図1は、本発明の第1実施形態である露光装置20の構成を簡略化して示す斜視図であり、図2は、露光装置20を有する画像形成装置21を示すブロック図である。本発明の第1実施形態の露光装置20は、電子写真方式の画像形成装置21の一部を構成する光学装置である。電子写真方式の画像形成装置21として、たとえば複写機、レーザプリンタおよびファクシミリ装置などがある。
図2に示すように、電子写真方式の画像形成装置21は、円筒状に形成されて外周部に感光体が設けられる露光用ドラム22と、露光用ドラム22の外周面を帯電させる帯電装置23と、露光用ドラム22の外周面にレーザ光を照射して露光用ドラム22を露光する露光装置20と、露光用ドラム22にトナーを付着させる現像装置24と、露光用ドラム22に付着したトナーを用紙19に転写する転写装置25と、露光用ドラム22の除電を行う除電装置26と、露光用ドラム22に残留するトナーを除去するクリーニング装置27と、画像を形成すべき用紙を転写装置25および定着装置29に順に搬送する用紙搬送装置28と、用紙に転写されたトナーを定着させる定着装置29とを含んで構成される。
露光用ドラム22は、軸線まわりに回転駆動される。露光用ドラム22は、回転することで、帯電装置23によって外周面が一様に帯電されたあと、露光装置20によって用紙に形成すべき画像に応じた部分に光が照射される。これによって光のあたった部分の表面電荷が消去され、露光用ドラム22の外周面に静電潜像が形成される。次に、露光用ドラム22は、現像装置24によってトナーが外周面に供給され、静電潜像に応じたトナー像が感光体表面に形成される。続いてトナー像は、転写装置25によって露光用ドラム22から用紙に転写される。用紙に転写されたトナー像は、定着装置29によって加熱されて用紙に定着される。これによって用紙に画像が形成される。また露光用ドラム22は、トナー像を用紙に転写したあと、クリーニング装置27による残留トナーの除去、除電装置26による除電が行われ、再び帯電装置23によって帯電される。
図1に示すように、露光装置20は、光源である半導体レーザ30と、ビーム偏向素子31と、光検出素子32と、ポリゴンミラー33と、fθレンズ34と、駆動回路35とを含む。半導体レーザ30は、レーザ光を出射光として出射し、出射するレーザ光40の光量調整が可能に形成される。具体的には、半導体レーザ30に与えられる電流に応じて、出射光の光量が変化する。ポリゴンミラー33は、中心軸線に沿って短筒状に延び、中心軸線に垂直な断面形状が多角形に形成される。ポリゴンミラー33は、多面鏡であって、その外周面は鏡面に形成される。fθレンズ34は、シリンドリカルレンズの1つであって、焦点距離をf、fθレンズ34の光軸に対する入射光の入射角をθとすると、像高hがf・θとなるレンズである。ポリゴンミラー33およびfθレンズ34は、半導体レーザ30から出射したレーザ光40がビーム偏向素子31によって反射したレーザ光42を、露光用ドラム22に導く導光手段となる。
ビーム偏向素子31は、透過状態と反射状態とを交互に切換可能な空間光変調素子(
Special Light Modulator、略称SLM)であって、入力信号に応答して、入射される光を反射方向に反射する反射状態と、入射される光を透過方向に透過させる透過状態とに切換可能に構成される。この場合、ビーム偏向素子31は、反射状態である場合に、入射される光の出射方向を第1方向とする第1状態となり、透過状態である場合に、入射される光の出射方向を第1方向とは異なる第2方向とする第2状態となる。すなわち反射方向が第1方向となり、透過方向が第2方向となる。
本実施の形態では、ビーム偏向素子31は、導波モード共鳴格子型光スイッチによって実現される。導波モード共鳴格子型光スイッチは、たとえば第51回応用物理学講演会(2004年、3月 28a−D11)において、「電気光学効果を用いた導波モード共鳴格子型光スイッチ」として報告されている。光検出素子32は、受光面から受光した光の光量を検出し、検出結果を出力する。本実施の形態では、光検出素子32は、フォトダイオードによって実現される。
ビーム偏向素子31と光検出素子32とは、一体に固定されて1つの変調光学部品36として用いられる。ビーム偏向素子31と光検出素子32とは、たとえば接着剤によって固定される。光検出素子32は、ビーム偏向素子31から反射したレーザ光42の光路を除いた空間に配置され、ビーム偏向素子31を反射したレーザ光42を遮ることがない。また光検出素子32は、ビーム偏向素子31を透過した光を受光して、受光したレーザ光の光量を検出するとともに、ビーム偏向素子31を透過した光を遮る。
露光装置20を構成する各構成部品30〜34は、露光用ドラム22に対する相対位置が予め調整されて、画像形成装置21に装着される。具体的には、半導体レーザ30から出射したレーザ光40がビーム偏向素子31の入射面41に入射するように、半導体レーザ30とビーム偏向素子31との相対位置が調整される。また半導体レーザ30から出射したレーザ光40がビーム偏向素子31で反射した場合、その反射したレーザ光42が、ポリゴンミラー33の外周面43で反射して、反射光44がfθレンズ34を透過して、透過した光45が露光用ドラム22の外周面の一点となる走査位置で集光するように、露光用ドラム22に対して、ビーム偏向素子31、ポリゴンミラー33およびfθレンズ34の相対位置が調整される。以下、ビーム偏向素子31が反射状態であると仮定した場合に、レーザ光が露光用ドラム22上で集光される位置を走査位置と称する。
ポリゴンミラー33が回転することで、ポリゴンミラー33から反射するレーザ光44の進行方向が変化する。これによって露光装置20から露光用ドラム22にレーザ光45が集光される走査位置は、露光用ドラム22の軸線方向に移動する。また等速回転するポリゴンミラー33で反射したレーザ光44がfθレンズ34を透過することによって、走査位置は、一定のビームスポット形状でかつ、一定速度で露光用ドラム22を軸線方向に移動する。またポリゴンミラー33が連続回転してレーザ光44が露光用ドラム22を繰返し移動するとともに、露光用ドラム22が軸線まわりに回転することで、露光用ドラム22のうち潜像形成可能領域の全面が露光可能となる。また半導体レーザ30から出射したレーザ光40がビーム偏向素子31を透過した場合、その透過光は、光検出素子32によって遮られることで、ビーム偏向素子31を透過したレーザ光が露光用ドラム22を露光することが防がれる。
駆動回路35は、半導体レーザ30から出射されるレーザ光40の光量が予め定める量となるように、半導体レーザ30に与える駆動電流を調整する。具体的には駆動回路35は、光検出素子32から与えられる光量検出結果に基づいて、フィードバック制御して、半導体レーザ30に与える電流を補正する。このように駆動回路35は、半導体レーザ1が連続的に一定出力のレーザ光を出力するように、自動出力制御(Automatic Power
