JP2007016432A - 解体養生ユニットおよびそれを用いた超高層建物の解体工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】解体作業時の養生の確実化、工期の短縮化、高効率化を図る。
【解決手段】解体養生ユニット20は、養生フレーム20Aと、超高層建物の外周部に着脱自在に固定されることで養生フレームを支持する固定ブラケット21、22と、養生フレームを昇降させる油圧シリンダ30とを備える。この解体養生ユニット20を解体養生防護工として利用しながら、養生フレームで囲った階層の解体を行い、順次養生フレームを上層階から下層階へ下降させながら上層階から下層階へ解体を進める。建物の解体は、部材解体であり、サイクル工程化が図れるように、部材端を発破処理する。このことは、解体破片の飛散やコンクリート塊の落下など、超高層建物の解体工法での課題の解決となる。
【選択図】図3

Description

本発明は、例えば密集市街地に建つ超高層建物の解体に有用な解体養生ユニット、および、それを用いた超高層建物の解体工法に関するものである。
建物を解体する場合、ニブラやクラッシャなどの圧砕機を用いることが多い。これらを用いると、比較的低騒音で効率良く解体を進めることができる。特に低層建物を解体の対象とする場合は、圧砕機単独で建物をガラ状に直に解体することも可能である。解体手順は、騒音対策上、建物内側から解体し、直交する梁や床を解体した後に、周辺の柱・梁・壁を内側に転倒させることが多い。
このような従来の解体技術では、騒音や解体破片の飛散などによる第三者災害を防ぐためと、解体現場の仕切りとするために、解体建物の周辺に枠組み足場を組み立て、養生材(防音パネル)で仮囲いを行う必要がある。
また、圧砕機に代わり、カッターやワイヤソーの切断力を用いて、建物を部材単位に切り出していく解体方法もある。これらの切断力を利用する解体方法では、超高層建物のように、部材が大断面になると騒音が持続することや、切断では切り残しや死角が生じやすく、作業の段取りを含めて時間を要してしまうことが多い。電気加熱やレーザー、マイクロ波による溶断解体方法も開発されているが、建物が高層化し物量が多くなると、経済的な解体方法ではなく、解体材料を搬出する方法と組み合わせた解体工法として確立しなけれぱ実用的ではない。
海外ではダイナマイトを用いて建物を一瞬に解体する工法もあり、わが国でも関東大震災の被災建物の処理に使われたことを初めとして数例の実績はあるが、密集市街地での解体としては実用的でない。
実施工もないことから、超高層建物の解体について言及されているものは少ない。その中で、特許文献1には、図17に示すように、超高層建物201の屋上にマストで支持したハットトラス202を構築し、その下部にホイストクレーン204を設置して、解体材を垂直搬機203で地上に搬送する建物の解体方法が提示されている。
この方法では、最上階の解体が済むと、ハットトラス202を支持するマストを下層階に下降させて、下層の部分で支持しながら、漸次上層の階から下層の階へと解体を進める。こうすることにより、解体時の落下などがなく、安全に超高層建物を解体できるとしている。
この解体方法は、解体時の落下養生対策が主眼であり、大掛かりな機械装置を建物の上部に構築して、解体を進めるようにしたものであり、機械装置を組み立てる費用がかかることから、経済性に問題があり、解体工法としては実用的でない。また、特許文献1には、柱、梁、スラブ等の解体の具体的方法については言及されていない。
また、特許文献2には、解体しようとする建物が高層建物である場合には、騒音や粉塵飛散を防ぐ養生体(遮蔽体)の構築が高所となるため大型重機が必要となることから、そのような重機を必要としない遮蔽体と、それを用いた建物の解体工法について言及されている。
この工法では、図18に示すように、建物301の外周を囲むように配設した遮蔽体(遮蔽の目的と解体用機械の収納や解体材の搬出機能を持つ)302を、地上から立てたガイド支柱303で支持する。特許文献2では、地上で遮蔽体302を組み立てることができるため、作業が重機を用いなくても容易になるなどのメリットについて言及している。しかし、その機能から推察して大重量物となる可能性の高い遮蔽体302を支えるガイド支柱303は、建物301が高層になるほど圧縮対策で大型化を余儀なくされるため、高さのある超高層建物の解体に適するとは言えない。また、遮蔽体に収納した機械で解体することからも、機械の錯綜を考えた場合、超高層建物のように限られたフロア面積に適した解体方法とは言えない。
