JP2006335720A - ポリアセン化合物の製造方法及び有機半導体素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い移動度を発現し且つ耐酸化性に優れる有機半導体材料の製造方法を提供する。また、高い移動度を有する有機半導体薄膜、及び、電子特性の優れた有機半導体素子を提供する。
【解決手段】
ポリアセンキノンをフッ素化剤と反応させることにより、含フッ素ポリアセンとし、さらにこの含フッ素ポリアセンを脱フッ素化,脱水素化,又は脱フッ化水素化して、下記の化学式(I)で表されるような構造を有するポリアセン化合物を製造する。
【化1】
Figure 2006335720

ただし、化学式(I)中の複数のXのうち一部はフッ素原子であり、他部は水素原子である。また、kは1以上5以下の整数である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、有機半導体材料の製造方法に関する。また、該製造方法で製造された有機半導体材料を用いた有機半導体薄膜及び有機半導体素子に関する。
有機半導体を用いたデバイスは、従来の無機半導体デバイスに比べて成膜条件がマイルドであり、各種基板上に半導体薄膜を形成したり、常温で成膜したりすることが可能であるため、低コスト化や、ポリマーフィルム等に薄膜を形成することによるフレキシブル化が期待されている。
有機半導体材料としては、ポリフェニレンビニレン,ポリピロール,ポリチオフェン等の共役系高分子化合物やそのオリゴマーとともに、アントラセン,テトラセン,ペンタセン等のポリアセン化合物を中心とする芳香族化合物が研究されている。特に、ポリアセン化合物は分子間凝集力が強いため高い結晶性を有していて、これによって高いキャリア移動度と、それによる優れた半導体デバイス特性とを発現することが報告されている。
そして、ポリアセン化合物のデバイスへの利用形態としては蒸着膜又は単結晶があげられ、トランジスタ,太陽電池,レーザー等への応用が検討されている(非特許文献1〜3を参照)。
また、蒸着法以外の方法でポリアセン化合物の薄膜を形成する方法として、ポリアセン化合物の一種であるペンタセンの前駆体の溶液を基板上に塗布し、加熱処理してペンタセン薄膜を形成する方法が報告されている(非特許文献4を参照)。この方法は、ポリアセン化合物は溶媒に対する溶解性が低いため、溶解性の高い前駆体の溶液を用いて薄膜を形成し、熱により前駆体をポリアセン化合物に変換するというものである。
一方、置換基を有するポリアセン化合物は、高橋らの報告(非特許文献5),グラハムらの報告(非特許文献6),アンソニーらの報告(非特許文献7)及び,ミラーらの報告(非特許文献8)などに記載されており、さらに非特許文献9には2,3,9,10−テトラメチルペンタセンの合成例が、非特許文献10には2,3,9,10−テトラクロロペンタセンの合成例が、非特許文献11にはパーフルオロペンタセンの合成例がそれぞれ記載されている。
なお、ペンタセンを超える移動度を有する有機半導体材料は、現在のところ知られていない。
「アドバンスド・マテリアルズ」,2002年,第14巻,p.99 ジミトラコポウラスら,「ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス」,1996年,第80巻,p.2501 クロークら,「IEEE・トランザクション・オン・エレクトロン・デバイシス」,1999年,第46巻,p.1258 ブラウンら,「ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス」,1996年,第79巻,p.2136 高橋ら,「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー」,2000年,第122巻,p.12876 グラハムら,「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー」,1995年,第60巻,p.5770 アンソニーら,「オーガニック・レターズ」,2000年,第2巻,p.85 ミラーら,「オーガニック・レターズ」,2000年,第2巻,p.3979 「アドバンスド・マテリアルズ」,2003年,第15巻,p.1090 「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー」,2003年,第125巻,p.10190 「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー」,2004年,第126巻,p.8138
しかしながら、前述のような前駆体を利用してポリアセン化合物の薄膜を形成する方法は、前記前駆体をポリアセン化合物に変換するために高温処理が必要であるという問題点を有していた(例えば、ペンタセンの場合であれば150℃程度)。また、ポリアセン化合物への変換反応を完全に行うことが難しいため未反応部分が欠陥として残ったり、高温により変性が生じて欠陥となったりするという問題点も併せて有していた。
一方、前述の高橋らの報告等には、各種のポリアセン化合物に置換基を導入した誘導体が記載されているが、有機半導体材料としての特性や薄膜化に関しては記載されていない。また、2,3,9,10−テトラメチルペンタセンや2,3,9,10−テトラクロロペンタセンやパーフルオロペンタセンが合成されているが、それぞれの薄膜の移動度はペンタセンよりも劣っている。特に、2,3,9,10−テトラクロロペンタセンは高温下での薄膜形成過程において変性が生じるため、半導体としての性質を示さない。
そこで、本発明は、前述のような従来技術が有する問題点を解決し、高い移動度を発現し且つ耐酸化性に優れる有機半導体材料の製造方法を提供することを課題とする。また、高い移動度を有する有機半導体薄膜、及び、電子特性の優れた有機半導体素子を提供することを併せて課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1のポリアセン化合物の製造方法は、下記の化学式(I)で表されるような構造を有するポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(II)で表されるような構造を有するポリアセンキノン誘導体をフッ素化剤と反応させることにより、下記の化学式(III )で表されるような構造を有する含フッ素ポリアセン誘導体とし、さらにこの含フッ素ポリアセン誘導体を脱フッ素化,脱水素化,又は脱フッ化水素化することを特徴とする。
