以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の使い捨ておむつの一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつの斜視図が示されている。図2には、図1に示すおむつを組み立てる前の状態の分解斜視図が示されている。
本実施形態のおむつ1は、液透過性の表面シート2、撥水性の裏面シート3及び両シート2、3間に介在配置された液保持性の吸収性コア4を有する実質的に縦長の吸収体本体10と、該吸収体本体10の非肌当接面側である裏面シート3側に配された外包材11とを備えている。
外包材11は、その両側縁が、長手方向中央部において内方に括れた砂時計形の形状をしている。そして、外包材11の輪郭がおむつ1の輪郭を画成している。外包材11はその長手方向において、着用者の腹側に配される腹側部Aと背側に配される背側部Bとその間に位置する股下部Cとに区分される。腹側部A及び背側部Bは、外包材11の長手方向前後端部に相当し、股下部Cは外包材11の長手方向中央部に相当する。外包材11は、その腹側部Aの両側縁と背側部Bの両側縁とが互いに接合されて、おむつ1にはウエスト開口部5及び一対のレッグ開口部6が形成される。この接合によって、おむつ1の左右両側縁には一対のサイドシール部Sが形成される。この接合には例えばヒートシール、高周波シール、超音波シール等が用いられる。
表面シート2、裏面シート3及び吸収性コア4はそれぞれ矩形状であり、一体化されて縦長の吸収体本体10を形成している。表面シート2及び裏面シート3としては、従来この種のおむつに用いられているものと同様のものを用いることができる。また吸収性コア4は、高吸収性ポリマーの粒子及び繊維材料から構成されており、ティッシュペーパ(図示せず)によって被覆されている。
図2に示すように、吸収体本体10の長手方向の左右両側には、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性の素材から構成された側方カフス8、8が形成されている。各側方カフス8は、吸収体本体10の長手方向に沿って固定端部及び自由端部を有している。固定端部は、表面シート2に固定されている。更に、固定端部及び自由端部は、吸収体本体10の長手方向両端部(図3における上下方向の端部)において表面シート2に固定されている。一方、自由端部の近傍には、側方カフス弾性部材81が伸張状態で配されている。これにより、図1のように組み立てられたおむつ1を着用させる際には、弾性部材81が縮むことにより側方カフス8が起立して、吸収体本体10の幅方向への液の流出が阻止される。
外包材11は、複数のシートが積層された構造を有している。本実施形態においては2枚の不織布、即ち外層不織布12と、該外層不織布12の内面側に配された内層不織布13から外包材11が構成されている。外層不織布12はおむつ1の外面をなしている。内層不織布13は、外層不織布12の内面側において、所定の手段によって外層不織布12と接合されている。外層不織布12と内層不織布13は液の染み出し性を考慮すると、共に撥水性であることが好ましい。外層不織布12及び内層不織布13の詳細については、追って詳細に説明する。
外包材11における前後端部には、前後端縁に沿って、複数のウエスト部弾性部材51、51がその幅方向に亘り配されている。各ウエスト部弾性部材51、51は、外層不織布12と内層不織布13とによって伸張状態で挟持固定されている。各ウエスト部弾性部材51、51は、おむつ1の腹側部Aの両側縁と背側部Bの両側縁とを互いに接合(接合部分)させたときに、両弾性部材51、51の端部同士が重なるように配されているか、両接合部分まで両弾性部材51、51の端部が連続配置されている。これによって、図1に示すように、おむつ1のウエスト開口部5の付近には実質的に連続したリング状のウエストギャザーが形成される。
