JP2006335719A - ポリアセン化合物及びその製造方法並びに有機半導体素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い移動度を発現し且つ溶媒に対する溶解性及び耐酸化性に優れる有機半導体材料を提供する。また、高い移動度を有する有機半導体薄膜、及び、電子特性の優れた有機半導体素子を提供する。
【解決手段】
下記の化学式(I)で表されるような構造を有することを特徴とするポリアセン化合物。
【化1】
Figure 2006335719

ただし、化学式(I)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、脂肪族炭化水素基等の官能基であり、他部は水素原子である。また、化学式(I)中の複数のXのうち一部はフッ素原子であり、他部は水素原子である。さらに、kは1以上5以下の整数である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、有機半導体材料及びその製造方法に関する。また、該有機半導体材料を用いた有機半導体薄膜及び有機半導体素子に関する。
有機半導体を用いたデバイスは、従来の無機半導体デバイスに比べて成膜条件がマイルドであり、各種基板上に半導体薄膜を形成したり、常温で成膜したりすることが可能であるため、低コスト化や、ポリマーフィルム等に薄膜を形成することによるフレキシブル化が期待されている。
有機半導体材料としては、ポリフェニレンビニレン,ポリピロール,ポリチオフェン等の共役系高分子化合物やそのオリゴマーとともに、アントラセン,テトラセン,ペンタセン等のポリアセン化合物を中心とする芳香族化合物が研究されている。特に、ポリアセン化合物は分子間凝集力が強いため高い結晶性を有していて、これによって高いキャリア移動度と、それによる優れた半導体デバイス特性とを発現することが報告されている。
そして、ポリアセン化合物のデバイスへの利用形態としては蒸着膜又は単結晶があげられ、トランジスタ,太陽電池,レーザー等への応用が検討されている(非特許文献1〜3を参照)。
また、蒸着法以外の方法でポリアセン化合物の薄膜を形成する方法として、ポリアセン化合物の一種であるペンタセンの前駆体の溶液を基板上に塗布し、加熱処理してペンタセン薄膜を形成する方法が報告されている(非特許文献4を参照)。この方法は、ポリアセン化合物は溶媒に対する溶解性が低いため、溶解性の高い前駆体の溶液を用いて薄膜を形成し、熱により前駆体をポリアセン化合物に変換するというものである。
一方、置換基を有するポリアセン化合物は、高橋らの報告(非特許文献5),グラハムらの報告(非特許文献6),アンソニーらの報告(非特許文献7)及び,ミラーらの報告(非特許文献8)などに記載されており、さらに非特許文献9には2,3,9,10−テトラメチルペンタセンの合成例が、非特許文献10には2,3,9,10−テトラクロロペンタセンの合成例が、非特許文献11にはパーフルオロペンタセンの合成例がそれぞれ記載されている。
なお、ペンタセンを超える移動度を有する有機半導体材料は、現在のところ知られていない。
「アドバンスド・マテリアルズ」,2002年,第14巻,p.99 ジミトラコポウラスら,「ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス」,1996年,第80巻,p.2501 クロークら,「IEEE・トランザクション・オン・エレクトロン・デバイシス」,1999年,第46巻,p.1258 ブラウンら,「ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス」,1996年,第79巻,p.2136 高橋ら,「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー」,2000年,第122巻,p.12876 グラハムら,「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー」,1995年,第60巻,p.5770 アンソニーら,「オーガニック・レターズ」,2000年,第2巻,p.85 ミラーら,「オーガニック・レターズ」,2000年,第2巻,p.3979 「アドバンスド・マテリアルズ」,2003年,第15巻,p.1090 「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー」,2003年,第125巻,p.10190 「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー」,2004年,第126巻,p.8138
しかしながら、前述のような前駆体を利用してポリアセン化合物の薄膜を形成する方法は、前記前駆体をポリアセン化合物に変換するために高温処理が必要であるという問題点を有していた(例えば、ペンタセンの場合であれば150℃程度)。また、ポリアセン化合物への変換反応を完全に行うことが難しいため未反応部分が欠陥として残ったり、高温により変性が生じて欠陥となったりするという問題点も併せて有していた。
一方、前述の高橋らの報告等には、各種のポリアセン化合物に置換基を導入した誘導体が記載されているが、有機半導体材料としての特性や薄膜化に関しては記載されていない。また、2,3,9,10−テトラメチルペンタセンや2,3,9,10−テトラクロロペンタセンやパーフルオロペンタセンが合成されているが、それぞれの薄膜の移動度はペンタセンよりも劣っている。これらのペンタセン誘導体は一般の有機溶媒に対する溶解性が乏しく、特に2,3,9,10−テトラクロロペンタセンは高温下での薄膜形成過程において変性が生じるため、半導体としての性質を示さない。
そこで、本発明は、前述のような従来技術が有する問題点を解決し、高い移動度を発現し且つ耐酸化性及び溶媒に対する溶解性に優れる有機半導体材料及びその製造方法を提供することを課題とする。また、高い移動度を有する有機半導体薄膜、及び、電子特性の優れた有機半導体素子を提供することを併せて課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1のポリアセン化合物は、下記の化学式(I)で表されるような構造を有することを特徴とする。
Figure 2006335719
ただし、化学式(I)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。また、化学式(I)中の複数のXのうち一部はフッ素原子であり、他部は水素原子である。さらに、kは1以上5以下の整数である。
また、本発明に係る請求項2のポリアセン化合物は、請求項1に記載のポリアセン化合物において、R3 ,R4 が水素原子であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項3のポリアセン化合物は、請求項1に記載のポリアセン化合物において、R1 ,R2 とR3 ,R4 との少なくとも一方は、連結して環状構造を形成していることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項4のポリアセン化合物は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセン化合物において、R1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち官能基の炭素数が1以上15以下であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項5のポリアセン化合物は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセン化合物において、R1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち官能基の炭素数が2以上15以下であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項6のポリアセン化合物は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセン化合物において、R1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち官能基の炭素数が2以上6以下であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項7のポリアセン化合物は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセン化合物において、複数のXのうち2個以上がフッ素原子であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項8のポリアセン化合物は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセン化合物において、複数のXのうち偶数個がフッ素原子であり、そのうち少なくとも2個のフッ素原子が同一のアセン環に結合していることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項9のポリアセン化合物は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセン化合物において、複数のXのうち2個がフッ素原子であり、これら2個のフッ素原子が同一のアセン環に結合していることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項10のポリアセン化合物は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセン化合物において、kが1又は2であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項11のポリアセン化合物の製造方法は、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(II)で表されるような構造を有するポリアセンキノン誘導体を還元して、下記の化学式(III )で表されるような構造を有するヒドロキシポリアセン誘導体とし、さらにこのヒドロキシポリアセン誘導体をフッ素化及び芳香化することを特徴とする。