Figure 2006335720
Figure 2006335720
Figure 2006335720
ただし、化学式(I)中の複数のXのうち一部はフッ素原子であり、他部は水素原子である。また、kは1以上5以下の整数である。
さらに、化学式(II)及び化学式(III )中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれフッ素原子又は水素原子である。さらに、mは2以上の整数であり、m+nは3以上7以下の整数である。
さらに、化学式(III )中のY1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はフッ素原子であり、他部は水素原子である。
また、本発明に係る請求項2のポリアセン化合物の製造方法は、下記の化学式(I)で表されるような構造を有するポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(IV)で表されるような構造を有するヒドロキシポリアセン誘導体をフッ素化剤と反応させることにより、下記の化学式(III )で表されるような構造を有する含フッ素ポリアセン誘導体とし、さらにこの含フッ素ポリアセン誘導体を脱フッ素化,脱水素化,又は脱フッ化水素化することを特徴とする。
Figure 2006335720
Figure 2006335720
Figure 2006335720
ただし、化学式(I)中の複数のXのうち一部はフッ素原子であり、他部は水素原子である。また、kは1以上5以下の整数である。
さらに、化学式(III )及び化学式(IV)中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれフッ素原子又は水素原子である。さらに、mは2以上の整数であり、m+nは3以上7以下の整数である。
さらに、化学式(III )中のY1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はフッ素原子であり、他部は水素原子である。
さらに、本発明に係る請求項3のポリアセン化合物の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載のポリアセン化合物の製造方法において、前記化学式(I)中の複数のXのうち2個以上がフッ素原子であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項4のポリアセン化合物の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載のポリアセン化合物の製造方法において、前記化学式(I)中の複数のXのうち偶数個がフッ素原子であり、そのうち少なくとも2個のフッ素原子が同一のアセン環に結合していることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項5のポリアセン化合物の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載のポリアセン化合物の製造方法において、前記化学式(I)中の複数のXのうち2個がフッ素原子であり、これら2個のフッ素原子が同一のアセン環に結合していることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項6のポリアセン化合物の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載のポリアセン化合物の製造方法において、kが1又は2であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項7のポリアセン化合物の製造方法は、下記の化学式(V)で表されるような構造を有するハロゲン化ポリアセン化合物をフッ化金属塩と反応させて、前記ハロゲン化ポリアセン化合物中の塩素原子,臭素原子,又はヨウ素原子をフッ素原子にハロゲン交換することを特徴とする。
Figure 2006335720
ただし、化学式(V)中の複数のXのうち一部は塩素原子,臭素原子,又はヨウ素原子であり、他部は水素原子である。また、kは1以上5以下の整数である。
さらに、本発明に係る請求項8のポリアセン化合物の製造方法は、下記の化学式(VI)で表されるような構造を有するポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(VII )で表されるような構造を有するポリアセンキノン誘導体をハロゲン化剤と反応させることにより、下記の化学式(VIII)で表されるような構造を有する含ハロゲンポリアセン誘導体とし、さらにこの含ハロゲンポリアセン誘導体を脱ハロゲン化,脱水素化,又は脱ハロゲン化水素化することを特徴とする。
Figure 2006335720
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Figure 2006335720
ただし、化学式(VI)中の複数のXのうち一部はハロゲン基であり、他部は水素原子である。また、kは1以上5以下の整数である。
さらに、化学式(VII )及び化学式(VIII)中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれハロゲン基又は水素原子である。さらに、mは2以上の整数であり、m+nは3以上7以下の整数である。
さらに、化学式(VIII)中のY1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はハロゲン基であり、他部は水素原子である。