また、特許文献3には、大型ブレーカーや圧砕機などの解体作業装置を使って解体する時に、周辺環境への騒音や振動、粉塵等の悪影響を抑制する解体方法が開示されている。この方法は、コンクリート構造物の内部領域を複数の区画に分けて、各区画内部の柱や壁等の構造部材を先行して爆破した後、区画の外周を爆破解体することを特徴としており、大型ブレーカーを使わないでも、コンクリー圧砕機だけで後処理ができるように爆破を使い、爆音や爆風、粉塵などが漏れ出ないように、区分けした内部から外周に向けて順次爆破することとしている。
しかし、建物をガラ状に解体する時の破砕作業の容易さと、周辺環境への影響を減じるために区画解体を行うことを内容としているが、最外周の爆破による落下危険など超高層建物の解体工法として適用する上では解決しなければならない課題は多いと言わざるを得ない。
特開平6−272403号公報 特開2002−349079号公報 特開2003−307038号公報
ところで、超高層建物は100メートル近い高さを有するものであり、また密集市街地に立地していることがほとんどであり、しかも周辺には不特定多数の人々が多く行き交っている。このため、超高層建物を解体する時には、以下のような解決しなければならない課題が存在する。
超高層建物が100m近い高さであることに対して、
1)圧砕機などの解体重機を持ち込むことが不可能である。
2)解体養生に地上から枠組み足場を組み立てることは手間を要し工期がかかる。
3)強風時を想定した耐風対策も必要である。
また、超高層建物が密集市街地に立地していることに対して、
4)隣接する超高層建物の日常活動を制約するような広い敷地を用いた解体が難しい。
5)解体期間中を通して、建物の耐震性・耐風性を保持する必要がある。
また、共通事項やその他の事項として、
6)コンクリート塊の落下など、周辺環境への不測の事態による誤りが絶対に許されない。
7)建物高さの制約から、解体重機を持ち込むことができないため、手はつり解体が基本的工法となる。
8)鉄筋コンクリート構造であると、コンクリートの圧縮強度が50N/平方ミリメートル程度に達していること、配筋も高密度となっていることが多く、手はつりによる解体だけでは作業が滞る。
9)高所での騒音や粉塵の発生を防ぐ解体能率の良い解体工法が必要である。
本発明は、上記事情を考慮し、解体作業時の養生を確実に行うことができ、工期をかけずに効率良く建物を解体することができる、密集市街地に建つ超高層建物の解体に有効な解体養生ユニット、および、それを用いた超高層建物の解体工法を提供することを目的とする。
請求項1の発明の解体養生ユニットは、解体する超高層建物の外周に配置される立体状のフレームと、そのフレームに装備されて解体する超高層建物の外周部に着脱自在に固定されることで前記フレームを支持する固定ブラケットと、前記フレームに装備されて解体する超高層建物の外周部に支持をとりながら前記フレームを昇降させる駆動装置と、を備えることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の解体養生ユニットであって、前記固定ブラケットを、上の階とその直下の階にそれぞれ固定可能なように前記フレームの高さ方向の上側と下側にそれぞれ配置し、前記駆動装置を、前記固定ブラケットを各階の外周部から外した状態で、少なくとも1階層分だけフレームを昇降し得るストロークを有するものとして構成したことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載の解体養生ユニットであって、前記駆動装置を、伸縮ロッドを上向きにして装備された油圧シリンダで構成し、前記伸縮ロッドの先端に各階の外周部に着脱自在に固定し得る固定手段を設けたことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の解体養生ユニットの固定ブラケットを、前記解体する超高層建物の外周部に固定することで前記フレームを支持し、その状態で該フレームを解体養生防護工として利用しながら、該フレームで囲った階層の解体を行い、順次該フレームを上層階から下層階へ下降させながら上層階から下層階へ解体を進めることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4に記載の超高層建物の解体工法であって、前記超高層建物の各部材を、各階層ごとに水平2次部材、水平主材、鉛直2次部材、鉛直主材の順に切断し、各部材単位で解体して搬出することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5に記載の超高層建物の解体工法であって、前記部材の切断方法として、部材の破断に効果を限定した特殊火薬による発破と手はつりを併用することを特徴とする。
