以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1〜図4には、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつの一例であるおむつ1の基本構成が示されている。おむつ1は、着用者の前後方向に相当する縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有すると共に、股下部B並びに該股下部Bの前後から縦方向Xに延出する腹側部A及び背側部Cを有し、液保持性を有する吸収体23(吸収性コア24)を股下部Bに具備する。股下部Bは、おむつ1の着用状態において着用者の股間部に配される部位であり、腹側部Aは、おむつ1の着用状態において股下部Bよりも着用者の腹側即ち縦方向Xの前側に配される部位であり、背側部Cは、おむつ1の着用状態において股下部Bよりも着用者の背側即ち縦方向Xの後側に配される部位である。
おむつ1は、吸収体23を含む吸収性本体2を横方向Yの中央部に備えると共に、該吸収性本体2の非肌対向面側即ち該吸収性本体2よりも着用者の身体から遠い側に配された外装体3を備え、腹側部A(前身頃F)及び背側部C(後身頃R)それぞれにおける外装体3の縦方向Xに沿う両側縁部AS,CSどうしが、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されて、図1に示すように、一対のサイドシール部S,S、並びに着用者の胴が通されるウエスト開口部WH、及び着用者の下肢が通される一対のレッグ開口部LH,LHが形成されている。
おむつ1は、図2に示すように、おむつ1を縦方向Xに二分して横方向Yに延びる縦中心線CLxを基準として、着用状態において着用者の身体の前側(腹側)を覆う前身頃Fと、着用状態において着用者の身体の後側(背側)を覆う後身頃Rとに区分される。腹側部Aは前身頃Fの一部であり、背側部Cは後身頃Rの一部であり、股下部Bは前身頃Fと後身頃Rとに跨って存している。腹側部A及び背側部Cは、何れも縦方向Xにおいてサイドシール部Sと同位置にある部分(サイドシール部存在領域)であり、おむつ1の着用状態において着用者のウエスト部を含む胴周りに配される。股下部Bは、図2に示すように、縦方向Xにおいて、前身頃Fにおけるサイドシール部Sの下端Sbと後身頃Rにおけるサイドシール部Sの下端Sbとの間の領域であり、外装体3の縦方向Xに沿う両側縁部にレッグ開口部LH,LH形成用の凹欠部が形成されている領域である。
吸収性本体2は、図2に示す如きおむつ1の展開且つ伸長状態において、平面視長方形形状をなし、腹側部Aから背側部Cにわたって縦方向Xに延在しており、その長手方向を展開且つ伸長状態におけるおむつ1の縦方向Xに一致させて、外装体3の横方向Yの中央部に配置され、接着剤により外装体3に接合されている。おむつ1の「展開且つ伸長状態」とは、おむつ1をサイドシール部Sで切り離して展開状態とし、その展開状態のおむつ1を各部の弾性部材を伸長させて設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで拡げた状態をいう。
吸収性本体2は、図3に示すように、肌対向面を形成する液透過性の表面シート21、非肌対向面を形成する液不透過性若しくは液難透過性又は撥水性の裏面シート22、及び両シート21,22間に介在配置された液保持性の吸収体23を具備しており、これらが接着剤等の公知の接合手段により一体化されて構成されている。吸収体23は、液保持性の吸収性コア24と、該吸収性コア24の外面(肌対向面及び非肌対向面の両面)を被覆するコアラップシート25とを含んで構成されている。吸収性コア24とコアラップシート25との間は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されている。
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収性コア)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌から遠い側である。尚、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、即ち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味し、吸収性物品が該着用位置からずれた状態にある場合は含まない。
吸収性コア24は、扁平な単層構造を有するもので、図2に示す如き平面視において略砂時計状をなし、その横方向Yの長さが最も短い最幅狭部(平面視砂時計状における括れ部)が股下部Bに位置している。吸収性コア24は、図2に示すように、再幅狭部即ち括れ部と、該括れ部よりも縦方向Xの前側に位置するコア前方部と、該括れ部よりも縦方向Xの後側に位置するコア後方部とを有しているところ、該コア前方部と該コア後方部とは縦方向Xの長さが同じではなく、該コア後方部の方が縦方向Xの長さが長い。
おむつ1においては、図1及び図2に示すように、吸収性コア24の縦方向両端即ち縦方向Xの前端24a及び後端24bは、サイドシール部Sの下端Sbと同位置か、又は該下端Sbよりも下方即ち縦方向Xの内方即ち縦中心線CLx寄りに位置している。換言すれば、おむつ1における吸収性コア24は、図2に示す如きおむつ1の展開且つ伸長状態の平面視において、外装体3における腹側部Aの側縁部ASと背側部Cの側縁部CSとに挟まれた領域である、股下部Bのみに配されていて、股下部Bの縦方向Xの前後に位置する腹側部A及び背側部C即ち前記サイドシール部存在領域には配されていない。吸収性コア24の縦方向Xの全長は、股下部Bの縦方向Xの全長に比して短くなされている。
この種の吸収性物品においては通常、吸収性コアは腹側部Aから股下部Bを介して背側部Cにわたって延在しているから、おむつ1が有する、吸収性コア24が股下部B内に収まっているという構成は、従来品には無い特徴的な構成であると言える。おむつ1においては、縦方向長さが比較的短い吸収性コア24の採用と共に、腹側部A及び背側部Cそれぞれの縦方向Xの長さが従来品よりも短くなされており、その結果、図2に示す如き展開且つ伸長状態の平面視において、おむつ1の縦方向Xの全長は従来品よりも短くなされている。このような構成のおむつ1を着用し、さらにその上からズボン等の衣類を着用した場合には通常、おむつ1のウエスト部は衣類のウエスト部よりも低い位置にあるので、衣類のウエスト部からおむつ1のウエスト部がはみ出し難く、そのため、おむつを着用していることが他人に知られにくいという効果が奏される。斯かる効果を奏するおむつ1は、大人用あるいは介護用使い捨ておむつとして特に有用である。
おむつ1においては、前述したように、腹側部A及び背側部Cそれぞれの縦方向Xの長さが従来品よりも短くなされている。具体的には図2を参照して、一対のサイドシール部S,Sそれぞれの縦方向長さ、即ち前記サイドシール部存在領域たる腹側部A及び背側部Cそれぞれの縦方向長さALx,CLxは、当該サイドシール部Sにて接合されている腹側部Aの外装体3の側縁部AS及び背側部Cの外装体3の側縁部CSそれぞれの下端Sb,Sb間の縦方向Xに沿う長さ、即ち股下部Bの縦方向Xの長さを、3等分した場合のその1つ分の長さBLxに比して短い。つまり、おむつ1は、縦方向Xの長さに関して「BLx>ALx,CLX」なる大小関係を有しており、股上の浅いパンツ型使い捨ておむつである。
長さBLxと長さALx,Clxとの比率は、BLx/ALx又はBLx/Clxとして、好ましくは1より大きく、さらに好ましくは1.05以上、そして、好ましくは1.4以下、さらに好ましくは1.2以下である。
腹側部Aの縦方向長さALx及び背側部Cの縦方向長さCLx、即ち前記サイドシール部存在領域の縦方向長さは、BLxに比して短いことを要件として、好ましくは50mm以上、さらに好ましくは100mm以上、そして、好ましくは200mm以下、さらに好ましくは150mm以下である。長さALxと長さCLxとは、互いに同じでも良く、異なっていても良い。
股下部Bの縦方向Xの長さ、即ち、サイドシール部Sにて接合されている腹側部Aの外装体3の側縁部AS及び背側部Cの外装体3の側縁部CSそれぞれの下端Sb間の縦方向Xに沿う長さは、好ましくは300mm以上、さらに好ましくは360mm以上、そして、好ましくは600mm以下、さらに好ましくは450mm以下である。
股下部Bの縦方向長さの3分の1の長さであるBLxは、好ましくは100mm以上、さらに好ましくは120mm以上、そして、好ましくは200mm以下、さらに好ましくは150mm以下である。
吸収性コア24の外面を被覆するコアラップシート25は、図2に示すように、吸収性コア24よりも縦方向Xの長さが長く、吸収性コア24の縦方向Xの前後端24a,24bそれぞれから縦方向Xの外方に延出し、股下部Bのみならず、腹側部A及び背側部Cにも配されている。コアラップシート25は、吸収性コア24の外面全体を被覆し得る大きさを有する1枚の連続したシートであっても良く、あるいは、吸収性コア24の肌対向面を被覆する1枚の肌側コアラップシートと、非肌対向面を被覆する1枚の非肌側コアラップシートとから構成されていても良い。
