JP2006519163A5 - - Google Patents

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癌転移および癌転移に伴なう骨量減少を予防および処置するための方法
本願は、2002年11月15日出願米国仮特許出願第60/426,781号の利益を主張するものである。
(技術分野)
本発明は、M−CSFアンタゴニストを被験体に投与することによって、癌転移および癌転移に伴う骨量減少を予防ならびに処置するための方法に関する。
(発明の背景)
癌転移は、癌患者における術後もしくは治療後の再発の第一の原因である。治療法を開発するために鋭意努力されてきたにもかかわらず、癌転移は、なお治療に対して実質的に難治性であるのが現状である。骨は、ヒトの種々の型の癌(例えば、乳癌、肺癌、前立腺癌および甲状腺癌)の転移の最も一般的な部位の一つである。骨溶解性骨転移が起こると、難治性疼痛、高度の易骨折性、神経圧迫および高カルシウム血症による重篤な病状が生じる。こうした臨床的問題の重要性にもかかわらず、癌転移に伴う骨量減少に対して施行できる治療法は少ない。
破骨細胞は骨再吸着を媒介している。破骨細胞は、造血細胞から分化した多核細胞である。破骨細胞は、骨髄の造血幹細胞に由来する単核細胞前駆体の融合によって形成されるのであって、不完全な細胞分裂によるものではないことは一般に認められている(チェンバーズ(Chambers)、ボーン・アンド・ミネラル・リサーチ(Bone and Mineral Research)、6:p1−25、1989年;ゲスリングほか(Goethling et al.)、クリニカル・オーソペディックス・アンド・リレイテッド・リサーチ(Clin Orthop Relat R.)、120:p201−228、1976年;カーンほか(Kahn et al.)、ネイチャー(Nature)、258:p325−327、1975年;スダほか(Suda et al.)、エンドクリノロジカル・レビュー(Endocr Rev)、13:p66−80、1992年;ウォーカー(Walker)、サイエンス(Science)、180:p875、1973年;ウォーカー(Walker)、サイエンス(Science)、190:p785−787、1975年;ウォーカー(Walker)、サイエンス(Science)、190:p784−785、1975年)。これらは単核細胞−マクロファージ系細胞と共通の幹細胞を共有している(アッシュほか(Ash et al.)、ネイチャー(Nature)、283:p669−670、1980年;カービほか(Kerby et al.)、ジャーナル・オブ・ボーン・アンド・ミネラル・リサーチ(J.Bone Miner Res)、7:p353−62、1992年)。破骨細胞前駆体が成熟多核破骨細胞に分化するには、ホルモン性および局所性刺激を含む種々の因子が必要とされ(アタナソーほか(Athanasou et al.)、ボーン・ミネラル(Bone Miner)、3:317−333、1988年;フェルドマンほか(Feldman et al.)、エンドクリノロジー(Endocrinology)、107:p1137−1143、1980年;ウォーカー(Walker)、サイエンス(Science)、190:p784−785、1975年;ゼングほか(Zheng et al.)、ヒストケミストリー・ジャーナル(Histochem J)、23:p180−188、1991年)、生きている骨および骨細胞は破骨細胞の発生に中心的な役割を果たしていることが示されている(ハーゲナーズほか(Hagenaars et al.)、ボーン・ミネラル(Bone Miner)、6:p179−189、1989年)。また、破骨細胞への分化には骨芽細胞もしくは骨髄間質細胞も必要である。破骨細胞の形成を支えるこれらの細胞により産生される因子の1つにマクロファージ−コロニー刺激因子M−CSFがある(ヴィクトル−イェルゼイザクほか(Wiktor−Jedrzejczak et al.)、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Proc Natl Acad Sci)USA、87:p4828−4832、1990年;ヨシダほか(Yoshida et al.)、ネイチャー(Nature)、345:p442−444、1990年)。破骨細胞および破骨細胞前駆体の表面にあるレセプターRANK(TRANCER)(レーシーほか(Lacey et al.)、セル(Cell)、93:p165−176、1998年;ツダほか(Tsuda et al.)、バイオケミストリー・バイオフィジックス・リサーチ・コミュニケーション(Biochem Biophys Res Co.)、234:p137−142、1997年;ウォンほか(Wong et al.)、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディシン(J Exp Med.)、186:p2075−2080、1997年; ;ウォンほか(Wong et al.)、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem)、272:p25190−25194、1997年;ヤスダほか(Yasuda et al.)、エンドクリノロジー(Endocrinology)、139:p1329−1337、1998年;ヤスダほか(Yasuda et al.)、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Proc.Natl.Acad Sci)US、95:p3597−3602、1998年)を介する破骨細胞の形成および再吸収を骨芽細胞/間質細胞が刺激するのを媒介する別のシグナルとして、NF−κBリガンドのレセプター活性化因子(RANKL、別名TRANCE、ODFおよびOPGL)がある(スダほか(Suda et al.)、エンドクリノロジカル・レビュー(Endocr Rev)、13:p66−80、1992年)。また、骨芽細胞は、オステオプロテゲリン(OPG、別名OCIF)と呼ばれる、破骨細胞形成を強力に阻害するタンパク質を分泌し、このタンパク質はRANKLのおとりレセプターとしての作用することにより、RANKおよびRANKLを介する、破骨細胞および骨芽細胞間の正のシグナルを阻害する。
破骨細胞は無機および有機骨基質の両者の溶解に関与している(ブレアほか(Blair et al.)、ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J Cell Biol)、102:p1164−1172、1986年)。破骨細胞は、特殊化した膜領域、ならびに酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)(アンダーソンほか(Anderson et al.)、1979年)、炭酸脱水酵素II(バーネネンほか(Vaeaenaenen et al.)、ヒストケミストリー(Histochemistry)、78:p481−485、1983年)、カルシトニンレセプター(ワルシャフスキーほか(Warshafsky et al.)、ボーン(Bone)、6:p179−185、1985年)およびビトロネクチンレセプター(デービスほか(Davies et al.)、ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J Cell Biol)、109:p1817−1826、1989年)など数種の膜および細胞質マーカを有する二極化した特有の形態を示す最終分化細胞である。通常、多核破骨細胞に含まれる核は10個未満であるが、直径が10μmと100μmとの間の核を100個まで含むことがある(ゲスリングほか(Goethling et al.)、クリニカル・オーソペディックス・アンド・リレイテッド・リサーチ(Clin Orthop Relat R.)、120:p201−228、1976年)。このことにより、この細胞の同定を光学顕微鏡で行うことが比較的容易になる。この細胞は、活動状態にある場合、高度に空胞化しており、また、多数のミトコンドリアを含んでいることから代謝率が高いことが分かる(マンディ(Mundy)、「代謝性骨疾患および鉱質代謝疾患に関する手引き(Primer on the metabolic bone diseases and disorders of mineral metabolism)」p18−22、1990年)。破骨細胞が骨溶解性骨転移において主要な役割を果たしていることから、当該分野では、破骨細胞の刺激を防止する新規な薬剤および方法が求められている。
すなわち、当該分野では、骨溶解性骨転移を含む癌転移を予防もしくは治療するための新規な薬剤および方法を特定することがなお求められている。
(発明の要約)
本発明の組成物および方法は、当該分野における前述および他の関連ニーズを満たすものである。本発明の一実施形態として、転移性癌に罹患している被験体に対して治療的に有効な量のM−CSFアンタゴニストを投与することにより転移性癌に伴う骨量減少を予防することを含む、骨転移を予防する方法を提供する。本発明の別の実施形態として、骨転移性癌に罹患している被験体に対して治療的に有効な量のM−CSFアンタゴニストを投与することにより、転移性癌に伴う骨量減少の重症度を緩和することを含む、この被験体を治療する方法を提供する。関連する実施形態として、上記被験体が哺乳動物である前述の方法、もしくはこの哺乳動物がヒトである前述の方法を提供する。
本発明の方法では、M−CSFとそのレセプター(M−CSFR)との相互作用を阻害することによって治療効果を達成することが企図されている。さらに、このM−CSF/M−CSFR相互作用を阻害することが、腫瘍細胞が誘発する破骨細胞の増殖および/または分化を阻害することが企図されている。本発明の一実施形態として、前述の方法のM−CSFアンタゴニストは、抗M−CSF抗体を含むポリペプチド;その抗M−CSFR抗体を含むポリペプチド;M−CSFムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;またはM−CSFRムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチドからなる群から選ばれる。
本発明の別の実施形態として、M−CSFアンタゴニストが抗M−CSFR抗体である前述の方法を提供する。関連の実施形態として、このM−CSFアンタゴニストは抗M−CSFR抗体を含むポリペプチドである。さらに別の関連実施形態として、このM−CSFアンタゴニストはM−CSFムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチドである。さらに別の関連実施形態としてこのM−CSFアンタゴニストはM−CSFRムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチドである。
本発明の別の実施形態として、上記M−CSFアンタゴニストは、ポリクロナール抗体;モノクロナール抗体;ヒト化抗体;ヒト抗体;キメラ抗体;Fab、F(ab’)もしくはF抗体フラグメント;および上記抗体のうちの任意の1つムテインからなる群から選ばれる抗体である。さらに別の実施形態として、この抗体はモノクロナール抗体5H4(ATCC登録番号HB10027)と同じエピトープに結合する。
いくつかの転移性癌が本明細書に開示した方法の対象となることが企図されている。一実施形態として、こうした転移性癌は、乳癌、肺癌、腎癌、多発性骨髄腫、甲状腺癌、前立腺癌、腺癌、血液細胞悪性腫瘍(白血病、リンパ腫が挙げられる);頭頚部癌;消化管癌(胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵癌、肝癌が挙げられる)女性生殖管の悪性腫瘍(卵巣癌、子宮内膜癌および子宮頚癌が挙げられる);膀胱癌;神経芽細胞腫などの脳腫瘍;肉腫、骨肉腫;皮膚癌(悪性黒色腫もしくはへん平上皮癌が挙げられる)である。
また、治療的有効用量のM−CSFアンタゴニストを投与することについても本発明によって企図されている。一実施形態として、このM−CSFアンタゴニストは、約0.01mg/kg約100mg/kgとの間の用量で投与される抗体である。
本発明の別の実施形態として、転移性癌に罹患している被験体を治療するための、M−CSFに結合するマウス以外の抗体であって、この転移性癌に伴う骨量減少の重症度を効果的に緩和する抗体を提供する。
本明細書中に記載されるように、本発明の抗体は骨溶解を阻害する。本発明の一実施形態として、5H4と同じM−CSFのエピトープに特異的に結合するマウス以外のモノクロナール抗体を提供する。別の実施形態として、M−CSFへの結合に関して5H4と競合するマウス以外のモノクロナール抗体を提供する。このマウス以外のモノクロナール抗体がM−CSFへの結合に関して5H4と競合する量は、好ましくは10%超、より好ましくは25%超、さらに好ましくは50%超、さらに好ましくは75%超、最も好ましくは90%超である。
前述の抗体のいずれもこれを必要とする被験体への投与に用いることができることが企図されている。これに応じて、本発明の一実施形態では、前述の抗体のうちの任意の1抗体および薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤もしくは希釈剤を含む薬学的組成物を提供する。
本発明の一実施形態として、転移性癌に罹患している被験体を治療するためのマウス以外の抗体であって、この転移性癌に伴う骨量減少の重症度を効果的に緩和する抗体を提供する。これに関連した実施形態として、上記抗体は、ポリクロナール抗体;モノクロナール抗体;ヒト化抗体;ヒト抗体;キメラ抗体;Fab、F(ab’)もしくはF抗体フラグメント;および上記抗体のうちの任意の1つムテインからなる群から選ばれる。別の実施形態として、この抗体はM−CSFに対して特異的な抗体である。本発明のさらに別の実施形態として、この抗体はM−CSFRに対して特異的な抗体である。他の実施形態として、この抗体は完全にヒト抗体、もしくはヒト化抗体である。本発明のさらに別の実施形態として、上記抗体の1種を分泌するハイブリドーマを提供する。
いくつかの転移性癌が本明細書に開示した抗体の対象となることが企図されている。一実施形態として、こうした転移性癌は、乳癌、肺癌、腎癌、多発性骨髄腫、甲状腺癌、前立腺癌、腺癌、血液細胞悪性腫瘍(白血病、リンパ腫が挙げられる);頭頚部癌;消化管癌(胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵癌、肝癌が挙げられる)女性生殖管の悪性腫瘍(卵巣癌、子宮内膜癌および子宮頚癌が挙げられる);膀胱癌;神経芽細胞腫などの脳腫瘍;肉腫、骨肉腫;皮膚癌(悪性黒色腫もしくはへん平上皮癌が挙げられる)である。これに関連した実施形態として、上記体および薬学的に適したキャリア、賦形剤もしくは希釈剤を含む薬学的組成物を提供する。
癌転移に伴う骨量減少を予防もしくは治療するのに有用となる可能性のあるM−CSFアンタゴニストは、種々のアッセイ法を用いてスクリーニングすることができる。本発明の一実施形態として、転移性腫瘍細胞培地、破骨細胞および候補アンタゴニストを接触させる工程、破骨細胞の形成、増殖および/または分化を検出する工程、ならびに破骨細胞の形成、増殖および/または分化の低減が検出される場合に上記候補アンタゴニストをM−CSFアンタゴニストであると同定する工程を含む、M−CSFアンタゴニストのスクリーニング方法を提供する。これに関連した実施形態として、上記転移性腫瘍細胞培地が腫瘍細胞を含むスクリーニング方法を企図する。
本発明の別の実施形態として、上記接触工程がインビボ(in vivo)で行われ、上記検出工程が骨転移の大きさおよび/または数を検出することを含み、ならびに上記候補アンタゴニストが、骨転移の大きさおよび/または数の減少が検出される場合に、M−CSFアンタゴニストであると特定される方法を提供する。関連する実施形態において、この方法は、さらに、上記候補アンタゴニストがM−CSFに結合するかどうかを決定する工程を含む。さらに別の実施形態として、上記方法は、さらに、上記候補アンタゴニストがM−CSFとそのレセプターM−CSFRとの相互作用を阻害するかどうかを決定する工程を含む。
本明細書に開示した各種スクリーニング方法を用いて、いくつかの異なるアンタゴニストを同定することができることが企図されている。一実施形態として、上記候補アンタゴニストが抗M−CSF抗体を含むポリペプチド;その抗M−CSFR抗体を含むポリペプチド;M−CSFムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;またはM−CSFRムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;ペプチド;または低分子からなる群から選ばれる方法を提供する。これに関連した実施形態として、この候補アンタゴニストがM−CSFムテインである方法を提供する。さらに別の関連実施形態として、この候補アンタゴニストが抗M−CSF抗体である方法を提供する。別の実施形態として、この候補アンタゴニストはM−CSFムテインである。別の関連実施形態として、この候補アンタゴニストは抗M−CSF抗体である。さらに別の実施形態として、この候補アンタゴニストは抗M−CSFR抗体である。
本発明の別の実施形態では、候補アンタゴニストのM−CSFへの結合を検出する工程、およびインビトロ(in vitro)もしくはインビボでの骨転移性癌に対するこの候補アンタゴニストの予防もしくは治療能をアッセイする工程を含む、骨転移性癌を予防もしくは治療することができるM−CSFアンタゴニストの同定方法を提供する。これに関連した実施形態として、候補アンタゴニストのM−CSFRへの結合を検出する工程、およびインビトロもしくはインビボでの骨転移性癌に対するこの候補アンタゴニストの予防もしくは治療能をアッセイする工程を含む、骨転移性癌を予防もしくは治療することができるM−CSFアンタゴニストの同定方法を提供する。さらに別の実施形態として、M−CSFとM−CSFRとの相互作用を阻害する候補アンタゴニストを同定する工程、およびインビトロもしくはインビボでの骨転移性癌に対するこの候補アンタゴニストの予防もしくは治療能をアッセイする工程を含む、骨転移性癌を予防もしくは治療することができるM−CSFアンタゴニストの同定方法を提供する。
さらに、2種以上のM−CSFアンタゴニストを混合して癌転移および/または癌転移に伴う骨量減少に対する有効性を向上させることは有利であり得る。従って、本発明の一実施形態では、治療的有効量のM−CSFアンタゴニストおよび治療剤を転移性癌に罹患している被験体に対して投与することにより、転移性癌に伴う骨量減少を予防し、腫瘍増殖を予防することを含む、骨転移および腫瘍増殖を予防する方法を提供する。同様に、本発明の別の実施形態では、治療的有効量のM−CSFアンタゴニストおよびある治療剤を転移性癌に罹患している被験体に投与することにより、転移性癌に伴う骨量減少の重症度を緩和し、腫瘍増殖を抑制することを含む、この被験体を治療する方法を提供する。これに関連した局面として、上記方法の被験体は哺乳動物である。さらに別の実施形態として、この被験体はヒトである。
本発明の別の実施形態として、上記アンタゴニストがM−CSFとそのレセプターM−CSFRとの相互作用を阻害する上記方法を提供する。別の実施形態として、このアンタゴニストは腫瘍細胞により誘発される破骨細胞の増殖および/または分化を阻害する。さらに別の実施形態として、このM−CSFアンタゴニストは、抗M−CSF抗体を含むポリペプチド;それの抗M−CSFR抗体を含むポリペプチド;M−CSFのムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;およびM−CSFRのムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチドからなる群から選ばれる。
本発明では、いくつかのM−CSFアンタゴニスト抗体が企図されている。一実施形態として、この抗体がポリクロナール抗体;モノクロナール抗体;ヒト化抗体;ヒト抗体;キメラ抗体;Fab、F(ab’)もしくはF抗体フラグメント;および上記抗体のうちの任意の1つムテインからなる群から選ばれる上記方法を提供する。
本発明の別の実施形態として、上記治療剤がビスホスフォネートである上記方法を提供する。別の実施形態として、このビスホスフォネートは、ゼレドロネート(zeledronate)、パミドロネート、クロドロネート、エチドロネート、チルンドロネート(tilundronate)、アレンドロネート(alendronate)、もしくはイバンドロネート(ibandronate)である。別の実施形態として、上記治療剤が化学療法剤である上記方法を提供する。ビスホスフォネート投与について一部の被験体を除外することができることが企図されている。例えば、被験体がビスホスフォネートに十分反応しない場合、被験体がビスホスフォネート投与に対して耐容性を示さない場合、またはビスホスフォネートが被験体の特定の病状(例えば、腎不全)に対して禁忌となっている場合には、ビスホスフォネート投与を受けることについてその被験体を除外することができる。癌化学療法剤としては、カルボプラチン、シスプラチンなどのアルキル化剤;ナイトロジェンマスタード系アルキル化剤;カルムスチン(BCNU)などのニトロソウレア系アルキル化剤;メトトレキサートなどの代謝拮抗剤;プリンアナログ系代謝拮抗剤メルカプトプリン;フルオロウラシル(5−FU)、ゲムシタビンなどのピリミジンアナログ代謝拮抗剤;ゴセレリン、ロイプロリド、タモキシフェンなどのホルモン性抗腫瘍剤;アルデスロイキン、インターロイキン−2、ドセタキセル、エトポシド(VP−16)、インターフェロンアルファ、パクリタキセル、トレチノイン(ATRA)などの天然由来抗腫瘍剤;ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、マイトマイシンなどの天然由来抗腫瘍性抗生物質;およびビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンなどの天然由来抗腫瘍性ビンカアルカロイド;ヒドロキシウレア;アセグラトン、アドリアマイシン、イホスファミド、エノシタビン、エピチオスタノール、アクラルビシン、アンシタビン、ニムスチン、塩酸プロカルバジン、カルボコン、カルボプラチン、カルモフール、クロモマイシンA3、抗腫瘍性多糖類、抗腫瘍性血小板因子、シクロホスファミド、シゾフィラン、シタラビン、ダカルバジン、チオイノシン、チオテパ、テガフール、ネオカルチノスタチン、OK−432、ブレオマイシン、フルツロン、ブロクスウリジン、ブスルファン、ホンバン、ペプレオマイシン、ベスタチン(ウベニメクス)、インターフェロン−β、メピチオスタン、ミトブロニトール、メルファラン、ラミニンペプチド、レンチナン、カワラタケ抽出物、テガフール/ウラシル、エストラムスチン(エストロゲン/メクロレタミン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
さらに、癌患者に対して補助療法として用いる別の薬剤としては、EPO、G−CSF、ガンシクロビール;抗生物質、ロイプロリド;メペリジン;ジドブジン(AZT);突然変異体およびアナログを含むインターロイキン1〜18;インターフェロンα、βおよびγなどのインターフェロンまたはサイトカイン;黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)とそのアナログ、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)などのホルモン;トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、神経成長因子(NGF)、成長ホルモン放出因子(GHRF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子相同性因子(FGFHF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン増殖因子(IGF)などの成長因子;腫瘍壊死因子−αおよびβ(TNF−α&β);浸潤抑制因子−2(IIF−2);骨形成タンパク質1〜7(BMP1−7);ソマトスタチン;サイモシン−α−1;γ−グロブリン;スーパーオキシドジスムターゼ(SOD);補体因子;抗血管新生因子;抗原性物質;プロドラッグ;成長因子レセプターキナーゼインヒビター;抗Her2抗体;およびVEGF中和抗体が挙げられる。
これに関連した実施形態として、上記M−CSFアンタゴニストは、治療効果を達成するのに必要な治療剤の投与量を低減させるのに有効である。すなわち、M−CSFアンタゴニスト、上記の別の治療剤の有効性を向上させることができ、またはこの別の治療剤の投与に伴う副作用を軽減させることができ、あるいはこの別の治療剤の安全性を向上させることができる。また、M−CSFアンタゴニスト、手術、放射線療法といった別の治療法の有効性を向上させ、または副作用を軽減させ、あるいは安全性を向上させることもできる。さらに別の関連実施形態として、前述の方法は、さらに、M−CSF以外のコロニー刺激因子、例えば、G−CSFを投与する工程を含む。本発明のさらに別の実施形態として、M−CSFアンタゴニストおよび癌治療剤を含む薬学的組成物を提供する。
本発明の別の実施形態として、M−CSFアンタゴニストを含む薬剤と、この薬剤が手術もしくは放射線療法との併用で使用することになっているとの使用説明書とを収容しているパッケージ、バイアルもしくは容器を提供する。本発明の別の実施形態として、被験体にM−CSFアンタゴニストを投与する工程およびこの被験体に手術もしくは放射線療法を施行する工程を含む、骨転移性癌を予防もしくは治療する方法を提供する。
M−CSFアンタゴニストは免疫療法剤として有用な場合があることが企図されている。従って、本発明の一実施形態では、膜結合M−CSF(配列番号:2)の細胞外部分に特異的に結合する抗体を投与する工程を含む、細胞表面に膜結合M−CSFを発現している腫瘍細胞を標的化する方法を提供する。別の実施形態として、この抗体は、放射性核種または他の毒素に結合している。さらに別の実施形態として、この抗体は、ポリクロナール抗体;モノクロナール抗体;ヒト化抗体;ヒト抗体;キメラ抗体;Fab、F(ab’)もしくはF抗体フラグメント;および上記抗体のうちの任意の1つムテインからなる群から選ばれる。
さらに別の局面として、本発明では、抗M−CSF抗体を用いて細胞表面に膜結合M−CSFを発現している腫瘍細胞を標的化することによる、免疫療法に基づく癌治療方法が企図されている。本明細書の実施例では、種々の癌細胞が膜結合型M−CSFを発現していることを示しており、このような癌としては、乳癌、結腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、骨肉腫および甲状腺癌が挙げられるが、これらに限定されるものではない。従って、本発明では、M−CSFに結合する有効量の抗体単独、もしくはこれに細胞傷害性成分を結合させたものを投与する工程を含む、膜結合M−CSFを発現している腫瘍細胞を殺傷またはその増殖を阻害する方法が企図されている。抗体は膜結合M−CSFに対して特異的であることが望ましいが、膜結合M−CSFの細胞外部分に結合する抗体はいずれも、こうした方法において有用である。
また、本発明では、本発明のM−CSFアンタゴニストのうちの任意の1種が、非転移性癌を含む癌の治療に有用とすることができることが企図されている。別の局面として、本発明では、高カルシウム血症、ページェット病、もしくは骨粗鬆症の治療に、本発明のアンタゴニストのうちの任意の1種を使用することが企図されている。
本発明の一実施形態として、癌に罹患している被験体を治療する方法であって、この癌を構成する細胞はM−CSFを分泌しないものであり、M−CSFアンタゴニストを投与する工程を含む方法を提供する。これに関連した実施形態として、転移性癌に罹患している被験体に対して、この被験体の細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量であると同時にその癌細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量を超える量のM−CSFアンタゴニストを投与することを含む、骨転移を予防する方法を提供する。さらに別の実施形態として、骨転移性癌に罹患している被験体に対して、この被験体の細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量であると同時にその癌細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量を超える量のM−CSFアンタゴニストを投与することを含む、この被験体を治療する方法を提供する。
本発明では様々な使用が企図されている。例えば、本発明の一実施形態では、上記抗体のうちの任意の抗体を医薬用として提供する。同様に、転移性癌に罹患している被験体の骨転移を予防する薬剤の製造におけるM−CSFアンタゴニストの使用を提供する。別の実施形態として、転移性癌に罹患している被験体においてこの癌に伴う骨量減少を予防する薬剤の製造におけるM−CSFアンタゴニストの使用を提供する。さらに別の実施形態として、骨転移性癌に罹患している被験体を治療する薬剤の製造におけるM−CSFアンタゴニストの使用を提供する。さらに別の実施形態として、骨転移性癌に罹患している被験体においてこの癌に伴う骨量減少の重症度を緩和する薬剤の製造におけるM−CSFアンタゴニストの使用を提供する。
本明細書に開示した方法およびM−CSFアンタゴニストの使用により恩恵を受ける被験体としては数多くの被験体が企図されている。一実施形態として、この被験体は哺乳動物である。別の実施形態として、この哺乳動物はヒトである。
本発明の別の実施形態として、前述の使用であって、上記アンタゴニストがM−CSFとそのレセプター(M−CSFR)との相互作用を阻害する使用を提供する。別の実施形態として、このアンタゴニストは、腫瘍細胞により誘発される破骨細胞の増殖および/または分化を阻害するものである。さらに別の実施形態として、このM−CSFアンタゴニストは、抗M−CSF抗体を含むポリペプチド;それの抗M−CSFR抗体を含むポリペプチド;M−CSFムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;またはM−CSFRムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチドからなる群から選ばれる。これに関連した実施形態として、こうした抗体は、ポリクロナール抗体;モノクロナール抗体;ヒト化抗体;ヒト抗体;キメラ抗体;Fab、F(ab’)もしくはF抗体フラグメント;および上記抗体もしくは断片のうちの任意の1つのムテインからなる群から選ばれる。
本発明の別の実施形態として、前述の使用であって、上記抗体がM−CSFに特異的であることを特徴とする使用を提供する。これに関連した実施形態として、この抗体は抗体5H4である。さらに別の関連実施形態として、この抗体はM−CSFRに特異的なものである。
本発明の前述の使用に関連して、数多くの転移性癌が標的として企図されている。一実施形態として、こうした転移性癌は、乳癌、肺癌、腎癌、多発性骨髄腫、甲状腺癌、前立腺癌、腺癌、血液細胞悪性腫瘍(白血病、リンパ腫が挙げられる);頭頚部癌;消化管癌(胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵癌、肝癌が挙げられる)女性生殖管の悪性腫瘍(卵巣癌、子宮内膜癌および子宮頚癌が挙げられる);膀胱癌;神経芽細胞腫などの脳腫瘍;肉腫、骨肉腫;皮膚癌(悪性黒色腫もしくはへん平上皮癌が挙げられる)である。別の実施形態として、前述の使用におけるM−CSFアンタゴニストは、約0.01mg/kg約100mg/kgとの間の用量で投与される抗体である。
本発明では、数多くの薬剤が企図されている。例えば、転移性癌に罹患している被験体を治療するための薬剤の製造における前述の使用を提供する。別の実施形態として、転移性癌に罹患している被験体においてこの癌に伴う骨量減少の重症度を緩和する薬剤の製造における上記抗体の使用を提供する。さらに別の実施形態として、転移性癌に罹患している被験体において骨への転移および腫瘍増殖を予防するための薬剤の製造におけるM−CSFアンタゴニストおよび治療剤の使用を提供する。別の実施形態として、転移性癌に罹患している被験体においてこの癌に伴う骨量減少を予防するための薬剤の製造におけるM−CSFアンタゴニストおよび治療剤の使用を提供する。
別の実施形態として、転移性癌を治療するための薬剤の製造におけるM−CSFアンタゴニストおよび治療剤の使用を提供する。別の実施形態として、転移性癌に罹患している被験体において癌に伴う骨量減少の重症度を緩和し、腫瘍増殖を抑制するための薬剤の製造におけるM−CSFアンタゴニストおよび治療剤の使用を提供する。さらに別の実施形態として、癌の治療において同時的、個別的、もしくは逐次的に用いるための組合せ製剤としてのM−CSFアンタゴニストおよび治療剤を含む製品を提供する。
本発明の別の実施形態として、骨転移性癌の予防もしくは治療用の薬剤の調製におけるM−CSFアンタゴニストの使用であって、この薬剤が癌治療剤と同時的、個別的、もしくは逐次的に投与される使用を提供する。別の実施形態として、骨転移性癌の予防もしくは治療用の薬剤の調製における癌治療剤の使用であって、この薬剤がM−CSFアンタゴニストと同時的、個別的、もしくは逐次的に投与される使用を提供する。さらに別の実施形態として、M−CSFアンタゴニストを含む薬剤と、この薬剤が手術もしくは放射線療法との併用で使用されるべきであるとの使用説明書とを収容しているパッケージ、バイアルもしくは容器を提供する。さらに、前述の使用であって、上記被験体が哺乳動物である使用を提供する。さらに、前述の使用であって、この哺乳動物がヒトである使用を提供する。別の実施形態として、前述の使用アンタゴニストは、M−CSFとそのレセプターM−CSFRとの相互作用を阻害する。さらに別の実施形態として、このアンタゴニストは、腫瘍細胞により誘発される破骨細胞の増殖および/または分化を阻害する。
別の実施形態として、前述の使用であって、上記M−CSFアンタゴニストが抗M−CSF抗体を含むポリペプチド;それの抗M−CSFR抗体を含むポリペプチド;M−CSFのムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;またはM−CSFRのムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチドからなる群から選ばれる使用を提供する。さらに、別の実施形態では、上記抗体は、ポリクロナール抗体;モノクロナール抗体;ヒト化抗体;ヒト抗体;キメラ抗体;Fab、F(ab’)もしくはF抗体フラグメント;および上記抗体のうちの任意の1つムテインからなる群から選ばれる。
本発明では、数多くの治療剤が企図されている。一実施形態として、前述の使用であって、上記治療剤がビスホスフォネートである使用を提供する。さらに、別の実施形態として、このビスホスフォネートは、ゼレドロネート(zeledronate)、パミドロネート、クロドロネート、エチドロネート、チルンドロネート(tilundronate)、アレンドロネート(alendronate)、もしくはイバンドロネート(ibandronate)である。別の実施形態として、この治療剤は化学療法剤である。これに関連した実施形態として、上記被験体をビスホスフォネート処置を受けることから除外する。
本発明の別の実施形態として、被験体に投与する治療剤の用量を下げて骨転移および腫瘍増殖を治療もしくは予防するための薬剤の製造におけるM−CSFアンタゴニストの使用を提供する。別の実施形態として、転移性癌に罹患している被験体において骨転移および腫瘍増殖を予防するための薬剤の製造におけるM−CSFアンタゴニスト、治療剤およびM−CSF以外のコロニー刺激因子の使用を提供する。さらに別の実施形態として、転移性癌に罹患している被験体においてこの癌に伴う骨量減少を予防するための薬剤の製造におけるM−CSFアンタゴニスト、治療剤およびM−CSF以外のコロニー刺激因子の使用を提供する。
本発明の別の実施形態として、転移性癌を治療するための薬剤の製造におけるM−CSFアンタゴニスト、治療剤およびM−CSF以外のコロニー刺激因子の使用を提供する。別の実施形態として、転移性癌に罹患している被験体においてこの癌に伴う骨量減少の重症度を緩和し、腫瘍増殖を抑制するための薬剤の製造におけるM−CSFアンタゴニスト、治療剤およびM−CSF以外のコロニー刺激因子の使用を提供する。これに関連した実施形態として、前述の使用であって、上記のM−CSF以外のコロニー刺激因子がG−CSFである使用を提供する。
本発明の別の実施形態では、細胞表面に膜結合M−CSFを発現している腫瘍細胞を標的化するための薬剤の製造における、膜結合M−CSFの細胞外部分に特異的に結合する抗体の使用を提供する。別の実施形態として、癌治療用薬剤の製造における、(a)膜結合M−CSFの細胞外部分に特異的に結合し、および(b)放射性核種またはその他の毒素と結合している抗体の使用を提供する。これに関連した実施形態として、前述の使用であって、上記抗体がポリクロナール抗体;モノクロナール抗体;ヒト化抗体;ヒト抗体;キメラ抗体;Fab、F(ab’)もしくはF抗体フラグメント;および上記抗体のうちの任意の1つムテインからなる群から選ばれる使用を提供する。
本発明の別の実施形態として、癌治療用薬剤の製造におけるマウス以外の抗M−CSF抗体の使用を提供する。これに関連した実施形態として、この癌を構成する細胞はM−CSFを分泌しない細胞である。本発明の別の実施形態として、骨転移予防用薬剤の製造における、癌細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量を超える量のM−CSFアンタゴニストの使用を提供する。別の実施形態として、被験体の細胞により産生されるM−CSFを中和するための薬剤の製造における、癌細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量を超える量のM−CSFアンタゴニストの使用を提供する。さらに別の実施形態として、骨転移性癌に罹患している被験体を治療するための薬剤の製造における、癌細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量を超える量のM−CSFアンタゴニストの使用を提供する。さらに別の実施形態として、癌治療用薬剤の製造における、癌細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量を超える量のM−CSFアンタゴニストの使用を提供する。
