JP2007039736A - 耐食性,後塗装性に優れた亜鉛系めっき鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】 シランカップリング剤が固定されたシリカ微粒子で化成皮膜を形成することにより、化成皮膜に柔軟性を付与し、加工時の亀裂発生を抑え、加工後の塗膜密着性を向上させた亜鉛系めっき鋼板を提供する。
【解決手段】 リン酸塩皮膜を化成皮膜でシーリングした亜鉛系めっき鋼板であり、シランカップリング剤/シリカ微粒子=0.05〜0.5の混合処理液から化成皮膜が形成されている。シランカップリング剤の一部がシリカ微粒子表面に固定されており、核磁気共鳴分析ピーク面積比R:29Si(-O-)329Si(-O-)4が0.16〜5.0の範囲にあるようにシランカップリング剤-シリカ微粒子の結合量が調整されている。
【選択図】 なし

Description

本発明は、外装材,内装材,車両用鋼板,外置き電気機器用ケーシング材,表装材等として使用され耐食性,後塗装性に優れた亜鉛系めっき鋼板に関する。
耐食性の良好な鋼材として亜鉛めっき鋼板,亜鉛合金めっき鋼板等の亜鉛系めっき鋼板が多用されているが、湿潤雰囲気,排ガス雰囲気,海塩粒子飛散雰囲気等に亜鉛系めっき鋼板を長時間曝すと鋼板表面に白錆が発生し外観が劣化する。クロメート処理で白錆を防止できるが、クロメート処理ではクロムイオンを含む廃液の処理に多大な負担がかかり、環境負荷の大きなクロムイオンがクロメート皮膜から溶出する。
クロメート処理の代替として、リン酸塩皮膜を改質することによりクロメート不要のリン酸塩処理が提案されている(特許文献1)。リン酸塩皮膜は鋼板表面に析出した微細なリン酸塩結晶から形成される皮膜であり、隣り合うリン酸塩結晶の間では下地鋼が露出している。そのため、リン酸塩処理した亜鉛系めっき鋼板を加工後に塗装すると、十分な塗膜密着性が得られ難く、加工時に生じた皮膜欠陥を起点とする腐食も発生しやすい。そこで、特許文献1は、ヒドラジン誘導体,シリカ微粒子,金属表面に対してエッチング作用のある酸を含む処理液でリン酸塩皮膜を後処理している。
特開2001-207271号公報
シリカ皮膜は、リン酸塩皮膜の欠陥部近傍におけるpH値の低下防止にも有効であり、疵部等を起点とする腐食を抑制する作用もある。しかし、リン酸塩処理後の防錆にシリカ処理を適用すると、リン酸塩結晶の凹部にシリカ微粒子が堆積する。延性のないシリカ皮膜は、加工時に層間剥離しやすい。そのため、シリカ処理した亜鉛系めっき鋼板を加工した後で塗装すると、密着性の良好な塗膜を形成し難い。
そこで、リン酸塩皮膜上に設けたシリカ皮膜が耐食性,後塗装性に及ぼす影響をシリカ皮膜の性状から調査・検討した。その結果、シランカップリング剤を粒子表面に固定したシリカ微粒子でシリカ皮膜を形成すると、シリカ皮膜に柔軟性が付与され、加工部の塗膜密着性を改善できることが判った。
本発明は、かかる知見に基づき完成されたものであり、シランカップリング剤の結合によりシリカ皮膜に柔軟性をもたせ、加工後にもシリカ皮膜が層間剥離せず、優れた密着性で塗膜を形成できる亜鉛系めっき鋼板を提供することを目的とする。
本発明は、亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板を基材とし、基材表面にリン酸塩皮膜を設け、リン酸塩皮膜の析出結晶(リン酸塩結晶)表面及び隣り合う析出結晶間の基材表面にシランカップリング剤,シリカ微粒子の混合物が付着した化成皮膜(シリカ皮膜)を設けている。
シランカップリング剤/シリカ微粒子の混合物は、シランカップリング剤/シリカ微粒子の質量比を0.05〜0.5の範囲に調整している。シリカ微粒子は、好ましくは粒径が200nm以下である。
