素子を搭載している第1基板と素子が転写される側の第2基板とを平行に保持して、第1基板上の素子を第2基板に形成された接着層(例えば未硬化樹脂層)に埋め込むという目的を、第1基板裏面側を流体圧で押し圧することで該第1基板を浮上させて第2基板側に押し圧することで、第2基板に対して第1基板を平行にすることで実現したものである。その詳細を以下に説明する。
本発明の素子転写装置に係る一実施の形態の一例を、図1の概略構成図および要部拡大断面図によって説明する。
図1(1)に示すように、素子転写装置1は、第1基板51を載置して該第1基板51裏面側を流体圧で押し圧することで該第1基板51を浮上させて第2基板52側に押し圧する第1基板支持部11と、上記第1基板51に対向するように配置される第2基板52を支持する第2基板支持部12と、第1基板支持部11に載置された第1基板51を第2基板支持部12に支持された第2基板52直下の所定の位置に搬送する基板搬送部41とを備えたものである。
図1(2)は、(1)図中の第1基板支持部11の拡大断面図であり、第1基板支持部11に形成されるもので給気および真空引きを行う孔14を多数形成したものの一例である。上記給気は第1基板51を浮上させるための気体を供給するものであり、上記真空引きは第1基板51を第1基板支持部11に真空吸着させるための真空引きである。
上記孔14は、第1基板支持部11の第1基板載置面全面に均等に分布させる。例えば、第1基板支持部11の基板載置面中心から放射状かつ同心円上に分布させる、第1基板支持部11の基板載置面に碁盤の目状に分布させる、等、種々の分布状態を採用することができる。要するに、各孔14より流体(例えば気体)を第1基板51側に吹き付けた際に、第1基板支持部11の基板載置面と第1基板51の裏面との距離がどの位置においても等距離になるように、第1基板51を浮上させることができるような孔形成となっている。
また、第1基板支持部11の第1基板載置面は、平坦に形成されている必要はあるが、その面は鏡面である必要はない。むしろ鏡面でないほうが好ましい。それは、鏡面に形成されていると、第1基板51の裏面が鏡面に形成されている場合には、第1基板支持部11の基板載置面と第1基板51裏面とが鏡面であるが故に吸着してしまい、孔14より流体(例えば気体)を吹き出そうとしても、容易に第1基板51を浮上させることができなくなる可能性があるためである。したがって、第1基板支持部11の基板載置面は第1基板51が自然吸着しにくく、しかも真空吸着が可能で、かつ第1基板51裏面が傷つき難い面粗さを有することが好ましい。
また、第1基板支持部11の第1基板載置面は高さのそろった多数のピン(図示せず)を配置し、その多数のピン上に第1基板51を載置する構成としてもよい。ピンの高さは数十μm〜数100μmあればよい。これによって、孔14より流体(気体)を吹き出した際に、第1基板支持部11の基板載置面より第1基板51が容易に浮上し易くなる。この場合、ピン先端を平面に形成し、ピン先端面に孔14を形成することが好ましい。
上記第1基板支持部11より吹き出させる流体は気体が好ましく、例えば、空気や窒素もしくは不活性な気体を用いる。例えば、不活性な気体としては希ガスがあげられる。
上記第1基板51には直径が40mm〜200mm(8インチ)程度の平坦度、基板表示と基板裏面の平行度に優れた基板を用いる。基板材料としては、ガラス基板、シリコン基板、セラミック基板等を用いることができる。上記第2基板52には、直径もしくは矩形の一辺の長さが75mm(3インチ)〜2m程度もしくはそれ以上の、平坦度、基板表示と基板裏面の平行度に優れた基板を用いる。この基板材料としては、用途に応じて、ガラス基板、半導体基板、プラスチック基板、セラミック基板等を用いることができる。
上記第1基板51の表面には第2基板52側に転写する素子55が接着される接着層53が形成されている。この接着層53は、樹脂塗布膜、樹脂フィルム等で形成されたもので、表面側が素子55を接着するような接着性を有する。また第2基板52の表面(第1基板51と対向する面)には素子55を接着する接着層54が形成されている。この接着層54は上記接着層52より素子55を接着する力が強いもので、例えば、未硬化樹脂層からなる。この未硬化樹脂層としては、LEDモールド用の素子55を留める力の強いレジスト樹脂をスピンコート、印刷もしくはラミネートにて形成したものを用いることができる。一方、上記接着層53は、例えば、両面粘着材を介して微粘着性を有するシリコーンゴムフィルムをラミネートしたものを用いることができる。または、シリコーン系フィルムの代わりにアクリル系粘着材や樹脂膜など、接着層54よりも弱い接着力を有するものであれば材料は問わない。また形成方法も、フィルムのラミネートに限らず、回転塗布やスタンプ(印刷)による形成方法であっても構わない。
上記基板搬送部41は、主として、粗動ステージ42と微動ステージ43とからなる。上記粗動ステージ42は、基本的には、例えばx、y、z、θ方向に素早く長い距離(例えば数十cm〜2m程度)を移動可能なステージが用いられている。これによって、第1基板51のロード、アンロードおよびタイリング箇所への移動を高速に行うことが可能となっている。また上記微動ステージ43は、基本的には、例えばx、y、z、θ方向に短い距離(例えば数μm〜数百μm程度)を微動可能なステージが用いられている。これによって、アライメント時における高い分解能と高い停止位置精度が実現されている。また、上記粗動ステージ42の動作の一部を上記微動ステージ43の動作に兼ねさせることもできる。例えば上記粗動ステージ42のθ方向の動作を上記微動ステージ43のθ方向の動作に兼ねさせることができる。また、上記微動ステージ43のz方向の動作を後に詳細に説明するあおり部21のZ方向の動作に兼ねさせることもできる。なお、本明細書におけるx方向およびy方向およびz方向は3次元直交座標系における各軸であり、θ方向はx−y面内におけるz軸周りの回転方向である。
また、上記基板搬送部41は、上記第2基板52に形成された接着層54に上記素子55を接着させた状態にして上記素子55から上記第1基板51は引き離す動作を有するものであってもよい。この動作は基板搬送部41のz軸の動作において降下動作を行えばよい。
上記基板搬送部41は、上記第1基板支持部11を介して第1基板51を第2基板52直下の所定の位置まで移動させることが可能になる。したがって、基板搬送部41によって、第1基板51は第2基板52に対して所望の位置に移動することが可能となっている。
上記基板搬送部41と上記第1基板支持部11との間には、第1基板51に接着されている素子55が第2基板52側に接触した状態を感知するセンサ部15が備えられている。このセンサ部15は、例えば、第1基板51に接着した素子55を第2基板52側に押し当てたときにかかる荷重を測定することができる荷重センサを用いることができる。
上記第1基板支持部11の基板支持方法は、機械的な支持、真空吸着による支持もしくはその他の支持手段であってもよい。要するに、第1基板51を浮上させるまで第1基板支持部11に第1基板51が支持固定されるものであればよい。また、第2基板支持部12の基板支持方法は、機械的な支持、真空吸着による支持もしくはその他の支持手段であってもよい。要するに、第2基板支持部12は第2基板52が支持固定されるものであればよい。