さらに、本発明に係る請求項9のポリアセン化合物の製造方法は、下記の化学式(VI)で表されるような構造を有するポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(IX)で表されるような構造を有するヒドロキシポリアセン誘導体をハロゲン化剤と反応させることにより、下記の化学式(VIII)で表されるような構造を有する含ハロゲンポリアセン誘導体とし、さらにこの含ハロゲンポリアセン誘導体を脱ハロゲン化,脱水素化,又は脱ハロゲン化水素化することを特徴とする。
Figure 2006335720
Figure 2006335720
Figure 2006335720
ただし、化学式(VI)中の複数のXのうち一部はハロゲン基であり、他部は水素原子である。また、kは1以上5以下の整数である。
さらに、化学式(VIII)及び化学式(IX)中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれハロゲン基又は水素原子である。さらに、mは2以上の整数であり、m+nは3以上7以下の整数である。
さらに、化学式(VIII)中のY1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はハロゲン基であり、他部は水素原子である。
さらに、本発明に係る請求項10の有機半導体薄膜は、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリアセン化合物の製造方法で製造されたポリアセン化合物で構成され、結晶性を有することを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項11の有機半導体薄膜は、請求項10に記載の有機半導体薄膜において、基板上に形成された結晶性の有機半導体薄膜であって、前記ポリアセン化合物の分子の長軸が前記基板の表面に対して垂直方向に配向していることを特徴とする。 さらに、本発明に係る請求項12の有機半導体素子は、請求項10又は請求項11に記載の有機半導体薄膜で少なくとも一部を構成したことを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項13のトランジスタは、ゲート電極,誘電体層,ソース電極,ドレイン電極,及び半導体層を備えるトランジスタにおいて、前記半導体層を請求項10又は請求項11に記載の有機半導体薄膜で構成したことを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項14のディスプレイ装置は、多数の画素からなる画素面を備えるディスプレイ装置において、前記各画素は、請求項12に記載の有機半導体素子又は請求項13に記載のトランジスタを備えることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項15のディスプレイ装置は、請求項14に記載のディスプレイ装置において、前記有機半導体素子又は前記トランジスタが備える電極,誘電体層,及び半導体層を、液体の印刷又は塗布によって形成したことを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項16の溶液は、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリアセン化合物の製造方法で製造されたポリアセン化合物を含有することを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項17のインクは、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリアセン化合物の製造方法で製造されたポリアセン化合物を含有することを特徴とする。
本発明のポリアセン化合物の製造方法は、高い移動度を発現するとともに耐酸化性に優れるポリアセン化合物を容易に製造することができる。また、本発明の有機半導体薄膜は高い移動度を有している。さらに、本発明の有機半導体素子は優れた電子特性を有している。
本発明のポリアセン化合物は、前述の化学式(I)に示すような構造の化合物であり、複数のXのうち一部はフッ素原子であり、他部は水素原子である。細長い形のポリアセン骨格の側面部分のハロゲン基は、分子同士のスタッキング時に官能基が障害(立体障害)となるため、分子間の共役面の重なりが阻害されることがある。したがって、耐酸化性を向上させる効果を有するハロゲン基の中でも、ファンデルワールス半径の最も小さいフッ素原子が好ましい。また、側面部分のフッ素原子の数は少ない方がより好ましい。
以下に、本発明のポリアセン化合物について、さらに詳細に説明する。複数のXの一部はフッ素原子であり、他のものは水素原子である。複数のXのうち1個がフッ素原子で、他の全てが水素原子でもよいし、1個が水素原子で、他の全てがフッ素原子でもよい。
なお、複数のXのうち偶数個がフッ素原子であり、これらのうち2個のフッ素原子が同一のアセン環に結合しているポリアセン化合物は、同一アセン環内にカルボニル基を2つ有するポリアセンキノン(ポリアセン化合物を合成する場合の前駆体となる)の合成が容易であること、且つ、分子同士がスタッキングする際にフッ素原子同士の立体障害が少ないという点から好ましい。
また、ポリアセン骨格の縮環数に関しては、前述の化学式(I)中のkが1又は2であることが好ましい。一般に、縮環数が増えていくと有機溶剤への溶解性は低下し、酸素への反応性の向上、つまり耐酸化性が低下する。一方で、縮環数が増加するに従い、HOMO−LUMOギャップが減少することから高い移動度の発現が見込まれる。これら溶解性,安定性,及び半導体特性を勘案すると、kが1(すなわち縮環数が5)のペンタセンと、kが2(すなわち縮環数が6)のヘキサセンが好ましい。
次に、本発明のポリアセン化合物の合成方法について説明する。本発明におけるフッ素導入法は、おおよそ3つに分類することができる。
(1)ヒドロキシポリアセン誘導体のヒドロキシル基をフッ素原子に換える方法
(2)ポリアセンキノン誘導体のカルボニル基をフッ素原子に換える方法
(3)他のハロゲン基をフッ素原子に換える方法