外包材11は、吸収体本体10の前後端縁から外方に延出しており、延出した部分が吸収体本体10側に折り返されている。折り返された外包材11は、吸収体本体10の前後端部上(即ち吸収体本体10の前後端部における表面シート2上)を被覆している。なお、この構成に代えて、外包材11における外層不織布12のみを、外層不織布12と内層不織布13とによって各ウエスト部弾性部材51,51を挟持固定する部位よりも更に延出させ、延出した外層不織布12を吸収体本体10側に折り返すこともできる。
外包材11における左右両側の湾曲部には、レッグ部弾性部材61a,61bが配されている。各レッグ部弾性部材61a,61bは、前記湾曲部に沿って配されている。各レッグ部弾性部材61a,61bは、外層不織布12と内層不織布13との間に配されており、所定の接合手段によって、両不織布12、13に伸張状態で固定されている。各レッグ部弾性部材61a,61bは、その一端どうしが股下部Cにおいて重なり合っている。一方、他端は腹側部A及び背側部Bの各側縁の位置において終端している。各レッグ部弾性部材61a,61bは、おむつ1の腹側部Aの両側縁と背側部Bの両側縁とを互いに接合させたときに、両弾性部材61a,61bの端部同士が重なるように配されているか、両接合部分まで両弾性部材61a,61bの端部が連続配置されている。これによって、図1に示すように、おむつ1のレッグ開口部6、6の付近には実質的に連続したリング状のレッグギャザーが形成される。
本実施形態のおむつ1における各弾性部材としてはそれぞれ、天然ゴム、ポリウレタン系樹脂、発泡ウレタン系樹脂、伸縮性不織布又はホットメルト系伸縮部材等の伸縮性素材を糸状(糸ゴム)、帯状(平ゴム)、ネット状(網状)又はフィルム状に形成したものが好ましく用いられる。
而して、本実施形態のおむつ1においては、外包材11として伸縮性を有するものを用いている。詳細には次の通りである。先に述べた通り、外包材11は2層のシート、即ち外層不織布12と内層不織布13の積層構造体から構成されている。2層のシートのうち、少なくとも1枚のシート、本実施形態においては外層不織布12が伸縮性不織布から構成されている。もう一方のシートである内層不織布13は伸縮性は有していないものの、伸長性は有している。それによって外包材11は少なくともおむつ幅方向に伸縮性を有している。外包材11が少なくともおむつ幅方向に伸縮性を有していることで、外包材全体でおむつ1を着用者の身体にホールドすることが可能になる。従って、外包材11による締め付け力を、従来のおむつ(先に述べた特許文献1及び2に記載のおむつ)よりも比較的低圧とすることができる。このことは快適な装着感が得られる点、及びおむつ装着中に位置ずれが起こりにくくなる点から有利である。
伸縮性を有する不織布である外層不織布12においては、おむつ幅方向に延びる所定幅の領域70に、該外層不織布12の伸縮が抑制された多数の伸縮拘束部71が散点状に設けられている。拘束部71は、外層不織布12を構成する繊維が、所定手段によって伸縮しないようになっているか、又は伸縮の程度が低められている部位である。拘束部71は、例えば、後述するようにエンボス加工によって形成することができる。或いは接着剤を塗工することによって形成される。伸縮性や伸長性を有さない別部材を外層不織布12に取り付けてもよい。要は、外層不織布12を構成する繊維が伸縮しないようになるか、又は伸縮の程度が低められる手段であれば特に制限はない。拘束部71は、外層不織布12が自然状態(つまり伸長されていない状態)において形成される。
拘束部71は、おむつ1の腹側部A及び背側部Bの双方に形成されている。多数の拘束部71が設けられている領域70においては、伸縮は隣り合う拘束部71の間のみで可能になる。その結果、外層不織布12は、多数の拘束部71が設けられている領域70の伸縮性が、該外層不織布12の他の領域(つまり拘束部71が設けられていない領域)に比較して高められている。そこで、領域70のことを、以下の説明では高伸縮性領域70と呼ぶことにする。