また、キットも本発明の範囲内に企図されている。代表的なキットの中には、本発明のM−CSFアンタゴニストを含むパッケージ、容器もしくはバイアルと、ユーザーに対し本発明の方法のうちの任意の方法に従って上記薬学的処方物を使用するよう指示する製品の添付文書もしくはラベルなどの使用説明書とを備えることができる。
(詳細な説明)
転移する能力は癌の決定的な特徴である。転移とは、癌細胞の身体の他の部分への浸潤、もしくはこの浸潤により生じる状態のことを意味する。転移は複雑な多段階のプロセスであり、このプロセスには、細胞の遺伝物質が変化し、この変化した細胞が無制限に増殖することにより原発腫瘍を形成し、この原発腫瘍に対する血液供給が新たに形成され、この原発腫瘍の細胞が循環系に侵入し、小さな塊の原発腫瘍細胞が身体の他の部分へ拡散し、その部位で二次腫瘍が増殖することが含まれる。
骨はヒトの乳癌、肺癌、前立腺癌、甲状腺癌および他の癌の最も代表的な転移部位の一つであり、剖検では、癌患者の60%もが骨転移を有することが分かっている。骨溶解性骨転移では、他の器官への転移には存在しない破骨細胞骨再吸収という特有の段階が見られる。癌転移に伴う骨量の減少は、破骨細胞(鉱質化組織を再吸収する能力を有する多核巨細胞)によって媒介されており、この細胞は腫瘍の産物により活性化されるように思われる。
コロニー刺激因子(CSF1)は、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)としても知られるが、破骨細胞の形成に不可欠なものであることが分かっている。さらに、M−CSFは、他の可溶性因子、ならびに骨芽細胞および線維芽細胞により提供される細胞間相互作用と協働して成熟破骨細胞の破骨機能、移動および生存を調節していることも明らかにされている(フイクセ(Fixe)、プラロラン(Praloran)、サイトカイン(Cytokine)10:p3−7、1998年;マーチンほか(Martin
et al.)、クリティカル・レビュー・イン・ユーカリオティック・ジーン・エクスプレッション(Critical Rev.in Eukaryotic Gene Expression)8:p107−23(1998年)。
完全長のヒトM−CSFmRNAは、554個のアミノ酸(配列番号4)の前駆体タンパク質をコードしている。選択的mRNAスプライシングおよび差次的(differential)翻訳後タンパク質分解プロセッシングによって、M−CSFは、プロテオグリカンを含む糖タンパク質もしくはコンドロイチン硫酸として循環中に分泌され得るか、M−CSF産生細胞の表面に膜貫通糖タンパク質として発現され得る。ヒトM−CSFがインビトロで完全な生物学的活性を示すのに必要な最低限の配列である、ヒトM−CSFの細菌に発現させたそのアミノ末端の150個のアミノ酸の三次元構造から、このタンパク質は、4つのαヘリックス束と逆平行βシートとからなる各モノマージスルフィド結合したダイマーであることが分かる(パンディットほか(Pandit et al.)、サイエンス(Science)258:p1358−62(1992年)。選択的mRNAスプライシングによって3つの異なるM−CSF種が生じる。この3種のポリペプチド前駆体は、アミノ酸256個のM−CSFα(配列番号:1および2で示されるDNA配列およびアミノ酸配列)、アミノ酸554個のM−CSFβ(配列番号:3および4で示されるDNA配列およびアミノ酸配列)、ならびにアミノ酸438個のM−CSFγ(配列番号:5および6で示されるDNA配列およびアミノ酸配列)である。M−CSFβは、膜結合型では存在しない分泌タンパク質である。M−CSFαは、タンパク質分解的切断によりゆっくりと放出される膜内在性タンパク質として発現される。M−CSFαは、配列番号:2のアミノ酸191197で切断される。この膜結合型のM−CSFは、近傍細胞のレセプターと相互作用することにより特定の細胞間接触を媒介し得る
種々の型のM−CSFは、標的細胞のそのレセプターM−CSFRに結合することにより機能する。M−CSFR(配列番号:7および8のDNA配列およびアミノ酸配列)は、5個の細胞外免疫グロブリン様ドメイン、1個の膜貫通ドメインおよび1個の細胞内分断Src関連チロシンキナーゼドメインを有する膜貫通分子である。M−CSFRはc−fms癌原遺伝子によってコードされている。M−CSFがM−CSFRの細胞外ドメインに結合すると、このレセプターダイマー化し、これにより細胞質キナーゼドメインが活性化されて他の細胞タンパク質の自己リン酸化およびリン酸化がもたらされる(ハミルトン、J.A.(Hamilton J.A.)、ジャーナル・オブ・ロイコサイト・バイオロジー(J Leukoc Biol.)、62(2):145−55(1997年);ハミルトン、J.A.(Hamilton J.A.)、イムノロジー・ツデイ(Immuno Today.)、18(7):313−7(1997年))。
細胞内タンパク質がリン酸化されると、生化学的事象が次々と起こり、細胞性応答、即ち、有糸分裂、サイトカイン分泌、細胞膜の波打ち現象、および自己レセプターの転写調節が生じる(フイクセ(Fixe)、プラロラン(Praloran)、サイトカイン(Cytokine)10:p32−37、1998年)。
M−CSFは間質細胞、骨芽細胞その他の細胞で発現されている。また、これは乳房、子宮および卵巣腫瘍細胞においても発現される。これらの腫瘍における発現の程度が高悪性度および予後不良に関連する(カシンスキー(Kacinski)、アナルズ・オブ・メディシン(Ann.Med.)、27:p79−85(1995年);スミスほか(Smith et al.)、クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clin.Cancer Res.)、1:p313−25(1995年)。乳癌では、M−CSFの発現は、腺管内(浸潤前)癌とは対照的に、浸潤癌細胞で多く見られる(ショールほか(Scholl et al.)、ジャーナル・オブ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート(J.Natl.Cancer Inst.)86:p120−6(1994年)。さらに、M−CSFは、乳腺腫瘍の悪性腫瘍への進行を促進することが明らかにされている(リンほか(Lin et al.)、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディシン(J Exp Med.)93:p727−39(2001年))。乳癌および卵巣癌の場合、M−CSFの産生はマクロファージのこの腫瘍への補充に関与しているものと思われる。
癌の転移もしくは癌転移に伴う骨量減少の予防または治療にM−CSFアンタゴニストを用いたという報告はない。本発明ではその一部として、M−CSFアンタゴニストが転移性癌細胞による破骨細胞の誘導を無効化することを発見した。従って、本発明は、癌の転移および癌転移に伴う骨量減少の予防または治療のための配合物および方法を提供する。
本明細書に用いている「腫瘍」とは、悪性であれ良性であれ、全ての新生物性細胞の成長および増殖、ならびに前癌性および癌性の細胞および組織のことを意味する。
「癌」および「癌性」という用語は、代表的に、無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳動物の生理的状態のことを意味し、もしくは表したものである。癌の例としては、癌腫;リンパ腫、芽細胞腫、肉腫および白血病が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような癌のより具体的な例としては、乳癌、前立腺癌、結腸癌、へん平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、消化管癌、膵癌、多形グリア芽腫、子宮頚癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝腫、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎癌、肝臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝臓癌および各種の頭頚部癌が挙げられる。
「治療」とは、疾患の進行阻止もしくは病状改善を意図してなされる介入である。従って、「治療」とは、治療上の処置および予防もしくは再発予防処置の両方のことを意味する。治療を必要とする被験体には、すでに疾患を有する被験体、および疾患を予防すべきである被験体が含まれる。腫瘍(例えば、癌)の治療では、治療剤は、腫瘍細胞の病理を直接軽減するか、腫瘍細胞を他の治療因子、例えば、放射線療法および/または化学療法による処置に対する感受性を増大させることができる。癌の「病状(pathology)」には、患者の健康を損なうあらゆる現象が含まれる。こうしたものとしては、異常もしくは制御不可能な細胞増殖、転移、近傍細胞の正常な機能の妨害、異常な濃度のサイトカインもしくはその他の分泌生成物の遊離、炎症応答もしくは免疫応答の抑制または悪化などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本明細書に用いている「転移性癌」という語句は、身体の他の部位、特に骨に浸潤する可能性のある癌と定義される。骨に転移し得る癌には種々のものがあるが、最も一般的な転移する癌は、乳癌、肺癌、腎癌、多発性骨髄腫、甲状腺癌、および前立腺癌である。骨に転移する可能性のある他の癌としては、例えば、腺癌、白血病、リンパ腫などの血液細胞悪性腫瘍;頭頚部癌;胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵癌、肝癌などの消化管癌;卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頚癌などの女性生殖管の悪性腫瘍;膀胱癌;神経芽細胞腫などの脳腫瘍;肉腫、骨肉腫;および悪性黒色腫およびへん平上皮癌などの皮膚癌が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、本発明では、腫瘍によって誘発される骨の骨溶解性病変を予防および治療することが企図されている。
(I.アンタゴニスト)
概して、本明細書に用いている「アンタゴニスト」という用語は、分子、化合物またはその他の物質が、例えば、立体障害、立体構造の変化もしくは他の生化学的メカニズムによって、ある分子の別の分子との結合またはある細胞の別の細胞による刺激を妨害する性質のことを意味する。1つの点に関して言えば、アンタゴニストという用語は、レセプターのそのリガンドへの結合、例えば、M−CSFのM−CSFRとの結合を阻止することによってM−CSFにより誘発されるシグナル伝達経路を阻害する物質の性質のことを意味する。アンタゴニストという用語は、特定の作用メカニズムによって何ら限定されるものではなく、むしろ、一般には、今定義した機能的性質のことを意味する。本発明のアンタゴニストとしては、M−CSF抗体とその断片、ムテインおよび修飾体、可溶性M−CSFとその断片、ムテインおよび修飾体、M−CSFR抗体とその断片、ムテインおよび修飾体、可溶性M−CSFRとその断片、ムテインおよび修飾体、M−CSFもしくはM−CSFRに結合するペプチドおよび他の化合物および分子、ならびにM−CSFおよびM−CSFRの発現を阻害するアンチセンス化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明のアンタゴニストからは、必要に応じて、M−CSFを標的とするアンチセンス分子が除外される。本発明のアンタゴニストはいずれも、当該分野で公知の任意の方法で投与することができる。例えば、M−CSFムテイン、M−CSFRムテイン、またはM−CSFもしくはM−CSFRに結合する抗体フラグメントは、遺伝子治療を介して投与することができる。
本発明のM−CSFアンタゴニストには、適用可能な場合、機能的等価物も含まれる。例えば、分子は、長さ、構造、構成部分などが異なるが、なお上記に定義した機能の1つ以上を保持し得る。より具体的には、本発明の抗体、抗体フラグメントもしくはペプチドの機能的等価物には、模倣化合物、即ち、抗原の結合に適した配置および/または配向を模倣するように設計された構築物が挙げられる。
必要に応じて、好ましいM−CSFアンタゴニストは、側鎖などの付加、例えば、アミノ末端のアシル化、カルボキシ末端のアミド化、またはアミノ酸側鎖への別の基のカップリングによって、修飾することができる。また、アンタゴニストには1つ以上の保存的アミノ酸置換を設けることができる。「保存的アミノ酸置換」とは、置換されるアミノ酸の全体的な荷電、疎水性/親水性および/または立体バルクを維持するようなアミノ酸配列の変更のことを意味する。例えば、次の基の間の置換は保存的置換となる:Gly/Ala、Val/Ile/Leu、Asp/Glu、Lys/Arg、Asn/Gln、Ser/Cys/Thr、およびPhe/Trp/Tyr。このような改変を行っても、M−CSFアンタゴニストの有効性は実質的に減じることはなく、例えば、インビボでの半減期が延長し、毒性が低減するなどの望ましい性質を得ることができる。
また、本発明は、アミノ酸残基の挿入、欠失もしくは置換以外の修飾が施されたポリペプチドをも含むことが意図される。例えば、こうした修飾は共有結合的な性質のものとすることができ、例としては、ポリマー、脂質、他の有機および無機成分との化学結合が挙げられる。このような誘導体は、ポリペプチドの循環中の半減期が延長するように作製することができ、またはポリペプチドに対し所望の細胞、組織もしくは器官を標的とする能力を向上させるように設計することができる。同様に、本発明は、さらに、共有結合により修飾して、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの水溶性ポリマーを1つ以上付加したM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドを包含する。
本明細書に用いている「治療的有効量」という語句は、所望の治療計画に従って投与した時に目的とする治療上もしくは予防上の効果もしくは反応をもたらす、本発明の実施形態に適すると考えられる治療用もしくは予防剤用M−CSFアンタゴニストの量のことを意味する。
本明細書に用いているヒト「M−CSF」とは、いずれも参考文献により本明細書に援用されているカワサキほか(Kawasaki et al.)、サイエンス(Science)230:p291(1985年)、チェレッティほか(Cerretti et al.)、モレキュラー・イムノロジー(Molecular Immunology)25:p761(1988年)もしくはランドナーほか(Ladner et al.)、EMBOジャーナル(EMBO Journal)6:p2693(1987年)に記載の成熟ヒトM−CSFαポリペプチド、M−CSFβポリペプチドまたはM−CSFγポリペプチドと実質的に同じアミノ酸配列を有するヒトポリペプチドのことを意味する。このような用語は、3種の成熟M−CSFが前述のように異なるアミノ酸配列を有すること、活性型M−CSFがジスルフィド結合したダイマーであるので、「M−CSF」という用語が生物学的活性型のことを言う場合には、このダイマー形態が意図されるとの理解を反映させたものである。「M−CSFダイマー」とは、ダイマー化した2つのM−CSFポリペプチドモノマーのことを意味し、(2つの同一タイプのM−CSFモノマーからなる)ホモダイマー、および(2つの異なるモノマーからなる)ヘテロダイマーの両方を含む。M−CSFモノマーは、参考として本明細書に援用される米国特許第4,929,700号に開示されるように、インビトロでM−CSFダイマーに変換することができる。
(M−CSF抗体)
「抗体」という用語は、最も広義で用いており、完全に組み立てられた抗体、抗原に結合可能な抗体フラグメント(例えば、Fab’、F’(ab)、Fv、単鎖抗体、ダイアボディ)およびこれらを含む組換え型ペプチドを網羅する。
本明細書に用いている「モノクロナール抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団(即ち、この集団を構成する個々の抗体は、天然に僅かに存在し得る突然変異の場合を除き、同一である)から得られる抗体のことを意味する。モノクロナール抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位を標的とする。さらに、一般に種々の決定基(エピトープ)に対する種々の抗体を含む通常の(ポリクロナール)抗体調製物とは対照的に、モノクロナール抗体はそれぞれ、単一の抗原決定基を標的とする。その特異性の他に、モノクロナール抗体は、特異性および特性が異なる他の免疫グロブリンが混入していない均一な培養物によって合成することができる点で有利である。
「モノクロナール」という修飾語は、抗体の実質的に均一な母集団から得られるものとしてその抗体の特徴を示しており、この抗体を作製するのに何らかの特定の方法を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って用いることになるモノクロナール抗体は、コーラーほか(Kohler et al.)がネイチャー(Nature)256:p495(1975年)に最初に報告したハイブリドーマ法によって作製することができ、あるいは組換えDNA法によって作製することができる(例えば、米国特許第4,816,567号参照)。また、「モノクロナール抗体」は、例えば、クラックソンほか(Clackson et al.)、ネイチャー(Nature)352:p624−628(1991年)およびマークスほか(Marks et al.)、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)222:p581−597(1991年)に記載されている技術によりファージ抗体ライブラリから単離することもできる。
「抗体フラグメント」は、完全な状態の抗体の一部分、好ましくはこの完全な状態の抗体の抗原結合領域もしくは可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体(ザパタほか(Zapata et al.)、プロテイン・エンジニアリング(Protein Eng.)8(10):p1057−1062(1995年));単鎖抗体分子;ならびに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。抗体をパパインで消化させると、それぞれ単一の抗原結合部位を有する、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一抗原結合断片、およびその名称が35を容易に結晶化する能力を反映する残余の「Fc」断片が得られる。ペプシンで処理すると、単一のポリペプチド鎖内に存在する抗体のVHドメインおよびVLドメインを含む2つの「単鎖Fv」即ち「sFv」抗体フラグメントを有するF(ab’)2断片が得られる。このFvポリペプチドは、さらに、Fvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインとの間に含むことが好ましい。sFVの概説については、プラックサン(Pluckthun)「モノクロナール抗体の薬理」第113巻、ローゼンバーグ(Rosenburg)、ムーア(Moore)編、シュプリンガー出版、ニューヨーク、p269−315(1994年)を参照されたい。
「ダイアボディ」という用語は、軽鎖可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を同一ポリペプチド鎖(VH VL)内に含む、2つの抗原結合部位を有する抗体の小断片のことを意味する。短すぎて同一鎖のこれら2つのドメイン間に対形成をさせることができないリンカーを用いることで、これらのドメインに対して強制的に、別の鎖の相補性ドメインと対を形成させ、2つの抗原結合部位を創出させる。ダイアボディについては、例えば、欧州特許第404,097号;WO93/11161号;およびホリンガーほか(Hollinger et al.)、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Proc.Natl.Acad Sci)USA、90:p6444−6448(1993年)にさらに十分な記載がある。
「単離」抗体とは、その自然環境の構成成分から同定し、分離し、回収された抗体である。その自然環境の夾雑成分は、この抗体の診断的もしくは治療的用途に支障をきたすと考えられる物質であり、こうしたものとしては、酵素、ホルモン、および他のタンパク様のもしくは非タンパク様溶質が挙げられる。好ましい実施形態としては、この抗体は(1)ローリー法で測定して95重量%超、最も好ましくは99重量%超の抗体に、(2)回転(spinning cup)シークエネーターを用いて少なくとも15残基のN末端もしくは内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度に、または(3)クーマシーブルー、好ましくは銀染色を用いる還元性もしくは非還元性条件下のSDS−PAGEにより均一となるまで、精製される。単離抗体には、組換え細胞内のインサイチュのこの抗体を含める。何故なら、この抗体の自然環境の少なくとも1成分は存在しないからである。しかしながら、通常、単離抗体は、少なくとも1回の精製工程で調製することができる。
「Fv」とは、完全な抗原認識および結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、非共有結合により強く結合した、1つの重鎖と1つの軽鎖を有する可変ドメインのダイマーからなる。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用することによりこのVH VIダイマーの表面の抗原結合部位が規定されるのは、上記の構造においてである。計6つのCDRがこの抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、結合部位全体に比し親和性は低いものの、単一の可変ドメイン(または、抗原に特異的なCDRを3つのみ含むFvの半分)でも抗原に対する認識能および結合能がある。
また、Fab断片は軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1定常ドメイン(CH1)を含む。Fab断片は、抗体のヒンジ領域の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数残基付加されていることで、Fab’断片と異なっている。Fab’−SHとは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’に対して本明細書で用いている名称である。元々、F(ab’)2抗体フラグメントは、断片間にヒンジシステインを有するFab’断片対として作製された。
「中和抗体」とは、結合する標的抗原のエフェクター機能を除去もしくは大きく減弱させることができる抗体分子を意味する。従って、「中和」抗標的抗体は、酵素活性、リガンド結合もしくは細胞内シグナル伝達などのエフェクター機能を除去もしくは大きく減弱させることができる。
本明細書に提供した、癌転移および/または癌転移に伴う骨量減少を治療するための組成物および方法では、1種以上の抗体を単独、または他の療法との併用で用いることにより目的とする効果を得ることができる。本発明による抗体は、環境の抗原と直接接触させるか、その抗原を免疫化した結果としてこの抗体を産生する動物から単離することができる。あるいは、抗体は、当該分野で公知の抗体発現系(例えば、ハーロー(Harlow)、レーン(Lane)、「アンティボディズ:ア・ラボラトリ・マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)」コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリ(Cold Spring Harbor Laboratory)(1988年)参照)のうちの1つを用いて組換えDNA法により作製することができる。このような抗体としては、組換えIgG、免疫グロブリン由来配列を有するキメラ融合タンパク質、または「ヒト化」抗体を挙げることができ、これらは全て、本発明に従って癌転移および/または癌転移に伴う骨量減少の治療に用いることができる。完全な状態の(intact)完全長の分子の他に、「抗体」という用語は、その断片(例えば、scFv断片、Fv断片、Fd断片、Fab断片、Fab’断片およびF(ab)’2断片)、またはM−CSF(もしくはM−CSFR)に結合する完全な状態の(intact)分子および/または断片の多量体もしくは凝集体もまた意味する。これらの抗体フラグメントは、抗原に結合し、また、例えば、ガラクトース残基を組み込むことにより、クリアランスおよび取り込みを容易にする構造的特徴を発揮するように誘導体化することができる。
本発明の一実施形態として、M−CSFアンタゴニストは、参考として本明細書に援用されているハーレンベックほか(Halenbeck et al.)の米国特許第5,491,065号(1997年)に記載の方法に基本的に従って作製したモノクロナール抗体である。例示的なM−CSFアンタゴニストとしては、組換えもしくは天然のダイマーM−CSFに結合した外見上の立体配座エピトープに結合すると同時に生物学的活性を中和するモノクロナール抗体が挙げられる。こうした抗体は、モノマーM−CSFおよび化学的に誘導体化したダイマーM−CSFを含む生物学的不活性型のM−CSFとは実質的に反応しない。
本発明の別の実施形態として、ヒト化抗M−CSFモノクロナール抗体を提供する。「ヒト化抗体」という語句は、ヒト以外の抗体、代表的に、マウスモノクロナール抗体から誘導される抗体を意味する。あるいは、ヒト化抗体は、元の、ヒト以外の抗体の抗原結合特性を保持、もしくは実質的に保持しているが、ヒトに投与した時にその元の抗体に比し弱い免疫原性を示すキメラ抗体から誘導することもできる。本明細書に用いている「キメラ抗体」という語句は、代表的に異なる種に由来する2種の異なる抗体に由来する配列を含む抗体(例えば、米国特許第4,816,567号参照)を意味する。最も代表的には、キメラ抗体は、ヒトおよびマウスの抗体フラグメント、通常、ヒトの定常領域およびマウスの可変領域を含む。
「相補性決定領域」という語句は、天然の免疫グロブリン結合部位の固有のFv領域の結合親和力および特異性を共に規定するアミノ酸配列を意味する(例えば、チョチアほか(Chothia et al.)、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)196:p901−917(1987年);カバットほか(Kabat et al.)、米国保健社会福祉省NIH冊子第91 3242号(1991年)参照)。「定常領域」という語句は、エフェクター機能を付与する抗体分子の部分を意味する。本発明において、マウス定常領域は、ヒト定常領域で置換されていることが好ましい。本ヒト化抗体の定常領域は、ヒト免疫グロブリン由来のものとする。この重鎖定常領域は、5種のアイソタイプ:アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマもしくはミューのうちのどれから選んでもよい。
本発明の抗体は、抗原に対して、約10−1以上、好ましくは約10−1以上、より好ましくは約10−1以上、さらに好ましくは約10−1以上、最も好ましくは約10−1、10−1、もしくは1010−1以上のK値で結合する場合、免疫特異的であり、または特異的に結合しているとされる。例えば、好適な抗M−CSF/M−CSFR特異的抗体は、少なくとも10−1、好ましくは約10−1以上、より好ましくは約10−1以上、さらに好ましくは約10−1以上、最も好ましくは約10−1、10−1、もしくは1010−1以上の親和性でその抗原に結合する。この抗M−CSF/M−CSFR抗体は、宿主/被験体の組織により発現されたもの、および腫瘍により発現されたものを含む、種々の天然型M−CSF/M−CSFRに結合する。本明細書に開示したモノクロナール抗体は、M−CSFおよびM−CSFRに対する親和性を有し、解離平衡定数(Kd)が少なくとも10−4M、好ましくは少なくとも約10−7約10−8M、より好ましくは少なくとも約10−8約10−12Mであることを特徴とする。本発明の方法に使用するのに好適なモノクロナール抗体およびその抗原結合性断片は、M−CSF/M−CSFRに特異的に結合することができる。このような親和性は、平衡透析、メーカーが概説した一般的手順によるBIAcore 2000機器の使用、125I標識M−CSFを用いるラジオイムノアッセイ、または当業者に公知の別の方法など、従来技術を用いて容易に測定することができる。得られた親和性データは、例えば、スキャチャードほか(Scatchard et al.)、アナルズ・オブ・ザ・ニューヨーク・アカデミー・サイエンシズ(Ann N.Y.Acad.Sci.)51:p660(1949年)に記載の方法により解析することができる。従って、好ましいM−CSFアンタゴニストがM−CSFに対して高度の特異性を示し、他の分子に対しては十分に低い親和性で結合することは明らかである。
抗体の作製に使用すべき抗原は、例えば、完全な状態のM−CSF、またはエピトープが天然型の立体配座で提示されることを可能にする別のポリペプチドに、必要に応じて融合させた、所望のエピトープを保持しているM−CSF断片とすることができる。
(ポリクロナール抗体)
ポリクロナール抗体は、動物において関連する抗原およびアジュバントを皮下(sc)もしくは腹腔内(ip)注射を繰り返すことにより産生させることが好ましい。抗体反応は、二官能性薬剤もしくは誘導化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介する結合用)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する結合用)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸その他の当該分野で公知の薬剤を用いて、免疫化すべき種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリンもしくは大豆トリプシンインヒビターに、関連抗原を結合することにより向上させることができる。
えば、100μgもしくは5μg(それぞれ、ウサギもしくはマウスの場合)のこのタンパク質もしくは結合体を3体積の完全フロインドアジュバントと合わせ、この溶液を複数の部位に皮内注射することによって、上記抗原、免疫原性結合体もしくは誘導体に対して動物を免疫化する。1ヶ月後、これらの動物に対して、ペプチドもしくは結合体の完全フロインドアジュバント溶液の元の量の1/5〜(分数(1/10))を複数の部位に皮下注射することにより追加免疫を行う。追加免疫注射後714日目に、これらの動物を出血させ、血清の力価をアッセイする。この力価がプラトーに達するまで追加免疫を行う。好ましくは、動物の追加免疫は、抗原は同一であるが、これに結合させるタンパク質および/またはこの結合に用いる架橋剤は別のものに変えた結合体を用いて行う。また、結合体は、組換え細胞の培養によってタンパク質融合物として作製することができる。また、この免疫反応を高めるためにミョウバンなどの凝集剤を適切に用いる。
(モノクロナール抗体)
モノクロナール抗体は、コーラーほか(Kohler et al.)、ネイチャー(Nature)256:p495(1975年)に最初に報告されたハイブリドーマ法を用いて作製することができ、または組換えDNA法によって作製することができる。
ハイブリドーマ法では、マウス、もしくはハムスター、マカクザルなどの他の適切な宿主動物を本明細書に記載した方法で免疫化することにより、免疫化に用いたタンパク質に特異的に結合する抗体を産生する、または産生することができるリンパ球を誘導する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。次いで、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いてリンパ球を骨髄腫細胞と融合させることによりハイブリドーマ細胞を作製する(ゴーディング(Goding)、「モノクロナール・アンチボディズ:プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice)p59−103(アカデミック・プレス(Academic Press)、1986年))。
こうして作製したハイブリドーマ細胞を、好ましくは融合しなかった元の骨髄腫細胞の増殖もしくは生存を阻害する1種以上の物質を含む適切な培養培地に接種し、増殖させる。例えば、元の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTもしくはHPRT)を欠損している場合、上記ハイブリドーマの培養培地は、代表的に、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含有し(HAT培地)、これらの物質によりHGPRT欠損細胞の増殖を防止する。
骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定的な高レベルの産生を維持し、培地に対して感受性であるものが好ましい。また、ヒトモノクロナール抗体を産生させるためのヒト骨髄腫細胞株およびマウス−ヒト・ヘテロ骨髄腫細胞株についても報告されている(ブローダーほか(Brodeur et al.)、「モノクロナール・アンチボディ・プロダクション・テクニークス・アンド・アプリケーションズ(Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications)」p51−63(マーセル・デッカー社(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク、1987年)。
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養培地を、抗原に対するモノクロナール抗体の産生についてアッセイする。ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクロナール抗体の結合特異性は、免疫沈降法、またはラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素標識免疫定量法(ELISA)などのインビトロ結合アッセイ法により測定することが好ましい。例えば、このモノクロナール抗体の結合親和性は、スキャチャード解析によって求めることができる(マンソンほか(Munson et al.)、アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.)107:p220(1980年))。
所望の特異性、親和性および/または活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞を特定した後、このクローンは、限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法(ゴーディング(Goding)、「モノクロナール・アンチボディズ:プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice)p59−103(アカデミック・プレス(Academic Press)、1986年)を用いて増殖させることができる。この目的のための好適な培養培地としては、例えば、D−MEM培地もしくはRPMI−1640倍地が挙げられる。さらに、このハイブリドーマ細胞は、動物体内の腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。上記サブクローンにより分泌されたモノクロナール抗体は、通常の免疫グロブリン精製法、例えば、プロテインAセファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析もしくはアフィニティクロマトグラフィーを用いて培養培地、腹水液もしくは血清から適切に分離される
モノクロナール抗体をコードするDNAは、通常の方法により(例えば、このモノクロナール抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)ハイブリドーマ細胞から単離され、配列決定することができる。一旦単離されると、DNAは、発現ベクターに挿入した後、普通なら免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、骨髄腫細胞などの宿主細胞内にトランスフェクションすることにより、この組換え宿主細胞にモノクロナール抗体を合成させることができる。抗体の組換え法による作製については当該分野で公知である。
所望の抗体のアミノ酸配列改変体は、コーディングDNAに適切なヌクレオチドの変更を導入することにより、またはペプチド合成法により作製することができる。このような改変体としては、例えば、その抗体のアミノ酸配列内残基の欠失体、挿入体および/または置換体が挙げられる。最終構築物が所望の特性を有するという前提で、欠失、挿入および置換を任意に組み合わせることにより最終構築物を得ることができる。また、こうしたアミノ酸の変更を行うことにより、グリコシル化部位の数もしくは位置を変えるなど、ヒト化もしくは改変抗体の翻訳後プロセスを変えることもできる。
抗体のアミノ酸配列改変体をコードする核酸分子は当該分野で公知の種々の方法によって調製される。こうした方法としては、(天然のアミノ酸配列改変体の場合)天然原料からの単離、あるいはオリゴヌクレオチド媒介性(もしくは部位特異的)突然変異誘発法、PCR突然変異誘発法、およびその抗体の以前に調製した改変体もしくは非改変型のカセット式突然変異誘発法による調製が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
キメラ抗体もしくはヒト化抗体は元のマウスモノクロナール抗体よりもヒトでの免疫原性が少ないので、これらを用い、アナフィラキシーを生じるリスクをずっと少なくしてヒトを治療することができる。従って、これらの抗体は、ヒトへのインビボ投与を含む治療的用途に好適であると考えられる。
