は1〜11の数を示す。)
上記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂としては、l個の構成単位及びm個の構成単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体が挙げられ、これらのいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニレン基含有フェノールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物としては、フェノール、クレゾール等のフェノール類及び/又はナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではない。例えば、フェノール、クレゾール等のフェノール類及び/又はナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記一般式(X)及び(XI)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(X)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、R38が水素原子であるNC−3000S(日本化薬株式会社製商品名)、i=0、R38が水素原子であるエポキシ樹脂と一般式(II)の全てのRが水素原子であるエポキシ樹脂を質量比80:20で混合したCER−3000(日本化薬株式会社製商品名)等が、下記一般式(XI)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、j=0、k=0であるESN−175(新日鐵化学株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2007084814
(式(X)及び(XI)において、R37〜R41は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
上記一般式(II)〜(XI)中のR〜R21及びR37〜R41について、「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」とは、例えば、式(II)中の8〜88個のRの全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。他のR〜R21及びR37〜R41についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。また、R〜R21及びR37〜R41はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、RとR10の全てについて同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(II)〜(XI)中のnは、0〜10の範囲であり、10を超えた場合は(B)成分の溶融粘度が高くなるため、エポキシ樹脂組成物の溶融成形時の粘度も高くなり、未充填不良やボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形を引き起こしやすくなる。1分子中の平均nは0〜4の範囲に設定されることが好ましい。
(B)硬化剤
本発明によるエポキシ樹脂組成物で、C−O−Si結合を含有する(B)硬化剤を使用した場合、例えばエポキシ樹脂と、(B)成分の−ArO−Si結合部位又は/及び−ArOHとが反応することによって、硬化が進行することになる。本発明によるエポキシ樹脂組成物において、(B)成分が−ArO−Si結合部位を有する場合、(A)エポキシ樹脂と、(B)成分との配合比率は、(A)エポキシ樹脂における全エポキシ基の数と(B)成分における−ArO−Si結合の数及び本発明による(B)成分における未反応フェノール性水酸基の数の合計との比率、すなわち、[(本発明による(B)成分における−ArO−Si結合の数)+(本発明による(B)成分における未反応フェノール性水酸基数)]/[エポキシ樹脂中の全エポキシ基数]で、0.5〜2.0の範囲に設定されることが好ましい。上記配合比率は、0.7〜1.5の範囲に設定することがより好ましく、0.8〜1.3の範囲に設定することがさらに好ましい。
上記配合比率が0.5未満となると、エポキシ樹脂の硬化が不充分となり、硬化物の耐熱性、耐湿性及び電気特性が劣る傾向がある。一方、上記配合比率が2.0を超えると、硬化剤成分が過剰となり、硬化効率が低下するだけでなく、硬化樹脂中に多量のフェノール性水酸基が残るため、パッケージの電気特性及び耐湿性は低下する傾向がある。
本発明において使用可能なC−O−Si結合を含有する(B)成分以外の(B)硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させることができる化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、フェノール樹脂等のフェノール化合物、ジアミン、ポリアミン等のアミン化合物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の無水有機酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸等のカルボン酸化合物等が挙げられ、これらの化合物の1種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物においては、硬化剤としてC−O−Si結合を含有する(B)成分を単独で用いるか、又はC−O−Si結合を含有する(B)成分とフェノール化合物を併用して用いることが好ましい。C−O−Si結合を含有する(B)成分とフェノール化合物を併用する場合、(B)硬化剤となる成分の合計量を基準として、C−O−Si結合を含有する(B)成分の配合量は、30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましい。(B)硬化剤の含有量が30質量%未満となると高吸水性の特性が低下し、本発明によって達成可能な効果が低減する傾向がある。
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤としてC−O−Si結合を含有する(B)成分と1分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物を併用する場合、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤としてC−O−Si結合を含有する(B)成分及び併用するフェノール化合物の配合比率は、(A)エポキシ樹脂の全エポキシ基数と、本発明によるC−O−Si結合を含有する(B)成分の−ArO−Si結合数、C−O−Si結合を含有する(B)成分における未反応フェノール性水酸基の数及び併用する化合物のフェノール性水酸基数の合計との比率、すなわち、
[(C−O−Si結合を含有する(B)成分の−ArO−Si結合の数)+(C−O−Si結合を含有する(B)成分における未反応フェノール性水酸基数)+(併用するフェノール化合物のフェノール性水酸基数)]/[エポキシ樹脂中のエポキシ基数]
で、0.5〜2.0の範囲に設定されることが好ましい。上記配合比率は、0.7〜1.5の範囲に設定することがより好ましく、0.8〜1.3の範囲に設定することがさらに好ましい。上記配合比率が0.5未満となると、エポキシ樹脂の硬化が不充分となり、硬化物の耐熱性、耐湿性及び電気特性が劣る傾向がある。一方、上記配合比率が2.0を超えると、硬化剤成分が過剰となり、硬化効率が低下するだけでなく、硬化樹脂中に多量のフェノール性水酸基が残るため、パッケージの電気特性及び耐湿性は低下する傾向がある。
