この発明に係る保持治具は、弾性部材の粘着性表面に弾性部材の粘着力で被粘着物を粘着保持することができる。この発明に係る保持治具に粘着保持される被粘着物は、小型部品を製造することのできる小型部品用部材、例えば、小型器具用部材、小型機械要素用部材及び小型電子部品用部材等が挙げられる。また、小型部品の製造には小型部品の搬送工程等も含まれるから、被粘着物は、小型部品そのもの、例えば、小型器具、小型機械要素及び小型電子部品等も含まれる。したがって、この発明においては、小型部品と小型部品用部材とは明確に区別される必要はない。これら被粘着物の中でも、この発明に係る保持治具が粘着保持するのに好適な被粘着物として、小型電子部品及び/又は小型電子部品用部材等が挙げられる。小型電子部品及び小型電子部品用部材としては、例えば、コンデンサチップ(チップコンデンサとも称されることがある。)、インダクタチップ、抵抗体チップ、FPC、ウエハー等の完成品若しくは未完成品又はこれらを製造することのできる部材等が挙げられる。
この発明に係る保持治具における一実施例である保持治具1を、図面を参照して、説明する。この保持治具1は、図1及び図2に示されるように、治具本体11と、粘着性表面19を有し、粘着性表面19に対して傾斜している端面20を有する板状の弾性部材15とを備えて成る。
治具本体11は、弾性部材15を保持又は支持する。治具本体11は、弾性部材15を保持又は支持することができる限り種々の設計変更に基づく各種の形態にすることができる。例えば、この治具本体11は、図1及び図2に示されるように、上面及び底面が同一の表面積を有する方形を成す板状体に形成されている。治具本体11における寸法の一例として、例えば、120mm×120mm×0.5mm(厚さ)の寸法を挙げることができる。
治具本体11は、弾性部材15を保持又は支持可能な厚さを有していればよく、平坦な表面を有しているのがよく、さらに、均一な厚さを有しているのがよい。この治具本体11は、弾性部材15を形成する面に、弾性部材15との密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理及び/又はプラズマ処理等が施されるのが好ましい。治具本体11を形成する材料としては、弾性部材15を保持又は支持可能な材料であればよく、例えば、ステンレス鋼及びアルミニウム等の金属製プレート、金属箔、樹脂フィルム、樹脂板、セラミックス等を挙げることができる。
弾性部材15は、治具本体11の表面に設けられている。より詳細には、治具本体11の各端縁に沿うように配置された上面及び底面が方形をなす板状体に形成されている。
この弾性部材15は、図1及び図2に示されるように、粘着性を有する粘着性表面19を有している。この粘着性表面19は、多数の被粘着物を粘着により保持することができるように設計され、被粘着物を粘着保持することのできる粘着力、例えば、1〜50g/mm2の粘着力を有している。この粘着力は、特開2007−165397号公報に記載の「信越ポリマー法」に従って測定することができる。粘着性表面19はその全面にわたって均一な品質を有する被粘着物を製造することができる程度に平坦になっている。粘着性表面19の平坦度は、粘着保持される被粘着物の寸法に応じて適宜調整されればよく、例えば、十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994)が5μm以下に調整されている。十点平均粗さRzは、カットオフ0.8mm、測定長さ2.4mm等の条件で測定する。また、弾性部材15は5〜60の表面硬度(JIS K6253[デュロメータE])を有している。弾性部材15特に粘着保持部26は均一な厚さを有しているのがよく、例えば、1〜10mmの厚さに調整される。
弾性部材15は、図1及び図2に示されるように、弾性部材15の粘着性表面19からその底面にかけて、底面の表面積が粘着性表面19の表面積よりも大きくなるように、端面20すべてが粘着性表面19に対して傾斜している。このように、弾性部材15の端面20が傾斜していることにより、弾性部材15を成形した場合に、成形された弾性部材15を成形金型から離型するときに、弾性部材15の端部近傍に成形収縮等が集中しにくく、速やかに弾性部材15を成形金型から離型することができる。また、弾性部材15を成形した場合に、成形バリは弾性部材15の端部であってその底面近傍に生じるから、成形バリを除去するために裁断機のカッター等を用いても、このカッター等と弾性部材15との粘着によって粘着性表面19を変形させるほどの大きな応力が弾性部材15の端部にかかることを防止することができる。