上記素子転写装置1には、第1基板支持部11によって第2基板支持部12に支持されている第2基板52に対して第1基板51を所定の位置に位置決めするためのアライメント部65が、例えば第1基板支持部11側に設置されている。このアライメント部65は、例えば第2基板52側に形成されたアライメントマークに第1基板51側に形成されたアライメントマークを一致させるように、上記基板搬送部41を動作させて第2基板52に対して第1基板51をアライメントするものである。
次に、前記図1を用いて上記素子転写装置1の動作の説明をする。
第1基板51を第1基板支持部11上の所定の位置に載置し、第2基板52を第2基板支持部12の所定の位置に支持する。
そして、基板搬送部41の粗動ステージ42および微動ステージ43によって、第1基板51が第2基板52の所定の領域直下に位置するように、移動させる。そして、第2基板52裏面より100μm程度の距離に第1基板51上の素子55を近づけ、精密アライメントを行う。この精密アライメントは、例えば微動ステージ43によって、x方向、y方向、θ方向のアライメントを行い、第2基板52の接着層54の埋め込み位置直下に素子55を導く。
さらに、微動ステージ43をz軸方向に駆動して、第1基板51と第2基板52との間隔を詰める。そして、第1基板51上の素子55が第2基板52側に接触すると、センサ部15がその接触圧力を感知する。このとき、微動ステージ43のz軸方向の駆動を停止する。
次に、第1基板51の真空吸着を解放し、孔14に流体(例えば気体)を供給する給気を行い、上記第1基板支持部11の基板載置面より流体を吹き出して、第1基板支持部11より第1基板51を浮上させる。このときの流体としては、空気もしくは窒素(N2)もしくはアルゴン(Ar)のような希ガスなどを用いる。
気体の吹き出しにより浮上させられた第1基板51上の素子55は、先に第2基板52側に接触した点を支点として、第2基板52の表面形状に倣うように押し圧される。これにより第1基板51上の全ての素子55が第2基板52に形成された接着層54に転写される。
第2基板52側に素子55の接着が完了した後、孔14への流体の供給を停止し、今度は真空引きすることにより、再度第1基板支持部11によって基板51を真空吸着して、第2基板52の接着層54に接着された素子55から第1基板51を引き離し、さらに第1基板支持部11を降下させて、埋め込み転写が完了する。
上記素子転写装置1では、第1基板支持部11は、その上に載置されている第1基板51の裏面側を流体圧で押し圧することで、第1基板支持部11より第1基板51を浮上させて第2基板52側に押し圧する。これにより、第1基板51は流体の圧力によって均等に押し圧されるので、第1基板51上の素子55が第2基板52側に接触した際に、その素子55が第1基板51の面内に複数分布していても、各素子55は均等な圧力で第2基板52の接着層54に押し付けられ、接着される。
基板搬送部41によって、第2基板52に対して第1基板51が平行な状態に、第2基板52の所定の位置直下に移動された場合には、図2(1)に示すように、第1基板支持部11の第1基板51に対する真空吸着を解放し、孔14から気体を吹き出させることで、吹き出させた流体の圧力によって第1基板51の裏面側を押し圧する。これにより、第1基板支持部11より第1基板51が浮上されて、第1基板51上の素子55は第2基板52側に押し圧される。このように、第1基板51は流体(気体)の圧力によって均等に押し圧されるので、第1基板51上の素子55が第2基板52側(接着層54)に接触した際に、その素子55が第1基板51の面内に複数分布していても、各素子55は均等な圧力で第2基板52の接着層54に押し付けられ、接着される。なお、図2、図3では、第1基板支持部11に形成される孔14は、一箇所のみの記載であるが、図面では簡略化して示したのであって実際には、前記説明したように、複数箇所に形成されている。
また、図2(2)に示すように、第1基板支持部11と第2基板支持部12との平行出しが不十分であっても、第1基板支持部11の第1基板51に対する真空吸着を解放し、孔14から気体を吹き出させることで、第1基板51は流体圧(気体の圧力)によって浮上されるので、第1基板51上の素子55が第2基板52側(接着層54)に接触するときには、第1基板51は素子55を介して第2基板52の接着層54を均一な力で押し圧する。よって、素子55が第1基板51の面内に複数分布していても、各素子55は均等な圧力で第2基板52の接着層54に押し付けられ、接着される。
また、図2(3)に示すように、素子55の高さが低い場合であっても、第1基板支持部11の第1基板51に対する真空吸着を解放し、孔14から気体を吹き出させることで、第1基板51は流体圧(気体の圧力)によって浮上されるので、第1基板51上の素子55の一部が第2基板52側に接触すると、その点を支点にして、第1基板51が浮上されて残りの素子55が接着層54に接触される。このため、第1基板51は素子55を介して第2基板52の接着層54を均一な力で押し圧する。よって、素子55が第1基板51の面内に複数分布していても、各素子55は均等な圧力で第2基板52の接着層54に押し付けられ、接着される。
また、図3(4)に示すように、第1基板51の面積が第2基板52と同等近くに大きく、第1基板51の広範囲にわたって素子55がある場合であっても、第1基板支持部11の第1基板51に対する真空吸着を解放し、孔14から気体を吹き出させることで、第1基板51は流体圧(気体の圧力)によって浮上されるので、第1基板51上の素子55の一部が第2基板52側に接触すると、その点を支点にして、第1基板51が浮上されて残りの素子55が接着層54に接触される。このため、第1基板51は素子55を介して第2基板52の接着層54を均一な力で押し圧する。よって、素子55が第1基板51の面内に複数分布していても、各素子55は均等な圧力で第2基板52の接着層54に押し付けられ、接着される。
また、図3(5)に示すように、第2基板52が例えば反りやうねりを生じている場合であっても、第1基板支持部11の第1基板51に対する真空吸着を解放し、孔14から気体を吹き出させることで、第1基板51裏面を流体の圧力(気体の圧力)によって均等に押し圧することから、第1基板51上の素子55の一部が第2基板52側に接触すると、その点を支点にして、第2基板52の表面形状に倣った状態に第1基板51が傾いて第1基板51上の素子55を第2基板52側に押し付ける。このため、第1基板51は素子55を介して第2基板52の接着層54を均一な力で押し圧する。よって、素子55が第1基板51の面内に複数分布していても、各素子55は均等な圧力で第2基板52の接着層54に押し付けられ、接着される。
また、図3(6)に示すように、本発明の素子転写方法では、第1基板51上の素子55の一部が第2基板52の接着層54に接触し、その状態で、第1基板を流体圧で浮上させることから、第1基板51は素子55が接着層54に接触した点を回転中心Oとして回動して、第1基板51は第2基板52に対して平行になる。今、素子55が接着層54に接触したときの第2基板52に対する第1基板51の傾きをθ、回転中心Oから素子までの距離をrとする。また、第2基板52に対して第1基板51が平行な状態で第1基板51を浮上させた場合の素子55の接着位置(転写位置)と、第2基板52に対して第1基板51がθだけ傾いた状態で第1基板51を浮上させた時の接着位置(転写位置)との差をdとすると、d=r(1−cosθ)となるので、θが例えば1度程度であればd=0.0001rであり、θが例えば3度であってもd=0.001rであり、d≒0と見なせる。したがって、上記素子転写装置1による第1基板51から第2基板52への素子55の転写は、正確な位置に行うことができるといえる。