上述の範囲において、硬化剤として使用することが可能なフェノール化合物は、特に限定されず、硬化剤として一般に使用される1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物であってよい。例えば、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物;
フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;
メラミン変性フェノール樹脂;
テルペン変性フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;
多環芳香環変性フェノール樹脂;
ビフェニル型フェノール樹脂;
トリフェニルメタン型フェノール樹脂;
これら化合物の2種以上を共重合して得たフェノール樹脂
などが挙げられ、これらを単独で併用しても2種以上を組み合わせて併用してもよい。
フェノール化合物の中でも、耐リフロークラック性の観点からはアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型とアラルキル型の共重合型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。これらアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型とアラルキル型の共重合型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂は、いずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、本発明によるC−O−Si結合を含有する(B)成分の効果を発揮させるために、上述のフェノール樹脂は、硬化剤の全量に対して、合計で好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下で併用することが望ましい。
アラルキル型フェノール樹脂としては、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XII)〜(XIV)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
Figure 2007084814
(式(XII)〜(XIV)において、R22〜R28は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、jは0〜2の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
上記一般式(XII)で示されるフェノール樹脂の中でも、i=0、R23が全て水素原子であるMEH−7851(明和化成株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
上記一般式(XIII)で示されるフェノール樹脂の中でも、i=0、k=0であるXL−225、XLC(三井化学株式会社製商品名)、MEH−7800(明和化成株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
上記一般式(XIV)で示されるフェノール樹脂の中でも、j=0、R27のk=0、R28のk=0であるSN−170(新日鐵化学株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XV)で示されるフェノール樹脂が好ましい。下記一般式(XV)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0であるDPP(新日本石油化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2007084814
(式(XV)中、R29は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
サリチルアルデヒド型フェノール樹脂としては、サリチルアルデヒド骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XVI)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
下記一般式(XVI)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、k=0であるMEH−7500(明和化成株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2007084814
(式(XVI)中、R30及びR31は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
ベンズアルデヒド型とアラルキル型との共重合型フェノール樹脂としては、ベンズアルデヒド骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XVII)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
下記一般式(XVII)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、k=0、q=0であるHE−510(エア・ウォーター・ケミカル株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2007084814
(式(XVII)中、R32〜R34は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、qは0〜5の整数、l、mはそれぞれ平均値で0〜11の数であり(l+m)は1〜11の数を示す。)
ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノール類及び/又はナフトール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XVIII)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
下記一般式(XVIII)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、R35が全て水素原子であるタマノル758、759(荒川化学工業株式会社製商品名)、HP−850N(日立化成工業株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2007084814
(式(XVIII)中、R35及びR36は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
