JP2007030804A - ステアバイワイヤシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来のものより信頼性の高いステアバイワイヤシステムの提供を目的とする。
【解決手段】 本発明のステアバイワイヤシステム10によれば、転舵輪11が第1のECU12の制御下で転舵されている場合に、クラッチユニット50に備えた第1系統の電磁コイル62Aに異常が生じて第2のECU13による制御に移行しても、残りの正常な第2系統の電磁コイル62Bにより、クラッチCL1が断絶状態(図4の状態)に保持されるので、従来のものよりも信頼性を高めることができる。また、2つの系統の電磁コイル62A,62Bの両方を励磁してクラッチCL1を断絶状態に保持するようにした場合は、1系統の電磁コイル62だけで断絶状態に保持するようにした場合に比較して、電磁コイル62の1つ当たりの負荷を軽減することができ、電磁コイル62の発熱を抑えることができる。
【選択図】 図4

Description

本発明は、通常は、ステアリングと転舵輪との間が機械的に切り離され、操舵角センサが検出したステアリングの操舵角をステアリング制御部が取得しかつその操舵角に応じて転舵駆動源を作動させて転舵輪を転舵するステアバイワイヤシステムに関する。
この種の従来のステアバイワイヤシステムは、ステアリング制御部や操舵角センサ、転舵駆動源等に異常が生じた場合に備えて、ステアリングと転舵輪との間を機械的に連結するためのクラッチを備えていた。このクラッチの駆動源として電磁コイルとバネとが備えられ、通常は、電磁コイルの磁力により断絶状態とされる一方、異常時には、電磁コイルの励磁が停止されてバネの弾発力により連結状態となっていた。
特開2002−240730号公報(段落[0044]〜[0052]、図1)
しかしながら、上述した従来のステアバイワイヤシステムでは、電磁コイルを1系統しか備えていなかったため、その電磁コイルに異常(例えば、断線等)が生じて励磁が停止すると、転舵輪がステアリング制御部の制御下にあるにも拘わらず、ステアリングと転舵輪との間がクラッチにより連結する虞があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来のものより信頼性の高いステアバイワイヤシステムの提供を目的とする。
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るステアバイワイヤシステムは、通常は、ステアリングと転舵輪との間が機械的に切り離され、操舵角センサが検出したステアリングの操舵角をステアリング制御部が取得しかつその操舵角に応じて転舵駆動源を作動させて転舵輪を転舵するステアバイワイヤシステムであって、異常時にステアリングと転舵輪との間を機械的に連結可能なクラッチと、通電によりクラッチを断絶状態に保持する電磁コイルと、電磁コイルへの通電停止によりクラッチを連結状態に保持する付勢手段とが備えられたステアバイワイヤシステムにおいて、クラッチ1つに対して、電磁コイルを少なくとも2系統以上設けたところに特徴を有する。
なお、本発明における「連結状態」とは、ステアリングから転舵輪に操舵力を伝達可能な状態をいう。また、「断絶状態」とは、ステアリングから転舵輪に操舵力を伝達不可能な状態をいう。
請求項2の発明は、請求項1に記載のステアバイワイヤシステムにおいて、ステアリング制御部を少なくとも2系統以上設けると共に、それら各ステアリング制御部毎に電磁コイルを1系統ずつ設け、何れか1つのステアリング制御部が対応した1系統の電磁コイルを励磁することにより、クラッチが断絶状態に保持されるように構成したところに特徴を有する。
[請求項1の発明]
請求項1のステアバイワイヤシステムでは、1つのクラッチに対して電磁コイルを少なくとも2系統以上設けたので、転舵輪がステアリング制御部の制御下で転舵されている場合に、何れかの系統の電磁コイルに異常が生じても、残りの正常な系統の電磁コイルによりクラッチが断絶状態に保持され、従来のものより信頼性を高めることができる。