更に、シリカ微粒子の表面にシランカップリング剤の一部が結合(固定)し、シリカ微粒子表面に結合していないフリーのシランカップリング剤29Si(-O-)3とシリカ微粒子表面に結合しているシランカップリング剤29Si(-O-)4の核磁気共鳴分析(NMR)のピーク面積比R:29Si(-O-)329Si(-O-)4が0.16〜5.0の範囲に調整されている。シランカップリング剤は、シリカ微粒子と混合した後、80℃程度に加温してシランカップリング剤/シリカ微粒子間の反応を促進させることにより、シリカ微粒子の表面に固定される。
リン酸塩皮膜は、面積比率:50%以上で基材表面を覆うように形成することが好ましい。リン酸塩皮膜には、Zn,Mn,Mg,Ca,Ni,Coの一種又は二種以上の金属を含ませることもできる。
化成皮膜は、リン酸塩結晶の表面及びリン酸塩結晶間の基材表面に付着したシリカ微粒子で形成され、リン酸塩皮膜をシーリングする。基材表面から起立するリン酸塩結晶の平均高さをHとすると、H/2以下の膜厚で化成皮膜を形成することが好ましい。化成皮膜には、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wの一種又は二種以上の化合物を含ませても良い。
リン酸塩処理後の亜鉛系めっき鋼板をシリカでシーリングする場合、良好な加工後の塗膜密着性が得られないことは次のように説明できる。
リン酸塩処理された亜鉛系めっき鋼板1の表面を観察すると、リン酸塩皮膜となるリン酸塩結晶2が基材表面に析出している(図1)。リン酸塩結晶2は基材表面に直交する方向に沿って成長しており、隣り合うリン酸塩結晶2の間で基材表面がリン酸塩皮膜から露出する。隣り合うリン酸塩結晶2の隙間はシーリング時に析出するシリカ微粒子3で充填され、リン酸塩皮膜を介した基材表面の露出がなくなる。シリカ微粒子3は、リン酸塩結晶2の表面にも析出し、シリカ皮膜(化成皮膜)を形成する。
シリカ皮膜は、延性のないシリカ微粒子3で形成されている。そのため、亜鉛系めっき鋼板をプレス,絞り等で所定形状に加工すると、加工変形に追従できないシリカ皮膜に亀裂4が入り、図1の丸で囲った部分を拡大した図2にみられるように層間剥離する。亀裂4のあるシリカ皮膜の上に塗膜を設けても、亀裂4を境にシリカ皮膜,塗膜が剥離しやすく、十分な塗膜密着性が得られ難い。
シリカ皮膜の層間剥離が塗膜密着性の低下原因であるとの前提に立つと、シリカ微粒子に柔軟性を付与できれば層間剥離が抑えられ、加工後の塗膜密着性が向上することが予想される。本発明においては、シリカ微粒子の表面にシランカップリング剤を固定することによりシリカ皮膜に柔軟性を持たせている。シランカップリング剤は、シリカ微粒子とを混合した後で80℃程度に加温し、シランカップリング剤/シリカ微粒子間の反応を促進させることにより、シリカ微粒子の表面に固定される。因みに、シランカップリング剤、シリカ微粒子を混合した化成処理液を塗布しただけでは、処理液の乾燥過程でシランカップリング剤相互の脱水縮合反応が進行し、シリカ微粒子との反応を期待できない。
シリカ微粒子にシランカップリング剤を固定することにより、有機官能基が化成皮膜に持ち込まれる。有機官能基の取込みで化成皮膜が柔軟になると共に塗膜に馴染みやすくなり、加工後の塗膜密着性が向上するものと推察され、後述の実施例でも支持される。シリカ微粒子の凹凸により比表面積,ひいては有機官能基量が増加すること、リン酸塩結晶表面に付着したシリカ微粒子で形成される凹凸がアンカー効果を奏すること等も、塗膜密着性の向上に寄与するものと考えられる。
化成処理される原板としては、電気めっき法,溶融めっき法,蒸着めっき法で製造された亜鉛系めっき鋼板が使用される。亜鉛合金めっきには、Zn-Al,Zn-Mg,Zn-Ni,Zn-Al-Mg等がある。溶融めっきした後で合金化処理を施した合金化亜鉛めっき鋼板も化成処理用原板として使用できる。