表面シート21及び裏面シート22も同様に、吸収性コア24よりも縦方向Xの長さが長く、吸収性コア24の縦方向Xの前後端24a,24bそれぞれから縦方向Xの外方に延出し、その延出部が腹側部A及び背側部Cに配されている。本実施形態において、表面シート21及び裏面シート22の縦方向Xの前後端の位置と、コアラップシート25の縦方向Xの前後端の位置とは同じになっている。
表面シート21、裏面シート22並びに吸収体23を構成する吸収性コア24及びコアラップシート25としては、それぞれ、この種の吸収性物品に従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート21としては各種の不織布や開孔フィルム等を用いることができ、裏面シート22としては樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布等とのラミネート等を用いることができる。吸収性コア24は、吸収性材料を含むコア形成材料の堆積物である。吸収性材料としては、この種の吸収性コアの形成材料として通常用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えば、木材パルプ、親水化剤により処理された合繊繊維等の親水性繊維や吸水性ポリマー粒子が挙げられる。即ち、吸収性コア24は、親水性繊維の積繊体、あるいは該積繊体に吸水性ポリマー粒子を担持させたものであり得る。コアラップシート25としては、紙、不織布等の液透過性シートを用いることができる。
図2及び図3に示すように、吸収性本体2の肌対向面における縦方向Xに沿う左右両側部には、液抵抗性又は撥水性で且つ通気性のシート材から構成された一対の防漏カフ26,26が設けられている。各防漏カフ26の自由端部の近傍には糸状の防漏カフ形成用弾性部材27が1本以上縦方向Xに伸長状態で配されている。防漏カフ26は、伸長状態で配された弾性部材27がおむつ1の着用時に収縮することによって少なくとも股下部Bで起立し、それによって尿等の排泄液の横方向Yの外方への流出を阻止する。
外装体3は、図2に示す如き展開且つ伸長状態のおむつ1の外形を形作っており、外装体3の周縁は、その状態のおむつ1の輪郭線、即ち腹側部A、股下部B及び背側部Cそれぞれの輪郭線を形成している。外装体3は、図2に示すように、腹側部A及び背側部Cにおいては、縦方向Xよりも横方向Yの長さが長い矩形形状をなし、腹側部Aと背側部Cとの間に位置する股下部Bにおいては、外装体3の縦方向Xに沿う両側縁部即ち一対のレッグ縁部LS,LSが横方向Yの中央に向かって凸の円弧状に湾曲しており、図2に示す如き平面視において、縦方向Xの中央域が横方向Yの内方に向けて括れた砂時計状をなしている。
外装体3は、図3及び図4に示すように、着用状態においておむつ1の外面即ち非肌対向面を形成する外層シート31と、外層シート31の肌対向面に対向配置された内層シート32との積層体を含んで構成されている。おむつ1の着用状態において、外層シート31は着用者の身体から遠い側に位置して、おむつ1の非肌対向面(外面)を形成し、内層シート32は着用者の身体に近い側に位置して、おむつ1の肌対向面(内面)を形成する。外層シート31と内層シート32とは、所定の部位において接着剤等の接合手段を介して互いに接合されている。外層シート31は、図4に示すように腹側部A及び背側部Cに、内層シート32の縦方向Xの端縁から延出する部分31Eを有し、その延出部31Eは、図2に示すように、内層シート32の肌対向面側に折り返され、吸収性本体2の縦方向Xの端部を被覆している。
本実施形態においては、図4に示すように、内層シート32は1枚の連続したシートから構成されているのに対し、外層シート31は複数枚のシートが組み合わされて構成されており、具体的には、腹側部Aを構成する腹側外層シート31Aと、背側部Cを構成する背側外層シート31Cと、両シート31A,31C間に位置して股下部Bを構成する股下外層シート31Bとを含んで構成されている。外層シート31を構成する各シート31A,31B,31Cは、それらの縦方向Xの端部どうしが重ね合わされ、その重ね合わせ部分において接着剤、ヒートシール、高周波シール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合され一体化されている。シート31A,31Cとシート31Bとの重ね合わせ部分においては、それぞれ、縦方向Xの中央に位置するシート31Bが吸収性本体2から相対的に近い側に位置し、シート31Bの縦方向Xの両端部の非肌対向面はシート31A,31Cで被覆されている。
外装体3を構成するシート31(31A,31B,31C),32は、互いに同種のシートでも良く、あるいは異種のシートでも良く、後者の例として、伸縮性が互いに異なる形態が挙げられる。具体的には例えば、腹側外層シート31A及び背側外層シート31Cとしては、横方向Yに伸縮性を有する伸縮シートを用い、外層シート31の残りの部分即ち股下外層シート31B及び内層シート32は、伸縮性を有していない非伸縮シートを用いることができる。外装体3として使用可能な伸縮シートとしては、例えば、弾性繊維層の両面又は片面に伸長可能な繊維層が一体化されている伸縮シートが挙げられ、弾性繊維層と伸長可能な繊維層との一体化の方法としては、例えば、両者を積層して水流交絡する方法、エアスルー等により繊維を交絡させる方法、ヒートエンボス、接着剤、超音波等によって接合させる方法が挙げられる。伸縮シートの好ましい具体例については後述する。また、外装体3として使用可能な非伸縮シートとしては、例えば、各種製法による不織布が挙げられ、具体的にはスパンボンド不織布、エアスルー不織布、ニードルパンチ不織布を例示できる。
本明細書において「伸縮性」とは、所定方向に伸長可能であり且つ伸長を解除すると収縮する性質を意味する。シートが、ある方向に実質的に伸縮性を有しない(非伸縮性である)とは、該シートに対して当該ある方向に引っ張る力を加えても、該シートが、殆ど伸びないことを意味する。例えば、長さ15×幅5cmのサンプルに対して、該サンプルをテンシロン等の材料引っ張り試験機で長手方向に引っ張って、該サンプルが破断するときの破断伸度が10%以下である場合、そのサンプルは、長手方向に実質的に伸縮性を有しない。尚、破断伸度とは(破断時の該サンプル長さ−該サンプルの元の長さ)/(該サンプルの元の長さ)×100で算出することができる。
おむつ1においては、前記サイドシール部存在領域たる腹側部A及び背側部Cそれぞれは、図2及び図5に示すように、ウエスト開口部WH(おむつ1の縦方向端1E)に近い順に、ウエスト部10、中間部11及びレッグ部12を縦方向Xに有している。ウエスト部10及びレッグ部12は、それぞれ、「横方向に伸長状態で接着剤によりシート状部材に接合された糸状又は帯状の特定弾性部材」を有している領域であるのに対し、中間部11は該特定弾性部材を有していない領域である。
前記特定弾性部材は、接着剤によりシート状部材に接合されたものであるから、後述する伸縮シートにおける弾性フィラメントの如き、接着剤ではなく融着によってシート状部材に接合された弾性部材は、前記特定弾性部材ではない。また前記特定弾性部材は、横方向Yに伸長状態で配されたものであるから、縦方向Xに伸長状態で配された防漏カフ形成用弾性部材27(図3参照)は、前記特定弾性部材ではない。前記特定弾性部材としては、この種の吸収性物品に通常用いられる糸状又は帯状の弾性部材を特に制限なく用いることができ、例えば、天然ゴム、ポリウレタン系樹脂、発泡ウレタン系樹脂、ホットメルト系伸縮部材等の伸縮性素材を糸状(糸ゴム)又は帯状(平ゴム)に形成したものが挙げられる。
腹側部A及び背側部Cそれぞれのウエスト部10が有する前記特定弾性部材は、ウエスト弾性部材33である。図2に示すように、ウエスト部10においては、腹側外層シート31A又は背側外層シート31Cと内層シート32という、2枚のシート状部材の間に、複数のウエスト弾性部材33が、縦方向Xに間欠的に配されていると共に、横方向Yの全長にわたって伸長状態で配され、且つこれら2枚のシート状部材に接着剤により固定されている。これによってウエスト部10には、伸縮性が付与されて、その全周にわたって実質的に連続した環状のウエストギャザーが形成される。
腹側部Aのレッグ部12が有する前記特定弾性部材は前側レッグ弾性部材34であり、背側部Cのレッグ部12が有する前記特定弾性部材は後側レッグ弾性部材35である。レッグ部12においては、腹側外層シート31A又は背側外層シート31Cと内層シート32という、2枚のシート状部材の間に、複数の前側レッグ弾性部材34又は後側レッグ弾性部材35が、縦方向Xに間欠的に配されていると共に、伸長状態で接着剤により固定されている。これによって一対のレッグ開口部LH,LHそれぞれの開口縁部には、伸縮性が付与されて、レッグギャザーが形成される。
