JP2004176348A - 高層建築物の免震構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高層建築物10は、内側構造12と外側構造14との基礎の上に独立して自立する2つの構造物で構成されている。外側構造14は前記内側構造12を囲むように設けられている。内側構造12は基礎の上に固定されて設けられている。外側構造14は、免震支持装置16を介して前記基礎の上で免震支持されている。内側構造12の頂部と外側構造14の頂部とは略々同じ高さであり、内側構造12の頂部と外側構造14の頂部との相互を連結するように連結梁18が設けられている。連結梁18の両端は内側構造12の頂部と外側構造14の頂部とに剛接されており、連結梁18の剛性は十分に大きい。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高層建築物において地震力や風圧力等により発生する水平方向の振動を低減する免震構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的な建築物の免震構造として、建築物の一階床下または中間階に免震支持装置を設けたものがあり、この免震支持装置は、積層ゴムなどによって構成されることもあり、また、積層ゴムやころがり支承、すべり支承にエネルギー吸収装置を組合せて構成されることもある。
このような免震構造の原理は、免震構造としない場合の当該建築物の本来の固有周期を、免震構造とすることにより長周期化させ、また、エネルギー吸収装置などにより振動を減衰させることにより、地震時の建築物への入力せん断力や建築物の変形を低減させようとするものである。
ただし、このような免震構造は、中低層の建築物には広く用いられているが、アスペクト比が大きい高層建築物の場合には、そのまま適用することに困難がある。そのため、高層建築物のために特に開発された様々な免震構造がこれまでに提案されている。
【0003】
高層建築物のための公知の免震構造の1つに、次のようなものがある。その免震構造は、下部構造と該下部構造上において支持された上部構造とを備え、該上部構造は、平面視した場合に、コア部と、該コア部に比較して剛性の低い構造からなる一般部とに分離された構成とされている。そして、コア部および一般部は、前記下部構造側から別個に支持されるとともに、一般部は前記下部構造側から免震装置を介して支持された構成とされ、なおかつ、コア部および一般部の間には、制振ダンパーが介装されている(例えば、特許文献1参照)。
また、高層建築物のための別の公知の免震構造として、積層ゴムによる免震システムを適用した免震構造物に隣接して並立する補助構造物を設け、免震構造物の上部に、地震時に免震層に発生する水平力と同程度の大きさで同じ向きの水平力を補助構造物から付与するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−241524号公報
【特許文献2】
特公昭63−293284号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の免震構造は、コア部の振動性状と、一般部の振動性状との差を利用して、コア部と一般部との間に介装した制震ダンパーによって振動を減衰させるようにしたものであるため、高層建築物を設計する際に、コア部と一般部とがそれぞれに適切な振動性状を持つように設計しなければならず、そのことが設計上の大きな制約となっている。
また、特許文献2の免震構造は、地震時に補助構造物の変形に伴う水平反力が免震建物の転倒モーメントをうち消すように機能するのみであり、高層建築物の免震効果を向上するまでには至っていない。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、高層建築物の設計上の自由度を制約することなく、高層建築物の免震効果を向上できる免震構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明の高層建築物の免震構造は、高層建築物を、それぞれ独立して基礎の上に自立した内側構造と該内側構造を囲む外側構造とから構成し、前記内側構造を前記基礎の上に固定し、前記外側構造を免震支持装置を介して前記基礎の上で免震支持し、前記内側構造の頂部近傍部分と前記外側構造の頂部近傍部分とを剛な連結梁で連結することで、前記高層建築物の固有振動周期を長周期化すると共に、前記内側構造により前記外側構造が水平方向中立位置に保持されるようにし、前記内側構造により前記高層建築物の慣性力に対する反力が得られるようにし、かつ、前記内側構造および前記外側構造により前記高層建築物の慣性力に起因する転倒モーメントに対する反力が得られるようにしたことを特徴とする。