上記一般式(XII)〜(XVIII)におけるR22〜R36について記載した「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」は、例えば、式(XII)中のi個のR22の全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。他のR23〜R36についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。また、R22〜R36は、それぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、R22およびR23の全てについて同一でも異なってもよく、R30およびR31の全てについて同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(XII)〜(XVIII)におけるnは、0〜10の範囲であり、10を超えた場合は(B)成分の溶融粘度が高くなるため、エポキシ樹脂組成物の溶融成形時の粘度も高くなり、未充填不良やボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形を引き起こしやすくなる。1分子中の平均nは0〜4の範囲に設定されることが好ましい。
(C)硬化促進剤
本発明によるエポキシ樹脂組成物では、必要に応じて硬化剤促進剤を配合してもよい。
使用可能な硬化促進剤としては、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケンなどの環状アミジン化合物、
その誘導体、
それらのフェノールノボラック塩などの環状アミジニウム塩及び
これらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、
トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、
2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類、
テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、
2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩、
トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類などのホスフィン化合物、
又はこれら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体や、これら有機ホスフィン類と無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどのπ結合をもつ化合物を付加してなる、分子内分極を有する化合物、
これら有機ホスフィン類と4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4´−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素して得られる分子内分極を有する化合物(例えば特開2004−156035号公報及び特開2004−156036号公報記載。)等のホスホニウム化合物などが挙げられる。
これら硬化促進剤を併用する場合、中でも、流動性の観点からは有機ホスフィン類とπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、有機ホスフィン類とハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素して得られる分子内分極を有する化合物、硬化性の観点からは有機ホスフィン類とハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる分子内分極を有する化合物が好ましい。特に、下記一般式(I−4)で示されるホスホニウム化合物又はその分子間塩を使用することが好ましい。なお、式中、R、R、Yは先に説明した通りである。
Figure 2007084814
本発明によるエポキシ樹脂組成物における(C)硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成されれば特に制限はない。しかし、エポキシ樹脂組成物の吸湿時の硬化性及び流動性における改善の観点からは、(A)エポキシ樹脂の合計100質量部に対し、(C)硬化促進剤を合計で好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1〜7.0質量部配合することが望ましい。配合量が0.1質量部未満では短時間で硬化させることが困難であり、10質量部を超えると硬化速度が速すぎて良好な成形品が得られない場合がある。
(D)無機充填剤
本発明のエポキシ樹脂組成物には、(D)無機充填剤を必要に応じてさらに配合することができる。本発明において用いられる(D)無機充填剤としては、一般に封止用成形材料に用いられるものであってよく、特に限定されるものではない。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、シリカゲル、多孔質シリカ、ガラス、ゼオライト、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレイ、マイカ等の微粉未、又はこれらを球形化したビーズなどが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。これら無機充填剤の1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)無機充填剤の配合量は、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、エポキシ樹脂組成物に対して30〜90体積%の範囲であることが好ましい。これら無機充填剤は硬化物の成型収縮率、熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の改良を目的に配合するものであり、配合量が30体積%未満ではこれらの特性の改良が不十分となる傾向があり、90体積%を超えるとエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇して流動性が低下し成形が困難になる傾向がある。
また、(D)無機充填剤の平均粒径は1〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。1μm未満ではエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇しやすく、50μmを超えると樹脂成分と無機充墳剤とが分離しやすくなり、硬化物が不均一になったり硬化物特性がばらついたり、狭い隙間への充填性が低下したりする傾向がある。
流動性の観点からは、(D)無機充填剤の粒子形状は角形より球形が好ましく、(D)無機充填剤の粒度分布は広範囲に分布したものが好ましい。例えば、無機充填剤を75体積%以上配合する場合、その70質量%以上を球状粒子とし、0.1〜80μmという広範囲に分布したものが好ましい。このような無機充填剤は最密充填構造をとりやすいため配合量を増加させても材料の粘度上昇が少なく、流動性に優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
吸水率の観点からは、吸水性の高い(D)無機充填剤を用いるのが好ましい。吸水性の高い(D)無機充填剤としては、吸水力があれば、特に限定されるものではなく、例えば、シリカゲル、ゼオライト、多孔質シリカ、酸化カルシウム、クレイ等が挙げられ、単独で用いても組み合わせて用いても構わない。吸水性の高い(D)無機充填剤を用いる場合、その効果を発揮するには、エポキシ樹脂組成物中の10質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上含有することがより好ましく、50質量%より多く含有することがさらに好ましい。また、流動性と吸水率の両立の観点からは、球形の溶融シリカと組み合わせて使用するのが好ましい。成型収縮率、熱膨張係数、バリ、弾性率、流動性、吸水率等の特性のバランスは、充填材の量、種類、混合比等により調整可能であり、要求される特性に応じて、調節するのが好ましい。