前側レッグ弾性部材34は、図2及び図4に示すように、前身頃F(腹側部A)における外装体3の両側縁部AS,AS(サイドシール部S)それぞれからレッグ縁部LSに沿って縦方向Xの内方且つ横方向Yの内方に延びて吸収性本体2の縦方向Xに沿う側縁2Sに達し、さらに該側縁2Sよりも横方向Yの内方に延びており、該弾性部材34の側縁部AS側とは反対側の端部は、吸収性本体2の配置領域に位置している。前身頃Fにおける外装体3の両側縁部AS,ASのうちの一方を起点とする前側レッグ弾性部材34と、他方を起点とする前側レッグ弾性部材34とは繋がっておらず、吸収性本体2の配置領域に存する両弾性部材34,34間においては、弾性部材による弾性伸縮性は発現しない。一側縁部ASを起点とする前側レッグ弾性部材34と他側縁部ASを起点とする前側レッグ弾性部材34とは、おむつ1を横方向Yに二分して縦方向に伸びる横中心線CLyを基準として左右対称に配されている。
後側レッグ弾性部材35は、図2及び図4に示すように、後身頃R(背側部C)における外装体3の両側縁部CS,CS(サイドシール部S)それぞれからレッグ縁部LSに沿って縦方向Xの内方且つ横方向Yの内方に延びて吸収性本体2の縦方向Xに沿う側縁2Sに達し、さらに該側縁2Sよりも横方向Yの内方に延びており、該弾性部材35の側縁部CS側とは反対側の端部は、吸収性本体2の配置領域に位置している。後身頃Rにおける外装体3の両側縁部CS,CSのうちの一方を起点とする後側レッグ弾性部材35と、他方を起点とする後側レッグ弾性部材35とは繋がっておらず、吸収性本体2の配置領域に存する両弾性部材35,35間においては、弾性部材による弾性伸縮性は発現しない。一側縁部CSを起点とする後側レッグ弾性部材35と他側縁部CSを起点とする後側レッグ弾性部材35とは、横中心線CLyを基準として左右対称に配されている。
そして、前側レッグ弾性部材34と後側レッグ弾性部材35とは、股下部Bの横方向Yの全域に亘って相互に離間している。
本実施形態においては、前側レッグ弾性部材34及び後側レッグ弾性部材35の両方を有しているが、本発明には、どちらか一方のレッグ弾性部材のみを有する形態が含まれる。
腹側部A及び背側部Cそれぞれにおいて、ウエスト部10は、おむつ1の縦方向端1Eから、複数のウエスト弾性部材33(前記特定弾性部材)のうちで縦方向端1Eから最も遠いものにわたる領域である。レッグ部12は、外装体3の側縁部AS,CSの下端Sbを通って横方向Yに延びる仮想直線(図示せず)から、複数のレッグ弾性部材34,35(前記特定弾性部材)のうちで該仮想直線から最も遠いものにわたる領域である。中間部11は、ウエスト部10とレッグ部12とに挟まれた領域であり、前記特定弾性部材が配されていない領域である。ウエスト部10、中間部11及びレッグ部12の何れも、腹側部A又は背側部Cの横方向Yの全長にわたって延在する。
おむつ1の主たる特徴の1つとして、前記サイドシール部存在領域たる腹側部A及び背側部Cそれぞれにおける各部の横方向Yの伸長応力が、ウエスト部10、レッグ部12、中間部11の順で大きい点が挙げられる。即ち、腹側部A及び背側部Cにおける横方向Yへの伸長応力は、ウエスト部10が最大、中間部11が最小であり、レッグ部12はこれらの中間の伸長応力を有する。
前述したようにおむつ1は、サイドシール部Sの縦方向長さ即ち腹側部A又は背側部Cの縦方向長さALx、CLxが、該サイドシール部Sにて接合されている腹側部A及び背側部Cそれぞれの外装体3の側縁部AS,CSの下端Sb,Sb間の縦方向長さを3等分した場合のその1つ分の長さBLxに比して短く(図2参照)、いわゆる股上の浅いパンツ型使い捨ておむつであるため、着用していることが周囲の人に知られにくいというメリットを有する。しかしその反面、おむつ1を着用者の身体に固定する役割を担う部材である、腹側部A及び背側部Cの外装体3が従来品に比して減少していることに起因して、おむつ1の身体に対する固定力の低減、延いてはおむつ1の着用中におけるずれ落ちが懸念される。
このような、股上が浅くずれ落ちが発生しやすいとの懸念に対し、おむつ1においては前述したように、腹側部A及び背側部Cそれぞれの横方向Yへの伸長応力の相互関係をウエスト部10>レッグ部12>中間部11とすることで斯かる懸念を払拭している。特にウエスト部10及びレッグ部12、とりわけウエスト部10の横方向Yへの伸長応力を相対的に強く設定することで、これらの部位による着用者の身体の締め付けが強くなって、おむつ1が着用時にずれ落ちることが効果的に防止される。また中間部11は、着用者の下腹部に配される部位であり、中間部11の横方向Yへの伸長応力が過大であると、下腹部の締め付けが強くなって着用者に不快な圧迫感を与えるおそれがあることから、ウエスト部10及びレッグ部12でおむつ1を着用者の身体にしっかりと固定することを前提として、中間部11は敢えて横方向Yへの伸長応力を相対的に小さく設定し、下腹部への圧迫の低減を図っている。また、レッグ部12の横方向Yへの伸長応力をウエスト部10のそれよりも小さく設定した理由は、レッグ部12の方がウエスト部10よりも着用者の下腹部に近く、レッグ部12の締め付けによる下腹部の圧迫が懸念されるためであり、相対的に下腹部から遠い位置にあるウエスト部10で、おむつ1の着用者の身体に対する固定を主に担保するというのが本発明の技術思想である。
尚、特許文献2記載のパンツ型使い捨ておむつにおいては、着用時のおむつのずれ落ちを防止するために、おむつの股下部における外装体に伸縮性プラスチックフィルムを用い、さらに後側レッグ弾性部材を縦方向に伸縮性を有するように配置することで、股下部(おむつの縦方向中央部)における外装体に縦方向の伸縮性を付与している。斯かる特許文献2記載のパンツ型使い捨ておむつの構成を、おむつ1に即して説明すると、特許文献2記載の後側レッグ弾性部材は、おむつ1における後側レッグ弾性部材35とは異なり、腹側部Aの側縁部ASの下端Sbからレッグ縁部LSに沿って延びて縦中心線CLxを縦方向に跨いでいる(特許文献2の図3参照)。斯かる後側レッグ弾性部材の配置により、特許文献2記載のパンツ型使い捨ておむつにおいては、外装体3における、縦中心線CLxを挟んでその縦方向Xの前後にわたる縦方向中央部に縦方向Xの伸縮性が付与されている。即ち、特許文献2の技術思想は、腹側部A及び背側部C(前記サイドシール部存在領域)ではなく、股下部Bで、おむつ1の着用者の身体に対する固定を主に担保するというものである。
これに対し、おむつ1においては図2に示すように、後側レッグ弾性部材35のみならず前側レッグ弾性部材34も、縦中心線CLxを縦方向に跨いでおらず、且つ前側レッグ弾性部材34と後側レッグ弾性部材35とは股下部Bの横方向Yの全域に亘って相互に離間してている。また、前述のように、股下外層シート31B及び内層シート32として、伸縮性を有していない非伸縮シートを用いており、縦方向Xの伸縮性を有していない。おむつ1においては、外装体3における、縦中心線CLxを挟んでその縦方向Xの前後にわたる縦方向中央部、より具体的には、縦中心線CLxを基準として縦方向Xの前後それぞれに50〜150mm以内の領域は、縦方向Xの伸縮性を有してない。
また、おむつ1は従来品よりも股上が浅い分、着用中のずれ落ちを一層確実に防止する観点から、腹側部A及び背側部Cの横方向Yへの伸長応力を従来品よりも大とする設計が採用され得るが、その場合、腹側部A及び背側部Cに他の部材に比して厚みの大きい吸収性コア24が配されていると、吸収性コア24が着用者の身体側に強く押し付けられて圧迫感が増すおそれがある。この点、おむつ1においては図2に示すように、吸収性コア24は、股下部Bのみに配されていて、腹側部A及び背側部C即ち前記サイドシール部存在領域には配されていないため、腹側部A及び背側部Cの締め付けが比較的強いものであっても、着用者に圧迫感を与え難い。従っておむつ1によれば、下腹部を強く圧迫することなく、着用時のずれ落ちを効果的に防止し、且つ着用していることが第三者に知られにくいという効果が奏される。
また、おむつ1においては、レッグ部12において図2に示すように、前記特定弾性部材たるレッグ弾性部材34,35は、横方向Yの中央部には配されずに、横方向Yの両側部に配されているところ、該横方向中央部の横方向長さ12C、即ちレッグ部12におけるレッグ弾性部材34,35の非配置部の横方向長さ12Cは、該横方向両側部それぞれにおけるレッグ弾性部材34,35の横方向Yに延びる部分の横方向長さ12Sの合計(12S+12S)に比して長くなされている。斯かる構成により、レッグ部12による着用者の下腹部の締め付けが抑制され、下腹部への圧迫感がより一層低減される。
レッグ部12の横方向中央部(前記特定弾性部材の非配置部)の横方向長さ12Cは、好ましくは200mm以上、さらに好ましくは300mm以上、そして、好ましくは500mm以下、さらに好ましくは450mm以下である。
レッグ部12の横方向両側部それぞれにおける前記特定弾性部材(レッグ弾性部材34,35の横方向Yに延びる部分)の横方向長さ12Sは、好ましくは50mm以上、さらに好ましくは75mm以上、そして、好ましくは270mm以下、さらに好ましくは220mm以下である。