フッ素原子を導入するための化学的フッ素化剤として求核フッ素化剤と親電子フッ素化剤が知られている。求核フッ素化剤の例としては、KF,HF,CsF,KHF2 ,AgF,HgF,R4 NF,(Me2 N)3 SMe3 SiF2 ,R4 PF,ピリジンHF塩,アミンHF塩,第四級アンモニウムHF塩,SbF5 ,SbF5 ・HF,SF4 ,Et2 NSF3 ,PhSF3 ,SeF4 ,PhPF4 ,Et2 NCF2 CHFCl,Et2 NCF2 CHFCF3 ,KF・CaF2 ,Bu4 PHF2 ,SiF4 ・i−Pr2 NEt,KHF2 ・AlF3 ,CH3 OF,t−BuOFがあげられ、親電子フッ素化剤の例としては、F2 ,CH3 COOF,N−フルオロ−アルキルトルエンスルホンアミド,N−フルオロパーフルオロピペリジン,N−フルオロピリジン塩,N−フルオロキヌシリディニウムトリフレート,N−フルオロスルタム,(CF3 SO2 2 NF,C5 5 NF(C5 5 N)B2 7 ,(C6 5 SO2 2 NF,C6 4 (SO2 2 NFがあげられる。
前述した(1)のフッ素導入法の例としては、6,13−ジフルオロペンタセン誘導体を、6,13−ペンタセンキノン誘導体から2段階で合成する方法があげられる。例えば、6,13−ペンタセンキノンは、フタルアルデヒドとシクロヘキサン−1,4−ジオンとの環化縮合反応によって容易に得られる。
まず1段階目は、6,13−ペンタセンキノンのカルボニル部位を、水素化リチウムアルミニウム等の水素化金属塩でヒドロキシル基に還元する。そして、2段階目は、1段階目で得られた還元体(ヒドロキシポリアセン誘導体)をEt2 NSF3 (DAST)と反応させる。そうすると、フッ素化と芳香化とが連続して進行して、6,13−ジフルオロペンタセンが得られる。
なお、フッ素以外のハロゲン基を有するハロゲン化ポリアセン化合物を、上記のような合成方法と同様の方法で合成することが可能である。すなわち、フッ素化剤の代わりに他のハロゲン原子を有するハロゲン化剤を用いれば、所望のハロゲン化ポリアセン化合物を効率良く得ることができる。
次に、前述した(2)のフッ素導入法の例としては、ポリアセンキノン誘導体のカルボニル基をSF4 で処理する方法があげられる。SF4 による処理でカルボニル基をCF2 基に変換した後、Mg,Zn,Cd,Al,Cu,Na,及びLiなどの金属を用いて脱フッ素化を行えば、フッ素置換されたポリアセン化合物を合成することができる。
次に、前述した(3)のフッ素導入法の例としては、先にフッ素以外のハロゲン基を有するハロゲン化ポリアセン化合物を合成した後に、アルカリ金属のフッ化物(CsF,RbF,KF,NaF,LiF)を用いてフッ素以外のハロゲン基をフッ素に変換する方法があげられる。
また、本発明のポリアセン化合物は上記のような方法で合成した後、昇華,再結晶等の通常の精製法により精製し、高純度化することができる。
本発明のポリアセン化合物は結晶性を有し、この結晶構造はヘリンボン型で、分子が配列した構造を示す。このヘリンボン構造の結晶構造においては、細長い分子が矢筈状にスタックされた格子構造をとる。これら結晶構造は、前述のように精製し、高純度化した結晶を用いて、X線回折により構造決定することができる。
また、本発明のポリアセン化合物は、無置換のポリアセン化合物と同様に斜方晶系構造又は立方晶系構造を示す。ここで、結晶の格子定数a,b,cが決定でき、このc軸格子定数は細長い分子の分子長が配列した格子ユニット長さに対応し、a軸及びb軸格子定数は分子の共役面がスタックした分子カラム面内の格子ユニットの大きさに対応する。
さらに、本発明のポリアセン化合物は、分子の共役面がスタックした面の分子間距離(a軸及びb軸格子定数に対応する)が、無置換のポリアセン化合物と比較して同等又は縮小した構造を示す。このことは分子間のπ電子の重なりが大きく、キャリアが容易に分子間を移動できることにつながり、高い移動度を示す原因と考えられる。また。c軸格子定数はポリアセン化合物の長軸方向の分子長に対応して変化し、ほぼ分子長と同等又は若干小さい値を示す。
さらに、本発明のポリアセン化合物は、分子構造中にハロゲン元素を有しているため、ハロゲン元素を有していないものと比べて耐酸化性が優れている。これは、ハロゲン元素の導入により分子のイオン化ポテンシャルが増加し、酸素等の酸化剤に対する反応性が低下したためである。また、ハロゲン元素の導入により電子受容性分子との電荷移動も抑制されるので、半導体のキャリア濃度変動安定性にもつながる。さらに、本発明のポリアセン化合物で電界効果トランジスタを製造した場合には、ゲート電圧に対してドレイン電流の変化が大きくなり、高いon/off電流比が得られる。
次に、本発明の有機半導体薄膜について説明する。
本発明の有機半導体薄膜の形成方法としては、公知の方法を採用することが可能であり、例えば、真空蒸着,MBE法(Molecular Beam Epitaxy),スパッタリング法,レーザー蒸着法,気相輸送成長法等があげられる。そして、このような方法により、基板表面に薄膜を形成することができる。
本発明で用いるポリアセン化合物は昇華性を示すので、前述の方法で薄膜を形成することが可能である。MBE法,真空蒸着法,及び気相輸送成長法は、ポリアセン化合物を加熱して昇華した蒸気を、高真空,真空,低真空又は常圧で基板表面に輸送して薄膜を形成するものである。また、スパッタリング法は、ポリアセン化合物をプラズマ中でイオン化させて、ポリアセン化合物の分子を基板上に堆積して薄膜を形成する方法である。また、レーザー蒸着法は、レーザー照射によりポリアセン化合物を加熱して蒸気を生成させ、ポリアセン化合物の分子を基板上に堆積して薄膜を形成する方法である。前述の製法のうちMBE法,真空蒸着法,及び気相輸送成長法は、生成する薄膜の平坦性及び結晶性に優れるので好ましい。
MBE法や真空蒸着法における薄膜作製条件としては、例えば、基板温度は室温以上100℃以下とすることが好ましい。基板温度が低温であるとアモルファス状の薄膜が形成されやすく、また、100℃を超えると薄膜の表面平滑性が低下する。また、気相輸送成長法の場合は、基板温度は室温以上200℃以下とすることが好ましい。
また、本発明のポリアセン化合物は、薄膜成長速度が高い場合でも結晶性の良好な薄膜を形成しやすく、高速成膜が可能である。成長速度は、0.1nm/min以上1μm/sec以下の範囲とすることが好ましい。0.1nm/min未満では結晶性が低下しやすく、1μm/secを超えると薄膜の表面平滑性が低下する。