Figure 2006335719
Figure 2006335719
ただし、化学式(II)及び化学式(III )中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。また、化学式(II)及び化学式(III )中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれフッ素原子又は水素原子である。ただし、X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 の全てがフッ素原子である場合を除く。さらに、mは2以上の整数であり、m+nは3以上7以下の整数である。
さらに、本発明に係る請求項12のポリアセン化合物の製造方法は、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(II)で表されるような構造を有するポリアセンキノン誘導体をフッ素化剤と反応させることにより、下記の化学式(IV)で表されるような構造を有する含フッ素ポリアセン誘導体とし、さらにこの含フッ素ポリアセン誘導体を脱フッ素化,脱水素化,又は脱フッ化水素化することを特徴とする。
Figure 2006335719
Figure 2006335719
ただし、化学式(II)及び化学式(IV)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。また、化学式(II)及び化学式(IV)中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれフッ素原子又は水素原子である。また、Y1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はフッ素原子であり、他部は水素原子である。ただし、X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 ,Y1 ,Y2 ,Y3 ,Y4 の全てがフッ素原子である場合を除く。
さらに、本発明に係る請求項13のポリアセン化合物の製造方法は、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(III )で表されるような構造を有するヒドロキシポリアセン誘導体をフッ素化剤と反応させることにより、下記の化学式(IV)で表されるような構造を有する含フッ素ポリアセン誘導体とし、さらにこの含フッ素ポリアセン誘導体を脱フッ素化,脱水素化,又は脱フッ化水素化することを特徴とする。
Figure 2006335719
Figure 2006335719
ただし、化学式(III )及び化学式(IV)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。また、化学式(III )及び化学式(IV)中の官能基X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれフッ素原子又は水素原子である。また、Y1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はフッ素原子であり、他部は水素原子である。ただし、X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 ,Y1 ,Y2 ,Y3 ,Y4 の全てがフッ素原子である場合を除く。
さらに、本発明に係る請求項14のポリアセン化合物の製造方法は、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(V)で表されるような構造を有するハロゲン化ポリアセン化合物をフッ化金属塩と反応させて、前記ハロゲン化ポリアセン化合物中の塩素原子,臭素原子,又はヨウ素原子をフッ素原子にハロゲン交換することを特徴とする。
Figure 2006335719
ただし、化学式(V)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。また、化学式(V)中の複数のXのうち一部は塩素原子,臭素原子,又はヨウ素原子であり、他部は水素原子である。さらに、kは1以上5以下の整数である。
さらに、本発明に係る請求項15のポリアセン化合物の製造方法は、下記の化学式(VI)で表されるような構造を有するポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(VII )で表されるような構造を有するポリアセンキノン誘導体をハロゲン化剤と反応させることにより、下記の化学式(VIII)で表されるような構造を有する含ハロゲンポリアセン誘導体とし、さらにこの含ハロゲンポリアセン誘導体を脱ハロゲン化,脱水素化,又は脱ハロゲン化水素化することを特徴とする。
Figure 2006335719
Figure 2006335719
Figure 2006335719
ただし、化学式(VI)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。また、化学式(VI)中の複数のXのうち一部はハロゲン基であり、他部は水素原子である。さらに、kは1以上5以下の整数である。
また、化学式(VII )及び化学式(VIII)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。
さらに、化学式(VII )及び化学式(VIII)中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれハロゲン基又は水素原子である。ただし、X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 の全てがハロゲン基である場合を除く。さらに、mは2以上の整数であり、m+nは3以上7以下の整数である。
さらに、化学式(VIII)中のY1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はハロゲン基であり、他部は水素原子である。ただし、X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 ,Y1 ,Y2 ,Y3 ,Y4 の全てがハロゲン基である場合を除く。
さらに、本発明に係る請求項16のポリアセン化合物の製造方法は、下記の化学式(VI)で表されるような構造を有するポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(IX)で表されるような構造を有するヒドロキシポリアセン誘導体をハロゲン化剤と反応させることにより、下記の化学式(VIII)で表されるような構造を有する含ハロゲンポリアセン誘導体とし、さらにこの含ハロゲンポリアセン誘導体を脱ハロゲン化,脱水素化,又は脱ハロゲン化水素化することを特徴とする。
Figure 2006335719
Figure 2006335719
Figure 2006335719
ただし、化学式(VI)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。また、化学式(VI)中の複数のXのうち一部はハロゲン基であり、他部は水素原子である。さらに、kは1以上5以下の整数である。
また、化学式(VIII)及び化学式(IX)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。
さらに、化学式(VIII)及び化学式(IX)中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれハロゲン基又は水素原子である。ただし、X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 の全てがハロゲン基である場合を除く。さらに、mは2以上の整数であり、m+nは3以上7以下の整数である。
さらに、化学式(VIII)中のY1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はハロゲン基であり、他部は水素原子である。ただし、X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 ,Y1 ,Y2 ,Y3 ,Y4 の全てがハロゲン基である場合を除く。