長さ12Cと長さ12S+12Sとの比率は、12C/(12S+12S)として、好ましくは1より大きく、さらに好ましくは1.5以上、そして、好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。
前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、前記サイドシール部存在領域たる腹側部A及び背側部Cの各部の横方向Yの伸長応力は下記のように設定することが好ましい。伸長応力は下記方法により測定される。
ウエスト部10の伸長応力は、中間部11及びレッグ部12の伸長応力よりも大きいことを要件に、好ましくは4.0N/25mm以上、さらに好ましくは6.0N/25mm以上、そして、好ましくは10.0N/25mm以下、さらに好ましくは9.0N/25mm以下である。
中間部11の伸長応力は、ウエスト部10及びレッグ部12の伸長応力よりも小さいことを要件に、好ましくは0.2N/25mm以上、さらに好ましくは0.8N/25mm以上、そして、好ましくは3.0N/25mm以下、さらに好ましくは2.5N/25mm以下である。
レッグ部12の伸長応力は、中間部11の伸長応力よりも大きく、且つウエスト部10の伸長応力よりも小さいことを要件に、好ましくは1.0N/25mm以上、さらに好ましくは3.0N/25mm以上、そして、好ましくは7.0N/25mm以下、さらに好ましくは5.0N/25mm以下である。
<伸長応力の測定方法>
測定対象の吸収性物品(パンツ型使い捨ておむつ)の左右両側縁部(前記サイドシール部存在領域)を、縦方向にウエスト部、中間部、レッグ部の3つの領域に分断し、各領域に相当する輪っか状の試験片を容易する。各試験片の幅即ち吸収性物品における縦方向の長さは25mmとする。この試験片の左右両側縁部即ちサイドシール部を、一対のU字状の治具間に架け渡すようにして、引張試験機(例えば、オリエンテック社製の「RTA−100」等)のチャック間に固定する。そして、チャック間に固定した製品を、300mm/minの速度でチャック間が47.5cm(製品周長95cm相当)になるまで引っ張り、その時の応力を伸長応力(N/25mm)とする。
ウエスト部10の伸長応力と中間部11の伸長応力との比率は、ウエスト部10/中間部11として、好ましくは2.0以上、さらに好ましくは4.0以上、そして、好ましくは9.0以下、さらに好ましくは7.0以下である。
レッグ部12の伸長応力と中間部11の伸長応力との比率は、レッグ部12/中間部11として、好ましくは1.0より大きく、さらに好ましくは1.5以上、そして、好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下である。
ウエスト部10の伸長応力とレッグ部12の伸長応力との比率は、ウエスト部10/レッグ部12として、好ましくは1.0より大きく、さらに好ましくは1.5以上、そして、好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.5以下である。
腹側部A及び背側部Cの各部の横方向Yの伸長応力は、前記特定弾性部材たるウエスト弾性部材33、レッグ弾性部材34,35の数、弾性部材どうしの離間距離の他、前記特定弾性部材が接着剤を介して固定されているシート状部材、即ち腹側外層シート31A,背側外層シート31C、内層シート32の種類などを適宜調整することで調整可能である。
ウエスト部10におけるウエスト弾性部材33の数は、好ましくは3本以上、さらに好ましくは5本以上、そして、好ましくは10本以下、さらに好ましくは8本以下である。
ウエスト部10において縦方向Xに隣り合うウエスト弾性部材33の間隔は、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。
レッグ部12におけるレッグ弾性部材34,35の数は、好ましくは1本以上、さらに好ましくは3本以上、そして、好ましくは6本以下、さらに好ましくは4本以下である。
レッグ部12において縦方向Xに隣り合うレッグ弾性部材34,35の間隔は、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。
また、おむつ1の着用中におけるずれ落ちをより一層確実に防止する観点から、ウエスト部10及びレッグ部12の縦方向長さの合計(L1+L3)は、中間部11の縦方向長さL2に比して長いことが好ましい(図5参照)。
ウエスト部10の縦方向長さL1は、好ましくは10mm以上、さらに好ましくは20mm以上、そして、好ましくは50mm以下、さらに好ましくは40mm以下である。
中間部11の縦方向長さL2は、好ましくは30mm以上、さらに好ましくは50mm以上、そして、好ましくは120mm以下、さらに好ましくは80mm以下である。
レッグ部12の縦方向長さL3は、好ましくは10mm以上、さらに好ましくは20mm以上、そして、好ましくは50mm以下、さらに好ましくは40mm以下である。
L1+L3とL2との比率は、(L1+L3)/L2として、好ましくは1より大きく、さらに好ましくは1.2以上、そして、好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下である。
前述したように、外装体3、具体的には例えば、腹側外層シート31A及び背側外層シート31Cを構成するシート状部材としては、伸縮シートを使用することができる。この伸縮シートは、それ自体が全体的に伸縮性を有するもので、「2枚の非伸縮性のシート状部材間に糸状又は帯状の弾性部材が伸長状態で接着剤により接合された構成を有する複合伸縮材料」とは異なる。この複合伸縮材料は、弾性部材が配されていない部位は非伸縮性であり、シート全体が伸縮性を有する前記伸縮シートとは、構成及び伸縮特性が異なる。
図6には、前記伸縮シートの具体例が示されている。図6に示す伸縮シート36は、非弾性繊維を主体とする伸長可能な繊維層の一面に糸状の弾性フィラメントが接合した構成を有するもので、該繊維層としての2枚の繊維シート37,38と、両シート37,38間に介在配置された該弾性フィラメントとしての弾性部材39とを含んで構成されている。伸縮シート36は、前述したおむつ1において、外装体3を構成する腹側外層シート31A及び背側外層シート31Cとして好適に使用できる。
繊維シート37,38は、何れも非弾性繊維を主体とする伸長可能な繊維層である。非弾性繊維を主体とする繊維シート37,38それぞれの非弾性繊維の含有率は、好ましくは90質量%以上、更に好ましくは91質量%以上であり、100質量%であっても良い。
繊維シート37,38は、何れも伸長可能なものである。繊維シート37,38は、弾性フィラメント39の延びる方向即ち横方向Yと同方向に伸長可能になっている。伸長可能とは、(i)繊維シート37,38の構成繊維自体が伸長する場合と、(ii)構成繊維自体は伸長しなくても、交点において結合していた繊維どうしが離れたり、繊維どうしの結合等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたりして、繊維シート37,38全体として伸長する場合とを包含する。
繊維シート37,38は、弾性フィラメント39と接合される前の原反の状態で既に伸長可能になっていても良い。あるいは、弾性フィラメント39と接合される前の原反の状態では伸長可能ではないが、弾性フィラメント39と接合された後に伸長可能となるように加工が施されて、伸長可能になるものであっても良い。シートを伸長可能にするための具体的な方法としては、熱処理、ロール間延伸、歯溝やギアによるかみ込み延伸、テンターによる引張延伸等が挙げられる。後述する伸縮シート36の好適な製造方法に鑑みると、弾性フィラメント39を繊維シート37,38に融着させるときの繊維シート37,38の搬送性が良好になる点から、繊維シート37,38はその原反の状態では伸長可能でないことが好ましい。
繊維シート37,38は伸長可能であり、且つ実質的に非弾性である。弾性とは、伸ばすことができ且つ伸ばした力から解放したときに収縮する性質であるところ、繊維シート37,38は、斯かる性質を有していない。繊維シート37,38が弾性を有する場合には、その構成繊維として弾性樹脂を含む繊維が必要となり、弾性樹脂を含む繊維は、不織布の風合いを低下させる一因となるべたつき感を呈する傾向にある。従って、繊維シート37,38を実質的に非弾性となして、その風合いの低下を防止することが好ましい。
弾性フィラメント39は、後述するように、弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されて形成されたものである。これに対し、前記特定弾性部材は、前述した通り、接着剤によりシート状部材に接合されたものであるから、弾性フィラメント39は前記特定弾性部材ではない。
複数の弾性フィラメント39は、それぞれ、伸縮シート36の全長(外装体3の横方向Yの全長)にわたって実質的に連続している。複数の弾性フィラメント39は、互いに交差せずに一方向(横方向Y)に延びるように配列している。尚、本発明においては、伸縮シート36の製造条件の不可避的な変動に起因して、意図せず弾性フィラメント39が交差することは許容される。複数の弾性フィラメント39は、互いに交差しない限り、それぞれ、直線状に延びていても良く、あるいは蛇行しながら延びていても良い。
