JP2003049205A - 粒径の制御された保護膜付き金属粒子群とその製造方法 - Google Patents

粒径の制御された保護膜付き金属粒子群とその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】粒径のばらつきが少ない保護膜付き金属粒子
群、及びナノメーターオーダーで所望の粒径の金属粒子
群を提供することにある。 【解決手段】塩化金(III)酸水溶液とトルエンとの二
相系に四級アンモニウム塩を加えて塩化金(III)酸イ
オンをトルエン相に移動させ、トルエン相にドデカンチ
オールを加えた後、塩化金(III)酸イオンを還元し、
溶媒を除去することによって得られた固形物をドデカン
チオール及び四級アンモニウム塩の融点より高く且つそ
れらの沸点より低い温度で加熱した後、四級アンモニウ
ム塩を除去することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ナノメータオー
ダーの金属粒子の群とその製造方法に属する。
【0002】
【従来の技術】直径が数nmないし10nmの範囲で揃
った金属粒子を二次元的に整然と配置することができれ
ば、単電子トランジスタのように単電子トンネル効果を
利用したエレクトロニクス材料のほか、表面増強ラマン
散乱や非線形光学特性を示す光機能材料として有用であ
る。
【0003】従来、このような金属粒子の群を製造する
代表的な方法として、塩化金酸水溶液に有機溶媒を加
え、更に相間移動触媒を加えて塩化金酸を有機溶媒相に
移動させた後、有機配位子からなる保護剤の存在下で塩
化金酸を還元剤で還元することにより、保護剤で覆われ
た金粒子群を生成し、有機溶媒などで相間移動触媒を除
去する方法が知られている(Mathias Brust, J.Chem.So
c.,Chem.Commun.,1994,p.801)。また、近年、保護剤と
してポリエチレンイミンを用い、これを塩化金酸、水及
びアルコールとともに加熱し撹拌することにより、金粒
子群を得る方法も提案された(特開2000−2817
97)。なお、保護剤は、金粒子同士がくっつきあって
固まりとなるのを防止するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の製
造方法は、金粒子群を得るための工程が全て液相で行わ
れることから、個々の金粒子に付着する保護剤の量が区
々である。従って、保護剤の量が少ないと所定範囲の直
径の粒子の他に一次粒子の凝集による過大粒径の粒子が
生成し、逆に保護剤の量が多いと全般的に粒径が小さく
なり、いずれにしても粒径のばらつきが大きく再現性に
乏しい。また、粒径が保護剤の量にあまりに敏感に依存
することから、反応ごとに粒径が異なってしまい粒径を
制御することが困難であった。これらの事情が金粒子群
などの金属粒子群の広範な利用を妨げている。それ故、
この発明の第一の課題は、粒径のばらつきが少ない保護
膜付き金属粒子群を提供することにある。第二の課題
は、ナノメーターオーダーで所望の粒径の金属粒子群を
提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】その課題を解決するため
に、この発明の保護膜付き金属粒子群の製造方法は、金
属粒子の群、疎水性基を有する有機配位子及び四級アン
モニウム塩からなる固形物をその有機配位子及び四級ア
ンモニウム塩の融点より高く且つそれらの沸点より低い
温度で加熱した後、四級アンモニウム塩を除去すること
を特徴とする。
【0006】この方法によれば、上記温度で熱処理する
ことにより、四級アンモニウム塩が上記有機配位子の溶
媒として機能し、有機配位子が個々の金属粒子の周囲に
均等に配位する。有機配位子としては貴金属粒子に対し
てはアルカンチオールが配位しやすいことから好ましく
挙げられるが、これに限定されない。そして、この状態
で適当な温度まで冷却等して再度固化し、四級アンモニ
ウム塩を除去すると、個々の金属粒子の周囲に疎水性基
が外側に位置するように有機配位子が均等に付着し、粒
径の揃った粒子群が得られる。疎水性基を有する有機配
位子は得られた金属粒子同士の凝集を防止する保護膜と
なる。金属粒子の粒径は処理温度と一次の相関があるの
で、処理温度によって制御することができる。
【0007】また、固形物の熱処理によって粒径を制御
することができるので、予め固形物を大量に製造して保
存し、使用する度に熱処理して所望粒径の金属粒子群を
得ることができる。従って、大量生産にも少量生産にも
適している。以上の作用は金属粒子が金粒子である場合
の他、銀粒子、パラジウム粒子、白金粒子などの種々の
金属粒子である場合にも生じるので、この発明は金属粒
子群全般に適用可能である。