弾性部材15の端面20は、図1及び図2に示されるように、弾性部材15の粘着性表面19から底面にかけて傾斜する平面(テーパー面、C面とも称する。)に形成されている。このように、端面20は、粘着性表面19に対して傾斜していればよく、端面20と粘着性表面19すなわちその水平面とのなす傾斜角度θ(図2参照。)が0°超90°未満に調整されている。端面20は、粘着性表面19の平坦性に大きく影響するような変形が防止され、粘着性表面19を高度に平坦にすることができる点で、前記傾斜角が15〜75度に調整されるのが好ましい。なお、この保持治具1においては、端面20はすべて傾斜角度が60°に調整されている。
このように、端面20が傾斜してなる板状の弾性部材15は、図1及び図2に示されるように、四角錐台に形成されている。換言すると、弾性部材15は、被粘着物を粘着保持する粘着性表面19を有する粘着保持部26と、粘着保持部26の4つの端面(そのうちの2つの端面を図2に破線で示している。)それぞれに隣接して形成され、粘着性表面19に連続する傾斜面22を有する傾斜部27とを備えている。ここで、粘着保持部26は、弾性部材15において、粘着性表面19を上面とし、粘着性表面19と同じ表面積を有する裏面を底面とする四角柱部分であり、傾斜部27は、弾性部材15において、粘着性表面19の4つの端面に連続して形成された傾斜面22を側面に有する、底面が台形で延在方向の断面が直角三角形である枠状部分である。この傾斜部27は粘着保持部26の厚さと同じ厚さ(高さ)を有し、粘着性表面19の端縁と傾斜面22の端縁とが共通している。
傾斜部27特に傾斜面22は、粘着力を有していても有していなくてもよいが、粘着性表面25で粘着保持した被粘着物を弾性部材15から容易に除去することができる点で、粘着力を有していないのが好ましい。ここで、「粘着力を有していない」とは、粘着力を有していない場合、すなわち、前記信越ポリマー法による粘着力が0g/mm2である場合に加えて、被粘着物を粘着保持することができない程度の小さな粘着力、例えば、前記信越ポリマー法による粘着力が1g/mm2未満の粘着力、を有している場合も含まれる。このように傾斜部27特に傾斜面22を非粘着性にするには、傾斜部27特に傾斜面22の表面に紫外線を照射する方法、その表面に非粘着材をコーティングする方法、その表面粗さを大きくする方法等が挙げられる。
前記したように、保持治具1は、弾性部材15がたとえ成形されても全面にわたって平坦な粘着性表面19を有する弾性部材15を備えている。したがって、粘着性表面19に粘着保持される多数の被粘着物それぞれは、図3に示されるように、自由端の位置すなわち被粘着物31の高さ方向の位置がほぼ同一平面P上にあり、また、粘着性表面19に対してほぼ垂直に起立した状態になる。それ故、被粘着物31の製造に保持治具1を用いると、均一な品質を有する多数の被粘着物31を一挙に製造することができる。したがって、この発明によれば、均一な品質を有する多数の被粘着物を一挙に製造することのできる保持治具を提供するという目的を達成することができる。これに対して、従来の保持治具40における弾性部材42は粘着性表面44に対して垂直な端面となるように成形される。そのため、前記したように、弾性部材44を成形した場合には、図7に示されるように、弾性部材44を成形金型から離型するときに、また、成形バリ等を除去するときに、弾性部材44の端部43近傍が変形することがあった。
また、粘着性表面19が全面にわたって平坦になっていると、図3に示されるように、スクレイパー等の掻き取り部材30を、粘着性表面19における一方の端縁(図3における位置「C」側の端縁。)から他方の端縁(図3における位置「E」側の端縁。)へと移動させるだけで、粘着性表面19に粘着保持されている多数の被粘着物31のほとんどすべてを取り外すことができる。具体的には、多数の被粘着物31を弾性部材15から取り外すには、掻き取り部材30を、粘着性表面19における一方の端縁(図3における位置「C」側の端縁。)から他方の端縁(図3における位置「E」側の端縁。)へと移動させる。このとき、保持治具1の弾性部材15は、粘着保持部26を囲繞するように傾斜部27が形成されているから、図3に示されるように、掻き取り部材30を、傾斜部27の傾斜面22上(図3における「B」の位置)、又は、治具本体11の表面上(図3における「A」の位置)に配置することができる。このような位置に配置された掻き取り部材30を、前記一方の端縁に向かって移動させて、傾斜面22上を摺動させることによって、傾斜部27の傾斜面22が前記位置から粘着性表面19の一方の端縁まで掻き取り部材30を案内する(例えば、図3における「C」の位置)。そして、粘着性表面19の前記一方の端縁から掻き取り部材30を前記他方の端縁に向かって移動させると、粘着性表面19と被粘着物31の底面とが引き離されて、被粘着物31が掻き取り部材30と共に粘着性表面19上を前記他方の端縁に向かって移動する(例えば、図3における「D」の位置。引き離された被粘着物31は図示しない。)。
