JP2006308933A - 像加熱装置、および画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】発熱部材の被加熱材搬送方向と交差する長手方向の発熱効率を調整できる電磁誘導加熱方式の像加熱装置の提供。
【解決手段】発熱部材10を挟んで磁束発生手段15からの磁束に影響を与える所定位置に配置され、かつ被加熱材搬送方向と交差する長手方向に沿って並列する複数の磁性体コアであって、前記発熱部材を突き抜けた前記磁束発生手段からの磁束を前記発熱部材の金属層1に作用させて前記金属層を発熱させる磁性体コア50a・50b1・50b2を有する。さらに前記複数の磁性体コアのうち所定の磁性体コア50b1・50b2を前記磁束発生手段からの磁束に影響を与えない位置に向けて移動させる移動手段51a・51bを有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、被加熱材上に像を形成する画像形成装置に用いて好適な電磁誘導加熱方式の像加熱装置、及び該像加熱装置を備える画像形成装置に関する。
画像形成装置において、電子写真プロセス等の適宜の画像形成プロセス手段で被加熱材としての被記録材に間接あるいは直接に形成担持させた未定着トナー画像を被記録材面に永久固着画像として加熱定着させる定着装置としては従来から熱ローラ方式の装置が広く用いられている。
近年では、クイックスタートや省エネルギーの観点からフィルム加熱方式の定着装置が実用化されている。また金属からなるフィルム自身を発熱させる電磁誘導加熱方式の定着装置も提案されている。
特許文献1には、磁束により定着フィルムの金属層(発熱層)に渦電流を誘導させて、そのジュール熱で発熱させる電磁誘導加熱方式の定着装置が開示されている。これは、誘導電流の発生を利用することで直接定着フィルムを発熱させることができ、ハロゲンランプを熱源とする熱ローラ方式の定着装置よりも高効率の定着プロセスを達成している。
上記のような電磁誘導加熱方式の定着装置では、磁束発生手段としての励磁コイルと磁性体コアなどによる発生磁束(交番磁束)の作用により、発熱部材としての円筒状の定着フィルムの有する金属層(磁気誘導発熱性金属層)に渦電流を発生させ、この渦電流に応じて発生するジュール熱によって該金属層を発熱させて定着フィルムを所定温度に加熱・温調する。そして、未定着トナー画像を形成担持させた被加熱材としての被記録材を、定着フィルムに内包させた良熱伝導性部材と該良熱伝導性部材に定着フィルムを挟んで加圧させた加圧部材としての加圧ローラとの間の定着ニップ部(加熱ニップ部)で挟持搬送して、トナー画像を被記録材面上に加熱定着させる。定着フィルムは、例えば電磁誘導発熱性の基層となる金属フィルム等でできた発熱層(金属層)と、その外面に積層した弾性層と、その外面に積層した離型層との複合構造である。金属層は、ニッケル、鉄、強磁性SUS、ニッケル−コバルト合金といった強磁性体の金属であり、その厚みは例えば1〜100μmのものが用いられる。
上記の誘導加熱方式の定着装置では、磁場発生手段としての励磁コイルにより発生した交番磁束のエネルギーは定着フィルム全体の昇温に使われるため放熱損失が大きい。そのため、投入したエネルギーに対して定着に作用するエネルギーの割合が低く、効率が悪いという欠点があった。
そこで、定着に作用するエネルギーを高効率で得るために、発熱体である定着フィルムに励磁コイルを接近させたり、励磁コイルの交番磁束分布を集中させたりして、高効率化を図っている。
実開昭51−109736号公報
しかしながら、電磁誘導加熱方式の定着装置において、クイックスタートを目的とする前記のような薄い定着フィルムを用いると、その厚みは電磁波(発生磁束)の吸収深さを示す表皮深さσ(mm)
Figure 2006308933
よりも薄くなり、電磁波が定着フィルムを突き抜けてしまい、電磁エネルギーを定着フィルムだけで吸収できなくなり効率がわるい。ここで、ρ(Ωcm)は発熱層(導電層)の抵抗率、f(Hz)は励磁コイルに流れる電流の周波数、μは発熱層の比透磁率である。