マウスモノクロナール抗体の可変Igドメインをヒトの定常Igドメインに融合させたキメラモノクロナール抗体は、当該分野で公知の標準的な方法を用いて作製することができる(モリソン、S.L.ほか(Morrison,S.L.,et al.)(1984年)「キメラ・ヒト抗体分子;マウス抗原結合ドメインとヒト定常領域ドメイン(Chimeric Human Antibody Molecules;Mouse Antigen Binding Domains with Human Constant Region Domains)」、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Pro.Natl.Acad Sci)USA、81:p6841−6855;およびブーリアンネ、G.L.ほか(Boulianne,G.L.,et al.)、ネイチャー(Nature)312:p643−646(1984年)参照)。一部のキメラモノクロナール抗体はヒトで免疫原性が少ないことが分かっているが、それでもそのマウス可変Igドメインは顕著なヒト抗マウス反応をもたらすことがある。
ヒト化抗体は種々の方法により得ることができ、これらの方法としては、例えば、(1)非ヒト相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワーク領域およびヒト定常領域に移植する方法(当該分野で「CDRグラフティング」によるヒト化と呼ばれている方法)、あるいは(2)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置換によりこれをヒト様表面で「覆う(cloaking)」方法(当該分野で「ベニアリング(veneering)」と呼ばれている方法)が挙げられる。本発明のヒト化抗体は「ヒト化」抗体および「ベニアド(veneered)」抗体の両者を含むことになる。これらの方法については、例えば、ジョーンズほか(Jones et al.)、ネイチャー(Nature)321:p522−525(1986年);モリソンほか(Morrison et al.)、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Pro.Natl.Acad Sci)USA、81:p6851−6855(1984年);モリソン(Morrison)、オイ(Oi)、アドバンシズ・イン・イムノロジー(Adv Immunol)44:p65−92(1988年);フェアホイエルほか(Verhoeyer et al.)、サイエンス(Science)239:p1534−1536(1988年);パドラン(Padlan)、モレキュラー・イムノロジー(Molec Immunol.)28:p489−498(1991年);パドラン(Padlan)、モレキュラー・イムノロジー(Molec Immunol.)31(3):169−217(1994年);およびケットルボロウ、C.A.ほか(Kettleborough,C.A.et al.)、プロテイン・エンジニアリング(Protein Eng.)4(7):p773−83(1991年)に開示され、これらはそれぞれ参考として本明細書に援用される
マウス重鎖および軽鎖可変Igドメインの6つのCDRのうちの1つ以上をヒト可変Igドメインの適切な4つのフレームワーク領域に導入するCDRの移植は、CDRグラフティングとも呼ばれる。この技術(リーチマン、L.ほか(Riechmann,L.,et al.)、ネイチャー(Nature)332:p323(1988年)では、抗原との主要な接触部位であるこのCDRループを支える足場として、この保存されたフレームワーク領域(FR1FR4)を利用する。しかしながら、CDRグラフティングには、これにより元のマウス抗体よりも結合親和性がかなり低いヒト化抗体が生じ得るという欠点がある。何故なら、フレームワーク領域のアミノ酸は抗原の結合に寄与することができるからであり、また、CDRループのアミノ酸は上記2つの可変Igドメインの結合に影響を及ぼすことができるからである。ヒト化モノクロナール抗体の親和性を維持するためには、元のマウス抗体のフレームワーク領域に最もよく似たヒトフレームワーク領域の選択により、また、抗原結合部位のコンピュータモデリングを利用したフレームワークもしくはCDR内の単一アミノ酸の部位特異的突然変異誘発法により、CDRグラフティング技術を改良することができる(例えば、コ、M.S.ほか(Co,M.S.,et al.)(1994年)、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J.Immunol.)152:p2968−2976)。
抗体をヒト化する方法の1つは、非ヒト重鎖配列および非ヒト軽鎖配列をヒト重鎖配列およびヒト軽鎖配列に対して位置合わせし、この位置合わせに基づき、非ヒトフレームワークを選んでヒトフレームワークで置換し、このヒト化配列の立体配座を予測するための分子模型を作成し、元の抗体の立体配座と比較することを含む。このプロセスに続いて、ヒト化配列模型の予測立体配座が元の非ヒト抗体の非ヒトCDRの立体配座にぴったり近づくまで、CDRの構造を乱すCDR領域内残基の復帰突然変異を繰り返す。このようなヒト化抗体は、例えば、Ashwellのレセプターを介して取り込みおよびクリアランスを容易にするためにさらに誘導体化することができる(例えば、参考として本明細書に援用される米国特許第5,530,101号および第5,585,089号参照)。
合理的な設計によりマウスモノクロナール抗体をヒト化した例についてはいくつか報告がある(例えば、2002年7月11日公開の20020091240、WO92/11018号および米国特許第5,693,762号、米国特許第5,776,886号参照)。
突然変異誘発に好適な部位である抗体の特定の残基もしくは領域を同定するための有用な方法は「アラニン走査型突然変異誘発法」と呼ばれ、カニンガム(Cunningham)、ウェルズ(Wells)、サイエンス(Science)244:p1081−1085(1989年)に報告されている。この場合、標的残基のうちの1残基もしくは残基群を同定し(例えば、arg、asp、his、lys、gluなどの荷電残基)、これを中性もしくは負に荷電したアミノ酸(最も好ましくは、アラニンもしくはポリアラニン)で置換することによりこれらのアミノ酸と抗原との相互作用に影響を与える。次いで、こうした置換に対して機能的な感受性を示すこれらのアミノ酸部位を、こうした置換部位に対しさらに、即ち、他の異なるアミノ酸を導入するか、これに置き換えることにより、改良する。従って、アミノ酸配列を変更する部位は予め決めておくが、突然変異自体の性質は前もって決定する必要はない。例えば、所与の部位の突然変異体の性能を解析するためには、標的コドンもしくは領域においてala走査もしくはランダム突然変異誘発を実施し、目的とする活性について、発現された抗体改変体をスクリーニングする。
アミノ酸配列の挿入としては、アミノ末端および/またはカルボキシ末端における、長さが1残基のものから100残基以上を含むポリペプチドの融合、ならびに単数もしくは複数のアミノ酸残基の配列内部への挿入が挙げられる。末端への挿入の例としては、N−末端メチオニル残基を有する抗体、またはエピトープタグに融合させた抗体が挙げられる。抗体分子のその他の挿入改変体としては、抗体の血清半減期を延長させるポリペプチドへの融合体が挙げられる。
別のタイプの改変体はアミノ酸置換改変体である。これら改変体は、抗体分子内の少なくとも1個のアミノ酸残基が除去され、その位置に別の残基が挿入されているものである。超可変もしくはCDR領域またはフレームワーク領域のうちの任意の領域内に置換型の突然変異を誘発させることが企図されている。表1に「好ましい置換」と題して保存的置換を示した。このような置換により生物学的活性に変化が生じる場合には、表1で「代表的な置換」と称し、またはさらにアミノ酸クラスを基準として以下に記載したさらに大きな変更を導入し、得られる生成物をスクリーニングにかけることができる。
(表1)
例示的な好ましい残基置換の原型)
Ala(A)val;leu;ile val Arg(R)lys;gln;asn lys Asn(N)gln;his;asp,lys;gln arg Asp(D)glu;asn glu Cys(C)ser;ala ser Gln(Q)asn;glu asn Glu(E)asp;gln asp Gly(G)ala His(H)asn;gln;lys;arg Ile(I)leu;val;met;ala;leu phe;ノルロイシン Leu(L)ノルロイシン;ile;val;ile met;ala;phe Lys(K)arg;gln;asn arg Met(M)leu;phe;ile leu Phe(F)leu;val;ile;ala;tyr Pro(P)ala Ser(S)thru Thr(T)ser ser Trp(W)tyr;phe tyr Tyr(Y)trp;phe;thr;ser phe Val(V)ile;leu;met;phe;leu ala;ノルロイシン。
抗体の生物学的特性は、(a)置換領域のポリペプチド主鎖の構造、例えば、シートもしくはヘリックス構造、(b)標的部位の分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩を維持することに対する効果が大きく異なる置換基を選択することによって、かなり改良される。天然型の残基は共通の側鎖の特性に基づいて以下のように分類される:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖の配向性に影響を及ぼす残基:gly、pro;および
(6)芳香族性:trp、tyr、phe。
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つの残基を別のクラスの1つの残基で置換するものである。
また、上記ヒト化もしくは改変抗体の適正な立体配座の維持に関与していないシステイン残基は、一般にはセリンで置換することにより、この分子の酸化安定性を向上させ、異常架橋を防止することができる。逆に、システイン結合を抗体に付加することによって(特に、抗体がFv断片などの抗体フラグメントである場合)その安定性を向上させることができる。
親和性成熟(affinity maturation)は、元の抗体のCDR内に置換を有する抗体改変体を作製してスクリーニングし、この元の抗体に対して結合親和性などの生物学的特性が向上した改変体を選択するものである。このような置換型改変体を作製するのに都合のよい方法は、ファージディスプレイを用いる親和性成熟である。簡単に言えば、数箇所の超可変領域の部位(例えば、6〜7部位)を突然変異させて各部位に可能な限りあらゆるアミノ置換を作製する。こうして作製された抗体改変体は、糸状ファージ粒子から、各粒子内に詰め込まれたM13の遺伝子III産物への融合体として、一価型で表示(display)される。次いで、このファージにより表示された改変体を、その生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
アラニン走査突然変異誘発法を行うことにより、抗原結合に大きく寄与している超可変領域の残基を同定することができる。あるいは、もしくはさらに、この抗原−抗体複合体の結晶構造を解析することにより抗体と抗原との接触点を同定することも有益であると考えられる。このような接触残基およびその近傍残基は、本明細書に詳述した技術による置換の候補となる。一旦このような改変体を作製すると、本明細書に記載した方法で改変体のパネルをスクリーニングにかけ、1つ以上の適切なアッセイ法で優れた特性を示す抗体を選び、これをさらに開発することができる。
また、元の抗体に対してグリコシル化パターンを修飾した、例えば、この抗体の炭化水素部分を1つ以上欠失し、および/またはこの抗体に存在しないグリコシル化部位を1つ以上付加した抗体改変体を作製することもできる。
代表的に、抗体のグリコシル化はN−結合またはO−結合のどちらかである。N−結合とは、アスパラギン残基の側鎖に対して炭化水素部分を結合させることを意味する。アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニン(但し、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸)のトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖に炭化水素が酵素的に結合されるための認識配列である。ポリペプチド内にこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が生じる。従って、抗体へのN−結合グリコシル化部位の付加は、そのアミノ酸配列を、これらのトリペプチド配列のうちの1つ以上を含むように変更することにより行うことができる。O−結合グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンもしくはスレオニンに対して糖のN−アセチルガラクトサミン、ガラクトースもしくはキシロースのうちの1種を結合させることを意味するが、5−ヒドロキシプロリンもしくは5−ヒドロキシリジンを用いることもできる。抗体へのO−結合グリコシル化部位の付加は、元の抗体の配列に対して1個以上のセリン残基もしくはスレオニン残基を挿入もしくはこれらで置換することにより行うことができる。
また、M−CSFに対するヒト化抗体もしくはヒト抗体は、内因性免疫グロブリンを産生せず、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するように操作されている形質転換動物を用いて作製することもできる。例えば、WO98/24893号には、内因性の重鎖および軽鎖の遺伝子座が不活化されているため機能的な内因性の免疫グロブリンを産しない、ヒトIg遺伝子座を有する形質転換動物が開示されている。また、WO91/741号には、免疫原に対して免疫反応を行うことができる形質転換した非霊長類哺乳動物宿主であって、その抗体が霊長類の定常領域および/または可変領域を有し、内因性免疫グロブリンをコードする遺伝子座が置換もしくは不活化されている宿主が開示されている。WO96/30498号では、哺乳動物の免疫グロブリン遺伝子座を修飾し、例えば、その定常領域もしくは可変領域の全部もしくは一部分の置換による改変抗体分子の作製を目的としたCre/Loxシステムの使用について開示されている。WO94/02602号には、内因性Ig遺伝子座が不活化されていて、機能的ヒトIg遺伝子座を有する非ヒト哺乳動物宿主が開示されている。米国特許第5,939,598号には、内因性重鎖を欠損し、1つ以上の異種定常領域を含む外来性免疫グロブリン遺伝子座を発現しているトランスジェニックマウスを作製する方法が開示されている。
上述のトランスジェニック動物を用いて、選択した抗原分子に対する免疫反応を起こさせた後、この動物から抗体産生細胞を取り出し、これを用いてヒトモノクロナール抗体を分泌するハイブリドーマを作製することができる。免疫化プロトコル、アジュバントなどは当該分野で公知であり、例えば、WO96/33735号に開示されているトランスジェニックマウスの免疫化に使用されている。この公報には、IL6、IL8、TNFa、ヒトCD4、Lセクレチン、gp39および破傷風毒素を含む種々の抗原分子に対するモノクロナール抗体が開示されている。これらのモノクロナール抗体については、対応するタンパク質の生物学的活性もしくは生理学的効果を阻害もしくは中和する能力を調べることができる。WO96/33735号では、IL−8で免疫化したトランスジェニックマウスの免疫細胞に由来するIL−8に対するモノクロナール抗体が、IL−8により誘導される好中球の機能をブロックしたことが開示されている。また、WO96/34096号および米国特許出願第20030194404号;ならびに米国特許出願第20030031667号には、トランスジェニック動物の免疫化に用いた抗原に対して特異性を有するヒトモノクロナール抗体が開示されている。
また、ジャコボヴッツほか(Jakobovits et al.)、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Pro.Natl.Acad Sci)USA、90:p2251(1993年);ジャコボヴッツほか(Jakobovits et al.)、ネイチャー(Nature)、362:p255−258(1993年);ブルガーマンほか(Bruggermann et al.)、イヤー・イン・イムノロジー(Year in Immuno.)、7:p33(1993年);および米国特許第5,591,669号、米国特許第5,589,369号、米国特許第5,545,807号;および米国特許出願第20020199213号についても参照されたい。米国特許出願第20030092125号には、動物の免疫反応を所望のエピトープに偏向させる方法が開示されている。また、ヒト抗体は、インビトロで活性化したB細胞によっても産生させることができる(米国特許第5,567,610号および第5,229,275号参照)。
組換えヒト抗体遺伝子のレパートリを作製し、コードされている抗体フラグメントを糸状バクテリオファージの表面に表示させる技術の開発により、ヒト抗体を直接作製する手段が得られている。ファージ技術により得られる抗体は、細菌内で抗原結合性断片−通常FvもしくはFab断片−として産生され、従って、エフェクター機能を欠損している。エフェクター機能は次の2つの方法のいずれかによって導入させることができる:上記断片を完全な抗体の形となるよう設計して哺乳動物細胞で発現させるか、エフェクター機能を作動させることができる別の結合部位を有する二重特異性抗体断片の形に設計する。
代表的に、抗体のFd断片(V−C1)および軽鎖(V−C)は、PCRによって別々にクローニングした後、コンビナトリアルファージディスプレイライブラリを用いて無作為に再結合し、これらを特定抗原への結合性から選択することができる。このFab断片は、ファージ表面に、即ち、これをコードしている遺伝子に物理的に結合して発現される。従って、抗原結合によりFabを選択すると、Fabコーディング配列が同時に選択され、その後、これを増幅させることができる。パニングと呼ばれる工程である抗原結合および再増幅を数回繰り返すことによって、抗原に特異的なFabを濃縮し、最終的にこれを単離する。
1994年に、「ガイド選択法(guided selection)」と呼ばれる抗体のヒト化方法が報告された。ガイド選択法は、マウスモノクロナール抗体をヒト化するためにファージディスプレイ技術のを利用するものである(ジェスパー、L.S.ほか(Jespers,L.S.,et al.)、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology)12:p899−903(1994年)参照)。このために、このマウスモノクロナール抗体のFd断片をヒト軽鎖ライブラリと結合させて表示させることができ、次いで、得られたハイブリッドFabライブラリを抗原により選択することができる。これにより、上記マウスFd断片はその選択を誘導する鋳型を提供する。続いて、選択したヒト軽鎖をヒトFd断片ライブラリと結合させる。その結果生じたライブラリを選択することにより、全体としてヒト型のFabが得られる。
ファージディスプレイライブラリからヒト抗体を誘導する方法としては、種々のものが報告されている(例えば、ホ―ヘンブームほか(Hoogenboom et al.)、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)227:p381(1991年);マークスほか(Marks et al.)、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)222:p581−597(1991年);米国特許第5,565,332号および5,573,905号;クラックソン、T.(Clackson,T.)、ウェルズ、J.A.(Wells,J.A.)、TIBTECH、12:p173−184(1994年)参照)。特に、ファージディスプレイライブラリから誘導される抗体のインビトロでの選択および展開(evolution)は強力な手段となっている(バートン、D.R.(Burton,D.R.)、バーバスIII、C.F.(Barbas III,C.F.)、アドバンシズ・イン・イムノロジー(Adv Immunol)57:p191−280(1994年);およびウインター、G.ほか(Winter,G.,et al.)、アニュアル・レビュー・オブ・イムノロジー(Annu Rev Immunol)12:p433−455(1994年);米国特許出願第20020004215号およびWO92/01047号;2003年10月9日付で公開された米国特許出願第20030190317号および米国特許第6,054,287号;米国特許第5,877,293号参照)。
ワトキンズ(Watkins)、「キャプチャ・リフトによるファージ発現抗体ライブラリのスクリーニング(Screening of Phage−Expressed Antibody Libraries by Capture Lift)」分子生物学の方法における、抗体ファージディスプレイ(Methods in Molecular Biology,Antibody Phage Display):メソッズ・アンド・プロトコルズ(Methods and Protocols)178:p187−193、および2003年3月6日公開の米国特許出願第200120030044772号には、キャプチャリフト、即ち、固体支持体への候補結合分子の固定化を含む方法によりファージ発現抗体ライブラリもしくは他の結合分子をスクリーニングする方法が記載されている。
こうした抗体産物は、本明細書の「スクリーニング方法」と題した項に記載したアッセイ法または当該分野で公知の任意の適切なアッセイ法を用いて、MCSFアンタゴニストとしての活性および本発明の治療方法への適合性についてスクリーニングすることができる。
(M−CSFムテイン
さらに、本発明は本発明の方法によるMCSFアンタゴニストとして用いることができるM−CSFムテインを提供する。
本明細書に用いている「断片」とは、完全な状態の天然分子の一部分のことを意味し、例えば、断片ポリペプチドとは、N−末端もしくはC−末端から1個以上のアミノ酸が欠失された天然ポリペプチドの断片である。
ポリペプチドに関して本明細書で用いている「ムテイン」とは、1個以上のアミノ酸が置換、挿入もしくは欠失された完全な状態の天然分子の改変体またはその天然分子の断片の改変体を意味する。このような置換、挿入もしくは欠失は、その分子のN−末端、C−末端または内部に位置することができる。従って、「ムテイン」という用語は、この天然分子の断片をその範囲内に包含する。挿入型のムテインには、N−末端もしくはC−末端における融合体、例えば、半減期を延長させる免疫グロブリンのFc部分への融合体が含まれる。
本発明による好適なムテインは、検索パラメータとしてギャップ挿入時のペナルティを12、ギャップ伸長時のペナルティを1とするアフィンギャップ検索を行うMSPRCHプログラム(オックスフォード・モレキュラー(Oxford Molecular))を用いて実行するスミス−ウォーターマン(Smith−Waterman)の相同性検索アルゴリズム(メソッズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Meth.Mol.Biol.)70:p173−187(1997年))により決定する場合、その天然のポリペプチドに対する配列同一性(相同性)が少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%もしくはそれ以上である。その他の公知の慣行的に用いられる相同性/同一性スキャニングアルゴリズムのプログラムとしては、ピアソン(Pearson)、リップマン(Lipman)、PNAS USA、85:p2444−2448(1988年);リップマン(Lipman)、ピアソン(Pearson)、サイエンス(Science)222:p1435(1985年);デブローほか(Devereaux et al.)ニュークレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)12:p387−395(1984年);またはアルチュールほか(Altschul,et al.)、モレキュラー・バイオロジー(Mol.Biol.)215:p403−410(1990年)に記載のBLASTP、BLASTNもしくはBLASTXアルゴリズムが挙げられる。また、これらのアルゴリズムを使用するコンピータ化プログラムも利用可能であり、例えば、ジェネティクス・コンピューティング・グループ(Genetics Computing Group)(GCG)社、マジソン(Madison)、ウィスコンシン州、米国からGCGパッケージ、バージョン8として市販されているGAP、BESTFIT、BLAST、FASTAおよびTFASTA、ならびにインテレジェネティクス社、マウンテンビュー(Mountain View)、カリフォルニア州によるPC/ジーン(Gene)プログラムのCLUSTALが挙げられるが、これらに限定されるものではない。配列同一性のパーセンテージは、上記プログラムにより指定されたデフォルトパラメータを用いて求めることが望ましい。
本明細書に用いている「修飾」とは、所望の(アゴニストもしくはアンタゴニスト)活性が維持される限りにおける、グリコシル化、リン酸化、(ポリエチレングリコールなどの)ポリマー結合または他の外来性部分の付加などによる天然ポリペプチド、断片もしくはムテインの任意の修飾を意味する。
その全体が本明細書に参考として援用される米国特許第6,025,146号およびコース(Koths)、モレキュラー・リプロダクション・アンド・デベロップメント(Mol.Reprod.Dev.)1997年1月;46(1):31−38には、M−CSF単独およびM−CSFとMCSF−Rとの複合体の結晶化について記載されており、M−CSFの三次元構造およびレセプター結合に関与する残基の特徴が明らかにされている。また、米国特許第6,025,146号には、構造情報に基づいてM−CSF内の候補アミノ酸置換を選択する方法が開示されている。図1は、切断されたダイマーM−CSFのジスルフィド結合を示すトポロジーダイアグラムであり;図2は、10残基目ごとに標識し、点線で非結晶対称軸を示したC−アルファ主鎖のステレオダイアグラムである。図1に示したこの形のM−CSFの全体的なトポロジーは、4本型ヘリックス束の多くにより一般的に見られる上方−下方−上方−下方の連結性とは異なり、これらのヘリックスが上方−上方−下方−下方に伸びている逆平行性4本型アルファヘリックス束のトポロジーである。ヘリックスAとヘリックスBとは長い交差結合によって連結されており、ヘリックスCとDとの間にも同様な結合が存在する。このジスルフィド結合のダイマー型では、束同士は末端間で連結され、極めて平坦な長い構造(平均寸法85×35×25Å)を形成する。各モノマー内には3つの分子内ジスルフィド結合(Cys7−Cys90、Cys48−Cys139、Cys102−Cys146)があり、これらは全てその分子の遠位端にある。鎖間ジスルフィド結合の1つ(Cys31-Cys31)は、図2に示したように、非結晶の2回対称軸が通過するダイマー界面に位置している。突然変異実験から、この形のM−CSFのシステイン残基の全てが完全な生物学的活性を発揮するのに必要な場合があることが分かる。本明細書に開示したこの構造から、これらの役割はレセプター認識に関連したものというよりも、主として構造的なものであることが示唆される。米国特許第6,025,146号では、その配列のアミノ酸残基のアルファ炭素の位置により同定された短縮組換えM−CSFαダイマーの三次元構造が開示されている。
レセプター結合性相互作用の特異性にはヘリックスA、ヘリックスCおよびヘリックスDの特定の残基が関与していると考えられる。M−CSFβはシステイン157および/または159を含む鎖間ジスルフィド結合を有するので、M−CSFのC−末端領域は、その構造の「後部」から伸びて膜結合型M−CSFに対する可変長の「つなぎ鎖」を提供する。従って、M−CSFの「前部」、即ちレセプター結合領域は、上記分子の反対側にあり、天然M−CSFの約626、7190および110130番目残基をそれぞれ含むヘリックスA、ヘリックスCおよびヘリックスD内もしくは近傍の溶媒接触可能残基からなる。側鎖とレセプターとの相互作用を増強もしくは低減させるために部位特異的突然変異誘発法により上記領域の溶媒接触可能残基を変更すると、M−CSFアゴニストもしくはアンタゴニストを得ることができる。トリペプチドgly−x−gly内にある場合の接触可能アミノ酸の表面積の正常化を基準とすると、溶媒接触可能表面積が約0.25超、好ましくは約0.4超の残基が好適である(カブシュ、W.ほか(Kabsch,W.et al.)、バイオポリマーズ(Biopolymers)22:p2577(1983年))。モノマーの相対的配向を維持し、タンパク質の折り畳み過程を妨げないようにするために、ダイマー界面などのそのタンパク質の他の部分と相互作用しない残基を選ぶことが好ましい。必要に応じて考慮すべき別の点は、ヒトM−CSFと、ヒトM−CSFレセプターを認識しないマウスM−CSFとの間で保存されていない残基を選択することである。非保存的アミノ酸と置換するためには、MCSF−R残基との水素結合および/または疎水性相互作用を阻害するような候補アミノ酸を選択することが好ましい。例えば、1つ以上のヒスチジンを同様なサイズの非水素供与アミノ酸に変更することによって、レセプター結合能が変化したM−CSFを得ることができる。好適な置換用アミノ酸としては、H15、Q79、R86、E115、E41、K93、D99、L55、S18、Q20、I75、V78、L85、D69、N70、H9、N63および T34が挙げられるが、これらに限定されるものではない。レセプターシグナル伝達に重要なM−CSF残基は、M−CSFの不連続な領域で構成されていると考えられている。M−CSFをベースとしたタンパク様の薬剤の投与によると考えられる抗体形成の可能性をできるだけ少なくするためには、可能な限り、元のM−CSFの溶媒接触可能残基を保持させて(その天然分子に類似させる)ことが望ましい。
N−末端/Aヘリックス領域のアミノ酸H15およびH9を突然変異させると、生物学的活性およびMCSF−R結合能のかなり低いムテインが生じる。この結果から、生物物活性の低下はレセプター結合親和性の低減によるものであり、従って、これらのヒスチジンアミノ酸はM−CSFレセプター結合親和性に重要な接点であり、十分なレセプター結合能が所望される場合には変えないでそのままにしておくべきであることが示唆された。また、Y6、S13などの近傍の溶媒接触可能残基もM−CSFレセプターとの接点残基となることができる。M−CSFの二重突然変異体(Q20A、V78K)を構築してヘリックスAおよびCの中心部分の溶媒接触可能残基の重要性を調べたところ、この二重ムテイン生物学的活性はわずかに(8〜10分の1に)低下し、レセプター結合活性も同様に低下した。残基Q17、R21、E115およびE119を突然変異させると、目的の領域の溶媒接触可能アミノ酸の側鎖の特性が変化したが、生物学的比活性に影響はなく、このことから、アンタゴニスト活性を持たせるよう設計されるムテインではこれらの残基を変更する必要のないことが示唆された。
一実施形態として、本発明では、レセプター結合に関与するヘリックスAおよび/またはヘリックスCおよび/またはヘリックスDの残基(例えば、626、7190および/または110130番目アミノ酸)を非保存的に突然変異させたM−CSFムテインが企図されている。このようなムテインは、ヘリックスA、ヘリックスCもしくはヘリックスD内の天然配列に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%もしくは90%の類似性を保持している(即ち、アミノ酸が同一であるか、同様な特性を有する)が、このポリペプチドの残部の天然配列に対する類似性がより高く、例えば、少なくとも95%、98%もしくは99%の類似性を有することが好ましい。さらに、このレセプター結合部位の三次元構造を支える残基も非保存的に突然変異させることができる。
別の実施形態として、上記M−CSFムテインは、モノマー型のM−CSFである。ダイマー型のM−CSFは生物学的活性型であり、モノマー型のM−CSFには、一般には活性がない。モノマー間のジスルフィド結合はCys31−Cys31鎖間結合により生じると考えられる。従って、モノマー型のM−CSFはアンタゴニストとして用いるのに適したものとすることができることが企図されている。このような型としては、Cys31および/または他のシステインのシステイン欠失および/またはシステイン置換(例えば、システインのアラニンへの置換)を含むムテイン、あるいはシステイン、特にCys31がジスルフィド結合に利用できないように化学的に修飾されたムテインが挙げられる。
さらに別の実施形態として、上記M−CSFのムテインは、ヘリックスA、ヘリックスCもしくはヘリックスDのうちの1つ以上を含み、あるいはレセプター結合に関与するこれらの部分を単独で、または適正な三次元構造でこれらの断片を表示させることを可能にする他のポリペプチドとの融合体の形で含む。
任意の所望の保存的および/または非保存的ムテインを含むムテインは、組換えによる産生、化学的合成などの、当該分野で公知の技術を用いて、容易に作製することができる。
保存的置換、特にリガンド−レセプター結合に直接関与する領域外における置換が、M−CSFムテイン(もしくはM−CSFRムテイン)の結合特性を大きく変化させるとは考えられない。アミノ酸は、物理的特性、ならびにタンパク質の二次構造および三次構造への寄与度によって分類することができる。保存的置換とは、あるアミノ酸で同様な特性を有する別のアミノ酸を置換することと、当該分野では認識されている。例示的な保存的置換についてすぐ下の表2(199年3月13日公開のWO97/09433号p10(1996年9月6日出願のPCT/GB96/02197)より)に示す
(表2)
(保存的置換I)
側鎖
特性 アミノ酸
脂肪族
非極性 GAPILV
極性−非荷電 CSTMNQ
極性−荷電 DEKR
芳香族 HFWY
その他 NQDE
あるいは、保存的アミノ酸は、すぐ下の表3に示したように、レーニンガー(Lehninger)(バイオケミストリー(Biochemistry)第2版;ワース出版社(Worth Publishers,Inc.)NY:NY(1975年)、p71−77)に記載の方法で、分類することができる。
(表3)
(保存的置換II)
側鎖
特性 アミノ酸
非極性(疎水性)
A.脂肪族 ALIVP
B.芳香族 FW
C.硫黄含有 M
D.ボーダーライン G
非荷電−極性
A.ヒドロキシル STY
B.アミド NQ
C.スルフヒドリル
D.ボーダーライン G
陽性荷電(塩基性) KRH
陰性荷電(酸性) DE
さらに別の選択肢として、例示的な保存的置換をすぐ下の表4に示す。
(表4)
(保存的置換III)
元の残基 例示的置換
Ala(A) Val、Leu、Ile
Arg(R) Lys、Gln、Asn
Asn(N) Gln、His、Lys、Arg
Asp(D) Glu
Cys(C) Ser
Gln(Q) Asn
Glu(E) Asp
His(H) Asn、Gln、Lys、Arg
Ile(I) Leu、Val、Met、Ala、Phe
Leu(L) Ile、Val、Met、Ala、Phe
Lys(K) Arg、Gln、Asn
Met(M) Leu、Phe、Ile
Phe(F) Leu、Val、Ile、Ala
Pro(P) Gly
Ser(S) Thr
Thr(T) Ser
Trp(W) Tyr
Tyr(Y) Trp、Phe、Thr、Ser
Val(V) Ile、Leu、Met、Phe、Ala
M−CSFをコードしているDNA配列が利用できることにより、種々の発現ベクターを用いて所望のポリペプチドを作製することが可能になる。発現ベクターの構築および適切なDNA配列からの組換え法による作製は当該分野で公知の方法を用いて行われる。これらの技術および種々の他の技術は、一般に、サンブルックほか(Sambrook et al.)、「モレキュラー・クローニング−−ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning−−A Laboratory Manual)」コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク(1989年)およびクリーグラー、M.(Kriegler,M.)、「ジーン・トランスファー・アンド・エクスプレッション、ア・ラボラトリー・マニュアル(Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual)」ストックトン・プレス社(Stockton Press)、ニューヨーク(1990年)(これら両文献とも本明細書に参考として援用される)に記載の方法に準じて実施される。
M−CSFの一次配列に対する特定の修飾は、公知の組換えDNA技術によって、所望の構造(例えば、M−CSFのレセプター結合能)を損なうことなく、そのDNA配列によりコードされているアミノ酸に対して欠失、付加もしくは変更を行うことによって実施することができる。さらに、個々のアミノ酸を置換、もしくは酸化、還元その他の修飾法により修飾することができ、このポリペプチドを切断して活性のある結合部位および構造情報を保持する断片を得ることができることは、当業者であれば理解するであろう。このような置換および変更を行うことにより、「成熟M−CSFα(配列番号:2)ポリペプチド、M−CSFβ(配列番号:4)ポリペプチドおよびM−CSFγ(配列番号:6)ポリペプチドと実質的に同じアミノ酸配列を有する」ポリペプチドの定義に該当するアミノ酸配列のポリペプチドが得られる。
ポリペプチドは、当該分野で公知の標準的な液相ペプチド合成技術もしくは固相ペプチド合成技術を用いて合成することができる。液相合成では、多種多様なカップリング方法および保護基を用いることができる(グロス(Gross)、マイエンホファー(Meienhofer)編「ザ・ペプタイズ:アナリシス、シンセシス、バイオロジー(The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology)」第1−4巻(アカデミック・プレス社(Academic Press)、1979年);ボダンスキー(Bodansky)、ボダンスキー(Bodansky)「ザ・プラクティス・オブ・ペプタイド・シンセシス(The Practice of Peptide Synthesis)」第2版(スプリンガー・フェアラーク社(Springer Verlag)、1994年)参照)。さらに、中間精製およびリニアスケールアップも可能である。液相合成では主鎖および側鎖保護基、および活性化方法、ならびにラセミ化を極力抑えるためのセグメントの選択を考慮することが必要となることは、当業者であれば理解するであろう。
