JP2007045791A - Au25クラスターの選択的大量合成方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、反応試薬、触媒、ナノデバイス構成要素となる原子数の制御されたAu25クラスターの選択的で、かつ大量に製造する方法を提供するものである。
【解決手段】
本発明は、水不溶性の有機溶媒に溶解した金クラスターと、水溶性チオール化合物の水溶液とを接触させて、配位子交換反応により、原料の金クラスターとはクラスターサイズの異なる金クラスターを選択的に製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、水不溶性の有機溶媒に溶解したAu11クラスターと、水溶性チオール化合物の水溶液とを接触させて、配位子交換反応により配位子交換させ、次いで水相の溶媒を留去して生成物を得ることからなる、Au25クラスターを選択的に製造する方法に関する。
【選択図】 なし
Description
本発明者らは、Au(III)イオンの直接還元により、Au10(SG)10、Au15(SG)13、Au18(SG)14、Au22(SG)16、Au22(SG)17、Au25(SG)18、Au29(SG)20、Au33(SG)22、及びAu39(SG)24(式中、SGはグルタチオン(γ−Glu−Cys−Gly)(GSH)のメルカプト基(−SH)から水素原子を除いた基を示す。)の製造方法を開発してきたが(非特許文献1参照)、収率が低く僅かに数mg程度が得られるに過ぎなかった。
一方、配位子交換法としては、Au11クラスターであるウンデカゴールド(登録商標)のホスフィン配位子をチオール化合物により、コアサイズを変更することなくチオール化金クラスターを製造する方法が報告されている(非特許文献2参照)。また、Au55(PPh3)12Cl6からの配位子交換法によるAu75クラスターの製造法も報告されている(非特許文献3参照)。
このように種々の製造方法が開発されてきているが、反応試薬、触媒、ナノデバイス構成要素となる原子数の制御されたAu25クラスターの選択的な大量の製造方法の開発が求められてきていた。
本発明をより具体的に説明すれば、本発明は以下のとおりとなる。
(1)水不溶性の有機溶媒に溶解した金クラスターと、水溶性チオール化合物の水溶液とを接触させて、配位子交換反応により、原料の金クラスターとはクラスターサイズの異なる金クラスターを選択的に製造する方法。
(2)原料の金クラスターが、Au11クラスターであり、生成物の金クラスターがAu25クラスターである前記(1)に記載の方法。
(3)Au11クラスターが、ホスフィン保護Au11クラスターである前記(2)に記載の方法。
(4)ホスフィン保護Au11クラスターが、Au11(PPh3)8Cl3である前記(3)に記載の方法。
(5)水溶性チオール化合物が、グルタチオンである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)Au25クラスターが、Au25(SG)18(式中、SGはグルタチオン(γ−Glu−Cys−Gly)(GSH)のメルカプト基(−SH)から水素原子を除いた基を示す。)である前記(5)に記載の方法。
(7)水不溶性の有機溶媒が、クロロホルムである前記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
本発明における原料の金クラスターとしては、金の原子数が10〜22の金クラスターであって、交換できる配位子を有するものであり、配位子としては、例えば、ホスフィン、チオール化合物、ペプチドなどが挙げられる。好ましい金クラスターとしては、入手の容易性から、金の原子数が11のAu11クラスターが挙げられる。より具体的には、ホスフィン保護金クラスターが挙げられ、Au11クラスターとしてはホスフィン保護Au11クラスターが挙げられる。当該ホスフィン保護Au11クラスターとしては、例えば、Au11(PPh3)8Cl3などが挙げられる。また、ウンデカゴールド(登録商標)(ナノプローブ社(Nanoprobe Inc.))として市販されているAu11クラスターを使用することもできる。
本発明における「水不溶性の有機溶媒」としては、前記したAu11クラスターを溶解することができ、水に不溶性の有機溶媒であればよく、好ましくは沸点が30℃以上、又は50℃以上のものが挙げられる。本発明における水に不溶性とは、反応条件下において有機溶媒による有機相と水からなる水相の二つの相を形成でき、これらの相を通常の分液ロートなどの手段により分離できるものであればよい。好ましい有機溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素溶媒、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒などが挙げられる。特に好ましい有機溶媒としては、クロロホルムが挙げられる。使用する有機溶媒は、予め凍結脱気などにより溶存酸素を除去するのが好ましい。
本発明の方法において使用される水は、蒸留水、脱イオン水などが好ましい。使用する水についても、予め凍結脱気などにより溶存酸素を除去するのが好ましい。
本発明の方法は、生成物が水相に移行することを特徴のひとつとするものである。配位子交換反応において、生成物が水溶性となり、このために選択的な反応が行われるものと考えられる。金クラスターは一般に着色、特に深赤色に着色したものが多く、本発明の方法における最初の段階では、有機相に着色が見られるが、反応の進行と共に水相に着色が移行する。したがって、有機相の着色の消失により反応の終結を見ることができる。反応時間は、温度にもよるが、通常は5〜30時間、好ましくは5〜20時間程度である。