(各種添加剤)
本発明によるエポキシ樹脂組成物では、必要に応じて上述の成分(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機充填剤に加えて、以下に例示するカップリング剤、イオン交換体、離型剤、応力緩和剤、難燃剤、着色剤といった各種添加剤を追加してもよい。しかし、本発明によるエポキシ樹脂組成物には、以下の添加剤に限定することなく、必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を追加してもよい。
(カップリング剤)
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、樹脂成分と無機充填剤との接着性を高めるために、必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を添加することができる。
カップリング剤の配合量は、(D)無機充填剤に対して0.05〜5質量%であることが好ましく、0.1〜2.5質量%がより好ましい。0.05質量%未満ではフレームとの接着性が低下する傾向があり、5質量%を超えるとパッケージの成形性が低下する傾向がある。
上記カップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、二級アミノ基を有するカップリング剤が流動性及びワイヤ流れの観点から好ましい。
(イオン交換体)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、陰イオン交換体を必要に応じて配合することができる。特にエポキシ樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、陰イオン交換体を配合することが好ましい。本発明において用いられる陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイト類や、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマスから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、下記一般式(XIX)で示されるハイドロタルサイトが好ましい。
(化38)
Mg1−XAl(OH)(COX/2・mHO …… (XIX)
(一般式(XIX)において0<X≦0.5、mは正の数)
これらの陰イオン交換体の配合量は、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉できる十分量であれば特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜30質量%の範囲が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
(離型剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、成形時に金型との良好な離型性を持たせるため離型剤を配合してもよい。本発明において用いられる離型剤としては特に制限はなく従来公知のものを用いることができる。例えば、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックス等が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、酸化型又は非酸化型のポリオレフィン系ワックスが好ましく、その配合量としては(A)エポキシ樹脂に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。ポリオレフィン系ワックスの配合量が0.01質量%未満では離型性が不十分な傾向があり、10質量%を超えると接着性が阻害される可能性がある。ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば市販品ではヘキスト社製のH4、PE、PEDシリーズ等の数平均分子量が500〜10000程度の低分子量ポリエチレンなどが挙げられる。また、ポリオレフィン系ワックスに他の離型剤を併用する場合、その配合量は(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。
(応力緩和剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、シリコーンオイル、シリコーンゴム粉末等の応力緩和剤などを必要に応じて配合することができる。応力緩和剤を配合することにより、パッケージの反り変形量、パッケージクラックを低減させることができる。使用できる応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の可とう剤(応力緩和剤)であれば特に限定されるものではない。一般に使用されている可とう剤としては、例えば、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル−スチレン−ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル−シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体等のコア−シェル構造を有するゴム粒子等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、シリコーン系可とう剤が好ましく、シリコーン系可とう剤としては、エポキシ基を有するもの、アミノ基を有するもの、これらをポリエーテル変性したものが挙げられる。
(難燃剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、難燃性を付与するために必要に応じて難燃剤を配合することができる。本発明において用いられる難燃剤としては特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む公知の有機若しくは無機の化合物、金属水酸化物などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。難燃剤の配合量は、難燃効果が達成されれば特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂に対して1〜30質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましい。
(着色剤)
また、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を配合しても良い。
先に説明した本発明のエポキシ樹脂組成物は、各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できる。一般的な手法としては、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、上述した成分の所定量を均一に撹拌、混合し、予め70〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練、冷却し、粉砕するなどの方法で得ることができる。エポキシ樹脂組成物は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び質量でタブレット化すると取り扱いが容易である。