リン酸塩処理液には、リン酸イオンの他に必要に応じてZn,Mn,Mg,Ca,Ni,Co等の金属イオンを添加した水溶液が使用される。処理促進剤として硝酸イオンをリン酸塩処理液に含ませても良い。リン酸塩処理液は、リン酸イオン濃度を0.03〜0.5モル/l,金属イオン濃度を0.01〜0.5モル/lの範囲に調整することが好ましい。硝酸イオンを含ませる場合には、硝酸イオン濃度を0.01〜1.0モル/lの範囲に調整する。
リン酸イオン濃度:0.03モル/l未満では短時間処理でリン酸塩結晶が充分に析出せず、逆に0.5モル/lを超えるとリン酸塩処理液の安定性が低下し、スラッジが発生し易くなる。金属イオン濃度:0.01〜0.5モル/lは各種金属イオンを合計した値であり、0.01モル/l未満では短時間処理でリン酸塩結晶を充分に析出させることができず、逆に0.5モル/lを超えるとリン酸塩処理液の安定性が低下する。硝酸イオンによる反応促進効果は0.01モル/l以上でみられるが、1.0モル/lを超える過剰量の硝酸イオンが含まれると酸化作用により亜鉛系めっき層の表面が不活性化し、却って反応性が低下する。
Alを含むめっき層が形成された亜鉛系めっき鋼板をリン酸塩処理する場合、めっき層から溶出したAlがリン酸塩反応を阻害する傾向がみられるが、リン酸塩処理に及ぼす溶出Alの悪影響はリン酸塩処理液にフッ化物を添加することにより抑制できる。フッ化物としてはフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化水素ナトリウム等があり、フリーのフッ素イオン濃度が30ppm以上でフッ化物の添加効果が顕著になる。連続的な操業を可能とする上では、一定量のフッ化物を連続的にリン酸塩処理液に添加し、フッ素イオン濃度を30ppm以上に維持することが好ましい。
リン酸塩処理は、好ましくは液温40〜80℃の範囲で実施される。液温が40℃に達しない場合、短時間処理ではリン酸塩結晶の析出が不充分となる。逆に、80℃を超える液温ではリン酸塩処理液の安定性が低下し、スラッジの発生や水分の蒸発が多くなり連続操業での濃度管理が難しくなる。液温が40〜80℃のリン酸塩処理液を使用する限り、スプレー処理であれば2〜6秒程度、浸漬処理であれば3〜9秒程度で必要とするリン酸塩皮膜が形成される。処理時間を長く設定しても、リン酸塩の析出が飽和状態になり外観に変化は無く問題は無い。
リン酸塩結晶は亜鉛系めっき層の表面にある析出起点から成長し、表面全体がリン酸塩結晶で覆われて飽和状態に達すると析出反応が停止する。リン酸塩皮膜の被覆率,付着量はリン酸塩処理液との接触時間及び結晶の成長速度の調整により制御でき、析出起点の増加、ひいては結晶サイズの調整によっても制御できる。たとえば、接触時間の短縮、或いは同じ接触時間でも処理液温度を低くして結晶の成長速度を遅くすると、リン酸塩皮膜の被覆率,付着量が減少する。また、リン酸塩処理に先立つ表面調整で使用される処理液濃度の上昇やリン酸塩処理液の昇温により析出起点を増加でき、結果としてリン酸塩結晶が微細となるためリン酸塩皮膜の付着量が減少する。
リン酸塩皮膜は,基材表面に対し面積比率:50%以上で形成することが好ましい。リン酸塩皮膜の被覆率は膜厚やリン酸塩結晶のサイズに影響されるが、50%以上の面積比率でリン酸塩皮膜を設けることにより十分な塗膜密着性,塗装後耐食性が得られる。
リン酸塩皮膜の形成後、シランカップリング剤,シリカ微粒子の混合処理液で化成処理する。塗膜密着性,耐食性を確保するため、シランカップリング剤/シリカ微粒子の配合比率を質量比:0.05〜0.5の範囲で調整する。シランカップリング剤が少なすぎると加工部の塗膜密着性が劣り、逆に多すぎるとシランカップリング剤相互間で脱水縮合反応が起こりやすく処理液の安定性が低下する。シリカ微粒子は、リン酸塩結晶表面に付着してアンカー効果を付与することから平均粒径200nm以下の微粒子が好ましい。
シランカップリング剤,シリカ微粒子を混合した後、60〜90℃の温度範囲で加温するとシランカップリング剤/シリカ微粒子間の反応が促進され、シリカ微粒子表面にシランカップリング剤が固定される。シランカップリング剤/シリカ微粒子間の結合は保持温度,加温時間等で制御でき、処理液段階における結合状態が化成皮膜にも持ち込まれる。