弾性フィラメント39は、実質的に非伸長状態で繊維シート37,38に接合されている。弾性フィラメント39が伸長していないため、伸長による緩和(クリープ)が起こらず、該弾性フィラメント39を繊維シート37,38と貼り合わせた後の原反保存時や延伸等の加工後における伸縮性の低下がないという利点がある。また、巻き取られた原反の巻き締まりによる変形もない。更に、例えば弾性フィラメント39を2倍に伸長させて繊維シート37,38と貼り合わせた場合に、初期の1.3倍まで仮に戻ったとすると、この状態からは1.7倍までしか伸ばすことができないが、非伸長状態で貼り合わせを行った場合には、伸縮シート36を伸長させたときの初期原点が異なるため、繊維シート37,38の伸長可能な長さまで又は弾性フィラメント39の最大伸度まで伸ばすことが可能となるという利点がある。
弾性フィラメント39の直径は、特に制限されないが、伸縮シート36の風合いと弾性フィラメント39の生産性とのバランス等の観点から、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上、そして、好ましくは200μm以下、さらに好ましくは130μm以下である。
弾性フィラメント39は、その断面が円形であり得るが、場合によっては楕円形の断面のこともある。例えば後述する製造方法に従い伸縮シート36を製造する場合には、弾性フィラメント39の断面は楕円形になりやすい傾向にある。この場合、伸縮シート36中において、弾性フィラメント39は、楕円形の長軸が伸縮シート36の平面方向と同方向になり、且つ短軸が伸縮シート36の厚さ方向と同方向になるように配置されることが好ましい。
隣り合う弾性フィラメント39,39のピッチ(隣り合う弾性フィラメントの中心間の距離)は、伸縮シート36が十分な伸縮性及び布様の良好な風合いを発現する等の観点から、弾性フィラメント39の直径が前述した範囲であることを条件として、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.4mm以上、そして、好ましくは5mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。
伸縮シート36において、複数の弾性フィラメント39は、それぞれ、その全長にわたって繊維シート37,38と接合している。ここで、「その全長にわたって接合している」とは、弾性フィラメント39と接触しているすべての繊維(繊維シート37,38の構成繊維)が、弾性フィラメント39と接合していることを要せず、弾性フィラメント39に、意図的に形成された非接合部が存在しないような態様で、弾性フィラメント39と繊維シート37,38の構成繊維(非弾性繊維)とが接合されていることを意味する。弾性フィラメント39が繊維シート37,38それぞれにその全長にわたって接合していることで、弾性フィラメント39と繊維シート37,38との接合力を十分に高めることができる。その結果、伸縮シート36を引き伸ばしても、弾性フィラメント39が繊維シート37,38から剥離し難くなる。弾性フィラメント39が繊維シート37,38から剥離してしまうと、自然状態(弛緩状態)において、弾性フィラメント39と繊維シート37,38との間に浮きが生じて、伸縮シート36に皺が発生しやすくなり、伸縮シート36全体としての一体感に欠けるものとなる。
また、伸縮シート36において、繊維シート37,38に含まれる多数の非弾性繊維の一部が、弾性フィラメント39と融着して該弾性フィラメント39中に埋没している。弾性フィラメント39中に埋没している非弾性繊維は、該弾性フィラメント39の周囲に存在する非弾性繊維の全てでも一部でも良い。ここで言う、「埋没」とは、非弾性繊維と弾性フィラメント39との交点において、非弾性繊維のうち該交点に存在している部位が、弾性フィラメント39のうち該交点に存在している部位中に潜り込んだ状態をいう。従って、非弾性繊維と弾性フィラメント39とがそれらの表面にて点や線で接合している状態は、本発明に係る埋没には含まれない。また、非弾性繊維と弾性フィラメント39との接合強度の向上の観点から、非弾性繊維は、その直径の半分以上の程度をもって弾性フィラメント39中に埋没していることが好ましい。
弾性フィラメント39と、繊維シート37,38に含まれる非弾性繊維との接合状態が前述の通りであることによって、弾性フィラメント39と、繊維シート37,38との接合強度が高くなり、伸縮シート36を伸長させたときに両者間での剥離が起こり難くなる。その結果、伸縮シート36を伸長させたとき、繊維シート37,38が、弾性フィラメント39の伸長に追従して応答性良く伸長するので、伸縮シート36の伸縮性が良好になるという有利な効果が奏される。また、弾性フィラメント39と、繊維シート37,38に含まれる非弾性繊維との接合状態が前述の通りであることによって、弾性フィラメント39と繊維シート37,38とが密着しており、弾性フィラメント39の存在している部分と存在していない部分との段差をより一層感じにくいことから、伸縮シート36の風合いも良好になるという有利な効果も奏される。
尚、前述した非弾性繊維の弾性フィラメント39中への埋没状態は、外装体3(伸縮シート36)において、シール加工が施されていない部分では見られるが、サイドシール部Sの如きシール加工が施された部分では見られるとは限らない。ここで、シール加工とは、外装体3の形成材料(樹脂)の溶融を伴う加工であり、例えば、エンボス加工等の加熱加圧加工、超音波シール加工、レーザー光の照射加工等が挙げられる。シール加工が施されると、当初存在していた、非弾性繊維の弾性フィラメント39中への埋没状態に変化が生じ、該埋没状態が消失する場合がある。従って、非弾性繊維が弾性フィラメント39中に埋没しているか否かの確認は、外装体3におけるシール加工が施されていない部分にて行うべきである。
後述する製造方法に従い伸縮シート36を製造すると、「非弾性繊維が弾性フィラメント39と融着して該弾性フィラメント39中に埋没している状態」が得られる。後述する製造方法によれば、繊維シート37,38に熱は加えられず、溶融紡糸により得られた弾性フィラメント39の固化前に、該弾性フィラメント39を繊維シート37,38に融着させるので、該弾性フィラメント39の周囲に存在する繊維のみが該弾性フィラメント39と接合し、それよりも離れた位置にある繊維は繊維シート37,38の風合いを維持したままになっているので、伸縮シート36の風合いが良好に保たれるという利点がある。
このように、伸縮シート36における弾性フィラメント39の繊維シート37,38との接合は、繊維シート37,38を構成する繊維(非弾性繊維)が弾性フィラメント39中に埋没した状態で該弾性フィラメント39に融着することによりなされたものであり、ホットメルト接着剤等の接着剤を用いてなされたものではない。従って、繊維シート37,38(非弾性繊維を主体とする伸長可能な繊維層)とこれに接合されている弾性フィラメント39との間には接着剤が存在しない。
伸縮シート36は、弾性フィラメント39の延びる方向(横方向Y)と同方向に伸縮可能になっている。伸縮シート36の伸縮性は、弾性フィラメント39の弾性に起因して発現する。伸縮シート36を、弾性フィラメント39の延びる方向と同方向に引き伸ばすと、弾性フィラメント39及び繊維シート37,38が伸長する。そして伸縮シート36の引き伸ばしを解除すると、弾性フィラメント39が収縮し、その収縮に連れて繊維シート37,38が引き伸ばし前の状態に復帰する。また、伸縮シート36においては、弾性フィラメント39と直交した状態で結合している他の弾性フィラメントは存在していないので、伸縮シート36を、弾性フィラメント39の延びる方向(横方向Y)と同方向に引き伸ばしたときには、該伸縮シート36が横方向Yに縮む、いわゆる幅縮みをほとんど起こさずに伸長する。
伸縮シート36の形成材料について説明すると、繊維シート37,38(非弾性繊維を主体とする伸長可能な繊維層)を構成する繊維としては、実質的に非弾性の非弾性繊維が用いられ、具体的には例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリアミド等からなる繊維等が挙げられる。繊維シート37,38を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でも良く、親水性でも撥水性でも良い。また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの繊維は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