請求項1の発明の解体養生ユニットは、解体する超高層建物の外周に配置される立体状のフレーム自体に、解体する超高層建物の外周部に着脱自在に固定されることでフレームを支持する固定ブラケットと、解体する超高層建物の外周部に支持をとりながらフレームを昇降させる駆動装置と、を装備しているので、地上で安全に組み立て、自力で建物の最上階まで到達させ、そこから解体養生防護工として利用しながら、解体の進行に合わせて、下層階へ順次移動させることができる。従って、解体養生のために地上から枠組み足場を組み立てる必要がなく、解体工期を短縮することができ、解体養生作業を合理化することができ、密集市街地に建つ超高層建物の解体にも有効に利用できる。
請求項2の発明によれば、固定ブラケットを、上の階とその直下の階にそれぞれ固定可能なようにフレームの高さ方向の上側と下側にそれぞれ配置し、駆動装置を、少なくとも1階層分だけフレームを昇降し得るストロークを有するものとして構成したので、最小の設備で効率良く超高層建物の解体に利用することができる。しかも、上下の固定ブラケットにより複数階に支持をとることができるので、耐風性・耐震性を発揮する解体養生防護工を実現することができる。
請求項3の発明によれば、駆動装置を、伸縮ロッドを上向きにして装備された油圧シリンダで構成し、伸縮ロッドの先端に各階の外周部に着脱自在に固定し得る固定手段を設けたので、油圧シリンダのロッドに、伸縮に際して引張力だけしか作用しないようにすることができ、それにより、圧縮力が作用する場合に比較して、油圧系の簡略化を図ることができる。また、伸縮ロッドの先端に、建物の外周部に対して着脱自在な固定手段を設けたので、ロッドのストローク動作により、フレームを簡単に昇降させることができる。
請求項4の発明によれば、前記解体養生ユニットの固定ブラケットを、解体する超高層建物の外周部に固定することでフレームを支持し、その状態でフレームを解体養生防護工として利用しながら、フレームで囲った階層の解体を行って、順次フレームを上層階から下層階へ下降させながら上層階から下層階へ解体を進めるので、建物の外周部に張り出したバルコニー等に、解体養生防護工として利用するフレームの支持を簡単にとることができる。従って、工期をかけずに効率良く解体を進めることが可能になり、密集市街地に建つ超高層建物の解体に有効に利用することができる。また、解体養生ユニットを解体養生防護工としながら解体を進めるので、強風時を想定した耐風対策も特に必要ではなくなり、工費節減に寄与することができる。
請求項5の発明によれば、建物上階から順次部材を取り外していく解体方法であるため、常に耐震性・耐風性を備えた状態で建物の解体を進めることができ、安全性を高めることができる。また、順次部材単位で解体していくため、隣接する超高層建物の日常活動を制約するような広い敷地を、解体のために必要としない。また、順次部材単位に切断して搬出するため、コンクリート塊の落下など、周辺環境への不測の事態による誤りを生じる心配がなく、安全に解体を行うことができる。また、部材解体の切断位置を限定できるため、特に大型重機を使用せずに解体を進めることができる。
請求項6の発明によれば、部材の切断方法として、部材の破断に効果を限定した特殊火薬による発破と手はつりを併用するので、圧砕機などの解体重機を用いることなく、騒音や粉塵の発生を最小限に抑えながら、超高層建物を合理的に解体することができる。
具体的には、特殊火薬を用いた限定的な発破により多くのひび割れを発生させ、次いでピックハンマの手はつりを基本工法としながら、部材単位で切断して搬出することができる。このことにより、鉄筋コンクリート構造においてコンクリートの圧縮強度が50N/平方ミリメートル程度に達していても、また配筋が高密度となっていても、部材解体を効率的に行うことができる。例えば、床板のように薄い部材の場合は、金属ライナーのノイマン効果を使うことにより、解体工程を単位時間で実施できるサイクルエ程化することができ、解体サイクルエ程とチーム構成とにより、100分で1部材を解体・搬出するというような解体工事のシステム化が実現できる。