次に、上記第1基板51の形状の変形例について図4の概略構成図により説明する。
図4(1)に示すように、第1基板51の基本形は、平板である。その変形例として、図4(2)に示すように、基板周辺部が基板中央部より低くなっている凸型基板がある。この凸型基板の凸部の側面は図示したように傾斜面とすることが好ましい。傾斜面とすることにより、接着層54を形成し易くなる。特に、接着層54を第1基板51に貼り付け手形成する場合には有効となる。そして、上記凸型基板を用いた場合には、第1基板51が第2基板52に対して傾いた状態で第1基板上の素子55が第2基板52の接着層54に接触した場合、第1基板51のエッジ部分が第2基板54側に接触しにくくなるという利点がある。特に、素子55の高さが低い場合に有効である。
次に、上記第1基板51と第1基板支持部11との支持関係の変形例について図5の概略構成図により説明する。
図5(1)に示すように、第1基板51の周囲に、第1基板51表面よりも低い位置に表面が位置するもので、第1基板支持部11に固着されたガイドリング57を備えてもよい。また、素子55が接着されるもので第1基板51に形成される接着層53は上記ガイドリング57表面に延長されて接着されている。また、上記ガイドリング57は、例えば、第1基板支持部11に設けた吸着孔16により真空吸着させることで、第1基板支持部11に固着させることができる。
上記構成の第1基板支持部11は、ガイドリング57を設け、第1基板51に形成される接着層53をガイドリング57表面に貼り付けたことによって、第1基板支持部11に形成された孔14より気体を第1基板51側に吹き付けた際に、第1基板51上とガイドリング57上との間の接着層53が伸ばされる。言い換えれば、接着層53によって第1基板51が急激に浮上するのを防止することができる。これは、先に説明したように、接着層53が樹脂塗布膜、樹脂フィルム等で形成されるので、弾性を有しているからである。このようにして、第1基板51が、第1基板51上方に配置される第2基板(図示せず)に衝突するのを避けることができる。また、ガイドリング57の表面が第1基板51表面よりも低い位置に形成されていることから、第1基板支持部11を第2基板側に上昇させた際に、ガイドリング57が第2基板側に接触するのを防止することができる。これらによって、第2基板側の損傷を防ぎ、歩留りの向上が図れる。
図5(2)に示すように、第1基板51の周囲に、第1基板51表面よりも低い位置に表面が位置するもので、第1基板支持部11に粘着層58を介して固着されたガイドリング57を備えてもよい。また、上記粘着層58は、第1基板51の裏面側およびガイドリング57の裏面(第1基板支持部11側の面)を粘着するもので、例えば1層の粘着層で形成されている。この粘着層58は、裏面(第1基板51とは反対側の面)は粘着性を有していない。また、第1基板51上には素子(図示せず)を接着する接着層53が形成されている。また、上記ガイドリング57は、その裏面側に粘着されている粘着層58を、例えば、第1基板支持部11に設けた吸着孔16により真空吸着させることで、第1基板支持部11に固着させることができる。
上記構成の第1基板支持部11は、ガイドリング57を設け、第1基板51の裏面(第1基板支持部11側の面)に形成される粘着層58をガイドリング57裏面に貼り付けたことによって、第1基板支持部11に形成された孔14より気体を第1基板51側に吹き付けた際に、粘着層58によって第1基板51が急激に浮上するのを防止することができる。これは、第1基板51に粘着されている部分とガイドリング57に粘着されている部分の間の粘着層58が伸ばされるためである。これにより、第1基板51が第1基板51上方に配置される第2基板(図示せず)に衝突するのを避けることができる。また、ガイドリング57の表面が第1基板51表面よりも低い位置に形成されていることから、第1基板支持部11を第2基板側に上昇させた際に、たとえ、第2基板に対して第1基板支持部11が傾いても、ガイドリング57が第2基板側に接触するのを防止することができる。これらによって、第2基板側の損傷を防ぎ、歩留りの向上が図れる。
図5(3)に示すように、第1基板51の周囲に、第1基板51表面よりも低い位置に表面が位置するもので、第1基板支持部11に接着層53を介して固着されたガイドリング57を備えてもよい。また、素子55が接着されるもので第1基板51に形成される接着層53は上記ガイドリング57裏面に延長されて接着されている。したがって、接着層53は第1基板51表面よりガイドリング57裏面に、1層で形成されている。また、上記ガイドリング57は、接着層53側を、例えば、第1基板支持部11に設けた吸着孔16により真空吸着させることで、第1基板支持部11に固着させることができる。
上記構成の第1基板支持部11は、ガイドリング57を設け、第1基板51に形成される接着層53をガイドリング57裏面に貼り付けたことによって、第1基板支持部11に形成された孔14より気体を第1基板51側に吹き付けた際に、第1基板51上とガイドリング57下との間の接着層53が伸ばされる。この接着層53によって第1基板51が急激に浮上するのを防止することができる。これは、先に説明したように、接着層53が樹脂塗布膜、樹脂フィルム等で形成されるので、弾性を有しているからである。このようにして、第1基板51が第1基板51上方に配置される第2基板(図示せず)に衝突するのを避けることができる。また、ガイドリング57の表面が第1基板51表面よりも低い位置に形成されていることから、第1基板支持部11を第2基板側に上昇させた際に、ガイドリング57が第2基板側に接触するのを防止することができる。これらによって、第2基板側の損傷を防ぎ、歩留りの向上が図れる。
次に、上記素子転写装置1において、機械的に第1基板51と第2基板52との平行出し精度を向上させるあおり部を搭載した素子転写装置の一例を、図6の概略構成図、図7の平面レイアウト図によって説明する。
図6および図7に示すように、前記図1によって説明した素子転写装置1において、基板搬送部41と第1基板支持部11との間にあおり部21、センサ支持部13、センサ部15を設けたものである。
このあおり部21は、例えば前記図1によって説明した上記微動ステージ43に支持されているものであって、上記粗動ステージ42、微動ステージ43によって第2基板52直下の所定位置まで移動させられた第1基板51と、第2基板支持部12に支持されている第2基板52とがほぼ平行になるように調整するものである。その機構の詳細を以下に説明する。