一般に、固相ペプチド合成は、保護アミノ酸を用いて樹脂支持体上で直鎖状ペプチド鎖を組み立てる、メリフィールドほか(Merrifield et al.)、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)85:p2149、1963年に記載の方法に準じて実施することができる。通常、固相ペプチド合成ではBocもしくはFmoc法を用いる。Boc法では1%架橋ポリスチレン樹脂を用いる。α−アミノ官能基の標準的な保護基はtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)基である。この基は、25%トリフルオロ酢酸(TFA)などの強酸の希釈液を用いて除去することができる。次のBoc−アミノ酸は、通常、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いてそのアミノアシル樹脂にカップリングさせる。組み立てが完了した後、このペプチド−樹脂を無水HFで処理してベンジルエステル結合を切断し、遊離ペプチドを放出させる。通常、側鎖官能基は、合成過程でベンジル由来封鎖基により封鎖するが、これもHFによって切断することができる。次いで、適切な溶媒を用いて樹脂から遊離ペプチドを抽出し、これを精製して特性を決定する。新規に合成したペプチドは、例えば、ゲル濾過、HPLC、分配クロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーによって精製することができ、その後、例えば、質量分析もしくはアミノ酸配列の解析によって特性を決定することができる。Boc法では、ベンズヒドリルアミンもしくはメチルベンズヒドリルアミン樹脂を用いてC−末端アミド化ペプチドを得ることができ、これをHFで切断することにより直接ペプチドアミドが得られる。9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)を使用する別の方法では、側鎖保護基およびペプチド−樹脂結合をN−α−Fmoc基の切断に使用する第二級アミンに対して完全に安定化することができる種々の試薬を用いる。側鎖保護およびペプチド−樹脂結合は温和な酸分解により切断される。メリフィールド(Merrifield)の樹脂は、繰り返し塩基と接触すると、Fmoc化学反応に不適切なものになるので、この樹脂にp−アルコキシベンジルエステルを結合させたものが一般に使用される。脱保護および切断は、通常、TFAを用いて達成される。N−末端のアセチル化は、最終のペプチドを樹脂からの切断の前に無水酢酸と反応させることによって達成することができる。C−アミド化は、メチルベンズヒドリルアミン樹脂などの適切な樹脂を用い、Boc法により達成される。
一般に、M−CSFポリペプチドをコードする遺伝子の修飾は、部位特異的突然変異誘発法などの種々の公知の技術により容易に達成することができる(ギルマン(Gillman)、スミス(Smith)、ジーン(Gene)8:p81−97(1979年)およびロバーツ、S.ほか(Roberts,S.et al.)、ネイチャー(Nature)328:p731−734(1987年)および米国特許第5,032,676号参照。これらは全て参考として本明細書に援用されている)。修飾の結果の多くは、適切なアッセイ法で所望の特性についてスクリーニングすることにより評価される。例えば、このポリペプチドのM−CSFレセプター結合特性の変化については、適切な標準ポリペプチドを用いる競合アッセイにより、または参考として本明細書に援用されている米国特許第4,847,201号に記載のバイオアッセイにより検出することができる。
本発明の挿入型改変体は、M−CSFの所定の部位に1つ以上のアミノ酸残基を導入したものである。例えば、挿入型改変体は、そのサブユニットのアミノ末端もしくはカルボキシル末端への異種タンパク質もしくは異種ポリペプチドの融合体とすることができる。置換型改変体は、少なくとも1つの残基を除去してその位置に別の残基を挿入したものである。非天然型アミノ酸(即ち、天然タンパク質に通常存在しないアミノ酸)および等比体積のアナログ(アミノ酸に限らない)も本発明での使用に適している。好適な置換の例としては、例えば、Glu−>Asp、Ser−>Cys、およびCys−>Ser、His−>アラニンなどが当該分野で公知である。別の種類の改変体に、M−CSFから1つ以上のアミノ酸残基が除去されていることを特徴とする欠失型改変体がある。
本発明の他の改変体は、天然タンパク質のアミノ酸の化学的修飾(例えば、ヒスチジン残基を修飾するジエチルピロカーボネート処理)によって作製することができる。特定のアミノ酸側鎖に特異的な好ましい化学的修飾も好ましい。また、特異性は、他の側鎖を、保護すべき側鎖に対する抗体で封鎖することによって得ることができる。化学的修飾としては、酸化、還元、アミド化、脱アミド、または多糖類もしくはポリエチレングリコールのようなかさ高い基による置換などの反応が挙げられる(例えば、いずれも参考として本明細書に援用される米国特許第4,179,337号およびWO91/21029号参照)。
例示的な修飾としては、コハク酸その他のカルボン酸の無水物との反応によるリジニルおよびアミノ末端残基の修飾が挙げられる。これらの物質による修飾は、リジニル残基の電荷を逆転させる効果がある。アミノ含有残基を修飾するためのその他の好適な試薬としては、メチルピコリンイミデート(methyl picolinimidate);ピリドキサールリン酸;ピリドキサールクロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O−メチルイソ尿素,2,4−ペンタジオンなどのイミドエステル、およびグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応、ならびにポリエチレングリコールその他のかさ高い置換基のN−ヒドロキシスクシンアミドエステルが挙げられる。
アルギニル残基は、フェニルグリオキサール,2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオンおよびニンヒドリンを含むいくつかの試薬との反応によって修飾することができる。アルギニン残基の修飾では、グアニジン官能基のpKが高いため、アルカリ性条件で反応を行う必要がある。さらに、こうした試薬は、リジン基およびアルギニンイプシロン−アミノ基と反応させることができる。
また、チロシル残基は、特定の目的でスペクトル標識をチロシル残基に導入することにより修飾することができ、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンの反応によってそれぞれO−アセチルチロシル種および3−ニトロ誘導体を形成する。また、125Iもしくは131Iを用いてチロシル残基をヨウ化することにより、ラジオイムノアッセイ用標識タンパク質を調製することもできる。
カルボキシル側鎖(アスパルチルもしくはグルタミル)は、カルボジイミド(R−−N.dbd.C.dbd.N−−R.sup.1)と反応させることにより選択的に修飾することができる;但し、RおよびRは、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミドもしくは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドなどの異なるアルキル基である。さらに、アスパルチル残基およびグルタミル残基は、アンモニウムイオンと反応させることによりアスパラギニル残基およびグルタミニル残基に変換される。
逆に、グルタミニル残基およびアスパラギニル残基は、温和な酸性条件下でそれぞれ対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基に脱アミド化することができる。これらの残基のいずれのタイプも本発明の範囲に包含される。
その他の修飾としては、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリル残基もしくはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン側鎖、アルギニン側鎖およびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化(T.E.クライトン(T.E.Creighton)、プロテインズ:ストラクチャー・アンド・モレキュラー・プロパティズ(Proteins:Structure and Molecular Properties)、W.H.フリーマン社(W.H.Freeman & Co.)、サンフランシスコ、p79−86(1983年))、N−末端アミンのアセチル化、ならびに任意のC−末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
M−CSFムテインの天然M−CSFタンパク質に対する類似性を調べるためにはいくつかの方法を用いることができる。例えば、パーセント相同性は、比較するべき配列内の同一アミノ酸残基と一直線に並んでいる2つの配列のうちの短い方の配列のアミノ酸残基のパーセンテージとして計算され、この時、アラインメントを最大化するために100アミノ酸の長さにつき4つのギャップを導入することができる(参考として本明細書に援用されるデイホフ(Dayhoff)、「アトラス・オブ・プロテイン・シーケンス・アンド・ストラクチャー(Atlas of Protein Sequence and Structure)」第5巻、p124、ナショナル・バイオケミカル・リサーチ・ファウンデーション(National Biochemical Research Foundation)、ワシントンD.C.(1972年)参照)。また、配列比較のためのポリペプチドの配列アラインメントは、種々の多重アラインメント・サーバーを用いて実施することができ、これらの多くは、現在インターネット上から入手可能であり、例えば、Clustal W、MAP、PIMA、Block Maker、MSA、MEMEおよびMatch−Boxがある。ポリペプチド(およびポリヌクレオチド)の配列アラインメントにはClustal W(ヒギンスほか(Higgins et al.)、ジーン(Gene)(1988年)73:p237−244;ヒギンスほか(Higgins et al.)、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Meth.Enzymol.)(1996年)226:p383−402)を用いることが望ましい。同様に、プログラムBLASTPはタンパク質データベースに対してアミノ酸検索(query)配列を比較するものであり、また、TBLASTNは、6種の読み枠(両鎖)の全てに動的に翻訳されたヌクレオチド配列データベースに対してタンパク質検索(query)配列を比較するもので、本発明に用いることができる。また、2つのアミノ酸配列が実質的に相同性(即ち、同様もしくは同一)であるかどうかは、ピアソンほか(Pearson et al.)、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Pro.Natl.Acad Sci)USA、85:p2444−2448(1988年)によるFASTAサーチに基づいて決定することもできる。
同一性および/または類似性を決定するための方法は、調べる配列間の整合性を最大化するように設計されていることが特に好ましい。同一性および類似性を決定する方法は、入手可能な公開コンピュータプログラム(例えば、前述のプログラムなど)として体系化されている。2配列間の同一性および類似性を決定する好適なコンピュータプログラム方法としては、GAP(デブローほか(Devereux et al.)、ニュークレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research)(1984年)12(1):p387;ジェネティクス・コンピュータ・グループ・オブ・ウィスコンシン(Genetics Computer Group,University of Wisconsin)、マジソン(Madison)、WI)、BLASTP、BLASTNおよびFASTA(アルチュールほか(Altschul,et al.)、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Molec.Biol.)(1990年)215:p403−410)を含むGCGプログラムパッケージが挙げられるが、これに限定されるものではない。BLAST Xプログラムは全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)その他の関係先(アルチュールほか(Altschul,et al.)、BLASTマニュアル、NCB NLM NIHベセズダ(Bethesda)、MD 20894;アルチュールほか(Altschul,et al.)、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)(1990年)215:p403−410)から公開されている。また、よく知られているスミス・ウォーターマン(Smith Waterman)アルゴリズムも同一性の決定に用いることができる。GAPプログラムを用いてポリヌクレオチド配列を比較する際、以下のデフォルトパラメータが好ましい:比較行列:一致=+10、不一致=0およびギャップペナルティ50、ギャップ長ペナルティ3(ニードルマンほか(Needleman et al.)、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)(1970年)48:p443−453)。
また、タンパク質間の関連性は、これらをコードしている核酸の関連性によって特徴付けることができる。ポリヌクレオチド配列の同一性および/または類似性を決定する方法は前述のとおりである。さらに、中程度もしくは高度にストリンジェントな条件下でハイブリッド形成能を調べることによりポリヌクレオチド配列の類似性を決定する方法は、以下のように決定することができる。例示的な中等度にストリンジェントなハイブリダイゼーション件は以下、50%ホルムアミド、1%SDS、1M NaCl、10%硫酸デキストランを含むハイブリダイゼーション溶液中42℃でのハイブリダイゼーション、ならびにその後の0.1xSSCおよび1%SDSを含む洗浄溶液による60℃30分間での2度の洗浄である。高度にストリンジェントな条件としては、0.1xSSCおよび1%SDSを含む洗浄溶液による68℃での洗浄が挙げられる。当該分野で報告されているように(オースベルほか(Ausubel,et al.)編「プロトコルズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Protocols in Molecular Biology)」ジョンワイリー&サンズ社(John Wiley & Sons)(1994年)、p6.0.2−6.4.10)温度および緩衝液、もしくは塩濃度を変更することにより同等なストリンジェンシーの条件を得ることができることは、当該分野では理解されるハイブリダーゼーション条件の変更は、経験的に決定することができ、またはプローブのグアノシン/シトシン(GC)塩基対の長さおよびパーセンテージに基づいて正確に計算することができる。ハイブリダイゼーション条件は、サンブルックほか(Sambrook et al.)編、「モレキュラー・クローニング−:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning−−A Laboratory Manual)」コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press):コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク(1989年)、p9.47−9.51に記載の方法により、計算することができる。
本発明による例示的なM−CSFR断片は、M−CSF/レセプター結合に関与しているドメイン(ドメイン1、2および3と考えられている)の1つ以上、もしくは2つ以上を含むことができる。好適なM−CSFR断片は、M−CSFRのドメイン1、2および3のうちの3つ全てを含む。このような断片もしくはM−CSFRの細胞外ドメイン全体に対する別の突然変異誘発体および/または改変体も企図されており、M−CSFムテインの項で前述した方法により作製することができる。
(M−CSFR抗体)
また、本発明は、本発明の方法によるMCSFアンタゴニストとして用いることができるM−CSFRに対する抗体を提供する。
M−CSFR(配列番号:8)は、5つの細胞外免疫グロブリン様ドメイン(このうちドメイン13はリガンド−レセプター結合に関与していると考えられている)、膜貫通ドメインおよび細胞内分断Src関連チロシンキナーゼドメインを有する膜貫通分子である。配列番号:8に関しては、上記ドメインは、以下の位置にある:Igドメイン1:27番目から102番目のアミノ酸;Igドメイン2:112番目から196番目のアミノ酸;Igドメイン3:215番目から285番目のアミノ酸;Igドメイン4:308番目から399番目のアミノ酸;Igドメイン5:410番目から492番目のアミノ酸;膜貫通ドメイン:515番目から537番目のアミノ酸;およびキナーゼドメイン:582番目から910番目のアミノ酸。「代表的な」免疫グロブリン様ドメインは、ループ構造を含み、この構造は、通常、各ループの末端の2個のシステイン間のジスルフィド結合によって固定されている。M−CSF−Rでは、これらのIg様ループを形成するシステインは、以下のアミノ酸の位置にある:ドメイン1:42番目、84番目;ドメイン2:127番目、177番目;ドメイン3:224番目、278番目;ドメイン4:関与のシンテインなし;ドメイン5:419番目、485番目。
M−CSFRの完全な状態の細胞外部分、もしくは抗原性を保持しているその任意の断片、例えば、上記Ig様ループのうちの1つ以上は、天然のレセプターに結合する抗体を産生させるのに用いることができる。ポリクロナール抗体、モノクロナール抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、完全なヒト抗体およびこれらの抗原結合性断片は、M−CSFに対する抗体について上述したような方法で作製することができる。これらの抗体産物は、本明細書の「スクリーニング方法」と題する項に記載したアッセイ法もしくは当該分野で公知の任意の適切なアッセイ法を用いて、M−CSFRアンタゴニストとしての活性、および本発明の治療方法に対する適合性についてスクリーニングすることができる。
(可溶性M−CSFR)
さらに、本発明は、本発明の方法によるMCSFアンタゴニストとして用いることができるM−CSFRムテインを提供する。
インビボでのM−CSFの生物学的機能は、c−fms遺伝子産物とも呼ばれるM−CSFレセプターの結合および活性化を介して生じる。配列番号:8の20番目から511番目のアミノ酸に相当する組換えヒト可溶性M−CSFレセプター(rhsM−CSFR)(クーセンス、L.ほか(Coussens,L et al.)、ネイチャー(Nature)320:p277(1986年)は、M−CSFタンパク質レセプター結合能を調べるためのインビトロアッセイ試薬として用いられた。可溶性型の膜貫通レセプターを作製するために、バキュロウイルス/昆虫細胞の組換え発現系を用いてヒトM−CSFレセプターの細胞外ドメインのみの発現が行われた。三次もしくは四次構造に悪影響を与えないでこの可溶性レセプターを精製するために、下記のように、非変性(non−denaturing)クロマトグラフィー法が選択された。この組換えレセプターを精製するには他の選択肢もある。このレセプターの適切な抗体もしくはリガンドが利用可能な場合にはアフィニティークロマトグラフィーを用いることができる。また、この組換えレセプターのC−末端、即ち、KT3抗体認識配列に「標識(tag)」を付加し、抗−標識抗体、即ち、KT3、カラムにより精製してこれをアフィニティークロマトグラフィーに使用することができる。rhsM−CSFRがグリコシル化される発現系では、特定の糖タンパク質を濃縮するのにレクチンクロマトグラフィーを用いることができる。
前述のIg様ループは、レセプターの細胞外ドメイン内に1つ以上あれば、M−CSFとM−CSFRとの相互作用を阻害するのに十分であると考えられる。従って、M−CSFR細胞外ドメインの断片およびそのムテインは、当該分野で公知の組換えもしくは化学的合成手段を用いて容易に作製することができる。得られた産物は、本明細書の「スクリーニング方法」と題する項に記載したアッセイ法もしくは当該分野で公知の任意の適切なアッセイ法を用いて、M−CSFRアンタゴニストとしての活性、および本発明の治療方法に対する適合性についてスクリーニングすることができる。
(遺伝子治療)
治療用タンパク質の適切な細胞への送達は、物理的DNA移送方法(例えば、リポソームもしくは化学的処理)の使用、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスもしくはレトロウイルス)の使用を含む当該分野で公知の任意の適切な方法を用いることにより、エキソビボインサイチュもしくはインビボによる遺伝子治療を介して行うことができる。例えば、インビボ治療では、所望のタンパク質をコードしている核酸は、単独で、またはベクター、リポソームもしくは沈殿物との併用で被験体に直接注射することができ、また、一部の実施形態として、このタンパク質化合物の発現が所望される部位に注射することができる。エキソビボ治療では、被験体の細胞を取り出し、上記核酸をこの細胞に導入し、この改変細胞を被験体直接、もしくは、例えば、この患者体内に埋め込む多孔質膜内に封入して、戻す。例えば、米国特許第4,892,538号および第5,283,187号を参照されたい。生細胞に核酸を導入するには種々の技術が利用できる。利用可能な技術は、核酸をインビトロで培養細胞内に移入させるのか、意図される宿主の細胞内にインビボで移入させるのかによって異なる。インビトロで哺乳動物細胞内に核酸を移入するのに適した技術としては、リポソームの利用、電気穿孔法、微量注入法、細胞融合、DEAE−デキストランおよびリン酸カルシウム沈殿が挙げられる。核酸のエキソビボでの送達によく用いられるベクターはレトロウイルスである。
インビボでのその他の核酸移入技術としては、(アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス、アデノ関連ウイルスなどの)ウイルスベクターによるトランスフェクション、および脂質利用システムが挙げられる。核酸およびトランスフェクション剤は、必要に応じて微粒子と結合させる。例示的なトランスフェクション剤としては、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、四級アンモニウム両親媒性化合物DOTMA(リポフェクチンとしてGIBCO−BRLから市販されている(ジオレオイルオキシプロピル)トリメチルアンモニウムブロミド)(フェルグナーほか(Felgner et al.)、(1987年)プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Pro.Natl.Acad Sci)USA、84:p7413−7417;マローンほか(Malone et al.)、(1989年)プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Pro.Natl.Acad Sci)USA、86:p6077−6081);ペンダントトリメチルアンモニウム頭部を有する親油性グルタミン酸ジエステル(イトーほか(Ito et al.)(1990年)バイオキミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ(Biochem.Biophys.Acta)1023:p124−132);陽イオン性脂質ジオクタデシルアミド−グリシルスペルミン(DOGS、トランスフェクタム(Transfectam)、プロメガ社(Promega))およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミルスペルミン(DPPES)(J.P.ベーア(J.P.Behr)(1986年)テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Lett.)27:p5861−5864;J.P.ベーア(J.P.Behr)(1989年)プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Pro.Natl.Acad Sci)USA、86:p6982−6986)などの代謝性親(parent)脂質;代謝性四級アンモニウム塩(DOTB、N−(1−[2,3−ジオレオイルオキシ]プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルサルフェート(DOTAP)(ベーリンガー・マンハイム社(Boehringer Mannheim)、ポリエチレンイミン(PEI)、ジオレオイルエステル、ChoTB、ChoSC、DOSC)(レベンティスほか(Leventis et al.)(1990年)バイオキミカ・インターナショナル(Biochim.Inter.)22:p235−241);3β[N−(N’−N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)/3β[N−(N’−N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロールDC−Cholの1対1混合物(ガオほか(Gao et al.)(1991年)バイオキミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ(Biochem.Biophys.Acta)1065:p8−14)、スペルミン、スペルミジン、リポポリアミン(ベーアほか(Behr et al.)バイオコンジュゲート・ケミストリー(Bioconjugate Chem)、1994年、5:p382−389)、親油性ポリリジン(LPLL)(ジョーほか(Zhou et al.)(1991年)バイオキミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ(Biochem.Biophys.Acta)939:p8−18)、[[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)クレ−ソキシ]エトキシ]エチル]ジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド(DEBDAヒドロキシド)と過剰のホスファチジルコリン/コレステロールとの併用(バラスほか(Ballas et al.)、(1998年)バイオキミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ(Biochem.Biophys.Acta)939:p8−18)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)/DOPE混合物(ピンナドゥウェジほか(Pinnaduwage et al.)、(1989年)バイオキミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ(Biochem.Biophys.Acta)985:p33−37)、DOPE、CTAB、DEBDA、ジドデシルアンモニウムブロミド(DDAB)およびステアリルアミンとグルタミン酸との親油性ジエステルとホスファチジルエタノールアミンとの混合物(ローズほか(Rose et al.)、(1991年)バイオテクニーク(Biotechnique)10:p520−525)、DDAB/DOPE(トランスフェクトACE(TransfectACE)、GIBCO BRL社)、ならびにオリゴガラクトース含有脂質が挙げられる。移入効率を増大させる例示的なトランスフェクション増強剤としては、例えば、DEAE−デキストラン、ポリブレン、リソソーム破壊ペプチド(オオモリ、N.I.ほか(Ohmori N I et al.)、バイオケミストリー・バイオフィジックス・リサーチ・コミュニケーション(Biochem.Biophys.Res.Commun.)1997年6月27日号、235(3):p726−9)、コンドロイタン系プロテオグリカン、硫酸化プロテオグリカン、ポリエチレンイミン、ポリリジン(ポラード、H.ほか(Pollard H et al.)ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、1998年、273(13):p7507−11)、インテグリン結合性ペプチドCYGGRGDTP、直鎖デキストラン・ノナサッカライド、グリセロール、オリゴヌクレオチドの3’−末端ヌクレオシド間結合に繋がれたコレステリル基(レッツィンガー、R.L.(Letsinger,R.L.)、1989年、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Proc.Natl.Acad Sci)USA、86:(17):p6533−6)、リゾホスファチド、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、および1−オレオイルリゾホスファチジルコリンが挙げられる。
場合によっては、核酸含有ベクターを標的細胞へ誘導する物質を用いて核酸を送達することが望ましいことがある。このような「ターゲティング」分子としては、標的細胞の細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体、もしくは標的細胞上のレセプターのリガンドが挙げられる。リポソームを用いる場合には、エンドサイトーシスと関連した細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質を標的化および/または取り込み促進のために用いることができる。このようなタンパク質の例としては、特定の細胞に指向性のキャプシドタンパク質およびその断片、細胞分裂(cycling)中に内在化を受けるタンパク質の抗体、ならびに細胞内局在を標的とし、細胞内半減期を増大させるタンパク質が挙げられる。別の実施形態として、レセプター媒介性エンドサイトーシスを利用することができる。このような方法は、例えば、ウーほか(Wu et al.)、1987年、もしくはワーグナーほか(Wagner et al.)、1990年に記載されている。現在知られている遺伝子マーキングおよび遺伝子治療のプロトコルの概説については、アンダーソン(Anderson)1992年を参照されたい。また、WO93/25673号およびこれに引用されている文献についても参照されたい。遺伝子治療技術についてさらに概説したものとしては、フリードマン(Friedmann)、サイエンス(Science)、244:p1275−1281(1989年);アンダーソン(Anderson)、ネイチャー(nature)第392巻の補遺、第6679号、p25−30(1998年);ヴェルマ(Verma)、サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American):p68−84(1990年);およびミラー(Miller)、ネイチャー(Nature)、357:p455−460(1992年)を参照されたい。
また、本発明はアンチセンス化合物およびこれを使用する方法を提供する。M−CSFもしくはM−CSFR活性のレベルは、遺伝子発現レベルを低減させるための公知のアンチセンス、遺伝子「ノックアウト」、リボザイムおよび/または三重らせん法を用いることにより、低下させることができる。これらの分子の作製および使用の技術については、当業者には公知である。
アンチセンス化合物は、標的としたmRNAとハイブリダイゼーションし、タンパク質への翻訳を阻止することによりmRNAの翻訳をブロックすることができ、このような化合物としては、標的遺伝子mRNAに相補性のオリゴヌクレオチドを挙げることができる。標的化は、そのコーディング領域、より好ましくは転写後の未翻訳領域に対するものとすることができる。相補性は完全なものである必要はなく、内因性RNAもしくはDNAとハイブリダイズすることができ、安定な二重鎖もしくは三重鎖を形成するのに十分な相補性であるだけでよい。ハイブリダイズする能力は、相補性の程度およびアンチセンス核酸の長さの両方に依存する。また、内因性mRNAの翻訳を阻害するアンチセンス法では、目的の遺伝子の非コーディング領域に対して相補性のオリゴヌクレオチドも使用することができる。アンチセンス核酸は6約50ヌクレオチド長の範囲のオリゴヌクレオチドであることが好ましい。特定の局面では、このオリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、もしくは少なくとも20ヌクレオチドである。
先ず、インビトロでの研究で、候補アンチセンスオリゴヌクレオチドの標的遺伝子の発現に対する阻害能を定量する。この研究ではアンチセンスの遺伝子阻害とオリゴヌクレオチドの非特異的な生物学的作用とを区別するコントロールを用いることが好ましい。また、この研究では標的RNAもしくはタンパク質のレベルを内部標準RNAもしくはタンパク質と比較することが好ましい。
こうしたオリゴヌクレオチドは、DNAもしくはRNAまたはこれらのキメラ混合物もしくは誘導体もしくは修飾型変種とすることができ、また、一本鎖もしくは二本鎖(例えば、RNAi)とすることができる。これらのオリゴヌクレオチドは、塩基部分、糖部分もしくはリン酸主鎖を修飾することにより、例えば、この分子もしくはハイブリダイゼーションの安定性を向上させることができる。例えば、WO03/088921号;ディーン(Dean)、カレント・オピニョン・イン・バイオテクノロジー(Curr.Op.Biotechnol.)12(6):p622−5、2001年;ギアリほか(Geary et al.)、カレント・オピニョン・イン・インベスティゲイショナル・ドラッグズ(Curr Opin Investig Drugs)2(4):p562−573、2001年を参照されたい。このオリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えば、インビボで宿主細胞を標的とする場合)または細胞膜透過促進剤(例えば、レッツィンガーほか(Letsinger,et al.)、1989年、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Pro.Natl.Acad Sci)USA、86:p6553−6556;ルメートルほか(Lemaitre,et al.)、1987年、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Pro.Natl.Acad Sci)USA、84:p648−652;1988年12月15日公開のPCT公開番号WO88/09810参照)、脳血液関門透過促進剤(例えば、1988年4月25日公開のPCT公開番号WO89/10134参照)、ハイブリダイゼーション作動型切断剤(例えば、クロールほか(Krol et al.)、1988年、バイオテクニークス(BioTechniques)6:p958−976参照)またはインターカレート剤(例えば、ゾン(Zon)、1988年、ファーマシューティカル・リサーチ(Pharm.Res.)5:p539−549参照)などの他の成分に結合させることができる。また、上記アンチセンス化合物は、互いに平行して伸びる相
補性RNAとの特定の二本鎖ハイブリッドを形成しているα−アノマーオリゴヌクレオチドとすることもできる(ゴーティエほか(Gautier,et al.)、1987年、ニュークレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl. Acids Res.)15:p6625−6641)。このオリゴヌクレオチドは、2’−()−メチルリボヌクレオシド(イノウエほか(Inoue,et al.)、1987年、ニュークレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl. Acids Res.)15:p6131−6148)もしくはキメラRNA−DNAアナログ(イノウエほか(Inoue,et al.)、1987年、FEBSレターズ(FEBS Lett.)215:p327−330)とすることができる。
アンチセンス分子は、インビボで標的遺伝子を発現している細胞に送達させる必要がある。アンチセンスDNAもしくはアンチセンスRNAを細胞に送達させる方法はいくつか開発されている:例えば、アンチセンス分子を組織部位内にそのまま注射することができ、または所望の細胞を標的とするように設計した修飾型アンチセンス分子(例えば、標的細胞表面に発現されたレセプターもしくは抗原に特異的に結合するペプチドもしくは抗体に連結したアンチセンス)を全身性に投与することができる。1つの方法として、内因性mRNAの翻訳を阻害するのに十分なアンチセンスの細胞内濃度は、このアンチセンスオリゴヌクレオチドを強力なプロモータの制御下に置いた組換えDNA構築物を用いて得ることができる。患者の標的細胞トランスフェクションにこのような構築物を用いると、内因性標的遺伝子の転写物と相補性塩基対を形成することによりこの標的遺伝子のmRNAの翻訳を阻止するのに十分な量の一本鎖RNAの転写が生じる。例えば、ベクターを導入することによって、例えば、これを細胞に取り込ませてアンチセンスRNAの転写を誘導させることができる。このようなベクターは、これが転写されて所望のアンチセンスRNAを生じることができる間、エピソームとして存続させ、もしくは染色体に組み込ませることができる。