以下、本発明の解体養生ユニットおよびそれを用いた超高層建物の解体工法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は解体の概要を示し、(a)は解体初期、(b)は解体途中の状況を示している。図中1は解体する対象の超高層建物であり、この解体工法においては、現場に解体部材19の搬出用のタワークレーン50と荷用リフト51を設置する。また、地上には圧砕機52を用意する。
躯体部分の解体に先立ち、予め窓ガラスや設備配管などの仕上げ・設備類を解体しておき、荷用リフト51で搬出した後で、床板・梁・柱などの躯体の解体にとりかかる。タワークレーン51は、揚重能カが2000〜2500kNmぐらいの能力を持つ機種が実用的である。
超高層建物1は立地が密集市街地であるため、周辺に解体用のスペースを広く確保することは難しい。そこで、解体養生ユニット20を使用する。
解体養生ユニット20を作るには、まず、養生フレーム20Aを、建物全体を取り囲むような平面矩形の立体形状に地上で組み立てる。養生フレーム20Aは、解体する階層の周辺のみを覆う高さに設定し、限られた面積とすることで、耐風性を確保しやすくしておく。養生フレーム20Aの組み立て材料としては、仮設用単管など、軽量で強度のある部材を使用することができる。このような材料を立体トラス状に組み立てることにより、養生フレーム20Aを作る。
次に、組み立てた養生フレーム20Aに、図2に示すように、固定ブラケット21、22や駆動装置である油圧シリンダ30を取り付けることにより、解体養生ユニット20を完成させる。養生フレーム20Aの高さは、2階層分を超える大きさに設定してあり、養生フレーム20Aの外周面には防音パネル23(図4参照)が取り付けてある。
固定ブラケット21、22は、解体する超高層建物の外周部に着脱自在に固定されることで養生フレーム20Aを支持するためのものであり、上の階とその直下の階にそれぞれ固定可能なように、養生フレーム20Aの高さ方向の中間部と下部にそれぞれ配置してある。
駆動装置としての油圧シリンダ30は、解体する超高層建物1の外周部に支持をとりながら養生フレーム20Aを昇降させるためのものであり、固定ブラケット21、22を各階の外周部から外した状態で、少なくとも1階層分だけ養生フレーム20Aを昇降し得るように動作ストロークが設定されている。ここでは、油圧シリンダ30のストロークは最大階高に等しく設定されている。
駆動装置としては、チェーンブロックなど簡便なものを使用することも可能であるが、ここでは効率の面から、伸縮ロッド31を上向きにした油圧シリンダ30を使用している。伸縮ロッド31を上向きにして油圧シリンダ30を使うと、ロッド31の伸縮に際して油圧シリンダ30には引張カだけが作用することになる。そのため、油圧シリンダ30を圧縮に使う場合に比較して、単純で安価な油圧系を使うことができるというメリットが得られる。
この油圧シリンダ30のロッド31の先端(上端)には、各階の外周部に着脱自在に固定し得る固定部材(固定手段)32が取り付けてある。
このように組み立てた解体養生ユニット20を、図2に示すように、解体しようとしている超高層建物1に設置し、フロア単位で盛り替えながら、最上層まで上昇させる。なお、図2において、1は建物、2は柱、3は梁、4は床板、4aはバルコニーを示す。
上昇時には、図2(a)に示すように、固定ブラケット21、22によって養生フレーム20Aが固定されている階より上の階に、油圧シリンダ30のロッド31を伸ばして(矢印A)、その先端の固定部材32を、建物1の外周部(バルコニー4a等)に固定する。
次いで、(b)に示すように、養生フレーム20Aの固定ブラケット21、22による固定を解除した状態で、油圧シリンダ30のロッド31を縮めていくと、養生フレーム20Aが上昇する(矢印B)。
1階層分だけ上昇したら、(c)に示すように、固定ブラケット21、22を、上昇した階の建物1の外周部(バルコニー4a等)に固定することで、養生フレーム20Aを支持する。固定ブラケット21、22により養生フレーム20Aを確実に支持したら、油圧シリンダ30のロッド31の先端の固定部材32の建物1に対する固定を解除する。こうすることで、1階層分の上昇が終わる。