具体的には、構造式:
Figure 2007039736
のシランカップリング剤をシリカゾルと混合し、80℃程度に加温すると、シリカ微粒子のSi原子にシランカップリング剤がシラノール結合し、有機官能基Xを外側に向けてシランカップリング剤がシリカ微粒子に固定される。外側に配向した有機官能基Xは、化成皮膜(シリカ皮膜)に柔軟性を付与し塗膜に対する親和性を向上させる。
Figure 2007039736
シリカ微粒子に結合したシランカップリング剤の割合は、核磁気共鳴分析によるピーク面積から求められる。核磁気共鳴分析では、シリカ微粒子と反応していないシランカップリング剤に起因する29Si(-O-)3とシリカ微粒子表面に結合したシランカップリング剤に起因する29Si(-O-)4のピークは出現位置が異なり、皮膜中におけるそれぞれの配合量とピーク面積が比例関係にある。そのため、核磁気共鳴分析で各ピークの面積比を測定することにより、シリカ微粒子の表面に対するシランカップリング剤の結合量が判る。
シリカ微粒子と反応していないシランカップリング剤に起因する29Si(-O-)3とシリカ微粒子表面に結合したシランカップリング剤に起因する29Si(-O-)4の核磁気共鳴分析におけるピーク面積比R:29Si(-O-)329Si(-O-)4が0.16〜5.0の範囲に収まるように加温処理条件を制御することが好ましい。高すぎる処理温度ではシランカップリング剤/シリカ微粒子間の反応が急激に進行して制御が困難になるが、低すぎる処理温度では必要レベルまでシランカップリング剤を結合させるのに長時間を要し生産性を低下させる。また、シリカ微粒子表面に結合したシランカップリング剤が少なすぎると加工後の塗膜密着性が低下し、逆に多すぎると処理液の安定性が低下する。
加温処理した混合処理液にTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wの一種又は二種以上の化合物を添加しても良い。Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W等は、バルブメタルとして働き、シリカ皮膜を緻密化しバリア機能,ひいては耐食性を飛躍的に向上させる。また、Si原子に配位結合したバルブメタルの水酸化物が腐食性雰囲気に曝されると溶出し、難溶性の酸化物,水酸化物となって再析出する過程でリン酸塩皮膜の隙間から覗く亜鉛めっき層の露出部や皮膜欠陥部が自己修復される。
シランカップリング剤/シリカ微粒子の混合処理液は、ロールコート,スピンコート,スプレー等、適宜の方法でリン酸塩処理後の亜鉛系めっき鋼板に塗布される。塗布後、加熱・乾燥により化成皮膜が形成されるが、皮膜特性を損なうことなく短時間処理を可能にするため80〜200℃の範囲で乾燥することが好ましい。厚すぎる化成皮膜ではリン酸塩結晶が皮膜に埋没し、後塗装後の塗膜密着性の低下や成形加工時に加わる応力によるクラック発生を誘発して耐食性が低下するため、基材表面から起立しているリン酸塩結晶の高さの半分以下の膜厚で化成皮膜を形成することが好ましい。膜厚は混合処理液の濃度で制御でき、ロールコートによる場合にはロールの表面粗さ,硬さ,周速等でロール表面のウエット量を調整することによっても制御できる。
生成した化成皮膜は、リン酸塩結晶で分断されているので、加工時等に加えられる応力を分散させる作用を呈し、シリカ微粒子に固定されたシランカップリング剤に起因する柔軟性向上と相俟って亜鉛系めっき層に強固に密着する。しかも、亜鉛系めっき層から突出しているリン酸塩結晶の大半が化成皮膜で覆われていないので、その上に設けられる塗膜や接着剤層の密着性,塗装後耐食性等が格段に向上する。