また、機械部品であるクラッチは、電気部品である電磁コイルより信頼性が高いので、本発明のようにクラッチ1つに対して電磁コイルを2系統以上設けると機械部品と電気部品との信頼性のバランスがよくなる。しかも電磁コイル自体はクラッチに比べて小さく安価であるから、大型化、高コスト化を抑えつつ、信頼性を向上させることができる。
さらに、少なくとも2系統以上の電磁コイルを励磁してクラッチを断絶状態に保持するようにすれば、1系統の電磁コイルだけでクラッチを断絶状態に保持する構成に比較して、電磁コイル1つ当たりの負荷が軽減し電磁コイルの発熱を抑えることができる。
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、何れかの系統のステアリング制御部に異常が生じた場合でも、残りの正常なステアリング制御部により転舵輪を転舵することができる。このとき、正常なステアリング制御部が対応した1つの電磁コイルを励磁することでクラッチを断絶状態に保持することができる。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
図1には、車両に搭載された本発明に係るステアバイワイヤシステム10の全体構成が示されている。ステアバイワイヤシステム10は、ステアリング21を備えた操舵ユニット20、1対の転舵輪11,11を備えた転舵輪ユニット30、それら操舵ユニット20と転舵輪ユニット30とを電気的に連結してステアリング21の操舵角に応じて転舵輪11,11を転舵させる第1及び第2のECU12,13(ECUは、「Electronic Control Unit」の略である)及び、操舵ユニット20と転舵輪ユニット30との間を機械的な連結状態と断絶状態とに切り替えるクラッチユニット50とを備えている。
そして、転舵輪11,11がECU12,13の制御により転舵不能となった場合には、クラッチユニット50が操舵ユニット20と転舵輪ユニット30との間を機械的に連結する。即ち、ステアバイワイヤシステム10は、ECU12,13に異常が生じた場合でも、ステアリング21から転舵輪11,11に操舵力を伝達して転舵可能とするフェールセーフ機能を備えている。なお、ECU12,13は、本発明の「ステアリング制御部」を構成する。
図2に示すように、操舵ユニット20のうちステアリング21は、ステアリングシャフト22の一端に固定されている。ステアリングシャフト22は、車両本体に固定された円筒ハウジング23の内部に挿通され、その両端部がベアリングによって回転可能に軸支されている。
ステアリングシャフト22には、反力発生装置としての反力モータ25が連結されている。ステアリングシャフト22と反力モータ25との連結部分は、所謂、遊星歯車減速機構となっている。即ち、ステアリングシャフト22の他端には、複数の遊星歯車24が回転可能に軸支され、円筒ハウジング23の内周面に形成されたギヤ23Gと噛合している。また、反力モータ25の出力回転軸25Aには太陽歯車25Gが備えられ、その太陽歯車25Gと複数の遊星歯車24とが噛合している。
これにより、反力モータ25の出力トルクは、所定の減速比に変更されて、ステアリング21の回転操作に対する反力としてステアリングシャフト22に付与される。なお、反力モータ25は、第1のECU12により通電(励磁)される第1系統のモータ巻線25Bと、第2のECU13により通電(励磁)される第2系統のモータ巻線25Bとを備えている。本実施形態では、通常は、何れか一方のモータ巻線25B(例えば、第1系統のモータ巻線25B)だけが通電されている。そして、一方のモータ巻線25Bに異常が生じた場合には、そのモータ巻線25Bへの通電が停止され、代わりに、他方のモータ巻線25Bが通電されるようになっている。このように、モータ巻線25Bの異常に備えて予備のモータ巻線25Bが備えられているので、反力モータ25の信頼性が向上する。