本発明の方法における、原料の金クラスターとはクラスターサイズの異なる金クラスターとしては、金の原子数が15〜30の金クラスターが挙げられる。好ましい生成物としては、金の原子数が25のAu25クラスターが挙げられる。本発明の方法における好ましい特徴のひとつは、生成物が水溶性であり、金の原子数が50以上となるような大きなクラスターが実質的に生成しないことである。本発明の他の特徴のひとつは、実質的にAu25クラスターを選択的かつ大量に製造できることである。
本発明者らは、エタノールに溶かしたAuCl(PPh3)をNaBH4で還元して、これを精製して、Au11(PPh3)8Cl3 で示されるホスフィン保護Au11クラスターを製造した。得られたAu11(PPh3)8Cl3 で示されるホスフィン保護Au11クラスターの粒径は、0.6〜1.6nmで、約50%のものが0.8nmであった。
得られたAu11クラスターを有機相(クロロホルム)に、水相にグルタチオン(GSH)を溶かし、両者をバス温度55℃で1時間攪拌することで水相にAu:SGクラスターを抽出し、空気導入後4時間攪拌した。この配位子交換反応により生成したAu:SGクラスター(以下、これをクラスター1と呼ぶ。)の吸収スペクトルを測定した。結果を図1に示す。図1の横軸は光の波長(nm)を示し、縦軸は吸収を示す。図1の上側は本発明の方法で製造されたクラスター1のスペクトルを示し、下側は既知のAu25(SG)18(式中、SGはグルタチオン(γ−Glu−Cys−Gly)(GSH)のメルカプト基(−SH)から水素原子を除いた基を示す。以下同じ。)のスペクトルを示す。図1では、両者のスペクトルを見やすくするために離して示している。この結果、本発明の方法におけるクラスター1は、既知のAu25(SG)18のスペクトルと一致した。
次に、これらのエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)を同様に測定した結果を図2に示す。図2の横軸は質量分析におけるm/zを示し、縦軸はイオン強度を示す。図2の上側は本発明の方法で製造されたクラスター1のスペクトルを示し、下側は既知のAu25(SG)18のスペクトルを示す。図2では、両者のスペクトルを見やすくするために離して示している。この結果、本発明の方法におけるクラスター1は、既知のAu25(SG)18のスペクトルとほぼ一致することがわかった。
さらに、ポリアクリルアミド電気泳動(PAGE)により、本発明の方法で製造されたクラスター1と、既知の金クラスターを比較した結果、クラスター1は、主成分がAu25核をもつAu25(SG)18であり、Au11核をもつクラスターは存在しないことがわかった。
本発明の方法では、出発物質と反応条件により最終生成物の選択率・収率を制御することができるため、両者を変化させることにより、熱力学的に安定な他のAuクラスターの選択的に大量に製造することができ、粒径の揃った金超微粒子を選択的に製造することができる新たな方法を提供するものである。また、本発明の方法で製造される金クラスターは、構成原子数が極めて少ないため、水溶性酸化触媒やナノ電子・光デバイスの構成単位として利用できる。
ハッチソンらの方法(非特許文献2参照)に準じて製造した。
無水エタノール55mLにAuCl(PPh3)(1.00g、2.0mmol)を溶解し、この溶液にNaBH4(76mg、2.0mmol)を約15分かけてゆっくりと添加した。次いで、室温で2時間撹拌した後、反応光厳物をヘキサン1L中に注いだ。これを20時間放置した後、0.1μmの膜を用いて濾過して、褐色の固体を得た。これを15mのヘキサンで4回、15mLの塩化メチレンとヘキサンの混合溶媒(1:1)で4回洗浄した。次いで、この固体を塩化メチレンに溶解し、無機物の不純物を濾過して除去した後、溶媒を留去して目的のAu11クラスター210mgを褐色固体として得た。
図1に、得られたAu25クラスター(Au25(SG)18)の吸収スペクトルを示し、図2にその質量スペクトル(ESI−MS)を示す。
残渣を減圧乾燥して、粉体状のAu25クラスター(Au25(SG)18)72mgを得た。
55℃で反応させた、それぞれの反応時間における670nmの光学密度(OD)を測定した結果を図3に示す。図3の横軸は時間(時間)であり、縦軸は670nmにおける吸収を示す。図3中の黒丸印(●)はグルタチオンが400モルの場合を示し、黒四角印(■)はグルタチオンが200モルの場合を示し、黒三角印(▲)はグルタチオンが60モルの場合を示す。
Claims (7)
- 水不溶性の有機溶媒に溶解した金クラスターと、水溶性チオール化合物の水溶液とを接触させて、配位子交換反応により、原料の金クラスターとはクラスターサイズの異なる金クラスターを選択的に製造する方法。
- 原料の金クラスターが、Au11クラスターであり、生成物の金クラスターがAu25クラスターである請求項1に記載の方法。
- Au11クラスターが、ホスフィン保護Au11クラスターである請求項2に記載の方法。
- ホスフィン保護Au11クラスターが、Au11(PPh3)8Cl3である請求項3に記載の方法。
- 水溶性チオール化合物が、グルタチオンである請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- Au25クラスターが、Au25(SG)18(式中、SGはグルタチオン(γ−Glu−Cys−Gly)(GSH)のメルカプト基(−SH)から水素原子を除いた基を示す。)である請求項5に記載の方法。
- 水不溶性の有機溶媒が、クロロホルムである請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
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