化成皮膜を形成した後、更に耐食性に優れた有機皮膜を形成することもできる。この種の皮膜として、たとえばウレタン系樹脂,エポキシ樹脂,ポリエチレン、ポリプロピレン,エチレン−アクリル酸共重合体等のオレフィン系樹脂,ポリスチレン等のスチレン系樹脂,ポリエステル,或いはこれらの共重合物又は変性物,アクリル系樹脂等の樹脂皮膜を膜厚0.1〜5μmで化成皮膜の上に設けると、クロメート皮膜を凌駕する高耐食性が得られる。或いは、導電性に優れた樹脂皮膜を化成皮膜の上に設けることにより、潤滑性が改善され、溶接性も付与される。この種の樹脂皮膜としては、たとえば有機樹脂エマルジョンを静電霧化して塗布する方法で形成できる。
片面当りめっき付着量20g/m2でZnめっき層が形成された板厚0.8mmの電気めっき鋼板を原板に使用し、表1の処理液でリン酸塩処理した後、表2の化成処理液を塗布しリン酸塩皮膜をシーリングした。また、リン酸塩処理液,化成処理液を表3のように組み合わせて使用した。
表2中、シランカップリング剤Aはγ-アミノプロピルトリエトキシシラン(アミノ系),Bはγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エポキシ系),CはA:B=1:1(モル比)の混合物を示す。
核磁気共鳴分析のピーク面積比R:29Si(-O-)329Si(-O-)4は、次の手順で求めた。たとえば、化成処理液No.6のNMR分析チャート(図3)には、シリカのピークP1の他に、シリカ微粒子表面に結合したシランカップリング剤のピークP2,シリカ微粒子表面に結合していないシランカップリング剤のピークP3も検出される。ピークP2は−47.789PPM,ピークP3は−38.287PPMでみられ、ピークP2の強度を基準にするとピークP3の強度が2.374になっており、この強度比をピーク面積比として表2に掲げている。
処理液の安定性は、化成処理液を容器に入れて密封し40℃の雰囲気に放置する条件下で増粘やゲル化が検出されるまでの時間によって判定し、三ヶ月経過しても増粘やゲル化が生じていない処理液を◎,一ヶ月経過するまで増粘やゲル化が検出されなかった処理液を○,一ヶ月未満で増粘又はゲル化した処理液を×と評価した。
Figure 2007039736
Figure 2007039736
Figure 2007039736
化成処理後の基材表面に形成されたリン酸塩皮膜,化成皮膜を表4に示す。
Figure 2007039736
化成処理後の亜鉛系めっき鋼板から試験片を切り出し、次の試験に供した。
〔平坦部腐食試験〕
試験片の端面をシールし、JIS Z2371に準拠して35℃の5%NaCl水溶液を試験片表面に噴霧した。塩水噴霧を24時間又は72時間継続した後、試験片表面を観察し白錆発生状況を調査した。試験片表面に占める白錆の面積占有率が5面積%未満を◎,5〜10面積%を○,10〜30面積%を△,30〜50面積%を▲,50面積%以上を×として平坦部耐食性を評価した。
〔疵部腐食試験〕
カッターナイフでクロスカットを深さ10〜20μmの疵を付けた後、同じ塩水噴霧を所定時間継続した後、試験片表面を観察し、疵部からの最大腐食幅を測定した。腐食幅が1mm以下を◎,1〜3mmを○,3〜5mmを△,5〜10mmを▲,10mm以上を×として疵部の耐食性を評価した。
〔塗膜密着試験〕
溶剤系のアミノアルキッド塗料(アミラック1531:関西ペイント株式会社製)を化成処理後の亜鉛系めっき鋼板に塗布し加熱・乾燥することにより、乾燥膜厚:30μmの塗膜を形成した。塗装した亜鉛系めっき鋼板について、次の二法で塗膜密着性を調査した。
評価A(平坦部の塗膜密着性):塗装鋼板を90℃の熱水に2時間浸漬した後、JIS K5400の碁盤目法に準拠した試験で残存率:80%以上の塗膜を○,60〜80%を△,60%未満を×として塗膜密着性を評価した。
評価B(加工部の塗膜密着性):90℃の熱水に2時間浸漬した塗装鋼板をエリクセン5mm張出し加工した後、JIS K5400の碁盤目法に準拠した試験で残存率:80%以上の塗膜を○,60〜80%を△,60%未満を×として塗膜密着性を評価した。