本発明による半導体素子収納用中空パッケージは、上述のエポキシ樹脂組成物によって成型されることを特徴とする。また、本発明による電子部品装置は、上述のエポキシ樹脂組成物によって成形された半導体素子収納用中空パッケージに収納された素子を備えることを特徴とする。電子部品装置としては、例えば、CCDイメージセンサー、MOSイメージセンサー、CMOSイメージセンサー、CPD、EPROM、LED、OEL等の光半導体素子を備える中空パッケージ型の装置が挙げられる。本発明によるエポキシ樹脂組成物は、半導体素子収納用中空パッケージの一部分に使用することもできる。また、光半導体用途以外の内部の曇りを防止することが必要な中空パッケージにおいても本発明のエポキシ樹脂組成物を有効に使用することができる。また、高吸水性が必要とされる様々な用途にも有効に使用することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法が最も一般的ではあるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔合成例〕
(合成例1)
500mlのセパラブルフラスコに、2,2´−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)200g(1.07mol)及びトルエン215mlを投入し、約100℃に加熱して溶解させ溶液とした。そのまま約100℃に維持しながら、溶液にテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430)112g(0.54mol)を約60分かけて滴下した。反応は、副生成物となるエタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去しながら、約6時間続けた。反応溶液を、一晩にわたり室温(25℃)で放置し、ろ過、乾燥を行い188gの固体の生成物を得た。
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。生成物は解けにくいが、重アセトンに含まれる微量の水に分解しながら溶けると考えられる。そのような溶液のH−NMR測定の結果によれば、エタノール及びエトキシ基が観測されなかった。IR測定の結果を図1及び2に示す。図1は原料となる2,2´−ビフェノールのIRスペクトル、図2は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。生成物のIR測定の結果から、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び図1で確認されたフェノール性水酸基のO−Hのピークが消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は下記一般式(XX)の単位構造を有し、下記一般式(XXI)で示される構造の化合物を含有すると推測される。
Figure 2007084814
Figure 2007084814
(合成例2)
500mlのセパラブルフラスコに、2,2´−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)119g(0.64mol)及びトルエン319mlを投入し、約100℃に加熱して溶解させ溶液とした。そのまま約100℃に維持しながら、溶液にテトラメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製Mシリケート51)30gを約30分かけて滴下した。反応は、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除きながら、約7時間続けた。反応溶液を、一晩にわたり室温(25℃)で放置し、固体分をろ過及び乾燥することによって69gの生成物を得た。
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。生成物は解けにくいが、重アセトンに含まれる微量の水に分解しながら溶けると考えられる。そのような溶液のH−NMR測定の結果によれば、メタノール及びメトキシ基が観測されなかった。IR測定の結果を図3に示す。図1は原料となる2,2´−ビフェノールのIRスペクトル、図3は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。生成物のIR測定の結果から、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び図1で確認されたフェノール性水酸基のO−Hのピークが消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は上記一般式(XX)及び/又は下記一般式(XXII)で示される構造単位を有する化合物を含有すると推測される。
Figure 2007084814
(合成例3)
500mlのセパラブルフラスコに、2,2´−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)150g(0.804mol)及びトルエン180mlを投入し、約100℃に加熱して溶解させ溶液とした。そのまま約100℃に維持しながら、溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物1g(0.0027mol)を加え、続いてビス(トリエトキシシリル)エタン(アヅマックス株式会社販売試薬)95g(0.268mol)を約30分かけて滴下した。副生成物となるエタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去し、反応系中のトルエン量が少なくなってきたら、更にトルエンを加え共沸混合物として反応系外に除去しながら、約26時間反応を続けた。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃でトルエンを減圧除去し、フッ素樹脂コートした金属製の容器に出し、室温(25℃)まで冷却することで163gの固体の生成物を得た。
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。
本実施例で得られた生成物のH−NMRスペクトルを図4に示す。H−NMR測定の結果から、原料であるビス(トリエトキシシリル)エタンのエトキシ基及び副生成物であるエタノール由来のシグナルが、反応開始時を基準として2.7%であることを確認した。
本実施例で得られた生成物のIRスペクトルを図5に示す。IR測定の結果から、生成物には850〜1000cm−1にSi−OAr基に特徴的な吸収帯が確認された。以上の結果から、生成物は上記一般式(XX)の単位構造を有していると推測される。
(合成例4)
500mlのセパラブルフラスコに、2,2´−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)200g(1.07mol)及びトルエン180mlを投入し、約100℃に加熱して溶解させ溶液とした。そのまま約100℃に維持しながら、溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物1g(0.0027mol)を加え、続いてビス(トリエトキシシリル)エタン(アヅマックス株式会社販売試薬)95g(0.268mol)を約30分かけて滴下した。副生成物となるエタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去し、反応系中のトルエン量が少なくなってきたら、更にトルエンを加え共沸混合物として反応系外に除去しながら、約14時間反応を続けた。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃でトルエンを減圧除去し、フッ素樹脂コートした金属製の容器に出し、室温(25℃)まで冷却することで166gの固体の生成物を得た。