上記あおり部21は、第2基板52に対して第1基板51を平行に位置させるためのものであって、上記微動ステージ43上に設けられた3個の1軸方向(例えばz軸方向)に昇降可能なアクチュエータ22を備えている。上記各アクチュエータ22は、3角形の頂点となる位置に配置されている。通常、基板を支持してその傾きの調整を行うには、その基板を3点で支持することで行うことができる。よって、本実施の形態でも3個のアクチュエータ22により第1基板支持部11を3点で支持している。その支持点は、図7に示すように、第1基板支持部11の中心と中心が一致する正三角形の頂点に位置させることが好ましい。なお、4点以上で支持することもできるが、第1基板支持部11に3点が接触し、残りの1点は接触しない状態もあり得るので、支持点は3点で十分である。また、支持点を第1基板支持部11の中心と中心が一致する正三角形の頂点に位置させることにより、第1基板支持部11を介して第1基板51の傾き調整が行い易くなる。また、微調整の精度を高めるために、図示したように、第1基板支持部11の下面側(第1基板51が支持される側とは反対側)に第1基板支持部11よりも大きなセンサ支持部13が設けられている。この場合には、下記に説明する球面軸受30はセンサ支持部13の裏面側(第1基板支持部11が固定される側とは反対側)に設けられることになる。
上記各アクチュエータ22の可動先端部は以下のような構成となっている。すなわち、アクチュエータ22の駆動軸23先端には回動軸受24が設けられ、この回動軸受24は基板搬送部41上に固定された直動軸25に昇降自在に支持されている直動軸受26を備えている。上記回動軸受24には回動軸27が回動自在に支持されていて、この回動軸26の中心には回動軸27に直交する揺動軸28が形成されている。したがって、回動軸27と揺動軸28はT字型に形成されている。上記揺動軸28の先端部は球形に形成され、その球形部29を受ける球面軸受30が上記第1基板支持部11の裏面(第1基板51を支持する面とは反対側の面)に設けられている。図面では前述したようにセンサ支持部13を設けているので、球面軸受30はセンサ支持部13に設置される。
また、上記各アクチュエータ22の駆動軸となる上記揺動軸28周りでかつ上記回動軸受24と上記球面軸受30との間には、弾性部31が設けられている。この弾性部31は、上記アクチュエータ22の動作により上記第1基板51に接着された素子55が上記第2基板53側に接触した後、さらに上記第1基板51を上記第2基板52側に押し付ける方向に上記アクチュエータ22を動作させた際の上記第1基板51に対する上記アクチュエータ22の動作量を吸収するものである。この弾性部31は、例えばコイルバネにより形成されている。
したがって、上記あおり部21は、以下のように動作する。アクチュエータ22の上昇動作によって回動軸受24が直動軸受26によって摺動支持されて上昇する。このとき回動軸24および揺動軸28も同時に上昇する。そして、揺動軸28に設けられた球形部29によって押し上げられた球面軸受30が上層させられ、球面軸受30が設置されているセンサ支持部13も、当該アクチュエータ22が動作する部分において押し上げられる。各アクチュエータ22はセンサ支持部13上にセンサ部15、第1基板支持部11を介して載置されている第1基板51が第2基板52に対して平行となるように、上昇動作が調整される。このため、各アクチュエータ22の動作量に差が生じる場合がある。
例えば、第1アクチュエータ22(22a)の動作量と第2アクチュエータ22(22b)の動作量とが同じでアクチュエータ22(22c)よりも長いとした場合、アクチュエータ22cに連結されている球面軸受30を回動支点として、センサ支持部13は傾斜する。そのため、第1アクチュエータ22(22a)に連結されている球面軸受30と第2アクチュエータ22(22b)に連結されている球面軸受30は、各アクチュエータ22の動作量が同一のときと比較して単に直上に上昇するのではなく、センサ支持部13の傾きに応じて斜め方向に上昇する。この斜め方向の上昇は、アクチュエータ22の動作端となる球形部29の球面軸受30に対する回転運動と、揺動軸28を支持する回動軸27の回動軸受24に対する回動運動によって、追従するようになっている。
上記あおり部21には、第2基板51側に転写される素子55が貼り付けられている第1基板51を支持し、かつ第1基板51を流体圧によって浮上させる第1基板支持部11が搭載されている。
なお、上記あおり部21ではアクチュエータ22によってz軸方向に昇降可能となっているので、上記基板搬送部41のz軸方向の動作を兼用することもできる。この場合には、上記基板搬送部41においてz軸方向の動作機構を省略することができる。
上記センサ部15は、上記第1基板51に接着されている素子55が上記第2基板52側に接触した状態を感知するもので、上記第1基板支持部11と上記あおり部21の第1基板支持部12側に形成されたセンサ支持部13との間に設けられている。このセンサ部15は、例えば、第1基板51に接着した素子55を第2基板52側に押し当てたときにかかる荷重を測定する荷重センサを用いることができる。
また、上記測定部61は、上記第1基板51を上記第2基板52に接近させたときに第1基板51が第2基板52と接触したことで第1基板51の動作が停止した位置を測定するとともに、第1基板51が停止した後の上記あおり部21の動作量を測定するもので、それぞれのアクチュエータ22について設けられている。この測定部61は、例えば変位量を読み取ることができるリニアスケールを用いることができる。さらに、第2基板52に対して第1基板51の位置合わせを行うためのアライメント部65が、例えば第1基板支持部11に設けられている。
上記素子転写装置1では、基板搬送部41によって第1基板51を第2基板52の直下の所定の位置に移動させるのをスムーズに行うため、予め、第2基板52に対する第1基板51の各移動位置において、第1マスター基板と第2マスター基板とを用いたプリレベリング動作を行って、基板搬送部41の移動位置を予め設定しておくことが好ましい。このようなプリレベリング動作を行うことにより、第2基板52に対する第1基板51のアライメント動作を速く行うことができるようになる。
プリレベリング動作は以下のようにして行う。まず、第1マスター基板(図示せず)と第2マスター基板(図示せず)とを用意する。両基板ともに寸法精度(特に厚さおよび平坦度の寸法精度)の高い基板を用いる。そして第1基板支持部11に第1マスター基板を載置する。また、第2基板支持部12に第2マスター基板を載置する。
次いで基板搬送部41を駆動して、第2マスター基板に対して、第1マスター基板を接触させる所定の位置の下方に第1マスター基板を移動する。このときのx、y、z、θ方向のアライメントはアライメント部により行うこともできる。
上記あおり部21のアクチュエータ22を上昇させる動作を行い、第1マスター基板を第2マスター基板に近づけて行く。このとき、各アクチュエータ22の動作量と、各軸に取り付けたリニアスケールからなる測定部61の測定値と、荷重センサからなるセンサ部15の測定値を常に監視しておく。
やがて、第1マスター基板の少なくとも一部が第2マスター基板に接触する。例えば各アクチュエータ22のうちの一つのアクチュエータ22a(今、第1アクチュエータとする)に対応する第1マスター基板の位置で第2マスター基板に接触したとすると、第1マスター基板が第2マスター基板に接触した状態を感知するセンサ部15が反応する。すなわち第1マスター基板にかかる荷重が増加方向になったことを検出する。