掻き取り部材30を前記他方の端縁に向かってさらに移動させると、粘着性表面19から取り外された多数の被粘着物31は傾斜面22(例えば、図3における「E」の位置。引き離された被粘着物は図示しない。)を経て治具本体11上(例えば、図3における「F」の位置。引き離された被粘着物は図示しない。)に移動する。このように、傾斜部27の傾斜面22は粘着性表面19の他方の端縁から治具本体11の表面まで掻き取り部材30を案内する。このようにして、掻き取り部材30が一方の端縁から他方の端縁に向かって一方向に移動されることによって、弾性部材15に粘着保持されている多数の被粘着物31のほとんどすべてを一挙に一箇所にまとめて弾性部材15から取り外すことができる。
保持治具1においては、保持治具1の弾性部材15は、前記したように、粘着性表面19の全面が平坦になっているから、掻き取り部材30を、傾斜面22上又は治具本体11の表面上に配置しなくても、粘着性表面19に粘着保持されている被粘着物31よりも外側表面(図3における位置「C」側の端縁。)に配置することもでき、この外側表面に配置した場合にも前記と同様に、掻き取り部材30が前記一方向に移動されることによって、弾性部材15に粘着保持されている多数の被粘着物31のほとんどすべてを一挙に一箇所にまとめて弾性部材15から取り外すことができる。
これに対して、図7に示されるように、弾性部材42の端部43近傍が変形していると、弾性部材42の平坦性が損なわれて、掻き取り部材30を弾性部材42の端部43近傍に弾性部材42に対して所定の高さになるように配置することができなくなる。そのため、弾性部材42に粘着保持されている被粘着物45を取り外すためには、図7に示されるように、掻き取り部材30を弾性部材42の中央寄りに弾性部材42に対して所定の高さになるように配置して、掻き取り部材30を二方向(図7において矢印A及び矢印Bの方向)に往復移動させる必要があった。このように、掻き取り部材30を弾性部材42の中央寄りに配置する場合には、掻き取り部材30を配置するスペースを確保するため、被粘着物45を高密度で弾性部材42に粘着保持させることができず、また、弾性部材42の両側に取り外された被粘着物45を再度一箇所に採集する作業が必要になり、被粘着物45の生産性に劣るという欠点があった。
このように、保持治具1は、掻き取り部材30を粘着性表面19に摺動させることによって、粘着保持されている多数の被粘着物31を取り外すことができる。そして、この発明によれば、端部が変形することなく平坦な粘着性表面を有する弾性部材を備え、掻き取り部材の一方向の移動によって弾性部材から多数の被粘着物を一挙に一箇所にまとめて取り外すことのできる保持治具を提供するという目的を達成することができる。
前記掻き取り部材30は、例えば、板状部材、棒状部材等が挙げられ、被粘着物31を弾性部材15から取り除くことができれば、その構造等は特に限定されない。
さらに、弾性部材21の端面20すなわち傾斜面22は、粘着性表面19に対して傾斜しているから、端面20に被粘着物31又はゴミ等が付着しても、噴射洗浄等によって容易に取り除くことができ、弾性部材21は洗浄性に優れている。
この発明に係る保持治具における別の一実施例である保持治具2を、図面を参照して、説明する。この保持治具2は、図4に示されるように、治具本体11と、粘着性表面19を有し、粘着性表面19に対して傾斜している端面21を有する板状の弾性部材16とを備えて成る。保持治具2の治具本体11は保持治具1の治具本体11と基本的に同様に構成されている。
弾性部材16は、図4に示されるように、弾性部材16の粘着性表面19から弾性部材16の厚さ方向の略中央部にかけて、この略中央部における仮想底面の表面積が粘着性表面19の表面積よりも大きくなるように、端面21すべてが前記略中央部まで粘着性表面19に対して傾斜し、前記略中央部から底部まで粘着性表面19に対して垂直になっていること以外は、保持治具1の弾性部材15と基本的に同様に構成されている。したがって、弾性部材16は、図4に示されるように、四角柱の上面に四角錐台の底面が接するように四角柱と四角錐台とが結合して成る形状を有していること以外は、保持治具1の弾性部材15と基本的に同様である。