本明細書において領域70が高伸縮性であるか否かは次のようにして判断する。領域70から幅40mm、長さ110mm以上の試料を切り出し、チャック間距離90mmの条件下、試料を300mm/minの定速で2倍(200%)に伸長させ、次いで同速で伸長を解放するときに測定される応力−伸長率のヒステリシス曲線を測定する。このヒステリシス曲線において、戻り時の伸長率150%のときの荷重を求める。領域70以外の領域から切り出された試料の同条件下での荷重も求め、領域70の荷重と比較する。領域70の荷重の方が高ければ、領域70は高伸縮性であると判断される。特に、領域70の荷重が、領域70以外の領域から切り出された試料の荷重の1.05〜1.80倍、特に1.05〜1.50倍であることが好ましい。前記の測定法によって測定された領域70の荷重それ自体は10〜100cN、特に15〜50cNであることが好ましい。本実施形態においては、おむつ幅方向に延びる縦長の試料を調製して測定する。
「高伸縮性領域70の伸縮性が、外層不織布12の他の領域に比較して高められている」とは、外層不織布12そのもので比較した場合でのことである。例えば、当該他の領域に弾性部材などの伸縮性を高める部材が配されている場合には、該弾性部材を含まない状態で測定された当該他の領域の伸縮性を、高伸縮性領域70の伸縮性と比較する。
外層不織布12における高伸縮性領域70の伸縮性が、他の領域よりも高められていることで、外包材全体としてみても、外包材11における高伸縮性領域70に対応する領域は、外包材11における他の領域よりも伸縮性が高められている。
前述の通り、高伸縮性領域70は、おむつ1の腹側部A及び背側部Bの双方において、おむつ幅方向に延びるように形成されている。腹側部Aの高伸縮性領域70と背側部Bの高伸縮性領域70とは互いに連接している。その結果、おむつ1には実質的に連続したリング状の高伸縮性領域が形成される。このリング状の高伸縮性領域による部分的な締め付け力と、外包材全体でおむつ1を着用者の身体にホールドすることとの相乗効果で、おむつ1の位置ずれが一層起こりにくくなる。本実施形態では、高伸縮性領域70がおむつ1の腹側部A及び背側部Bの双方に形成されているが、これに代えて腹側部A及び背側部Bの一方だけに形成されていても、おむつのずれ落ちが防止される点から好ましい。また高伸縮性領域70は、おむつ1の幅方向全域にわたって形成されているよりも、左右のサイドシール部と吸収性コア4の側縁との間にのみ形成されている方が(図2参照)、装着者の動作によっておむつの腹囲部が大きく変動しても、外包材11の伸縮性が阻害されることが無くなる点からより好ましい。また装着時の外観や風合い、更に吸収性能的にも良好なものとなる。
また、高伸縮性領域70には弾性部材が配されていないので、使用者の肌に外包材11の締め付け跡が残りにくい。更に、弾性部材に特有のギャザーが形成されないので、おむつの外観がすっきりしたものになる。その上、おむつ内が気密になりにくくなり、おむつ1内の空気が外部へ放出されやすく、蒸れが起こりにくくなる。弾性部材が配されていないことは、経済的にも有利である。
本実施形態においては、外層不織布12に拘束部71が形成されていることに加えて、拘束部71によって外層不織布12と、他のシートである内層不織布13とが接合一体化されている。このような接合一体化は、拘束部71を例えばエンボス加工によって形成し、各不織布12,13の構成繊維を圧密化又は溶融フィルム化若しくは半フィルム化することで達成される。エンボス加工によって拘束部71を形成することは、外層不織布12を含む外包材全体の強度向上の点から有利である。また、エンボス加工によって形成される凹凸によって、外包材11と着用者の肌の接触面積が低減するという利点もある。
高伸縮性領域70の伸縮性を、外層不織布12における他の領域より高めるためには、例えば拘束部71の大きさや、隣り合う拘束部間の距離をコントロールすればよい。一般に、拘束部71の大きさを大きくし、また隣り合う拘束部間の距離を小さくすることで、伸縮性が高められる。この観点から、拘束領域の面積率が0.3〜45%、特に0.5〜35%であることが好ましい。また拘束領域の面積率をこの範囲にすることは、おむつ外観のデザインの面からも好ましい。ここで言う拘束領域の面積率は次式で算出される値である。
拘束領域の面積率(%)=(拘束領域の面積/拘束領域が付与されている全体の面積)×100