表5の腐食試験結果にみられるように、本発明で規定した条件を満足するリン酸塩皮膜,化成皮膜を設けた塗装鋼板は、平坦部耐食性,疵部耐食性共にクロメート皮膜を設けた試験No.19を凌駕する特性を呈し、塗膜密着性も良好であった。
これに対し、シランカップリング剤の添加量が少ない試験No.12では、加工部の塗膜密着性に劣っていた。逆に、シランカップリング剤が多すぎる試験No.13では、シランカップリング剤相互の加水分解反応のため化成処理液が不安定であった。シリカ微粒子表面に固定されたシランカップリング剤量が不足する試験No.14では加工部の塗膜密着性が低く、過剰量のシランカップリング剤がシリカ微粒子表面に固定された試験No.15では化成処理液の安定性が低下した。
リン酸塩処理せずに化成処理した試験No.16やシリカ微粒子無添加の化成処理液を用いた試験No.18では平坦部耐食性,疵部耐食性,塗膜密着性の何れにも劣っており、シランカップリング剤無添加の化成処理液を用いた試験No.17では加工部の塗膜密着性に劣っていた。リン酸塩結晶の平均高さの半分を超える膜厚の化成皮膜を形成した試験No.20でも塗膜密着性に劣っていた。
Figure 2007039736
以上の例では、電気亜鉛めっき鋼板を化成処理原板に使用したが、溶融亜鉛めっき鋼板,溶融亜鉛合金めっき鋼板,合金化亜鉛めっき鋼板等、他の亜鉛系めっき鋼板を化成処理原板に用いてリン酸塩処理,化成処理した場合でも、シランカップリング剤の一部がシリカ微粒子表面に固定したシランカップリング剤/シリカ微粒子の混合処理液で化成処理することにより、同様に耐食性,後塗装性に優れた亜鉛系めっき鋼板となった。
以上に説明したように、リン酸塩皮膜に積層する化成皮膜を、シランカップリング剤の一部がシリカ微粒子表面に固定されたシランカップリング剤/シリカ微粒子の混合処理液から成膜すると、クロメート皮膜を凌駕する耐食性,塗膜密着性を亜鉛系めっき鋼板に付与できる。化成処理された亜鉛系めっき鋼板は、優れた耐食性,塗膜密着性を活用し、外装材,内装材,表装材,車両用鋼板等の素材として広範な分野で使用される。
亜鉛系めっき鋼板表面に析出させたリン酸塩結晶の間及びリン酸塩結晶表面にシリカ微粒子を付着させた化成処理鋼板の表面を示す模式図 リン酸塩皮膜をシリカ微粒子でシーリングすると、加工時に亀裂が入りやすいことを説明する図 シランカップリング剤の分析結果を示す核磁気共鳴分析グラフ
符号の説明
1:亜鉛系めっき鋼板 2:リン酸塩結晶 3:シリカ微粒子 4:亀裂

Claims (3)

  1. 亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板を基材とし、基材表面にリン酸塩皮膜が設けられ、リン酸塩皮膜の析出結晶表面及び隣り合う析出結晶間の基材表面にシランカップリング剤,シリカ微粒子の混合物が付着した化成皮膜が設けられており、
    前記混合物は、シランカップリング剤/シリカ微粒子の配合比が0.05〜0.5の範囲にあり、シリカ微粒子の表面にシランカップリング剤の一部が結合し、シリカ微粒子表面に結合していないフリーのシランカップリング剤29Si(-O-)3とシリカ微粒子表面に結合しているシランカップリング剤29Si(-O-)4の核磁気共鳴分析(NMR)のピーク面積比R:29Si(-O-)329Si(-O-)4が0.16〜5.0の範囲にあることを特徴とする
    耐食性,後塗装性に優れた亜鉛系めっき鋼板。
  2. 面積比率:50%以上で基材表面がリン酸塩皮膜で覆われている請求項1記載の亜鉛系めっき鋼板。
  3. 化成皮膜の膜厚は、基材表面から起立する析出結晶の平均高さの半分以下である請求項1又は2記載の亜鉛系めっき鋼板。
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