さらに、本発明に係る請求項17の有機半導体薄膜は、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアセン化合物で構成され、結晶性を有することを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項18の有機半導体薄膜は、請求項17に記載の有機半導体薄膜において、基板上に形成された結晶性の有機半導体薄膜であって、前記ポリアセン化合物の分子の長軸が前記基板の表面に対して垂直方向に配向していることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項19の有機半導体素子は、請求項17又は請求項18に記載の有機半導体薄膜で少なくとも一部を構成したことを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項20のトランジスタは、ゲート電極,誘電体層,ソース電極,ドレイン電極,及び半導体層を備えるトランジスタにおいて、前記半導体層を請求項17又は請求項18に記載の有機半導体薄膜で構成したことを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項21のディスプレイ装置は、多数の画素からなる画素面を備えるディスプレイ装置において、前記各画素は、請求項19に記載の有機半導体素子又は請求項20に記載のトランジスタを備えることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項22のディスプレイ装置は、請求項21に記載のディスプレイ装置において、前記有機半導体素子又は前記トランジスタが備える電極,誘電体層,及び半導体層を、液体の印刷又は塗布によって形成したことを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項23の溶液は、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアセン化合物を含有することを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項24のインクは、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアセン化合物を含有することを特徴とする。
本発明のポリアセン化合物は、細長い形のポリアセン骨格の長軸方向の端部(一方又は両方の端部)に官能基を有し、且つ、側面部分にフッ素原子を有する構造である。本発明者らは、ポリアセン化合物の長軸方向の端部に官能基を導入することによって、溶媒に対する溶解性が向上し、側面部分にフッ素原子を導入することによって、耐酸化性が向上すると考え、前記化学式(I)で表されるような構造を有する新規なポリアセン化合物を発明するに至った。
そして、本発明のポリアセン化合物及びその薄膜は、従来の有機材料中で最も高い移動度を有するペンタセンと同程度又はそれを超える高い移動度を発現することを見出した。また、常温において溶媒に対する溶解性が乏しいペンタセンと比べて、本発明のポリアセン化合物は溶解性が優れていること、及び、耐酸化性が優れていることを見出した。さらに、本発明のポリアセン化合物の薄膜を用いた有機半導体素子は、優れた電子特性を示すことを見出した。
本発明のポリアセン化合物は、高い移動度を発現するとともに、溶媒に対する溶解性及び耐酸化性に優れる。また、本発明の有機半導体薄膜は高い移動度を有している。さらに、本発明の有機半導体素子は優れた電子特性を有している。
さらに、本発明のポリアセン化合物の製造方法は、前述のようなポリアセン化合物を容易に製造することができる。
本発明のポリアセン化合物は、前述の化学式(I)に示すような構造の化合物であり、R1 ,R2 ,R3 ,R4 は前述のような官能基である。R1 ,R2 ,R3 ,R4 の全部が異種の官能基でもよいし、全部又は一部が同種の官能基でもよい。例えば、R1 ,R2 ,R3 ,R4 の全部がアルキル基でもよいし、一部がアルキル基で他部が水素原子でもよい。また、複数のXのうち一部はフッ素原子であり、他部は水素原子である。ポリアセン骨格の長軸方向の端部及び側面部分の両方に官能基を有する本発明のペンタセン化合物は、分子同士のスタッキング時に官能基が障害(立体障害)となるため、分子間の共役面の重なりが阻害されることがある。したがって、耐酸化性を向上させる効果を有するハロゲン基の中でも、ファンデルワールス半径の最も小さいフッ素原子が好ましい。また、側面部分のフッ素原子の数は少ない方がより好ましい。
以下に、本発明のポリアセン化合物について、さらに詳細に説明する。長軸方向の端部の官能基(R1 ,R2 ,R3 ,R4 )としては、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基が好ましく、溶媒への溶解性及び結晶性を勘案すると、炭素数は1〜15個が好ましい。溶媒への高溶解性を示すためには炭素数は2〜15個がより好ましく、高溶解性と高い結晶性の両方を有するためには、炭素数が2〜6個であることが特に好ましい。炭化水素基の構造は、直鎖状や分岐状でもよいし、環状構造でもよい。
アルキル基の例としては、メチル基,エチル基,n−プロピル基,n−ブチル基,t−ブチル基,n−ヘキシル基,ドデカニル基,トリフルオロメチル基,ベンジル基等があげられる。また、アルケニル基の例としてはメタクリル基やアクリル基があげられ、アルキニル基の例としてはエチニル基やプロパギル基があげられる。また、アルケニル基及びアルキニル基においては、二重結合及び三重結合は官能基中のどの位置にあっても差し支えない。二重結合及び三重結合は、官能基の構造を強固とする目的、不飽和結合基を用いてさらに他の分子と反応させる目的、あるいは不飽和結合基同士を反応(結合)又は重合させる目的で利用することができる。
以下に、脂肪族炭化水素基以外のもので、長軸方向の端部の官能基(R1 ,R2 ,R3 ,R4 )として好適なものの例を示す。これらの官能基の場合も、その炭素数は前述した脂肪族炭化水素基の場合と同様に、1以上15以下であることが好ましく、2以上15以下であることがより好ましく、2以上6以下であることが特に好ましい。アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基,ナフトキシ基,フェニルフェノキシ基,4−メチルフェノキシ基があげられ、アルコキシ基の例としては、メトキシ基,エトキシ基,2−メトキシエトキシ基,t−ブトキシ基があげられる。アシル基の例としては、ホルミル基,アセチル基,2−メチルプロパノイル基,シクロヘキシルカルボニル基,オクタノイル基,2−ヘキシルデカノイル基,ドデカノイル基,クロロアセチル基,トリフルオロアセチル基,ベンゾイル基があげられる。アリールオキシカルボニル基の例としては、フェノキシカルボニル基,4−オクチルオキシフェノキシカルボニル基,2−ヒドロキシメチルフェノキシカルボニル基,4−ドデシルオキシフェノキシカルボニル基があげられる。
また、アミノ基の例としては、アミノ基,ジメチルアミノ基,メチルアミノ基,メチルフェニルアミノ基,フェニルアミノ基があげられる。スルフィド基,ジスルフィド基の例としては、“−S−”や“−S−S−”の部分構造を有する基のすべてがあげられるが、環状構造を有していてもよく、その具体例としてはチオラン環、1,3−ジチオラン環、1,2−ジチオラン環、チアン環、ジチアン環、チオモルホリン環等を含む基があげられる。このような環状構造は、鎖状構造に比べて立体的な影響が少ないという点で好ましく、特に5員環や6員環を形成する官能基はアセン環の平面性を保持するという点で好ましい。
さらに、シリル基の例としては、トリメチルシリル基,ジメチルフェニルシロキシ基,ジフェニルメチルシロキシ基があげられる。スルホニル基の例としては、メチルスルホニル基,n−ブチルスルホニル基,n−オクチルスルホニル基,n−ブチルスルホニル基,フェニルスルホニル基があげられる。
ポリアセン骨格の長軸方向の端部及び側面部分の両方に官能基を有するペンタセン化合物は、分子同士のスタッキング時に官能基が障害(立体障害)となる場合があるため、分子間の共役面の重なりが阻害されることがある。したがって、端部の官能基の数は少ない方が好ましく、特に片側の端部にのみ官能基を有する場合は、分子同士がスタッキングする際に官能基を有する端部が交互に反対向きになるように配列できるという点で好ましい。また、片側の端部のみに官能基を有する場合には、分子の長軸方向に極性が生じるため、溶媒への溶解性を向上させるという点でも好ましい。
さらに、R1 とR2 は連結して、式−A−(CH2 n −A−で示される環を形成してもよい(該式中のAは酸素原子又は硫黄原子であり、nは1以上の整数である)。もちろん、R1 とR2 、R3 とR4 の両方が上記のような環を形成していてもよい。
なお、長軸方向の端部の官能基(R1 ,R2 ,R3 ,R4 )は、上に示した基を2つ以上組み合わせた複合官能基でもよい。
また、複数のXの一部はフッ素原子であり、他のものは水素原子である。複数のXのうち1個がフッ素原子で、他の全てが水素原子でもよいし、1個が水素原子で、他の全てがフッ素原子でもよい。複数のXの全てがフッ素原子であるものは、本発明には含まれない。