【0008】前記固形物としては、塩化金(III)酸な
どの金属酸イオンを含む水溶液とトルエンなどの有機溶
媒との二相系に四級アンモニウム塩を加えて金属酸イオ
ンを有機溶媒相に移動させ、有機溶媒相に疎水性基を有
する有機配位子を加えた後、金属酸イオンを還元し、溶
媒を除去することによって得られたものが好ましく挙げ
られるが、これに限定されない。
【0009】この発明の方法で得られた保護膜付き金属
粒子群は、直径が1〜15nmで標準偏差が1nm以下
である金属粒子の群と、個々の金属粒子の周囲に形成さ
れた疎水性基を有する有機配位子からなる保護膜とを備
えることを特徴とする。
【0010】
【実施例】−実施例1− 10mMの塩化金(III)酸水溶液60mLにトルエン
140mLを加え、更に60mMのテトラオクチルアン
モニウムブロマイド(TOAB)20mLを添加し、塩
化金(III)酸の全量がトルエン相に移動するまで撹拌
した。次いでトルエン相に30mMのドデカンチオール
20mLを加え、更に100mMの水素化ホウ素ナトリ
ウム(還元剤)60mLを加えて撹拌した。
【0011】トルエン相を水相と分離し、トルエン相か
らトルエンを留去した後、固形物を電気炉にて2℃/m
inの昇温速度で所定の処理温度まで昇温し、30分間
保持した。冷却後、固形物をトルエン30mLに再溶解
し、メタノール500mLを加えると、粒子群の沈殿が
得られた。この沈殿をゲル濾過によって精製した。
【0012】精製された粒子群、ドデカンチオール及び
TOABをそれぞれ赤外分光法(IR)で分析したとこ
ろ、粒子群のスペクトルはいずれもドデカンチオールの
それとほぼ同一であったが、TOABに対応するピーク
は無かった。よって、粒子群にドデカンチオールが含ま
れ、TOABは除去されていることが認められた。ま
た、粒子群をX線光電子分光法(XPS)で分析したと
ころ、どの粒子群にもAu0が含まれていることが認め
られた。
【0013】粒子群を透過型電子顕微鏡(TEM)で観
察し、平均粒径(n=200)及び標準偏差を求めた結
果を表1及び図1に示す。併せて、熱分析法によって求
めた金含有量、金粒子1個あたりのドデカンチオール量
(NDT b)及び1つのドデカンチオールによって保護さ
れる表面金原子数(NAU(S) c)を表1に示す。なお、図
1の250℃の位置に打点されたデータは後述の実施例
2の結果である。
【0014】
【表1】
【0015】表1及び図1に見られるように、ドデカン
チオール保護膜付きの金粒子の平均粒径は、電気炉での
保持温度と一次の相関を示した。また、標準偏差は0.
7nm以下であり、粒径が揃っていることが確認され
た。
【0016】−実施例2− ドデカンチオールに代えてオクタドデカンチオールを用
いることと、電気炉での保持温度を250℃とした以外
は、実施例1と同一条件でオクタドデカンチオール保護
膜付きの金粒子群を製造した。その平均粒径及び標準偏
差は、それぞれ9.7nm及び0.9nmであった。
【0017】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば固形物
を加熱するという簡単な操作で粒径の揃った保護膜付き
金属粒子群を得ることができるし、熱処理温度で粒径を
容易に制御することもできるので、各種の先端技術分野
での利用を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 熱処理温度と平均粒径及び標準偏差との関係
を示すグラフである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属粒子の群、疎水性基を有する有機配位
    子及び四級アンモニウム塩からなる固形物をその有機配
    位子及び四級アンモニウム塩の融点より高く且つそれら
    の沸点より低い温度で熱処理した後、四級アンモニウム
    塩を除去することを特徴とする保護膜付き金属粒子群の
    製造方法。
  2. 【請求項2】前記固形物は、金属酸イオンを含む水溶液
    と有機溶媒との二相系に四級アンモニウム塩を加えて金
    属酸イオンを有機溶媒相に移動させ、有機溶媒相に疎水
    性基を有する有機配位子を加えた後、金属酸イオンを還
    元し、溶媒を除去することによって得られたものである
    請求項1に記載の製造方法。
  3. 【請求項3】直径が1〜15nmで標準偏差が1nm以
    下である金属粒子の群と、個々の金属粒子の周囲に形成
    された疎水性基を有する有機配位子からなる保護膜とを
    備えることを特徴とする保護膜付き金属粒子群。
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