繊維シート37,38は、それぞれ、連続フィラメント又は短繊維の不織布であり得る。特に、伸縮シート36を厚みのある嵩高なものとする観点からは、繊維シート37,38は、短繊維の不織布であることが好ましい。不織布としては、エアスルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等が挙げられる。繊維シート37と繊維シート38とは、同種のものでも良く、あるいは異種のものでも良い。ここで言う、「同種のシート」とは、シートの製造プロセス、シートの構成繊維の種類、構成繊維の繊維径や長さ、シートの厚みや坪量等がすべて同じであるシートどうしを意味する。これらのうちの少なくとも一つが異なる場合には、「異種のシート」である。
繊維シート37,38は、それぞれ、その構成繊維(非弾性繊維)が低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなることが好ましい。その場合には、少なくとも低融点成分の熱融着により、その構成繊維同士が繊維交点で接合される。低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなる芯鞘型の複合繊維としては、芯が高融点PET、PPで、鞘が低融点PET、PP、PEのものが好ましい。特にこれらの複合繊維を用いると、弾性フィラメント39との融着が強くなり、両者間での剥離が起こりにくくなるので好ましい。
繊維シート37,38の厚みは、それぞれ、好ましくは0.05mm以上、さらに好ましくは0.1mm以上、そして、好ましくは5mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。シートの厚みは、0.5cN/cm2の荷重にて測定対象シートを平板間に挟み、一つのおむつにおいて長手方向に離間した3か所の該シートの断面をマイクロスコープ(KEYENCE社製 VHX−1000)等により50〜200倍の倍率で観察し、各断面にて厚みをそれぞれ求め、3か所の厚みの平均値として求めることができる。また、繊維シート37,38の坪量は、風合い、厚み及び意匠性等の観点から、それぞれ、好ましくは3g/m2以上、さらに好ましくは5g/m2以上、そして、好ましくは100g/m2以下、さらに好ましくは30g/m2以下である。
繊維シート37,38間に配されている複数の弾性フィラメント39の坪量(弾性フィラメント層の坪量)は、伸縮特性、風合い、厚み、コスト等の観点から、好ましくは3g/m2以上、さらに好ましくは4g/m2以上、そして、好ましくは30g/m2以下、さらに好ましくは15g/m2以下である。
弾性フィラメント39は、例えば熱可塑性エラストマーやゴム等を原料とするものである。特に熱可塑性エラストマーを原料として用いると、通常の熱可塑性樹脂と同様に押出機を用いた溶融紡糸が可能であり、またそのようにして得られた弾性フィラメントは熱融着させやすいので、伸縮シート36に好適である。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー(エチレン系のα−オレフィンエラストマー、エチレン・ブテン・オクテン等を共重合したプロピレン系エラストマー)、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂からなる芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維を用いることもできる。
以下、伸縮シート36の製造方法について、その好ましい実施態様に基づき図7を参照して説明する。本実施態様においては、図7に示すように、紡糸ノズル61から紡出された溶融状態の多数の弾性フィラメント39を所定速度で引き取って延伸しつつ、該弾性フィラメント39の固化前に、該弾性フィラメント39が互いに交差せず一方向に配列するように該弾性フィラメント39を繊維シート37,38及に融着させ、次いで該弾性フィラメント39が融着した繊維シート37,38を、該弾性フィラメント39の延びる方向に沿って延伸して該繊維シート37,38に伸長性を付与する。
図7に示すように、紡糸ノズル61は、紡糸ヘッド62に設けられている。紡糸ヘッド62は、押出機に接続されている。ギアポンプを介して紡糸ヘッド62へ樹脂を供給することもできる。該押出機によって溶融混練された弾性樹脂は、紡糸ヘッド62に供給される。紡糸ヘッド62には、多数の紡糸ノズル61が直線状に一列に配置されている。紡糸ノズル61は、繊維シート37,38の幅方向に沿って配置されている。隣り合う紡糸ノズル61の間隔は、目的とする伸縮シート36における弾性フィラメント39の間隔に相当する。紡糸ノズル61は通常円形であり、円筒形状のノズル孔を有している。
紡出された溶融状態の弾性フィラメント39は、それぞれ原反から同速度で繰り出された繊維シート37,38と合流し、繊維シート37,38間に挟持されて所定速度で引き取られる。弾性フィラメント39の引き取り速度は、繊維シート37,38の繰り出し速度と一致している。弾性フィラメント39の引き取り速度は、該弾性フィラメント39の直径及び延伸倍率に影響を及ぼす。延伸によって弾性フィラメント39に生じる張力は、該弾性フィラメント39を繊維シート37,38と貼り合わせるときの風や静電気に起因する該弾性フィラメント39の乱れを防止する。それによって弾性フィラメント39どうしを交差させずに一方向へ配列させることができる。
弾性フィラメント39は、その固化前に、即ち融着可能な状態で繊維シート37,38と合流する。その結果、弾性フィラメント39は、繊維シート37,38に挟持された状態で、これらの繊維シート37,38に融着する。つまり、固化前の弾性フィラメント39を搬送される繊維シート37,38に融着させることで、弾性フィラメント39は引き取られて延伸される。弾性フィラメント39の融着に際しては繊維シート37,38には、外部から熱は付与されていない。つまり、融着可能になっている弾性フィラメント39に起因する溶融熱によってのみ、該弾性フィラメント39と繊維シート37,38とが融着する。その結果、繊維シート37,38の構成繊維のうち、弾性フィラメント39の周囲に存在する繊維のみが該弾性フィラメント39と融着し、それよりも離れた位置に存在する繊維は融着しない。その結果、繊維シート37,38に加わる熱は最小限にとどまるので、該不織布自身が本来的に有する良好な風合いが維持される。それによって、得られる伸縮シート36の風合いが良好になる。
紡出された弾性フィラメント39が、繊維シート37,38と合流するまでの間、該弾性フィラメント39は延伸されて延伸方向に分子が配向する。また直径が小さくなる。弾性フィラメント39を十分に延伸させる観点及び弾性フィラメント39の糸切れを防止する観点から、紡出された弾性フィラメント39に所定温度の風(熱風、冷風)を吹き付けて、該弾性フィラメント39の温度を調整しても良い。
弾性フィラメント39の延伸は、該弾性フィラメント39を構成する樹脂組成物(弾性樹脂)の溶融状態での延伸(溶融延伸)だけでなく、その冷却過程における軟化状態の延伸(軟化延伸)であっても良い。ここで言う、溶融状態とは、外力を加えたとき樹脂が流動する状態である。樹脂の溶融温度は粘弾性測定による(例えば円形並行平板間に挟んだ樹脂に回転方向の振動歪を加えて測定される)Tanδのピーク温度として測定される。樹脂組成物の延伸時に糸切れが起こらないようにするために、延伸区間を長く確保することがよい。この観点から、樹脂組成物の溶融温度は130〜300℃が好ましい。また、樹脂組成物の耐熱性(成形温度)の観点から、溶融温度は130〜220℃が好ましい。軟化温度は、シート状にした樹脂組成物の測定試料の粘弾性特性における貯蔵弾性率G’の変曲点の温度として測定される。軟化温度から溶融温度までの範囲を軟化状態という。軟化温度は、伸縮シート36の保存時における樹脂組成物の結晶の成長や、体温による伸縮シート36の伸縮特性の低下の観点から、60℃以上が好ましく、80℃〜180℃がより好ましい。
弾性フィラメント39と繊維シート37,38とを接合させるときの弾性フィラメント39の温度は、繊維融着を確実にするために100℃以上であることが好ましい。また弾性フィラメント39の形状を保持して伸縮特性の良好な伸縮シート36を得る観点から、弾性フィラメント39の温度は180℃以下であることが好ましい。より好ましくは120〜160℃の範囲である。接合時の温度は、弾性フィラメント39と接合させるラミネート基材として、弾性フィラメント39を構成する樹脂組成物の融点と異なる融点を有する変性ポリエチレンや変性ポリプロピレン等からなるフィルムを用いて、その接合状態を観察することで測定できる。このとき、弾性フィラメント39とラミネート基材とが融着していれば、接合温度はラミネート基材の融点以上である。