また、標的遺伝子mRNAの転写物を触媒的に切断するように設計したリボザイム分子も、標的遺伝子mRNAの翻訳、従って、標的遺伝子産物の発現を阻止するために用いることができる。(例えば、1990年10月4日公開のPCT国際公開WO90/11364号;サーバーほか(Sarver,et al.)、1990年、サイエンス(Science)247:p1222−1225参照)。リボザイムは、RNAの特異的な切断を触媒することができる酵素的RNA分子である。(概説については、ロッシ(Rossi)、1994年、カレント・バイオロジー(Current Biology)4:p469−471参照)。リボザイムの作用メカニズムは、リボザイム分子の相補性標的RNAとの配列特異的ハイブリダイゼーションと、それに続くエンドヌクレアーゼ的切断事象を含む。リボザイム分子の組成には、標的遺伝子mRNAに対して、好ましくは5’末端により近い部位に相補性の配列を1つ以上含ませる必要があり、また、mRNA切断に関与する公知の触媒配列を含ませる必要がある。この配列については、例えば、その全体が本明細書に参考として援用される米国特許第5,093,246号を参照されたい。また、標的mRNAと相補性の塩基対を形成する特定のフランキング領域により決定される位置でmRNAを切断するハンマーヘッド型リボザイムも使用することができる。ハンマーヘッド型リボザイムの構成および作製については、当該分野で公知であり、マイヤーズ(Myers)、1995年、モレキュラー・バイオロジー・アンド・バイオテクノロジー:ア・コンプレヘンシブ・デスク・リファレンス(Molecular Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference)、VCHパブリッシャーズ(Publishers)、ニューヨーク(特に、p833の図4参照)、およびその全体が本明細書に参考として援用されるハセロフ(Haseloff)、ゲルラッハ(Gerlach)、1988年、ネイチャー(Nature)334:p585−591に比較的詳細に記載されている。また、RNAエンドリボヌクレアーゼ(「Cech型リボザイム」とも呼ばれる)を使用することもできる。Tetrahymena thermophilaに天然に存在するもの(IVSもしくはL−19IVS RNAと呼ばれる)などのリボザイムについては、ツァウクほか(Zaug,et al.)、1984年、サイエンス(Science)224:p574−578;ツァウク(Zaug)、チェク(Cech)、1986年、サイエンス(Science)231:p470−475;ツァウクほか(Zaug,et al.)、1986年、ネイチャー(Nature)324:p429−433;公開国際特許出願WO88/04300号;およびビーン(Been)、チェク(Cech)、1986年、セル(Cell)47:o207−216に記載されている。Cech型リボザイムには、標的RNA配列にハイブリダイズする8塩基対の活性部位がある。また、リボザイムは、(例えば、安定性、標的化等を向上させるために)修飾オリゴヌクレオチドで構成することもでき、インビボで標的遺伝子を発現している細胞にこれを送達させることができる。リボザイムは、アンチセンス分子とは異なり触媒性であるので、効率面から細胞内濃度は低くする必要がある。
また、内因性標的遺伝子の発現は、標的化相同的組換え法(targeted homologous recombination)を用いて標的遺伝子もしくはそのプロモータを不活化または「ノックアウト」することにより、低減させることができる(例えば、それぞれその全体が本明細書に参考として援用されるスミシーズほか(Smithies,et al.)、1985年、ネイチャー(Nature)317:p230−234;トーマス(Thomas)、カペッキ(Capecchi)、1987年、セル(Cell)51:p503−512;トンプソンほか(Thompson,et al.)、1989年、セル(Cell)5:p313−321参照)。例えば、内因性標的遺伝子(標的遺伝子のコーディング領域もしくは調節領域)と相同性のDNAに隣接されている非機能的標的遺伝子変異体(または完全に無関係なDNA配列)を用いて、選択マーカおよび/または陰性選択マーカを併用し、もしくは併用しないで、インビボで標的遺伝子を発現している細胞をトランスフェクションすることができる。標的化相同的組換え法によってこのDNA構築物を挿入することにより、標的遺伝子が不活化される。
あるいは、内因性標的遺伝子の発現は、標的遺伝子の調節領域(即ち、標的遺伝子のプロモータおよび/またはエンハンサ)と相補的なデオキシリボヌクレオチド配列を標的とすることにより生体内標的細胞の標的遺伝子の転写を阻止する三重らせん構造を形成することによって低減させることができる。(概して、ヘレーネ(Helene)、1991年、アンチキャンサー・ドラッグ・デザイン(Anticancer Drug Des.)6(6):p569−584;ヘレーネほか(Helene,et al.)、1992年、アナルズ・オブ・ザ・ニューヨーク・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Ann.N.Y.Acad.Sci.)660:p27−36;およびマーハ(Maher)、1992年、バイオアッセイズ(Bioassays)14(12):p807−815参照)。
転写を阻害するための三重らせん形成に用いる核酸分子は、一本鎖とし、デオキシヌクレオチドで構成する必要がある。こうしたオリゴヌクレオチドの塩基組成は、通常、かなり多くのプリンもしくはピリミジンが二重鎖の一本鎖に存在することを必要とするフーグスティーン型(Hoogsteen)塩基対合則によって三重らせんの形成を促進するように設計しなければならない。ヌクレオチド配列はピリミジンをベースとしたものとすることができ、これにより、得られる三重らせんの3本の結合鎖を横切ってTATおよびCGCトリプレットが生じる。このピリミジンに富む分子では、上記二重鎖の一本鎖のプリンに富む領域に対する塩基相補性がこの鎖に平行な方向に形成される。さらに、プリンに富む、例えば、一連のG残基を含む核酸分子を選択することもできる。この分子は、プリン残基の大部分が標的化した二重鎖の一本鎖にあるGC対に富むDNA二重鎖と三重らせんを形成し、この三重鎖の3本の鎖を横切ってGGCトリプレットが生じる。あるいは、いわゆる「スイッチバック(switchback)」核酸分子を創出することにより、三重らせん形成のための標的とすることができる潜在的な配列を増加させることができる。スイッチバック分子は、これに先ず二重鎖のうちの一本鎖と、次いでもう一方の鎖と塩基対を形成させるようにして5’−3’と3’−5’方向を交互に行う方法で合成し、これにより、かなり多くのプリンもしくはピリミジンが二重鎖の一本鎖に存在する必要性がなくなる。
アンチセンス、リボザイムもしくは三重らせんによる治療で標的遺伝子発現が望ましくないほど低いレベルに低下する場合には、代替タンパク質を投与することができる。あるいは、どのようなアンチセンス、リボザイムもしくは三重らせんによる治療が行われていてもこれの影響を受けやすい配列を含まない修飾核酸を用いることで、遺伝子発現を増強させる遺伝子治療を行うこともできる。
本発明のアンチセンスRNAおよびDNA、リボザイムならびに三重らせん分子は、DNAおよびRNA分子合成のための当該分野で公知の任意の方法により作製することができる。こうした方法としては、例えば、固相ホスホラミダイト化学合成などの、当該分野で公知のオリゴデオキシリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオチドの化学合成法が挙げられる。あるいは、治療的RNA分子をコードしているDNA配列をインビトロもしくはインビボで転写させることによってRNA分子を作製することができる。
化学合成法としては、市販の自動DNA合成装置の使用が挙げられる;ホスホロチオエート型オリゴヌクレオチドはスタインほか(Stein,et al.)(1988年、ニュークレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl. Acids Res.)16:p3209)の方法によって合成することができ、メチルホスホネート型オリゴヌクレオチドは、細孔の制御されたガラスポリマー支持体を用いることによって作製することができる(サリンほか(Sarin,et al.)、1988年、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Proc.Natl.Acad Sci)USA、85:p7448−7451)。
(ペプチドおよび低分子)
本明細書に用いている「タンパク質」という用語は、タンパク質、オリゴペプチド、ポリペプチド、ペプチドなどを含む。さらに、このタンパク質という用語は、断片、多量体、もしくは完全な状態の分子および/または断片の凝集体のことをも意味する。タンパク質は天然に存在するものとすることができ、または組換えDNA法もしくは化学的および/または酵素的合成法によって作製することができる。例えば、サンブルックほか(Sambrook et al.)、「モレキュラー・クローニング−−ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning−−A Laboratory Manual)」コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリーズ(Cold Spring Harbor Laboratories)(第3版、2001年)を参照されたい。
「ペプチド」という用語は、アミノ酸の比較的短い鎖、好ましくは6100アミノ酸長の鎖のことを意味する。
ペプチドは、ファージディスプレイ技術を用いて所望の結合活性(例えば、M−CSFもしくはM−CSFRとの結合)または生物学的活性についてスクリーニングすることができる(例えば、スコットほか(Scott et al.)、サイエンス(Science)249:p386(1990年);デブリンほか(Devlin et al.)、サイエンス(Science)249:p404(1990年);1993年6月29日に発行された米国特許第5,223,409号;1998年3月31日に発行された米国特許第5,733,731号;1996年3月12日に発行された米国特許第5,498,530号;1995年7月11日に発行された米国特許第5,432,018号;1994年8月16日に発行された米国特許第5,338,665号;1999年7月13日に発行された米国特許第5,922,545号;1996年12月19日に公開されたWO96/40987号;および1998年4月16日に公開されたWO98/15833号(これらは参考として援用される)参照)。このようなライブラリでは、ペプチド配列は、糸状ファージのコートタンパク質との融合によって表示される。代表的に、この表示ペプチドは、レセプターの抗体固定化細胞外ドメインに対してアフィニティ溶出する。この保持されたファージは、アフィニティ精製および再増殖を連続的に繰り返すことにより、濃縮することができる。最良の結合性を示すペプチドについて配列を決定することにより、ペプチドの1つ以上の構造類似ファミリー内の重要な残基を同定することができる。
また、ペプチドは、lacリプレッサーのカルボキシル末端に融合して大腸菌で発現させたペプチドのライブラリを作製する方法、またはペプチドグリカン関連リポタンパク質(PAL)と融合させることにより大腸菌の外膜にペプチドを表示させる方法など、他の方法を用いてスクリーニングすることもできる。別の方法では、ランダムRNAの翻訳をリボソームの遊離の前に停止させることにより、関連RNAがなお結合しているポリペプチドのライブラリが得られる。他の方法では、ペプチドをRNAに化学的に結合させる(例えば、ロバーツ(Roberts)、ソスタック(Szostak)、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Proc.Natl.Acad Sci)USA、94:p12297−303(1997年)参照)。ポリエチレンロッド、溶剤浸透性樹脂などの安定な非生物材料にペプチドを固定化した化学的誘導ペプチドライブラリが開発されている。他の化学的誘導ペプチドライブラリでは、フォトリソグラフィを用いて、スライドガラスに固定化したペプチドが走査される。化学的−ペプチドのスクリーニングは、D−アミノ酸その他の非天然アナログおよび非ペプチドエレメントの使用が可能である点で有利と考えられる。生物学的および化学的方法については、ウェルズ(Wells)、ローマン(Lowman)、カレント・オピニョン・イン・バイオテクノロジー(Curr.Opin.Biotechnol.)3:p355−62(1992年)に概説されている。
さらに、ペプチドはDNAレベルの突然変異誘発により修飾することができる。突然変異誘発ライブラリを作製し、スクリーニングすることにより、最良の結合体(binder)の配列をさらに最適化することができる(ローマン(Lowman)、アニュアル・レビュー・オブ・バイオフィジックス・アンド・バイオモレキュラー・ストラクチャー(Ann Rev Biophys Biomol Struct)26:p401−24(1997年))。また、タンパク質タンパク質相互作用の構造解析を行うことにより、大きなタンパク質リガンドの結合活性を模倣するペプチドを提案することもできる。このような解析では、結晶構造から、ペプチドを設計することができる元となるその大きなタンパク質リガンドの重要な残基の特性および相対配向が示唆されることがある(例えば、タカサキほか(Takasaki et al.)、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotech.)15:p1266−70(1997年)。
ランダムペプチドもしくは抗原結合性CDRに由来するペプチドは、線状に、または抗体もしくはその定常領域のような部分などの三次元スカフォールド(scaffold)の一部として、融合させることにより、所望の抗原を結合する新規な高分子を作製することができる。複数のコピーの同一ペプチドもしくは異なるペプチドを含ませることができる。
本明細書に用いている「ペプチド模倣体」とは、アミノ酸の側鎖またはファルマコフォアまたはその適切な誘導体の集合体を含み、これらがスカフォールドに担持されることによりファルマコフォアの空間的配置が天然ペプチドの生物活性のある立体配座を実質的に模倣するような非ペプチド化合物である。例えば、ペプチド模倣体は、アミノ酸もしくはペプチド結合を欠くが、結合活性に必要な元のペプチドのペプチド鎖基の特定の三次元配置を維持することができる。上記スカフォールドは、二環性、三環性もしくはさらに多環性の炭素もしくはヘテロ原子の骨格を含むことができ、または1つ以上の環構造(例えば、ピリジン、インダゾールなど)もしくはアミド結合をベースとすることができる。このスカフォールドには、スペーサにより、そのコアの一端に酸性基(例えば、カルボン酸官能基)、他端に塩基性基(例えば、アミジン、グアニジンなどのN含有部分)を結合することができる。ペプチド模倣体を合成するための例示的な技術については、2003年10月23日公開の米国特許出願第20030199531号、2003年7月24日公開の米国特許出願第20010139348号に開示されている。
また、抗体その他のタンパク質の他に、本発明は別のM−CSFアンタゴニストをも企図しており、このアンタゴニストとしては、癌転移および/または癌転移に伴う骨量減少の治療にも有効な低分子が挙げられるが、これに限定されるものではない。このような低分子は、M−CSFに対する結合能および/またはM−CSFM−CSFRとの間の相互作用に対する阻害能をアッセイすることにより同定することができる。
低分子とM−CSFとの結合を測定する方法は、当該分野で容易に利用可能であり、このような方法として、例えば、低分子がM−CSFとそのレセプター(M−CSFR)もしくは抗M−CSF抗体との相互作用を干渉するような競合アッセイが挙げられる。あるいは、低分子M−CSFとの相互作用を測定する直接的な結合アッセイ法を用いることもできる。例えば、組織培養プレートもしくはビーズなどの不溶性マトリクスにM−CSFを吸着させるELISAアッセイ法を用いることができる。目的とする低分子を加えることにより、標識したM−CSFRもしくは抗M−CSF抗体のM−CSFへの結合がブロックされる。あるいは、蛍光細胞分析分離(FACS)アッセイによって低分子のM−CSFへの結合を測定することができる。この方法では、蛍光標識二次抗体の存在下に、M−CSFを発現している細胞を蛍光標識抗M−CSF抗体もしくは抗M−CSF抗体とインキュベートする。低分子のM−CSFへの結合は、このM−CSF発現細胞に結合した蛍光が用量依存性に減少することによって判定することができる。同様に、この低分子を標識、例えば、放射性標識もしくは蛍光標識し、固定化M−CSFもしくはM−CSF発現細胞とインキュベートし、結合した低分子の放射活性もしくは蛍光を測定することにより、低分子の直接結合を評価することができる。
(スクリーニング方法)
有効な治療は、重大な毒性のない有効な薬剤の同定に依存している。癌転移に伴う骨量減少の予防もしくは治療に有用となる可能性のある化合物は、種々のアッセイ法を用いてスクリーニングすることができる。例えば、候補アンタゴニストは、先ず、細胞培養系で特徴付けを行うことによって、M−CSFの破骨細胞形成誘導作用を無効化する能力を調べることができる。このような系としては、マウス頭蓋冠骨芽細胞と脾臓細胞との共培養(スダほか(Suda et al.)、「破骨細胞分化の調節(Modulation of osteoclast differentiation)」エンドクリン・レビューズ(Endocr.Rev.)13:p66−80、1992年;マーチン(Martin)、ウダガワ(Udagawa)、トレンズ・イン・エンドクリノロジー・アンド・メタボリズム(Trends Endocrinol.Metab.)9:p6−12、1998年)、マウス間質細胞株(例えば、MC3T3−G2/PA6およびST2)とマウス脾細胞(ウダガワほか(Udagawa et al.)、エンドクリノロジー(Endocrinology)125:p1805−13、1989年)との共培養、およびST2細胞と骨髄細胞、末梢血単核細胞もしくは肺胞マクロファージとの共培養(ウダガワほか(Udagawa et al.)、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Pro.Natl.Acad Sci)USA、87:p7260−4、1990年;ササキほか(Sasaki et al.)、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)58:p462−7、1998年;マンチーノほか(Mancino et al.)、ジャーナル・オブ・サージカル・リサーチ(J.Surg.Res.)100:p18−24、2001年)が挙げられる。M−CSFアンタゴニストの非存在下では、このような共培養で形成される多核細胞は、酒石酸塩耐性酸性ホスファターゼ(TRAP、破骨細胞の指標酵素)活性、カルシトニンレセプター、p60C−STC、ビトロネクチンレセプター、ならびに骨および象牙質スライスにおける吸収ピットの形成能などの破骨細胞の主要な分類基準を満たす。有効なM−CSFアンタゴニストが存在すると、このような多核細胞の形成は阻害される。
上記の共培養系の他に、間質細胞を含まない系もしくは骨芽細胞を含まない系を用いて候補M−CSFアンタゴニストの破骨細胞形成阻害能をアッセイすることができる。破骨細胞形成に必要なM−CSFは、共培養転移性癌細胞(例えば、MDA231)もしくはこの癌細胞の馴化培地(マンチーノほか(Mancino et al.)、ジャーナル・オブ・サージカル・リサーチ(J.Surg.Res.)100:p18−24、2001年)から、または精製M−CSFの添加によって、供給することができる。
また、所与のM−CSFアンタゴニストの癌転移に伴う骨量減少を予防もしくは治療する効果については、当業者によく知られている骨転移の動物モデル系のうちの任意の系を用いて検定することができる。このようなモデル系としては、腫瘍細胞の注入を直接、骨髄腔内(インガル(Ingall)、プロシーディングズ・オブ・ザ・ソサエティ・フォ・エクスペリメンタル・バイオロジー・アンド・メディシン(Proc.Soc.Exp.Biol.Med.)117:p819−22、1964年;ファラスコ(Falasko)、クリニカル・オーソペディクス(Clin.Orthop.)169:p20−7、1982年)、ラット腹大動脈内(ポールズほか(Powles et al.)、ブリティシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー(Br.J.Cancer)28:p316−21、1973年)、マウス側尾静脈内もしくはマウス左心室内(オーゲロほか(Auguello et al.)、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)48:p6876−81、1988年)に行うものが挙げられる。有効なM−CSFアンタゴニストの非存在下では、注入した腫瘍細胞により形成される骨溶解性骨転移は、ラジオグラフ(骨溶解性骨病巣部位)もしくは組織化学(骨および軟組織)によって調べることができる。ササキほか(Sasaki et al.)、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)55:p3551−7、1995年;ヨネダほか(Yoneda et al.)、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J.Clin.Invest.)99:p2509−17、1997年。クロヒシー(Clohisy)、ラムナレイン(Ramnaraine)、オーソペディク・リサーチ(Orthop Res.)16:p660−6、1998年。インほか(Yin et al.)、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J.Clin.Invest.)103:p197−206、1999年。有効なM−CSFアンタゴニストの存在下では、骨溶解性骨転移は、予防もしくは抑制されて、転移を少なく、および/または小さくさせることができる。
また、本発明のM−CSFアンタゴニストは、癌転移の予防もしくは治療に有用であると考えられる。候補M−CSFアンタゴニストの癌転移に対する予防もしくは治療効果は、フィルダーマンほか(Filderman et al.)、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)52:p36616、1992年に記載されているヒト羊膜基底膜浸潤(amnionic basement membrane invasion)モデルを用いてスクリーニングすることができる。さらに、各種癌転移の動物モデル系のうちの任意の系を用いることもできる。このようなモデル系としては、ウェンガーほか(Wenger et al.)、クリニカル・アンド・エクスペリメンタル・メタスタシス(Clin.Exp.Metastasis)19:p169−73、2002年;イーほか(Yi et a1.)、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)62:p917−23、2002年;ツツミほか(Tsutsumi et al.)、キャンサー・レターズ(Cancer Lett)169:p77−85、2001年;ツィンゴジドーほか(Tsingotjidou et al.)、アンチキャンサー・リサーチ(Anticancer Res.)21:p971−8、2001年;ワカバヤシほか(Wakabayashi et al.)、オンコロジー(Oncology)59:p75−80、2000年;カルプ(Culp)、コジャーマン(Kogerman)、フロンティアズ・イン・バイオサイエンス(Front Biosci.)3:D672−83、1998年;ルンゲほか(Runge et al.)、インベストゲイティブ・ラジオロジー(Invest Radiol.)32:p212−7;シオダほか(Shioda et al.)、ジャーナル・オブ・サージカル・オンコロジー(J.Surg.Oncol.)64:p122−6、1997年;マーほか(Ma et al.)、インベストゲイティブ・オフサルモロジー・アンド・ビジュアル・サイエンス(Invest Ophthalmol Vis Sci.)37:p2293−301、1996年;クルップほか(Kuruppu et al.)、ジャーナル・オブ・ガストロエンテロロジー・アンド・ヘパトロジー(J Gastroenterol Hepatol.)11:p26−32、1996年に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。有効なM−CSFアンタゴニストの存在下では、癌転移は、予防もしくは抑制されて、転移を少なく、および/または小さくさせることができる。
別のM−CSFアンタゴニストの同定は、他のタンパク質もしくはポリペプチドと特異的に相互作用するタンパク質同定し、取得するいくつかの公知の方法のうちの任意の方法を用いて達成することができ、例えば、米国特許第5,283,173号もしくはこれに準ずる文献に記載されているような酵母2−ハイブリッドスクリーニング(yeast two hybrid screening)系を用いることができる。本発明の一実施形態として、M−CSFをコードしているcDNAもしくはその断片を2−ハイブリッドベイトベクター中にクローニングし、これを用いて、M−CSF結合活性を有するタンパク質について相補性標的ライブラリをスクリーニングすることができる。
特定のM−CSFアンタゴニストもしくはM−CSFアンタゴニストの組合せの抗腫瘍活性については、適切な動物モデルを用いてインビボで評価することができる。このようなモデルとしては、例えば、ヌードマウス、SCIDマウスなどの免疫機能が低下した動物体内にヒトリンパ腫細胞を導入した異種リンパ腫癌モデルがある。有効性については、腫瘍形成の抑制、腫瘍の緩解もしくは転移などを測定するアッセイ法を用いて推定することができる。
また、本発明により得られるアミノ酸配列情報から、M−CSFもしくはM−CSFRのポリペプチドもしくはポリヌクレオチドが相互作用する結合相手化合物の同定が可能となる。結合相手化合物を同定する方法としては、液相アッセイ(solution assay)、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドを固定化するインビトロアッセイ、および細胞系アッセイが挙げられる。M−CSFCSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドの結合相手化合物を同定することにより、M−CSFもしくはM−CSFRの正常もしくは異常な生物学的活性と関連付けられる症状を治療的もしくは予防的に処置するための候補化合物が得られる。
本発明は、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドの結合相手化合物を同定するための数種のアッセイ系を含む。液相アッセイとしての本発明の方法は、(a)M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドを1種以上の候補結合相手化合物と接触させる工程、および(b)M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドに結合する化合物を同定する工程を含む。M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドに結合する化合物の同定は、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチド/結合相手化合物の複合体を単離し、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチド結合相手化合物から分離することにより達成することができる。また、得られた結合相手化合物の物理的特性、生物学的特性および/または生化学的特性を特徴付けする更なる工程も本発明の別の実施形態内に包含される。一局面として、上記M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチド/結合相手化合物の複合体は、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドまたは候補結合相手化合物のいずれかに免疫特異的な抗体を用いて単離する。
さらに別の実施形態として、上記のM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドまたは候補結合相手化合物のいずれかは、その単離を容易にする標識もしくはタグを含み、結合相手化合物を同定する本発明の方法は、この標識もしくはタグとの相互作用を介してM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチド/結合相手化合物複合体を単離する工程を含む。このタイプの例示的タグとしては、ニッケルキレート化によるこの標識された化合物の単離を可能にする、通例ヒスチジン残基が約6個のポリ−ヒスチジン配列がある。当該分野で公知であり、慣行的に用いられているFLAG(登録商標)タグ(イーストマン・コダック社(Eastman Kodak)、ロチェスター(Rochester)、NY)などの他の標識およびタグも本発明に包含される。
インビトロアッセイの一変形として、本発明は、(a)固定化M−CSFポリペプチドもしくは固定化M−CSFRポリペプチドを候補結合相手化合物と接触させる工程、および(b)この候補化合物のM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドへの結合を検出する工程を含む方法を提供する。別の実施形態として、候補結合相手化合物を固定化して、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドの結合を検出する。固定化は、当該分野で公知の方法のうちの任意の方法を用いて、例えば、支持体、ビーズもしくはクロマトグラフィー用樹脂への共有結合、および抗体結合などの非共有結合性の高親和性相互作用によって、または固定化される化合物がビオチン部分を含む場合、ストレプトアビジン/ビオチン結合を利用して達成される。結合の検出は、(i)固定化されていない化合物の放射活性標識を利用し、(ii)非固定化化合物の蛍光標識を利用し、(iii)非固定化化合物に免疫特異的な抗体を用いて、(iv)固定化化合物が結合している蛍光支持体を励起する非固定化化合物の標識を利用し、および当該分野で公知の、慣行的に行われている他の技術を用いて達成することができる。
M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドの活性もしくは発現を調節(即ち、増強、低減もしくはブロック)する抗体または有機/無機化合物などの物質は、推定調節物質をM−CSFもしくはM−CSFRポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを発現する細胞とインキュベートし、M−CSFもしくはM−CSFRポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの活性もしくは発現に対するこの推定調節物質の作用を測定することにより、同定することができる。M−CSFもしくはM−CSFRのポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの活性を調節する化合物の選択性は、そのM−CSFもしくはM−CSFRポリペプチドもしくはポリヌクレオチドに対する作用を他の関連化合物に対する作用と比較することにより、評価することができる。選択的な調節物質としては、例えば、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドまたはM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドをコードしている核酸に特異的に結合する抗体その他のタンパク質、ペプチドまたは有機分子を挙げることができる。M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチド活性の調節物質は、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドの正常もしくは異常な活性が関与している疾患および生理的状態の処置において治療上有用となろう。
調節物質を同定する本発明の方法は、結合相手化合物を同定する上記方法のうちの任意の方法の変形形態を含み、この変形形態は、結合相手化合物を同定した後、候補調節物質の存在および非存在下に結合アッセイを行う技術を含む。調節物質が同定されるのは、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドとその結合相手化合物との結合が、候補調節化合物の非存在下での結合に比し、候補調節物質の存在下で変化するような場合である。M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドとその結合相手化合物との結合を増強する調節物質は、賦活剤もしくは活性化剤と記載され、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドとその結合相手化合物との結合を低下させる調節物質は、阻害剤と記載される
また、本発明は、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドと相互作用し、もしくはその生物学的活性を阻害する(即ち、酵素活性、結合活性などを阻害する)化合物を同定するためのハイ−スループットスクリーニング(HTS)アッセイをも包含する。HTSアッセイでは、多数の化合物を効率的にスクリーニングすることができる。M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドとその結合相手との相互作用を調べるための細胞ベースのHTS系も企図されている。HTSアッセイは、所望の特性を有する「ヒット」もしくは「リード化合物」を特定するように設計されており、これを基に、所望の特性を向上させる修飾を設計することができる。多くの場合、この「ヒット」もしくは「リード化合物」の化学的修飾は、「ヒット」とM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドとの間の識別可能な構造/活性相関に基づいて行われる。
本発明の別の局面は、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドまたはこれをコードしている核酸分子と化合物とを接触させ、この化合物がM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドまたはこれをコードしている核酸分子と結合するかどうかを決定することを含む、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドまたはM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドをコードしている核酸分子に結合する化合物を同定する方法に関する。結合は、当業者に公知の結合アッセイによって決定することができ、これらのアッセイとしては、例えば、本明細書にその全体が参考として援用される「カレント・プロトコルズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current Protocols in Molecular Biology)(1999年)ジョンワイリー・アンド・サンズ、NYに記載のゲルシフトアッセイ、ウエスタンブロット法、放射性標識化競合アッセイ、ファージを用いた発現クローニング、クロマトグラフィーによる同時分別(co−fractionation)、共沈、架橋、相互作用トラップ(trap)/2−ハイブリッド解析、サウスウエスタン解析、ELIAなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。(M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドまたはこれをコードしている核酸分子と結合すると思われる化合物を含むことができる)スクリーニングされるべき化合物として、細胞外、細胞内、生物もしくは化学合成由来のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の方法は、放射標識(例えば、125I、35S、32P、33P、H)、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、免疫原性標識などの標識に結合させた基質、アダプターもしくはレセプター(receptor)分子を含むリガンドを包含する。本発明の範囲に包含される調節物質としては、非ペプチド性模倣体、非ペプチド性アロステリックエフェクタなどの非ペプチド性分子、およびペプチドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような試験に用いるM−CSFもしくはM−CSFRのポリペプチドもしくはポリヌクレオチドは、溶液中で遊離型、固体支持体への結合型、細胞表面への付着型もしくは細胞内局在型または細胞の一部との会合型のものとすることができる。例えば、当業者は、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドと試験すべき化合物との間の複合体の形成を評価することができる。あるいは、当業者は、試験すべき化合物によってもたらされる、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドとその基質との複合体形成の低減を調べることができる。
本発明の別の局面は、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドと化合物とを接触させ、この化合物がM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドの活性を変えるかどうかを決定することを含む、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドの活性を調節(即ち、低下)させる化合物を同定する方法に関する。比較される試験の存在下の活性は、試験化合物の非存在下の活性に対して測定する。試験化合物を含むサンプルの活性が試験化合物を含まないサンプルの活性よりも高い場合は、この化合物は高い活性を有することになる。同様に、試験化合物を含むサンプルの活性が試験化合物を含まないサンプルの活性よりも低い場合は、この化合物は低い活性を有することになる。