Control、略称APC)する光量制御手段となる。露光動作中において、駆動回路35は、半導体レーザ1の発光特性が露光体ドラム22の全域にわたり一定になるように、半導体レーザ30に与える電流量を制御することによって、露光精度を向上することができ、静電潜像を精度よく形成することができる。これによって画像形成装置で形成される画像の品質を向上することができる。
駆動回路35は、CPU(Central Processing Unit)などによって実現される演算部と、RAM(Read Only Memory)などによって実現される記憶部と、入出力部とを含んで構成される。入出力部は、用紙に形成すべき画像を示す画像情報が与えられるとともに、光検出素子32から検出結果が与えられ、それら与えられた情報を演算部に与える。演算部は、入出力部から与えられた情報を基にして、記憶部に記憶される駆動プログラムを実行することによって、半導体レーザ30およびビーム偏向素子31の動作量および動作状態を演算する。入出力部は、演算部の演算結果に応じた動作量または動作状態となるように、半導体レーザ30およびビーム偏向素子31に駆動信号または駆動電力などを与える。
駆動回路35は、ビーム偏向素子31に入力信号を与える。上述したように、駆動回路35が入力信号として反射指令信号をビーム偏向素子31に与えることで、ビーム偏向素子31は、入射光を反射する反射状態となる。また駆動回路35が入力信号として透過指令信号をビーム偏向素子31に与えることで、ビーム偏向素子31は、入射光を透過する透過状態となる。したがって駆動回路35は、露光用ドラム22に形成すべき静電潜像に応じて、ビーム偏向素子31の状態を切換える露光制御手段となる。
具体的には、駆動回路35は、画像情報読取装置となるスキャナおよび画像情報記憶装置となるメモリなどの外部装置から、用紙に形成すべき画像の画像情報が与えられる。駆動回路35は、与えられた画像情報に応じた静電潜像が露光用ドラム22に形成されるように、ビーム偏向素子31の状態を反射状態および透過状態のいずれかに切換える。ビーム偏向素子31を反射状態とすることによって、露光用ドラム22のうち走査位置近傍の部分が露光され、ビーム偏向素子31を透過状態とすることによって、露光用ドラム22のうち走査位置近傍の部分の露光が妨げられる。このようにして駆動回路35がビーム偏向素子31の状態を選択的に交互に切換えることによって、露光用ドラム22の外周面上に、露光部分および非露光部分によって示される静電潜像を形成することができる。
図3は、変調光学部品36を説明するための図である。図3(1)は、駆動回路35から反射指令信号がビーム偏向素子31に与えられた反射状態を示す。図3(2)は、駆動回路35から透過指令信号がビーム偏向素子31に与えられた透過状態を示す。
本実施の形態では、変調光学部品36は、ビーム偏向素子31と、光検出素子32と、ビーム偏向素子31に光検出素子32を固定するホルダ37とを含む。ホルダ37は、接着剤を介して、ビーム偏向素子31と光検出素子32とを一体的に固定する。ビーム偏向素子31は、半導体レーザ30から出射されたレーザ光40が入射する入射面41と、入射面41に対して反対側に形成される出射面46とを有する。光検出素子32は、光を受光する受光面47が形成される。受光面47は、ビーム偏向素子31の出射面46に対向する。本実施の形態では、光検出素子32の受光面47は、ビーム偏向素子31の出射面46に平行に形成される。
図3(1)に示すように、ビーム偏向素子31が反射状態となる場合には、半導体レーザ30から出射されたレーザ光40は、ビーム偏向素子31の入射面41で反射する。反射したレーザ光42は、ポリゴンミラー33に向かって進む。このときビーム偏向素子31を透過して出射面46から出射する光は微量であり、半導体レーザ30から出射されたレーザ光のほとんどの光が、ポリゴンミラー33に向かって進む。本実施の形態では、反射状態では、半導体レーザ30から出射されたレーザ光40のうち、80%がポリゴンミラー33に向かって反射する。
図3(2)に示すように、ビーム偏向素子31が透過状態となる場合には、半導体レーザ30から出射されたレーザ光40は、ビーム偏向素子31の入射面41からビーム偏向素子31に透過する。ビーム偏向素子31を透過したレーザ光48は、出射面46から出射して、光検出素子32の受光面47に入射する。この場合、光検出素子32は、受光面47に入射したレーザ光の光量を検出することができる。本実施の形態では、透過状態では、半導体レーザ30から出射されたレーザ光40のうち、90%が光検出素子32の受光面47に入射する。
反射状態においてビーム偏向素子31から反射する反射レーザ光42の光量と、透過状態においてビーム偏向素子31を透過する透過レーザ光48の光量とは、予め定める関係を有する。たとえば透過状態で透過するレーザ光48の光量Ctを、反射状態で反射するレーザ光42の光量Crで割算した値が規定値α(=Ct/Cr)である場合、反射状態において反射レーザ光42の光量が、予め定める第1設定値A1となるようにするためには、透過状態において透過レーザ光48の光量が、第1設定値A1と前記規定値αとを乗算した値(A1・α)である第2設定値A2になるように半導体レーザ30の光量を調整すればよい。本実施の形態では、前記規定値αは、0.89となる。この時、反射レーザ光42の光量が最大値である80%と設定した場合、第1設定値A1を80、第2設定値A2が、81となるように調整することによって、反射状態の光量を第1設定値A1とすることができる。
図4は、本実施の形態のビーム偏向素子31を示す斜視図である。ビーム偏向素子31は、透光性を有する誘電体基板50と、誘電体基板50の厚み方向一方に積層される電気光学効果および透光性を有する誘電体導波路層51と、誘電体導波路層51の厚み方向一方に設けられる対向くし型透明電極52とを含んで構成される。誘電体導波路層51の厚さ寸法および屈折率は、所定の波長の光が入射したときに共鳴反射が生じるように設定される。くし型透明電極52は、駆動回路35から電圧が印加される。誘電体導波路層51は、くし型透明電極52を介して駆動回路35から電圧が印加されることによって、静電場が形成され、導波路層51の屈折率が変化する。ビーム偏向素子31は、透明電極52が形成される面が入射面41となり、透明電極52が形成される面と反対の面が出射面46となる。本実施の形態では、誘電体基板50は、サファイヤ(AL3O3)基板が用いられる。また誘電体導波路層51は、PLZT(ランタンドープジルコン酸チタン酸鉛)薄膜が用いられる。またくし型透明電極は、ITO(酸化インジウムスズ)が用いられる。
