JP2007055841A - 酸化物焼結体及びその製造方法、酸化物焼結体を用いて得られる非晶質酸化物膜、並びにその非晶質酸化物膜を含む積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸化物焼結体は、主にインジウム、シリコンを含む酸化物からなり、インジウムに対するシリコンの原子比率が0.65〜1.75であり、かつスパッタリングターゲットとして用いた場合に直流スパッタリング法で成膜することが可能に構成されている。また、酸化物焼結体は、二酸化シリコンを含まず、さらに、トルトバイタイト型構造を有する珪酸インジウム化合物の結晶相を主相として構成されている。
【選択図】 なし
Description
ここで言う直流スパッタリング法の中には、ターゲットに印加する負電圧を周期的に停止し、その間に低い正電圧を印加して正のチャージングを電子により中和するスパッタリング方法(直流パルシング法)も含まれる。酸素の反応性ガスを用いた反応性スパッタリングにおける絶縁膜(酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化チタンなど)のアーキングを抑制しながら成膜することが可能であり、高周波スパッタリング法のようにインピーダンス整合回路を制御する必要がなく、成膜速度が高周波スパッタリング法よりも速いなどの利点がある。
また、特許文献1では、Nbの酸化物に酸素欠損を形成すると導電性が得られることが述べられているが、本来、Nbは酸化され易い。このため、特許文献1に記載の酸化物膜の形成方法では、成膜工程を繰り返しているうちにターゲット表面が酸化されて導電性が著しく低下し、安定放電が不可能になってしまう、という問題があった。
実施例1〜3
インジウムに対するシリコンの原子比率が1.00となるよう、平均粒径1μm以下のIn2O3粉末、および平均粒径5μm以下のSi粉末を配合し、続いて三次元混合機にて攪拌し原料粉末とした。得られた混合粉末をカーボン製容器中に給粉し、各実施例において温度条件を異ならせて、ホットプレス法を用いて焼結した。焼結は、カーボン製容器の酸化による劣化を防止するため、Arガス雰囲気で行った。はじめに圧力を4.9MPaを固定し、焼結温度を800℃(実施例1)、950℃(実施例2)、1000℃(実施例3)に変化させた。焼結時間は3時間とした。
ホットプレス法で圧力を29.4MPaに変更した以外は、実施例1〜3と同様に、焼結温度を800℃(実施例4)、950℃(実施例5)、1000℃(実施例6)にして酸化物焼結体を作製した。
ホットプレス法で圧力を49.0MPaに変更した以外は、実施例1〜3と同様に、焼結温度を800℃(実施例7)、950℃(実施例8)、1000℃(実施例9)にして酸化物焼結体を作製した。
圧力を2.9MPaに変更した点を除いて、実施例1〜3と同様の方法でホットプレスによる焼結を行った。
焼結温度を700℃に固定し、圧力を4.9〜49.0MPaの範囲で変化させた点を除いて、実施例1〜9と同様の方法でホットプレスによる焼結を行った。
実施例1〜9、比較例1〜6のそれぞれの方法によって得られた、それぞれの酸化物焼結体についての相対密度を求め、スパッタリングターゲットとしての適用の可否を評価した。スパッタリングターゲットとして用いるためには、相対密度が少なくとも80%以上であることが必要である。そこで、評価基準を次のように設定した。すなわち、相対密度90%以上を◎、80%以上90%未満を○と表記し、いずれも合格とした。80%未満の場合には不合格とし、×と表記した。次の表1に評価結果を示す。
焼結温度を1050℃、圧力を29.4MPaに変更した点を除いて、実施例1〜9、比較例1〜6と同様の方法でホットプレスを行った。1050℃まで温度を上げたことによって、酸化インジウムが還元されて低融点の金属インジウムが生成し、その結果、カーボン型へ金属インジウムの滲み出しが観察された。この結果より、1050℃以上の温度におけるホットプレスでは、良好な酸化物焼結体を得ることができないことが明らかとなった。
Si粉末を平均粒径300μmの粉末に変更した点を除いては、実施例5と同様の方法でホットプレスによる焼結を行った。その結果、焼結体の相対密度は91%であった。実施例1〜9と同様の方法で焼結体の分析を行ったところ、二酸化シリコンの存在は認められなかった。焼結体を実施例1〜9と同様の方法でスパッタリングターゲットとして用いて、直流スパッタリングを行ったが、アーク放電はほとんど生じず、安定した放電が可能であった。
Si粉末を平均粒径500μmの粉末に変更した点を除いては、実施例5と同様の方法でホットプレスによる焼結を行った。その結果、焼結体の相対密度は87%であった。しかし、焼結体を実施例1〜9と同様の方法でスパッタリングターゲットとして用いて、直流スパッタリングを行ったところ、ターゲットにクラックが生じた。
はじめに4種類の組成の酸化物焼結体を用いたスパッタリングターゲットを、実施例5と同様の工程で作製した。各ターゲットのインジウムに対するシリコンの原子比率は、0.65(実施例11)、1.00(実施例12:実施例5のターゲットを使用)、1.55(実施例13)、および1.75(実施例14)とした。