本発明は、種々の薬物スクリーニング技術のうちの任意の方法でM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドを用いることにより化合物をスクリーニングするのに特に有用である。(M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドまたはこれをコードしている核酸分子と結合すると思われる化合物を含むことができる)スクリーニングされるべき化合物として、細胞外、細胞内、生物もしくは化学合成由来のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような試験に用いるM−CSFもしくはM−CSFRのポリペプチドもしくはポリヌクレオチドは、溶液中で遊離型、固体支持体への結合型、細胞表面への付着型もしくは細胞内局在型または細胞の一部との会合型のものとすることができる。例えば、当業者は、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドと試験すべき化合物との間の複合体の形成を評価することができる。あるいは、当業者は、試験すべき化合物によってもたらされる、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドとその基質との複合体形成の低減を調べることができる。
本発明のM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドの活性は、例えば、化学合成もしくは天然のペプチドリガンドへのこれらの結合能を調べることにより、測定することができる。あるいは、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドの活性は、アダプタ分子、レセプター分子、基質その他のリガンドへのこれらの結合能を調べることにより、アッセイすることができる。また、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドの活性は、エフェクタ分子の活性を調べることによっても、測定することができ、このような分子としては、M−CSFもしくはM−CSFRによって活性化される他の下流側の酵素が挙げられるが、これに限定されるものではない。従って、M−CSFもしくはM−CSFRポリペプチド活性の調節物質は、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドの結合特性などのM−CSFもしくはM−CSFRの機能を変えることができる。本方法の種々の実施形態として、このアッセイ法は、天然の結合相手に対する結合アッセイおよび当該分野で一般に知られているM−CSF活性もしくはM−CSF活性の他の結合アッセイもしくは機能ベースのアッセイの形をとることができる。本発明におけるM−CSFもしくはM−CSFRの生物学的活性としては、天然もしくは非天然リガンドに対する結合活性、および当該分野で公知のM−CSFもしくはM−CSFRの機能的活性のうちの任意の活性が挙げられるが、これらに限定されるものではない。M−CSF活性もしくはM−CSFR活性の例としては、基質の蛋白分解、および基質、リガンド、アダプタもしくはレセプター分子への結合が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の調節物質は、概して天然のM−CSFリガンドもしくは天然のM−CSFRリガンドの非ペプチド性模倣体、M−CSFもしくはM−CSFRのペプチド性および非ペプチド性アロステリックエフェクタ、ならびにM−CSFもしくはM−CSFRの活性化剤もしくは阻害剤(競合的、不競合的および非競合的)として機能することが可能なペプチド(例えば、抗体生成物)に分類することができる種々の化学構造を有する。本発明は、適切な調節物質の原料を限定するものではなく、植物、動物もしくは鉱物からの抽出物などの天然原料、コンビナトリアルケミストリーによるライブラリ構築法の産物を含む低分子ライブラリ、およびペプチドライブラリなどの非天然原料から得ることができる。
酵素活性を調べるには別のアッセイ法を用いることができ、こうした方法としては、例えば、その全体が参考として本明細書に援用されている「エンザイム・アッセイズ:ア・プラクティカル・アプローチ(Enzyme Assays:A Practical Approach)」R.アイゼンタール(R.Eisenthal)、M.J.ダンソン(M.J.Danson)編(1992年)オックスフォード・ユニバーシティ・プレス(Oxford University Press)に記載の光度測定法、放射分析法、HPLC、電気化学的方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドをコードしているcDNAは、創薬計画において用いることができ、ハイ−スループットスクリーニング(HTS)で1日当たり数千種の未知の化合物を試験することができるアッセイ法については十分な報告がある。文献には創薬のためのHTS結合アッセイで放射標識リガンドを用いた例が満載されている(ウイリアムズ(Williams)、メディシナル・リサーチ・レビューズ(Medicinal Research Reviews)(1991年)11:p147−184;スウィートナムほか(Sweetnam,et al.)、ジャーナル・オブ・ナショナル・プロダクツ(J.Natural Products)(1993年)56:p441−445の概説参照)。結合アッセイHTSではM−CSFもしくはM−CSFRを固定化することが好ましい。何故なら、これにより、特異性が改善(相対純度が向上)し、大量のM−CSF材料もしくはM−CSFR材料の作製が可能になり、多様な形式で用いることが出来るからである(その全体が参考として本明細書に援用されているホジソン(Hodgson)、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology)(1992年)10:p973−980参照)。
当業者に公知の組換えポリペプチドの機能発現には種々の異種系が利用可能である。このような系としては、細菌(ストロスバーグほか(Strosberg,et al.)、トレンズ・イン・ファーマシューティカル・サイエンシズ(Trends in Pharmacological Sciences)(1992年)13:p95−98)、酵母(ポーシュ(Pausch)、トレンズ・イン・バイオテクノロジー(Trends in Biotechnology)(1997年)15:p487−494)、数種の昆虫細胞(バンデン・ブルック(Vanden Broeck)、インターナショナル・レビュー・オブ・サイトロジー(Int.Rev.Cytology)(1996年)164:p189−268)、両生類細胞(ジャヤヴィックレムほか(Jayawickreme,et al.)、カレント・オピニョン・イン・バイオテクノロジー(Current Opinion in Biotechnology)(1997年)8:p629−634)および数種の哺乳動物細胞株(CHO、HEK293、COSなど;ゲルハルトほか(Gerhardt,et al.)、ユーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Eur.J.Pharmacology)(1997年)334:p1−23)が挙げられる。以上の例は、線虫から得られる細胞株(PCT出願WO98/37177号)を含む他の考えられる細胞発現系の使用を排除するものではない。
本発明の好ましい実施形態として、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドの活性を調節する化合物のスクリーニング方法は、試験化合物をM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドと接触させ、この化合物とM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドとの複合体の有無についてアッセイすることを含む。このようなアッセイでは、そのリガンドは代表的に標的される。適切なインキュベーションを行った後、結合型で存在するリガンドから遊離型リガンドを分離すると、遊離型もしくは非複合体化標識の量が、この特定化合物のM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドへの結合能の指標となる。
本発明の別の実施形態として、M−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドに対して適切な結合親和性を有する化合物のハイ−スループットスクリーニングを行う。簡単に言えば、固基板上で多数の異なる小ペプチド試験化合物を合成する。このペプチド試験化合物をM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドと接触させた後、洗浄する。次いで、結合したM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドを当該分野で公知の方法により検出する。また、本発明の精製ポリペプチドは、前述の薬物スクリーニング技術で用いるために、そのままプレートに塗布することができる。さらに、非中和抗体を用いてそのタンパク質を捕捉し、これを固体支持体に固定化することができる。
通常、発現させたM−CSFポリペプチドもしくはM−CSFRポリペプチドは、当業者に公知の方法により、適切な放射性同位体で標識した基質、リガンド、アダプタもしくはレセプター分子と併せてHTS結合アッセイに用いることができ、このような放射性同位体としては、125I、H、35S、もしくは32Pが挙げられるが、これらに限定されるものではない。あるいは、基質、リガンド、アダプタもしくはレセプター分子は、適切な蛍光誘導体(バインデュールほか(Baindur,et al.)、ドラッグ・デベロップメント・リサーチ(Drug Dev.Res.)(1994年)33:p373−398;ロジャーズ(Rogers)、ドラッグ・ディスカバリ・ツデイ(Drug Discovery Today)(1997年)2:p156−160)を用いて公知の方法により標識することができる。固定化M−CSFもしくは固定化M−CSFRに特異的に結合させた放射性リガンドは、M−CSF−リガンド複合体もしくはM−CSFR−リガンド複合体を濾過して未結合リガンドから結合リガンドを分離することを含む、いくつかの標準的な方法のうちの任意の方法を用いてHTSアッセイで検出することができる(ウイリアムズ(Williams)、メディカル・リサーチ・レビューズ(Med.Res.Rev.)(1991年)11:p147−184;スウィートナムほか(Sweetnam,et al.)、ジャーナル・オブ・ナショナル・プロダクツ(J.Natural Products)(1993年)56:p441−455)。別の方法としては、このような分離を必要としないシンチレーション近接アッセイ(SPA)もしくはフラッシュプレート方式が挙げられる(ナカヤマ(Nakayama)、カレント・オピニョン・イン・ドラッグ・ディスカバリ・アンド・デベロップメント(Cur.Opinion Drug Disc.Dev.)(1998年)1:p85−91;ボッセほか(Bosse,et al.)、ジャーナル・オブ・バイオモレキュラー・スクリーニング(J.Biomolecular Screening)(1998年)3:p285−292)。蛍光リガンドの結合は、蛍光エネルギー移動(FRET)、結合リガンドの直接分光蛍光光度アッセイ、蛍光偏光(ロジャーズ(Rogers)、ドラッグ・ディスカバリ・ツデイ(Drug Discovery Today)(1997年)2:p156−160;ヒル(Hill)、カレント・オピニョン・イン・ドラッグ・ディスカバリ・アンド・デベロップメント(Cur.Opinion Drug Disc.Dev.)(1998年)1:p92−97)を含む種々の方法で検出することができる。
本発明では、M−CSFもしくはM−CSFRへの基質、リガンド、アダプタもしくはレセプターの結合の阻害剤をスクリーニングし、特定する多数のアッセイ法を企図している。一実施例として、M−CSFもしくはM−CSFRを固定化し、阻害化合物などの候補調節物質の存在および非存在下で、結合相手との相互作用を評価する。別の実施例として、候補阻害化合物の存在および非存在下の両方において、M−CSFもしくはM−CSFRとその結合相手との相互作用を液相アッセイ法で評価する。いずれのアッセイ法においても、阻害剤は、M−CSFもしくはM−CSFRとその結合相手との結合を低減させる化合物として同定される。企図している別のアッセイ法は、1995年8月3日公開のPCT公開番号WO95/20652号に記載されている方法により、形質転換もしくはトランスフェクションした宿主細胞のポジティブシグナルを検出することによってタンパク質タンパク質相互作用の阻害剤を同定する2−ハイブリッドアッセイの変形形態を含む。
本発明で企図している候補調節物質としては、可能性のある活性化剤もしくは阻害剤のライブラリから選択された化合物が挙げられる。低分子調節物質の同定にはいくつかの異なるライブラリを用いることができ、こうしたものとして、(1)化学物質ライブラリ、(2)天然物ライブラリ、および(3)ランダムペプチド、オリゴヌクレオチドもしくは有機分子からなるコンビナトリアルライブラリが挙げられる。化学物質ライブラリは、ランダムな化学構造からなり、その一部は既知の化合物のアナログ、または別の創薬スクリーニングで「ヒット」もしくは「リード」として同定された化合物のアナログであり、一部は天然物から誘導されたものであり、一部は無計画的な(non−directed)合成有機化学反応により得られるものである。天然物ライブラリは、(1)土壌、植物もしくは海洋微生物からのブロス(broth)の発酵および抽出または(2)植物もしくは海洋生物の抽出により、スクリーニングのための混合物を作製するのに用いる微生物、動物、植物もしくは海洋生物のコレクションである。天然物ライブラリとしては、ポリケチド、非リボソームペプチド、およびこれらの改変体(非天然)が挙げられる。サイエンス(Science)282:p63−68(1998年)の概説を参照されたい。コンビナトリアルライブラリは、混合物としての多数のペプチド、オリゴヌクレオチドもしくは有機化合物からなる。このライブラリは、在来の自動合成法、PCR、クローニングもしくは独自開発の合成法による作製が比較的容易である。特に対象となるのは、非ペプチドのコンビナトリアルライブラリである。対象となるさらに別のライブラリとしては、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣体、マルチパラレル(multiparallel)合成コレクション、リコンビナトリアルライブラリおよびポリペプチドライブラリが挙げられる。コンビナトリアル化学およびこれにより作製されるライブラリの概説については、マイヤーズ(Myers)、カレント・オピニョン・イン・バイオテクノロジー(Curr.Opin.Biotechnol.)8:p701−707(1997年)を参照されたい。本明細書に記載した各種ライブラリを用いて調節物質を同定することにより、候補「ヒット」(もしくは「リード」)を修飾してこの「ヒット」の活性調節能を最適化することができる。
本発明により企図されているさらに別の候補阻害剤を設計することができ、このような阻害剤としては、可溶性の結合相手、およびキメラもしくは融合タンパク質などの結合相手が挙げられる。本明細書に用いている「結合相手」は、広く、非ペプチド性調節物質、ならびに抗体、抗体フラグメント、およびM−CSFもしくはM−CSFRに対し免疫特異的な抗体ドメインを含有する修飾化合物を含むペプチド性調節物質を包含する。
M−CSFもしくはM−CSFRの特異的なリガンドを同定するには他のアッセイ法を用いることができ、このような方法としては、標的タンパク質への試験リガンドの直接的な結合について評価することにより標的タンパク質のリガンドを同定するアッセイ、ならびにイオンスプレー質量分析/HPLC法その他の物理的および分析的方法を用いてアフィニティ限外濾過により標的タンパク質のリガンドを同定するアッセイが挙げられる。あるいは、このような結合相互作用参考として本明細書に援用されているフィールズほか(Fields et al.)、ネイチャー(Nature)340:p245−246(1989年)およびフィールズほか(Fields et al.)、トレンズ・イン・ジェネティクス(Trends in Genetics)10:p286−292(1994年)に記載の酵母2−ハイブリッド系を用いて間接的に評価する。この2−ハイブリッド系は、2種のタンパク質もしくはポリペプチド間の相互作用を検出するための遺伝子アッセイ法(genetic assay)である。これを用いることにより、目的の既知のタンパク質に結合するタンパク質同定し、または相互作用に重要な意味を持つドメインもしくは残基を示すことができる。この方法の変法として、DNA結合タンパク質をコードしている遺伝子をクローニングし、タンパク質に結合するペプチドを同定して薬物をスクリーニングする方法が開発されている。この2−ハイブリッド系は、一対の相互作用しているタンパク質が、レポータ遺伝子の上流活性化配列(UAS)に結合するDNA結合ドメインのすぐ近傍に転写活性化ドメインを組み入れることができることを利用したものであり、通常、酵母で実施される。このアッセイ法では、(1)第1のタンパク質に融合するDNA結合ドメインおよび(2)第2のタンパク質に融合する活性化ドメインをコードする2つのハイブリッド遺伝子を構築することが必要とされる。このDNA結合ドメインは、レポータ遺伝子のUASに向けてこの第1のハイブリッドタンパク質を標的化する;但し、多くのタンパク質は活性化ドメインを欠くので、このDNA結合ハイブリッドタンパク質はレポータ遺伝子の転写を活性化しない。活性化ドメインを含む上記第2のハイブリッドタンパク質だけでは、UASに結合しないので、レポータ遺伝子の発現を活性化することができない。しかしながら、両ハイブリッドタンパク質が存在すると、第1および第2のタンパク質非共有結合性の相互作用により、活性化ドメインがUASに繋がれ、レポータ遺伝子の転写が活性化される。例えば、この第1のタンパク質が、別のタンパク質もしくは核酸と相互作用することが知られているM−CSFもしくはM−CSFRまたはそのサブユニットもしくは断片である場合、このアッセイ法を用いて、その結合相互作用を阻害する物質を検出することができる。このレポータ遺伝子の発現、この系に種々の試験物質を加えている間、モニターする。阻害性物質が存在すると、レポータシグナルが無くなる。
また、酵母2−ハイブリッドアッセイ法はM−CSFもしくはM−CSFRに結合するタンパク質同定するのにも用いることができる。M−CSFもしくはM−CSFRまたはそのサブユニットもしくは断片に結合するタンパク質同定するアッセイ法では、M−CSFもしくはM−CSFR(またはサブユニットもしくは断片)とUAS結合ドメイン(即ち、第1のタンパク質)とをコードしている融合ポリヌクレオチドを使用することができる。さらに、それぞれ活性化ドメインに融合させた別の第2のタンパク質をコードしている多数のハイブリッド遺伝子を作製し、このアッセイでスクリーニングする。代表的には、この第2のタンパク質は、第2のタンパク質コーディング領域がそれぞれ活性化ドメインに融合されている、トータルcDNAもしくはゲノムDNA融合ライブラリの1つ以上のメンバによってコードされている。この系は、多種多様なタンパク質に適用することができ、この第2の結合タンパク質の識別性もしくは機能を知ることは必要ですらない。この系は高感度であり、他の方法では明らかにすることができない相互作用をも検出することができ、一時的な相互作用でも転写が誘発されて、繰り返し翻訳されることによりレポータタンパク質を生じ得る安定なmRNAを産生させることができる。
標的タンパク質に結合する物質を探索するには他のアッセイ法を用いることができる。標的タンパク質への試験リガンドの直接結合を同定するためのこのような方法の一つが、参考として本明細書に援用されている米国特許第5,585,277号に開示されている。この方法は、一般にタンパク質が折り畳まれた状態と折り畳まれていない状態との混合として存在し、絶えずこの2つの状態を交互にとるという原理に依拠している。試験リガンドが折り畳まれた形の標的タンパク質に結合する場合(即ち、試験リガンドが標的タンパク質のリガンドである場合)、このリガンドにより結合された標的タンパク質分子は折り畳まれた状態のままである。従って、折り畳まれた標的タンパク質は、この標的タンパク質を結合する試験リガンドの存在下では、リガンドの非存在下よりも広い範囲で存在する。標的タンパク質へのリガンドの結合は、標的タンパク質の折り畳まれた状態と折り畳まれていない状態とを識別する任意の方法によって決定することができる。このアッセイを実施するために標的タンパク質の機能を知っておく必要はない。事実上どんな物質も試験リガンドとしてこの方法により評価することができ、このような物質としては、金属、ポリペプチド、タンパク質、脂質、多糖類、ポリヌクレオチドおよび有機低分子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
標的タンパク質のリガンドを同定するための別の方法が、参考として本明細書に援用されるウィーボルトほか(Wieboldt et al.)、アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)69:p1683−1691(1997年)に記載されている。この技術では、2030物質のコンビナトリアルライブラリを、標的タンパク質への結合について液相で同時にスクリーニングする。標的タンパク質に結合した物質は、単純な膜洗浄によって他のライブラリ成分から分離する。続いて、フィルター上に保持された特に選択された分子を標的タンパク質から遊離させ、HPLCおよび空気圧補助エレクトロスプレー(イオンスプレー)イオン化質量分析により分析する。この方法により、標的タンパク質に最大の親和性を有するライブラリ成分が選択されるので、この方法は低分子ライブラリに対して特に有用である。
本発明の別の実施形態は、本発明のポリペプチドを結合することができる中和抗体がこのポリペプチドに結合させるための試験化合物と特異的に競合する競合的スクリーニングアッセイを用いることを含む。この方法では、上記抗体は、M−CSFもしくはM−CSFRと1つ以上の抗原決定基を共有する任意のペプチドの存在を検出するのに用いることができる。放射標識による競合的結合の検討結果については、A.H.リンほか(A.H.Lin et al.)、アンチマイクロビアル・エージェンツ・アンド・ケモセラピイ(Antimicrobial Agents and Chemotherapy)(1997年)第41巻10号、p2127−2131に記載されており、その開示は本明細書にその全体が参考として援用されている。
本発明の別の実施形態では、本発明のポリペプチドは、相互作用する調節タンパク質同定、特性決定および精製のための研究ツールとして用いられる。当該分野で公知の種々の方法により、本発明のポリペプチドに適切な標識を組み込み、このポリペプチドを相互作用する分子の捕捉のために用いる。例えば、分子をこの標識ポリペプチドとインキュベートした後、洗浄して未結合ポリペプチドを除去し、得られたポリペプチド複合体を定量する。種々の濃度のポリペプチドを使用して得られたデータを用いて、このタンパク質複合体に対するポリペプチドの数、親和性および結合の値を算出する。
また、標識ポリペプチドは、このポリペプチドが相互作用する分子の精製のための試薬としても有用であり、このような分子としては、阻害剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。アフィニティー精製の一実施形態として、ポリペプチドはクロマトグラフィーカラムに共有結合させる。細胞およびその膜を抽出し、種々の細胞小成分をこのカラムにかける。分子はこのポリペプチドとの親和性によってカラムに結合する。得られたポリペプチド複合体は、カラムから分離して回収し、回収した分子についてタンパク質配列決定を行う。次いで、このアミノ酸配列を用いて、捕捉した分子を同定し、もしくは適切なcDNAライブラリからの対応する遺伝子をクローニングするための縮重オリゴヌクレオチドを設計する。
あるいは、M−CSFもしくはM−CSFRのリガンドと同様な特性を有するが、ヒトもしくは動物体内の内因性リガンドよりも低分子で半減期が長い化合物を特定することができる。有機化合物を設計する場合は、本発明による分子を「リード」化合物として用いる。既知の薬学的に活性な化合物に対する模倣体を設計することは、このような「リード」化合物に基づいて医薬品を開発する際のよく知られている方法である。一般に、模倣体の設計、合成および試験は、多数の分子を目的とする特性についてランダムにスクリーニングすることを避けるために行われる。さらに、本発明のポリヌクレオチドによりコードされている推定アミノ酸配列の解析に由来する構造データは、より特異的な、従って薬理学的効力の向上した新薬を設計するのに有用である。
M−CSFもしくはM−CSFRに関する利用可能な情報に基づいて本発明のタンパク質の三次構造を推定するためにはコンピュータモデリング法を使用することができる。従って、M−CSFもしくはM−CSFRの推定構造に基づいた新規なリガンドを設計することができる。
本発明の別の局面として、他の動物のホモログを同定するために、本明細書に開示したM−CSFもしくはM−CSFRのヌクレオチド配列を利用する。本明細書に開示したヌクレオチド配列のうちの任意の配列、もしくはその任意の部分は、例えば、当業者に公知のスクリーニング方法を用いてデータベースまたはゲノムライブラリもしくはcDNAライブラリなどの核酸ライブラリをスクリーニングすることによりホモログを同定するためのプローブとして用いることができる。その結果として、M−CSF配列もしくはM−CSFR配列との相同性が少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも100%であるホモログを同定することができる。
(併用療法)
動物モデルで有効な2種以上のM−CSFアンタゴニストを同定した後、癌転移および/または癌転移に伴う骨量減少に対する有効性をさらに向上させるために、2種以上のこのようなM−CSFアンタゴニストを一緒に混合することはさらに有益であると考えられる。また、癌転移および/または癌転移に伴う骨量減少に罹患しているか、罹患する素因のあるヒトもしくは哺乳動物に対して、1種以上のM−CSFアンタゴニストを含む組成物を投与することができる。
M−CSFアンタゴニスト療法は癌のあらゆるステージに対して有用と考えられるが、進行癌もしくは転移性癌には抗体療法が特に適していると考えられる。化学療法を受けたことがない患者では、この抗体療法に化学療法もしくは放射線療法を併用することが好ましいのに対し、この抗体療法による治療は、1種以上の化学療法を施行されたことのある患者に必要であると考えられる。さらに、抗体療法を行うことにより、特に、化学療法剤の毒性に対する耐容性に乏しい患者において、併用化学療法剤を低投与量で用いることも可能になる。
本発明の方法では、抗M−CSF抗体および抗M−CSFR抗体の単独投与、および異なる抗体の併用もしくは「混液」が企図されている。このような抗体混液は、異なるエフェクタメカニズムを有する抗体を含むか、直接的な細胞傷害性を有する抗体と、免疫エフェクタとしての機能性に依拠する抗体とを併せて含むので、一定の利点がある。このような抗体の併用では、相乗的な治療効果を発揮させることができる。さらに、抗M−CSF抗体および抗M−CSFR抗体の投与は、他の治療剤および/または治療方法と併用して投与することができ、このような治療剤、治療方法としては、各種化学療法剤、アンドロゲン遮断薬、および免疫調節剤(例えば、IL−2、GM−CSF)、ビスホスフォネート(例えば、アレディア(Aredia);ゾメタ(Zometa);クロドロネート(Clodronate))、手術、放射線、化学療法、ホルモン療法(例えば、タモキシフェン(Tamoxifen);抗アンドロゲン療法)、抗体療法(例えば、RANKL/RANK中和抗体、PTHrP中和抗体、抗Her2抗体、VEGF中和抗体)、治療的タンパク質療法(例えば、可溶性RANKLレセプター;OPGおよびPDGFおよびMMP阻害剤)、低分子薬物療法(例えば、Src−キナーゼ阻害剤)、成長因子レセプターのキナーゼ阻害剤;オリゴヌクレオチド療法(例えば、RANKL、RANKもしくはPTHrPアンチセンス)、遺伝子療法(例えば、RANKLもしくはRANK阻害剤)、ペプチド療法(例えば、RANKLのムテイン)ならびに本明細書に記載したタンパク質、ペプチド、化合物および低分子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
癌化学療法剤としては、カルボプラチン、シスプラチンなどのアルキル化剤;ナイトロジェンマスタード系アルキル化剤;カルムスチン(BCNU)などのニトロソウレア系アルキル化剤;メトトレキサートなどの代謝拮抗剤;プリンアナログ系代謝拮抗剤メルカプトプリン;フルオロウラシル(5−FU)、ゲムシタビンなどのピリミジンアナログ系代謝拮抗剤;ゴセレリン、ロイプロリド、タモキシフェンなどのホルモン性抗腫瘍剤;アルデスロイキン、インターロイキン−2、ドセタキセル、エトポシド(VP−16)、インターフェロン−アルファ、パクリタキセル、トレチノイン(ATRA)などの天然由来抗腫瘍剤;ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、マイトマイシンなどの天然由来抗腫瘍性抗生物質;ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、などのビンカアルカロイド系天然由来抗腫瘍剤;ヒドロキシウレア;アセグラトン、アドリアマイシン、イホスファミド、エノシタビン、エピチオスタノール、アクラルビシン、アンシタビン、ニムスチン、塩酸プロカルバジン、カルボコン、カルボプラチン、カルモフール、クロモマイシンA3、抗腫瘍性多糖類、抗腫瘍性血小板因子、シクロホスファミド、シゾフィラン、シタラビン、ダカルバジン、チオイノシン、チオテパ、テガフール、ネオカルチノスタチン、OK−432、ブレオマイシン、フルツロン、ブロクスウリジン、ブスルファン、ホンバン、ペプレオマイシン、ベスタチン(ウベニメクス)、インターフェロン−β、メピチオスタン、ミトブロニトール、メルファラン、ラミニンペプチド、レンチナン、カワラタケ抽出物、テガフール/ウラシル、エストラムスチン(エストロゲン/メクロレタミン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
さらに、癌患者の治療に用いられる別の薬剤としては、EPO、G−CSF、ガンシクロビル;抗生物質、ロイプロリド;メペリジン;ジドブジン(AZT);インターロイキン118(突然変異体およびアナログを含む);インターフェロン−α、βおよびγなどのインターフェロンもしくはサイトカイン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)とアナログ、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)などのホルモン;トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、神経成長因子(NGF)、成長ホルモン放出因子(GHRF)、上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子相同性因子(FGFHF)、肝細胞成長因子(HGF)およびインスリン増殖因子(IGF)などの成長因子;腫瘍壊死因子−αおよびβ(TNF−αおよびβ);浸潤抑制因子−2(IIF−2);骨形成タンパク質7(BMP1−7);ソマトスタチン;サイモシン−α−1;γ−グロブリン;スーパーオキシドジスムターゼ(SOD);補体因子;抗血管新生因子;抗原性物質;およびプロドラッグが挙げられる。
(投与および製剤)
本発明は、化合物、この化合物を含む薬学的処方物、この薬学的処方物を調製する方法、およびこれらの薬学的処方物および化合物で患者を治療する方法を提供する。
このような組成物は、例えば、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、乳剤、エリキシル剤、懸濁剤もしくは液剤の形をとることができる。本発明の組成物は、種々の投与経路、例えば、経口投与、鼻腔内投与、直腸内投与、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射もしくは腹腔内注射用に製剤化することができる。例えば、以下の剤型を示すが、これによって本発明が限定されると解釈されるべきではない。
経口、口腔内および舌下投与の場合、散剤、懸濁剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、ジェルカプセル剤およびカプレット剤が固形剤型として許容される。これらは、例えば、本発明の1種以上の化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは互変異性体(tautomer)を澱粉その他の少なくとも1種の添加剤と混和することにより調製することができる。好適な添加剤は、ショ糖、乳糖、セルロースシュガー、マンニトール、マルチトール、デキストラン、澱粉、寒天、アルギン酸塩、キチン、キトサン、ペクチン、トラガカントゴム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成ポリマーもしくは半合成ポリマーもしくはグリセリドである。必要に応じて、経口投与剤型には、投与し易くするための他の成分、例えば、不活性希釈剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、パラベン、ソルビン酸などの保存剤、アスコルビン酸、トコフェロール、システインなどの抗酸化剤、崩壊剤、結合剤、増粘剤、緩衝剤、甘味剤、矯味矯臭剤または香料などを含ませることができる。さらに、錠剤および丸剤は、当該分野で公知の適切なコーティング剤で処理することができる。
経口投与用液状剤型は、薬学的に受容可能な乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁剤および液剤の形をとることができ、これらには水などの不活性希釈液を含ませることができる。液状懸濁剤および液剤としての薬学的処方物および薬剤は、滅菌液を用いて調製することができ、このような液としては、油、水、アルコールおよびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。経口もしくは非経口投与では、医薬用として好適な界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤を加えることができる。
前述のように、懸濁剤には油を加えることができる。このような油としては、ラッカセイ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、およびオリーブ油が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、懸濁製剤には、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸グリセリド、アセチル化脂肪酸グリセリドなどの脂肪酸のエステルを加えることができる。懸濁製剤には、アルコールを加えることができ、このアルコールとしては、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコール、グリセロールおよびプロピレングリコールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、懸濁製剤に用いることができるものとして、エーテルおよび水があり、このエーテルとしては、例えば、ポリ(エチレングリコール)、鉱物油およびペトロラタムなどの石油炭化水素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
鼻腔内投与用の薬学的処方物および薬剤は、適切な溶剤および、必要に応じて他の化合物を含むスプレー剤もしくはエアロゾル剤とすることができ、この化合物としては、安定剤、抗菌剤、抗酸化剤、pH調節剤、界面活性剤、バイオアベーラビリティ改善剤(bioavailability modifier)およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。噴霧製剤用の高圧ガスとしては、圧縮空気、窒素、二酸化炭素、もしくは炭化水素系低沸点溶媒を挙げることができる。
通常、注射用剤型としては、適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁化剤を用いて調製することができる水性懸濁剤もしくは油性懸濁剤が挙げられる。注射剤型は、液相状態とするか、溶剤もしくは希釈液で調製する懸濁剤の形をとることができる。許容される溶剤もしくはビヒクルとしては、滅菌水、リンゲル液、もしくは等張生理食塩水が挙げられる。あるいは、溶剤もしくは懸濁化剤として、滅菌油を用いることもできる。好ましくはこの油もしくは脂肪酸は、非揮発性のものとし、例えば、天然もしくは合成油、脂肪酸、モノグリセリドジグリセリドもしくはトリグリセリドが挙げられる。
注射用の薬学的処方物および薬剤は、上記のような適切な溶液を用いて再調製するのに適した粉末とすることができる。この例としては、凍結乾燥粉末、回転乾燥粉末もしくは噴霧乾燥粉末、無晶粉末、顆粒、沈殿物、または微粒子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。注射用の製剤には、必要に応じて、安定剤、pH調節剤、界面活性剤、バイオアベーラビリティ改善剤およびこれらの組合せを添加することができる。
直腸内投与用の薬学的処方物および薬剤は、腸管、S状結腸および/または直腸内で化合物を放出させるための坐剤、軟膏剤、浣腸剤、錠剤もしくはクリーム剤の形をとることができる。直腸坐剤は、本発明の1種以上の化合物またはその化合物の薬学的に受容可能な塩もしくは互変異性体(tautomer)を許容されるビヒクルと混和することによって調製することができ、このようなビヒクルとしては、例えば、通常の貯蔵温度では固相状態で存在し、直腸内などの体内で薬物を放出するのに適した温度では液相状態で存在するカカオ脂もしくはポリエチレングリコールが挙げられる。また、ソフトゼラチンタイプの処方物および坐剤の調製に油を用いることができる。ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの懸濁化剤、ならびに緩衝剤および保存剤をも含むことができる懸濁処方物の調製には、水、生理食塩水、デキストラン水溶液および関連糖溶液、ならびにグリセロールを用いることができる。
上述の代表的な剤型に加えて、薬学的に受容可能な賦形剤およびキャリアは、当業者に広く知られており、従って、本発明に含まれる。このような賦形剤およびキャリアについては、例えば、参考として本明細書に援用される「レミングトンズ・ファーマシューティカル・サイエンシズ(Remingtons Pharmaceutical Sciences)」マック出版社(Mack Pub.Co.)、ニュージャージー州(1991年)に記載されている。