電圧を印加しない状態では、誘電体導波路層51内は通常の薄膜状態であり、入射面41から入射した予め定める波長の光は、理論上ではほぼ100%の透過率となる。また電圧を印加した状態では、誘電体導波路層51の屈折率が変化し、共鳴反射する波長が生成される。これによって予め定める波長の光の一部が、誘電体導波路層51で結合することにより、反射されるようになる。すなわちビーム偏向素子31は、駆動回路35から電圧が印加されると、入射光を反射する反射状態となり、駆動回路35から電圧が印加されないと、入射光を透過する透過状態となる。言い換えると、駆動回路35は、電圧を印加することによってビーム偏向素子31に反射指令信号を与えることができ、電圧の印加を解除することによってビーム偏向素子31に透過指令信号を与えることができる。
図5は、第1実施形態における駆動回路35の制御手順を示すフローチャートである。駆動回路35は、画像形成装置本体に設けられる主制御回路から、露光動作を行うことを示す信号が与えられるとともに、用紙に形成すべき画像を示す画像情報が与えられると、ステップa1に進み、制御動作を開始する。
ステップa1では、駆動回路35は、画像情報に基づいて、ビーム偏向素子31を反射状態とした場合に、露光用ドラム22のうちで、レーザ光が集光される走査位置を露光するかどうかを判断する。駆動回路35は、走査位置を非露光とすべきであると判断すると、ステップa2に進む。ステップa2では、駆動回路35は、ビーム偏向素子31に電圧の印加を解除して透過状態とし、ステップa3に進む。これによってビーム偏向素子31からポリゴンミラー33にレーザ光が進むことが防がれ、走査位置の露光が阻止される。
ステップa3では、駆動回路35は、光検出素子32から与えられる検出結果と、予め設定されるレーザ光の設定光量とを比較する。そして光検出素子32から与えられる検出結果が予め定めるレーザ光の設定光量となるように、半導体レーザ30に与える電流値の補正量を演算し、ステップa4に進む。ステップa4では、ステップa3で演算した補正量を考慮して半導体レーザ30に与える電流値を設定する。そして設定した電流値の電流を半導体レーザ30に流し、ステップa6に進む。
またステップa1において、駆動回路35は、走査位置を露光すべきであると判断すると、ステップa5に進む。ステップa5では、駆動回路35は、半導体レーザ30に流す電流を前回の電流値に維持した状態で、ビーム偏向素子31に電圧を印加して反射状態とし、ステップa6に進む。これによってビーム偏向素子31からポリゴンミラー33にレーザ光が進み、走査位置が露光される。
ステップa6では、駆動回路35は、露光動作が終了したかどうかを判断する。ここで露光動作が終了した状態とは、用紙に形成すべき画像に対応する静電潜像の形成が完了した状態である。駆動回路35は、露光動作が完了していないと判断すると、ステップa1に戻る。またステップa6において、駆動回路35は、露光動作が終了したことを判断すると、ステップa7に進み、駆動回路35による制御動作を終了する。
走査位置を露光する期間が連続して続く場合などには、光検出素子32はレーザ光を受光することができない。本実施の形態では、駆動回路35は、走査位置が非露光領域、たとえば露光用ドラム22の両端のうちのいずれかに達した場合に、形成すべき静電潜像にかかわらずにビーム偏向素子31を透過状態とする。これによって静電潜像に影響を及ぼすことなく、レーザ光の光量を検出することができ、より精度よく自動出力制御を行うことができる。
このように本実施の形態の露光装置20は、走査位置で露光用ドラム22の露光を必要とするときに、ビーム偏向素子31を反射状態として、露光用ドラム22の表面へレーザ光を導くことによって走査位置を露光する。
また走査位置で露光用ドラム22の露光を必要としないときに、ビーム偏向素子31を透過状態として、レーザ光を光検出素子32に導く。これによって、露光用ドラム22の表面へのレーザ光の供給を遮断するとともに、露光を実施しないときの半導体レーザ30の出力である光量を直接測定して、半導体レーザ30から出射されるレーザ光40の光量を所定値に制御することができる。
図6は、露光装置20の各構成部品の状態を模式的に示すタイミングチャートである。図6(1)はビーム偏向素子31の状態を示し、図6(2)は光検出素子32の受光量を示し、図6(3)は半導体レーザ30に供給される供給電流を示し、図6(4)は露光用ドラム22の受光量を示す。
図6(1)に示すように、ビーム偏向素子31の反射状態と透過状態との切換タイミングは、露光用ドラム22に形成すべき静電潜像によって決定される。露光部分を走査する場合には反射状態となり、非露光部分を走査する場合には透過状態となる。図6(2)に示すように、光検出素子32は、ビーム偏向素子31が透過状態となった場合に、レーザ光を受光してその光量を検出し、検出結果を駆動回路35に与える。言い換えると、ビーム偏向素子31が反射状態となった場合には、光検出素子32は、レーザ光をほとんど受光せず、半導体レーザ30から出射されるレーザ光の光量にかかわらず受光量がゼロまたはほぼゼロの一定値となる。
図6(3)に示すように、駆動回路35は、光検出素子32からレーザ光の光量を示す検出結果が与えられている間、すなわちビーム偏向素子31が透過状態となっている間、光検出素子32から与えられる検出結果に基づいて、光検出素子32が受光するレーザ光の光量が予め定める値となるように、半導体レーザ30をフィードバック制御し、半導体レーザ30に与える電流値を調整する。具体的には、光検出素子32で受光するレーザ光の光量が、前記第2設定値A2となるようにする。たとえばレーザ光を連続出射する場合、時間が経過するとともに、半導体レーザが自己発熱するので、駆動回路35は、光検出素子32が受光する受光量を第2設定値A2に維持するために、半導体レーザ30に流す電流の電流値を時間経過とともに減少させる。
また駆動回路35は、光検出素子32からレーザ光の光量を示す検出結果が与えられていない間、すなわちビーム偏向素子31が反射状態となっている間、ビーム偏向素子31が反射状態に切換る直前に設定される電流値を半導体レーザ30に与え続ける。これによってビーム偏向素子31が反射状態となっている間に、露光用ドラム22の受光量を前記第1設定値A1に対して同じまたはほぼ同じ値にすることができる。これによって露光用ドラム22に入射するレーザ光の光量を予め定める第1設定値A1の近傍範囲に維持することができ、要求される露光精度を保つことができる。