この問題を解決するためには、定着フィルムの厚みを前記表皮深さσよりも厚くしたり、励磁コイルに流れる電流の周波数fを表皮深さσが定着フィルムの発熱層の厚みを超えないように設定したりする必要がある。
しかしながら、定着フィルムの厚みが前述した100μmを越えるものを用いると、剛性が高くなりすぎ、また屈曲性が悪くなり回転体として使用するには現実的ではなくなる。
また、表皮深さσを小さくするためには周波数fを大きくすれば良いが、200kHzを越えると、励磁回路でのロスが大きく効率的でなくなってしまう。このため、周波数は200kHz以下で使用する必要があるため、従来技術では電磁波が定着フィルムを突き抜けるようになっており、電磁エネルギーを効率的に定着フィルムで吸収できず発熱効率が悪い。
さらに、連続して小サイズの被記録材を定着ニップ部に導入させて未定着トナー画像の加熱定着動作を行った場合、定着フィルムの記録材搬送方向と交差(直交)する長手方向において、被記録材が接触する部分と、接触しない部分とでは放熱量の差が生じる。即ち、定着フィルム表面温度は被記録材が通過していない領域部分では、被記録材が通過する領域部分よりも高くなる。これは従来「非通紙部昇温」と呼ばれている現象である。
また、通常は定着ニップ部に対して導入可能なすべてのサイズの被記録材が常に通過する位置の定着フィルム表面温度を検知して温調管理しているけれども、上記の非通紙部昇温が発生した時点で、使用される被記録材のサイズをより大きいものに切り換えた場合、それまで処理していた小さなサイズの被記録材より外側の定着フィルム部分の表面温度が非通紙部昇温で高くなりすぎ、いわゆる高温オフセットが生ずる場合や、定着フィルムの耐熱温度以上になると定着フィルムを破壊する場合がある。
そこで、本発明の目的は、発熱部材の被加熱材搬送方向と交差する長手方向の発熱効率の調整を行い得る像加熱装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、発熱部材の被加熱材搬送方向と交差する長手方向の発熱効率の調整を行い得る像加熱装置を備えた画像形成装置を提供することにある。
本発明に係る代表的な像加熱装置の構成は、磁束発生手段と、前記磁束発生手段からの磁束により発熱する発熱部材と、を有し、前記発熱部材の熱により被加熱材上の像を加熱する像加熱装置において、前記発熱部材は少なくとも金属層を有し、前記金属層の厚みが前記磁束発生手段からの磁束の吸収深さ以下であり、さらに、前記発熱部材を挟んで前記磁束発生手段からの磁束に影響を与える所定位置に配置され、かつ前記被加熱材搬送方向と交差する長手方向に沿って並列する複数の磁性体コアであって、前記発熱部材を突き抜けた前記磁束発生手段からの磁束を前記金属層に作用させて前記金属層を発熱させる磁性体コアと、前記複数の磁性体コアのうち所定の磁性体コアを前記所定位置から前記磁束発生手段からの磁束に影響を与えない位置に向けて移動させる移動手段と、を有することを特徴とする像加熱装置、である。
本発明に係る代表的な画像形成装置の構成は、被加熱材上に像を形成する作像手段と、磁束発生手段と前記磁束発生手段からの磁束により発熱する発熱部材とを有し、前記発熱部材の熱により被加熱材上の像を加熱する像加熱装置と、を有する画像形成装置において、前記像加熱装置の前記発熱部材は少なくとも金属層を有し、前記金属層の厚みが前記磁束発生手段からの磁束の吸収深さ以下であり、さらに、前記像加熱装置は、前記発熱部材を挟んで前記磁束発生手段からの磁束に影響を与える位置に配置され、かつ前記被加熱材搬送方向と交差する長手方向に沿って並列する複数の磁性体コアであって、前記発熱部材を突き抜けた前記磁束発生手段からの磁束を前記金属層に作用させて前記金属層を発熱させる磁性体コアと、前記複数の磁性体コアのうち所定の磁性体コアを前記所定位置から前記磁束発生手段からの磁束に影響を与えない位置に向けて移動させる移動手段と、を有することを特徴とする画像形成装置、である。
本発明によれば、移動手段を移動させることで、発熱部材の被加熱材搬送方向と交差する長手方向の発熱量の調整を行うことができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(1)画像形成装置例