本発明の製剤は、下記のように、短時間作用型、迅速放出型、長時間作用型および持続放出型となるよう設計することができる。従って、その薬学的処方物も放出制御型もしくは持続放出型として製剤化することができる。
また、本発明の組成物は、例えば、ミセルもしくはリポソーム、または何らかの他の封入形態を含むこともでき、あるいは持続放出型として投与することにより貯蔵および/または送達効果を延長させることができる。従って、本薬学的処方物および薬剤は、ペレットもしくは円柱状に圧縮して、蓄積注射剤として、またはステントなどの埋没物(implant)として筋肉内もしくは皮下に埋め込むことができる。このような埋没物には、シリコン、生分解性ポリマーなどの既知の不活性物質を用いることができる。
具体的な投与量は、疾患の状態、被験体の年齢、体重、全身的な健康状態、性別および食事、投与間隔、投与経路、排泄率ならびに併用薬剤に応じて調節することができる。有効量を含む上記剤型は、いずれも十分通常の実験法の範囲内にあり、従って、十分本発明の範囲内にある。
本発明の方法により、M−CSFアンタゴニストを含む組成物は、治療上の処置のために非経口、局所的、経口的もしくは局部的に投与することができる。本組成物の投与は、経口的に、または非経口的に、即ち、静脈内、腹腔内、皮内もしくは筋肉内に行うことが好ましい。従って、本発明は、薬学的に受容可能なキャリア、好ましくは水性キャリア中に1種以上のM−CSFアンタゴニストを含む組成物を用いて投与する方法を提供する。水性キャリアとしては、種々のもの、例えば、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなどを用いることができ、これらには、安定性を向上させるために、軽度に化学的修飾などを施したアルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどの他のタンパク質を加えることができる。
多くの場合、癌転移または癌転移に伴う骨量減少の治療に有用なM−CSFアンタゴニストは、実質的に他の天然免疫グロブリンその他の生物学的分子が含まれないように調製することになる。また、好適なM−CSFアンタゴニストは、癌転移および/または癌転移に伴う骨量減少に罹患しているか、罹患する素因のある哺乳動物に投与した時の毒性がごく僅かである。
本発明の組成物は、通常の公知の滅菌技術により滅菌することができる。こうして得られた溶液は、使用のためにパッケージし、または無菌的条件下で濾過して凍結乾燥することができ、凍結乾燥した製剤は滅菌溶液と混合した後、投与することができる。この組成物には、生理的状態に近づけるために必要な薬学的に受容可能な補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどのpH調節剤、緩衝剤、張度調節剤など、および安定剤(例えば、1 20%マルトースなど)を加えることができる。
また、本発明のM−CSFアンタゴニストは、リポソームを用いて投与することができる。リポソームとしては、エマルジョン、泡、ミセル、不溶性単分子層、リン脂質分散体、薄膜層などが挙げられ、これらは、M−CSFアンタゴニストを特定の組織に誘導すると共に、その組成物の半減期を延長させるためのビヒクルとしての役目を果たすことができる。リポソームを調製する方法としては種々のものが利用可能であり、これらについては、例えば、米国特許第4,837,028号および5,019,369号に開示されており、これらの特許は、参考として本明細書に援用されている
こうした組成物中のM−CSFアンタゴニストの濃度は、大幅に、即ち、約10重量%未満、通常少なくとも約25重量%から最大75重量%もしくは90重量%まで変えることができ、選択した特定の投与様式に応じて、主に液量、粘度などにより選定することになる。経口、局所および非経口投与用の組成物の実際の調製方法については、当業者には公知もしくは明らかであり、例えば、参考として本明細書に援用されているレミングトンズ・ファーマシューティカル・サイエンシズ(Remingtons Pharmaceutical Sciences)」第19版、マック出版社(Mack Pub.Co.)、イーストン(Easton)、ペンシルベニア州(1995年)に詳しく記載されている。
患者の癌転移および/または癌転移に伴う骨量減少を治療するための本発明の組成物の有効量は、当該分野で公知の標準的な経験的方法によって決定することができる。例えば、所与の用量のM−CSFを投与した被験体からの血清のインビボでの中和活性は、センシほか(Cenci et al.)、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J Clin Invest)1055:p1279−87、2000年に記載されている、インビトロでのマウス単核細胞(M−CSFにレセプターを高レベルで発現しているCD11細胞のサブセットであるCD11b+細胞)のM−CSF誘発性増殖および生存に対するこの血清の阻害能を測定するアッセイを用いて評価することができる。
本発明の組成物は、癌転移および/または癌転移に伴う骨量減少にすでに罹患しているか、罹患する素因のある哺乳動物に対して、癌転移および/または癌転移に伴う骨量減少の進行を予防もしくは少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療的に有効な用量」と定義される。M−CSFアンタゴニストの有効量は、疾患の重症度および治療される患者の体重および全身状態によって異なるが、概して約1.0μg/kg〜約100mg/kg体重であり、より一般的には1回の適用当たり約10μg/kg約10mg/kgの投与量を用いる。投与は、必要な場合、疾患に対する反応および治療に対する患者の耐容性に応じて、毎日、毎週もしくはより低頻度で行う。長期間にわたる維持投与量を必要とすることがあるので、投与量は、必要に応じて調節することができる。
組成物は、治療する医師の選択する用量レベルおよびパターンで単回もしくは複数回投与することができる。いずれにしても、こうした処方は、癌転移および/または癌転移に伴う骨量減少を効果的に予防し、もしくはその重症度を最小限に抑えるのに十分な量のM−CSFアンタゴニストとなるようにするべきである。本発明の組成物は、癌転移および/または癌転移に伴う骨量減少の治療に対して、単独で、もしくは当該分野で公知の他の治療剤と併用する補助療法として投与することができる。
(II.免疫療法)
癌の治療に有用な抗M−CSF抗体および抗M−CSFR抗体としては、腫瘍に対して強い免疫反応を誘発することができるもの、および直接的な細胞傷害性を有するものが挙げられる。この点について、抗M−CSF抗体および抗M−CSFR抗体は、補体媒介性もしくは抗体依存性細胞傷害(ADCC)メカニズムによって腫瘍細胞の溶解を誘発させることができ、これらのメカニズムには、エフェクタ細胞Fcレセプター部位もしくは補体タンパク質と相互作用するためのこの免疫グロブリン分子の完全な状態のFc部分が必要とされる。さらに、腫瘍増殖に対して直接的な生物学的作用を発揮する抗M−CSF抗体および抗M−CSFR抗体は、本発明の実施に有用である。このような直接的な細胞傷害性を有する抗体が作用する考え得るメカニズムとしては、細胞増殖の阻害、細胞分化の変調、腫瘍血管新生因子プロフィールの変調およびアポトーシスの誘発が挙げられる。特定の抗M−CSF抗体および抗M−CSFR抗体が抗腫瘍効果を発揮するメカニズムは、当該分野で一般に知られている、ADCC、ADMMC、補体媒介性細胞溶解などを調べるために設計された様々なインビトロアッセイ法を用いて評価することができる。
一実施形態として、分泌型M−CSFに対してよりも膜結合型M−CSF(M−CSFα)に対して高い親和性を有する抗体を用いて免疫療法を行う。例えば、M−CSFαの切断部位もしくはその近傍、またはM−CSFαの膜に隣接する部分に特異的に結合する抗体を作製することができる。また、このような抗体は、M−CSFαの可溶性活性部分の切断および遊離を有利に抑制することができる。
抗M−CSF抗体および抗M−CSFR抗体は、「そのままの」形、即ち、非結合型で投与することができ、またはこれらに治療剤を結合させることができる。一実施形態として、抗M−CSF抗体および抗M−CSFR抗体を放射線増感剤としてもちいる。このような実施形態として、抗M−CSF抗体および抗M−CSFR抗体を放射線増感剤と結合させる。本明細書に用いている「放射線増感剤」という用語は、放射線増感させるべき細胞の電磁放射に対する感受性を増大させ、および/または電磁放射線で治療可能な疾患の治療を促進するために、治療的有効量で動物に投与される分子、好ましくは低分子量分子と定義される。電磁放射線で治療可能な疾患としては、新生物疾患、良性および悪性腫瘍、ならびに癌細胞が挙げられる。
本明細書に用いている「電磁放射線」および「放射線」という用語には、10−20 100メートルの波長を有する放射線が含まれるが、これに限定されるものではない。本発明の好ましい実施形態では、電磁放射線として、ガンマ線(10−20 10−13m)、X線(10−12 10−9m)、紫外線(10nm400nm)、可視光線(400nm700nm)、赤外線(700nm1.0mm)、およびマイクロ波(1mm30cm)を用いる。
放射線増感剤は、電磁放射線の毒性作用に対する癌細胞の感受性を増大させることが知られている。多くの癌治療プロトコルでは、x線の電磁放射線により活性化される放射線増感剤が用いられている。X線により活性化される放射線増感剤の例としては、以下のもの、即ち、メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、マイトマイシンC、RSU1069、SR4233、EO9、RB6145、ニコチンアミド、5−ブロモデオキシウリジン(BUdR)、5−ヨードデオキシウリジン(IUdR)、ブロモデオキシシチジン、フルオロデオキシウリジン(FUdR)、ヒドロキシウレア、シスプラチン、ならびにこれらの治療的に有効なアナログおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
癌の光力学療法(PDT)では、この増感剤の放射線アクチベータとして可視光線が用いられる。光力学放射線増感剤(photodynamic radiosensitizer)の例としては、以下のもの、即ち、ヘマトポルフィリン誘導体、フォトフリン(r)、ベンゾポルフィリン誘導体、NPe6、錫エチオポルフィリン(SnET2)、フェオホルビド−a、細菌クロロフィル−a、ナフタロシアニン、フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、およびこれらの治療的に有効なアナログおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の方法の実施に際して用いられる抗M−CSF抗体および抗M−CSFR抗体は、所望の送達方法に適したキャリアを含む薬学的組成物に製剤化することができる。好適なキャリアとしては、抗M−CSF抗体および抗M−CSFR抗体と併用した時に抗体の抗腫瘍機能を保持し、被験体の免疫系に対して反応性を有しない任意の物質が挙げられる。例としては、滅菌リン酸緩衝生理食塩液、制菌水などのいくつかの標準的な薬学的キャリアのうちの任意のキャリアが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
さらに、本発明は、検出可能なように標識した形の上記抗体を提供する。抗体は、放射性同位体、(ビオチン、アビジンなどの)アフィニティー標識、(西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの)酵素標識、(FITCまたはローダミンなどの)蛍光標識、常磁性原子などを用いることによって検出可能なように標識することができる。このような標識化を達成する方法については、当該分野で公知であり、例えば、(シュテルンベルガー、L.A.ほか(Stermberger,L.A.et al.)、ジャーナル・オブ・ヒストケミストリー・アンド・サイトケミストリー(J.Histochem.Cytochem.)18:p315(1970年);バイヤー、E.A.ほか(Bayer,EA.et al.) メソッズ・イン・エンザイモロジー(Meth.Enzym.)62:p308(1979年);エングバル、E.ほか(Engval,E.et al.)、イムノロジー(Immunol.)109:p129(1972年);ゴディング、J.W.(Goding,J.W.)、ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッズ(J.Immunol.Meth.)13:p215(1976年))を参照されたい。
本発明では、「そのままの」抗M−CSF抗体および抗M−CSFR抗体の使用、および免疫複合体の使用が企図されている。免疫複合体の作製については、米国特許第6,306,393号に開示されている。免疫複合体は、治療剤を抗体成分に間接的に結合させることにより作製することができる。一般的な技術については、シーほか(Shih et al.)、インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(Int.J.Cancer)41:p832−839(1988年);シーほか(Shih et al.)、インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(Int.J.Cancer)46:p1101−1106(1990年);およびシーほか(Shih et al.)、米国特許第5,057,313号に記載されている。この一般的な方法は、酸化された炭化水素部分を有する抗体成分と、少なくとも1つの遊離アミン官能基を有し、複数の薬物、毒素、キレート剤、ホウ素アデンド(addend)その他の治療剤を負荷している担体ポリマーとを反応させるものである。この反応により、最初にシッフ塩基(イミン)結合が生じ、これが第二級アミンに還元されることにより安定化されて最終の結合体が形成される。
この担体ポリマーはアミノデキストランもしくは少なくとも50アミノ酸残基数のポリペプチドであることが好ましいが、他の実質的に同等のポリマー担体も使用することができる。この最終の免疫複合体は、投与し易くし、治療のための標的化を効果的にするために、哺乳動物の血清などの水性溶液に可溶性であることが好ましい。すなわち、この担体ポリマーの官能基を可溶性のものとすることにより、最終免疫複合体の血清可溶性が向上する。特に、アミノデキストランとすることが好ましい。
アミノデキストラン担体を含む免疫複合体を作製するためのプロセスは、デキストランポリマーから始めるが、デキストランの平均分子量は約10,000100,000であることが有利である。このデキストランを酸化剤と反応させてその炭化水素環の一部の酸化の制御に影響を及ぼすことによりアルデヒド基を形成させる。この酸化は、通常の方法により、NaIOなどの糖分解化学試薬を用いて都合良く行われる。
次いで、この酸化デキストランをポリアミン、好ましくはジアミン、より好ましくはモノヒドロキシジアミンもしくはポリヒドロキシジアミンと反応させる。好適なアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミンまたは他の同様なポリメチレンジアミン、ジエチレントリアミンまたは同様なポリアミン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンまたは同様なヒドロキシル化ジアミンもしくはポリアミンなどが挙げられる。デキストランのアルデヒド官能基のシッフ塩基性基への変換を実質的に完全なものとするために、上記アミンは、このアルデヒド基に対して過剰量を用いる。
得られたシッフ塩基中間体は、NaBH、NaBHCNなどの還元剤を用いて還元安定化を行う。得られた付加体は、通常のサイジングカラムを通すことにより架橋デキストランを除去することによって精製され得る
デキストランを誘導体化してアミン官能基を導入する他の従来の方法、例えば、臭化シアンと反応させた後、ジアミンと反応させる方法も用いることができる。
次いで、このアミノデキストランは、活性型、好ましくは、通常の方法により、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)もしくはその水溶性改変体を用いて作製したカルボキシル活性化誘導体の形の特定の薬物、毒素、キレート剤、免疫調節剤、ホウ素アデンドその他の負荷すべき治療剤の誘導体と反応させて中間付加体を形成させる。
あるいは、アミノデキストランに対して、アメリカヤマゴボウ抗ウィルスタンパク質もしくはリシンA鎖などのポリペプチド毒素を、グルタルアルデヒド縮合により、もしくはこのタンパク質の活性化カルボキシル基とアミノデキストランのアミンとを反応させることにより結合させることができる。
放射性金属もしくは磁気共鳴エンハンサのキレート剤は当該分野で公知である。代表的なものはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の誘導体である。代表的に、これらのキレート剤は、このキレート剤を担体に結合することができる基を側鎖に有する。このような基としては、例えば、DTPAもしくはEDTAを担体のアミン基に結合することができるベンジルイソチオシアネートが挙げられる。あるいは、担体に対して、キレート剤のカルボキシル基もしくはアミン基を、公知の手段により、活性化し、もしくは前もって誘導体化した後、結合させることによって、結合させることができる。
カルボランなどのホウ素アデンドは、通常の方法により、抗体成分に結合させることができる。例えば、当該分野で公知の方法により、ペンダント側鎖にカルボキシル官能基を有するカルボランを作製することができる。このカルボランの担体、例えば、アミノデキストランへの結合は、カルボランのカルボキシル基の活性化および担体のアミンとの縮合により中間結合体を作製することによって達成することができる。次いで、この中間結合体を抗体成分に結合させることにより、下記のような治療的に有用な免疫複合体を作製する。
アミノデキストランの代わりにポリペプチド担体を用いることができるが、このポリペプチド担体は、鎖内にアミノ酸残基を少なくとも50個、好ましくは1005,000個有する必要がある。また、これらのアミノ酸の少なくとも一部は、リジン残基またはグルタミン酸もしくはアスパラギン酸残基とする必要がある。リジン残基のペンダントアミンならびにグルタミン酸およびアスパラギン酸のペンダントカルボン酸は、薬物、毒素、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素アデンドその他の治療剤を結合させるのに好都合なものである。好適なポリペプチド担体の例としては、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、これらのコポリマー、ならびにこれらのアミノ酸と、得られる負荷担体および免疫複合体に好ましい溶解特性を付与する他のアミノ酸、例えば、セリンとの混合ポリマーが挙げられる。
この中間結合体の抗体成分との結合は、抗体成分の炭化水素部分を酸化し、生じたアルデヒド(およびケトン)カルボニルを、薬物、毒素、キレート剤、免疫調節剤、ホウ素アデンドその他の治療剤を負荷した担体に残存するアミン基と反応させることにより、行うことができる。あるいは、中間結合体を、治療剤を負荷したこの中間結合体に導入したアミン基を介して、酸化抗体成分に結合させることができる。酸化は、化学的に、例えば、NaIOその他の糖分解試薬を用い、または酵素的に、例えば、ノイラミニダーゼおよびガラクトース酸化酵素を用いて好都合に行うことができる。アミノデキストラン担体の場合、代表的に、治療剤を負荷するのに、アミノデキストランのアミンの全てを用いるものではない。アミノデキストランの残るアミンは、酸化抗体成分と縮合させてシッフ塩基付加体を形成させ、通常ホウ化水素還元剤でこれを還元的に安定化する。
類似の方法を用いて、本発明による別の免疫複合体を作製する。負荷ポリペプチド担体は、抗体成分の酸化炭化水素部分と縮合させるための残存遊離リジン基を有することが好ましい。このポリペプチド担体のカルボキシルは、必要に応じて、例えば、DCCで活性化し、過剰のジアミンと反応させることにより、アミンに変換することができる。
最終的な免疫複合体は、セファクリルS−300のサイジングクロマトグラフィ、もしくは1つ以上のCD84Hyエピトープを用いるアフィニティクロマトグラフィなどの通常の方法により、精製する。
あるいは、免疫複合体は、抗体成分を治療剤と直接結合させることによって作製することができる。この一般的な方法は、治療剤を酸化抗体成分に直接結合させる点以外は、上記の間接的な結合方法と同様である。
本明細書に記載したキレート剤の代わりに他の治療剤を用いることができることは、明瞭に理解されよう。当業者は、過度の実験を行わなくても結合スキームを工夫することができよう。
別の例として、還元抗体成分のヒンジ領域に、ジスルフィド結合の形成を介して治療剤を結合させることができる。例えば、単一システイン残基を有する沈降破傷風トキソイドペプチドを構築し、この残基を利用して抗体成分にペプチドを結合させることができる。別の方法として、N−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)などのヘテロ二官能性(heterobifunctional)架橋剤を用いて、このペプチドを抗体成分に結合させることができる。ユーほか(Yu et al.)、インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(Int.J.Cancer)56:p244(1994年)。このような結合の一般的な方法については、当該分野で公知である。例えば、ウォン(Wong)、ケミストリー・オブ・プロテイン・コンジュゲーション・アンド・クロス−リンキング(Chemistry Of Protein Conjugation and Cross−Linking)(CRCプレス(Press)1991年);ウペスラシスほか(Upeslacis et al.)、「化学的方法による抗体の修飾(Modification of Antibodies by Chemical Methods)」モノクロナール・アンチボディズ:プリンシプルズ・アンド・アプリケーションズ(Monoclonal Antibodies:Principles and Applications)、バーチほか(Birch et al.)編、p187−230(ワイリー−リス社(Wiley−Liss,Inc.)1995年);プライス(Price)、「合成ペプチド由来抗体の作製および特徴付け(Production and Characterization of Synthetic Peptide−Derived Antibodies)」モノクロナール・アンチボディズ:プロダクション・エンジニアリング・アンド・クリニカル・アプリケーション(Monoclonal Antibodies:Production,Enineering and Clinical Application)」リッターほか(Ritter et al.)編、p60−84(ケンブリッジ・ユニバーシティ・プレス(Cambridge University Press)1995年)を参照されたい。
前述のように、抗体のFc領域の炭化水素部分は治療剤を結合させるのに用いることができるが、上記免疫複合体の抗体成分として抗体フラグメントが用いられる場合には、このFc領域は存在しなくてもよい。それでも、抗体もしくは抗体フラグメントの軽鎖可変領域に炭化水素部分を導入することは可能である。例えば、リヨンほか(Leung et al.)、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J.Immunol.)154:p5919(1995年);ハンセンほか(Hansen et al.)、米国特許第5,443,953号を参照されたい。次いで、この操作された炭化水素部分を用いて治療剤を結合させる。
さらに、こうした結合方法に対して多種多様な変更を行うことが可能であることは、当業者には理解されよう。例えば、血液、リンパ液その他の細胞外液における完全な状態の抗体もしくはその抗原結合断片の半減期を延長させるために、上記炭化水素部分を利用してポリエチレングリコールを結合させることができる。さらに、炭化水素部分に、およびスルフヒドリル基に治療剤を結合させることにより、「二価の免疫複合体」を構築することも可能である。このような遊離スルフヒドリル基は、抗体成分のヒンジ領域に位置させることができる。
(抗M−CSFおよび抗M−CSFR抗体融合タンパク質)
本発明では、1つ以上の抗M−CSF抗体部分および抗M−CSFR抗体部分と免疫調節剤もしくは毒素部分とを含む融合タンパク質の使用が企図されている。抗体融合タンパク質を作製する方法については、当該分野で公知である。例えば、米国特許第6,306,393号を参照されたい。インターロイキン−2部分を含む抗体融合タンパク質については、ボレッチほか(Boleti et al.)、アナルズ・オブ・オンコロジー(Ann.Oncol.)6:p945(1995年);ニコレほか(Nicolet et al.)、キャンサー・ジーン・セラピィ(Cancer Gene Ther.)2:p161(1995年);ベッカーほか(Becker et al.)、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Pro.Natl.Acad Sci)USA、93:p7826(1996年);ハンクほか(Hank et al.)、クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clin.Cancer Res.)2:p1951(1996年);およびフーほか(Hu et al.)、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)56:p4998(1996年)に記載されている。さらに、ヤンほか(Yang et al.)、ヒューマン・アンチボディズ・アンド・ハイブリドーマズ(Hum.Antibodies Hybridomas)6:p129(1995年)にはF(ab’)断片および腫瘍壊死因子アルファ部分を含む融合タンパク質について記載されている。
また、組換え分子が1つ以上の抗体成分および毒素もしくは化学療法剤を含む抗体−毒素融合タンパク質を作製する方法については当業者に公知である。例えば、抗体−シュードモナス外毒素A融合タンパク質についてはクロードハリーほか(Chaudhary et al.)、ネイチャー(Nature)339:p394(1989年);ブリンクマンほか(Brinkmann et al.)、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Proc.Natl.Acad Sci)USA、88:p8616(1991年);バトラほか(Batra et al.)、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Proc.Natl.Acad Sci)USA、89:p5867(1992年);フリードマンほか(Friedman et al.)、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J.Immunol.)150:p3054(1993年);ウェルズほか(Wels et al.)、インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(Int.J.Can.)60:p137(1995年);フォミナヤほか(Fominaya et al.)、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)271:p10560(1996年);クアンほか(Kuan et al.)、バイオケミストリー(Biochemistry)35:p2872(1996年);およびシュミットほか(Schmidt et al.)、インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(Int.J.Can.)65:p538(1996年)に報告されている。ジフテリア毒素部分を含む抗体−毒素融合タンパク質についてはクライトマンほか(Kreitman et al.)、リューケミア(Leukemia)7:p553(1993年);ニコルスほか(Nicholls et al.)、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)268:p5302(1993年);トンプソンほか(Thompson et al.)、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)270:p28037(1995年);およびバレラほか(Vallera et al.)、ブラッド(Blood)88:p2342(1996年)に報告されている。デオナレインほか(Deonarain et al.)、チューモア・標的化(Tumor Targeting)1:p177(1995年)にはRNアーゼ部分を有する抗体−毒素融合タンパク質が記載されているが、リナルドほか(Linardou et al.)、セル・バイオフィジックス(Cell Biophys.)24−25:p243(1994年)ではDNアーゼI成分を含む抗体−毒素融合タンパク質が作製された。ワンほか(Wang et al.)、アブストラクツ・オブ・ザ・209スACSナショナル・ミーティング(Abstracts of the 209th ACS National Meeting)、アナハイム(Anaheim)、カリフォルニア州、1995年4月2−6日、パートI、BIOT005に報告されている抗体−毒素融合タンパク質では、毒素部分としてゲロニンが用いられた。別の例として、ドールステンほか(Dohlsten et al.)、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Proc.Natl.Acad Sci)USA、91:p8945(1994年)では、ブドウ球菌エンテロトキシン−Aを含む抗体−毒素融合タンパク質が報告された。
このような結合体の作製に好適に用いられる毒素の実例は、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ、DNアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、アメリカヤマゴボウ抗ウィルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素である。例えば、パスタンほか(Pastan et al.)、セル(Cell)47:p641(1986年)、およびゴールデンバーグ、C.A.(Goldenberg,CA)ア・キャンサー・ジャーナル・フォ・クリニシャンズ(A Cancer Journal for Clinicians)44:p43(1994年)を参照されたい。その他の好適な毒素についても当業者には公知である。
以下の実施例によって本発明を説明するが、これらは何ら制限的なものではない。
(実施例1)
この実施例は、高度に転移性の乳癌細胞株が高レベルのM−CSFを発現していることを示すものである。マイクロアレイを用いて、高度に転移性の細胞株MDA231によるM−CSF遺伝子の発現を細胞株MCF7およびZR751によるM−CSF遺伝子の発現と比較した。MDA231のM−CSF発現レベルをMCF7のM−CSF発現レベルと比較した場合、6.9倍の増大、MDA231のM−CSF発現レベルをZR751のM−CSF発現レベルと比較した場合、5.2倍の増大が認められた。
(実施例2)
この実施例は、破骨細胞形成のインビトロアッセイにおいて、精製M−CSFを転移性細胞株MDA231からの馴化培地(CM)で置き換えることができるが、細胞株MCF7では置き換えることができないことを示すものである(図3)。
順化培地(CM)の調製:MDA231もしくはMCF7細胞を、インスリン、ヒトトランスフェリンおよび亜セレン酸を含有する培地サプリメントである1×ITS(BDバイオサイエンシズ社(Biosciences)、レキシントン(Lexington)、ケンタッキー州)を含む8mlの50%DMEM/50%HAMsF12中、1×10個細胞/10cm皿の密度で平板培養した。5%CO中37℃で48時間インキュベーションした後、培地を採取し、1,500RPMで10分間遠心することにより懸濁細胞を除去した。上清を回収し、0.2nMフィルターにより濾過してCMとして用いた。
破骨細胞アッセイ:骨髄CD34細胞を、10%FCS、1×ペン/ストレップ(Pen/Strep)および1×ファンギゾンを含む100μlのアルファMEM中、15,000個細胞/96ウェルの密度で平板培養した。次の日に、培地50μlを各ウェルから除去し、25μlのアルファMEM培地、および75μlのCMもしくは1×ITSを含有する50%DMEM/50%HAMsF12で置き換えた。各ウェルにRANKLを100ng/mlの最終濃度で加え、適切なウェルに30ng/mlのM−CSFを加えた。細胞は、5%CO中37℃で11日間インキュベートした。その間、6日後に新鮮なRANKLを再度加えた。11日後、細胞を固定し、シグマ社(Sigma)製の白血球酸性ホスファターゼキットを用いて酒石酸塩耐性酸性ホスファターゼを染色した。
結果:図3から明らかなように、破骨細胞形成のインビトロアッセイにおいて、精製M−CSFを転移性細胞株MDA231からの馴化培地(CM)で置き換えることができるが、細胞株MCF7では置き換えることができない。
(実施例3)
この実施例は、MDA231CMによる破骨細胞の誘導がM−CSFに対する抗体によって無効化されることを示す(図4)。
実施例2に記載したようにして、骨髄CD34細胞を平板培養した。次の日に、培地50μlを各ウェルから除去した。その後、各ウェルに、25μlの6×抗体5H4またはアルファMEM培地、次いで75μlのCMまたは1×ITSもしくはアルファMEM培地を含有する50%DMEM/50%HAMsF12を加えた。次に、全てのウェルに100ng/mlのRANKLを加え、さらに、半数のウェルには30ng/mlのM−CSFを加えた。次いで、これらの細胞を5%CO中37℃で11日間インキュベートした。その間、6日後に新鮮なRANKLを再度加えた。11日後、細胞を固定し、シグマ社(Sigma)製の白血球酸性ホスファターゼキットを用いて酒石酸塩耐性酸性ホスファターゼを染色した。
図4から明らかなように、MDA231CMによる破骨細胞の誘導がM−CSFに対する抗体によって無効化される。
(実施例4)
この実施例は、ヒトM−CSFに対するモノクロナール抗体5H4(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)登録番号HB10027)およびその他の抗体の中和活性を示すものである(図5)。
マウスM NFS60細胞(インターロイキン3およびM−CSFに反応性で、レトロウイルスの組み込みで生じた切断c−myb癌原遺伝子を含む、Cas−Br−MuLV野性形マウスエコトロピックレトロウイルスで誘発された骨髄性白血病由来の、ATCC、ロックビル(Rockville)、メリーランド州、米国から入手可能なアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション・登録番号CRL−1838)へのヒトM−CSFの活性に対する上記抗体の中和活性を測定するために、組換えヒトCSF−1(最終濃度10ng/ml)を種々の濃度の抗体と共にインキュベータで5%CO中37℃、1時間インキュベートした。インキュベーション後、この混液を96穴マイクロタイタープレート内のM NFS60の培地に加えた。ウェル当たりの全アッセイ容量は、10ng/ml rhM−CSF、図5に示した抗体濃度、5,000細胞/ウェルの細胞密度を含む100μlであった。COインキュベータ中37℃で72時間培養した後、細胞増殖についてCeIITiter Glo Kit(プロメガ社(Promega))によりアッセイした。ヒトM−CSFに対して全ての抗体が惹起された。アノジェン(Anogen)とは、アノジェン社(Anogen)製品カタログ#MO C40048.Aクローン116、アンティジェニックス(Antigenix)とは、アンティジェニックス・アメリカ社(Antigenix America)製品カタログ#MC600520クローンM16、R&Dとは、R&Dシステムズ社(R&D Systems)製品カタログ#Mab216のことを意味する。
図5から明らかなように、細胞増殖は、アノジェンおよびアンティジェニックスに比し、抗体5H4処置で最も影響された。
(実施例5)
この実施例は、癌転移に伴う重症の骨溶解性疾患を予防するのに抗M−CSF抗体が極めて有効であることを示すものである。
実験デザイン:骨溶解処置用治療剤としてのM−CSF抗体の有効性を評価することを目的として、雌性ヌードマウスの脛骨骨髄腔内に高度に転移性のヒト乳癌細胞株MDA231(3×10)を注入した。使用したマウスは、年齢が47週令、平均体重が約20gであった。マウスには識別用のチップを埋め込み、少なくとも7日間の順化期間を置いた後、8週間の実験を開始した。
これらのマウスには総用量1.5mpk(マウス1匹当たり0.3mg)のブプレノルフィンを両側腹部の皮下に投与した後30分で、脛骨内注入を行った。マウスは、イソフルラン吸入により麻酔し、70%エタノールで右後肢を洗った。腫瘍細胞(MDA−MB−231−luc、3×10)を10μlの生理食塩水に懸濁し、50μlもしくは100μl微量注射器を用いて右脛骨骨髄腔内に注入した。
抗体投与について、以下の通り、選択した:
1.マウスIgG1アイソタイプコントロール
2.5H4マウスIgG1抗ヒトMCSF
3.ラットモノクロナールコントロール(TBD)
4.5A1ラットIgG1抗マウスMCSF
5.5H4+5A1(重複投与)
6.マウス+ラットアイソタイプコントロール二重コントロール
(PBSコントロール群なし)
投与。抗体の投与は、腫瘍細胞注入の翌日から開始した。マウスIgG1アイソタイプコントロール、5H4マウスIgG1抗ヒトMCSF、ラットモノクロナールコントロールおよび5A1ラットIgG1抗マウスMCSF抗体(ロークシュウォー、B.L.(Lokeshwar,B.L.)、リン、H.S.( Lin,H.S.)、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J.Immunol.)15:p141(2):p483−8(1988年))の場合、抗体10mg/kgを週1回投与した。併用投与群(5H4+5A1、マウス+ラットアイソタイプコントロール)では、個々の(即ち、混合されていない)抗体10mg/kgを週1回、間隔をおいて投与することにより、これらの処置群のマウスに週2回注射した。