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。
本実施例で得られた生成物のH−NMRスペクトルを図6に示す。H−NMR測定の結果から、原料であるビス(トリエトキシシリル)エタンのエトキシ基及び副生成物であるエタノール由来のシグナルが、生成物には含まれていないことを確認した。
IR測定の結果を図7に示す。IR測定の結果から、生成物には850〜1000cm−1にSi−OAr基に特徴的な吸収帯が確認された。以上の結果から、生成物は上記一般式(XX)の単位構造を有していると推測される。
(合成例5)
500mlのセパラブルフラスコに、2,2´−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)195g(1.05mol)及びトルエン174mlを投入し、約100℃に加熱して溶解させ溶液とした。そのまま約100℃に維持しながら、溶液にビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン(アヅマックス株式会社販売試薬)98g(0.262mol)を約1時間かけて滴下した。副生成物となるエタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去し、反応系中のトルエン量が少なくなってきたら、更にトルエンを加え共沸混合物として反応系外に除去しながら、約33時間反応を続けた。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃でトルエンを減圧除去し、フッ素樹脂コートした金属製の容器に出し、室温(25℃)まで冷却することで218gの固体の生成物を得た。
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。
本実施例で得られた生成物のH−NMRスペクトルを図8に示す。H−NMR測定の結果から、原料であるビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼンのメトキシ基及び副生成物であるメタノール由来のシグナルが、生成物には含まれていないことを確認した。
本実施例で得られた生成物のIRスペクトルを図9に示す。IR測定の結果から、生成物には850〜1000cm−1にSi−OAr基に特徴的な吸収帯が確認された。以上の結果から、生成物は上記一般式(XX)の単位構造を有していると推測される。
合成例1〜5で得られた反応生成物の各種測定の詳細は以下の通りである。
(1)H−NMR
約10mgの化合物を約1mlの重アセトンに溶かして溶液とし、溶液をφ5mmの試料管に入れ、ブルカーバイオスピン社製AV−300Mを用いて測定した。シフト値は溶媒に微量含まれるCHDC(=O)CD(2.04ppm)を基準とした。
(2)IR
Bio−Rad社製FTS 3000MXを用い、KBr法に従って測定した。
〔エポキシ樹脂組成物の作製及び特性評価〕
(実施例1〜5、比較例1〜2)
エポキシ樹脂としては、エポキシ当量168、軟化点68℃のサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名1032H60)、を用意した。
硬化剤としては、先の合成例1で得た生成物(硬化剤1)、合成例2で得た生成物(硬化剤2)、合成例3で得た生成物(硬化剤3)、合成例4で得た生成物(硬化剤4)及び合成例5で得た生成物(硬化剤5)を用意した。また、比較のために、融点108−110℃の2,2´−ビフェノール(硬化剤A:東京化成工業株式会社製試薬)、水酸基当量103、軟化点86℃のサリチルアルデヒド型フェノール樹脂(硬化剤B:明和化成株式会社製商品名MEH−7500)を用意した。
硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤1)を用意した。
無機充填剤としては、平均粒径17.5μm、比表面積3.8m/gの球状溶融シリカを用意した。その他の各種添加剤として、カップリング剤であるエポキシシラン(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、着色剤であるカーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名MA−100)、離型剤であるカルナバワックス(株式会社セラリカNODA製)を用意した。
上述の成分をそれぞれ表1に示す質量部で配合し、混練温度80℃、混練時間15分の条件でロール混練を行うことによって、それぞれ実施例1〜5、比較例1〜2のエポキシ樹脂組成物を得た。
Figure 2007084814
次に、実施例1〜5、及び比較例1〜2によって得たそれぞれのエポキシ樹脂組成物を、以下に示す試験によって評価した。評価結果を表2に示す。なお、エポキシ樹脂組成物の成形は、トランスファー成形機を用い、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で行った。また、後硬化は175℃で6時間行った。
(1)吸水率
エポキシ樹脂組成物を上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、後硬化を行った後に初期質量を測定した。その後、85℃/85%RHの恒温恒湿層に放置し、24、72、168、336、504及び1008時間後に取り出し、質量を測定して増加率を求めて吸水率(%)とした。
Figure 2007084814
本発明によるエポキシ樹脂組成物である実施例1〜5は、いずれも吸水率に優れる。特に、168時間以降の吸水率、すなわち、飽和吸水率に優れる。これに対して、本発明によるエポキシ樹脂組成物ではない比較例1〜2では、飽和吸水率、すなわち、長期にわたる吸水性に劣る。よって、本発明のエポキシ樹脂組成物は、長期にわたり、優れた吸水性を発現させるため、これを光半導体用の中空パッケージに使用すれば優れた耐湿信頼性を発揮するため、工業的に有用である。
本発明による合成例1〜5で使用した2,2´−ビフェノールのIRスペクトルである。 本発明による合成例1の生成物のIRスペクトルである。 本発明による合成例2の生成物のIRスペクトルである。 本発明による合成例3の生成物のH−NMRスペクトルである。 本発明による合成例3の生成物のIRスペクトルである。 本発明による合成例4の生成物のH−NMRスペクトルである。 本発明による合成例4の生成物のIRスペクトルである。 本発明による合成例5の生成物のH−NMRスペクトルである。 本発明による合成例5の生成物のIRスペクトルである。

Claims (13)

  1. エポキシ樹脂組成物の硬化物中に、C−O−Si結合を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