また、本発明の高層建築物の免震構造は、高層建築物を、基礎の上に固定した下層階部分と、この下層階部分の上方の上層階部分とで構成し、前記上層階部分を、前記下層階部分から連続して上方に構築され起立する内側構造と、該内側構造を囲む外側構造とから構成し、前記外側構造を免震支持装置を介して前記下層階部分の上で免震支持し、前記内側構造の頂部近傍部分と前記外側構造の頂部近傍部分とを剛な連結梁で連結することで、前記高層建築物の固有振動周期を長周期化すると共に、前記内側構造により前記外側構造が水平方向中立位置に保持されるようにし、前記内側構造により前記高層建築物の慣性力に対する反力が得られるようにし、かつ、前記内側構造および前記外側構造により前記高層建築物の慣性力に起因する転倒モーメントに対する反力が得られるようにしたことを特徴とする。
【0007】
本発明では、それぞれ独立して基礎の上に自立した内側構造と該内側構造を囲む外側構造とから構成し、基礎の上に固定した内側構造の頂部近傍部分と、免震支持装置で支持された外側構造の頂部近傍部分とを、剛な連結梁で連結することで、高層建築物を長周期化して免震効果を向上させている。
また、本発明では、高層建築物を、基礎の上に固定した下層階部分と、この下層階部分の上方の上層階部分とで構成し、上層階部分を、下層階部分から連続して上方に構築され起立する内側構造と、該内側構造を囲む外側構造とから構成し、内側構造の頂部近傍部分と、免震支持装置で支持された外側構造の頂部近傍部分とを、剛な連結梁で連結することで、高層建築物を長周期化して免震効果を向上させている。
また、これらの構成によれば、内側構造により外側構造が水平方向中立位置に保持され、内側構造により高層建築物の慣性力に対する反力が得られ、かつ、内側構造および外側構造により高層建築物の慣性力に起因する転倒モーメントに対する反力が得られることから、免震支持装置の水平抵抗力を非常に小さくすることができ、そのことによっても免震効果が向上する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1(A)は本発明が適用された高層建築物の断面正面図、(B)は同平面図、図2は本発明が適用された高層建築物の断面平面図、図3は内側構造の斜視図を示す。
本発明が適用される高層建築物10は、建築計画的には、1つの建物として計画される構造物であるが、構造的には、それぞれ独立して基礎11の上に自立した内側構造12と外側構造14との2つの構造物で構成されている。
平面視した場合、外側構造14は内側構造12を囲むように設けられている。本実施の形態では、平面視した場合、外側構造14は矩形枠状を呈し、また、内側構造12は矩形状を呈しており、内側構造12の4つの外側壁と外側構造14の4つの内側壁とはそれぞれ平行している。
そして、内側構造12の4つの外側壁と外側構造14の4つの内側壁との間に、内側構造12の全周に沿って延在する環状の空間Sが形成されている。
【0009】
前記内側構造12は基礎11の上に固定されて設けられている。
前記外側構造14は、免震支持装置16を介して前記基礎11の上で免震支持されている。
前記免震支持装置16は、外側構造14の重量を受けるべく鉛直支持能力を有し、水平変形が可能で、かつ、水平抵抗が非常に小さい装置であり、例えば、ころがり支承、すべり支承、積層ゴムなどを用いることができる。このような免震支持装置16を設けることで、外側構造14を鉛直支持するとともに、高層建築物10の全体としての剛性を低く抑えている。
【0010】
本実施の形態では、内側構造12は、鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の連層耐力壁構造となっている。
また、外側構造14は、上記の建物構成要素が適宜選定された鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、または、鉄骨造の外周チューブと内周チューブからなるダブルチューブ構造となっており、図2において、符号1402は外周柱、符号1404は内周柱を示している。
【0011】
内側構造12の頂部と外側構造14の頂部とは略々同じ高さであり、本実施の形態では、内側構造12の頂部と外側構造14の頂部との相互を連結するように連結梁18が設けられている。
前記連結梁18の両端は内側構造12の頂部と外側構造14の頂部とに剛接されており、連結梁18の剛性は十分に大きい。
