JP2007023633A - 構造物の制振構造および制振方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 構造物の各部の連結度合いを調整することにより、全体の振動応答を低減させる構造物の制振構造および制振方法の提供。
【解決手段】 図1の1は建造物の主体構造、2は、ロッキング壁3、ロッキング柱5、6からなるロッキング梃子機構(R&L機構)、4はロッキング中心、7は支柱、8a、8bは上部境界梁、9a、9bは下部境界梁である。図1の例では、ロッキング梃子機構2を既存の建物である主体構造1に取り付けている。ロッキング柱5、6の傾きの度合い、ロッキング中心並びに構成部材(柱・ブレース、壁もしくはブレースと柱梁)の剛性を適度に調整することにより、構造物の強風時あるいは地震時の振動応答を低減できる。
【選択図】 図1
【解決手段】 図1の1は建造物の主体構造、2は、ロッキング壁3、ロッキング柱5、6からなるロッキング梃子機構(R&L機構)、4はロッキング中心、7は支柱、8a、8bは上部境界梁、9a、9bは下部境界梁である。図1の例では、ロッキング梃子機構2を既存の建物である主体構造1に取り付けている。ロッキング柱5、6の傾きの度合い、ロッキング中心並びに構成部材(柱・ブレース、壁もしくはブレースと柱梁)の剛性を適度に調整することにより、構造物の強風時あるいは地震時の振動応答を低減できる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、構造物の強風時あるいは地震時の振動応答を低減できる構成とした、構造物の制振構造および制振方法に関する。
従来の建築物などの構造物の振動制御技術は、主として積み重ね方式で構築された構造物について剛性を設定し、減衰を付加して振動の低減を図るものが主流である。従来の構造物の最大の特徴は、1次モードが卓越し、耐震構造・免震構造・制振構造と呼ばれている。一方、構造物の頂部に付加質量を設け、両者の振動が同調して構造物の応答を低減する、TMD(チュインド・マス・ダンパー)と呼ばれる制振構造が多く使われている。例えば、特許文献1には、TMDを用いた制振構造が記載されている。
このように、TMDで構成された振動系は1次と2次が共に卓越し、従来の構造物の振動制御技術とは異なる。しかしながら、TMDを利用する場合には大きな制振効果を得るために、大きな付加質量、そして付加質量に応じて多量のダンパーが必要になる。言い換えれば、配置できるダンパーの量が限られた場合、付加質量も限定される。
前記のような構造物の中には、多数の質量が散在している。例えば、建築物の場合には各層の床位置にそれぞれ大部分の質量が分散されている。これらの質量を互いに異なるように振動させることができれば、すなわち時間的にずらして(位相差)振動させることができれば、特許文献1に記載されたTMDと同じ原理で振動の低減を図ることができる。
しかしながら、この方法では次のような問題があった。(1)構造物の各部も主要構造物となっているので、TMDの付加質量部のように大きな応答を許容できない。(2)構造物の各部の質量を互いに利用するので、大きな減衰すなわち多量のダンパーが必要である。
本発明は、このような問題に鑑みて、構造物の各部の連結度合いを調整することにより全体の振動応答を低減させる構成とした、構造物の制振構造および制振方法の提供を目的とする。
本発明にかかる構造物の制振構造は、有限剛性を持つ構造物の複数のロッキング部材を有し、前記ロッキング部材の傾斜角度及び前記ロッキング部材の剛性の調整により、前記ロッキング部材の梃子の支持点位置と、前記ロッキング部材の剛性を自由に設定できる梃子機構(ロッキング梃子機構)を構成したことを特徴とする。
また、本発明の構造物の制振構造は、前記構造物は建築物であって、前記ロッキング部材はロッキング柱(柱あるいはブレース)、およびロッキング壁であることを特徴とする。
また、本発明の構造物の制振構造は、前記ロッキング梃子機構を、前記建築物の下層と上層の2層以上の複数階の間に配置したことを特徴とする。
本発明にかかる構造物の制振方法は、有限剛性を持つ構造物の複数のロッキング部材を有し、前記ロッキング部材の傾斜角度及び前記ロッキング部材の剛性の調整により、前記ロッキング部材の梃子の支持点位置と、前記ロッキング部材の剛性を自由に設定できるロッキング梃子機構を構造物に組み込むことによって、振動特性を変化させることを特徴とする。
