JP2007046457A - 内燃機関の吸気ポートおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高タンブル比と高流量係数を両立できる内燃機関の吸気ポートを提供すること。
【解決手段】吸気ポート1の中心線C1が燃焼室2の中心線C2に対して傾斜しており、吸気ポート1の燃焼室2に臨む領域に環状のシートリング5が配置されているとともに、当該シートリング5の内周面6は、燃焼室2の中央に近い領域6aが吸気ポート1の流路に沿って傾斜しており、燃焼室2の外周部に近い領域6bが当該燃焼室2に向かって拡がるように構成した。
【選択図】 図1

Description

この発明は、内燃機関の吸気ポートおよびその製造方法に関し、さらに詳しくは、高タンブル比と高流量係数を両立できる内燃機関の吸気ポートおよびその製造方法に関する。
従来より内燃機関の燃焼を改善するために、吸気流を活用して燃焼室内の気流の乱れを増加させる手段が種々提供されている。図6は、従来の吸気ポートの一例を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、吸気ポート101は、その中心線C1が吸気バルブ(図示せず)の中心線C3に対して傾斜するように所定の傾斜角度θでシリンダヘッド(図示せず)に設けられている。そして、吸気ポート101の燃焼室入口部は、燃焼室(図示せず)の天井部に向けてほぼ垂直な方向に折曲されている。
また、吸気ポート101の上記燃焼室に臨む端縁部には、上記吸気バルブが離着座する環状のシートリング5が圧入されている。このような吸気ポート101の形状は、傾斜角度θ、折曲範囲h、吸気ポート101の代表内径Dとエッジ部101cを設計因子として設定されている。
また、このような吸気ポート101は、図7に示すように、切削工具であるスロートカッタ105の中心軸を上記吸気バルブの中心軸C3に一致させて吸気ポート101の内部へと切削することにより、バルブシート5の内周面6とスロート部101aの両者を加工している。ここで、図7は、従来の吸気ポートの製造方法を示す断面図である。
つぎに、特許文献1に開示された他の従来技術について図8に基づいて説明する。図8は、特開2001−173513号公報に開示された従来の吸気ポートを示す断面図である。図8に示すように、吸気ポート101の燃焼室2への入り口部には、吸気バルブ4のバルブシート5が圧入されている。
このバルブシート5の内周面6の中心軸は、外周面106の中心軸に対して吸気ポート101の流路に沿って傾斜させてある。なお、図中、符号7はシリンダ、8はピストンを示し、排気ポート、排気バルブおよび点火プラグは図示を省略してある。
上記のような構成において、吸気バルブ4が開弁されると、吸気ポート101からバルブシート5を介して燃焼室2内に導入される吸気流は、バルブシート5の傾斜した内周面6aに沿って燃焼室2内へ円滑に流入する。これにより、吸気流の指向性が高められ、吸気流速が高く維持されるので、タンブル流Tが強化されて燃焼効率が向上する。
特開2001−173513号公報
しかしながら、図6に示した上記第1の従来技術にあっては、タンブル流の強化を図るためには、吸気ポート101の内径Dを縮小するとともに、エッジ部101cをしっかりと付ける方向に設計することとなり、結果的に流量断面積を小さくして流速を増加させることでタンブル流を強化しようとしている。このため、シートリング5へ向かう吸気ポート101に角度が生じ、吸気の流入角度も曲げられるので、流量係数は低下し、正タンブ
ル流が弱まって、エンジン性能が低下するという課題があった。
また、上記吸気ポート101は、スロートカッタ105により、予め定められた一つの角度でバルブシート5の内周面6とスロート部101aの両者を加工しているので、スロート部101aにおいて非円滑部101bが生じるとともに、エッジ部101cが生じ、これらが吸気流を乱し、エネルギーロスを発生させてしまうという課題があった。
一方、上記特開2001−173513号公報に開示された第2の従来技術にあっては、シートリング5の内周面6が、吸気ポート101の流路に沿ってほぼ直線状に形成され燃焼室2に向かって開口しているので、内周面6bがエッジとなって吸気流に剥離107が生じ、エネルギーロスが生じてエンジン性能が低下する虞があるという課題があった。