  2. (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、(a-1)下記一般式(I−1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物の中から選ばれる少なくとも一種類の化合物を、(A)及び(B)の少なくとも一方に反応させて得られる化合物を含有する請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
    (化1)
    SiR (4−n) (I−1)
    (式(I−1)中、nは0又は1であり、Rは、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、1以上のRと結合して環状構造を形成してもよく、Rは、フェノール性水酸基と反応可能な官能基を示し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
  3. (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、(a-2)下記一般式(I−5)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物の中から選ばれる少なくとも一種類の化合物を、(A)及び(B)の少なくとも一方に反応させて得られる化合物を含有する請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
    (化2)
    1’(SiR2’ 3’ (3−m) (I−5)
    (式(I−5)中、mは0又は1、nは2以上の整数であり、R1’は炭素数1〜18の置換又は非置換のn価の炭化水素基から選ばれ、R1’と結合する2つ以上のSiR2’ 3’ (3−m)基は全てが同一でも異なっていてもよく、R2’は水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、R1’又はR3’と結合して環状構造を形成してもよく、R3’は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換の一価のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数1から18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のR3’が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
  4. (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、(B)硬化剤はアリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物を含有する請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物が、下記一般式(I−2)で示される構造部位及び下記一般式(I−3)で示される構造部位の少なくとも一方を含む化合物である請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物。
    Figure 2007084814
    (式(I−2)中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す。)
    Figure 2007084814
    (式(I−3)中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示し、nは0以上の数を示す。)
  6. アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物におけるアリールオキシシリル結合の全数を基準として、上記一般式(I−2)及び上記一般式(I−3)の少なくとも一方の構造部位を形成するアリールオキシシリル結合が、30%以上である請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を分子内に2つ以上有する化合物が、
    (a)(a-1)下記一般式(I−1)で示されるシラン化合物、その部分縮合物、(a-2)下記一般式(I−5)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物から選ばれる少なくとも一種と、
    (b)フェノール化合物
    とを反応させて得られる請求項4〜6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
    (化5)
    SiR (4−n) (I−1)
    (式(I−1)中、nは0又は1であり、Rは、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、1以上のRと結合して環状構造を形成してもよく、Rは、フェノール性水酸基と反応可能な官能基を示し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
    (化6)
    1’(SiR2’ 3’ (3−m) (I−5)
    (式(I−5)中、mは0又は1、nは2以上の整数であり、R1’は炭素数1〜18の置換又は非置換のn価の炭化水素基から選ばれ、R1’と結合する2つ以上のSiR2’ 3’ (3−m)基は全てが同一でも異なっていてもよく、R2’は水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、R1’又はR3’と結合して環状構造を形成してもよく、R3’は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換の一価のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数1から18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のR3’が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
  8. (A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤に存在する揮発性成分が、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の全質量を基準として10質量%以下である請求項4〜7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  9. さらに(C)硬化促進剤を含有する請求項2〜8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  10. さらに(D)無機充填剤を含有する請求項2〜9のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  11. 前記(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、及びアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含有する請求項2〜10のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物によって成形されたことを特徴とする半導体素子収納用中空パッケージ。
  13. 請求項12に記載の中空パッケージに収納された半導体素子を備えることを特徴とする電子部品装置。
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