これらの溶液は、100μlのIP注入によって20グラムのマウス当たりの標的用量(=200μg)が送達されるように前もって希釈した濃度(=2mg/ml)で投与した。体重による調整のため、注入容量は、体重差グラム当たり5μl増減させた。例えば、23グラムのマウスには115μl、18グラムのマウスには90μl投与した。
測定。種々の治療群間で骨溶解の重症度を評価するために、腫瘍細胞注入の翌日に、各マウスでベースラインのFaxitron画像を撮影した。実験(8週間)の終了時にもFaxitron画像を撮影した。同時に、これらの腫瘍細胞がルシフェラーゼを安定的に発現するので、Xenogenシステムを用いて腫瘍増殖を測定した。
結果。図6に示したように、平均骨溶解スコアが≧2.5の動物数は、5A1+5H4抗体の併用群で最も少なかった。溶解性骨損傷は、0から4のスケールで評価し、「骨損傷なし」を0、「ある程度骨損傷あり」を12とし、2.25以上のスコアは重症の骨損傷を示すものとした。得られたデータ、マウス(即ち、宿主)により産生されるM−CSFは腫瘍細胞により産生されるM−CSFよりも骨溶解に対して強い効果を有することを示唆した(5H4と5A1とを単独および併用で比較されたい)。
(実施例6)
実施例5で説明した実験を、1つだけを例外として実験デザインのところで記載した方法に基本的に従い、繰り返した。この実験では、抗体処置は、腫瘍接種の2週間後に開始した。腫瘍接種の1日後に後肢のX線像を撮影し、ベースラインの像を得ると共に注入による骨折の有無を調べた。さらに、腫瘍接種の14日後に、Xenogen IVISシステムを用いてマウスをの画像を撮影し、腫瘍細胞からの蛍光の光子放出を定量した。
同様な量の脛骨光子シグナルを有する60匹のマウスを選んだ。胸部にシグナル(人為的肺転移)を有するマウスはこの実験から除外した。選んだマウスは、上記の6投与群に無作為に分け、実施例5に記載したようにして、抗体処置を施した。この実験全体を通して、光子の放出を週に1回連続的にモニターした。腫瘍接種後の第5週から、週に1回X線像も撮影して骨内の腫瘍増殖を評価した。
図7に示したように、平均骨溶解スコアが≧2.5の動物数は、5A1+5H4抗体の併用群で最も少なかった。骨溶解性骨損傷は、0から4のスケールで評価し、「骨損傷なし」を0、「ある程度骨損傷あり」を12とし、2.25以上のスコアは重症の骨損傷を示すものとした。得られたデータ、マウス(即ち、宿主)により産生されるM−CSFは腫瘍細胞により産生されるM−CSFよりも骨溶解に対して強い効果を有することを示唆した(5H4と5A1とを単独および併用で比較されたい)。
(実施例7)
この実施例は、皮下SW620モデルを用いて抗M−CSFモノクロナール抗体の抗癌活性の評価方法を示したものである。上記の実施例5および6では、抗M−CSFモノクロナール抗体処置により骨髄内の腫瘍増殖が著しく抑制されることが明らかとなった。この実験の目的は、この抗体が軟組織内の腫瘍増殖も抑制することができるかどうかを評価することにある。
この実験には、平均体重約20gで10週令の雌性nu/nuマウスを用いる。マウスに少なくとも7日間の順化期間を経させた後、実験を開始する。0日目に、ヌードマウスの右側腹部に、100μl当たりマウス1匹当たり5×10個のSW620ヒト結腸癌細胞を皮下注入する。腫瘍容積が100200mmに達した時(通常、腫瘍接種の1週間後)、以下のように、マウスを1群10匹の5群に無作為に選択した
1)PBS
2)5H4
3)5A1
4)mIgG1+rIgG1アイソタイプAbコントロール
5)5A1+5H4
マウスに、10mpkの指定した抗体を週1回、4週間腹腔内投与する。腫瘍容積が2000mmに達した時にこの実験を終了する。あるいは、以下の条件のいずれかを満たす場合、動物を安楽死させることもできる:総腫瘍表面積の30%を超える腫瘍表面の潰瘍化、著しい体重減少(>20%)、脱水、および瀕死の状態。全てのマウスから全血を採取し、単核細胞集団を可能性のある代替指標として分析する。腫瘍の増殖/サイズを2−D解析により測定する。腫瘍の幅および長さの測定値を用いて腫瘍容積を算出する。軟組織内の腫瘍増殖は、上記の実験の結果として抑制されると予想される。
(実施例8)
以下の実施例は、癌転移に伴う重症の骨溶解性疾患を治療および予防するための併用療法の評価方法を示すものである。
実験デザイン。上記実施例5で説明した実験を、以下の点を例外として、基本的に説明通りに繰り返す。下記の処置群で示した抗体もしくは抗体併用の他に、動物に以下の追加的な処置のうちの1つを行う:
1.ビスホスフォネート(例えば、アレディア(Aredia);ゾメタ(Zometa);クロドロネート(Clodronate))
2.手術
3.放射線療法
4.化学療法
5.ホルモン療法(例えば、タモキシフェン;抗アンドロゲン療法)
6.抗体療法(例えば、RANKL/RANK中和抗体;PTHrP中和抗体)
7.治療的タンパク質療法(例えば、可溶性RANKLレセプター;OPG、PDGFおよびMMP阻害剤)
8.低分子薬物療法(例えば、Srcキナーゼ阻害剤)
9.オリゴヌクレオチド療法(例えば、RANKLもしくはRANKもしくはPTHrPアンチセンス)
10.遺伝子療法(例えば、RANKLもしくはRANK阻害剤)
11.ペプチド療法(例えば、RANKLのムテイン
処置群は以下の通りである。上記の追加的処置は「プラス療法X」として下記に示した:
1.PBSのみ
2.療法Xのみによる処置
3.ラットIgG1アイソタイプコントロール
4.マウスIgG1アイソタイプコントロール
5.5H4抗ヒトMCSFのみ
6.5A1ラットIgG1抗マウスMCSFのみ
7.ラットIgG1およびマウスIgG1アイソタイプコントロール併用
8.5H4および5A1併用
9.ラットIgG1アイソタイプコントロールプラス療法X
10.マウスIgG1アイソタイプコントロールプラス療法X
11.5H4抗ヒトMCSFプラス療法X
12.5A1ラットIgG1抗マウスMCSFプラス療法X
13.ラットIgG1およびマウスIgG1アイソタイプコントロール併用プラス療法X
14.5H4および5A1併用プラス療法X
投与。0.130mg/kgの各抗体を用いてそれぞれの動物に投与した。好ましい投与量は10mg/kgである。投与経路はIV、IP、SCとすることができる。好ましい経路はIPである。投与は、上記実施例5で説明したように、腫瘍細胞注入の翌日から開始する。
測定。各種処置群間で骨溶解の重症度を評価するために、腫瘍細胞注入の翌日に、各マウスでベースラインのFaxitron画像を撮影する。実験(8週間)の終了時にもFaxitron画像を撮影する。同時に、これらの腫瘍細胞がルシフェラーゼを安定的に発現するので、Xenogenシステムを用いて腫瘍増殖を測定する。癌転移に伴う重症の骨溶解性疾患を治療および予防するための併用療法の効果は抗体療法単独に対して向上すると予想される。
(実施例9)
以下の実施例は、蛍光細胞分析分離装置を用いて、例えば、乳癌細胞(細胞株MDA231)もしくは多発性骨髄腫癌細胞(細胞株ARH77)に対するM−CSF特異的抗体の結合能を評価するためのプロトコルを示すものである。
最初に、細胞をPBS(Ca2+、Mg2+を含まない)で2度洗浄した。各10−cmプレートに対して2mlの3mM EDTAを加え、細胞が丸みを帯び、皿から離れ始めるまでこのプレートを37℃で23分間インキュベートした。次に、10mlの緩衝液A(PBS+5%FBS)を加え、混ぜ合わせた。この時、細胞がペレット化したので、これをPBS+5%FBS中に約5×10個/mlの濃度に再懸濁し、この細胞のサンプル当たり100μlを各細管に入れた。
この時点で、0.110ug/mlの一次抗体(示した濃度のM−CSF抗体もしくは対照抗体を使用)を加えた。必要な場合、5%FBS/PBSを用いて希釈した。次いで、この混液を4℃で30分間インキュベートした。このインキュベーションに続いて、細胞を400gで5分間の遠心を3回行うことにより洗浄した後、この細胞をPBSに再懸濁した。
FITCもしくはPE標識抗IgG抗体(0.2ug/サンプル)を1%BSA/PBSで最適希釈度に希釈し、上記細胞をこの溶液に再懸濁して4℃で30分間インキュベートした。次に、前述のようにして、細胞を3回洗浄した。この洗浄後、0.5ml/サンプルのPI−PBSを用いて再懸濁して(必要に応じて、生細胞と死細胞を識別する)。また、この細胞は、その後の分析のために固定することもできる(0.1%ホルムアルデヒドで固定した場合、この細胞は約3日間有効である)。次に、標準的な方法により蛍光活性化(fluorescence−active)FACSを用いて分析した。
図8Aおよび図8Bから明らかなように、M−CSF特異的抗体は、示した種々の抗体濃度で乳癌細胞株MDA231もしくは多発性骨髄腫癌細胞株ARH77に結合した。
(実施例10)
以下の実施例は、M−CSFがいくつかの癌細胞の表面に多く認められることを示すものである。M−CSF特異的抗体を用いて以下の通り、M−CSFの免疫組織化学的染色を行った。
最初に、スライドをオーブンで5560℃、1時間加熱した後、23分間冷却させた。以下の脱ろうおよび再水和パラメータを用いた:
a.キシレン 3×5分
b.100%試薬アルコール 2×5分
c.95%試薬アルコール 2×4分
d.75%試薬アルコール 2×3分
e.50%試薬アルコール 1×3分
g.dI H2O 23回サッとゆすぐ
過酸化物ブロッキング工程の前に、1×Biogenex Citra Plusを用いて抗原回収(antigen retrieval)を行った。最初に、上記溶液をフルパワーでレンジ加熱して沸騰させた。溶液が沸騰すると、すぐにパワーレベル2に切り替えてさらに13分間レンジ加熱した後、冷却させて次に進んだ。過酸化物ブロッキング工程は以下の通り、実施した。スライドを3% (25ml 30%250ml dI )中に浸漬し、室温10分間配置した。次ぎに、このスライドをdI で2回ゆすぎ、1×PBSでの2分間洗浄を2回行った。
アビジン/ビオチンブロッキング工程は以下の通り行った。先ず、スライドを金属台に水平に置き、ブルーPAPペン(疎水性スライドマーカ)で組織の周囲を囲んだ。次に、Zymed社アビジン(試薬A)を2滴−−組織をカバーするのに十分な量−−を加えて、スライドを室温で10分間インキュベートした。インキュベーション後、スライドを以下の通りに洗浄した:
1×PBS中3分間洗浄2回
Zymed社ビオチン(試薬B)2滴、室温10分間
1×PBS中3分間洗浄2回
タンパク質ブロッキング工程は以下の通りに行った。先ず、二次抗体種の10%血清を(最終濃度が2%となるように)加えた。次に、バイオジェネックス・パワー・ブロック(BioGenex Power Block)dI で1×に希釈した。スライドの台をパワー・ブロックに室温で8分間浸漬した後、スライドを1×PBSで2回ゆすいだ。
一次抗体の添加のため、このスライドを金属台に水平に置いた。抗体は各切片をカバーするように加え(約350μl)、この抗体を(必要な場合、)ピペット先端で、組織をこすることなく拡散させた。次いで、スライドを室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、スライドの1×PBSによる35分間の洗浄を3回行った。この時点で、バイオジェネックス・マルチリンク(BioGenex Multi−Link)を切片に適用し、室温で1011分間インキュベートした。次いで、各切片を3分間洗浄した。
標識は、バイオジェネックスHRPラベル(BioGenex HRP Label)を切片に適用した後、室温で1011分間インキュベートし、1×PBSで3分間、3回洗浄することにより行った。次に、切片にバイオジェネックスH基質を加え(2.5mlの につきAECの1滴)、室温で10分間インキュベートした。次いで、切片をdI HOで数回ゆすいだ。対比染色工程は以下の通りに行った。先ず、切片をヘマトキシリンにより室温で1分間染色した。次に、この切片をHOで2回ゆすいだ後、1×PBS中、1分間インキュベートした。次いで、切片をHOでよくすすぐことによりPBSを除去した。切片の封入は、切片にバイオジェネックス・スーパー・マウント(BioGenex Super Mount)を1滴注いだ後、室温で一夜風乾することにより行った。
図9から明らかなように、M−CSFはいくつかの癌細胞の表面に多く認められる。示した癌細胞種の切片は、以下のように、スコア付けした:
0 染色されず
1 バックグラウンドと同程度の染色
2 陽性であるが、弱い染色
3 陽性で、有意な染色
4 陽性で、強い染色
本明細書において参照し、および/または本出願データシートに記載した上記の米国特許、米国出願公開公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許文献については全てその全体が本明細書に参考として援用される
上記の内容から本発明の特定の実施形態が例示を目的として本明細書に記載したものであり、本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の修正を行い得ることは、上記の内容から明瞭に理解されよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除き、限定されるものではない。
図1は、切断されたダイマーM−CSFのジスルフィド結合を示すトポロジーダイアグラムである。 図2は、10残基目ごとに標識し、点線で非結晶対称軸を示したC−アルファ主鎖のステレオダイアグラムである。 図3は、精製M−CSFと、MDA231細胞およびMCF7細胞による順化培地(CM)との間で破骨細胞誘導活性を比較した結果である。 図4は、MDA231細胞による順化培地に対して、精製M−CSFに対するモノクロナール抗体5H4の中和活性を比較した結果である。 図5は、ヒトM−CSFに対する5H4その他の抗体の中和活性を示す。 図6は、平均骨溶解スコア≧2.5の動物数が5A1抗体+5H4抗体の併用投与の群で最も少なかったことを示す。 図7は、平均骨溶解スコア≧2.5の動物数が5A1抗体+5H4抗体の併用投与の群で最も少なかったことを示す。 図8は、M−CSF特異的抗体が乳癌細胞株MDA231もしくは多発性骨髄腫癌細胞株ARH77に結合したことを示す。 図9は、いくつかの癌細胞表面にM−CSFが多く認められることを示す。

Claims (114)

  1. 骨転移を予防するための組成物であって、該組成物は、転移性癌に罹患している被験体への投与に適した治療的に有効量のM−CSFアンタゴニストを含有する、組成物
  2. 骨に対する転移性癌に罹患している被験体を処置するための組成物であって、該組成物は、治療的に有効量のM−CSFアンタゴニストを含有し、それにより該転移性癌に伴う骨量減少の重症度を緩和する、組成物
  3. 前記被験体が、哺乳動物である、請求項1または2に記載の組成物
  4. 前記哺乳動物が、ヒトである、請求項3に記載の組成物
  5. 請求項4に記載の組成物であって、前記アンタゴニストが、M−CSFとそのレセプター(M−CSFR)との相互作用を阻害する、組成物
  6. 請求項5に記載の組成物であって、前記アンタゴニストが、腫瘍細胞により誘発される破骨細胞の増殖および/または分化を阻害する、組成物
  7. 請求項5に記載の組成物であって、前記M−CSFアンタゴニストは、以下:
    a)抗M−CSF抗体を含むポリペプチド;
    b)その抗M−CSFR抗体を含むポリペプチド;
    c)M−CSFムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;または
    d)M−CSFRムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;からなる群より選択される、組成物
  8. 前記M−CSFアンタゴニストが、抗M−CSF抗体である、請求項7に記載の組成物
  9. 前記M−CSFアンタゴニストが、抗M−CSFR抗体を含むポリペプチドである、請求項7に記載の組成物
  10. 前記M−CSFアンタゴニストが、M−CSFムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチドである、請求項7に記載の組成物
  11. 前記M−CSFアンタゴニストが、M−CSFRムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチドである、請求項7に記載の組成物
  12. 請求項8または9に記載の組成物であって、前記抗体は、以下:
    a)ポリクロナール抗体;
    b)モノクロナール抗体;
    c)ヒト化抗体;
    d)ヒト抗体
    e)キメラ抗体;
    f)Fab、F(ab’)もしくはF抗体フラグメント;および
    g)a)〜f)のうちの任意の1種のムテイン
    からなる群より選択される、組成物
  13. 請求項8に記載の組成物であって、前記抗体がモノクロナール抗体5H4(ATCC登録番号HB10027)と同じエピトープに結合する、組成物
  14. 請求項7に記載の組成物であって、前記転移性癌が、乳癌、肺癌、腎癌、多発性骨髄腫、甲状腺癌、前立腺癌、腺癌、白血病およびリンパ腫を含む血液細胞悪性腫瘍;頭頚部癌;胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵癌、肝癌を含む消化管癌;卵巣癌、子宮内膜癌、および子宮頚癌を含む女性生殖管の悪性腫瘍;膀胱癌;神経芽細胞腫を含む脳腫瘍;肉腫、骨肉腫;および悪性黒色腫またはへん平上皮癌を含む皮膚癌である、組成物
  15. 請求項8に記載の組成物であって、前記M−CSFアンタゴニストが、約0.01mg/kgと約100mg/kgとの間の用量での投与に適した抗体である、組成物
  16. 転移性癌に罹患している被験体を処置するための、M−CSFに結合するマウス以外の抗体であって、該転移性癌に伴う骨量減少の重症度を効果的に緩和する、抗体。
  17. モノクロナール抗体5H4と同じM−CSFのエピトープに特異的に結合する、マウス以外のモノクロナール抗体。
  18. モノクロナール抗体5H4と競合して75%より高くM−CSFに結合する、マウス以外のモノクロナール抗体。
  19. 転移性癌に罹患している被験体を処置するための、M−CSFRに結合するマウス以外の抗体であって、該転移性癌に伴う骨量減少の重症度を効果的に緩和する、抗体。
  20. 請求項16に記載の抗体であって、以下:
    a)ポリクロナール抗体;
    b)モノクロナール抗体;
    c)ヒト化抗体;
    d)ヒト抗体
    e)キメラ抗体;
    f)Fab、F(ab’)もしくはF抗体フラグメント;および
    g)a)〜f)のうちの任意の1種のムテイン
    からなる群より選択される、抗体。
  21. 前記抗体が、M−CSFに特異的である、請求項20に記載の抗体。
  22. 前記抗体が、M−CSFRに特異的である、請求項20に記載の抗体。
  23. 前記抗体が、完全にヒト抗体である、請求項20に記載の抗体。
  24. 前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項20に記載の抗体。
  25. 請求項23に記載の抗体を分泌する、ハイブリドーマ。
  26. 請求項20に記載の抗体であって、前記癌が、乳癌、肺癌、腎癌、多発性骨髄腫、甲状腺癌、前立腺癌、腺癌、白血病およびリンパ腫を含む血液細胞悪性腫瘍;頭頚部癌;胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵癌、肝癌を含む消化管癌;卵巣癌、子宮内膜癌、および子宮頚癌を含む女性生殖管の悪性腫瘍;膀胱癌;神経芽細胞腫を含む脳腫瘍;肉腫、骨肉腫;および悪性黒色腫またはへん平上皮癌を含む皮膚癌である、抗体。
  27. 請求項17〜26の抗体のうちの任意の1抗体および薬学的に適したキャリア、賦形剤または希釈剤を含有する、薬学的組成物。
  28. M−CSFアンタゴニストのスクリーニング方法であって、以下、
    a)転移性腫瘍細胞培地、破骨細胞および候補アンタゴニストを接触させる工程;
    b)破骨細胞の形成、増殖および/または分化を検出する工程;ならびに
    c)破骨細胞の形成、増殖および/または分化の低減が検出される場合に、該候補アンタゴニストを、M−CSFアンタゴニストであると同定する工程;
    を包含する、方法。
  29. 前記転移性腫瘍細胞培地が、腫瘍細胞を含む、請求項28に記載の方法。
  30. 請求項28に記載の方法であって、前記接触工程(a)が、非ヒト動物においてインビボで行われ、前記検出工程(b)が、骨転移の大きさおよび/または数を検出する工程を包含し、そして、骨転移の大きさおよび/または数の減少が検出される場合に、前記候補アンタゴニストがM−CSFアンタゴニストとして同定される、方法。
  31. 請求項28に記載の方法であって、前記候補アンタゴニストがM−CSFに結合するか否かを決定する工程をさらに包含する、方法。
  32. 請求項28に記載の方法であって、前記候補アンタゴニストがM−CSFとそのレセプターM−CSFRとの相互作用を阻害するか否かを決定する工程をさらに包含する、方法。
  33. 請求項28に記載の方法であって、前記候補アンタゴニストが、以下:
    a)抗M−CSF抗体を含むポリペプチド;
    b)その抗M−CSFR抗体を含むポリペプチド;
    c)M−CSFムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;
    d)M−CSFRムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;
    e)ペプチド;または
    f)低分子;
    からなる群より選択される、方法。
  34. 前記候補アンタゴニストが、M−CSFムテインである、請求項33に記載の方法。
  35. 前記候補アンタゴニストが、M−CSFRムテインである、請求項33に記載の方法。
  36. 前記候補アンタゴニストが、抗M−CSF抗体である、請求項33に記載の方法。
  37. 前記候補アンタゴニストが、抗M−CSFR抗体である、請求項33に記載の方法。
  38. 骨に対する転移性癌を予防または処置し得るM−CSFアンタゴニストを同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    (a)M−CSFに対する候補アンタゴニストの結合を検出する工程;および
    (b)非ヒト動物においてインビトロもしくはインビボにて該候補アンタゴニストの骨に対する転移性癌を予防もしくは処置する能力をアッセイする工程;
    を包含する、方法。
  39. 骨に対する転移性癌を予防または処置し得るM−CSFアンタゴニストを同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    (a)M−CSFRに対する候補アンタゴニストの結合を検出する工程;および
    (b)非ヒト動物においてインビトロもしくはインビボにて該候補アンタゴニストの骨に対する転移性癌を予防もしくは処置する能力をアッセイする工程;
    を包含する、方法。
  40. 骨に対する転移性癌を予防または処置し得るM−CSFアンタゴニストを同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    (a)M−CSFとM−CSFRとの相互作用を阻害する候補アンタゴニストを同定する工程;および
    (b)非ヒト動物においてインビトロもしくはインビボにて該候補アンタゴニストの骨に対する転移性癌を予防もしくは処置する能力をアッセイする工程;
    を包含する、方法。
  41. 転移性癌を罹患している被験体において、骨転移および腫瘍増殖を防止するための組成物であって、治療的に有効量のM−CSFアンタゴニストおよび治療剤を含有し、それによって該転移性癌に伴う骨量減少を防止し、腫瘍増殖を防止する、組成物
  42. 転移性癌に罹患している被験体を処置するための組成物であって、治療的に有効量のM−CSFアンタゴニストおよび治療剤を含有し、それによって該転移性癌に伴う骨量減少の重症度を緩和し、腫瘍増殖を抑制する、組成物
  43. 前記被験体が、哺乳動物である、請求項41または42に記載の組成物
  44. 前記哺乳動物が、ヒトである、請求項43に記載の組成物
  45. 前記アンタゴニストが、M−CSFとそのレセプターM−CSFRとの相互作用を阻害する、請求項44に記載の組成物
  46. 前記アンタゴニストが、腫瘍細胞により誘発される破骨細胞の増殖および/または分化を阻害する、請求項41に記載の組成物
  47. 請求項45に記載の組成物であって、前記M−CSFアンタゴニストが、以下:
    a)抗M−CSF抗体を含むポリペプチド;
    b)その抗M−CSFR抗体を含むポリペプチド;
    c)M−CSFムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;および
    d)M−CSFRムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;
    からなる群より選択される、組成物
  48. 請求項47に記載の組成物であって、前記抗体が、以下:
    a)ポリクロナール抗体;
    b)モノクロナール抗体;
    c)ヒト化抗体;
    d)ヒト抗体
    e)キメラ抗体;
    f)Fab、F(ab’)もしくはF抗体フラグメント;および
    g)a)〜f)のうちの任意の1種のムテイン
    からなる群より選択される、組成物
  49. 前記治療剤が、ビスホスフォネートである、請求項41または42に記載の組成物
  50. 前記ビスホスフォネートが、ゼレドロネート、パミドロネート、クロドロネート、エチドロネート、チルンドロネート、アレンドロネート、またはイバンドロネートである、請求項49に記載の組成物
  51. 前記治療剤が、化学療法剤である、請求項41または42に記載の組成物
  52. 前記被験体が、ビスホスフォネート処置を受ける工程から除外される、請求項51に記載の組成物
  53. 前記M−CSFアンタゴニストが、治療効果を達成するために必要な治療剤の投薬量を低減するのに効果的である、請求項41または42に記載の組成物
  54. 請求項41または42に記載の組成物であって、投与に適したM−CSF以外のコロニー刺激因子、例えばG−CSFをさらに含有する、組成物
  55. M−CSFアンタゴニストおよび癌治療剤を含有する、薬学的組成物。
  56. M−CSFアンタゴニストを含有する医薬、および該医薬が手術もしくは放射線療法との組み合わせで使用されるべきであるという指示書とを含むパッケージ、バイアルまたは容器。
  57. 被験体に投与し、その後該被験体を手術もしくは放射線療法により処置するのに適した、M−CSFアンタゴニストを含有する、骨に対する転移性癌予防もしくは処置するための組成物
  58. 膜結合M−CSFの細胞外部分に特異的に結合する抗体を含有する、細胞表面に膜結合M−CSFを発現している腫瘍細胞を標的するための組成物
  59. 前記抗体が、放射性核種もしくは他の毒素に結合している、請求項58に記載の組成物
  60. 請求項59に記載の組成物であって、前記抗体が:
    a)ポリクロナール抗体;
    b)モノクロナール抗体;
    c)ヒト化抗体;
    d)ヒト抗体
    e)キメラ抗体;
    f)Fab、F(ab’)もしくはF抗体フラグメント;および
    g)a)〜f)のうちの任意の1種のムテイン
    からなる群より選択される、組成物
  61. 癌を罹患する被験体を処置するための組成物であって、該癌を含む細胞が、M−CSFを分泌せず、該組成物が、M−CSFアンタゴニストを含有する組成物
  62. 転移性癌に罹患している被験体において骨転移を予防するための組成物であって、該被験体の細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量のM−CSFアンタゴニストを含有し、該量が該癌細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量を超えるものである、組成物
  63. 骨に対する転移性癌に罹患している被験体を処置するための組成物であって、該被験体の細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量のM−CSFアンタゴニストを含有し、該量が該癌細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量を超えるものである、組成物
  64. 医薬に使用するための、請求項16〜25のいずれか1項に記載の抗体。
  65. 転移性癌に罹患している被験体の骨転移を予防する医薬の製造における、M−CSFアンタゴニストの使用。
  66. 転移性癌に罹患している被験体の該癌に伴う骨量減少を予防する医薬の製造における、M−CSFアンタゴニストの使用。
  67. 骨に対する転移性癌に罹患している被験体を処置する医薬の製造における、M−CSFアンタゴニストの使用。
  68. 骨に対する転移性癌に罹患している被験体の該癌に伴う骨量減少の重症度を緩和する医薬の製造における、M−CSFアンタゴニストの使用。
  69. 前記被験体が、哺乳動物である、請求項65〜68に記載の使用。
  70. 前記哺乳動物が、ヒトである、請求項69に記載の使用。
  71. 前記アンタゴニストが、M−CSFとそのレセプター(M−CSFR)との相互作用を阻害する、請求項70に記載の使用。
  72. 前記アンタゴニストが、腫瘍細胞により誘発される破骨細胞の増殖および/または分化を阻害する、請求項71に記載の使用。
  73. 請求項71に記載の使用であって、前記M−CSFアンタゴニストが、以下:
    a)抗M−CSF抗体を含むポリペプチド;
    b)その抗M−CSFR抗体を含むポリペプチド;
    c)M−CSFムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;または
    d)M−CSFRムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;
    からなる群より選択される、使用。
  74. 請求項73に記載の使用であって、前記抗体が、以下:
    a)ポリクロナール抗体;
    b)モノクロナール抗体;
    c)ヒト化抗体;
    d)ヒト抗体
    e)キメラ抗体;
    f)Fab、F(ab’)もしくはF抗体フラグメント;および
    g)a)〜f)のうちの任意の1種のムテイン
    からなる群より選択される、使用。
  75. 前記抗体が、M−CSFに特異的である、請求項74に記載の使用。
  76. 前記抗体が、抗体5H4である、請求項75に記載の使用。
  77. 前記抗体が、M−CSFRに特異的である、請求項74に記載の使用。
  78. 請求項73に記載の使用であって、前記転移性癌が、乳癌、肺癌、腎癌、多発性骨髄腫、甲状腺癌、前立腺癌、腺癌、白血病およびリンパ腫を含む血液細胞悪性腫瘍;頭頚部癌;胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵癌、肝癌を含む消化管癌;卵巣癌、子宮内膜癌、および子宮頚癌を含む女性生殖管の悪性腫瘍;膀胱癌;神経芽細胞腫を含む脳腫瘍;肉腫、骨肉腫;および悪性黒色腫またはへん平上皮癌を含む皮膚癌である、使用。
  79. 前記M−CSFアンタゴニストが、約0.01mg/kgと約100mg/kgとの間の用量で投与される抗体である、請求項65〜68に記載の使用。
  80. 転移性癌に罹患している被験体を処置する医薬の製造における、請求項16〜25のいずれか1項に記載の抗体の使用。
  81. 転移性癌に罹患している被験体の、該癌に伴う骨量減少の重症度を緩和する医薬の製造における、請求項16〜25のいずれか1項に記載の抗体の使用。
  82. 転移性癌に罹患している被験体の骨転移および腫瘍増殖を防止する医薬の製造における、M−CSFアンタゴニストおよび治療剤の使用。
  83. 転移性癌に罹患している被験体の該癌に伴う骨量減少を予防する医薬の製造における、M−CSFアンタゴニストおよび治療剤の使用。
  84. 転移性癌を処置する医薬の製造における、M−CSFアンタゴニストおよび治療剤の使用。
  85. 転移性癌に罹患している被験体において、癌に伴う骨量減少の重症度を緩和し、腫瘍増殖を抑制する医薬の製造における、M−CSFアンタゴニストおよび治療剤の使用。
  86. 癌の処置における同時的、個別的もしくは逐次的使用のための組合せ調製物としてM−CSFアンタゴニストおよび治療剤を含む、製品。
  87. 骨に対する転移性癌の予防もしくは処置のための医薬の調製におけるM−CSFアンタゴニストの使用であって、該医薬が癌治療剤と同時に、別個にもしくは逐次的に投与される、使用。
  88. 骨に対する転移性癌の予防もしくは処置のための医薬の調製における癌治療剤の使用であって、該医薬がM−CSFアンタゴニストと同時に、別個にもしくは逐次的に投与される、使用。
  89. M−CSFアンタゴニストを含有する医薬、および該医薬が手術もしくは放射線療法との組み合わせで使用されるべきであるという指示書とを含むパッケージ、バイアルもしくは容器。
  90. 前記被験体が、哺乳動物である、請求項82〜85に記載の使用。
  91. 前記哺乳動物が、ヒトである、請求項86に記載の使用。
  92. 前記アンタゴニストが、M−CSFとそのレセプターM−CSFRとの相互作用を阻害する、請求項90に記載の使用。
  93. 前記アンタゴニストが、腫瘍細胞により誘発される破骨細胞の増殖および/または分化を阻害する、請求項82〜85に記載の使用。
  94. 請求項92に記載の使用であって、前記M−CSFアンタゴニストが、以下:
    a)抗M−CSF抗体を含むポリペプチド;
    b)その抗M−CSFR抗体を含むポリペプチド;
    c)M−CSFムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;または
    d)M−CSFRムテインもしくはその誘導体を含む可溶性ポリペプチド;
    からなる群より選択される、使用。
  95. 請求項94に記載の使用であって、前記抗体が、以下:
    a)ポリクロナール抗体;
    b)モノクロナール抗体;
    c)ヒト化抗体;
    d)ヒト抗体
    e)キメラ抗体;
    f)Fab、F(ab’)もしくはF抗体フラグメント;および
    g)a)〜f)のうちの任意の1種のムテイン
    からなる群より選択される、使用。
  96. 前記治療剤が、ビスホスフォネートである、請求項82〜85に記載の使用。
  97. 請求項96に記載の使用であって、前記ビスホスフォネートが、ゼレドロネート、パミドロネート、クロドロネート、エチドロネート、チルンドロネート、アレンドロネート、またはイバンドロネートである、使用。
  98. 前記治療剤が、化学療法剤である、請求項82〜85に記載の使用。
  99. 前記被験体が、ビスホスフォネート処置を受ける工程から除外される、請求項51に記載の使用。
  100. 被験体に投与する治療剤の用量を低減させて骨転移および腫瘍増殖を処置または予防するための医薬の製造におけるM−CSFアンタゴニストの使用。
  101. 転移性癌に罹患している被験体の骨転移および腫瘍増殖を防止する医薬の製造における、M−CSFアンタゴニスト、治療剤およびM−CSF以外のコロニー刺激因子の使用。
  102. 転移性癌に罹患している被験体の該癌に伴う骨量減少を予防する医薬の製造における、M−CSFアンタゴニスト、治療剤およびM−CSF以外のコロニー刺激因子の使用。
  103. 転移性癌を処置する医薬の製造における、M−CSFアンタゴニスト、治療剤およびM−CSF以外のコロニー刺激因子の使用。
  104. 転移性癌に罹患している被験体において癌に伴う骨量減少の重症度を緩和し、腫瘍増殖を抑制する医薬の製造における、M−CSFアンタゴニスト、治療剤およびM−CSF以外のコロニー刺激因子の使用。
  105. 前記M−CSF以外のコロニー刺激因子が、G−CSFである、請求項101〜103のいずれか1項に記載の使用。
  106. 細胞表面に膜結合M−CSfを発現している腫瘍細胞を標的する医薬の製造における、膜結合M−CSFの細胞外部分に特異的に結合する抗体の使用。
  107. 癌処置用医薬の製造における、(a)膜結合M−CSFの細胞外部分に特異的に結合し、(b)放射性核種もしくは他の毒素に結合している抗体の使用。
  108. 請求項107に記載の使用であって、前記抗体が、以下:
    a)ポリクロナール抗体;
    b)モノクロナール抗体;
    c)ヒト化抗体;
    d)ヒト抗体
    e)キメラ抗体;
    f)Fab、F(ab’)もしくはF抗体フラグメント;および
    g)a)〜f)のうちの任意の1種のムテイン
    からなる群より選択される、使用。
  109. 癌処置用医薬の製造におけるマウス以外の抗M−CSF抗体の使用。
  110. 前記癌を含む細胞が、M−CSFを分泌しない、請求項109に記載の使用。
  111. 骨転移を予防する医薬の製造における、癌細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量を超える量のM−CSFアンタゴニストの使用。
  112. 被験体の細胞により産生されるM−CSFを中和する医薬の製造における、癌細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量を超える量のM−CSFアンタゴニストの使用。
  113. 骨に対する転移性癌に罹患している被験体を処置する医薬の製造における、癌細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量を超える量のM−CSFアンタゴニストの使用。
  114. 癌処置用医薬の製造における、癌細胞により産生されるM−CSFを中和するのに有効な量を超える量のM−CSFアンタゴニストの使用。
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