ところで、上記のように油圧シリンダ30のロッド31を伸ばして養生フレーム20Aを上昇させるとき、ロッド31の先端のみが建物1に止められているだけであると、養生フレーム20A全体がロッド31の先端を中心として回転してしまうおそれがあるので、図2に示すように、油圧シリンダ30のロッド31の先端と繋がったガイドレール33を設けておき、図示するようにガイドレール33に案内されながら養生フレーム20Aが一定の姿勢で上昇するようにしてある。
具体的に説明すると、図4に示すように、ガイドレール33は、ロッド31の先端に中間部が連結されて両端が左右に張り出した上端水平材33aと、上端水平材33aの左右張り出し端に上端が固定されることで垂直に垂れ下がった2本の垂直材33bと、各垂直材33bの下端に水平に取り付けられて建物1の外面に案内される下端水平材33cと、からなる。この2本の下端水平材33cが建物1に当たってガイドされるため、油圧シリンダ30のロッド31が上昇または下降するときに、養生フレーム20Aが建物1に衝突しないように支持される。
油圧シリンダ30のロッド31の上端の固定部材32は、回転機構34を介してロッド31に取り付けられており、固定部材32の先端には、予め建物1のバルコニーや梁上面等に取り付けられた留め具35のダボに係合する凹部32aが設けられている。従って、固定部材32を建物1側に回転させて、凹部32aを留め具35に係合させることにより、ロッド31の先端を建物1に固定することができるし、固定部材32を建物1から離れる側に回転させて係合を外すことにより、固定を解除することができる。
また、固定ブラケット21、22の構造は、例えば、図5に示すようになっている。即ち、図5の例では、2本のアーム24を養生フレーム20A側から建物1側に突き出させてあり、各アーム24を矢印Eのように水平方向に回転できるように支持している。そして、各アーム24の先端の孔24aを、予め建物1側に設けてあるアンカー25のボルト26に上から通して、ナットで締結することにより、固定ブラケット21、22を建物1側に着脱自在に固定できる。なお、アンカー25の設置場所は、バルコニー4aの先端や梁3の上面等の任意の場所に設定することができ、解体する建物1の状況に応じて選択すればよい。
上昇時の操作は上述したが、解体養生ユニット20を下降させる場合には、図3(a)に示すように、油圧シリンダ30のロッド31の先端の固定部材32による固定を確認し、(b)に示すように、固定ブラケット21、22による固定を解除して、油圧シリンダ30のロッド31を伸ばす。そうすると、養生フレーム20Aが建物1に沿って下降する(矢印C)。
ロッド31が伸びきったところで、養生フレーム20Aを固定ブラケット21、22により建物1に固定し、次いでその状態で、固定部材32による固定を解いて、(c)に示すように、油圧シリンダ30のロッド31を縮める(矢印D)。そうすると、ガイドレール33が下階に伸長していく。このような下降時も、油圧シリンダ30には引張力のみが作用する。
解体養生ユニット20の昇降に際し、取り付いている全ての油圧シリンダ30を同調させて一度に上昇・下降を行ってもよいし、安全を考えて何個かのブロックにグループ分けしておき、ブロックごとに油圧シリンダ30で上昇・下降させてもよい。なお、下降する時には、養生フレーム20Aが固定された時点で、油圧シリンダ30のロッド31を少し上に伸ばすと、固定部材32の留め具35からの解除が容易にできる。
次に解体工法について説明する。
まず、前述のように組み立てた解体養生ユニット20を、クレーン等を用いずに自力で、建物1の最上階まで到達させ、解体養生ユニット20の固定ブラケット21、22を、解体する超高層建物1の外周部に固定することで、養生フレーム20Aを支持する。
その状態で養生フレーム20Aを解体養生防護工として利用しながら、養生フレーム20Aで囲った階層の解体を行い、解体の進行に合わせて、解体養生ユニット20を下層階へ順次移動させる。そして、順次解体養生ユニット20を上層階から下層階へ下降させながら、上層階から下層階へ向けて建物1の解体を進める。
図6は解体階Kと解体養生ユニット20の関係を示している。養生フレーム20Aは、解体階Kの周辺のみを覆う大きさのものであり、限られた面積のものであることから、耐風性の点で有利である。