拘束部71の形状に特に制限はない。図1及び図2においては円形の拘束部71が示されている。この形状以外に、例えば三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形の形状、楕円形、長円形、或いはこれらの任意の組み合わせの形状とすることができる。また、拘束部71の配置パターンにも特に制限はない。図1及び図2においては千鳥格子状のパターンで拘束部71が配置されている状態が示されている。拘束部71の形状やその配置パターンを適宜調整することで、当該パターンによる装飾的な効果をおむつ1に付与することができる。
本実施形態のおむつの主たる着用対象者である幼児を考えた場合、おむつ1の展開状態において、腹側部Aの高伸縮性領域70の中心位置(おむつ1の長手方向に沿う中心位置)とおむつ1の長手方向中心線CLとの間の距離K1を180〜220mmとし、且つおむつ1の展開状態において、背側部Bの高伸縮性領域70の中心位置(おむつ1の長手方向に沿う中心位置)とおむつ1の長手方向中心線CLとの間の距離K2を180〜220mmとすることが好ましい。K1及びK2の値をこのようにすることで、おむつ1の着用中のずれ落ちを効果的に防止することができる。この位置は、おむつ1におけるウエスト開口部とレッグ開口部との間になる。K1及びK2は、特に185〜215mm、とりわけ190〜215mmであることが好ましい。なお、おむつ1の展開状態における長手方向の全長は440〜530mmであることが好ましい。おむつの展開状態とは、パンツ型おむつ場合、おむつのサイドシール部が接合される前の状態をいう。
高伸縮性領域70の幅(つまり、おむつ1の長手方向に沿う高伸縮性領域70の長さ)W1が15〜35mm、特に20〜35mm、とりわけ25〜30mmであると、おむつ1のずれ落ちを効果的に防止することができ、また着用状態でのおむつ1の外観やおむつ1の装着操作(はかせやすさ等)を向上させることができる。
次に、外包材11を構成する内層不織布及び外層不織布の詳細について説明する。内層不織布は、伸長性を有するものである。そのような不織布としては、例えばスパンボンド不織布を、その製造後に所定の倍率で延伸加工したもの、刃溝延伸加工(後述する図4に示す凹凸ロール133,134を備えた延伸装置による加工)した不織布、低交絡スパンレース、プリーツ加工不織布などが挙げられる。特に、低荷重時の伸度の点から、スパンボンド不織布を、その製造後に所定の倍率で延伸加工したものを用いることが材料強度の面からも好ましい。内層不織布は、その坪量が10〜80g/m2、特に15〜60g/m2であることが好ましい。
外層不織布は、伸縮性を有するものである。そのような不織布としては、弾性繊維を含む、各種不織布製造方法で得られた不織布が挙げられる。例えば、先に述べた特許文献3に記載の伸縮性不織布を用いることができる。特に好ましい不織布は、図3に示すように、弾性繊維層101の両面に、同一の又は異なる、実質的に非弾性の非弾性繊維層102,103が積層されて構成されている伸縮性不織布100である。
弾性繊維層101と、非弾性繊維層102,103とは、弾性繊維層101の構成繊維が繊維形態を保った状態で、繊維交点の熱融着によって全面で接合されている。弾性繊維層101と、非弾性繊維層102,103とが全面接合されている伸縮性不織布100においては、弾性繊維層101と、非弾性繊維層102,103との界面及びその近傍において、弾性繊維層101の構成繊維と、非弾性繊維層102,103の構成繊維との交点が熱融着しており、実質的に全面で均一に接合されている。全面で接合されていることによって、弾性繊維層101と、非弾性繊維層102,103との間に浮きが生じること、つまり、両層が離間して空間が形成されることが防止される。両層間に浮きが生じると、弾性繊維層と非弾性繊維層との一体感がなくなり伸縮性不織布100の風合いが低下する傾向にある。この伸縮性不織布100は、あたかも一層の不織布ごとき一体感のある多層構造のものである。
「弾性繊維層101の構成繊維が繊維形態を保った状態」とは、弾性繊維層101の構成繊維のほとんどが、熱や圧力等を付与された場合であっても、フィルム状、又はフィルム−繊維構造に変形していない状態をいう。弾性繊維層101の構成繊維が繊維形態を保った状態にあることで、伸縮性不織布100には十分な通気性が付与されるという利点がある。