なお、複数のXのうち偶数個がフッ素原子であり、これらのうち2個のフッ素原子が同一のアセン環に結合しているポリアセン化合物は、同一アセン環内にカルボニル基を2つ有するポリアセンキノン(ポリアセン化合物を合成する場合の前駆体となる)の合成が容易であること、且つ、分子同士がスタッキングする際にフッ素原子同士の立体障害が少ないという点から好ましい。
また、ポリアセン骨格の縮環数に関しては、前述の化学式(I)中のkが1又は2であることが好ましい。一般に、縮環数が増えていくと有機溶剤への溶解性は低下し、酸素への反応性の向上、つまり耐酸化性が低下する。一方で、縮環数が増加するに従い、HOMO−LUMOギャップが減少することから高い移動度の発現が見込まれる。これら溶解性,安定性,及び半導体特性を勘案すると、kが1(すなわち縮環数が5)のペンタセンと、kが2(すなわち縮環数が6)のヘキサセンが好ましい。
次に、本発明のポリアセン化合物の合成方法について説明する。本発明におけるフッ素導入法は、おおよそ3つに分類することができる。
(1)ヒドロキシポリアセン誘導体のヒドロキシル基をフッ素原子に換える方法
(2)ポリアセンキノン誘導体のカルボニル基をフッ素原子に換える方法
(3)他のハロゲン基をフッ素原子に換える方法
フッ素原子を導入するための化学的フッ素化剤として求核フッ素化剤と親電子フッ素化剤が知られている。求核フッ素化剤の例としては、KF,HF,CsF,KHF2 ,AgF,HgF,R4 NF,(Me2 N)3 SMe3 SiF2 ,R4 PF,ピリジンHF塩,アミンHF塩,第四級アンモニウムHF塩,SbF5 ,SbF5 ・HF,SF4 ,Et2 NSF3 ,PhSF3 ,SeF4 ,PhPF4 ,Et2 NCF2 CHFCl,Et2 NCF2 CHFCF3 ,KF・CaF2 ,Bu4 PHF2 ,SiF4 ・i−Pr2 NEt,KHF2 ・AlF3 ,CH3 OF,t−BuOFがあげられ、親電子フッ素化剤の例としては、F2 ,CH3 COOF,N−フルオロ−アルキルトルエンスルホンアミド,N−フルオロパーフルオロピペリジン,N−フルオロピリジン塩,N−フルオロキヌシリディニウムトリフレート,N−フルオロスルタム,(CF3 SO2 2 NF,C5 5 NF(C5 5 N)B2 7 ,(C6 5 SO2 2 NF,C6 4 (SO2 2 NFがあげられる。
前述した(1)のフッ素導入法の例としては、6,13−ジフルオロペンタセン誘導体を、6,13−ペンタセンキノン誘導体から2段階で合成する方法があげられる。例えば、長軸方向両端部に置換基を有する6,13−ペンタセンキノン誘導体は、フタルアルデヒド誘導体とシクロヘキサン−1,4−ジオンとの環化縮合反応によって容易に得られる。一方、長軸方向片側端部のみに置換基を有する6,13−ペンタセンキノン誘導体は、フタルアルデヒド誘導体と1,4−ジヒドロキシアントラセンとの環化縮合反応によって容易に得られる。
まず1段階目は、両端部又は片側端部が置換された6,13−ペンタセンキノン誘導体のカルボニル部位を、水素化リチウムアルミニウム等の水素化金属塩でヒドロキシル基に還元する。そして、2段階目は、1段階目で得られた還元体(ヒドロキシポリアセン誘導体)をEt2 NSF3 (DAST)と反応させる。そうすると、フッ素化と芳香化とが連続して進行して、6,13−ジフルオロペンタセン誘導体が得られる。
なお、フッ素以外のハロゲン基を有するハロゲン化ポリアセン化合物を、上記のような合成方法と同様の方法で合成することが可能である。すなわち、フッ素化剤の代わりに他のハロゲン原子を有するハロゲン化剤を用いれば、所望のハロゲン化ポリアセン化合物を効率良く得ることができる。
次に、前述した(2)のフッ素導入法の例としては、ポリアセンキノン誘導体のカルボニル基をSF4 で処理する方法があげられる。SF4 による処理でカルボニル基をCF2 基に変換した後、Mg,Zn,Cd,Al,Cu,Na,及びLiなどの金属を用いて脱フッ素化を行えば、フッ素置換されたポリアセン化合物を合成することができる。
次に、前述した(3)のフッ素導入法の例としては、先にフッ素以外のハロゲン基を有するハロゲン化ポリアセン化合物を合成した後に、アルカリ金属のフッ化物(CsF,RbF,KF,NaF,LiF)を用いてフッ素以外のハロゲン基をフッ素に変換する方法があげられる。
また、本発明のポリアセン化合物は上記のような方法で合成した後、昇華,再結晶等の通常の精製法により精製し、高純度化することができる。
本発明のポリアセン化合物は結晶性を有し、この結晶構造はヘリンボン型で、分子が配列した構造を示す。このヘリンボン構造の結晶構造においては、細長い分子が矢筈状にスタックされた格子構造をとる。これら結晶構造は、前述のように精製し、高純度化した結晶を用いて、X線回折により構造決定することができる。
また、本発明のポリアセン化合物は、無置換のポリアセン化合物と同様に斜方晶系構造又は立方晶系構造を示す。ここで、結晶の格子定数a,b,cが決定でき、このc軸格子定数は細長い分子の分子長が配列した格子ユニット長さに対応し、a軸及びb軸格子定数は分子の共役面がスタックした分子カラム面内の格子ユニットの大きさに対応する。
さらに、本発明のポリアセン化合物は、分子の共役面がスタックした面の分子間距離(a軸及びb軸格子定数に対応する)が、無置換のポリアセン化合物と比較して同等又は縮小した構造を示す。このことは分子間のπ電子の重なりが大きく、キャリアが容易に分子間を移動できることにつながり、高い移動度を示す原因と考えられる。また。c軸格子定数はポリアセン化合物の長軸方向の分子長に対応して変化し、ほぼ分子長と同等又は若干小さい値を示す。
さらに、本発明のポリアセン化合物は、分子構造中にハロゲン元素を有しているため、ハロゲン元素を有していないものと比べて耐酸化性が優れている。これは、ハロゲン元素の導入により分子のイオン化ポテンシャルが増加し、酸素等の酸化剤に対する反応性が低下したためである。また、ハロゲン元素の導入により電子受容性分子との電荷移動も抑制されるので、半導体のキャリア濃度変動安定性にもつながる。さらに、本発明のポリアセン化合物で電界効果トランジスタを製造した場合には、ゲート電圧に対してドレイン電流の変化が大きくなり、高いon/off電流比が得られる。
次に、本発明の有機半導体薄膜について説明する。
本発明の有機半導体薄膜の形成方法としては、公知の方法を採用することが可能であり、例えば、真空蒸着,MBE法(Molecular Beam Epitaxy),スパッタリング法,レーザー蒸着法,気相輸送成長法等があげられる。そして、このような方法により、基板表面に薄膜を形成することができる。
本発明で用いるポリアセン化合物は昇華性を示すので、前述の方法で薄膜を形成することが可能である。MBE法,真空蒸着法,及び気相輸送成長法は、ポリアセン化合物を加熱して昇華した蒸気を、高真空,真空,低真空又は常圧で基板表面に輸送して薄膜を形成するものである。また、スパッタリング法は、ポリアセン化合物をプラズマ中でイオン化させて、ポリアセン化合物の分子を基板上に堆積して薄膜を形成する方法である。また、レーザー蒸着法は、レーザー照射によりポリアセン化合物を加熱して蒸気を生成させ、ポリアセン化合物の分子を基板上に堆積して薄膜を形成する方法である。前述の製法のうちMBE法,真空蒸着法,及び気相輸送成長法は、生成する薄膜の平坦性及び結晶性に優れるので好ましい。
MBE法や真空蒸着法における薄膜作製条件としては、例えば、基板温度は室温以上100℃以下とすることが好ましい。基板温度が低温であるとアモルファス状の薄膜が形成されやすく、また、100℃を超えると薄膜の表面平滑性が低下する。また、気相輸送成長法の場合は、基板温度は室温以上200℃以下とすることが好ましい。
また、本発明のポリアセン化合物は、薄膜成長速度が高い場合でも結晶性の良好な薄膜を形成しやすく、高速成膜が可能である。成長速度は、0.1nm/min以上1μm/sec以下の範囲とすることが好ましい。0.1nm/min未満では結晶性が低下しやすく、1μm/secを超えると薄膜の表面平滑性が低下する。
また、本発明の有機半導体薄膜は、ウェットプロセスで形成することも可能である。従来公知の無置換ポリアセン化合物は一般の溶媒に室温では難溶であり、溶液化と溶液の塗布による薄膜形成とが困難であったが、本発明のポリアセン化合物は、官能基の導入により溶媒に対する溶解性が無置換ポリアセン化合物と比べて同等又は高いので、溶液化と溶液の塗布による薄膜形成とが可能である。
本発明の有機半導体薄膜は、本発明のポリアセン化合物の溶液を基板等のベース上に被覆した上、加熱等の方法により前記溶媒を気化させることにより得ることができる。前記溶液をベース上に被覆する方法としては、塗布,噴霧の他、ベースを前記溶液に接触させる方法等があげられる。具体的には、スピンコート,ディップコート,スクリーン印刷,インクジェット印刷,ブレード塗布,印刷(平版印刷,凹版印刷,凸版印刷等)等の公知の方法があげられる。これらの印刷方法には、本発明のポリアセン化合物の溶液に粘度等を調節するための添加物を加えたインクを用いることができる。
このような操作は、通常の大気下又は窒素,アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。ただし、一部のポリアセン化合物の溶液は酸化されやすい場合もあるため、溶液の作製,保存及び有機半導体薄膜の作製は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