また本実施の形態では、露光時において、半導体レーザ30から出射されたレーザ光が、ビーム偏向素子31によって反射されてポリゴンミラー33に導かれる。これによって露光時においては、半導体レーザ30から出射された光のほぼ全部を露光用ドラム22に入射させることができ、光の利用効率を向上することができる。たとえば光量が第1設定値A1のレーザ光を露光用ドラム22に導く場合、ハーフミラーを用いる場合に比べて、半導体レーザ30から出射するレーザ光の光量を低減することができる。この場合、露光装置20の消費電力を低減することができるとともに、出射光量の低い半導体レーザ30を露光装置20の光源として用いることができ、製造コストを低減することができる。
また本実施の形態では、露光工程において、走査位置を非露光とする場合に生じる不要光を、自動出力制御に利用する。これによって実際に露光用ドラム22に与えられるレーザ光の光量と対応した光量値に基づいて、自動出力制御を行うことができ、正確な光量制御が可能となり、露光精度を向上することができる。また走査位置を露光しない場合にいつも、光検出素子32が検出結果を駆動回路35に与えることによって、半導体レーザ30を頻繁に自動出力制御することができ、走査中の出力変動に対応することができ、露光用ドラム22の走査位置に入射するレーザ光の光量を、精度よく設定値A1に近づけることができる。特に、文字画像を用紙に形成する場合など、露光部分と非露光部分とが頻繁に切換る静電潜像を形成する場合に、より好適に自動出力制御することができる。また走査位置が非露光領域に達した場合に、駆動回路35がビーム偏向素子31を透過状態とすることによって、静電潜像形成可能領域について走査位置を露光する期間が連続して続く場合であっても、精度よく自動出力動作を行うことができる。
また本実施の形態では、ビーム偏向素子31と光検出素子32とが一体に設けられた変調光学部品36が露光装置20に用いられる。これによって変調光学部品36を露光装置20に搭載するだけでよく、ビーム偏向素子31に対する光検出素子32の位置調整を行う必要がなく、露光装置の製造工程を簡単化することができる。具体的には、ビーム偏向素子31と光検出素子32とを露光装置本体に別々に取り付ける場合に比べて、一度の取付作業でビーム偏向素子31と光検出素子32とを露光装置本体に取り付けることができ、取付作業および位置調整作業を簡単化するとともに、露光装置20に組み込まれる部品点数を削減することができる。またビーム偏向素子31から光検出素子32にレーザ光を導く光路を極めて短くすることができ、露光装置を小形化することができる。
また本実施の形態では、透過状態と反射状態とを切換可能なビーム偏向素子31を用いる。従来の露光装置に用いられるハーフミラーに代えて、ビーム偏向素子31に変えることで、露光装置20の他の構成、および光学系を大きく変更する必要がなく、本実施の形態の露光装置20を容易に実現することができる。また反射状態と透過状態とで、ビーム偏向素子31に入射した光の出射方向が大きく異なるので、反射方向に進むレーザ光の光路を疎外することなく、透過方向に進むレーザ光を受光する位置に光検出素子32を設けやすい。これによってビーム偏向素子31と光検出素子32とを一体に形成することが容易となる。
また本実施の形態では、ビーム偏向素子31を透過したレーザ光を光検出素子32が受光する。これによってビーム偏向素子31が透過状態にある場合に、ビーム偏向素子31に入射するレーザ光の入射方向にかかわらずに、光検出素子32に光を導くことができ、ビーム偏向素子31に対する光検出素子32の許容取付誤差を大きくすることができ、ビーム偏向素子31と光検出素子32との一体化を容易に実現できる。また本実施の形態では、透過状態においてビーム偏向素子31の透過率に比べて、反射状態においてビーム偏向素子31の反射率のほうが大きい。このような場合に、ビーム偏向素子31を反射した光がポリゴンミラー33に進むようにし、ビーム偏向素子31を透過した光が光検出素子32に進むようにすることで、光利用効率をさらに高くすることができる。このようにビーム偏向素子31のうち反射状態における反射光と、透過状態における透過光とを比較して大きいほうを露光用レーザ光として用いることが好ましい。
また本実施形態では、ビーム偏向素子31として導波モード共鳴格子型光スイッチを用いることで、入力信号に対する応答性を速くすることができる。これによって透過状態と反射状態とを極めて短時間で切換えることができる。したがって走査位置の移動に応じて露光用ドラム22の露光状態を高速で動作させることができ、画像形成装置21によって用紙に形成される画像の解像度を向上することができる。
また本実施の形態では、ビーム偏向素子31の状態を切換えることによって、静電潜像を形成する。これによって半導体レーザ30の出射および非出射状態を切換えて、静電潜像を形成する場合に比べて、露光用ドラム22に露光される露光光量のバラツキを少なくすることができ、露光品質を向上することができる。
また本実施の形態では、ビーム偏向素子31の反射光をポリゴンミラー33に導き、透過光を光検出素子32に導くとしたが、ビーム偏向素子31の反射光を光検出素子32に導き、透過光をポリゴンミラー33に導くようにしてもよい。また本実施の形態では、露光装置20の光学系を構成する部品として、ポリゴンミラー33、fθレンズ34などを示したが、これに限定されない。直接または間接的に半導体レーザ30からの出射光が、ビーム偏向素子31に達し、ビーム偏向素子31で第1方向に偏向された光が直接または間接的に対象物に入射すればよい。また駆動回路35が、半導体レーザ30のオンオフ状態、すなわちレーザ光出射状態およびレーザ光非出射状態を切換える場合にも、適用することができる。また本実施の形態では、光検出素子32は、光の光量を駆動回路35に与えたが、光量以外の光の情報、たとえば受光した光の波長、エネルギーなどを駆動回路35に与えてもよい。また本実施の形態では、駆動回路35は、駆動回路35は、光検出素子32から与えられた情報に基づいて、半導体レーザ30以外の他の制御対象を制御してもよい。
図7は、本発明の第2実施形態の露光装置に用いられる変調光学部品60を説明するための図である。図7(1)は、変調光学部品60のビーム偏向素子31が反射状態となる場合を示し、図7(2)変調光学部品60のビーム偏向素子31が透過状態となる場合を示す。図7(3)は、第1実施形態の変調光学部品36のビーム偏向素子31が透過状態となる場合を示す。
第2実施形態では、第1実施形態に比べて変調光学部品の構造が異なる。したがって変調光学部品以外の構成については、説明を省略するとともに第1実施形態と同様の参照符号を付する。第2実施形態の変調光学部品60は、ビーム偏向素子31の入射面41と、光検出素子32の受光面47とが傾斜した状態で、ビーム偏向素子31と光検出素子32とが一体に固定される。