弾性フィラメント39と繊維シート37,38との接合時には、弾性フィラメント39は実質的に非伸長状態(外力を取り除いたときに縮まない状態)である。両者の接合状態においては、繊維シート37,38を構成する繊維(非弾性繊維)の少なくとも一部が、弾性フィラメント39へ融着するか、更には弾性フィラメント39と繊維シート37,38を構成する繊維の少なくとも一部との両方が融着することがより好ましい。十分な接合強度が得られるからである。得られる伸縮シート36の伸縮特性は、弾性フィラメント39と繊維シート37,38との接合点の密度に影響を受ける。また、伸縮特性は、接合温度、接合圧力、後述する繊維シート37,38の延伸による接合点のはずれによって調整することができる。繊維シート37,38の構成繊維を弾性フィラメント39に融着させることで、接合点1つ1つの接合強度が高くなる。接合点の密度を低くすると、繊維シート37,38による伸縮阻害が少なくなり、且つ十分な接合強度を有する伸縮シート36が得られるので好ましい。
弾性フィラメント39を繊維シート37,38と合流させるときには、各弾性フィラメント39が互いに交差せず一方向に配列するようにする。そして、弾性フィラメント39を繊維シート37,38と合流させてこれらの間に該弾性フィラメント39を挟持させた状態で、これら三者を一対のニップロール63,63によって挟圧する。挟圧の条件は、得られる伸縮シート36の風合いに影響を及ぼす。挟圧力が大きすぎると弾性フィラメント39が繊維シート37,38内に食い込みやすくなり、それに起因して得られる伸縮シート36の風合いが低下しやすい。この観点から、ニップロール63,63による挟圧力は、弾性フィラメント39が繊維シート37,38に接触する程度で足り、過度に高い挟圧力は必要とされない。
ニップロール63による挟圧の別の条件として、ニップロール63の温度が挙げられる。本発明者らの検討の結果、ニップロール63を加熱した状態で挟圧を行うよりもむしろ、加熱しないか(つまり成り行きにまかせるか)、又は冷却しながら挟圧を行う方が、風合いの良好な伸縮シート36が得られることが判明した。ニップロール63を冷却する場合には、冷却水等の冷媒を用い、ニップロール63の表面設定温度が10〜50℃になるように温度調節することが好ましい。
このようにして2枚の繊維シート37,38間に弾性フィラメント39が挟持された複合体36’が得られる。繊維シート37,38として本来的に伸長性を有するものを用いた場合には、この複合体36’が伸縮シート36そのものとなる。一方、繊維シート37,38として本来的に伸長性を有しないものを用いた場合には、該繊維シート37,38を含む複合体36’に延伸処理を施す。この延伸処理は、複合体36’を、弾性フィラメント39の延びる方向に沿って延伸して、該繊維シート37,38に伸長性を付与する操作によって行われる。本製造方法においては、図7に示すように、歯と歯底とが周方向に交互に形成された一対の歯溝ロール64,65を備えた延伸装置を用い、両ロール64,65間に複合体36’を導入してこれを搬送することで、該複合体36’を、その搬送方向、即ち弾性フィラメント39の延びる方向に沿って延伸させる。こうして、目的とする伸縮シート36が得られる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず、適宜変更可能である。例えば、ウエスト部10及びレッグ部12は、それぞれ、伸縮フィルムを含んで構成されていても良い。具体的には例えば、腹側外層シート31A及び背側外層シート31Cとして、図6に示す伸縮シート36に代えて、伸縮フィルムを用いても良い。この伸縮フィルムとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー及びポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーの1種又は2種以上のブレンド物を、Tダイ法やインフレーション法などの押出成形によりフィルム状に加工したものを用いることができる。前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
<1>
着用者の前後方向に対応する縦方向及びこれに直交する横方向を有し、液保持性の吸収性コアを含む吸収性本体と、該吸収性本体の非肌対向面側に配された外装体とを備え、前身頃及び後身頃それぞれにおける該外装体の縦方向に沿う両側縁部どうしが接合されて一対のサイドシール部、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されている吸収性物品であって、
前記一対のサイドシール部それぞれの縦方向長さは、該サイドシール部にて接合されている前記前身頃及び前記後身頃それぞれの前記外装体の側縁部の下端間の縦方向長さを3等分した場合のその1つ分の長さに比して短く、
前記サイドシール部と縦方向において同位置にあるサイドシール部存在領域は、前記ウエスト開口部に近い順に、ウエスト部、中間部及びレッグ部を縦方向に有し、該ウエスト部及び該レッグ部は、それぞれ、横方向に伸長状態で接着剤によりシート状部材に接合された糸状又は帯状の特定弾性部材を有し、該中間部は該特定弾性部材を有しておらず、
前記サイドシール部存在領域における各部の横方向の伸長応力は、前記ウエスト部、前記レッグ部、前記中間部の順で大きく、
前記サイドシール部存在領域に前記吸収性コアが配されていない吸収性物品。
<2>
前記ウエスト部及び前記レッグ部の縦方向長さの合計は、前記中間部の縦方向長さに比して長い<1>に記載の吸収性物品。
<3>
前記レッグ部において前記特定弾性部材は、横方向中央部には配されずに、横方向両側部に配されており、該横方向中央部の横方向長さは、該横方向両側部それぞれにおける該特定弾性部材の横方向長さの合計に比して長い<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記ウエスト部が有する前記特定弾性部材は、縦方向に間欠的に配され、横方向の全長にわたって伸長状態で前記シート状部材に接合された複数の糸状又は帯状のウエスト弾性部材である<1>〜<3>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<5>
前記ウエスト部における前記ウエスト弾性部材の数は、好ましくは3本以上、さらに好ましくは5本以上、そして、好ましくは10本以下、さらに好ましくは8本以下である<4>に記載の吸収性物品。
<6>
前記ウエスト部において縦方向に隣り合う前記ウエスト弾性部材どうしの間隔は、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下である<4>又は<5>に記載の吸収性物品。
<7>
前記レッグ部が有する前記特定弾性部材は、縦方向に間欠的に配され、伸長状態で前記シート状部材に接合された複数の糸状又は帯状のレッグ弾性部材である<1>〜<6>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<8>
前記レッグ部における前記レッグ弾性部材の数は、好ましくは1本以上、さらに好ましくは3本以上、そして、好ましくは6本以下、さらに好ましくは4本以下である<7>に記載の吸収性物品。
<9>
前記レッグ部において縦方向に隣り合う前記レッグ弾性部材どうしの間隔は、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下である<4>又は<5>に記載の吸収性物品。
<10>
前記レッグ弾性部材は、前記前身頃に配された前側レッグ弾性部材及び前記後身頃に配された後側レッグ弾性部材を有し、該前側レッグ弾性部材と該後側レッグ弾性部材とは、横方向の全域に亘って相互に離間している<7>〜<9>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<11>
前記前側レッグ弾性部材は、前記前身頃(腹側部)における前記外装体の両側縁部(前記サイドシール部)それぞれからレッグ縁部に沿って縦方向内方且つ横方向内方に延びて前記吸収性本体の縦方向に沿う側縁に達し、さらに該吸収性本体の側縁よりも横方向内方に延びており、
前記前側レッグ弾性部材における前記外装体の側縁部側とは反対側の端部は、前記吸収性本体の配置領域に位置している<10>に記載の吸収性物品。
<12>
前記前身頃における前記外装体の両側縁部のうちの一方を起点とする前記前側レッグ弾性部材と、他方を起点とする前記前側レッグ弾性部材とは繋がっておらず、前記吸収性本体の配置領域に存する両前側レッグ弾性部材間においては、弾性部材による弾性伸縮性は発現しない<10>又は<11>に記載の吸収性物品。
<13>
前記後側レッグ弾性部材は、前記後身頃(背側部)における前記外装体の両側縁部(前記サイドシール部)それぞれからレッグ縁部に沿って縦方向内方且つ横方向内方に延びて前記吸収性本体の縦方向に沿う側縁に達し、さらに該吸収性本体の側縁よりも横方向内方に延びており、
前記後側レッグ弾性部材における前記外装体の側縁部側とは反対側の端部は、前記吸収性本体の配置領域に位置している<10>〜<12>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<14>
前記後身頃における前記外装体の両側縁部のうちの一方を起点とする前記後側レッグ弾性部材と、他方を起点とする前記後側レッグ弾性部材とは繋がっておらず、前記吸収性本体の配置領域に存する両後側レッグ弾性部材間においては、弾性部材による弾性伸縮性は発現しない<10>〜<13>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<15>