また、本発明の有機半導体薄膜は、ウェットプロセスで形成することも可能である。従来公知の無置換ポリアセン化合物は一般の溶媒に室温では難溶であり、溶液化と溶液の塗布による薄膜形成とが困難であったが、本発明のポリアセン化合物は、溶液化と溶液の塗布による薄膜形成とが可能である。
本発明の有機半導体薄膜は、本発明のポリアセン化合物の溶液を基板等のベース上に被覆した上、加熱等の方法により前記溶媒を気化させることにより得ることができる。前記溶液をベース上に被覆する方法としては、塗布,噴霧の他、ベースを前記溶液に接触させる方法等があげられる。具体的には、スピンコート,ディップコート,スクリーン印刷,インクジェット印刷,ブレード塗布,印刷(平版印刷,凹版印刷,凸版印刷等)等の公知の方法があげられる。これらの印刷方法には、本発明のポリアセン化合物の溶液に粘度等を調節するための添加物を加えたインクを用いることができる。
このような操作は、通常の大気下又は窒素,アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。ただし、一部のポリアセン化合物の溶液は酸化されやすい場合もあるため、溶液の作製,保存及び有機半導体薄膜の作製は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
また、溶媒を気化させる際には、ベース付近の温度や雰囲気の溶媒蒸気圧により気液界面の溶媒気化速度を調節することによって、結晶成長を制御することができる。さらに、ポリアセン化合物の溶液にベースを接触させて、過飽和状態でベースの表面に有機半導体薄膜を形成させることも可能である。さらに、所望により、ポリアセン化合物の溶液とベースとの界面に、温度勾配,電場,磁場の少なくとも1つを印加して、結晶成長を制御することができる。これらの方法により高結晶性の有機半導体薄膜を製造することが可能であり、得られた有機半導体薄膜は高結晶性であることから半導体特性が優れている。
さらに、有機半導体薄膜の安定性,半導体特性の点から、有機半導体薄膜中に残存する溶媒の量は低いことが好ましい。よって、通常は、有機半導体薄膜を形成した後に再度加熱処理及び/又は減圧処理を施して、有機半導体薄膜中に残存する溶媒をほぼ完全に除去することが好ましい。
このように、ドライプロセス又はウェットプロセスによりポリアセン化合物からなる有機半導体薄膜が形成できる。
前述したように、本発明のポリアセン化合物は、結晶性及び半導体特性に優れた薄膜を形成することができる。また、本発明の有機半導体薄膜においては、ポリアセン化合物は、分子の長軸をベース面に対して垂直にして配向している。このことは、ポリアセン化合物の分子の分子凝集力が強く、分子面同士でスタックした分子カラムを形成しやすいためであると考えられる。したがって、有機半導体薄膜のX線回折パターンは、結晶の(00n)面強度が強く現れやすい。この面間距離は、結晶のc軸格子定数にあたる。
また、本発明のポリアセン化合物は、その結晶の結晶軸のa軸方向及び/又はb軸方向の分子間距離が縮小する場合があり、この分子間距離の縮小によってキャリア移動が起こりやすく、その結果、高い移動度を示す。このような有機半導体薄膜で構成された有機半導体素子は、層状に形成された分子カラムに沿ってキャリアが流れやすい性質を持つものと思われる。そして、このa軸及びb軸の格子定数は、斜め入射X線回折,透過型電子線回折,薄膜のエッジ部にX線を入射させ回折を測定する方法などによって観測することができる。
さらに、通常の無機半導体薄膜は、その結晶性がベースの材料の結晶性,面方位の影響を受けるが、本発明の有機半導体薄膜は、ベースの材料の結晶性,面方位に関係なく高結晶性の薄膜となる。よって、ベースの材料には、結晶性,非晶性に関係なく種々の材料を用いることが可能である。
例えば、ガラス,石英,酸化アルミニウム,サファイア,チッ化珪素,炭化珪素等のセラミック、シリコン,ゲルマニウム,ガリウム砒素,ガリウム燐,ガリウム窒素等の半導体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等),ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリビニルアルコール,エチレンビニルアルコール共重合体,環状ポリオレフィン,ポリイミド,ポリアミド,ポリスチレン,ポリカーボネート,ポリエーテルスルフォン,ポリスルフォン,ポリメチルメタクリレート等の樹脂、紙、不織布などがあげられる。
また、ベースの形状は特に限定されるものではないが、通常はシート状のベースや板状のベース(基板)が用いられる。
本発明の有機半導体薄膜はキャリア移動度が高いことが特徴であり、1×10-4cm2 /V・s以上であることが好ましい。より好ましくは1×10-3cm2 /V・s以上であり、最も好ましくは1×10-2cm2 /V・s以上である。
このような有機半導体薄膜を用いることにより、エレクトロニクス,フォトニクス,バイオエレクトロニクス等の分野において有益な半導体素子を製造することができる。このような半導体素子の例としては、ダイオード,トランジスタ,薄膜トランジスタ,メモリ,フォトダイオード,発光ダイオード,発光トランジスタ,センサ等があげられる。
トランジスタ及び薄膜トランジスタは、液晶ディスプレイ,分散型液晶ディスプレイ,電気泳動型ディスプレイ,粒子回転型表示素子,エレクトロクロミックディスプレイ,有機発光ディスプレイ,電子ペーパー等の種々の表示素子に利用可能であり、これらの表示素子を用いて様々なディスプレイ装置を製造することができる。トランジスタ及び薄膜トランジスタは、これらの表示素子において表示画素のスイッチング用トランジスタ,信号ドライバ回路素子,メモリ回路素子,信号処理回路素子等に利用される。
半導体素子がトランジスタである場合には、その素子構造としては、例えば、基板/ゲート電極/絶縁体層(誘電体層)/ソース電極・ドレイン電極/半導体層という構造、基板/半導体層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層(誘電体層)/ゲート電極という構造、基板/ソース電極(又はドレイン電極)/半導体層+絶縁体層(誘電体層)+ゲート電極/ドレイン電極(又はソース電極)という構造等があげられる。このとき、ソース電極,ドレイン電極,ゲート電極は、それぞれ複数設けてもよい。また、複数の半導体層を同一平面内に設けてもよいし、積層して設けてもよい。