ただし、連結張り18の両端と内側構造12及び外側構造14の各頂部との間の連結形態は、本実施の形態のような剛接に限られるものではなく、例えばピンを使用した枢着とする場合もあり得る。
前記連結梁18はほぼ水平方向に延在しており、内側構造12の周方向に間隔をおいた複数箇所に設けられている。
図1(B)に示すように、本実施の形態では、各連結梁18は、平面視した場合に、内側構造12の各外側壁と、対応する外側構造14の内側壁との間を通り、すなわち前記空間Sを通り、内側構造12の各外側壁および対応する外側構造14の内側壁に対して直交するように2本ずつ配設されている。
【0012】
また、図2に示すように、各階には、内側構造12と外側構造14の間で、人の移動及び物品の運搬等の目的のため、平面視した場合に180度異なる2箇所にそれぞれ連絡通路20が設けられている。
前記連絡通路20は、内側構造12と外側構造14の相対変形を吸収できるようなエキスパンションジョイントとなっている。各階の連絡通路20は、平面視した場合、隣り合う上下階で同位置にならないように、90度異なる方向に設けられている。すなわち、連絡通路20のための通路開口2002を上下階で同位置に設けた場合、それによって、図3(B)に示すように、内側構造12の耐力壁には境界梁2004が必要となり、通路開口2002が設けられた箇所における耐力壁部分が強度的に弱くなる。そのためこの影響を低減するように、図3(A)に示すように、通路開口2002の位置が上下に連続して配置されないようにしており、これによって、強度的な弱点となる境界梁2004を設ける必要が無くなり、コストダウンを図る上で有利となっている。
【0013】
次に、作用、効果について説明する。
本発明に係る高層建築物の免震構造の顕著な作用の1つは、高層建築物の固有振動周期を大幅に長周期化し得るということである。即ち、高層建築物10を、それぞれ独立して基礎11の上に自立した内側構造12と該内側構造12を囲む外側構造14とから構成し、基礎11の上に固定した内側構造12の頂部近傍部分と、免震支持装置16で支持された外側構造14の頂部近傍部分とを、剛な連結梁18で連結した構成であるため、この高層建築物10を、地震入力によって曲げ変形の振動を発生する振動体として見たとき、曲げ剛性は内側構造12のままで、建物の重量は高層建築物10全体で振動するような振動体とすることができる。
即ち、内側構造12が地震などによる慣性力を受けて弾性振動をする場合を1質点系の振動に簡単化して考えると、固有周期T=2π(m/k)1/2(秒)の振動をする。ここでm:建物の質量、k:建物の剛性である。本発明では、頂部近傍部分で内側構造12と外側構造14を水平方向に剛な連結梁18で連結するとともに、外側構造14を、鉛直支持能力および水平変形能力を有し、かつ、水平抵抗が非常に小さい免震装置16で支持していることから、上記固有周期の式において、質量mを増大させ、剛性kは増大させないという効果を生じ、すなわち、固有周期Tを増大させる作用が得られる。したがって、この高層建築物の固有周期の大幅に長周期化が可能となるため、それによって免震効果が格段に向上するのである。
【0014】
更に、この構成によれば、内側構造12により外側構造14が水平方向中立位置に保持され、内側構造12により高層建築物10の慣性力に対する反力が得られる。また、高層建築物10の慣性力に起因する転倒モーメントに対しては、内側構造12によるモーメント抵抗、及び、基礎11に固定された内側構造12に作用する鉛直方向の引張力と、基礎11に免震支持された外側構造14のうちの、転倒方向側の部分に作用する鉛直方向の圧縮力とによって得られるモーメント抵抗によって抵抗する。
したがって、免震支持装置16そのものには、外側構造14を水平方向中立位置に保持する機能を付与する必要が無く、また、高層建築物10の慣性力に対する反力を発生させるための構造や、鉛直方向の引張力に耐えられるようにするための構造を付与する必要がない。
【0015】
したがって本実施の形態によれば、前掲の特許文献1に記載されている従来の構造と比較したとき、内側構造12と外側構造14との固有周期の差や、内側構造12と外側構造14の剛性及び重量に関する設計上の制約が格段に小さく、高層建物の設計の自由度が増大するという利点が得られ、また、前掲の特許文献2に記載されている従来の構造と比較したとき、免震効果を格段に向上することができるという利点が得られる。
しかも、外側構造14を免震支持装置16で支持し、剛な連結梁18により内側構造12と外側構造14とを連結するといった簡単な構成により上記の効果を達成できるので、コストダウンや工期の短縮化を図る上でも有利となる。
【0016】
次に、本発明の別の実施の形態について図面を参照して説明する。