また、本発明の構造物の制振方法は、前記構造物は、既存の建築物であることを特徴とする。
また、本発明の構造物の制振方法は、前記ロッキング梃子機構を既存の構造物の外側に取り付けて、構造物の振動特性を変化させることを特徴とする。
また、本発明の構造物の制振方法は、前記ロッキング梃子機構をその他の構造物に取り付けて構造物の振動特性を変化させることを特徴とする。
また、本発明の構造物の制振方法は、前記ロッキング梃子機構を用いて構造物の異なる部位の剛性連成を調整することを特徴とする。
また、本発明の構造物の制振方法は、ロッキング梃子機構を用いて構造物の異なる部位の減衰連成を調整することを特徴とする。
また、本発明の構造物の制振方法は、一つの構造物について、質量行列、減衰行列、剛性行列のいずれか、もしくは全てを調整し、広範囲で質量の同調効果並びに変位の位相差制御を実現することを特徴とする。
本発明に係る構造物の制振装置および制振方法は、ロッキング梃子機構の利用により、構造物の振動特性(質量、減衰、剛性)を自由に設定することができる。また、本発明は新築構造物にもちろんのこと、既存構造物の耐震補強にも応用できる。更に、アクティブ制御の観点から、初期振動特性の設定とその可変が容易であり、構造物を制振する際の制御効果が大きく、制御力を小さくすることができる。
最初に、本発明に係る構造物の制振装置および制振方法の基本的な技術思想について説明する。制振構造における前記TMDと共に、位相差制御を実現させたもう一つの例として、振動特性が異なる隣接建物をバネとダンパーなどで連結し、双方の応答を効果的に低減する連結制振法が知られている。
この連結制振法は、既存建物や新築建物に実用化されている。この方法は、棟間連結によって新たな多自由度系を構成し、主として剛性マトリックスを自在に調整して振動の制御を実現したものとも言える。しかしながら、複数建物間の連結は、建築計画の制約上、一般的な構法として成り立つものではない。
一棟の建物に対し、構造物の各部の連結(剛性・減衰)度合いを調
整できれば、前記の棟間連結と同じようにダンパー量に応じて各部の質量を同調させることが可能である。しかしながら、従来の構造形式では、剛性などの連成項を大きく変化させることができない、という問題がある。
整できれば、前記の棟間連結と同じようにダンパー量に応じて各部の質量を同調させることが可能である。しかしながら、従来の構造形式では、剛性などの連成項を大きく変化させることができない、という問題がある。
そこで、一棟の建物の剛性項を大きく変化させる方法として、ピロティ建物における耐震壁直下の1階鉛直柱を斜めに設置し、周辺枠のないブレースとして機能させることが考えられる。この手法によれば、斜め柱の傾きなどによって振動モードをある程度自由に指定できる。また、1次モードの応答変位の配分に着目し、このように構成された「ブレース+壁」がロッキングで振動モードを指定するので、回転中心指定型ロッキング(Rocking Center Designated mechanism,RCD)機構と称する制振機構が知られている。本出願人のRCD機構についての発明は、特開2002−115415に記載されている。
RCD機構は、梃子機構として内力を配分する機能を有しているが、前記出願ではこの点の解析がなされていなかった。本発明においては、このような梃子機構としてのRCD機構をロッキング梃子(Rocking and Lever R&L)機構と表現することとする。本発明は、まずロッキング梃子機構を構成する部材の変形を考慮し、同機構による付加剛性を求める。次に、例えば2階建の建物のような、上層と下層の2質点2自由度の建物モデルにこの付加剛性を加え、結果的に建物の剛性マトリックスを任意に変化できる新たな振動系一層間連結系、例えば1階(下層)と2階(上層)の層間連結系を構成する。
ところで、従来の低層建物では高次モードを卓越させることができない。そこで、高次モードが卓越するような振動系を構築するために、何らかの方法で剛性の連成を変化させる必要がある。本発明においては、まず2質点系の主体構造(既存または新築の建物)にロッキング梃子(R&L)機構を付加して、従来と異なる振動モデルを構築する。