このように吸気ポートの設計においては、タンブル比を高めると流量係数が低下し、流量係数を高めるとタンブル比が低下するという相反する問題があり、これまで種々の検討がなされてきたが、高タンブル比と高流量係数を両立できる吸気ポートの提供に苦慮していた。すなわち、高タンブル比のエンジンは、燃焼は改善されるものの、絶対流量に依存する最大出力が低下してしまうという課題があった。
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高タンブル比と高流量係数を両立できる内燃機関の吸気ポートを提供することを目的とする。
また、この発明は、高タンブル比と高流量係数を両立できる内燃機関の吸気ポートの製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明の請求項1に係る内燃機関の吸気ポートは、吸気ポートの中心線が燃焼室の中心線に対して傾斜しており、前記吸気ポートの前記燃焼室に臨む領域に環状のシートリングが配置されているとともに、当該シートリングの内周面は、前記燃焼室の中央に近い領域が前記吸気ポートの流路に沿って傾斜しており、前記燃焼室の外周部に近い領域が当該燃焼室に向かって拡がるように延びることを特徴とするものである。
また、この発明の請求項2に係る内燃機関の吸気ポートは、請求項1に記載の発明において、一つの前記燃焼室に対して二つの前記吸気ポートが接続されており、前記各吸気ポートは、それぞれの中心線が前記燃焼室の中心線に対して近づくように所定量偏心させて配置されていることを特徴とするものである。
また、この発明の請求項3に係る内燃機関の吸気ポートの製造方法は、吸気ポートの中心線が燃焼室の中心線に対して傾斜しており、前記吸気ポートの前記燃焼室に臨む領域に環状のシートリングが配置されているとともに、当該シートリングの内周面は、前記燃焼室の中央に近い領域が吸気ポートの流路に沿って傾斜しており、前記燃焼室の外周部に近い領域が当該燃焼室に向かって拡がるように延びる内燃機関の吸気ポートの製造方法であって、吸気バルブの中心線に沿って前記シートリング内周面および前記吸気ポートの内周面をスロートカッタで加工する第1の工程と、前記吸気バルブの中心線に対して前記吸気ポートの中心線側に所定角度傾斜させて前記シートリング内周面および前記吸気ポートの内周面を前記スロートカッタで加工する第2の工程とからなることを特徴とするものである。
この発明に係る内燃機関の吸気ポート(請求項1)によれば、吸気流の流線を絞ること
なく、正タンブル流を強化することができ、高タンブル比と高流量を両立することができる。
また、この発明に係る内燃機関の吸気ポート(請求項2)によれば、二つの吸気バルブ間の中心流速が速くなり、これを減速させることなく燃焼室内へ導入することができる。したがって、正タンブル流を更に強化することができ、エンジン性能の更なる高効率化を達成することができる。
また、この発明に係る内燃機関の吸気ポートの製造方法(請求項3)によれば、第1工程を終えた後、スロートカッタを所定角度傾斜させれば、第2工程を容易に行うことができ、吸気ポートの内周面とシートリング内周面とを連続的かつ滑らかに加工することができる。
以下に、この発明に係る内燃機関の吸気ポートの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、この発明の実施例1に係る内燃機関の吸気ポートを示す断面図である。なお、以下の説明において、すでに説明した部材と同一もしくは相当する部材には、同一の符号を付して重複説明を省略または簡略化する。
図1に示すように、吸気ポート1は、その中心線C1が燃焼室2の中心線C2に対して傾斜するようにシリンダヘッド3に設けられている。そして、吸気ポート1の燃焼室2に臨む端縁部には、吸気バルブ4が離着座する環状のシートリング5が圧入されている。なお、図中、符号7はシリンダ、8はピストンを示し、排気ポート、排気バルブおよび点火プラグは図示を省略してある。