次に、各組成のターゲットを用いて、直流スパッタリングによる成膜を行った。用いた成膜装置ならびに成膜条件は、実施例1〜9と同様である。基板は、コーニング社製7059ガラス基板を使用し、ターゲット−基板間距離を60mmとした。
得られた膜に関しては、各組成のスパッタリングターゲットを用いて成膜した膜について、屈折率の測定およびX線回折による相同定を行った。なお、膜に含まれるインジウムに対するシリコンの原子比率を、ICP発光分光分析で調べたところ、ターゲット組成と大きく違っていないことを確認した。次の表2に、スパッタリングターゲット及び得られた膜の特性について調べた結果を示す。
インジウムに対するシリコンの原子比率を0.20(比較例9)、0.60(比較例10)、および2.40(比較例11)とした以外には、実施例11〜14と同様の方法でスパッタリングターゲット作製、及び酸化物膜の成膜を行った。実施例11〜14と同様の内容について調べた結果を次の表3に示す。
なお、X線回折の結果、比較例1および2の膜はすべて非晶質であることが明らかとなった。
厚さ100ミクロンのPETフィルム(東洋紡績社製)上に、三層の酸化物膜からなる積層体を反射防止膜として形成した。スパッタリング装置は、インターバック式スパッタリング装置を使用した。ターゲット寸法は、奥行き5インチ、幅15インチ、厚み6mmであり、一層目として、インジウムに対するシリコンの原子比率が1.00のターゲット(実施例5)を用いて成膜した。スパッタリングガスとしてアルゴンと酸素の混合ガスを用い、酸素流量比を8%とし、投入電力を800Wとして、直流マグネトロンスパッタリングを行った。搬送速度の調整によって、ターゲット上を通過するPETフィルム上に本発明の酸化物膜(屈折率1.80)を140nm形成した。
直流電源としてENI社製RPG−50を用い、200kHzの直流パルシングを採用した直流電力200Wを印加する方法に変更した点を除いて、実施例1〜14と同様の条件で成膜を行った。その結果、実施例1〜14と同等の屈折率を示す非晶質膜が得られた。なお、成膜中のアーク放電の発生は認められなかった。
Claims (11)
- 主にインジウム、シリコンを含む酸化物からなり、インジウムに対するシリコンの原子比率が0.65〜1.75であり、かつスパッタリングターゲットとして用いた場合に直流スパッタリング法で成膜することが可能な酸化物焼結体。
- 二酸化シリコンを含まないことを特徴とする請求項1に記載の酸化物焼結体。
- トルトバイタイト型構造を有する珪酸インジウム化合物の結晶相を主相とする請求項1または2に記載の酸化物焼結体。
- 主にインジウム、シリコンを含む酸化物からなり、インジウムに対するシリコンの原子比率が0.65〜1.75であり、かつスパッタリングターゲットとして用いた場合に直流スパッタリング法で成膜することが可能な酸化物焼結体を、酸化インジウム粉末とシリコン粉末を原料とし、ホットプレス法により焼結して得ることを特徴とする酸化物焼結体の製造方法。
- 前記酸化インジウム粉末の平均粒径が5μm以下であり、かつシリコン粉末の平均粒径が300μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の酸化物焼結体の製造方法。
- 前記ホットプレス法の焼結条件が、不活性ガス雰囲気中、焼結温度800〜1000℃、及び圧力4.9〜49.0MPaであることを特徴とする請求項4に記載の酸化物焼結体の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとして用い、直流スパッタリング法で得られる酸化物膜であって、主にインジウムとシリコンを含む酸化物からなる非晶質膜であり、かつ屈折率が1.7〜1.9であることを特徴とする非晶質酸化物膜。
- 基体の片面または両面に、請求項7に記載の非晶質酸化物膜を少なくとも一層以上形成してなることを特徴とする積層体。
- 基体の片面または両面に、請求項7に記載の酸化物膜、屈折率が1.9以上の酸化物膜、および屈折率が1.3〜1.6の酸化物膜が、これらの順に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の積層体。
- 屈折率が1.9以上の酸化物膜が、酸化チタン膜、酸化ジルコニウム膜、酸化タンタル膜、酸化セリウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化タングステン膜、酸化錫膜、酸化インジウム膜、酸化錫添加酸化インジウム膜(ITO膜)、酸化セリウム添加酸化インジウム膜(ICO膜)または酸化亜鉛膜のうちから選ばれる1種の酸化物膜であり、屈折率が1.3〜1.6の酸化物膜が、酸化シリコン膜または酸化アルミニウム膜であることを特徴とする請求項9に記載の積層体。
- 反射防止膜として用いられることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の積層体。
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