図2に示すように、ステアリングシャフト22の中間部分には、ステアリング21の舵角を検出するための操舵角センサ26が備えられている。また、ステアリングシャフト22の途中部分にはトーションバー27が備えられ、そのトーションバー27の両端寄り部分には、位置センサ28,28が備えられている。そして、両位置センサ28,28の検出結果の差分に基づいたトーションバー27の捩れ角とトーションバー27のバネ剛性とから、ステアリングシャフト22に実際にかかる操舵反力を検出する。これら操舵角センサ26及び位置センサ28,28の検出結果は、図1に示すように、それぞれ第1及び第2のECU12,13に取り込まれる。
次に、図3に基づいて転舵輪ユニット30について詳説する。転舵輪ユニット30は、1対の転舵輪11,11の間に差し渡された転舵シャフト31を備え、その転舵シャフト31の両端に連結されたタイロッド32,32が各転舵輪11,11に連結されている。図示しないが、タイロッド32と転舵シャフト31との連結部分は、所謂、ユニバーサルジョイント構造になっている。即ち、タイロッド32及び転舵シャフト31は、相対的に傾動自在でありかつ軸回りに回転自在となっている。
転舵シャフト31は、筒形ハウジング33の内部に挿通されている。筒形ハウジング33は、車両の本体に固定されている。また、筒形ハウジング33の両端部には、筒状のゴムブーツ33Bが嵌合固定され、それらゴムブーツ33Bの先端部分がタイロッド32に嵌合固定されている。これにより、筒形ハウジング33の両端開口が閉じられている。
筒形ハウジング33は、軸方向の中間部分に大径部33Dを備え、その大径部33Dに転舵モータ34(本発明の「転舵駆動源」に相当する)が備えられている。転舵モータ34は、筒形ハウジング33の一部を構成する円筒スリーブ34Aの内側に、例えば、2系統のモータ巻線34B,34Bを軸方向に並べて備え、それらモータ巻線34B,34Bの内側に筒状のロータ34Rが遊嵌されている。ロータ34Rは、軸方向に移動不能になっており、転舵シャフト31はこのロータ34Rの内側を貫通している。そして、一方のモータ巻線34Bが、第1のECU12に接続されて第1系統のモータ巻線34Bとなり、他方のモータ巻線34Bが第2のECU13に接続されて第2系統のモータ巻線34Bとなっている。これにより、2系統のモータ巻線34B,34Bの何れか一方に異常が生じた場合でも、正常なモータ巻線34Bに通電することで転舵モータ34を駆動することができ信頼性が向上する。
ロータ34Rの軸方向における一端部内面には、ボールナット35が組み付けられている。また、転舵シャフト31の軸方向における一端部寄り部分にはボールネジ部31Nが形成されている。これらボールナット35とボールネジ部31Nとから、所謂、ボールネジ機構36が構成され、ロータ34Rと共にボールナット35が回転すると、筒形ハウジング33に対してボールネジ部31Nが直動し、これにより転舵輪11,11が転舵する。
筒形ハウジング33の大径部33Dには、ロータ34Rの回転位置を検出するための2つの回転位置センサ37,37が設けられている。これら回転位置センサ37,37は、第1のECU12に接続された第1系統の回転位置センサ37と、第2のECU13に接続された第2系統の回転位置センサ37とに分けられる。本実施形態では、通常は、一方の回転位置センサ37(例えば、第1系統の回転位置センサ37)によりロータ34Rの回転位置を検出している。そして、一方の回転位置センサ37に異常が生じた場合には、他方の回転位置センサ37によりロータ34Rの回転位置を検出するようになっている。即ち、回転位置センサ37の異常に備えて予備の回転位置センサ37が備えられている。
転舵シャフト31のうちボールネジ部31Nとは反対側の端部には、ラック31Gが形成されている。また、筒形ハウジング33のうち大径部33Dより端部側の小径部33Sには円筒形状のギヤボックス40が形成されている。ギヤボックス40には、転舵シャフト31と直交するように延びて小径部33Sに突入した連結シャフト41が回転可能に設けられ、その連結シャフト41の周面に形成されたピニオン41Gが、転舵シャフト31のラック31Gに噛合している。