このように、保持治具2は、粘着性表面19に対して傾斜している傾斜面23を含む端面21を有する弾性部材16を備えているから、保持治具1と同様に、弾性部材16がたとえ成形方法によって成形されても全面にわたって平坦な粘着性表面19を有する弾性部材16を備えている。また、掻き取り部材30が一方の端縁から他方の端縁に向かって一方向に移動されることによって、弾性部材16に粘着保持されている多数の被粘着物のほとんどすべてを一挙に一箇所にまとめて弾性部材16から取り外すことができる。さらに、保持治具2の弾性部材16は洗浄性にも優れている。
この発明に係る保持治具におけるまた別の一実施例である保持治3を、図面を参照して、説明する。この保持治具3は、図5に示されるように、治具本体11と、粘着性表面19を有し、粘着性表面19に対して傾斜している端面24を有する板状の弾性部材17とを備えて成る。保持治具3の治具本体11は保持治具1の治具本体11と基本的に同様に構成されている。
図5に示されるように、弾性部材17は、弾性部材17の粘着性表面19から底面にかけて、底面の表面積が粘着性表面19の表面積よりも大きくなるように、端面すべてが粘着性表面19に対して傾斜する同一の凸状曲面24(R面とも称する。)をなしていること以外は、保持治具1の弾性部材15と基本的に同様に構成されている。この凸状曲面24は、その曲率半径が、弾性部材17の厚さと同じ又はその厚さよりも大きな半径となるように調整されていればよく、この例においては、弾性部材17の厚さと同じ曲率半径に調整されている。
このように、保持治具3は、粘着性表面19に対して傾斜している端面24すなわち凸状曲面24を有する弾性部材17を備えているから、保持治具1と同様に、弾性部材17がたとえ成形方法によって成形されても全面にわたって平坦な粘着性表面19を有する弾性部材17を備えている。また、掻き取り部材30が一方の端縁から他方の端縁に向かって一方向に移動されることによって、弾性部材17に粘着保持されている多数の被粘着物のほとんどすべてを一挙に一箇所にまとめて弾性部材17から取り外すことができる。さらに、保持治具3の弾性部材17は洗浄性にも優れている。
この発明に係る保持治具におけるさらにまた別の一実施例である保持治具4を、図面を参照して、説明する。この保持治具4は、図6に示されるように、治具本体11と、粘着性表面19を有し、粘着性表面19に対して傾斜している端面25を有する板状の弾性部材18とを備えて成る。保持治具4の治具本体11は保持治具1の治具本体11と基本的に同様に構成されている。
図6に示されるように、弾性部材18は、弾性部材18の粘着性表面19から底面にかけて、底面の表面積が粘着性表面19の表面積よりも大きくなるように、端面すべてが粘着性表面19に対して傾斜する同一の凹状曲面25をなしていること以外は、保持治具1の弾性部材15と基本的に同様に構成されている。この凹状曲面25は、その曲率半径が、弾性部材18の厚さと同じ又はその厚さよりも大きな半径となるように調整されていればよく、この例においては、弾性部材18の厚さと同じ曲率半径に調整されている。
このように、保持治具4は、粘着性表面19に対して傾斜している端面25すなわち凹状曲面25を有する弾性部材18を備えているから、保持治具1と同様に、弾性部材18がたとえ成形方法によって成形されても全面にわたって平坦な粘着性表面19を有する弾性部材18を備えている。また、掻き取り部材30が一方の端縁から他方の端縁に向かって一方向に移動されることによって、弾性部材18に粘着保持されている多数の被粘着物のほとんどすべてを一挙に一箇所にまとめて弾性部材18から取り外すことができる。さらに、保持治具4の弾性部材18は洗浄性にも優れている。
この発明に係る保持治具の弾性部材を形成する材料としては、弾性部材に前記範囲の粘着力を付与することのできる粘着性材料であればよい。このような粘着性材料としては、例えば、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴム、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴムを含有するフッ素系組成物、シリコーン樹脂又はシリコーンゴム、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムを含有するシリコーン組成物、ウレタン系エラストマー、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合エラストマー等の各種エラストマー等が挙げられる。この中でも、特開2007−307529号公報に記載の「シリコーン生ゴム(a)と、架橋成分(b)と、粘着成分(c)と、触媒(d)と、シリカ系充填材(e)とを含有する粘着性シリコーンゴム組成物」、特開2007−307529号公報に記載の「シリコーン生ゴム(a)と、粘着成分(c)と、シリカ系充填材(e)と、有機過酸化物(f)とを含有する粘着性シリコーンゴム組成物」が好ましい。