図1は本発明に係る像加熱装置を加熱定着装置として具備させた画像形成装置の一例の構成模型図である。本実施例の画像形成装置は、電子写真プロセス利用の画像形成部(作像手段)を備えるカラーレーザプリンタである。
画像形成部において、101は有機感光体やアモルファスシリコン感光体でできた感光体ドラム(像担持体)であり、矢示の反時計方向に所定のプロセス速度(周速度)で回転駆動される。
感光体ドラム101はその回転過程で帯電ローラ等の帯電装置102で所定の極性・電位の一様な帯電処理を受ける。
次いでその帯電処理面にレーザ光学箱(レーザスキャナー)110から出力されるレーザ光103により、目的の画像情報の走査露光処理を受ける。
レーザ光学箱110は不図示の画像読み取り装置等の画像信号発生装置からの目的画像情報の時系列電気デジタル画素信号(画像データ)に対応して変調(オン/オフ)したレーザ光103を出力し、感光体ドラム101面に走査露光した目的画像情報に対応した静電潜像が形成される。
109はレーザ光学箱110からの出力レーザ光を感光体ドラム101の露光位置に偏向させるミラーである。
フルカラー画像形成の場合は、目的のフルカラー画像の第1の色分解成分画像、例えばイエロー成分画像についての走査露光・潜像形成がなされ、その潜像が4色カラー現像装置104のうちのイエロー現像器104Yの作動でイエロートナー画像として現像される。そのイエロートナー画像は感光体ドラム101と該感光体ドラムと反対方向に回転する中間転写体ドラム105との接触部(或いは近接部)である1次転写部Tlにおいて該中間転写体ドラム105面に転写される。
中間転写体ドラム105面に対するトナー画像転写後の感光体ドラム101面はクリーナ107により転写残トナー等の付着残留物の除去を受けて清掃される。
上記のような帯電・走査露光・現像・一次転写・清掃のプロセスサイクルが、目的のフルカラー画像の第2の色分解成分画像(例えばマゼンタ成分画像、マゼンタ現像器104Mが作動)、第3の色分解成分画像(例えばシアン成分画像、シアン現像器104Cが作動)、第4の色分解成分画像(例えば黒成分画像、黒現像器104BKが作動)の各色分解成分画像について順次実行され、中間転写体ドラム105面にイエロートナー画像・マゼンタトナー画像・シアントナー画像・黒トナー画像の4色のトナー画像が順次重ねて転写されて、目的のフルカラー画像に対応したカラートナー画像が形成される。
中間転写体ドラム105は、金属ドラム上に中抵抗の弾性層と高抵抗の表層を設けたもので、感光体ドラム101に接触して或いは近接して感光体ドラム101とほぼ同じ周速度で矢示の時計方向に回転駆動され、中間転写体ドラム105の金属ドラムにバイアス電位を与えて感光体ドラム101との電位差で感光体ドラム101側のトナー画像を前記中間転写体ドラム105面側に転写させる。
上記の回転中間転写体ドラム105面に合成形成されたカラートナー画像は、前記回転中間転写体ドラム105と転写ローラ106との接触ニップ部である二次転写部T2において、前記二次転写部T2に不図示の給紙部から所定のタイミングで送り込まれた被加熱材としての被記録材Pの面に転写されていく。
転写ローラ106は被記録材Pの背面からトナーと逆極性の電荷を供給することで中間転写体ドラム105面側から被記録材P側へ合成カラートナー画像を順次に一括転写する。
二次転写部T2を通過した被記録材Pは中間転写体ドラム105面から分離されて画像加熱定着装置(以下「定着装置」と記す)100へ導入され、未定着トナー画像の加熱定着処理を受けてカラー画像形成物として機外の不図示の排紙トレーに排出される。
被記録材Pに対するカラートナー画像転写後の中間転写体ドラム105はクリーナ108により転写残トナー・紙粉等の付着残留物の除去を受けて清掃される。
このクリーナ108は常時は中間転写体ドラム105に非接触状態に保持されており、中間転写体ドラム105から被記録材Pに対するカラートナー画像の二次転写実行過程において中間転写体ドラム105に接触状態に保持される。