そのとき、第1アクチュエータ22aとセンサ支持部13との間に設けられた弾性部31は縮み、その第1アクチュエータ22aを上昇動作させてもその第1クチュエータ22aが支持する第1マスター基板の部分は変動しなくなる。このようにマスター基板同士が接触すると、第1アクチュエータ22aを動作させ続けても、弾性部31が縮むだけで、第1マスター基板は上昇せず、測定部61の値も変化しなくなり、第1アクチュエータ22aの動作量と測定部61の測定値に差ができはじめる。また、センサ部15の値が増加しはじめる。
やがて、各アクチュエータ22の全てが上記状態になる。このとき、第1マスター基板と第2マスター基板の全面が接触したと判断し、そのときの測定部61の測定値を個別に記憶させる。
次に、第1マスター基板を下降させ、次の埋め込み位置に移動させ、再び上記の一連の動作を繰り返す。これを全ての埋め込み位置で行い、プリレベリングが完了する。このプリレベリングは、素子転写装置1が完成した時、素子転写装置1を設置した時、素子転写装置1の調整を行ったとき等、素子転写装置1に対して機械的、電気的もしくはソフト的に変更したときに行うことが好ましい。
次に、前記図6〜図7を用いて、あおり部21を搭載した上記素子転写装置1の動作の説明をする。
第1基板51を第1基板支持部11上の所定の位置に載置し、第2基板52を第2基板支持部12の所定の位置に支持する。
そして、基板搬送部41の粗動ステージ42および微動ステージ43によって、第1基板51が第2基板52の所定の領域直下に位置するように、移動させる。このとき、先にプリレベリング動作によって求めておいた測定位置に基づいて、第1基板51の直下100μm〜300μmの範囲内に第1基板51を移動させる。
次に、各アクチュエータ22を上昇動作させ、第1基板51を第2基板52側に接近させる。
このとき、各アクチュエータ22のうち、例えば第1基板51を第2基板52側に近づけさせている各アクチュエータ22のうちの一つのアクチュエータ22(今、第1アクチュエータ22aとする)に対応する第1基板51の位置で、第1基板51に接着された素子55の一部が第2基板52側の接触層54に接触したとすると、上記素子55が上記第2基板52側に接触した状態を感知する上記センサ部15が反応する。すなわち第1基板51にかかる荷重が増加方向になったことを検出する。このときの第1アクチュエータ22aの位置を測定部61により測定しておく。
そのとき、第1アクチュエータ22aとセンサ支持部13との間に設けられた弾性部31は縮み、その第1アクチュエータ22aを上昇動作させてもその第1クチュエータ22aが支持する第1基板51の部分は変動しなくなる。そして、第1アクチュエータ22aが上記上昇動作している際に、測定部61により、先に測定しておいた第1基板51と第2基板52との接触位置における第1アクチュエータ22aの位置と、現在の第1アクチュエータ22aの位置とを比較し、所定の範囲内にあるならば、第1アクチュエータ22aの上昇動作を停止する。
一方、第1アクチュエータ22a以外の第2アクチュエータ22(22b)、第3アクチュエータ22(22c)は、第1基板51を第2基板52側に接近させる動作を継続する。そして、例えば、残りの二つのアクチュエータ22b、22cのうち、例えば一つのアクチュエータ(今、第2アクチュエータ22bとする)に対応する第1基板51の位置で第2基板52側の接触層54に接触したとすると、上記素子55が第2基板52側に接触した状態を感知する上記センサ部15が反応する。すなわち第1基板にかかる荷重が増加方向になったことを検出する。このときの第2アクチュエータ22bの位置を測定部61により測定しておく。
そのとき、第2アクチュエータ22bとセンサ支持部13との間に設けられた弾性部31は縮み、その第2アクチュエータ22bを上昇動作させてもその第2クチュエータ22bが支持する第1基板51の部分は変動しなくなる。そして、第2アクチュエータ22bが上記上昇動作している際に、測定部61により、先に測定しておいた第1基板51と第2基板52との接触位置における第2アクチュエータ22bの位置と、現在の第2アクチュエータ22bの位置とを比較し、所定の範囲内にあるならば、第2アクチュエータ22bの上昇動作を停止する。
そして、最後に、残りの第3アクチュエータ22cの第1基板51を第2基板52側に接近させる動作を継続する。そしてこの第3アクチュエータ22cに対応する第1基板51の位置で第2基板52に接触したとすると、上記素子55が第2基板52側に接触した状態を感知する上記センサ部15が反応する。すなわち第1基板51にかかる荷重が増加方向になったことを検出する。このときの第3アクチュエータ22cの位置を測定部61により測定しておく。
そのとき、第3アクチュエータ22cとセンサ支持部13との間に設けられた弾性部31は縮み、その第3アクチュエータ22cを上昇動作させてもその第3クチュエータ22cが支持する第1基板51の部分は変動しなくなる。そして、第3アクチュエータ22cが上記上昇動作している際に、測定部61により、先に測定しておいた第1基板51と第2基板52との接触位置における第3アクチュエータ22cの位置と、現在の第3アクチュエータ22cの位置とを比較し、所定の範囲内にあるならば、第3アクチュエータ22cの上昇動作を停止する。
このようにして、3軸のアクチュエータ22全てにおいて、第1基板51に接着された素子55の全域が第2基板52側に接触し、各アクチュエータ22を上昇動作させても弾性部31が変形する(縮む)のみで、第1基板51の位置の変動は起こらなくなる。このときの上記センサ部15が測定する荷重は均一な値となっていることが好ましいが、所定の範囲内であればよい。また、上記測定部61の値は、予め測定して求めた第1基板51と第2基板52との接触位置から所定の範囲内になっていれば、第1基板51と第2基板52とは平行になっていると見なすことができ、素子55を第2基板52側に接着することができると判断される。また、上記アクチュエータ22の動作量が実質、あおり部21の動作量となっている。
上記素子転写装置1では、あおり部21を設けたことにより、第1基板51の傾きを微調整することによって第2基板52に対して第1基板51を平行に配置することが可能になる。またあおり部21を移動させる基板搬送部41を設けたことにより、基板搬送部41上にあおり部21、第1基板支持部11を介して支持される第1基板51を第2基板52直下の所望の位置に移動させることが可能になる。また第1基板51と第2基板52とに非接触で第1基板51と第2基板52との間隔を測定する測定部61を備えたことにより、第1基板51と第2基板52とが対向する面に接着性の層(第1接着層53、第2接着層54)を形成してもその第1接着層53、第2接着層54に測定部61が接触することはない。このような特徴を有する素子転写装置1では、第1基板51に貼り付けられている素子55を第2基板52側に平行に押し付けることが可能になる。その際、第1基板51と第2基板52とが平行になっているので、基板同士が接触することがない。このため、第2基板52を損傷することなく、第1基板51側の素子55を第2基板52側に押し付けることができるという利点がある。よって、素子55の転写技術における歩留りの向上が図れる。
さらに、本発明の素子転写装置1では、第1基板51と第2基板52とのどちらも不透明な基板であっても差し支えなく、第1基板51と第2基板52との平行出しを行うことができるので、第1、第2基板基板材料を選択する自由度が高い特徴を有する。また、基板に素子、配線等形成されていても問題無く、第1基板51と第2基板52との平行出しが行えるという特徴を有している。したがって、基板の平行出しによる各基板に形成されるデバイスの設計自由度は影響を受けない。