主体構造における質量と層間剛性及び減衰について、下層では(sm1,sk1,sc1)、上層では(sm2,sk2,sc2)とする。すなわち、質量のパラメータをm、層間剛性のパラメータをk、減衰のパラメータをcに設定する。このように、主体構造の質量と層間剛性及び減衰を設定し、後述するような方法でロッキング梃子機構の特性を変化させることにより、構造物の異なる部位の剛性連成、および減衰連成を調整することができる。
図6、図7は、本発明の基本原理を示す構造モデルの説明図である。ある質量分布と剛性分布を持つ既存、または新築の主体構造の層に、有限剛性を持つロッキング機構から連結力を作用させる。この連結力は、ロッキング中心に対しモーメントの釣合が成り立つので、ロッキング中心を支持点とした梃子機構として作用する。また、ロッキング柱の傾斜角度によって、後述するようにロッキング半径が任意に設定できる。
本発明のような、1次モードの応答変位の配分に着目した変形配分構造では、R&L機構の負担応力が小さくなるような構造計画が可能であるために、stiffなR&L機構(変形が無視できるR&L機構)と仮定しても差し支えない。卓越した高次モードを利用するためには、R&L機構の剛性が有限である必要ある。図1、図2に関連して後述するように、本発明の実施形態におけるR&L機構は、既存の主体構造と一体化したものとして考慮しているが、図6、図7では説明をわかり易くするために、R&L機構による付加剛性を主体構造から分離した形で表わしている。
図6において、(a)は変形前の図であり、(b)は変形後の図である。また、図7(a)はstiffなR&L機構を示しており、図7(b)はその変形後の図である。図6、図7において、2はR&L機構、3はロッキング壁、4はロッキング中心(梃子の支持点)、5、6は角度φ傾斜して配置されたロッキング柱である。この例では、ロッキング壁3、ロッキング柱5、6がロッキング部材として機能しており、これらの部材でR&L機構を構成している。
構造物の下層には外力P1が作用し、上層には外力P2が作用するものとする。ここで、R&L機構2に対し微小変形の仮定を設ける。すなわち、図6(a)のR&L機構2の釣合に対し、外力が作用したときの変形によるロッキング中心の移動が微小であると仮定する。hは下層の高さ、sは上層の高さである。ロッキング半径(2階床位置とロッキング中心の鉛直距離)をR、ロッキング壁3のスパンを2Lとすれば、ロッキング柱5、6の傾きが次の幾何学的な、すなわち平面三角の関係式(1)で表わされる。
このように、ロッキング柱の傾斜角度(φ)によって、ロッキング半径Rを任意に設定できる。次に、外力P1とP2は図6(a)に示すように、ロッキング中心に対するモーメントの釣合から(2)式の関係が成り立つ。
すなわち、ロッキング中心4を仮想の支点として、R&L機構2が梃子機構として機能する。仮想支点の水平反力はロッキング柱の負担水平力Qcであり、次の(3)式のように外力を負担する。
ここで、Ncはロッキング柱5、6の1本あたりの(変動)軸力である。また、ロッキング壁3の負担せん断力Qwは次の(4)式のように外力P2に等しい。
一方、図6(b)に示されたR&L機構2の水平相対変位x1とx2の間には、次の(5)式の関係がある。
(5)式右辺の第1項は、stiffなRCD機構のロッキング中心4に対する変形配分効果を表わすものである。第2項は剛性がkwのロッキング壁3の水平変形であり、(6)式で表わされる。
(5)式右辺の第3項はロッキング柱5,6(軸剛性がEA)の軸方向変形がもたらす上層の水平変形であり、図7(b)に示すようにx1を0とした場合、微小変形に対して次の(7)式のように表わされる。
なお、Δcはロッキング柱5、6の軸方向変形であり、次の(8)式のように表わされる。
(6)式と(7)式を(5)式に代入し、次の(9)式の関係式が得られる。
(9)式に(2)式の関係を用いると、(10)式が得られる。
ここで、R&L機構2の剛性を(11)式のように非負な数値kRで表わす。
すると、外力と水平変位の関係を、(12)、(13)式のように表わすことができる。
すなわち、R&L機構2の付加剛性を(14)式のように表わすことができる。
また、(l2)式と(l3)式を(3)式に代入すると、R&L機構2の仮想支点での反力が(15)式のように表わされる。