弾性繊維層101は、その層内において、構成繊維の交点が熱融着している。同様に、非弾性繊維層102,103も、その層内において、構成繊維の交点が熱融着している。
2つの非弾性繊維層102,103のうちの少なくとも一方においては、その構成繊維の一部が弾性繊維層1に入り込んだ状態、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維の一部が少なくとも一方の非弾性繊維層102,103に入り込んだ状態になっている。このような状態になっていることで、弾性繊維層101と、非弾性繊維層102,103との一体化が促進され、両層間に浮きが生じることが一層効果的に防止される。結果としてそれぞれの層の表面に追従した形で層と層が組み合わさっている状態となる。非弾性繊維層の構成繊維は、その一部が弾性繊維層101に入り込み、そこにとどまっているか、或いは弾性繊維層101を突き抜けて、他方の非弾性繊維層にまで到達している。それぞれの各層において表面繊維間を結ぶ面をマクロ的に想定したとき、この面から層の内側に形成される繊維空間に、他の層の構成繊維の一部が前記層の断面厚み方向へ入り込んでいる。非弾性繊維層の構成繊維が弾性繊維層101に入り込み、そこにとどまっている場合、該構成繊維は、更に弾性繊維層101の構成繊維と交絡していることが好ましい。同様に、非弾性繊維層の構成繊維が弾性繊維層101を突き抜けて、他方の非弾性繊維層にまで到達している場合には、該構成繊維は、他方の非弾性繊維層の構成繊維と交絡していることが好ましい。これは伸縮性不織布の厚み方向断面をSEMやマイクロスコープなどで観察した際に、層間において実質的に空間が形成されていないことで確認される。また、ここで言う「交絡」とは、繊維どうしが十分に絡み合っている状態を意味し、繊維層を単に重ね合わせただけの状態は交絡に含まれない。交絡しているか否かは、例えば、繊維層を単に重ね合わせた状態から、繊維層を剥離するときに要する力と、繊維層を重ね合わせ、それに熱融着を伴わないエアスルー法を適用した後に、繊維層を剥離する力とを比較して、両者間に実質的に差異が認められる場合には、交絡していると判断できる。
非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層に入り込ませる、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維を非弾性繊維層に入り込ませるには、非弾性繊維層の構成繊維と非弾性繊維層の構成繊維を熱融着させる処理前において非弾性繊維または弾性繊維の少なくともどちらかがウエブ状態(熱融着していない状態)であることが好ましい。構成繊維を他の層に入り込ませる観点から、ウエブ状態である繊維層は、短繊維の方が長繊維に比べ自由度が高いことから好ましい。
また、非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層に入り込ませる、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維を非弾性繊維層に入り込ませるには、エアスルー法を用いることが好ましい。エアスルー法を用いることで、相対する繊維層に構成繊維を入り込ませ、また、相対する繊維層から構成繊維を入り込ませることが容易となる。またエアスルー法を用いることで、非弾性繊維層の嵩高さを維持しつつ、非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層に入り込ませることが容易となる。非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層を突き抜けさせて他方の非弾性繊維層にまで到達させる場合にも、同様にエアスルー法を用いることが好ましい。特に、ウエブ状態の非弾性繊維層を、弾性繊維層と積層して、エアスルー法を用いることが好ましい。この場合、弾性繊維層はその構成繊維同士が熱融着をしていてもよい。さらに、後述する製造方法において説明するように、特定の条件下でエアスルー法を行うことで、また、熱風の通りをよくするため伸縮性不織布の通気性、特に弾性繊維層の通気度を高いものとすることで、繊維をより均一に入り込ませることができる。エアスルー法以外の方法、例えばスチームを吹きかける方法も使用することができる。また、スパンレース法、ニードルパンチ法などを用いることも可能であるが、その場合には非弾性繊維層の嵩高さが損なわれたり、表面に弾性繊維層の構成繊維が表面にでてきてしまい、得られる伸縮性不織布の風合いが低下する傾向にある。