また、各基板を支持する第1、第2基板支持部11、12も上記同様に、不透明な基板であっても差し支えなく、第1、第2基板支持部11、12の材料選択の自由度が高い特徴を有する。また、一枚の基板で形成することができるので、第1、第2基板支持部11、12の各基板支持面の平坦度を高精度に加工することができ、基板を支持した際の平行出し精度が高めることができる。
次に、本発明の素子転写方法に係る一実施の形態の一例を、図8の製造工程図により説明する。なお、本発明の素子転写方法は、上記本発明の素子転写装置1を用いて成される方法である。したがって、上記図1も参照していただきたい。また、以下の説明における各構成部品には上記素子転写装置の説明で示した構成部品の符号を付与した。
本発明の素子転写方法は、第1基板51上の素子55を第2基板55に形成された接着層54に接着させて、第2基板52側に接着された素子55から第1基板51を離間させる素子転写方法において、前記図1、図4〜図7等によって説明した素子転写装置1を用いて行う方法であり、第1基板51上の素子55を第2基板52に接近もしくは接着層54の一部に接触させた状態にする素子接近・接触工程と、第1基板51を流体による圧力によって第2基板52側に押し圧して、素子55を接着層54に接着させる素子接着工程と、素子55を接着層54に接着した状態で第1基板51を素子55から引き離す基板離間工程とを備えている。以下、具体的に説明する。
図8(1)に示すように、「素子接近・接触工程」S1を行う。この工程では、上記第1基板51を第1基板支持部11に支持させる。この支持方法は、例えば、第1基板51の表面(第1接着層53側)を上にして、第1基板51の裏面を第1基板支持部11側にして、例えば孔14からの真空引きによる真空吸着により支持される。また、上記第1基板51には、例えば直径Φ=40mmからΦ200mm(8インチ)程度の基板が用いられる。また、第1基板51表面に形成された第1接着層53に接着された素子55は、例えば5μm〜100μm程度の大きさであり、その高さは5μm〜100μm程度である。また、第1基板51に接着されている個数は10個〜100万個程度である。
次に上記第2基板52を第2基板支持部12に支持させる。この支持方法は、例えば、第2基板52の表面(第2接着層54側)を下にして、第2基板52の裏面を第2基板支持部12側にして、真空吸着により支持される。なお、第1基板支持部11に対する第1基板51の支持は着脱自在にした機械的固定であってもよい。また、上記第2基板52には、例えば直径Φ=75mm(3インチ)から2m四方程度の基板が用いられる。なお、第2基板52は2mシリコン法よりも大きな基板を用いることも可能である。また上記第2基板52の表面には、第2接着層54が形成されている。この第2接着層54は、素子55が接着されている第1接着層53の接着力よりも上記素子55に対して大きな接着力を有する。また、上記第2基板52に形成される第2接着層54は、例えば未硬化樹脂層からなり、この未硬化樹脂層は、例えば、いわゆるタックに強いレジスト膜を、回転塗布法、印刷法、ラミネート法等の成膜方法により形成したものである。なお、上記第1基板支持工程と上記第2基板支持工程とはどちらを先に行ってもよい。
次に、上記第1基板51と上記第2基板52とを所定の距離を保って対向させる。具体的には、上記アライメント部65(前記図1参照)の測定に基づいて上記基板搬送部41(前記図1参照)を例えばx−y方向およびθ方向に移動させることにより、第1基板51と第2基板52直下の所定の位置に移動させる。このときの第1基板51上の素子55表面と第2基板52の接着層54表面との距離は例えば30μm〜100μm程度とする。
なお、第2基板52に対して第1基板51が傾いて第2基板52側に接近した場合には、上記基板搬送部41によって第1基板支持部11をさらにz方向に徐々に移動させると、第1基板51上の素子55の一部が第2基板52側、すなわち接着層54に接触する。このとき、センサ部15によって圧力上昇が検出されるので、素子55の少なくとも一部が接着層54に接触したことが検出される。
次に、図8(2)に示すように、上記「素子接着工程」S2を行う。この工程では、第1基板支持部11の孔14より気体を第1基板51側に吹き付けて第1基板51を気体の圧力によって浮上させ、第2基板52側に押し圧して、第1基板51上の素子55を接着層54に接着させる。図面では、簡略しているため、孔14は一個しか描かれていないが、孔14は多数設けられている。そのため、第1基板51の裏面側全面に均等な圧力で気体が吹き付けられている。よって、接着層54に押し圧された素子55は、各素子55の全域にわたって均等な圧力で接着層54に押し圧される。第1基板51の押圧力の調整は、上記気体の圧力(流量)を調整することにより行う。これにより、第1基板51の素子55を第2基板52側に適度な圧力で押し圧力することができるので、素子55を第2基板52に形成された接着層54に適切な深さで埋め込むことができる。よって、素子55を確実に接着層54に接着させることができる。
そして、上記接着層54が硬化し、素子55が接着層54に十分接着するようになるまで、第1基板51を気体によって押し圧する状態を保持する。
次に、図8(3)に示すように、上記「基板離間工程」S3を行う。この工程では、素子55を接着層54に接着した状態で第1基板51を素子55から引き離す。この引き離し動作は、例えば、孔14からの気体の吹き出しを停止して、孔14を真空引きすることで、再び孔14からの真空引きにより第1基板51を第1基板支持部11に真空吸着させることにより行う。さらに上記基板搬送部41(前記図1参照)によってz軸方向に沿って第1基板支持部11を下降させる。
上記素子転写方法では、「素子接近・接触工程」S1によって、第1基板51上の素子55を第2基板52に接近もしくは接着層54の一部に接触させた状態にした後、「素子接着工程」S2によって、流体の圧力により第1基板51を第2基板52側に押し上げるため、第1基板51上に複数の素子55がある場合には各素子55は均等な力を受けて接着層54に接着される。すなわち、第2基板52に対して第1基板51を平行にした状態で第1基板51の素子を第2基板52側に接着することができる。しかも、「素子接近・接触工程」S1によって、第1基板51上の素子55を第2基板52に接近もしくは第2基板52側の接着層54の一部に接触させた状態にすることで、素子55は第2基板52側の接着位置に正確に導かれる。
また、上記素子転写方法は、第1基板51は流体の圧力により浮上されて第2基板52側に押し圧されるので、上記第1基板51を第2基板52に接近させたとき、種々の要因によって、第2基板52に対して第1基板51が傾いて接近した場合にも対応することができる。その詳細について、前記図2〜図3によって説明する。