stiffなR&L機構(kw=∞,EA=∞:kR=∞)では、(15)式から相対変位x1とx2がロッキング中心に対する幾何学的な関係が得られる。
図6、図7に示したR&L機構2と主体構造の間の接合方式について説明する。この接合方式としては、主体構造のある位置でR&L機構2を連結する外付け方式も考えられるが、主体構造に直接にR&L機構2を組み込むことができる。図1は、R&L機構が既存または新築の主体構造に直接に組み込まれた構造システムの例を示す説明図であり、図2は図1の構造をモデル化して示す説明図である。
図1に示した、本発明の基本構成であるロッキング梃子機構が既存の建物に組み込まれた建築構造物の例では、ロッキング梃子機構がある傾斜角度を持つ柱あるいはブレース(ロッキング柱)を壁体(ロッキング壁)に取り付けて構成されている。この例では、ロッキング柱とロッキング壁の剛性は有限である。
ロッキング壁は、壁体に限定されず柱と梁からなるもの、更にその中にブレースを取り付けたものでも差し支えなく、剛性を設定できれば良い。ロッキング梃子機構は、境界梁と床などを介して周りの建築物(主体構造)と連結される。なお、図1の構成は、既存の建物以外のその他の構造物、例えば新築の建物に適用することができる。
図1において、図6、図7と同じところには同一の符号を付しており詳細な説明は省略する。図1の1は主体構造、7は支柱、8a、8bは上部境界梁、9a、9bは下部境界梁である。また、図2の11、12は、主体構造1とR&L機構2を連結するリンクである。図1、図2の場合には、全体系の運動方程式は(16)式のようになる。
なお、主体構造の水平相対変位は、境界梁などのリンク材の軸剛性
が十分なものとし、R&L機構と同様にx1とx2とする。全体剛性マトリックス[k]は(I7)式のように、主体構造の剛性に(I4)式のR&L機構の付加剛性を加えて得られる。
が十分なものとし、R&L機構と同様にx1とx2とする。全体剛性マトリックス[k]は(I7)式のように、主体構造の剛性に(I4)式のR&L機構の付加剛性を加えて得られる。
従って、主体構造とR&L機構の付加剛性の組み合わせ(ロッキン
グ半径Rなど)で全体剛性の各項、すなわち、対角項の値(正な値)、
剛性連成項の符号と値を変化させることができる。
グ半径Rなど)で全体剛性の各項、すなわち、対角項の値(正な値)、
剛性連成項の符号と値を変化させることができる。
(l5)式の右辺の変位項は、R&L機構の剛性(バネ)に対し、変位についてもR&L機構の配分効果が成り立つことを意味する。さらに、(2)式の外力の配分効果を念頭におけば、本構造システムの振動モデルは図3(a)のように、支点の位置と剛性が自由に変えられる梃子型等価モデルにモデル化できる。
図3(a)は、図2をさらに簡略化した振動モデルとして示す説明図である。前記のように、ロッキング柱5、6とロッキング壁3の剛性から決定されるロッキング機構の剛性が有限であるので、図3(a)の振動モデルとして扱うことができる。すなわち、支持点の位置4及び剛性kRが自在に変化できるロッキング梃子機構2を主体構造1に作用させ、構造物の振動を制御する。11、12は、主体構造1とR&L機構2を連結するリンクである。
(17)式に示されているように、主体構造の剛性値、ロッキング機構の剛性値はいずれも非負であるので、剛性マトリックスの対角項も正な値であり、振動系が安定したものとなっている。一方、非対角項すなわち剛性連成項の符号と値はロッキング半径Rなどによって、負な値でも正な値でも取りうる。従来の主体構造、すなわちロッキング機構がない(kR=0)場合には、非対角項が負な値、しかも層剛性に限定された値しか取れない。
従って、本発明によって、主体構造とロッキング梃子機構の付加剛性の組み合わせで全体剛性の各項を自由に変化させることができる。なお、(1)式に示されているように、ロッキング半径Rはロッキング柱5、6の傾き(φ)の関数であるので、ロッキング柱の傾きの度合い(傾斜角度)を調整することにより、構造物の振動を制御することができる。また、ロッキング梃子機構の支持点位置を調整することにより、構造物の振動を制御することができる。