また、溶媒を気化させる際には、ベース付近の温度や雰囲気の溶媒蒸気圧により気液界面の溶媒気化速度を調節することによって、結晶成長を制御することができる。さらに、ポリアセン化合物の溶液にベースを接触させて、過飽和状態でベースの表面に有機半導体薄膜を形成させることも可能である。さらに、所望により、ポリアセン化合物の溶液とベースとの界面に、温度勾配,電場,磁場の少なくとも1つを印加して、結晶成長を制御することができる。これらの方法により高結晶性の有機半導体薄膜を製造することが可能であり、得られた有機半導体薄膜は高結晶性であることから半導体特性が優れている。
さらに、有機半導体薄膜の安定性,半導体特性の点から、有機半導体薄膜中に残存する溶媒の量は低いことが好ましい。よって、通常は、有機半導体薄膜を形成した後に再度加熱処理及び/又は減圧処理を施して、有機半導体薄膜中に残存する溶媒をほぼ完全に除去することが好ましい。
このように、ドライプロセス又はウェットプロセスによりポリアセン化合物からなる有機半導体薄膜が形成できる。
前述したように、本発明のポリアセン化合物は、結晶性及び半導体特性に優れた薄膜を形成することができる。また、本発明の有機半導体薄膜においては、ポリアセン化合物は、分子の長軸をベース面に対して垂直にして配向している。このことは、ポリアセン化合物の分子の分子凝集力が強く、分子面同士でスタックした分子カラムを形成しやすいためであると考えられる。したがって、有機半導体薄膜のX線回折パターンは、結晶の(00n)面強度が強く現れやすい。この面間距離は、結晶のc軸格子定数にあたる。
また、本発明のポリアセン化合物は、その結晶の結晶軸のa軸方向及び/又はb軸方向の分子間距離が縮小する場合があり、この分子間距離の縮小によってキャリア移動が起こりやすく、その結果、高い移動度を示す。このような有機半導体薄膜で構成された有機半導体素子は、層状に形成された分子カラムに沿ってキャリアが流れやすい性質を持つものと思われる。そして、このa軸及びb軸の格子定数は、斜め入射X線回折,透過型電子線回折,薄膜のエッジ部にX線を入射させ回折を測定する方法などによって観測することができる。
さらに、通常の無機半導体薄膜は、その結晶性がベースの材料の結晶性,面方位の影響を受けるが、本発明の有機半導体薄膜は、ベースの材料の結晶性,面方位に関係なく高結晶性の薄膜となる。よって、ベースの材料には、結晶性,非晶性に関係なく種々の材料を用いることが可能である。
例えば、ガラス,石英,酸化アルミニウム,サファイア,チッ化珪素,炭化珪素等のセラミック、シリコン,ゲルマニウム,ガリウム砒素,ガリウム燐,ガリウム窒素等の半導体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等),ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリビニルアルコール,エチレンビニルアルコール共重合体,環状ポリオレフィン,ポリイミド,ポリアミド,ポリスチレン,ポリカーボネート,ポリエーテルスルフォン,ポリスルフォン,ポリメチルメタクリレート等の樹脂、紙、不織布などがあげられる。
また、ベースの形状は特に限定されるものではないが、通常はシート状のベースや板状のベース(基板)が用いられる。
本発明の有機半導体薄膜はキャリア移動度が高いことが特徴であり、1×10-4cm2 /V・s以上であることが好ましい。より好ましくは1×10-3cm2 /V・s以上であり、最も好ましくは1×10-2cm2 /V・s以上である。
このような有機半導体薄膜を用いることにより、エレクトロニクス,フォトニクス,バイオエレクトロニクス等の分野において有益な半導体素子を製造することができる。このような半導体素子の例としては、ダイオード,トランジスタ,薄膜トランジスタ,メモリ,フォトダイオード,発光ダイオード,発光トランジスタ,センサ等があげられる。
トランジスタ及び薄膜トランジスタは、液晶ディスプレイ,分散型液晶ディスプレイ,電気泳動型ディスプレイ,粒子回転型表示素子,エレクトロクロミックディスプレイ,有機発光ディスプレイ,電子ペーパー等の種々の表示素子に利用可能であり、これらの表示素子を用いて様々なディスプレイ装置を製造することができる。トランジスタ及び薄膜トランジスタは、これらの表示素子において表示画素のスイッチング用トランジスタ,信号ドライバ回路素子,メモリ回路素子,信号処理回路素子等に利用される。
半導体素子がトランジスタである場合には、その素子構造としては、例えば、基板/ゲート電極/絶縁体層(誘電体層)/ソース電極・ドレイン電極/半導体層という構造、基板/半導体層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層(誘電体層)/ゲート電極という構造、基板/ソース電極(又はドレイン電極)/半導体層+絶縁体層(誘電体層)+ゲート電極/ドレイン電極(又はソース電極)という構造等があげられる。このとき、ソース電極,ドレイン電極,ゲート電極は、それぞれ複数設けてもよい。また、複数の半導体層を同一平面内に設けてもよいし、積層して設けてもよい。
トランジスタの構成としては、MOS(メタル−酸化物(絶縁体層)−半導体)型及びバイポーラ型のいずれでも採用可能である。ポリアセン化合物は、通常はp型半導体であるので、ドナードーピングしてn型半導体としたポリアセン化合物と組み合わせたり、ポリアセン化合物以外のn型半導体と組み合わせたりすることにより、素子を構成することができる。
また、半導体素子がダイオードである場合には、その素子構造としては、例えば、電極/n型半導体層/p型半導体層/電極という構造があげられる。そして、p型半導体層に本発明の有機半導体薄膜が使用され、n型半導体層に前述のn型半導体が使用される。
半導体素子における有機半導体薄膜内部又は有機半導体薄膜表面と電極との接合面の少なくとも一部は、ショットキー接合及び/又はトンネル接合とすることができる。このような接合構造を有する半導体素子は、単純な構成でダイオードやトランジスタを作製することができるので好ましい。さらに、このような接合構造を有する有機半導体素子を複数接合して、インバータ,オシレータ,メモリ,センサ等の素子を形成することもできる。
さらに、本発明の半導体素子を表示素子として用いる場合は、表示素子の各画素に配置され各画素の表示をスイッチングするトランジスタ素子(ディスプレイTFT)として利用できる。このようなアクティブ駆動表示素子は、対向する導電性基板のパターニングが不要なため、回路構成によっては、画素をスイッチングするトランジスタを持たないパッシブ駆動表示素子と比べて画素配線を簡略化できる。通常は、1画素当たり1個から数個のスイッチング用トランジスタが配置される。このような表示素子は、基板面に二次元的に形成したデータラインとゲートラインとを交差した構造を有し、データラインやゲートラインがトランジスタのゲート電極,ソース電極,ドレイン電極にそれぞれ接合されている。なお、データラインとゲートラインとを分割することや、電流供給ライン,信号ラインを追加することも可能である。
また、表示素子の画素に、画素配線,トランジスタに加えてキャパシタを併設して、信号を記録する機能を付与することもできる。さらに、表示素子が形成された基板に、データライン及びゲートラインのドライバ,画素信号のメモリ,パルスジェネレータ,信号分割器,コントローラ等を搭載してディスプレイ装置とすることもできる。
また、本発明の有機半導体素子は、ICカード,スマートカード,及び電子タグにおける演算素子,記憶素子としても利用することができる。その場合、これらが接触型であっても非接触型であっても、問題なく適用可能である。このICカード,スマートカード,及び電子タグは、メモリ,パルスジェネレータ,信号分割器,コントローラ,キャパシタ等で構成されており、さらにアンテナ,バッテリを備えていてもよい。
さらに、本発明の有機半導体素子でダイオード,ショットキー接合構造を有する素子,トンネル接合構造を有する素子を構成すれば、その素子は光電変換素子,太陽電池,赤外線センサ等の受光素子,フォトダイオードとして利用することもできるし、発光素子として利用することもできる。また、本発明の有機半導体素子でトランジスタを構成すれば、そのトランジスタは発光トランジスタとして利用することができる。これらの発光素子の発光層には、公知の有機材料や無機材料を使用することができる。
さらに、本発明の有機半導体素子はセンサとして利用することができ、ガスセンサ,バイオセンサ,血液センサ,免疫センサ,人工網膜,味覚センサ等、種々のセンサに応用することができる。通常は、有機半導体素子を構成する有機半導体薄膜に測定対象物を接触又は隣接させた際に生じる有機半導体薄膜の抵抗値の変化によって、測定対象物の分析を行うことができる。
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
〔実施例1:6,13−ジフルオロ−2,3,9,10−テトラヘキシルペンタセンの合成〕
〔中間体の合成方法について〕
2,3,9,10−テトラヘキシル−6,13−ペンタセンキノン649mgをテトラヒドロフラン(THF)30mlに溶解させた溶液に、水素化リチウムトリエチルボレートのTHF溶液(濃度は1mol/1000ml)を5ml加え、窒素雰囲気下で12時間加熱還流させた。得られた溶液に希塩酸を加えて中和した後に、有機相を分離,濃縮,及び真空乾燥することにより、2,3,9,10−テトラヘキシル−6,13−ジヒドロ−6,13−ジヒドロキシペンタセンをほぼ定量的に得た。