特に、非弾性繊維層の構成繊維が、弾性繊維層1の構成繊維と交絡している場合には、エアスルー法のみによって交絡していることが好ましい。
エアスルー法によって繊維を交絡させるためには、気体の吹きつけ圧、吹きつけ速度、繊維層の坪量や厚み、繊維層の搬送速度等を適切に調整すればよい。通常のエアスルー不織布を製造するための条件を採用しただけでは、非弾性繊維層の構成繊維と弾性繊維層の構成繊維とを交絡させることはできない。後述する製造方法において説明するように、特定の条件下でエアスルー法を行うことによって、目的とする伸縮性不織布が得られる。
エアスルー法では一般に、所定温度に加熱された気体を、繊維層の厚み方向に貫通させている。その場合には、繊維の交絡及び繊維交点の融着が同時に起こる。しかし本実施形態においては、エアスルー法によって各層内の構成繊維間で繊維交点を融着させることは必須ではない。換言すれば、エアスルー法は、非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層に入り込ませるために、或いは、該構成繊維を弾性繊維層の構成繊維と交絡させ、そして、非弾性繊維層の構成繊維と弾性繊維層の構成繊維とを熱融着させるために必要な操作である。また、繊維が入り込む方向は、加熱された気体の通過方向と非弾性繊維層と弾性繊維層との位置関係によって変わる。非弾性繊維層は、エアスルー法によって、その構成繊維内で繊維交点が融着されたエアスルー不織布となることが好ましい。
以上の説明から明らかなように、伸縮性不織布100の好ましい形態においては、実質的に非弾性の非弾性エアスルー不織布の厚み方向内部に、構成繊維が繊維形態を保った状態の弾性繊維層が含まれており、該エアスルー不織布の構成繊維の一部が弾性繊維層に入り込んだ状態、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維の一部が非弾性繊維層に入り込んだ状態になっている。更に好ましい形態においては、エアスルー不織布の構成繊維の一部が弾性繊維層の構成繊維とエアスルー法によってのみ交絡している。弾性繊維層がエアスルー不織布の内部に含まれていることによって、弾性繊維層の構成繊維は、実質的に伸縮性不織布の表面には存在しないことになる。このことは、弾性繊維に特有のべたつき感が生じない点から好ましいものである。
弾性繊維層101は、弾性を有する繊維の集合体である。弾性を有する繊維の成形方法には、例えば溶融した樹脂をノズル孔より押出し、この押出された溶融状態の樹脂を熱風により伸長させることによって繊維を細くするメルトブローン方法と半溶融状態の樹脂を冷風や機械的ドロー比によって延伸するスパンボンド法がある。また、メルトブローン法の特殊な方法として、メルトブローン法にスパンボンド法を組み合わせたスピニングブローン法がある。また、弾性繊維層1は、弾性を有する繊維からなるウエブや不織布の形態であり得る。例えば、スピニングブローン法、スパンボンド法、メルトブローン法等によって形成されたウエブや不織布であり得る。特に好ましくは、スピニングブローン法で得られたウエブである。
スピニングブローン法においては、溶融ポリマーの吐出ノズルの先端近辺に、一対の熱風吐出部を、前記ノズルを中心に対向配置し、その下流に一対の冷風吐出部を、前記ノズルを中心に対向配置した紡糸ダイを用いる。スピニングブローン法によれば、溶融繊維の熱風による伸長と、冷風による冷延伸とが連続的に行われるので、伸縮性繊維の成形を容易に行えるという利点がある。また、繊維が緻密になりすぎず、短繊維に類した太さの伸縮性繊維を成形できるので、通気性の高い不織布が得られるという利点もある。更にスピニングブローン法によれば、連続フィラメントのウエブを得ることができる。連続フィラメントのウエブは、短繊維のウエブに比較して高伸張時の破断が起こりにくく、弾性を発現させやすいことから、本実施形態において極めて有利である。