前記図2(2)に示すように、第1基板支持部11と第2基板支持部12との平行出しが不十分な場合には、本発明の素子転写方法では、第1基板51上の素子55の一部が先に第2基板52の接着層54に接触する。素子55が接触したか否かの判断は、例えばセンサ部15によって第1基板51にかかる圧力を検出すると、圧力上昇が見られることで判定できる。その後、第1基板支持部11の孔14より気体を第1基板51側に吹き付けて、接着層54に接触した素子55の接触点を支点として、第1基板51を浮上させる。そして、気体の圧力によって第1基板51を第2基板52側に押し圧して、第1基板51上の素子55を接着層54に接着させる。第1基板51は気体の圧力によって浮上される方向に動作するので、第1基板51上の素子55が第2基板52側に接触するときには、第1基板51は素子55を介して第2基板52の接着層54を均一な力で押し圧する。よって、素子55が第1基板51の面内に複数分布していても、各素子55は均等な圧力で第2基板52の接着層54に押し付けられ、接着される。
また、前記図2(3)に示すように、素子55の高さが低い場合には、従来の転写技術では、素子55の一部が接着層54に接触しないものが生じるが、本発明の素子転写方法では、第1基板51は流体圧(気体の圧力)によって浮上されるので、第1基板51上の素子55の一部が第2基板52側に接触すると、その点を支点にして、第1基板51が浮上されて残りの素子55が接着層54に接触される。このため、第1基板51は素子55を介して第2基板52の接着層54を均一な力で押し圧する。よって、素子55が第1基板51の面内に複数分布していても、各素子55は均等な圧力で第2基板52の接着層54に押し付けられ、接着される。
また、前記図3(4)に示すように、第1基板51の面積が第2基板52と同等近くに大きく、第1基板51の広範囲にわたって素子55がある場合には、従来の転写技術では、素子55の一部が接着層54に接触しないものが生じるが、本発明の素子転写方法では、第1基板51は流体圧(気体の圧力)によって浮上されるので、第1基板51上の素子55の一部が第2基板52側に接触すると、その点を支点にして、第1基板51が浮上されて残りの素子55が接着層54に接触される。このため、第1基板51は素子55を介して第2基板52の接着層54を均一な力で押し圧する。よって、素子55が第1基板51の面内に複数分布していても、各素子55は均等な圧力で第2基板52の接着層54に押し付けられ、接着される。
また、前記図3(5)に示すように、第2基板52が例えば反りやうねりを生じている場合には、従来の転写技術では、素子55の一部が接着層54に接触しないものが生じるが、本発明の素子転写方法では、第1基板51裏面を気体の圧力によって均等に押し圧することから、第1基板51上の素子55の一部が第2基板52側に接触すると、その点を支点にして、第2基板52の表面形状に倣った状態に第1基板51が傾いて第1基板51上の素子55を第2基板52側に押し付ける。このため、第1基板51は素子55を介して第2基板52の接着層54を均一な力で押し圧する。よって、素子55が第1基板51の面内に複数分布していても、各素子55は均等な圧力で第2基板52の接着層54に押し付けられ、接着される。
また、前記図3(6)に示すように、本発明の素子転写方法では、第1基板51上の素子55の一部が第2基板52の接着層54に接触し、その状態で、第1基板を流体圧で浮上させる場合には、第1基板51は素子55が接着層54に接触した点を支点Oとして回動して、第1基板51は第2基板52に対して平行になる。今、素子55が接着層54に接触したときの第2基板52に対する第1基板51の傾きをθ、支点Oから素子55までの距離をrとする。また、第2基板52に対して第1基板51が平行な状態で第1基板51を浮上させた場合の素子55の接着位置(転写位置)と、第2基板52に対して第1基板51がθだけ傾いた状態で第1基板51を浮上させた時の接着位置(転写位置)との差をdとすると、d=r(1−cosθ)となるので、θが例えば1度程度であればd=0.0001rであり、θが例えば3度であってもd=0.001rであり、d≒0と見なせる。したがって、上記素子転写装置1による第1基板51から第2基板52への素子55の転写は、正確な位置に行うことができる。
また、本発明の素子転写方法では、上記第1基板51は前記図4の概略構成図により説明した基板を用いることができる。
前記図4(1)に示すように、第1基板51は、両面が平坦度に優れ、両面の平行度に優れた平板を用いる。また、前記図4(2)に示すように、基板周辺部が基板中央部より低くなっている凸型基板を用いることができる。詳細は、前記説明した通りである。
次に、本発明の素子転写方法における上記第1基板51の支持方法に関する変形例について、前記図5の概略構成図により説明する。
前記図5(1)に示すように、第1基板51の周囲に、第1基板51表面よりも低い位置に表面が位置するもので、第1基板支持部11に固着されたガイドリング57を備え、第1基板51に形成される接着層53は上記ガイドリング57表面に延長されて接着されている構成を用いることができる。また、上記ガイドリング57は、例えば、第1基板支持部11に設けた吸着孔16により真空吸着させることで、第1基板支持部11に固着させる。
上記構成のガイドリング57および接着層53を用いることによって、第1基板支持部11に形成された孔14より気体を第1基板51側に吹き付けた際に、第1基板51上とガイドリング57上との間の接着層53が伸ばされる。言い換えれば、接着層53によって第1基板51が急激に浮上するのを防止することができる。これは、先に説明したように、接着層53が樹脂塗布膜、樹脂フィルム等で形成されるので、弾性を有しているからである。このようにして、第1基板51が第1基板51上方に配置される第2基板(図示せず)に衝突するのを避けることができる。また、ガイドリング57の表面が第1基板51表面よりも低い位置に形成されていることから、第1基板支持部11を第2基板側に上昇させた際に、ガイドリング57が第2基板側に接触するのを防止することができる。これらによって、第2基板側の損傷を防ぎ、歩留りの向上が図れる。
前記図5(2)に示すように、第1基板51の周囲に、第1基板51表面よりも低い位置に表面が位置するもので、第1基板支持部11に粘着層58を介して固着されたガイドリング57を備え、上記粘着層58は、第1基板51の裏面側およびガイドリング57の裏面(第1基板支持部11側の面)を粘着するもので、例えば1層の粘着層で形成されている構成を用いることができる。なお、粘着層58は、裏面(第1基板51とは反対側の面)は粘着性を有していない。また、第1基板51上には素子(図示せず)を接着する接着層53が形成されている。また、上記ガイドリング57は、その裏面側に粘着されている粘着層58を、例えば、第1基板支持部11に設けた吸着孔16により真空吸着させることで、第1基板支持部11に固着させる。
上記構成のガイドリング57および粘着層58を用いることによって、第1基板支持部11に形成された孔14より気体を第1基板51側に吹き付けた際に、粘着層58によって第1基板51が急激に浮上するのを防止することができる。これは、第1基板51に粘着されている部分とガイドリング57に粘着されている部分の間の粘着層58が伸ばされるためである。これにより、第1基板51が第2基板52に衝突するのを避けることができる。また、ガイドリング57の表面が第1基板51表面よりも低い位置に形成されていることから、第1基板支持部11を第2基板52側に上昇させた際に、たとえ、第2基板52に対して第1基板支持部11が傾いても、ガイドリング57が第2基板52側に接触するのを防止することができる。これらによって、第2基板52側の損傷を防ぎ、歩留りの向上が図れる。