連結シャフト41の軸方向の中間部分には、転舵輪11,11の転舵角を検出するための転舵角センサ43が備えられている。転舵角センサ43の検出結果は、第1及び第2のECU12,13のそれぞれに取り込まれる。即ち、第1のECU12と第2のECU13とで、1つの転舵角センサ43を共有している。また、連結シャフト41のうち、ギヤボックス40の内部に配された他端部には、複数の遊星歯車42が回転可能に軸支され、ギヤボックス40の内周面に形成されたギヤ40Gと噛合している。そして、複数の遊星歯車42に出力軸52に備えられた太陽歯車52Gが噛合して、所謂、遊星歯車減速機が構成されている。これにより、出力軸52から入力したトルクが、ギヤボックス40にて所定の減速比に変更されて転舵シャフト31に付与される。
さて、クラッチユニット50は以下のようである。図4に示すように、クラッチユニット50は、車両に固定された円筒ハウジング51を備え、その円筒ハウジング51の一端開口51Aに操舵ユニット20と機械的に連結した入力軸55が挿通され、他端開口51Bに転舵輪ユニット30(詳細には、ギヤボックス40)と機械的に連結した出力軸52が挿通されて、これら入力軸55と出力軸52とが同軸上に配置されている。
出力軸52のうち、円筒ハウジング51内に配された端部には、クラッチCL1を構成する第1クラッチ体53が一体形成されている。第1クラッチ体53は、出力軸52よりも径の大きい一端有底の円筒構造をなし、開放端の周縁部が側方に張り出している。そして、第1クラッチ体53の開放端面に噛合面53Cが形成されている。噛合面53Cは、例えば、出力軸52を中心として放射状に延びた複数の突条を有する。
第1クラッチ体53の外周面にはベアリング嵌合部53Bが形成され、ここに円筒ハウジング51の内周面に嵌合したベアリング54Aが嵌合している。また、出力軸52の外周面にもベアリング嵌合部52Bが形成され、ここに円筒ハウジング51の他端開口51Bの内周面に嵌合したベアリング54Bが嵌合している。これにより、出力軸52及び第1クラッチ体53が円筒ハウジング51に対して相対回転可能となっている。
一方、入力軸55は、出力軸52に向かって段付き状に拡径しており、端部が第1クラッチ体53の中央部に形成された軸受凹所53Eに突入している。入力軸55のうち、一端開口51Aの内側部分の外周面にはベアリング嵌合部55B1が形成され、ここに一端開口51Aの内周面に嵌合したベアリング56Aが嵌合している。また、入力軸55のうち、軸受凹所53Eに突入した端部外周面にもベアリング嵌合部55B2が形成され、ここに軸受凹所53Eの内周面に嵌合したベアリング56Bが嵌合している。これにより、入力軸55が円筒ハウジング51に対して相対回転可能となると共に、入力軸55と出力軸52とが相対回転可能となっている。ここで、入力軸55及び出力軸52は、各ベアリング嵌合部52B,53B,55B1,55B2と各ベアリング54A,54B,56A,56Bとの嵌合により、相互に軸線方向(図4における上下方向)への移動が規制されている。
入力軸55のうち、第1クラッチ体53の軸受凹所53Eに突入した部分よりも一端開口51A寄り部分には、クラッチCL1を構成する第2クラッチ体57が装着されている。第2クラッチ体57は、例えば、磁性体で構成されている。
第2クラッチ体57は、第1クラッチ体53と軸線方向で対向した扁平リング状のプレート57Aを備え、そのプレート57Aの中心孔57Bを入力軸55が貫通すると共に、プレート57Aのうち第1クラッチ体53の噛合面53Cとの対向面に噛合面57Cを備えている。噛合面57Cは、第1クラッチ体53の噛合面53Cと同様な形状であり、例えば、入力軸55を中心として放射状に延びた複数の突条を有する。また、入力軸55の外周面には、軸線方向に延びたガイド突条55Tが形成されており、中心孔57Bの内周面に形成されたガイド溝(図示せず)が、このガイド突条55Tと凹凸係合している。これにより、第2クラッチ体57は、入力軸55に対して回転不能でかつ入力軸55の軸線方向に直動可能となっている。