図7(2)に示すように、ビーム偏向素子31を透過したレーザ光は、光検出素子32の受光面47に入射し、入射したレーザ光の一部が受光面47から反射する。本実施の形態では、入射面41と受光面47とが傾斜しているので、受光面47で反射したレーザ光49は、入射面41で反射したレーザ光42と進行方向が異なる。これに対して、図7(3)に示すように、第1実施形態では、入射面41と受光面47とが平行であるので、受光面47で反射したレーザ光49は、入射面41で反射したレーザ光42と進行方向が同じとなる。
以上のように第2実施形態では、受光面47で反射したレーザ光49は、入射面41で反射したレーザ光42との進行方向を異ならせることによって、受光面47で反射したレーザ光49がポリゴンミラー33に向かって進むことを防ぐことができる。これによって走査位置を非露光状態とする場合に、受光面47で反射したレーザ光49が迷光として露光用ドラム22に達することを防ぐことができ、非露光時におけるノイズ成分を除去して、静電潜像のコントラストを明確化することができる。
本実施の形態では、ビーム偏向素子31の入射面41に対する半導体レーザ30から出射されたレーザ光40の入射角度が予め定める第1角度θ1に設定され、第1角度θ1は、90度未満に設定される。この場合、ビーム偏向素子31の入射面41と光検出素子32の受光面47との成す角度θ2は、第1角度θ1以上に設定される。これによって光検出素子32の受光面47で反射したレーザ光49は、ビーム偏向素子31の入射面41で反射したレーザ光32に比べて、ビーム偏向素子31を挟んで反対側に進ませることができる。これによって走査位置を非露光とする場合に、光検出素子32の受光面を反射した迷光49がポリゴンミラー33に達することをより確実に防ぐことができる。またビーム偏向素子31の出射面41に反射防止膜を形成してもよい。これによっても、不所望な光が露光用ドラム22に進むことを防ぐことができる。反射防止膜は、ビーム偏向素子31の入射面41から出射面46に進む光を透過し、光検出素子47の受光面47からビーム偏向素子31の出射面46に進む光を反射する。
図8は、本発明の第3実施形態の露光装置に用いられるビーム偏向素子61を示す断面図である。本発明の第3実施形態では、第1実施形態に比べてビーム偏向素子の構造が異なる。したがってビーム偏向素子以外の構成については、説明を省略する。第3実施形態のビーム偏向素子61は、調光ミラー(Switch able Mirror)素子によって実現される。このビーム偏向素子61は、第1実施形態と同様に、入力信号に応答して、入射される光を反射する反射状態と、入射される光を透過させる透過状態とに切換可能に構成される。調光ミラー素子は、触媒層を設けた希土類金属薄膜、マグネシウム・ニッケル合金薄膜などが、電気信号、温度または雰囲気ガスによって、反射状態と透過状態とが切換る性質を利用した素子である。
本実施の形態のビーム偏向素子61は、離間して互いに対向して平行に延びる2つの透光性基板68,69と、2つの透光性基板68,69の間に密閉空間を形成するシール部材70と、密閉空間に充填される電解液71とを含んで構成される。
2つの透光性基板68,69のうち、一方の透光性基板68は、透光性を有する基板本体62と、基板本体62の表面に設けられて他方の透光性基板69に対向する透明電極63とを含んで構成される。基板本体62はたとえばガラス基板によって実現される。また透明電極63は、ITOによって実現される。
他方の透光性基板68は、透光性を有する基板本体64と、基板本体64の表面に設けられて一方の透光性基板に対向する透明電極65と、透明電極65の表面であって基板本体64と反対側の表面に設けられるマグネシウム・ニッケル合金薄膜66と、マグネシウム・ニッケル合金薄膜66の表面であって透明電極65と反対側の表面に設けられるパラジウム薄膜67とを含んで構成される。基板本体62はたとえばガラス基板によって実現される。また透明電極63は、ITOによって実現される。
シール部材70は、2つの透光性基板68,69と、シール部材70とによって密閉される密封空間を形成する。この密封空間に電解液71が充填される。一方の透光性基板68の透明電極65と、他方の透光性基板69のパラジウム薄膜67とが電解液71に面する。電解液は、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液である。
2つの透明電極63,66の間に電圧を印加することによって、ビーム偏向素子61の透過率を高くすることができ、電圧の印加を解除することによって、ビーム偏向素子61の透過率を低下、すなわち反射率を高くすることができる。このような調光ミラー素子は、たとえば産業技術総合研究所(独立行政法人)などで開発されている。
第1実施形態と同様に、第3実施形態のビーム偏向素子61は、駆動回路35から透明電極63,66間に印加される電圧の有無が調整されることによって、反射状態および透過状態が交互に選択的に切換る。このようなビーム偏向素子61を露光装置20に用いた場合であっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また調光ミラー素子は、3次元の構造が一切必要なく、成膜工程のみで基本動作を行わせることができるので、ビーム偏向素子61として用いることで、極めて安価に変調光学部品を実現することができる。また図8には、ビーム偏向素子61しか示していないが、光検出素子32がビーム偏向素子61に一体化して設けられることは言うまでもない。また第2実施形態に示すように、第3実施形態においても、光検出素子32の受光面と、ビーム偏向素子61の入射面とが傾斜するほうが好ましい。
また第1実施形態で示した導波モード共鳴格子型光スイッチ、第3実施形態で示した調光ミラー素子のほか、入力信号に応答して、入射される光を反射する反射状態と、入射される光を透過させる透過状態とに切換可能な素子であれば、本実施の形態の露光装置に用いられるビーム偏向素子として好適に用いることができる。
図9は、本発明の第4実施形態の露光装置18の一部を示すブロック図である。図9(1)は、露光用ドラム22を部分的に露光とする場合を示し、図9(2)は、露光用ドラム22を部分的に非露光とする場合を示す。
上述した第1〜第3実施形態では、反射状態と透過状態とを切換可能なビーム偏向素子が露光装置に用いられる。これに対して、本発明の第4実施形態では、入力信号に応答して、入射される光を第1方向に反射する第1反射状態と、入射される光を第1方向と異なる第2方向に反射する第2反射状態とに切換可能であるビーム偏向素子72が露光装置に用いられる。第4実施形態では、第1実施形態に比べてビーム偏向素子の構造が異なり、その他の構成については第1実施形態と同様である。したがってビーム偏向素子以外の構成については、説明を省略し、第1実施形態と同様の参照符号を付する。