図4(A)は本発明が適用された別の実施の形態の高層建築物の断面正面図、(B)は同平面図、図5は高層建築物の断面平面図を示す。
前記の実施の形態と同様な箇所、部材に同一の符号を付して説明すると、高層建築物10は、建築計画的には、1つの建物として計画される構造物であるが、高層建築物10は、下層階部分10Aと、この下層階部分10Aの上方の上層階部分10Bとで構成され、さらに、上層階部分10Bは、下層階部分10Aから連続して上方に構築されて起立した内側構造12と、該内側構造12を囲む外側構造14とから構成されている。
平面視した場合、外側構造14は内側構造12を囲むように設けられている。本実施の形態では、平面視した場合、外側構造14は矩形枠状を呈し、また、内側構造12は矩形状を呈しており、内側構造12の4つの外側壁と外側構造14の4つの内側壁とはそれぞれ平行している。
そして、内側構造12の4つの外側壁と外側構造14の4つの内側壁との間に、内側構造12の全周に沿って延在する環状の空間Sが形成されている。
【0017】
前記下層階部分10Aは基礎11の上に固定され、したがって、内側構造12は下層階部分10Aを介して基礎11に固定されている。
前記外側構造14は、免震支持装置16を介して下層階部分10Aの上で免震支持されている。
前記免震支持装置16は、外側構造14の重量を受けるべく鉛直支持能力を有し、水平変形が可能で、かつ、水平抵抗が非常に小さい装置であり、例えば、ころがり支承、すべり支承、積層ゴムなどを用いることができる。このような免震支持装置16を設けることで、外側構造14を鉛直支持するとともに、高層建築物10の全体としての剛性を低く抑えている。
【0018】
本実施の形態では、内側構造12は、鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の連層耐力壁構造となっている。
また、外側構造14は、上記の建物構成要素が適宜選定された鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、または、鉄骨造の外周チューブと内周チューブからなるダブルチューブ構造となっており、図5において、符号1402は外周柱、符号1404は内周柱を示している。
【0019】
内側構造12の頂部と外側構造14の頂部とは略々同じ高さであり、本実施の形態では、内側構造12の頂部と外側構造14の頂部との相互を連結するように連結梁18が設けられている。
前記連結梁18の両端は内側構造12の頂部と外側構造14の頂部とに剛接されており、連結梁18の剛性は十分に大きい。
ただし、連結張り18の両端と内側構造12及び外側構造14の各頂部との間の連結形態は、本実施の形態のような剛接に限られるものではなく、例えばピンを使用した枢着とする場合もあり得る。
前記連結梁18はほぼ水平方向に延在しており、内側構造12の周方向に間隔をおいた複数箇所に設けられている。
図4(B)に示すように、本実施の形態では、各連結梁18は、平面視した場合に、内側構造12の各外側壁と、対応する外側構造14の内側壁との間を通り、すなわち前記空間Sを通り、内側構造12の各外側壁および対応する外側構造14の内側壁に対して直交するように2本ずつ配設されている。
【0020】
また、図5に示すように、各階には、内側構造12と外側構造14の間で、人の移動及び物品の運搬等の目的のため、平面視した場合に180度異なる2箇所にそれぞれ連絡通路20が設けられている。
前記連絡通路20は、内側構造12と外側構造14の相対変形を吸収できるようなエキスパンションジョイントとなっている。
各階の連絡通路20は、本実施の形態でも、図3に示すように、平面視した場合、隣り合う上下階で同位置にならないように、90度異なる方向に設けられている。すなわち、連絡通路20のための通路開口2002を上下階で同位置に設けた場合、図3(B)に示すように、内側構造12の耐力壁には境界梁2004が必要となり、通路開口2002が設けられた箇所における耐力壁部分が強度的に弱くなる。そのためこの影響を低減するように、通路開口2002の位置が上下に連続して配置されないようにしており、これによって、強度的な弱点となる境界梁2004を設ける必要が無くなり、コストダウンを図る上で有利となっている。
【0021】
次に、作用、効果について説明する。