剛性連成項は建物各部の連成度合いを表わすものなので、本発明によって建物各部の振動を離れさせたり、近づけさせたりすることができる。また、連成剛性の調整によって、建物各部の振動を同調させ、位相差のずれを生じさせることができる。連成の度合いが強い場合(極端な例は従来のTMD)には構造物に多くのダンパーが必要であるが、本発明においては、連成の度合いを緩めたり、連成ではなく排斥させたり(連成剛性が正な値)することにより、必要とするダンパーを少なくすることができる。
結果的に、本発明は、構造物に配置できるダンパーの量に応じて、連成剛性を設定し、各部の質量間を同調させ、振動の制御を実現できる新しい制振構造を構成することができる。本発明の構造物の制振方法は、一つの構造物について、(17)式の質量行列、減衰行列、剛性行列のいずれか、もしくは全てを調整し、広範囲で質量の同調効果並びに変位の位相差制御を実現することができる。
前記(17)式は、様々な形で表わすことができる。まず、全体剛性[k]を(l8)式で表わす。
ここで、
同時ではないが、tklあるいはtk2が負な値も採りうる。しかし、
(l8)式右辺の第1項は形式的に従来建物の剛性マトリックスなので、
本構造は基礎と建物の頂部に拘束バネk1(Rによって正負な値)を
付加したと解釈できる。これは外付けのtendon、または頂部に対する拘束骨組を必要とはしない。図3(b)は、(18)〜(21)式の力学的な等価モデルを示す説明図である。なお、R&L機構を外付け方式に用いれば、伝統的な木塔を検討したモデルを構成することも可能である。
(l8)式右辺の第1項は形式的に従来建物の剛性マトリックスなので、
本構造は基礎と建物の頂部に拘束バネk1(Rによって正負な値)を
付加したと解釈できる。これは外付けのtendon、または頂部に対する拘束骨組を必要とはしない。図3(b)は、(18)〜(21)式の力学的な等価モデルを示す説明図である。なお、R&L機構を外付け方式に用いれば、伝統的な木塔を検討したモデルを構成することも可能である。
次に、建物の全体剛性マトリックスを(22)式のように分離する。
ここで、
klが負な値を採りうるが、(22)式の第1項は従来の建物の剛性マトリックスと同じ形となっているので、R&L機構によって全体剛性[k]の連成項などを変化できることを意味する。
以上説明したように、R&L機構が組み込まれた層間連結制振構造システムは剛性マトリックスを任意に設定することができる。従って、伝達関数の定点理論など位相差に着目し、最適設計を展開することが考えられる。次に、層間連結制振建物の定常応答について説明する。ここでは剛性マトリックスを変形し、異なる2棟の建物の連結制振法との運動方程式の相似性を利用して、層間連結建物の定常応答を説明する。
層間連結制振建物の運動方程式について説明する。まず、(17)式の全体剛性[k]を(26)式のように表わす。
ここで、
上記のように、それぞれ独立した建物aとbの如く、剛性kaとkb及び連結バネkLに分離して表わすことができる。以降の記述では、層間
連結について、aとbは質点lと質点2に対応するものである。また、Ca=sCl=0と置くと、連結ダンパーがCL=sC2となり、(30)式のように棟間連結とまったく同じ運動方程式が得ることができる。
連結について、aとbは質点lと質点2に対応するものである。また、Ca=sCl=0と置くと、連結ダンパーがCL=sC2となり、(30)式のように棟間連結とまったく同じ運動方程式が得ることができる。
従って、棟間連結制振法を利用して層間連結制振を考察することができる。図4は、層間連結制振のモデルを示す説明図である。図3(a)との相違は、各層の減衰C1、C2が設定されていることである。層間連結制振は、棟間連結と比べると、(27)式から分かるように、R&L機構の回転半径Rや剛性kRの値によって、層間連結ではkLが正の値だけでなく、負の値も取りうる。また、同時ではないが、kaとkbも正あるいは負の値を取りうる。このように、図4の構成は層間連結の剛性マトリックスを広い範囲で設定できるので、ロッキング梃子機構を用いて、構造物の下層と上層のような異なる部位の剛性連成を調整することが可能となる。
なお、棟間連結対象の質量比と剛性比によって、最適連結バネが負のものを必要とする場合がある。これを解決するためには付加質量と梃子機構を用いる方法と、アクチュエーターで擬似負剛性を実現する方法が用いられている。