第4実施形態では、ビーム偏向素子72は、DMD(Digital Micro mirror Device)素子によって実現される。ビーム偏向素子72は、入力信号に応じて反射面の角度が変化する多数のマイクロミラー73が半導体基板74上に2次元的に配列されるミラーデバイスである。マイクロミラー73ごとに設けられるメモリセルに蓄えた電荷によって静電気力で、マイクロミラー73の反射面の角度を変化させるように構成される。
第4実施形態のビーム偏向素子72は、駆動回路35から与えられる入力信号に応答して、マイクロミラー73の反射面の角度を変化させる。これによって駆動回路35から与えられる入力信号に応答して、入射される光の出射方向を、第1方向とする第1状態と、第1方向とは異なる第2方向とする第2状態とに切換える。
露光装置18は、ポリゴンミラー33がビーム偏向素子72に対して第1方向に配置される。また光検出素子32がビーム偏向素子72に対して第2方向に配置される。これによって図9(1)に示すように、ビーム偏向素子72が第1状態となると、半導体レーザ30から出射したレーザ光40は、ビーム偏向素子72で第1方向に反射して、その反射光42がポリゴンミラー33に導かれる。また図9(2)に示すように、ビーム偏向素子72が第2状態となると、半導体レーザ30から出射したレーザ光40は、ビーム偏向素子72で第2方向に反射して、その反射光148が光検出素子32に導かれる。
露光装置18は、走査位置で露光用ドラム22の露光を必要とするときに、駆動回路35によってビーム偏向素子72を第1状態とする。これによって半導体レーザ30から出射されるレーザ光を、露光用ドラム22へ導き、走査位置を露光する。また走査位置で露光用ドラム22の露光を必要としないときに、駆動回路35によってビーム偏向素子72を第2状態とする。これによって半導体レーザ30から出射されるレーザ光を、光検出素子32に導く。そして露光用ドラム22の表面へのレーザ光の供給を遮断するとともに、露光を実施しないときの半導体レーザ30の出力である光量を直接測定して、半導体レーザ30から出射されるレーザ光40の光量を所定値に制御することができる。
このように本発明では、第1〜第3実施形態に示すように、反射状態および透過状態を交互に選択的に切換えるビーム偏向素子のほか、第4実施形態に示すように第1反射状態と、第1反射状態と異なる第2反射状態とを交互に選択的に切換えるビーム偏向素子72を用いても、第1〜第3実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち露光装置18の光の利用効率を向上するという効果を達成することができる。
また第4実施形態では、第1反射方向に進むレーザ光の光量と、第2反射方向に進むレーザ光の光量とが同じになる。したがって光検出素子32には、ポリゴンミラー33に導かれるレーザ光の光量と等しいレーザ光を受光することになる。これによって、より精度の高い光量制御を可能とすることができる。またビーム偏向素子72と、光検出素子32とは一体に形成されてもよいが、別々に形成されてもよい。
またビーム偏向素子は、DMDのほか、マイクロサイズのアクチュエータと制御回路を集積化した微細システム技術を利用したMEMS(Micro Electro Mechanical System)タイプの空間光変調素子、たとえばグレーティングを一方向に複数配列して構成される反射回折格子型のGLV(Grating Light Valve)素子を用いてもよい。またこのようなMEMSタイプの空間光変調素子をビーム偏向素子72として用いることで、第1反射状態と第2反射状態とを極めて短時間で切換えることができる。これによって走査位置の移動に応じて露光用ドラム22の露光状態を高速で動作させることができ、画像形成装置21によって用紙に形成される画像の解像度を向上することができる。
図10は、本発明の第5実施形態の露光装置17を簡略化して示す斜視図である。第5実施形態の露光装置17は、マルチビーム式走査光学系を有し、多重露光、すなわち露光用ドラム22を複数の走査位置で同時に露光する。第5実施形態において第1実施形態と対応する構成については、同一の参照符号を付して説明を省略する。露光装置17は、半導体レーザ30と、光線分割素子80と、複数のビーム偏向素子31a,31b,31cと、光検出素子32と、ポリゴンミラー33と、fθレンズ34と、駆動回路35とを含む。
光線分割素子80は、半導体レーザ30から出射したレーザ光40が入射し、入射したレーザ光を複数に分割する。これによって光線分割素子80からは、出射方向が異なる複数のレーザ光82a,82b,82cが出射する。光線分割素子80は、たとえば回折格子が用いられる。本実施の形態では、光線分割素子80は、入射したレーザ光40を出射方向がそれぞれ異なる3のレーザ光82a〜82cとして出射する。
複数のビーム偏向素子31a〜31cは、光線分割素子80によって分割される光の数と同数設けられ、予め定める方向に複数並んで、アレイ状に配置される。各ビーム偏向素子31a〜31cは、入力信号に応答して、反射状態および透過状態が交互に選択可能に構成され、本実施の形態ではアレイ化された導波モード共鳴格子型光スイッチによって実現される。また各ビーム偏向素子31a〜31cは、それぞれ個別に状態を変更可能に構成される。
また光検出素子32は、複数のビーム偏向素子31a〜31cを透過した光を全て受光可能に構成される。本実施の形態では、複数のビーム偏向素子31a〜31cと、光検出素子32は、第1または第2実施形態と同様に一体的に固定されて、アレイ式変調光学部品81となる。
光線分割素子80によって分割されたレーザ光82a〜82cは、対応するビーム偏向素子31a〜31cにそれぞれ個別に入射する。各ビーム偏向素子31a〜31cが反射状態である場合、各ビーム偏向素子31a〜31cに入射したレーザ光は、対応する各ビーム偏向素子31a〜31cで反射して、ポリゴンミラー33およびfθレンズ34を介してそれぞれ個別に露光用ドラム22に導かれる。
またポリゴンミラー33の回転動作によって、レーザ光の走査位置は、露光用ドラム22の長手方向一方から他方へと繰返し移動する。また露光用ドラム22が軸線まわりに回転することで、レーザ光が露光用ドラム22を走査する走査位置は、未走査の領域となるように設定されている。この動作を連続することによって、露光用ドラム22の全域の走査が実現される。本実施の形態では、分割されたレーザ光の各走査位置は、露光用ドラム22の周方向にそれぞれ並ぶ。