このシートリング5の内周面6は、燃焼室2の中央部に近い領域6a(以下、内周面6aと記す)が吸気ポート1の流路に沿って傾斜しているとともに、燃焼室2の外周部に近い領域6b(以下、内周面6bと記す)が燃焼室2に向かって拡開するように形成されている。すなわち、後述する図4に拡大して示すように、吸気ポート1のスロート部1aからシートリング5の内周面6aは、滑らかに接続されており、吸気流のエネルギーロスを最小限とし、正タンブル流Tが弱まらないように構成されている。
また、吸気ポート1のスロート部1aから、シートリング5の内周面6bは、滑らかに接続されており、当該接続部付近での吸気流の剥離を低減し、エネルギーロスが最小限となるように、所定の曲率rで燃焼室2に向かって拡開させてある。
この曲率rは、吸気ポート1の代表内径をDとすると、たとえば、D/10以上D/2以下の範囲内で設定することが好ましい。なお、シートリング5の内周面6bの曲率rは、複数のテーパ加工によって近似的な曲面として形成されている。
つぎに上記吸気ポート1の製造方法について図3および図4に基づいて説明する。ここで、図3は、吸気ポートの第1の加工工程を示す断面図、図4は、吸気ポートの第2の加工工程を示す断面図である。加工前のシートリング5は、吸気ポート1の所定位置に予め圧入されているものとする。
先ず第1の工程では、図3に示すように、スロートカッタ9を吸気バルブ4の中心線C3に沿って所定量進め、シートリング内周面6および吸気ポート1のスロート部1aを加
工する。
つぎの第2の工程では、図4に示すように、スロートカッタ9を吸気バルブ4の中心線C3に対して吸気ポート1の中心線C1側に所定角度θ1傾斜させて所定量進め、シートリング5の内周面6および吸気ポート1の内周面(スロート部1a)を加工する。
上記スロートカッタ9は、シートリング内周面6とスロート部1aの境界部分が滑らかに連続するように、所定曲率の外形を有している。これにより、第1工程を終え、スロートカッタ9を所定角度θ1傾斜させて第2工程を行うことで、吸気ポート1の内周面とシートリング内周面6とを連続的かつ滑らかに加工することができる。
そして、つぎの工程では、シートリング5の内周面6bが所定の曲率rで燃焼室2に向かって拡開するように切削加工する。この場合、シートリング5の内周面6aも同時に拡開加工されることとなり、この曲率rは複数のテーパ加工によって近似的な曲面として形成される。
つぎに、以上のように製造された吸気ポート1の作用について図1に基づいて説明する。吸気バルブ4が開弁すると、ピストン8のストロークによってシリンダ7内に生じる負圧によって、吸入空気が吸気ポート1内を通り、バルブシート5を介して燃焼室2内に導入される。
このとき、吸気ポート1のスロート部1aとシートリング5の内周面6とが滑らかに接続されているので、スロート部1aでの正タンブル流の流れのロスが低減され、強い流れを維持しながら、燃焼室2内へと導かれる。また、シートリング5の内周面6bは、燃焼室2に向かって拡開しているので、当該部分での流れの剥離が抑制される。
つぎに、以上のように製造された吸気ポート1の性能を図2に基づいて説明する。ここで、図2は、タンブル比と流量係数の関係を示すグラフである。図2から分かるように、本発明の場合では、従来技術の場合と比べて正タンブル成分のエネルギーロスが少なくなるため、高タンブル流と高流量とを両立することができる。また、本発明の場合では、従来技術の場合と比べて、高タンブル比となるに従って流量係数の低下割合が小さい。
以上のように、この実施例1に係る内燃機関の吸気ポートによれば、吸気ポート1のスロート部1aとシートリング5の内周面6とを滑らかに接続したことにより、スロート部1aでの正タンブル流の流れのロスが低減され、強い流れを維持しながら、燃焼室2内へと導かれる。したがって、吸気流の流線を絞ることなく、正タンブル流Tを強化することができ、高タンブル比と高流量を両立することができる。
燃焼室2内の正タンブル流Tが増加することにより、燃焼室2内の流れの乱れが増加し、混合気の燃焼を促進し、燃焼効率を高めることができる。また、強い正タンブル流Tの生成により、燃料の希薄化および高EGR化を促進することができ、燃費を向上させることができる。また、燃焼改善と空気量増加により、高速性能(出力性能)が向上する。