弾性繊維層101の構成繊維としては、例えば熱可塑性エラストマー、ゴムなどを原料とする繊維を用いることができる。特に熱可塑性エラストマーを原料とする繊維は、通常の熱可塑性樹脂と同様に押出機を用いた溶融紡糸が可能であり、またそのようにして得られた繊維は熱融着させやすいので、エアスルー不織布を基本構成とする本実施形態の伸縮性不織布に好適である。熱可塑性エラストマーとしては、SBS、SIS、SEBS、SEPS等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーを挙げることができる。これらは一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
非弾性繊維層102,103は、伸長性を有するが、実質的に非弾性のものである。ここでいう、伸長性は、構成繊維自体が伸長する場合と、構成繊維自体は伸長しなくても、繊維どうしの交点において熱融着していた両繊維どうしが離れたり、繊維どうしの熱融着等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたりして、繊維層全体として伸長する場合の何れであっても良い。
非弾性繊維層102,103を構成する繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる繊維等が挙げられる。非弾性繊維層102,103を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でも良く、親水性でも撥水性でも良い。また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイドの複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの繊維は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。非弾性繊維層102,103は、連続フィラメント又は短繊維のウエブ又は不織布であり得る。特に、短繊維のウエブであることが、厚みのある嵩高な非弾性繊維層102,103を形成し得る点から好ましい。2つの非弾性繊維層102,103は、構成繊維の材料、坪量、厚み等に関して同じであっても良く、或いは異なっていてもよい。芯鞘型の複合繊維の場合、芯がPET、PP、鞘が低融点PET、PP、PEが好ましい。特にこれらの複合繊維を用いると、スチレン系エラストマーを含む弾性繊維層の構成繊維との熱融着が強くなり、層剥離が起こりにくい点で好ましい。
非弾性繊維層102,103の坪量そのものに関しては、弾性繊維層の表面を均一に覆う観点及び残留歪みの観点から、それぞれ1〜60g/m2、特に5〜15g/m2であることが好ましい。一方、弾性繊維層101の坪量そのものに関しては、伸縮特性及び残留歪みの観点から、非弾性繊維層102,103の坪量よりも大きいことが好ましい。具体的には5〜80g/m2、特に20〜40g/m2であることが好ましい。
伸縮性不織布100には、図3に示すように、非弾性繊維層102,103に、微小な凹部が形成されている。これによって、伸縮性不織布100は、その断面が、微視的には波形形状になっている。この波形形状は、後述する製造方法において説明するように、伸縮性不織布の100の延伸加工によって生じるものである。この波形形状は、伸縮性不織布100に伸縮性を付与した結果生じるものであり、伸縮性不織布100の風合いそのものに大きな影響を及ぼすものではない。
図3に示す伸縮性不織布100は、例えば図4に示す装置を用いて製造できる。先ず、非弾性の短繊維を原料として用い、カード機121によって非弾性繊維ウエブ103’を製造する。一方向に連続搬送される非弾性繊維ウエブ3’上には、スピニングブローン紡糸ダイ122によって製造された弾性繊維の連続フィラメントからなる弾性繊維ウエブ101’が積層される。弾性繊維ウエブ101’上には、カード機123によって製造された非弾性繊維ウエブ102’が積層される。