前記図5(3)に示すように、第1基板51の周囲に、第1基板51表面よりも低い位置に表面が位置するもので、第1基板支持部11に接着層53を介して固着されたガイドリング57を備え、素子55が接着されるもので第1基板51に形成される接着層53を上記ガイドリング57裏面に延長して接着したものを用いることができる。この接着層53は第1基板51表面よりガイドリング57裏面に、例えば1層で形成されている。また、上記ガイドリング57は、接着層53側を、例えば、第1基板支持部11に設けた吸着孔16により真空吸着させることで、第1基板支持部11に固着させる。
上記構成のガイドリング57および接着層53を用いることによって、第1基板支持部11に形成された孔14より気体を第1基板51側に吹き付けた際に、第1基板51上とガイドリング57下との間の接着層53が伸ばされる。この接着層53によって第1基板51が急激に浮上するのを防止することができる。これは、先に説明したように、接着層53が樹脂塗布膜、樹脂フィルム等で形成されるので、弾性を有しているからである。このようにして、第1基板51が第2基板52に衝突するのを避けることができる。また、ガイドリング57の表面が第1基板51表面よりも低い位置に形成されていることから、第1基板支持部11を第2基板52側に上昇させた際に、ガイドリング57が第2基板52側に接触するのを防止することができる。これらによって、第2基板52側の損傷を防ぎ、歩留りの向上が図れる。
上記素子転写方法は繰り返し行うことができる。次に、素子転写方法を繰り返し行う方法を図9、図10のフローチャートおよび製造工程断面図によって説明する。
図9に示すように、上記「素子接近・接触工程」S1、上記「素子接着工程程」S2および上記「基板離間工程」S3を順に行った後、「第1基板の交換工程」S4(S41)を行う。この工程では、素子転写に用いた第1基板51を、新しい素子55が接着された第1基板51に交換し、上記「素子接近・接触工程」S1、上記「素子接着工程」S2および上記「基板離間工程」S3を順に行って、第2基板52の第2接着層54に先に接着した素子55(551)の接着領域とは異なる領域に新たな素子55(552)を接着する。
さらに、「第1基板の交換工程」S4(S41)および上記「素子接近・接触工程」S1、上記「素子接着工程」S2および上記「基板離間工程」S3を繰り返し行うことで、第2基板52の広い範囲に素子55の転写を行うことができる。
また、図10に示すように、上記「素子接近・接触工程」S1、上記「素子接着工程」S2および上記「基板離間工程」S3を順に行った後、「第1基板の交換工程」S4(S402)を行う。この工程では、先に素子転写に用いた第1基板51に接着されていた素子の位置と異なる位置に新しい素子55(552)が接着された第1基板51に交換する。そして、この新たな第1基板51を用いて、上記「素子接近・接触工程」S1、上記「素子接着工程」S2および上記「基板離間工程」S3を順に行う。これによって、第2基板52の第2接着層54に先に接着した素子55(551)の接着領域において、先に接着した素子55(551)の接着位置とは異なる位置に新たな素子55(552)を接着することができる。すなわち、種類の異なる素子を所定の領域に転写させることができる。
さらに、「第1基板の交換工程」S4(S42)および上記「素子接近・接触工程」S1、上記「素子接着工程」S2および上記「基板離間工程」S3を繰り返し行うことで、第2基板52の所定の領域に複数種類の素子を転写することができる。
次に、本発明の表示装置の製造方法について図11、図12の製造工程図により説明する。図11、図12では、第1基板に接着された発光素子を第2基板に形成された接着層に接着させて、複数の発光素子を配列実装する表示装置の製造方法を説明する。具体的には、赤色発光素子55R、緑色発光素子55G、青色発光素子55Bを搭載する表示装置の製造方法を説明する。例えば、このような表示装置としては、例えば直径もしくは矩形の1辺の長さが5μm〜100μm程度、高さ5μm〜100μm程度の微小なLED(Light Emitting Diode)を多数(例えば10個〜数百万個程度)配列したLED表示装置がある。
図11(1)に示すように、第1基板51として、第1接着層53の所定の位置に赤色発光素子55Rが接着されている第1基板51を用いる。次いで、図11(2)に示すように、上記説明した本発明の素子転写方法によって、第1基板51側に接着されている赤色発光素子55Rを第2基板52に形成された第2接着層54に接着転写する。そして、図11(3)に示すように、前記図9によって説明したように、第2基板52の所定の領域全域に赤色発光素子55Rを接着転写させる。
次に、図11(4)に示すように、第1基板51として、第1接着層53の所定の位置に緑色発光素子55Gが接着されている第1基板51を用いる。次いで、図11(5)に示すように、上記説明した本発明の素子転写方法によって、第1基板51側に接着されている緑色発光素子55Gを第2基板52に形成された第2接着層54に接着転写する。その際、図11(5)に示すように、前記図10によって説明した方法によって、先に接着した赤色発光素子55Rの接着位置とは異なる所定の位置に新たな緑色発光素子55Gを接着する。そして、図11(6)に示すように、前記図9によって説明した方法によって、第2基板52の所定の領域全域に緑色発光素子55Gを接着転写させる。
次に、図12(1)に示すように、第1基板51として、第1接着層53の所定の位置に青色発光素子55Bが接着されている第1基板51を用いる。次いで、図12(2)に示すように、上記説明した本発明の素子転写方法によって、第1基板51側に接着されている青色発光素子55Bを第2基板52に形成された第2接着層54に接着転写する。その際、図12(2)に示すように、前記図10によって説明した方法によって、先に接着した赤色発光素子55Rおよび緑色発光素子55Gの接着位置とは異なる所定の位置に新たな青色発光素子55Bを接着する。そして、図12(3)に示すように、前記図9によって説明した方法によって、第2基板52の所定の領域全域に青色発光素子55Bを接着転写させる。
このようにして、表示装置に用いられる各色の発光素子(赤色発光素子55R、緑色発光素子55G、青色発光素子55Bを第1基板51から第2基板52に転写することができた。
本発明の表示装置の製造方法は、第1基板51側の素子55を第2基板52側に転写する際に、第1基板51と第2基板52とが平行に保持されているので、基板同士が接触することがない。このため、第2基板52を損傷することなく、第1基板51側の素子55を第2基板52側に押し付けることができるという利点がある。よって、素子55の転写技術を用いて表示装置を製造する際の歩留りの向上が図れる。
なお、上記説明では、光の3原色である赤色、緑色、青色の発光素子を用いた表示装置の製造方法の一例を説明したが、他の色の発光素子を用いることもでき、また4色以上の発光素子を用いた表示装置の製造方法にも適用できる。
上記表示装置の製造方法では、微細なLEDを埋め込んでパネル化することが容易に行えるようになる。また、上記図11、図12によって説明したように、各色の発光素子(例えばLED)が各第1基板51上に選択転写されて乗っており、多色(例えば3色)化および大画面化、タイリングをこの工程で行うことができる。