各階の解体は、基本的に建物1の各部材を、各階層ごとに水平2次部材(床板)、水平主材(梁)、鉛直2次部材(壁)、鉛直主材(柱)の順に切断し、各部材単位で搬出することで行う。部材の切断方法としては、部材の破断に効果を限定した特殊火薬による発破と手はつりを併用する。
発破に際しては、床板、梁、柱など各々の解体部材重量が40〜50kNになるような位置に装薬のためのさく孔を行う。さく孔に装薬して飛石養生を行い、床板周辺、梁の柱際、柱の床上位置など、予め限定した切断位置を発破する。次いで、ひび割れた切断位置のコンクリートをピックハンマで後処理し、部材主筋を出す。主筋は高圧ガスの噴射火炎で切断し、切断した部材を揚重して地上に搬出する。
地上では限られた広場でコンクリート部材をガラ状に二次破砕し、再生骨材として現場外に搬出する。建物1内の解体作業は、さく孔と装薬および発破、主筋の切断のみであり、大型ブレーカーを使う時のような連続的騒音の発生がなく、また、切断位置の後処理により落下物もなくなる。
図7は床板4の切断方法についての説明図である。切断方向に薄い部材の場合には、ノイマン効果を利用した成型装薬を切断位置に配置して発破すると、装薬内の金属ライナーが崩壊し、ジェット流となって床板コンクリートを破壊する。図6(a)、(b)において、61は成型装薬、61aは爆薬、61bは金属ライナーである。
梁際から30cm程度の位置に成型装薬61の配置を行えば、床板4はかなり自由に切断でき、図8に示すように露出した鉄筋4bは、床板4下のサポート63とジャッキ64で支えながら切断する。クレーン50(図1参照)で揚重する時には、周辺との競り合いがないように、サポート63に取り付けておいたジャッキ64で数cm持ち上げて搬出することもある。
図9はバルコニー4aの切断方法についての説明図である。
バルコニー4aは、床板の3辺を切断して搬出する。
図10および図11は、床板4が搬出された後の梁3の解体方法の説明図である。
梁3の解体に際しては、予め設けてある吊り出し用の孔にワイヤを通し、サポート63で支えた状態で、両端柱際の切断位置に装薬し、ブラスティングマット62(図6参照)で飛石養生を行い発破する。次にひび割れたコンクリートを後処理し、ワイヤを吊った状態で主筋3bを高圧ガスで切断し、切り離した梁3を搬出する。
床板4、梁3が解体された後には、図12に示すように、解体階の柱2が掘立状に立った状態で残っている。そこで、柱2を床から20cm程度上の位置でを切断し、引き倒すことなく吊り上げて搬出する。
柱2の切断には、まず、剥離発破方式で被り部分のコンクリートを取り除いて主筋を露出させた後、主筋を切断し、次に楔で主筋内部のコンクリートを切断する方法を採ったり、装薬を柱内部に行い、切断位置のコンクリート全面にひび割れを発生させる方法を採ったりすることができる。
図13はその具体例を示している。
柱2の切断の際には、梁3の端部が残るように梁3側を発破切断し、残った梁3の端部にサポート70を架けて、ジャッキ73とローラ74を下端部に配したサポート70により、柱2の下端が発破切断されても、柱2の上側部分が倒れないように支持する。そして、柱2の脚部に内部装薬し、飛石養生75を施して、コンクリートを発破により破砕する。次に、図14に示すように、作業員Mがコンクリートを剥離した部分の柱2の主筋を切断した後に、切断箇所より上側の柱2を搬出する。
ここで述べた解体工法は、特殊火薬を用いて切断位置に多くのひび割れを発生させ、その後、ピックハンマで後処理をして、露出した主筋を高圧ガスで切断して搬出するという、手はつりを基本とした部材切断工法である。解体の作業工程は、さく孔、装薬・養生、発破、後処理、主筋切断・搬出の順である。
これら工程を単位時間で行えれば、解体のサイクルエ程化が可能となる。
梁3や柱2等の線部材の解体に対して、さく孔数と装薬数が多い床板4の解体が、サイクル工程化する上で問題となるが、図7に示したような成型爆薬61での解体が実現できると、工程の単位時間を20分単位とするようなサイクル工程化が可能となる。
図15は解体サイクル工程の例を示す。この場合には、1チームを3人で構成して解体を行うと、100分で1部材の解体・搬出が可能とするには、全体は5チーム(15人)で解体サイクルが成り立つ。
ここでは、例えば図16(a)、(b)に示すように、クレーンで揚重しながら切断作業を行って部材を搬出する場合のクレーンの標準サイクルについて考えてみる。各動作に要する時間はおおよそ、