〔ポリアセン化合物の製造方法について〕
窒素雰囲気下において、2,3,9,10−テトラヘキシル−6,13−ジヒドロ−6,13−ジヒドロキシペンタセン382mgをTHF40mlに溶解させ、ジエチルアミノサルファートリフルオライドを8倍当量滴下し、室温で3日間反応させた。
水を加えて反応を終了させたら、クロロホルムで反応生成物等を抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相中の有機溶媒を減圧留去し、得られた残渣の洗浄を行うと、純粋な6,13−ジフルオロ−2,3,9,10−テトラヘキシルペンタセン54mgが得られた。この反応における収率は14%であった。
得られた6,13−ジフルオロ−2,3,9,10−テトラヘキシルペンタセンについて、質量分析を行った。結果は以下の通りである。
FAB−MS(NBA):m/z=651
また、重水素化クロロホルムを溶媒として用いて、室温にて核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定を行った。結果を以下に示す。
1H−NMR(ppm):δ0.92(t,12H)、1.32〜1.45(m,24H)、1.63〜1.68(m,8H)、2.77(t,8H)、7.76(s,4H)、8.99(s,4H)
〔実施例2:6,13−ジフルオロ−2,3,9,10−テトラプロピルペンタセンの合成〕
〔中間体の合成方法について〕
2,3,9,10−テトラプロピル−6,13−ペンタセンキノン357mgをTHF50mlに溶解させた溶液に、水素化リチウムトリエチルボレートのTHF溶液(濃度は1mol/1000ml)を11ml加え、窒素雰囲気下で24時間加熱還流させた。得られた溶液に希塩酸を加えて中和した後に、有機相を分離,濃縮,及び真空乾燥することにより、6,13−ジヒドロ−6,13−ジヒドロキシ−2,3,9,10−テトラプロピルペンタセンをほぼ定量的に得た。
〔ポリアセン化合物の製造方法について〕
窒素雰囲気下において、6,13−ジヒドロ−6,13−ジヒドロキシ−2,3,9,10−テトラプロピルペンタセン361mgをTHF45mlに溶解させ、ジエチルアミノサルファートリフルオライドを8倍当量滴下し、室温で3日間反応させた。
水を加えて反応を終了させたら、クロロホルムで反応生成物等を抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相中の有機溶媒を減圧留去し、得られた残渣について再沈殿を行うと、純粋な6,13−ジフルオロ−2,3,9,10−テトラプロピルペンタセン36mgが得られた。この反応における収率は10%であった。
得られた6,13−ジフルオロ−2,3,9,10−テトラプロピルペンタセンについて、質量分析を行った。結果は以下の通りである。
FAB−MS(NBA):m/z=483
また、重水素化クロロホルムを溶媒として用いて、室温にて核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定を行った。結果を以下に示す。
1H−NMR(ppm):δ1.08(t,12H)、1.74〜1.80(m,8H)、2.76(t,8H)、7.76(s,4H)、9.03(s,4H)
〔実施例3:6,13−ジフルオロ−2,3−ジプロピルペンタセンの合成〕
〔中間体の合成方法について〕
2,3−ジプロピル−6,13−ペンタセンキノン314mgをTHF60mlに溶解させた溶液に、水素化リチウムトリエチルボレートのTHF溶液(濃度は1mol/1000ml)を6ml加え、窒素雰囲気下で20時間加熱還流させた。得られた溶液に希塩酸を加えて中和した後に、有機相を分離,濃縮,及び真空乾燥することにより、6,13−ジヒドロ−6,13−ジヒドロキシ−2,3−ジプロピルペンタセンをほぼ定量的に得た。
〔ポリアセン化合物の製造方法について〕
窒素雰囲気下において、6,13−ジヒドロ−6,13−ジヒドロキシ−2,3−ジプロピルペンタセン317mgをTHF50mlに溶解させ、ジエチルアミノサルファートリフルオライドを8倍当量滴下し、室温で3日間反応させた。
水を加えて反応を終了させたら、クロロホルムで反応生成物等を抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相中の有機溶媒を減圧留去し、得られた残渣をエタノールから再沈殿を行うと、純粋な6,13−ジフルオロ−2,3−ジプロピルペンタセン34mgが得られた。この反応における収率は11%であった。
得られた6,13−ジフルオロ−2,3−ジプロピルペンタセンについて、質量分析を行った。結果は以下の通りである。
FAB−MS(NBA):m/z=399
また、重水素化クロロホルムを溶媒として用いて、室温にて核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定を行った。結果を以下に示す。
1H−NMR(ppm):δ1.08(t,6H)、1.75〜1.82(m,4H)、2.76(t,4H)、7.39(dd,2H)、7.77(s,2H)、8.01(dd,2H)、8.92(s,2H)、9.08(s,2H)
〔実施例4:6,13−ジフルオロ−2,3−ジヘキシルペンタセンの合成〕
〔中間体の合成方法について〕
2,3−ジヘキシル−6,13−ペンタセンキノン334mgをTHF50mlに溶解させた溶液に、水素化リチウムトリエチルボレートのTHF溶液(濃度は1mol/1000ml)を11ml加え、窒素雰囲気下で20時間加熱還流させた。得られた溶液に希塩酸を加えて中和した後に、有機相を分離,濃縮,及び真空乾燥することにより、2,3−ジヘキシル−6,13−ジヒドロ−6,13−ジヒドロキシペンタセンをほぼ定量的に得た。
〔ポリアセン化合物の製造方法について〕
窒素雰囲気下において、2,3−ジヘキシル−6,13−ジヒドロ−6,13−ジヒドロキシペンタセン336mgをTHF40mlに溶解させ、ジエチルアミノサルファートリフルオライドを8倍当量滴下し、室温で3日間反応させた。
水を加えて反応を終了させたら、クロロホルムで反応生成物等を抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相中の有機溶媒を減圧留去し、得られた残渣について再沈殿を行うと、純粋な6,13−ジフルオロ−2,3−ジヘキシルペンタセン40mgが得られた。この反応における収率は12%であった。
得られた6,13−ジフルオロ−2,3−ジヘキシルペンタセンについて、質量分析を行った。結果は以下の通りである。
FAB−MS(NBA):m/z=483
また、重水素化クロロホルムを溶媒として用いて、室温にて核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定を行った。結果を以下に示す。
1H−NMR(ppm):δ0.90(t,6H)、1.28〜1.48(m,12H)、1.66〜1.74(m,4H)、2.72(t,4H)、7.35(dd,2H)、7.69(s,2H)、7.96(dd,2H)、8.94(s,2H)、9.06(s,2H)
〔実施例5:2,3−ジエチル−6,13−ジフルオロペンタセンの合成〕
〔中間体の合成方法について〕
2,3−ジエチル−6,13−ペンタセンキノン150mgをTHF30mlに溶解させた溶液に、水素化リチウムトリエチルボレートのTHF溶液(濃度は1mol/1000ml)を3.2ml加え、窒素雰囲気下、室温で2時間反応させた。得られた溶液に希塩酸を加えて中和した後に、有機相を分離,濃縮,及び真空乾燥することにより、2,3−ジエチル−6,13−ジヒドロ−6,13−ジヒドロキシペンタセンをほぼ定量的に得た。
〔ポリアセン化合物の製造方法について〕
窒素雰囲気下において、2,3−ジエチル−6,13−ジヒドロ−6,13−ジヒドロキシペンタセン75mgをTHF4mlに溶解させ、ジエチルアミノサルファートリフルオライドを8倍当量滴下し、室温で3日間反応させた。
水を加えて反応を終了させたら、クロロホルムで反応生成物等を抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相中の有機溶媒を減圧留去し、得られた残渣を洗浄すると、純粋な2,3−ジエチル−6,13−ジフルオロペンタセン18mgが得られた。この反応における収率は24%であった。
得られた2,3−ジエチル−6,13−ジフルオロペンタセンについて、質量分析を行った。結果は以下の通りである。
FAB−MS(NBA):m/z=371
また、重水素化クロロホルムを溶媒として用いて、室温にて核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定を行った。結果を以下に示す。
1H−NMR(ppm):δ1.38(t,6H)、2.80(q,4H)、7.37(dd,2H)、7.76(s,2H)、7.98(dd,2H)、9.03(s,2H)、9.11(s,2H)
〔実施例6:6,13−ジフルオロ−2,3−(メチレンジオキシ)ペンタセンの合成〕
〔中間体の合成方法について〕
2,3−(メチレンジオキシ)−6,13−ペンタセンキノン57mgをTHF25mlに溶解させた溶液に、水素化リチウムトリエチルボレートのTHF溶液(濃度は1mol/1000ml)を1.6ml加え、窒素雰囲気下、室温で1時間反応させた。得られた溶液に希塩酸を加えて中和した後に、有機相を分離,濃縮,及び真空乾燥することにより、6,13−ジヒドロ−6,13−ジヒドロキシ−2,3−(メチレンジオキシ)ペンタセンをほぼ定量的に得た。