本発明に係る高層建築物の免震構造の顕著な作用の1つは、高層建築物の固有振動周期を大幅に長周期化し得るということである。即ち、高層建築物10を、基礎11の上に固定した下層階部分10Aと、この下層階部分10Aの上方の上層階部分10Bとで構成し、上層階部分10Bを、下層階部分10Aから連続して上方に構築され起立する内側構造12と、該内側構造12を囲む外側構造14とから構成し、内側構造12の頂部近傍部分と、免震支持装置16で支持された外側構造14の頂部近傍部分とを、剛な連結梁18で連結した構成であるため、この高層建築物10を、地震入力によって曲げ変形の振動を発生する振動体として見たとき、曲げ剛性は内側構造12のままで,建物の重量は高層建築物10全体で振動するような振動体とすることができる。
即ち、内側構造12が地震などによる慣性力を受けて弾性振動をする場合を1質点系の振動に簡単化して考えると、固有周期T=2π(m/k)1/2(秒)の振動をする。ここでm:建物の質量、k:建物の剛性である。本発明では、頂部近傍部分で内側構造12と外側構造14を水平方向に剛な連結梁18で連結するとともに、外側構造14を、鉛直支持能力および水平変形能力を有し、かつ、水平抵抗が非常に小さい免震装置16で支持していることから、上記固有周期の式において、質量mを増大させ、剛性kは増大させないという効果を生じ、すなわち、固有周期Tを増大させる作用が得られる。したがって、この高層建築物の固有周期の大幅に長周期化が可能となるため、それによって免震効果が格段に向上するのである。
【0022】
更に、この構成によれば、内側構造12により外側構造14が水平方向中立位置に保持され、内側構造12により高層建築物10の慣性力に対する反力が得られる。また、高層建築物10の慣性力に起因する転倒モーメントに対しては、一体化した内側構造12と下層階部分10Aによるモーメント抵抗、及び、基礎11に固定された下層階部分10Aおよび内側構造12に作用する鉛直方向の引張力と、下層階部分10Aおよび下層階部分10Aに免震支持された外側構造14のうちの、転倒方向側の部分に作用する鉛直方向の圧縮力とによって得られるモーメント抵抗によって抵抗する。
したがって、免震支持装置16そのものには、外側構造14を水平方向中立位置に保持する機能を付与する必要が無く、また、高層建築物10の慣性力に対する反力を発生させるための構造や、鉛直方向の引張力に耐えられるようにするための構造を付与する必要がない。
【0023】
したがって本実施の形態によっても、前掲の特許文献1に記載されている従来の構造と比較したとき、内側構造12と外側構造14との固有周期の差や、内側構造12と外側構造14の剛性及び重量に関する設計上の制約が格段に小さく、高層建物の設計の自由度が増大するという利点が得られ、また、前掲の特許文献2に記載されている従来の構造と比較したとき、免震効果を格段に向上することができるという利点が得られる。
しかも、外側構造14を免震支持装置16で支持し、剛な連結梁18により内側構造12と外側構造14とを連結するといった簡単な構成により上記の効果を達成できるので、コストダウンや工期の短縮化を図る上でも有利となる。
【0024】
なお、以上の2つの実施の形態では、連結梁18を、内側構造12の頂部と外側構造14の頂部との間に設けた場合について説明したが、連結梁18により連結する内側構造12の箇所と外側構造14の箇所とは、内側構造12、外側構造14の頂部近傍部分であればよく、頂部そのものに限定されるものではない。
また、連結梁18により連結する内側構造12の箇所と外側構造14の箇所とは、上下方向における1箇所に限定されず、内側構造12の上下方向に間隔をおいた複数箇所において該内側構造12と外側構造14とを連結梁18により連結してもよく、あるいは、内側構造12の周囲に沿って螺旋状に連結梁18を配置するようにしてもよい。
連結梁18の剛性は、内側構造12と外側構造14との間で、圧縮荷重、引張荷重、曲げ荷重、捻り荷重等を確実に伝達できるような、十分に大きなものであることを必要とする。換言するならば、連結梁18は、内側構造12と外側構造14とが地震入力によって曲げ変形の振動を発生する際に、それら内側構造12と外側構造14とが実質的に単一の振動体と見なせるように、それらを十分に剛な連結状態でもって連結することのできる、十分な剛性を有するものでなければならず、このような観点から必要な本数、構造、寸法、配置構造などが適宜決定される。
【0025】
また、本実施の形態では、各階の連絡通路20を、平面視した場合、隣り合う上下階で同位置にならないように、90度異なる方向にずらした場合について説明したが、例えば、平面視した場合に120度異なる3箇所にそれぞれ連絡通路20が設けられる場合には、前記各階の連絡通路20は、隣り合う上下階で同位置にならないように、60度異なる方向にずらされ、平面視した場合に90度異なる4箇所にそれぞれ連絡通路20が設けられる場合には、前記各階の連絡通路20は、隣り合う上下階で同位置にならないように、45度異なる方向にずらして設けられることになる。