なお、上記実施例1は、4バルブエンジンの二股に分岐した吸気ポートに限らず、2バルブエンジンの分岐なしの吸気ポートにも適用することができる。また、直噴ガソリンエンジンに適用することもできる。
また、吸気ポート1の製造方法においては、上記第1の工程と第2の工程の順番を逆にして加工することも可能であり、同様の効果を期待できる。
図5は、この発明の実施例2に係る内燃機関の吸気ポートを示す外観斜視図である。図5に示すように、速い吸気流を燃焼室2の中心軸方向に寄せて正タンブル流を強化するために、上記実施例1で構成した吸気ポート1,1を燃焼室2の中心軸方向に近づくように偏心させて配置したものである。
すなわち、比較説明のために図示した、偏心させていない吸気ポート101の中心線C4を、燃焼室2(図ではシリンダヘッド3の下方に形成されている)の中心軸方向に近づくように中心線C1まで所定偏心量Sだけ偏心させることにより、吸気ポート1,1として構成してある。なお、図中の符号10は、排気ポート孔である。
以上のように、この実施例2に係る内燃機関の吸気ポートによれば、上記実施例1で構成した吸気ポート1,1を燃焼室2の中心軸方向に近づくように偏心させて配置したので、吸気バルブ4と吸気バルブ4間の中心流速が速くなり、これを減速させることなく燃焼室2内へ導入することができる。したがって、正タンブル流を更に強化することができ、エンジン性能の更なる高効率化を達成することができる。
以上のように、この発明に係る内燃機関の吸気ポートは、高タンブル比と高流量係数を両立できる吸気装置に有用である。
この発明の実施例1に係る吸気ポートを示す断面図である。 タンブル比と流量係数の関係を示すグラフである。 吸気ポートの第1の加工工程を示す断面図である。 吸気ポートの第2の加工工程を示す断面図である。 この発明の実施例2に係る吸気ポートを示す外観斜視図である。 従来の吸気ポートの一例を模式的に示す断面図である。 従来の吸気ポートの製造方法を示す断面図である。 従来の吸気ポートを示す断面図である。
符号の説明
1 吸気ポート
1a スロート部
2 燃焼室
3 シリンダヘッド
4 吸気バルブ
5 シートリング
6、6a、6b 内周面
7 シリンダ
8 ピストン
9 スロートカッタ
10 排気ポート孔
C1、C2、C3 中心線
r 曲率
D 吸気ポートの代表内径
T 正タンブル流
θ1 角度
S 偏心量

Claims (3)

  1. 吸気ポートの中心線が燃焼室の中心線に対して傾斜しており、前記吸気ポートの前記燃焼室に臨む領域に環状のシートリングが配置されているとともに、当該シートリングの内周面は、前記燃焼室の中央に近い領域が前記吸気ポートの流路に沿って傾斜しており、前記燃焼室の外周部に近い領域が当該燃焼室に向かって拡がるように延びることを特徴とする内燃機関の吸気ポート。
  2. 一つの前記燃焼室に対して二つの前記吸気ポートが接続されており、前記各吸気ポートは、それぞれの中心線が前記燃焼室の中心線に対して近づくように所定量偏心させて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気ポート。
  3. 吸気ポートの中心線が燃焼室の中心線に対して傾斜しており、前記吸気ポートの前記燃焼室に臨む領域に環状のシートリングが配置されているとともに、当該シートリングの内周面は、前記燃焼室の中央に近い領域が吸気ポートの流路に沿って傾斜しており、前記燃焼室の外周部に近い領域が当該燃焼室に向かって拡がるように延びる内燃機関の吸気ポートの製造方法であって、
    吸気バルブの中心線に沿って前記シートリング内周面および前記吸気ポートの内周面をスロートカッタで加工する第1の工程と、
    前記吸気バルブの中心線に対して前記吸気ポートの中心線側に所定角度傾斜させて前記シートリング内周面および前記吸気ポートの内周面を前記スロートカッタで加工する第2の工程と、
    からなることを特徴とするの内燃機関の吸気ポートの製造方法。
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