旋回=0.5(分)
玉掛=1
解体作業(主筋切断)=12
旋回=1
巻下げ=0.5
旋回位置決め=2
外し=1
旋回巻上げ=1
休止=1
となり、1サイクルに要する合計時間は20分となる。
従って、搬出のためのタワークレーン50の標準サイクルタイムを20分とすると、主筋切断(解体作業)に12分を費やすことができる。実働7時間として、21部材/日の解体が可能であり、解体搬出部材数が220ピース/フロアの超高層建物では、10〜11日/フロア/1タワークレーンの工程で解体できる、と試算することができる。
以上説明したように、本発明の実施形態の解体養生ユニット20は、解体する超高層建物1の外周に配置される立体状の養生フレーム20A自体に、解体する超高層建物1の外周部に着脱自在に固定されることで養生フレーム20Aを支持する固定ブラケット21、22と、解体する超高層建物1の外周部に支持をとりながら養生フレーム20Aを昇降させる駆動装置としての油圧シリンダ30と、を装備しているので、地上で安全に組み立て、自力で建物の最上階まで到達させ、そこから解体養生防護工として利用しながら、解体の進行に合わせて、下層階へ順次移動させることができる。
従って、解体養生のために地上から枠組み足場を組み立てる必要がなく、解体工期を短縮することができ、解体養生作業を合理化することができ、密集市街地に建つ超高層建物の解体にも有効に利用できる。
また、実施形態の解体養生ユニット20においては、固定ブラケット21、22を、上の階とその直下の階にそれぞれ固定可能なように養生フレーム20Aの高さ方向の上側(中間部)と下側(下部)にそれぞれ配置し、また、駆動装置を、少なくとも1階層分だけ養生フレーム20Aを昇降し得るストロークを有する油圧シリンダ30で構成しているので、最小の設備で効率良く超高層建物1の解体に利用することができる。しかも、上下の固定ブラケット21、22により複数階に支持をとることができるので、耐風性・耐震性を発揮する解体養生防護工を実現することができる。
また、前記駆動装置を、伸縮ロッド31を上向きにして装備された油圧シリンダ30で構成し、伸縮ロッド31の先端に各階の外周部に着脱自在に固定し得る固定部材32を設けているので、油圧シリンダ30のロッド31に、伸縮に際して引張力だけしか作用しないようにすることができ、それにより、圧縮力が作用する場合に比較して、油圧系の簡略化を図ることができる。また、伸縮ロッド31の先端に、建物1の外周部に対して着脱自在な固定部材32を設けているので、ロッド31のストローク動作により、養生フレーム20Aを簡単に昇降させることができる。
また、実施形態の解体工法によれば、解体養生ユニット20の固定ブラケット21、22を、解体する超高層建物1の外周部に固定することで養生フレーム20Aを支持し、その状態で養生フレーム20Aを解体養生防護工とし利用しながら、養生フレーム20Aで囲った階層の解体を行って、順次養生フレーム20Aを上層階から下層階へ下降させながら上層階から下層階へ解体を進めるので、建物1の外周部に張り出したバルコニー4a等に、解体養生防護工として利用する養生フレーム10Aの支持を簡単にとることができる。
従って、工期をかけずに効率良く解体を進めることが可能になり、密集市街地に建つ超高層建物1の解体に有効に利用することができる。また、解体養生ユニット20を解体養生防護工としながら解体を進めるので、強風時を想定した耐風対策も特に必要ではなくなり、工費節減に寄与することができる。
また、実施形態の解体工法は、建物上階から順次部材を取り外していく解体方法であるため、常に耐震性・耐風性を備えた状態で建物1の解体を進めることができ、安全性を高めることができる。また、順次部材(床板4、梁3、柱2等)単位で解体していくため、隣接する超高層建物の日常活動を制約するような広い敷地を、解体のために必要としない。また、順次部材単位に切断して搬出するため、コンクリート塊の落下など、周辺環境への不測の事態による誤りを生じる心配がなく、安全に解体を行うことができる。また、部材解体の切断位置を限定できるため、特に大型重機を使用せずに解体を進めることができる。
また、実施形態の解体工法では、部材の切断方法として、部材の破断に効果を限定した特殊火薬による発破と手はつりを併用するので、圧砕機などの解体重機を用いることなく、騒音や粉塵の発生を最小限に抑えながら、超高層建物1を合理的に解体することができる。