トランジスタの構成としては、MOS(メタル−酸化物(絶縁体層)−半導体)型及びバイポーラ型のいずれでも採用可能である。ポリアセン化合物は、通常はp型半導体であるので、ドナードーピングしてn型半導体としたポリアセン化合物と組み合わせたり、ポリアセン化合物以外のn型半導体と組み合わせたりすることにより、素子を構成することができる。
また、半導体素子がダイオードである場合には、その素子構造としては、例えば、電極/n型半導体層/p型半導体層/電極という構造があげられる。そして、p型半導体層に本発明の有機半導体薄膜が使用され、n型半導体層に前述のn型半導体が使用される。
半導体素子における有機半導体薄膜内部又は有機半導体薄膜表面と電極との接合面の少なくとも一部は、ショットキー接合及び/又はトンネル接合とすることができる。このような接合構造を有する半導体素子は、単純な構成でダイオードやトランジスタを作製することができるので好ましい。さらに、このような接合構造を有する有機半導体素子を複数接合して、インバータ,オシレータ,メモリ,センサ等の素子を形成することもできる。
さらに、本発明の半導体素子を表示素子として用いる場合は、表示素子の各画素に配置され各画素の表示をスイッチングするトランジスタ素子(ディスプレイTFT)として利用できる。このようなアクティブ駆動表示素子は、対向する導電性基板のパターニングが不要なため、回路構成によっては、画素をスイッチングするトランジスタを持たないパッシブ駆動表示素子と比べて画素配線を簡略化できる。通常は、1画素当たり1個から数個のスイッチング用トランジスタが配置される。このような表示素子は、基板面に二次元的に形成したデータラインとゲートラインとを交差した構造を有し、データラインやゲートラインがトランジスタのゲート電極,ソース電極,ドレイン電極にそれぞれ接合されている。なお、データラインとゲートラインとを分割することや、電流供給ライン,信号ラインを追加することも可能である。
また、表示素子の画素に、画素配線,トランジスタに加えてキャパシタを併設して、信号を記録する機能を付与することもできる。さらに、表示素子が形成された基板に、データライン及びゲートラインのドライバ,画素信号のメモリ,パルスジェネレータ,信号分割器,コントローラ等を搭載してディスプレイ装置とすることもできる。
また、本発明の有機半導体素子は、ICカード,スマートカード,及び電子タグにおける演算素子,記憶素子としても利用することができる。その場合、これらが接触型であっても非接触型であっても、問題なく適用可能である。このICカード,スマートカード,及び電子タグは、メモリ,パルスジェネレータ,信号分割器,コントローラ,キャパシタ等で構成されており、さらにアンテナ,バッテリを備えていてもよい。
さらに、本発明の有機半導体素子でダイオード,ショットキー接合構造を有する素子,トンネル接合構造を有する素子を構成すれば、その素子は光電変換素子,太陽電池,赤外線センサ等の受光素子,フォトダイオードとして利用することもできるし、発光素子として利用することもできる。また、本発明の有機半導体素子でトランジスタを構成すれば、そのトランジスタは発光トランジスタとして利用することができる。これらの発光素子の発光層には、公知の有機材料や無機材料を使用することができる。
さらに、本発明の有機半導体素子はセンサとして利用することができ、ガスセンサ,バイオセンサ,血液センサ,免疫センサ,人工網膜,味覚センサ等、種々のセンサに応用することができる。通常は、有機半導体素子を構成する有機半導体薄膜に測定対象物を接触又は隣接させた際に生じる有機半導体薄膜の抵抗値の変化によって、測定対象物の分析を行うことができる。
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
〔実施例1:ペンタセンキノン誘導体のフッ素化を経る6,13−ジフルオロペンタセンの合成〕
〔中間体の合成方法について〕
窒素雰囲気下において、6,13−ペンタセンキノン308mgをステンレス製オートクレーブ装置の容器(容積500ml)に加えて密閉し、該容器を−40℃以下に冷却した。そして、ガス導入管から無水フッ化水素(HF)150g、次いでSF4 120gを仕込み密閉した。100℃で48時間反応させた後、ガス成分及び無水フッ化水素をアルカリスクラバーへと廃棄し、さらに窒素ガスで容器内を十分置換した。得られた反応生成物をクロロホルムで抽出し、飽和NaCO3 水溶液で中和した。有機相を分離,濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して6,6,13,13−テトラフルオロ−6,13−ジヒドロペンタセンをほぼ定量的に得た。
〔ポリアセン化合物の製造方法について〕
窒素雰囲気下において、6,6,13,13−テトラフルオロ−6,13−ジヒドロペンタセン78mgと亜鉛粉650mgをステンレス製オートクレーブ装置の容器(容積50ml)に入れて密閉し、250℃で5時間反応させた。得られた固体に希塩酸を加え、水及びエタノールで洗浄すると、純粋な6,13−ジフルオロペンタセン12mgが得られた。この反応における収率は20%であった。
得られた6,13−ジフルオロペンタセンについて、質量分析を行った。結果は以下の通りである。
FAB−MS(NBA):m/z=314
〔実施例2:ヒドロキシペンタセン誘導体のフッ素化を経る6,13−ジフルオロペンタセンの合成〕
〔中間体の合成方法について〕
窒素雰囲気下において、6,13−ジヒドロ−6,13−ジヒドロキシペンタセン310mgをTHF40mlに溶解させ、これにジエチルアミノサルファートリフルオライドを8倍当量滴下し、室温で3日間反応させた。
水を加えて反応を終了させたら、クロロホルムで反応生成物等を抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相中の有機溶媒を減圧留去し、得られた残渣の洗浄を行うと、純粋な6,13−ジフルオロ−6,13−ジヒドロペンタセンが定量的に得られた。