またビーム偏向素子31a〜31cが透過状態である場合、各ビーム偏向素子31a〜31cに入射したレーザ光は、ビーム偏向素子31a〜31cを透過して光検出素子32の受光面に入射する。この場合、レーザ光が露光用ドラム22に達することが防がれる。本実施の形態では、各ビーム偏向素子31a〜31cの状態を個別に制御することができるので、光分割素子80によって分割されたレーザ光82a〜82cのうち任意のレーザ光が露光用ドラム22に達することを防ぐことができる。
また駆動回路35は、外部装置から与えられた画像情報に応じた静電潜像が露光用ドラム22に形成されるように、各ビーム偏向素子31の状態を個別に切換える。複数のビーム偏向素子31a〜31cのうちで、露光すべき走査位置に対応するビーム偏向素子31を反射状態とすることによって、露光用ドラム22が部分的に露光され、複数のビーム偏向素子31a〜31cのうちで、非露光とする走査位置に対応するビーム偏向素子31を透過状態とすることによって、露光用ドラム22の露光が部分的に妨げられる。
このようにして駆動回路35が複数のビーム偏向素子31の状態を個別に切換えることによって、露光用ドラム22の外周面上に、静電潜像を形成することができる。本実施の形態では、露光用ドラム22に同時に複数のレーザ光を導くことを可能とすることで、一度に露光可能な面積を増やすことができ、静電潜像を形成する時間を短縮することができる。これによって最終的に用紙に画像を形成するまでの時間を短縮することができる。
また駆動回路35は、複数のビーム偏向素子31a〜31cのうちで、透過状態および反射状態を切換える動作タイミングと、光検出素子32が受光した光量とに基づくことによって、半導体レーザ30の自動出力制御を行う。この場合、複数のビーム偏向素子31a〜31cのうち、少なくとも1つのビーム偏向素子31a〜31cが透過状態となることで、露光時であってもリアルタイムに半導体レーザ30から出射されるレーザ光の光量を予め定める設定値に維持することができる。
図11は、理想的な場合における動作タイミングと光検出素子32の受光量との関係を示すタイミングチャートである。理想的な場合として、以下の条件とする。半導体レーザ30から出射されるレーザ光の光量が一定であり、光線分割素子80によって分割された分割光は、分割前の光に比べてその光量が等分される。また各ビーム偏向素子31a〜31cの透過状態における透過率が100%で、反射状態における透過率が0%とする。
図11に示すように、3つのビーム偏向素子31a〜31cが設けられる場合、3つのビーム偏向素子31a〜31cのうち、少なくとも1つのビーム偏向素子31が透過状態となる期間T2,T3,T6の光検出素子32の受光量Ppは、半導体レーザ30から出射されるレーザ光の光量Plの1/3となる。また3つのビーム偏向素子31a〜31cのうち、2つのビーム偏向素子31が透過状態となる期間T4の光検出素子32の受光量Ppは、半導体レーザ30から出射されるレーザ光の光量Plの2/3となる。3つのビーム偏向素子31a〜31cのうち、3つのビーム偏向素子31が透過状態となる期間T1,T5の光検出素子32の受光量Ppは、半導体レーザ30から出射されるレーザ光の光量Plの3/3(=1)となる。このように光検出素子32は、全てのビーム偏向素子31a〜31cを透過したレーザ光の光量の合計値を検出する。
したがって理想的な場合には、ビーム偏向素子31が設けられる数をnとし、透過状態となるビーム偏向素子31の数をmとし、このときの光検出素子32の受光量をPpとすると、半導体レーザ30から出射されるレーザ光の光量Plは、(Pp/m)・nとなる。このようにして、駆動回路35は、動作タイミングと、光検出素子32が受光した光量とに基づいて、半導体レーザ30から出射されるレーザ光の光量Plが求められると、レーザ光量Plが予め定める光量となるように、半導体レーザ30の自動出力制御を行う。実際には、光線分割素子80による分割強度が不均一であり、透過率が100%とならないので、レーザ光の光量plは、理想的な導出式(Pp/m)・nを補正した導出式を用いて、半導体レーザ30から出射されるレーザ光の光量を求めることができる。
図12は、第5実施形態における駆動回路35の制御手順を示すフローチャートである。駆動回路35は、画像形成装置本体に設けられる主制御回路から、露光動作を行うことを示す信号が与えられるとともに、用紙に形成すべき画像を示す画像情報が与えられると、ステップb1に進み、制御動作を開始する。
ステップb1では、駆動回路35は、画像情報に基づいて、すべてのビーム偏向素子31を反射状態とするかどうかを判断する。駆動回路35は、少なくとも1つのビーム偏向素子31を透過状態とする事を判断すると、ステップb2に進む。ステップb2では、各ビーム偏向素子31a〜31cの状態を画像情報に基づいて切換え、ステップb3に進む。ステップb3では、透過状態に切換えたビーム偏向素子31の数と、光検出素子32の検出結果に基づいて、上述したように半導体レーザ30から出射されるレーザ光の光量を演算し、ステップb4に進む。
ステップb4では、駆動回路35は、ステップb3で演算した演算結果と、予め設定されるレーザ光の光量値とを比較する。そして半導体レーザ30から出射されるレーザ光の光量が予め定めるレーザ光の光量値となるように、半導体レーザ30に与える電流値の補正量を演算し、ステップb5に進む。ステップb5では、ステップb4で演算した補正量を考慮して半導体レーザ30に与える電流値を設定し、設定した電流値を半導体レーザ30に与え、ステップb7に進む。
またステップb1において、駆動回路35は、全てのビーム偏向素子31を反射状態とすべきであると判断すると、ステップb6に進む。ステップb6では、半導体レーザ30に与える電流を前回の値に維持した状態で、各ビーム偏向素子31a〜31cの状態を画像情報に基づいて切換え、ステップb7に進む。
ステップb7では、駆動回路35は、露光動作が終了したかどうかを判断する。ここで露光動作が終了した状態とは、用紙に形成すべき画像に対応する静電潜像の形成が完了した状態である。駆動回路35は、露光動作が完了していないと判断すると、ステップb1に戻る。またステップb7において、駆動回路35は、露光動作が終了したことを判断すると、ステップb8に進み、駆動回路35による制御動作を終了する。
全てのレーザ光によって走査位置を露光する期間が連続して続く場合などには、光検出素子32はレーザ光を受光することができない。本実施の形態では、駆動回路35は、全てのレーザ光のうち少なくともいずれか1つが、走査位置が非露光領域、たとえば露光用ドラム22の両端のうちのいずれかに達した場合に、形成すべき静電潜像にかかわらずにビーム偏向素子31を透過状態とする。これによって静電潜像に影響を及ぼすことなく、レーザ光の光量を検出することができ、より精度よく自動出力制御を行うことができる。