〔ポリアセン化合物の製造方法について〕
窒素雰囲気下において、6,13−ジヒドロ−6,13−ジヒドロキシ−2,3−(メチレンジオキシ)ペンタセン57mgをTHF3mlに溶解させ、ジエチルアミノサルファートリフルオライドを8倍当量滴下し、室温で3日間反応させた。
水を加えて反応を終了させたら、クロロホルムで反応生成物等を抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相中の有機溶媒を減圧留去し、得られた残渣を洗浄すると、純粋な6,13−ジフルオロ−2,3−(メチレンジオキシ)ペンタセン10mgが得られた。この反応における収率は18%であった。
得られた6,13−ジフルオロ−2,3−(メチレンジオキシ)ペンタセンについて、質量分析を行った。結果は以下の通りである。
FAB−MS(NBA):m/z=402
また、重水素化クロロホルムを溶媒として用いて、室温にて核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定を行った。結果を以下に示す。
1H−NMR(ppm):δ6.07(s,2H)、7.20(s,2H)、7.41(dd,2H)、8.02(dd,2H)、8.88(s,2H)、9.14(s,2H)
〔実施例7:ペンタセンキノン誘導体のフッ素化を経る6,13−ジフルオロ−2,3,9,10−テトラヘキシルペンタセンの合成〕
〔中間体の合成方法について〕
窒素雰囲気下において、2,3,9,10−テトラヘキシル−6,13−ペンタセンキノン649mgをステンレス製オートクレーブ装置の容器(容積500ml)に加えて密閉し、該容器を−40℃以下に冷却した。そして、ガス導入管から無水フッ化水素(HF)150g、次いでSF4 120gを仕込み密閉した。100℃で48時間反応させた後、ガス成分及び無水フッ化水素をアルカリスクラバーへと廃棄し、さらに窒素ガスで容器内を十分置換した。得られた反応生成物をクロロホルムで抽出し、飽和NaCO3 水溶液で中和した。有機相を分離,濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して6,6,13,13−テトラフルオロ−2,3,9,10−テトラヘキシル−6,13−ジヒドロペンタセンをほぼ定量的に得た。
〔ポリアセン化合物の製造方法について〕
窒素雰囲気下において、6,6,13,13−テトラフルオロ−2,3,9,10−テトラヘキシル−6,13−ジヒドロペンタセン69mgと亜鉛粉650mgをステンレス製オートクレーブ装置の容器(容積50ml)に入れて密閉し、250℃で5時間反応させた。得られた固体に希塩酸を加え、水及びエタノールで洗浄すると、純粋な6,13−ジフルオロ−2,3,9,10−テトラヘキシルペンタセン15mgが得られた。この反応における収率は23%であった。
〔実施例8:ヒドロキシペンタセン誘導体のハロゲン化を経る6,13−ジクロロ−2,3,9,10−テトラヘキシルペンタセンの合成〕
〔中間体の合成方法について〕
窒素雰囲気下において、2,3,9,10−テトラヘキシル−6,13−ジヒドロ−6,13−ジヒドロキシペンタセン382mgを四塩化炭素10mlに溶解させ、これにトリフェニルホスフィン68mgを加えた。1時間加熱撹拌した後、室温に冷却し、沈殿したトリフェニルホスフィンを濾別した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な6,13−ジクロロ−2,3,9,10−テトラヘキシル−6,13−ジヒドロペンタセンを定量的に得た。
〔ポリアセン化合物の製造方法について〕
窒素雰囲気下において、6,13−ジクロロ−2,3,9,10−テトラヘキシル−6,13−ジヒドロペンタセン72mgをトルエン8mlに溶解し、窒素雰囲気下でクロラニル78mgを加えて3時間加熱環流した。溶媒を減圧留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、6,13−ジクロロ−2,3,9,10−テトラヘキシルペンタセン12mgが得られた。この反応における収率は18%であった。
〔実施例9:フッ素以外のハロゲン基を有するハロゲン化ポリアセン化合物のハロゲン基をフッ素に変換することによる6,13−ジフルオロ−2,3,9,10−テトラヘキシルペンタセンの合成〕
窒素雰囲気下において、6,13−ジクロロ−2,3,9,10−テトラヘキシルペンタセン68mg、KF・H2 O47mg、臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム5mg、及び水30mlをステンレス製オートクレーブ装置の容器(容積200ml)に入れて密閉し、160℃で7時間反応させた。有機相を分離し、水,濃硫酸,水,エタノールの順に洗浄し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な6,13−ジフルオロ−2,3,9,10−テトラヘキシルペンタセン5mgが得られた。この反応における収率は7%であった。
本発明は、エレクトロニクス,フォトニクス,バイオエレクトロニクス等において好適である。

Claims (24)

  1. 下記の化学式(I)で表されるような構造を有することを特徴とするポリアセン化合物。
    Figure 2006335719
    ただし、化学式(I)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。また、化学式(I)中の複数のXのうち一部はフッ素原子であり、他部は水素原子である。さらに、kは1以上5以下の整数である。
  2. 3 ,R4 が水素原子であることを特徴とする請求項1に記載のポリアセン化合物。
  3. 1 ,R2 とR3 ,R4 との少なくとも一方は、連結して環状構造を形成していることを特徴とする請求項1に記載のポリアセン化合物。
  4. 1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち官能基の炭素数が1以上15以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセン化合物。
  5. 1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち官能基の炭素数が2以上15以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセン化合物。
  6. 1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち官能基の炭素数が2以上6以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセン化合物。
  7. 複数のXのうち2個以上がフッ素原子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセン化合物。
  8. 複数のXのうち偶数個がフッ素原子であり、そのうち少なくとも2個のフッ素原子が同一のアセン環に結合していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセン化合物。
  9. 複数のXのうち2個がフッ素原子であり、これら2個のフッ素原子が同一のアセン環に結合していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセン化合物。
  10. kが1又は2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセン化合物。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(II)で表されるような構造を有するポリアセンキノン誘導体を還元して、下記の化学式(III )で表されるような構造を有するヒドロキシポリアセン誘導体とし、さらにこのヒドロキシポリアセン誘導体をフッ素化及び芳香化することを特徴とするポリアセン化合物の製造方法。
    Figure 2006335719
    Figure 2006335719
    ただし、化学式(II)及び化学式(III )中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。また、化学式(II)及び化学式(III )中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれフッ素原子又は水素原子である。ただし、X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 の全てがフッ素原子である場合を除く。さらに、mは2以上の整数であり、m+nは3以上7以下の整数である。
  12. 請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(II)で表されるような構造を有するポリアセンキノン誘導体をフッ素化剤と反応させることにより、下記の化学式(IV)で表されるような構造を有する含フッ素ポリアセン誘導体とし、さらにこの含フッ素ポリアセン誘導体を脱フッ素化,脱水素化,又は脱フッ化水素化することを特徴とするポリアセン化合物の製造方法。