〔ポリアセン化合物の製造方法について〕
窒素雰囲気下において、6,13−ジフルオロ−6,13−ジヒドロペンタセン64mgをトルエン8mlに溶解し、窒素雰囲気下でクロラニル78mgを加えて3時間加熱環流した。溶媒を減圧留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、6,13−ジフルオロペンタセン14mgが得られた。この反応における収率は23%であった。
〔実施例3:フッ素以外のハロゲン基を有するハロゲン化ポリアセン化合物のハロゲン基をフッ素に変換することによる6,13−ジフルオロペンタセンの合成〕
窒素雰囲気下において、6,13−ジクロロペンタセン68mg、KF・H2 O47mg、臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム5mg、及び水30mlをステンレス製オートクレーブ装置の容器(容積200ml)に入れて密閉し、160℃で7時間反応させた。有機相を分離し、水,濃硫酸,水,エタノールの順に洗浄すると、純粋な6,13−ジフルオロペンタセン4mgが得られた。この反応における収率は7%であった。
〔実施例4:ペンタセンキノン誘導体のクロロ化を経る6,13−ジクロロペンタセンの合成〕
〔中間体の合成方法について〕
窒素雰囲気下において、500ml丸底フラスコに6,13−ペンタセンキノン649mgとPCl3 178mgを入れ、0℃で撹拌しながらPCl5 356mgをゆっくりと加えた。室温で一中夜放置した後、反応物を氷1kg上に注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機相を分離,濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して6,6,13,13−テトラクロロ−6,13−ジヒドロペンタセンをほぼ定量的に得た。
〔ポリアセン化合物の製造方法について〕
窒素雰囲気下において、6,6,13,13−テトラクロロ−6,13−ジヒドロペンタセン84mgと亜鉛粉500mgをステンレス製オートクレーブ装置の容器(容積50ml)に入れて密閉し、230℃で8時間反応させた。得られた固体に希塩酸を加え、水及びエタノールで洗浄すると、純粋な6,13−ジクロロペンタセン13mgが得られた。この反応における収率は18%であった。
得られた6,13−ジクロロペンタセンについて、質量分析を行った。結果は以下の通りである。
FAB−MS(NBA):m/z=347
〔実施例5:ヒドロキシペンタセン誘導体のクロロ化を経る6,13−ジクロロペンタセンの合成〕
〔中間体の合成方法について〕
窒素雰囲気下において、6,13−ジヒドロ−6,13−ジヒドロキシペンタセン620mgを四塩化炭素30mlに溶解させ、これにトリフェニルホスフィン1.06gを加えた。1時間加熱撹拌した後、室温に冷却し、沈殿したトリフェニルホスフィンを濾別した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な6,13−ジクロロ−6,13−ジヒドロペンタセンを定量的に得た。
〔ポリアセン化合物の製造方法について〕
窒素雰囲気下において、6,13−ジクロロ−6,13−ジヒドロペンタセン70mgをトルエン8mlに溶解し、窒素雰囲気下でクロラニル78mgを加えて3時間加熱環流した。溶媒を減圧留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、6,13−ジクロロペンタセン15mgが得られた。この反応における収率は24%であった。
本発明は、エレクトロニクス,フォトニクス,バイオエレクトロニクス等において好適である。

Claims (17)

  1. 下記の化学式(I)で表されるような構造を有するポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(II)で表されるような構造を有するポリアセンキノン誘導体をフッ素化剤と反応させることにより、下記の化学式(III )で表されるような構造を有する含フッ素ポリアセン誘導体とし、さらにこの含フッ素ポリアセン誘導体を脱フッ素化,脱水素化,又は脱フッ化水素化することを特徴とするポリアセン化合物の製造方法。
    Figure 2006335720
    Figure 2006335720
    Figure 2006335720
    ただし、化学式(I)中の複数のXのうち一部はフッ素原子であり、他部は水素原子である。また、kは1以上5以下の整数である。
    さらに、化学式(II)及び化学式(III )中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれフッ素原子又は水素原子である。さらに、mは2以上の整数であり、m+nは3以上7以下の整数である。
    さらに、化学式(III )中のY1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はフッ素原子であり、他部は水素原子である。
  2. 下記の化学式(I)で表されるような構造を有するポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(IV)で表されるような構造を有するヒドロキシポリアセン誘導体をフッ素化剤と反応させることにより、下記の化学式(III )で表されるような構造を有する含フッ素ポリアセン誘導体とし、さらにこの含フッ素ポリアセン誘導体を脱フッ素化,脱水素化,又は脱フッ化水素化することを特徴とするポリアセン化合物の製造方法。
    Figure 2006335720
    Figure 2006335720
    Figure 2006335720
    ただし、化学式(I)中の複数のXのうち一部はフッ素原子であり、他部は水素原子である。また、kは1以上5以下の整数である。
    さらに、化学式(III )及び化学式(IV)中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれフッ素原子又は水素原子である。さらに、mは2以上の整数であり、m+nは3以上7以下の整数である。