第5実施形態では、少なくとも1つのビーム偏向素子31が透過状態となることで、走査中の出力変動に、より確実に対応することができ、露光時であってもリアルタイムに半導体レーザ30から出射されるレーザ光の光量を予め定める設定値に維持することができ、露光用ドラム22に入射するレーザ光の光量を一定値に保つことができる。また複数に分割されたレーザ光の光量の合計値を測定することによって、光検出素子32の受光する光量については、正規化がなされることとなり、光線分割素子80とビーム偏向素子31によって生じる光学的誤差要因が生じたとしても、精度の高い光量検出を行うことができる。これによってマルチビーム式露光装置17における露光品質、ひいては画像形成装置における画像形成品質を向上することができる。
また第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、光利用効率を低下することがなく、半導体レーザ30から出射するレーザ光の出力を直接測定して自動出力制御することが可能となる。また複数のビーム偏向素子31a〜31cと、光検出素子32とが一体でコンパクトな自動出力制御装置が可能となる。
また本実施の形態では、光線分割素子80によって半導体レーザ30から出射したレーザ光を分割して、分割されたレーザ光ごとに、ビーム偏向素子31によってポリゴンミラー33に導くことを選択する。これによって1つの半導体レーザ30で多重露光を実現することができる。また半導体レーザ30から出射するレーザ光を分割することによって分割された各レーザ光は、それぞれ光量が低い。本実施の形態では、ビーム偏向素子31を用いることで、光の利用効率の低下を防ぎ、分割されたレーザ光の光量の低下を防いで、良好に多重露光を行うことができる。また各ビーム偏向素子31の状態を形成すべき静電潜像に応じて、それぞれ切換えることによって、静電潜像を形成する。これによって半導体レーザ30の出射および非出射状態を切換えて、静電潜像を形成する場合に比べて、露光用ドラム22に露光される露光光量のバラツキが少なく、露光品質を向上することができる。
また本実施の形態では、変調光学部品81の一部に、アレイ化された導波モード共鳴格子型光スイッチを用いたが、他の実施形態として第4実施形態で示すDMD素子を用いることができる。DMD素子は、多数のマイクロミラー73を有するので、特別な構成にする必要がなく、光線分割素子80によって分割された複数のレーザ光を選択可能にポリゴンミラー33に導くことができる。
図13は、本発明の第6実施形態の露光装置16を簡略化して示す斜視図である。第6実施形態の露光装置16は、第5実施形態と類似した構成を有し、光検出素子32の構成が異なる。したがって第5実施形態の露光装置16と同様の構成については、説明を省略し、同様の参照符号を付する。
光検出素子32a,32b,32cは、各ビーム偏向素子31a〜31cに対応して複数設けられる。各光検出素子32a〜32cは、対応するビーム偏向素子31a〜31cを透過したレーザ光のみをそれぞれ受光する。したがってアレイ式変調光学部品81は、複数のビーム偏向素子31a〜31cと、複数の光検出素子32a〜32cとを含んで構成され、各ビーム偏向素子31a〜31cがアレイ状に並ぶとともに、各光検出素子32a〜32cがアレイ状に並ぶ。各ビーム偏向素子31a〜31cと、各光検出素子32a〜32cは、一体に形成される。このように複数の光検出素子32a〜32cが設けられる場合であっても、第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
またビーム偏向素子31a〜31cごとに、各光検出素子32a〜32cが設けられることで、光線分割素子80によって分割されたレーザ光ごとの光量をそれぞれ個別に求めることができる。この場合、分光されたレーザ光ごとの分光特性の情報に基づくことによって、複数のうちの1つの光検出素子32a〜32cであっても、図5に示す制御手順と同様にして、半導体レーザ30から出射する光量を演算することができる。また複数の光検出素子32a〜32cの検出結果によってそれぞれ求められる、半導体レーザ30から出射する光量を平均化することによって、さらに精度よく半導体レーザ30の出射光量を求めることができる。
また光線分割素子80による分光特性が把握できれば、複数の光検出素子32a〜32cのうちのいずれか1つで、半導体レーザ30からの出射するレーザ光の出射光量を求めることができるので、動作タイミングを必要とすることがなく、半導体レーザ30の導出計算を簡単化することができる。また複数のうちの1つの光検出素子が不良または故障した場合であっても、半導体レーザ30から出射するレーザ光の光量を求めることができる。さらにレーザ光を分割したことに起因して生じる誤差を校正する必要がなく、組立工程の簡略化を図ることができる。
また動作タイミングに基づくことによって、各ビーム偏向素子31a〜31cの故障による動作不良を検出することが可能となる。たとえばビーム偏向素子31を透過状態とした場合に、対応する光検出素子32が受光するレーザ光の受光量が予め定める第1しきい値以下であると、対応するビーム偏向素子31の不良または故障を判断することができる。同様に、ビーム偏向素子31を反射状態とした場合に、対応する光検出素子32が受光するレーザ光の受光量が予め定める第2しきい値以上であると、対応するビーム偏向素子31の不良または故障を判断することができる。
第5実施形態および第6実施形態は、マルチビーム式の露光装置の一例であって、本発明はこれに限定されない。たとえば光線分割素子80によって分割されるレーザ光の数は、3本に限られず、2本以上であれば全ての場合で同様の効果を得ることができる。また第5実施形態および第6実施形態では、複数のレーザ光によって生じる各走査位置は、露光用ドラムの周方向に並ぶとしたが、各走査位置は軸線方向に並べてもよく、その他の方向に並べてもよい。また光線分割素子80で分割せずに、半導体レーザ30が複数設けられる場合も、本発明の実施の形態に含まれる。
また以上のような各実施形態は、本発明の例示に過ぎず発明の範囲内において構成を変更することができる。たとえば上述したビーム偏向素子は、一例であって、入力信号に応答して光の進行方向を切換可能であれば、他のビーム偏向素子を適用可能である。またビーム偏向素子を含む変調光学部品が搭載される光学装置として、露光装置を示したが、露光装置以外の光学装置に適用することも可能である。