    Figure 2006335719
    Figure 2006335719
    ただし、化学式(II)及び化学式(IV)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。また、化学式(II)及び化学式(IV)中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれフッ素原子又は水素原子である。また、Y1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はフッ素原子であり、他部は水素原子である。ただし、X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 ,Y1 ,Y2 ,Y3 ,Y4 の全てがフッ素原子である場合を除く。
  13. 請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(III )で表されるような構造を有するヒドロキシポリアセン誘導体をフッ素化剤と反応させることにより、下記の化学式(IV)で表されるような構造を有する含フッ素ポリアセン誘導体とし、さらにこの含フッ素ポリアセン誘導体を脱フッ素化,脱水素化,又は脱フッ化水素化することを特徴とするポリアセン化合物の製造方法。
    Figure 2006335719
    Figure 2006335719
    ただし、化学式(III )及び化学式(IV)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。また、化学式(III )及び化学式(IV)中の官能基X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれフッ素原子又は水素原子である。また、Y1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はフッ素原子であり、他部は水素原子である。ただし、X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 ,Y1 ,Y2 ,Y3 ,Y4 の全てがフッ素原子である場合を除く。
  14. 請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(V)で表されるような構造を有するハロゲン化ポリアセン化合物をフッ化金属塩と反応させて、前記ハロゲン化ポリアセン化合物中の塩素原子,臭素原子,又はヨウ素原子をフッ素原子にハロゲン交換することを特徴とするポリアセン化合物の製造方法。
    Figure 2006335719
    ただし、化学式(V)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。また、化学式(V)中の複数のXのうち一部は塩素原子,臭素原子,又はヨウ素原子であり、他部は水素原子である。さらに、kは1以上5以下の整数である。
  15. 下記の化学式(VI)で表されるような構造を有するポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(VII )で表されるような構造を有するポリアセンキノン誘導体をハロゲン化剤と反応させることにより、下記の化学式(VIII)で表されるような構造を有する含ハロゲンポリアセン誘導体とし、さらにこの含ハロゲンポリアセン誘導体を脱ハロゲン化,脱水素化,又は脱ハロゲン化水素化することを特徴とするポリアセン化合物の製造方法。
    Figure 2006335719
    Figure 2006335719
    Figure 2006335719
    ただし、化学式(VI)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。また、化学式(VI)中の複数のXのうち一部はハロゲン基であり、他部は水素原子である。さらに、kは1以上5以下の整数である。
    また、化学式(VII )及び化学式(VIII)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。
    さらに、化学式(VII )及び化学式(VIII)中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれハロゲン基又は水素原子である。ただし、X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 の全てがハロゲン基である場合を除く。さらに、mは2以上の整数であり、m+nは3以上7以下の整数である。
    さらに、化学式(VIII)中のY1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はハロゲン基であり、他部は水素原子である。ただし、X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 ,Y1 ,Y2 ,Y3 ,Y4 の全てがハロゲン基である場合を除く。
  16. 下記の化学式(VI)で表されるような構造を有するポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(IX)で表されるような構造を有するヒドロキシポリアセン誘導体をハロゲン化剤と反応させることにより、下記の化学式(VIII)で表されるような構造を有する含ハロゲンポリアセン誘導体とし、さらにこの含ハロゲンポリアセン誘導体を脱ハロゲン化,脱水素化,又は脱ハロゲン化水素化することを特徴とするポリアセン化合物の製造方法。
    Figure 2006335719
    Figure 2006335719
    Figure 2006335719
    ただし、化学式(VI)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。また、化学式(VI)中の複数のXのうち一部はハロゲン基であり、他部は水素原子である。さらに、kは1以上5以下の整数である。
    また、化学式(VIII)及び化学式(IX)中のR1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも一部は、アルキル基,アルケニル基,アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、エステル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、又はこれらのうちの2以上の基を含む官能基であり、他部は水素原子である。
    さらに、化学式(VIII)及び化学式(IX)中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれハロゲン基又は水素原子である。ただし、X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 の全てがハロゲン基である場合を除く。さらに、mは2以上の整数であり、m+nは3以上7以下の整数である。
    さらに、化学式(VIII)中のY1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はハロゲン基であり、他部は水素原子である。ただし、X1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 ,Y1 ,Y2 ,Y3 ,Y4 の全てがハロゲン基である場合を除く。
  17. 請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアセン化合物で構成され、結晶性を有することを特徴とする有機半導体薄膜。
  18. 基板上に形成された結晶性の有機半導体薄膜であって、前記ポリアセン化合物の分子の長軸が前記基板の表面に対して垂直方向に配向していることを特徴とする請求項17に記載の有機半導体薄膜。
  19. 請求項17又は請求項18に記載の有機半導体薄膜で少なくとも一部を構成したことを特徴とする有機半導体素子。
  20. ゲート電極,誘電体層,ソース電極,ドレイン電極,及び半導体層を備えるトランジスタにおいて、前記半導体層を請求項17又は請求項18に記載の有機半導体薄膜で構成したことを特徴とするトランジスタ。
  21. 多数の画素からなる画素面を備えるディスプレイ装置において、前記各画素は、請求項19に記載の有機半導体素子又は請求項20に記載のトランジスタを備えることを特徴とするディスプレイ装置。
  22. 前記有機半導体素子又は前記トランジスタが備える電極,誘電体層,及び半導体層を、液体の印刷又は塗布によって形成したことを特徴とする請求項21に記載のディスプレイ装置。
  23. 請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアセン化合物を含有することを特徴とする溶液。
  24. 請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアセン化合物を含有することを特徴とするインク。
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