因みに、30層、8244部材の地上躯体を解体する場合の工期と工費について検討した結果について記す。部材端をハンドブレーカで切断した場合と本発明の実施形態の工法を比較した場合、以下のようになった。ただし、タワークレーン2台を設置するものとする。
<工期>ハンドブレーカ:11ヶ月
本発明 : 8ヶ月
<工費>ハンドブレーカ:1
本発明 :0.8
本発明の実施形態の解体工法の概要説明図であり、(a)は解体初期、(b)は解体途中の状況を示す図である。 本発明の実施形態の解体養生ユニットの構成と、その上昇時の過程を順を追って示す側断面図である。 本発明の実施形態の解体養生ユニットの構成と、その下降時の過程を順を追って示す側断面図である。 前記解体養生ユニットの駆動装置の概略説明図で、(a)は上から見た平面図、(b)は高さ方向の中間部を省略した側面図である。 前記解体養生ユニットの固定ブラケットの概略説明図で、(a)は上から見た平面図、(b)は側面図である。 前記解体養生ユニットと解体階の関係を示す側断面図である。 本発明の実施形態の解体工法において、床板の解体の際に仕掛ける装薬の説明図で、(a)は全体斜視図、(b)は(a)のVIIb−VIIb矢視断面図である。 前記床板の吊り上げ時の状態を示す斜視図である。 バルコニーの解体方法の説明図である。 梁の解体方法の説明図である。 梁の吊り上げ時の状態を示す斜視図である。 柱の解体方向の説明図である。 柱の発破時の準備状況の説明図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。 柱の切断状況を示す側面図である。 解体サイクル工程の説明図である。 タワークレーンを用いた解体作業の説明図である。 従来例の説明図である。 別の従来例の説明図である。
符号の説明
1 超高層建物
2 柱
3 梁
4 床板
4a バルコニー(建物の外周部)
20 解体養生ユニット
20A 養生フレーム
21,22 固定ブラケット
30 油圧シリンダ(駆動装置)
31 ロッド
32 固定部材(固定手段)
61 成型装薬(特殊火薬)

Claims (6)

  1. 解体する超高層建物の外周に配置される立体状のフレームと、そのフレームに装備されて解体する超高層建物の外周部に着脱自在に固定されることで前記フレームを支持する固定ブラケットと、前記フレームに装備されて解体する超高層建物の外周部に支持をとりながら前記フレームを昇降させる駆動装置と、を備えることを特徴とする解体養生ユニット。
  2. 請求項1に記載の解体養生ユニットであって、
    前記固定ブラケットを、上の階とその直下の階にそれぞれ固定可能なように前記フレームの高さ方向の上側と下側にそれぞれ配置し、前記駆動装置を、前記固定ブラケットを各階の外周部から外した状態で、少なくとも1階層分だけフレームを昇降し得るストロークを有するものとして構成したことを特徴とする解体養生ユニット。
  3. 請求項2に記載の解体養生ユニットであって、
    前記駆動装置を、伸縮ロッドを上向きにして装備された油圧シリンダで構成し、前記伸縮ロッドの先端に各階の外周部に着脱自在に固定し得る固定手段を設けたことを特徴とする解体養生ユニット。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の解体養生ユニットの固定ブラケットを、前記解体する超高層建物の外周部に固定することで前記フレームを支持し、その状態で該フレームを解体養生防護工として利用しながら、該フレームで囲った階層の解体を行い、順次該フレームを上層階から下層階へ下降させながら上層階から下層階へ解体を進めることを特徴とする超高層建物の解体工法。
  5. 請求項4に記載の超高層建物の解体工法であって、
    前記超高層建物の各部材を、各階層ごとに水平2次部材、水平主材、鉛直2次部材、鉛直主材の順に切断し、各部材単位で解体して搬出することを特徴とする超高層建物の解体工法。
  6. 請求項5に記載の超高層建物の解体工法であって、
    前記部材の切断方法として、部材の破断に効果を限定した特殊火薬による発破と手はつりを併用することを特徴とする超高層建物の解体工法。
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