3つのウエブの積層体は、エアースルー方式のドライヤー124に送られ、そこで熱風処理が施される。熱風処理によって、主として熱風の吹き付け面側に位置する非弾性繊維ウエブ102’の構成繊維の一部が、弾性繊維ウエブ101’に入り込む。熱風処理の条件によっては、非弾性繊維ウエブ102’の構成繊維の一部が、弾性繊維ウエブ101’に入り込み、更に、該ウエブ101’の構成繊維と交絡する。或いは、非弾性繊維ウエブ102’の構成繊維の一部が、弾性繊維ウエブ101’を突き抜けて、非弾性繊維ウエブ103’にまで到達し、該ウエブ103’の構成繊維と交絡する。
非弾性繊維ウエブ102’の構成繊維の一部を、弾性繊維ウエブ101’に入り込ませる、及び/又は、弾性繊維ウエブ101’の構成繊維の一部を非弾性繊維ウエブ102’に入り込ませるための条件は、熱風風量0.4〜3m/秒、温度80〜160℃、搬送速度5〜200m/分であることが好ましい。特に好ましくは熱風風量1〜2m/秒である。上記条件は繊維を軟化させて均一に入り込ませる点と繊維融着させる点においても好ましい。さらに、繊維を交絡させるためには、熱風風量を3〜5m/秒とし、吹きつけ圧を0.1〜0.3kg/cm2とすることで可能となる。弾性繊維ウエブ101’の通気度が8m/kPa・s以上、更に好ましくは24m/kPa・s以上であると、熱風の通りがよくなり、繊維をより均一に入り込ませることができるので好ましい。また、繊維融着が良好で最大強度が高くなる。更にケバ立ちも防止される。
熱風処理においては、非弾性繊維ウエブ102’の構成繊維の一部が、弾性繊維ウエブ101’に入り込むのと同時に、非弾性繊維ウエブ102’の構成繊維及び/又は非弾性繊維ウエブ103’の構成繊維と、弾性繊維ウエブ101’の構成繊維とが、それらの交点で熱融着する。この場合、熱風処理によって弾性繊維ウエブ101’の構成繊維がフィルム状又は、或いはフィルム−繊維構造にならないように注意する。そして、熱風処理においては、非弾性繊維ウエブ102’の構成繊維どうしが交点において熱融着し、同様に弾性繊維ウエブ101’の構成繊維どうし、及び非弾性繊維ウエブ103’の構成繊維どうしが交点において熱融着する。
エアスルー法の熱風処理によって、3つのウエブが一体化された繊維シート100Aが得られる。ついで、3層構造の繊維シート100Aに対して延伸加工を施す。具体的には、繊維シート100Aを、それぞれ、大径部131,132と小径部(図示せず)が軸長方向に交互に形成された一対の凹凸ロール133,134を備えた延伸装置を用いて、繊維シート100Aを、その流れ方向に直交する方向(CD)に延伸させる。
延伸装置は、一方又は双方の凹凸ロール133,134の枢支部を公知の昇降機構により上下に変位させ、両者間の間隔を調節可能に構成されている。本製造方法においては、各凹凸ロール133,134を、一方の凹凸ロール133の大径部131が、他方の凹凸ロール134の大径部132間に遊挿され、他方の凹凸ロール134の大径部132が前記一方の凹凸ロール133の大径部131間に遊挿されるように組み合わせ、その状態の両ロール133,134間に、繊維シート100Aを挿入して、該繊維シート100Aを延伸させる。図4から明らかなように、延伸は繊維シート100Aの幅方向に行われる。この延伸によって目的とする伸縮性不織布100が得られる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態は、パンツ型の使い捨ておむつに係るものであったが、本発明は、これ以外の形態のおむつ、例えばテープ止めタイプの展開型使い捨ておむつにも同様に適用できる。
また前記実施形態においては、高伸縮性領域70が、おむつ1の左右両側縁と吸収性コア4の左右両側縁との間に亘って延在していたが、これに代えて、おむつ1の左右両側縁間に亘り連続して(即ち吸収性コア4を横切って)高伸縮性領域70が延在していてもよい。
また前記実施形態においては、おむつのウエスト開口部とレッグ開口部との間の位置に、おむつ幅方向に延びる高伸縮性領域70が形成されていたが、これに代えて、ウエスト開口部域に高伸縮性領域を形成してもよい。