プレート57Aのうち、噛合面57Cとの反対面には、入力軸55の周面を囲むように円筒壁57Dが形成されている。円筒壁57Dは、プレート57Aの外縁部と中心孔57Bの外縁部とのほぼ中間位置から軸線方向に起立している。円筒壁57Dは、内径が軸線方向で一定であるのに対し、外径がプレート57Aから離れるに従って縮径している。即ち、円筒壁57Dの外周面はプレート57Aから離れるに従って入力軸55の周面に近づいた円錐面の一部で構成されている。
入力軸55には、台座盤58が嵌合固定されている。台座盤58は扁平なリング状をなし、第1クラッチ体53との間に、第2クラッチ体57のプレート57Aを挟むように配置されている。また、台座盤58は、第2クラッチ体57の円筒壁57Dの内側に配置されている。そして、入力軸55、プレート57A、円筒壁57D及び台座盤58で囲まれた環状空間に複数の圧縮コイルばね59(本発明の「付勢手段」に相当する)が収容されている。
圧縮コイルばね59は、一端部が台座盤58に固定され他端部がプレート57Aに固定されている。これら圧縮コイルばね59の付勢力により第2クラッチ体57は、台座盤58から離れる方向、即ち、第1クラッチ体53側に押されている。
円筒ハウジング51のうち、プレート57Aより一端開口51A側の内周面には、円環状のヨーク60が嵌合固定されている。ヨーク60のうち、第2クラッチ体57側の端部は、第2クラッチ体57の円筒壁57Dと遊嵌しており、その内径は、円筒壁57Dの外周面に対応してプレート57Aに近づくに従って拡径している。即ち、ヨーク60の第2クラッチ体57側の端部内周面は円錐面の一部で構成されている。
ヨーク60には、第2クラッチ体57側に開放した円環溝61が形成され、この円環溝61の内部に、本発明に係る電磁コイル62が収容されている。電磁コイル62は、第1のECU12により通電(励磁)される第1系統の電磁コイル62Aと、第2のECU13により通電(励磁)される第2系統の電磁コイル62Bとに分けられ、それらが円環溝61内で軸線方向に重ねて収容されている。本実施形態では、通常、一方の電磁コイル62(例えば、第1系統の電磁コイル62A)だけが通電(励磁)され、他方の電磁コイル62(例えば、第2系統の電磁コイル62B)は通電(励磁)されない。そして、一方の電磁コイル62に異常が生じた場合には、その電磁コイル62への通電が停止され、代わりに他方の電磁コイル62に通電されるようになっている。また、第1と第2のECU12,13の何れかに一方に異常が生じた場合にも、対応する電磁コイルへの通電が停止され、代わりに正常なECUが対応する電磁コイル62に通電する。
そして、何れか一方の電磁コイル62に通電すると、第2クラッチ体57が圧縮コイルばね59を押し縮めながらヨーク60側に引き寄せられて第1クラッチ体53から離間する(図4の状態)。すると、入力軸55と出力軸52とが相対回転可能となる。つまり、ステアリング21から転舵輪11,11に操舵力が伝達不可能となり、操舵ユニット20と転舵輪ユニット30との間が機械的に切り離された状態になる。
これに対し、2つの電磁コイル62A,62Bへの通電が停止されると、第2クラッチ体57は圧縮コイルばね59の弾発力によって第1クラッチ体53側へ押されて、第1クラッチ体53と第2クラッチ体57の噛合面53C,57C同士が噛合する。すると、入力軸55と出力軸52とが一体回転可能となる。つまり、ステアリング21からの操舵力をクラッチCL1を介して転舵輪11,11に伝達可能となり、操舵ユニット20と転舵輪ユニット30との間が機械的な連結状態に保持される。