この発明に係る保持治具は例えば次のようにして製造される。まず、治具本体を、例えば、前記材料を用いて真空成形、射出成形、金型成形等によって、作製する。次いで、作成した治具本体の表面に弾性部材を形成する。弾性部材は、同じ表面積を有する底面及び上面からなる板状体の端部それぞれを面取り加工して形成してもよいが、前記したように、この発明によれば、成形方法によって弾性部材を成形しても弾性部材の端部が変形することを防止することができるから、所定の形状を有する弾性部材を成形することのできるキャビティを有する成形金型を用いた成形方法によって、形成されるのが好ましい。このような成形方法によれば、弾性部材、すなわち、粘着保持部と傾斜部とを一体に形成することができる。なお、形成方法が複雑になるが、粘着保持部と傾斜部とをそれぞれ別々に形成した後に、粘着保持部の周縁部に傾斜部を固定して、弾性部材を形成することもできる。前記成形金型は、例えば、金属等で形成した金型に、切削等により、所望の形状を有する弾性部材、すなわち、端面が粘着性表面に対して傾斜している弾性部材を成形することができるように、キャビティが作製されて、製造される。
弾性部材をこのような成形金型を用いて形成するには、作製した治具本体の表面に所望により接着剤を塗布し、前記成形金型に治具本体を収納する。次いで、治具本体が収容された成形金型に前記材料を注入し、前記材料が硬化する硬化条件で、成形する。その後、成形金型から弾性部材が成形された治具本体を取り出す。このとき、弾性部材は前記したようにその端面が傾斜しているから、離型時に、弾性部材の端部近傍に弾性部材の成形収縮等が集中しにくく、また、粘着性表面の端縁近傍に成形バリ等が生じることもなく、したがって、弾性部材の端部近傍が変形することを効果的に防止することができる。
この発明に係る保持治具は、前記したように、平坦な粘着性表面を有する弾性部材を備えてなるから、チップコンデンサ等の小型部品等を製造する際等に使用される保持治具として好適に用いられ、例えば、特開2007−165397号公報に記載の「小型電子部品保持装置」における保持治具として好適に使用される。この「小型電子部品保持装置」及びその作用等は、特開2007−165397号公報に詳細に記載されている。
この発明に係る保持治具は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記保持治具1〜4において、弾性部材15〜18の各端面はすべて粘着性表面19に対して同様に傾斜しているが、この発明に係る保持治具において、弾性部材の端面それぞれは粘着性表面に対して異なるように傾斜していてもよい。例えば、前記傾斜面22の傾斜角度θをそれぞれ異なる角度に設定することもでき、また、弾性部材の端面を、前記傾斜面22、前記傾斜面23、前記凸状曲面24及び前記凹状曲面25の任意の組合せとしてもよい。さらに、前記保持治具1〜4において、弾性部材15〜18の端面すべてが1つの傾斜面22及び27、凸状曲面24並びに凹状曲面25とされているが、この発明に係る保持治具において、弾性部材の端面は、複数の傾斜面、凸状曲面及び凹状曲面が弾性部材の厚さ方向及び/又は端面の長手方向に連続して又は間隔をあけて形成されてもよい。
また、前記保持治具1〜4において、弾性部材15〜18は端面すべてが粘着性表面19に対して傾斜しているが、この発明に係る保持治具において、弾性部材は少なくとも1つの端面が粘着性表面19に対して傾斜していればよく、互いに背中合わせの1組の端面が粘着性表面19に対して傾斜していてもよい。
さらに、前記保持治具1〜4において、治具本体11及び弾性部材15〜18はいずれも上面及び底面が方形を成す板状体に形成されているが、この発明において、治具本体及び弾性部材は、例えば、上面及び底面が円形、楕円形、無定形、多角形(三角形、六角形、八角形等)を成す板状体等に形成されていてもよい。これらの場合に、弾性部材はその周側面の少なくとも一部が粘着性表面に対して傾斜していればよい。また、治具本体11及び弾性部材15は共に同じ形状の板状体に形成されているが、この発明において、治具本体及び弾性部材は、異なる形状の板状体に形成されてもよい。