    さらに、化学式(III )中のY1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はフッ素原子であり、他部は水素原子である。
  3. 前記化学式(I)中の複数のXのうち2個以上がフッ素原子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリアセン化合物の製造方法。
  4. 前記化学式(I)中の複数のXのうち偶数個がフッ素原子であり、そのうち少なくとも2個のフッ素原子が同一のアセン環に結合していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリアセン化合物の製造方法。
  5. 前記化学式(I)中の複数のXのうち2個がフッ素原子であり、これら2個のフッ素原子が同一のアセン環に結合していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリアセン化合物の製造方法。
  6. kが1又は2であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリアセン化合物の製造方法。
  7. 下記の化学式(V)で表されるような構造を有するハロゲン化ポリアセン化合物をフッ化金属塩と反応させて、前記ハロゲン化ポリアセン化合物中の塩素原子,臭素原子,又はヨウ素原子をフッ素原子にハロゲン交換することを特徴とするポリアセン化合物の製造方法。
    Figure 2006335720
    ただし、化学式(V)中の複数のXのうち一部は塩素原子,臭素原子,又はヨウ素原子であり、他部は水素原子である。また、kは1以上5以下の整数である。
  8. 下記の化学式(VI)で表されるような構造を有するポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(VII )で表されるような構造を有するポリアセンキノン誘導体をハロゲン化剤と反応させることにより、下記の化学式(VIII)で表されるような構造を有する含ハロゲンポリアセン誘導体とし、さらにこの含ハロゲンポリアセン誘導体を脱ハロゲン化,脱水素化,又は脱ハロゲン化水素化することを特徴とするポリアセン化合物の製造方法。
    Figure 2006335720
    Figure 2006335720
    Figure 2006335720
    ただし、化学式(VI)中の複数のXのうち一部はハロゲン基であり、他部は水素原子である。また、kは1以上5以下の整数である。
    さらに、化学式(VII )及び化学式(VIII)中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれハロゲン基又は水素原子である。さらに、mは2以上の整数であり、m+nは3以上7以下の整数である。
    さらに、化学式(VIII)中のY1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はハロゲン基であり、他部は水素原子である。
  9. 下記の化学式(VI)で表されるような構造を有するポリアセン化合物を製造する方法であって、下記の化学式(IX)で表されるような構造を有するヒドロキシポリアセン誘導体をハロゲン化剤と反応させることにより、下記の化学式(VIII)で表されるような構造を有する含ハロゲンポリアセン誘導体とし、さらにこの含ハロゲンポリアセン誘導体を脱ハロゲン化,脱水素化,又は脱ハロゲン化水素化することを特徴とするポリアセン化合物の製造方法。
    Figure 2006335720
    Figure 2006335720
    Figure 2006335720
    ただし、化学式(VI)中の複数のXのうち一部はハロゲン基であり、他部は水素原子である。また、kは1以上5以下の整数である。
    さらに、化学式(VIII)及び化学式(IX)中のX1 ,X2 ,X3 ,X4 ,X5 ,X6 はそれぞれハロゲン基又は水素原子である。さらに、mは2以上の整数であり、m+nは3以上7以下の整数である。
    さらに、化学式(VIII)中のY1 及びY2 の少なくとも一方とY3 及びY4 の少なくとも一方はハロゲン基であり、他部は水素原子である。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリアセン化合物の製造方法で製造されたポリアセン化合物で構成され、結晶性を有することを特徴とする有機半導体薄膜。
  11. 基板上に形成された結晶性の有機半導体薄膜であって、前記ポリアセン化合物の分子の長軸が前記基板の表面に対して垂直方向に配向していることを特徴とする請求項10に記載の有機半導体薄膜。
  12. 請求項10又は請求項11に記載の有機半導体薄膜で少なくとも一部を構成したことを特徴とする有機半導体素子。
  13. ゲート電極,誘電体層,ソース電極,ドレイン電極,及び半導体層を備えるトランジスタにおいて、前記半導体層を請求項10又は請求項11に記載の有機半導体薄膜で構成したことを特徴とするトランジスタ。
  14. 多数の画素からなる画素面を備えるディスプレイ装置において、前記各画素は、請求項12に記載の有機半導体素子又は請求項13に記載のトランジスタを備えることを特徴とするディスプレイ装置。
  15. 前記有機半導体素子又は前記トランジスタが備える電極,誘電体層,及び半導体層を、液体の印刷又は塗布によって形成したことを特徴とする請求項14に記載のディスプレイ装置。
  16. 請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリアセン化合物の製造方法で製造されたポリアセン化合物を含有することを特徴とする溶液。
  17. 請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリアセン化合物の製造方法で製造されたポリアセン化合物を含有することを特徴とするインク。
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