ステアバイワイヤシステム10の構成の説明は以上であり、次に動作を説明する。上記した操舵角センサ26、位置センサ28,28、回転位置センサ37、転舵角センサ43等の検出信号は、通常、例えば、第1のECU12に取り込まれる。第1のECU12は検出信号に基づいて転舵輪11,11の目標転舵角や反力を演算し、演算結果に応じた電流を転舵モータ34や反力モータ25に流す。また、第1のECU12又は、第1のECU12に接続された第1系統のモータ巻線25B、回転位置センサ37、モータ巻線34B等に異常が生じた場合には、第2のECU13による制御に切り替わる。即ち、上記センサ等の検出信号は第2のECU13に取り込まれ、第2のECU13により転舵モータ34(第2系統のモータ巻線34B)、反力モータ25(第2系統のモータ巻線25B)に電流を流す。このように、一方のECUに異常が生じても、別の正常なECUの制御下で転舵輪11,11を転舵させることができる。
ところで、第1のECU12は、上記制御の他に、図5に示したクラッチ制御プログラムPG1を所定周期で実行する。即ち、クラッチユニット50に備えた第1系統の電磁コイル62Aに通電し(S1)、その電磁コイル62Aに、例えば、断線等の異常が生じているか否かをチェックする(S2)。電磁コイル62Aが正常な場合(S3でNo)には、通常処理(S4)を行う。即ち、第1系統の電磁コイル62Aに通電して励磁させる。すると、第2クラッチ体57が第1クラッチ体53から引き離されてクラッチCL1が断絶状態となり(図4の状態)、操舵ユニット20と転舵輪ユニット30とを機械的に切り離した状態に保持する。
一方、電磁コイル62Aが異常であった場合(S3のYes)には、その電磁コイル62Aへの通電を停止する(S5)と共に、フェールセーフ処理(S6)を行う。具体的には、第1のECU12による制御から、第2のECU13による制御に切り替わる。すると、第2のECU13に接続された第2系統の電磁コイル62Bに通電されクラッチCL1が断絶状態(図4の状態)に保持され、操舵ユニット20と転舵輪ユニット30とが機械的に切り離された状態に保持される。これにより、転舵輪11が第2のECU13の制御下で転舵されているにも拘わらず、ステアリング21と転舵輪11,11との間がクラッチCL1を介して機械的に連結されることが防止される。なお、このとき、警告ランプや警告音を発して、車両の乗員に電磁コイル62Aの異常を報知するようにしてもよい。
このように、本実施形態のステアバイワイヤシステム10によれば、転舵輪11が第1のECU12の制御下で転舵されている場合に、クラッチユニット50に備えた第1系統の電磁コイル62Aに異常が生じて第2のECU13による制御に移行しても、残りの正常な第2系統の電磁コイル62Bにより、クラッチCL1が断絶状態(図4の状態)に保持されるので、従来のものよりも信頼性を高めることができる。
また、クラッチユニット50は2系統の電磁コイル62を備えつつも、クラッチCL1は1つだけなので、電磁コイルとクラッチとを単に複数個ずつ備えたものに比較してステアバイワイヤシステムが小型化され、車両における搭載スペースの増大を抑えることができる。
さらに、機械部品であるクラッチCL1は、電気部品である電磁コイル62より信頼性が高いので、1つのクラッチCL1に対して電磁コイルを2系統以上設けると機械部品と電気部品との信頼性のバランスがよくなる。しかも電磁コイル61自体はクラッチCL1に比べて小さく安価であるから、大型化、高コスト化を抑えつつ、信頼性を向上させることができる。
[第2実施形態]
本実施形態は、ステアバイワイヤシステムの動作が前記第1実施形態とは異なる。具体的には、第1系統の電磁コイル62Aと第2系統の電磁コイル62Bとの両方に通電する。以下、第1実施形態と異なる構成に関してのみ説明し、第1実施形態と同一部位は同一符号を付して重複説明は省略する。
本実施形態のステアバイワイヤシステム10では、通常、2つのECU12,13により各ユニット20,30,50が制御されている。即ち、反力モータ25に備えた2つのモータ巻線25B,25B、転舵モータ34に備えた2つのモータ巻線34B,34B及び、クラッチユニット50に備えた2つの電磁コイル62A,62Bに通電している。以下、ステアバイワイヤシステム10の動作を図6のフローチャートを参照しつつ説明する。