また、内側構造12と外側構造14の間に、例えば、内側構造12の周方向に間隔をおいた複数箇所にダンパーを設け、内側構造12と外側構造14の相対変形によりダンパーに発生する減衰力により、内側構造12と外側構造14の相対変形を制御または抑制する効果を得るようにしてもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように本発明の高層建築物の免震構造によれば、高層建物の設計の自由度を増大でき、免震性能を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明が適用された高層建築物の断面正面図、(B)は同平面図である。
【図2】本発明が適用された高層建築物の断面平面図である。
【図3】(A)、(B)は内側構造の斜視図である。
【図4】(A)は本発明が適用された別の実施の形態の高層建築物の断面正面図、(B)は同平面図である。
【図5】本発明が適用された別の実施の形態の高層建築物の断面平面図である。
【符号の説明】
10 高層建築物
10A 下層階部分
10B 上層階部分
12 内側構造
14 外側構造
16 免震支持装置
18 連結梁
Claims (8)
- 高層建築物を、それぞれ独立して基礎の上に自立した内側構造と該内側構造を囲む外側構造とから構成し、
前記内側構造を前記基礎の上に固定し、
前記外側構造を免震支持装置を介して前記基礎の上で免震支持し、
前記内側構造の頂部近傍部分と前記外側構造の頂部近傍部分とを剛な連結梁で連結することで、前記高層建築物の固有振動周期を長周期化すると共に、前記内側構造により前記外側構造が水平方向中立位置に保持されるようにし、前記内側構造により前記高層建築物の慣性力に対する反力が得られるようにし、かつ、前記内側構造および前記外側構造により前記高層建築物の慣性力に起因する転倒モーメントに対する反力が得られるようにした、
ことを特徴とする高層建築物の免震構造。 - 高層建築物を、基礎の上に固定した下層階部分と、この下層階部分の上方の上層階部分とで構成し、
前記上層階部分を、前記下層階部分から連続して上方に構築され起立する内側構造と、該内側構造を囲む外側構造とから構成し、
前記外側構造を免震支持装置を介して前記下層階部分の上で免震支持し、
前記内側構造の頂部近傍部分と前記外側構造の頂部近傍部分とを剛な連結梁で連結することで、前記高層建築物の固有振動周期を長周期化すると共に、前記内側構造により前記外側構造が水平方向中立位置に保持されるようにし、前記内側構造により前記高層建築物の慣性力に対する反力が得られるようにし、かつ、前記内側構造および前記外側構造により前記高層建築物の慣性力に起因する転倒モーメントに対する反力が得られるようにした、
ことを特徴とする高層建築物の免震構造。 - 前記連結梁は水平方向に延在していることを特徴とする請求項1または2記載の高層建築物の免震構造。
- 前記連結梁は、前記内側構造の周方向に間隔をおいた複数箇所において該内側構造と前記外側構造との間にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の高層建築物の制振構造。
- 前記連結梁は、前記内側構造の上下方向に間隔をおいた複数箇所において該内側構造と前記外側構造との間にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の高層建築物の制振構造。
- 前記内側構造の頂部と前記外側構造の頂部とは略々同じ高さであり、前記連結梁は略々水平方向に延在してそれら頂部を相互に連結していることを特徴とする請求項1または2記載の高層建築物の制振構造。
- 前記内側構造と前記外側構造の各階には、双方の内部を連通する連絡通路のための通路開口が設けられ、前記連絡通路は、前記内側構造と前記外側構造の相対変形を吸収するエキスパンションジョイントを構成しており、前記各階の通路開口は、平面視した場合、隣り合う上下階で異なった箇所に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の高層建築物の制振構造。
- 前記免震支持装置は、鉛直支持能力を有し、かつ、前記内側構造の剛性を増大させないように水平変形が可能で、かつ、水平抵抗が非常に小さく構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の高層建築物の制振構造。
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