前記ウエスト部及び前記レッグ部は、それぞれ、伸縮フィルムを含んで構成されている<1>〜<14>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<16>
前記吸収性コアの縦方向前端及び後端は、それぞれ、前記サイドシール部の下端(前記前見頃及び前記後見頃それぞれの前記外装体の縦方向に沿う側縁部の下端)と同位置か、又は該下端よりも縦方向内方に位置している<1>〜<15>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<17>
前記吸収性本体は、肌対向面を形成する液透過性の表面シートと、非肌対向面を形成する裏面シートと、両シート間に介在配置された前記吸収性コアを含む吸収体とを具備する<1>〜<16>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<18>
前記表面シート及び前記裏面シートは、それぞれ、前記吸収性コアよりも縦方向長さが長く、該吸収性コアの縦方向前端及び後端それぞれから縦方向外方に延出している<17>に記載の吸収性物品。
<19>
前記吸収体は、前記吸収性コアと、該吸収性コアの肌対向面及び非肌対向面の両面を被覆するコアラップシートとを含む<17>又は<18>に記載の吸収性物品。
<20>
前記コアラップシートは、前記吸収性コアよりも縦方向長さが長く、該吸収性コアの縦方向前端及び後端それぞれから縦方向外方に延出している<19>に記載の吸収性物品。
<21>
前記前身頃及び前記後身頃それぞれの前記外装体の側縁部の下端間の縦方向長さ(股下部の縦方向の長さ)を3等分した場合のその1つ分の長さと、前記一対のサイドシール部それぞれの縦方向長さ(前記サイドシール部存在領域の縦方向長さ、腹側部及び背側部それぞれの縦方向長さ)との比率は、前者/後者として、好ましくは1より大きく、さらに好ましくは1.05以上、そして、好ましくは1.4以下、さらに好ましくは1.2以下である<1>〜<20>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<22>
前記一対のサイドシール部それぞれの縦方向長さ(前記サイドシール部存在領域の縦方向長さ)は、好ましくは50mm以上、さらに好ましくは100mm以上、そして、好ましくは200mm以下、さらに好ましくは150mm以下である<1>〜<21>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<23>
前記前身頃及び前記後身頃それぞれの前記外装体の側縁部の下端間の縦方向長さ(股下部の縦方向の長さ)は、好ましくは300mm以上、さらに好ましくは360mm以上、そして、好ましくは600mm以下、さらに好ましくは450mm以下である<1>〜<22>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<24>
前記前身頃及び前記後身頃それぞれの前記外装体の側縁部の下端間の縦方向長さを3等分した場合のその1つ分の長さは、好ましくは100mm以上、さらに好ましくは120mm以上、そして、好ましくは200mm以下、さらに好ましくは150mm以下である<1>〜<23>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<25>
前記ウエスト部の伸長応力は、前記中間部及び前記レッグ部の伸長応力よりも大きいことを要件に、好ましくは4.0N/25mm以上、さらに好ましくは6.0N/25mm以上、そして、好ましくは10.0N/25mm以下、さらに好ましくは9.0N/25mm以下である<1>〜<24>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<26>
前記中間部の伸長応力は、前記ウエスト部及び前記レッグ部の伸長応力よりも小さいことを要件に、好ましくは0.2N/25mm以上、さらに好ましくは0.8N/25mm以上、そして、好ましくは3.0N/25mm以下、さらに好ましくは2.5N/25mm以下である<1>〜<25>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<27>
前記レッグ部の伸長応力は、前記中間部の伸長応力よりも大きく、且つ前記ウエスト部10の伸長応力よりも小さいことを要件に、好ましくは1.0N/25mm以上、さらに好ましくは3.0N/25mm以上、そして、好ましくは7.0N/25mm以下、さらに好ましくは5.0N/25mm以下である<1>〜<26>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<28>
前記ウエスト部の伸長応力と前記中間部の伸長応力との比率は、ウエスト部/中間部として、好ましくは2.0以上、さらに好ましくは4.0以上、そして、好ましくは9.0以下、さらに好ましくは7.0以下である<1>〜<27>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<29>
前記レッグ部の伸長応力と前記中間部の伸長応力との比率は、レッグ部/中間部として、好ましくは1.0より大きく、さらに好ましくは1.5以上、そして、好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下である<1>〜<28>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<30>
前記ウエスト部の伸長応力と前記レッグ部の伸長応力との比率は、ウエスト部/レッグ部として、好ましくは1.0より大きく、さらに好ましくは1.5以上、そして、好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.5以下である<1>〜<29>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<31>
前記ウエスト部の縦方向長さは、好ましくは10mm以上、さらに好ましくは20mm以上、そして、好ましくは50mm以下、さらに好ましくは40mm以下である<1>〜<30>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<32>
前記中間部の縦方向長さは、好ましくは30mm以上、さらに好ましくは50mm以上、そして、好ましくは120mm以下、さらに好ましくは80mm以下である<1>〜<31>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<33>
前記レッグ部の縦方向長さは、好ましくは10mm以上、さらに好ましくは20mm以上、そして、好ましくは50mm以下、さらに好ましくは40mm以下である<1>〜<32>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<34>
前記ウエスト部及び前記レッグ部それぞれの縦方向長さの合計と、前記中間部の縦方向長さとの比率は、前者/後者として、好ましくは1より大きく、さらに好ましくは1.2以上、そして、好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下である<1>〜<33>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<35>
前記外装体は、非肌対向面を形成する外層シートと、該外層シートの肌対向面に対向配置された内層シートとの積層体を含んで構成されている<1>〜<34>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<36>
前記外層シートは、横方向に伸縮性を有する伸縮シートである<35>に記載の吸収性物品。
<37>
縦方向において、前記前身頃における前記サイドシール部の下端と前記後身頃における前記サイドシール部の下端との間に位置する股下部と、該股下部の前後から縦方向に延出する腹側部及び背側部とを有し、
前記外装体は、前記股下部において、伸縮性を有していない非伸縮シートを有する<35>又は<36>に記載の吸収性物品。
<38>
前記外装体は、前記股下部において、縦方向の伸縮性を有していない<37>に記載の吸収性物品。
<39>
前記外装体における、前記吸収性物品を縦方向に二分して横方向に延びる縦中心線を基準として縦方向の前後それぞれに50〜150mm以内の領域は、縦方向の伸縮性を有してない<35>〜<38>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<40>
前記特定弾性部材は糸ゴムである<1>〜<39>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<41>
吸収性物品は大人用パンツ型使い捨ておむつである<1>〜<40>の何れか1項に記載の吸収性物品。