ステアバイワイヤシステム10に備えた各ECU12,13は、それぞれの系統の電磁コイル62A,62Bに通電し(S11)、対応する電磁コイル62A,62Bが異常か否かをチェックする(S12)。何れの系統の電磁コイル62,62も正常である場合(S13でNo)には、通常処理(S14)を行う。即ち、第1系統の電磁コイル62Aと第2系統の電磁コイル62Bとの両方に通電する。すると、クラッチCL1が断絶状態に保持され、操舵ユニット20と転舵輪ユニット30とが機械的に切り離された状態となる。
ここで、2つの系統の電磁コイル62A,62Bの両方を励磁してクラッチCL1を断絶状態に保持するようにした場合は、上記第1実施形態のように、1系統の電磁コイル62だけで断絶状態に保持するようにした場合に比較して、電磁コイル62の1つ当たりの負荷を軽減することができる。これにより、電磁コイル62の発熱を軽減し、電磁コイル62の信頼性の向上を図ることができる。
上記ステップS13において、電磁コイル62A,62Bの何れか一方が異常であった場合(S13でYes)には以下のようである。例えば、第1系統の電磁コイル62Aが異常であった場合には、正常な第2系統の電磁コイル62Bに対する作動電圧を約2倍に上昇させる(S15)と共に、異常な第1系統の電磁コイル62Aへの通電を停止し(S16)、フェールセーフ処理(S17)を行う。即ち、第2系統の電磁コイル62Bが、単独でクラッチCL1を断絶状態に保持して、操舵ユニット20と転舵輪ユニット30とを機械的に切り離した状態に保持する。なお、第2系統の電磁コイル62Bが異常であった場合は、正常な第1系統の電磁コイル62Aに対する作動電圧を約2倍に上昇させると共に、第2系統の電磁コイル62Bへの通電を停止する。本実施形態によっても、上記第1実施形態と同等の効果を奏することができる。
[第3実施形態]
本実施形態は、図7に示されており、クラッチユニットの構造が前記第1及び第2実施形態とは異なる。以下、第1及び第2実施形態と異なる構成に関してのみ説明し、第1及び第2実施形態と同一部位は同一符号を付して重複説明は省略する。
図7の(a)に示すように、本実施形態のクラッチユニット500では、入力軸55の途中部分に、ロックホルダ80が一体回転可能に固定されている。同図(b)に示すように、ロックホルダ80はリング状をなし、その周面には複数の凹凸係合部80Aが形成されている。そして、出力軸52の上端面にはロックホルダ80の凹凸係合部80Aに係合して入力軸55を回り止めするためのロックアーム81が設けられている。そして、これらロックホルダ80とロックアーム81とから本発明に係るクラッチCL2が構成されている。
ロックアーム81は、出力軸52の上端面から起立した支柱82に回動可能に軸支されている。詳細には、支柱82は、ロックアーム81の一端寄り位置を貫通しており、ロックアーム81のうち支柱82の貫通部分から比較的長く延びた側の先端には、ロックホルダ80に向けて係止突部81Aが突出している。
また、ロックアーム81には、トーションバネ84が取り付けられている。トーションバネ84はコイルバネ構造をなし、そのコイルバネを構成するバネ線材の一端が支柱82の端面に係止され、他端がロックアーム81に係止している。このトーションバネ84の弾発力によりロックアーム81は、ロック位置に付勢されている。そして、ロックアーム81がこのロック位置に位置した状態(図7の(b)に示した状態)で、係止突部81Aがロックホルダ80の凹凸係合部80Aに係合する(クラッチCL2が連結状態となる)ことで、入力軸55と出力軸52とが一体回転可能となる。