ロッキング梃子機構を構造物に直接組み込む以外に、構造物の外側もしくはセンターコアの内部に取り付ける外付け方式も可能である。図5はR&L機構を主体構造に外付けした例を示す説明図である。図5において、10はR&L機構、13はバネダンパー、17はロッキング壁、14はR&L機構10と主体構造との上部連結部、15は主体構造とバネダンパー13との連結部、16はバネダンパー13とロッキング壁17との連結部、18,19はロッキング柱である。
ロッキング梃子機構10と主体構造1の間に、1箇所以上に緊結ではなくバネダンパー16を介して連結させる。この場合、構造物全体の剛性マトリックスと減衰マトリックスの両方を自由に調整できる。特殊な場合、ロッキング梃子機構に対して非常に高い剛性を付与すれば、見かけ上構造物の質量マトリックスも調整できる。前記した主体構造にロッキング梃子機構を直接組み込む方式と同様、数多く選択できる振動特性の中から、最も効果が高い制御を選択できる。
以上説明したように、本発明にかかる構造物の制振構造および制振方法は、傾きを持つ柱あるいはブレースを、壁もしくはブレースと柱梁から構成される構造体に接続し、傾きの度合い並びに構成部材(柱・ブレース、壁もしくはブレースと柱梁)の剛性を適度に調整し、支持点と剛性が自由に変化できる梃子機構(ロッキング梃子機構)を用いている。このようなロッキング梃子機構を用いて、建築物などの構造物の構造物特性(質量、減衰、剛性)を自由に設定できる振動系を構成し、幅広い範囲で質量の同調効果並びに変位の位相差を実現できる。かかる構成の振動制振法により、構造物の強風時あるいは地震時の振動応答を低減できる制振構造が実現できる。特殊の装置を必要しないので、従来の制振構造よりも幅広い振動特性から最適なものを抽出でき、合理的かつ経済的な構造物構築方法並びに構造物の振動制御を提供できる。
1・・・主体構造、2、10・・・ロッキング梃子機構(R&L機構)、3、17・・・ロッキング壁、4・・・ロッキング中心、5、6、18、19・・・ロッキング柱、7・・・支柱、8,9・・・境界梁、11、12・・・リンク、13・・・バネダンパー、14〜16・・・連結部
Claims (10)
- 有限剛性を持つ構造物の複数のロッキング部材を有し、前記ロッキング部材の傾斜角度及び前記ロッキング部材の剛性の調整により、前記ロッキング部材の梃子の支持点位置と、前記ロッキング部材の剛性を自由に設定できる梃子機構(ロッキング梃子機構)を構成したことを特徴とする、構造物の制振構造。
- 前記構造物は建築物であって、前記ロッキング部材はロッキング柱(柱あるいはブレース)、およびロッキング壁であることを特徴とする、請求項1に記載の構造物の制振構造。
- 前記ロッキング梃子機構を、前記建築物の下層と上層の2層以上の複数階の間に配置したことを特徴とする、請求項2に記載の構造物の制振構造。
- 有限剛性を持つ構造物の複数の部材を組み合わせた揺動機構(ロッキング機構)を有し、前記部材の傾斜角度及び前記部材の剛性の調整により、前記ロッキング機構の梃子の支持点位置と、前記ロッキング機構の剛性を自由に設定できるロッキング梃子機構を構造物に組み込むことによって、振動特性を変化させることを特徴とする、構造物の制振方法。
- 前記構造物は、既存の建築物であることを特徴とする、請求項4に記載の構造物の制振方法。
- 前記ロッキング梃子機構を既存の構造物の外側に取り付けて、構造物の振動特性を変化させることを特徴とする、請求項4に記載の構造物の制振方法。
- 前記ロッキング梃子機構をその他の構造物に取り付けて構造物の振動特性を変化させることを特徴とする、請求項4に記載の構造物の制振方法。
- 前記ロッキング梃子機構を用いて構造物の異なる部位の剛性連成を調整することを特徴とする、請求項4ないし請求項7のいずれかに記載の構造物の制振方法。
- ロッキング梃子機構を用いて構造物の異なる部位の減衰連成を調整することを特徴とする、請求項4ないし請求項7のいずれかに記載の構造物の制振方法。
- 一つの構造物について、質量行列、減衰行列、剛性行列のいずれか、もしくは全てを調整し、広範囲で質量の同調効果並びに変位の位相差制御を実現することを特徴とする、請求項4ないし請求項9のいずれかに記載の構造物の制振方法。
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