トーションバネ84の弾発力に抗してロックアーム81をロック解除位置に移動するために、直動駆動源85(具体的には、ソレノイド)が出力軸52の上面に設けられている。直動駆動源85は、第1のECU12により励磁する第1系統の電磁コイル86Aと、第2のECU13により励磁する第2系統の電磁コイル86Bとを備え、その何れか一系統又は両系統の励磁によりプランジャ87を直動させる構成になっている。プランジャ87の先端部は、ロックアーム81のうち支柱82の外側に延びた側の端部に連結されている。そして、電磁コイル86A,86Bを励磁した場合には、プランジャ87が電磁コイル86A,86Bの中空部の奥側に引き込まれるように直動する。これにより、ロックアーム81が図7の(b)における反時計回り方向に回動する。この結果、ロックアーム81がロック解除位置に至り、係止突部81Aと凹凸係合部80Aとの係合が解除されて(クラッチCL2が断絶状態となって)、入力軸55と出力軸52とが相対回転可能となり、操舵ユニット20と転舵輪ユニット30とが機械的に切り離された状態になる。
一方、両系統の電磁コイル86A,86Bの励磁を停止した際には、プランジャ87は電磁コイル86A,86B内を自由に直動可能になり、前記したトーションバネ84の弾発力によって、ロックアーム81と共にプランジャ87が元の位置に戻される。これにより、入力軸55と出力軸52とが一体回転可能となり、操舵ユニット20と転舵輪ユニット30とが機械的に連結した状態になる。本実施形態によっても、上記第1又は第2実施形態と同等の効果を奏する。
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)前記第1実施形態では、クラッチユニット50に2系統の電磁コイル62A,62Bを備えていたが、3系統以上の電磁コイルを備えていてもよい。
(2)前記第1実施形態では、2系統のECU12,13を備えていたが、1系統のECUだけでもよいし、3系統以上のECUを備えていてもよい。また、1系統のECUで複数系統の電磁コイルを個別に通電(励磁)可能な構成としてもよい。
(3)前記第1実施形態では、第1クラッチ体53と第2クラッチ体57の噛合面53C,57C同士が噛合することでクラッチCL1が連結状態となるように構成されていたが、第1クラッチ53体と第2クラッチ57体の対向面同士が摩擦係合することで連結状態となるようにしてもよい。
本発明の第1実施形態に係るステアバイワイヤシステムの概念図 操舵ユニットの側断面図 転舵輪ユニットの側断面図 クラッチユニットの側断面図 クラッチ制御プログラムのフローチャート 第2実施形態に係るクラッチ制御プログラムのフローチャート (a)第3実施形態に係るクラッチユニットの側断面図(b)平断面図
符号の説明
10 ステアバイワイヤシステム
11 転舵輪
12 第1のECU(ステアリング制御部)
13 第2のECU(ステアリング制御部)
21 ステアリング
26 操舵角センサ
34 転舵モータ(転舵駆動源)
59 圧縮コイルばね(付勢手段)
62A,62B 電磁コイル
80 ロックホルダ
81 ロックアーム
84 トーションバネ(付勢手段)
86A,86B 電磁コイル
CL1,CL2 クラッチ

Claims (2)

  1. 通常は、ステアリングと転舵輪との間が機械的に切り離され、操舵角センサが検出した前記ステアリングの操舵角をステアリング制御部が取得しかつその操舵角に応じて転舵駆動源を作動させて前記転舵輪を転舵するステアバイワイヤシステムであって、
    異常時に前記ステアリングと前記転舵輪との間を機械的に連結可能なクラッチと、通電により前記クラッチを断絶状態に保持する電磁コイルと、前記電磁コイルへの通電停止により前記クラッチを連結状態に保持する付勢手段とが備えられたステアバイワイヤシステムにおいて、
    前記クラッチ1つに対して、前記電磁コイルを少なくとも2系統以上設けたことを特徴とするステアバイワイヤシステム。
  2. 前記ステアリング制御部を少なくとも2系統以上設けると共に、それら各ステアリング制御部毎に前記電磁コイルを1系統ずつ設け、何れか1つの前記ステアリング制御部が対応した1系統の前記電磁コイルを励磁することにより、前記クラッチが断絶状態に保持されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のステアバイワイヤシステム。


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