また転写ローラ106も常時は中間転写体ドラム105に非接触状態に保持されており、中間転写体ドラム105から被記録材Pに対するカラートナー画像の二次転写実行過程において中間転写体ドラム105に被記録材Pを介して接触状態に保持される。
本実施例の画像形成装置は、白黒画像などモノカラー画像のプリントモードも実行できる。また両面画像プリントモードも実行できる。
両面画像プリントモードの場合は、定着装置100を出た1面目画像プリント済みの被記録材Pは不図示の再循環搬送機構を介して表裏反転されて再び二次転写部T2へ送り込まれて2面に対するトナー画像転写を受け、再度、定着装置100に導入されて2面に対するトナー画像の定着処理を受けることで、両面画像プリントが出力される。
(2)定着装置100
A)定着装置の全体的構成
本例に示す定着装置100は、発熱部材としてフィルム状・円筒状の電磁誘導発熱フィルムを用いた電磁誘導加熱方式の装置である。
図2は定着装置100の一例の横断側面模型図、図3はその正面模型図、図4はその縦断側面模型図、図5は励磁コイルと磁性コアとフィルムガイド部材と励磁回路との関係を示す斜視図である。
磁束発生手段(以下「磁場発生手段」と記す)15は磁性コア17a・17b・17c及び励磁コイル18からなる。
磁性コア17a・17b・17cは高透磁率の部材であり、フェライトやパーマロイ等といったトランスのコアに用いられる材料がよい。
励磁コイル18はコイル(線輪)を構成させる導線(電線)として、一本ずつがそれぞれ絶縁被覆された銅製の細線を複数本束ねたもの(束線)を用い、これを複数回巻いて励磁コイルを形成している。本例では10ターン巻いて励磁コイル18を形成している。
絶縁被覆は定着フィルム10の発熱による熱伝導を考慮して耐熱性を有する被覆を用いるのがよい。たとえば、アミドイミドやポリイミドなどの被覆を用いるとよい。
励磁コイル18は外部から圧力を加えて密集度を向上させてもよい。
励磁コイル18の形状は、図2のように定着フィルム10の発熱層1(図7、図8)の曲面に沿うようにしている。磁性コア17a・17b・17c及び励磁コイル18と、定着フィルム10の発熱層1との間の距離はできる限り近づけた方が磁束の吸収効率が高くなるけれども、この距離が5mmを越えると磁束の吸収効率が著しく低下するため5mm以内にするのがよい。また、5mm以内であれば定着フィルム10の発熱層1と励磁コイル18の距離が一定である必要はない。本例では定着フィルム10の発熱層1と励磁コイル18との間の距離は約2mmになるように設定した。
励磁コイル18には給電線18a・18b(図3、図5)に電源手段としての励磁回路27を接続してある。この励磁回路27は20kHzから500kHzの高周波をスイッチング電源で発生できるようになっている。本実施例では30kHzとした。
16a・16bは横断面略半円弧状樋型のフィルムガイド部材(励磁コイル保持部材)であり、開口側を互いに向かい合わせて略円柱体を構成し、外側に円筒状の電磁誘導発熱フィルムである定着フィルム10をルーズに外嵌させてある。
フィルムガイド部材16a・16bの材質としては絶縁性に渡れ、耐熱性がよいものがよい。例えば、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂、LCP樹脂などを選択するとよい。
図6は本例における定着フィルム10の層構成模型図である。本例の定着フィルム10は、図6(a)に示すように電磁誘導発熱性の定着フィルム10の基層となる金属フィルム等でできた金属層としての発熱層(導電層)1と、その外面に積層した弾性層2と、その外面に積層した離型層3の複合構造のものである。
発熱層1と弾性層2との間の接着、弾性層2と離型層3との間の接着のため、各層間にプライマー層(不図示)を設けてもよい。
略円筒形状である定着フィルム10において発熱層1が内面側であり、離型層3が外面側である。前述したように、発熱層1に交番磁束が作用することで前記発熱層1に渦電流が発生して前記発熱層1が発熱する。その熱が弾性層2・離型層3を介して定着フィルム10を加熱し、前記定着ニップNに導入される被加熱材としての被記録材Pを加熱してトナー画像の加熱定着がなされる。
a.発熱層1
発熱層1はニッケル、鉄、強磁性SUS、ニッケルーコバルト合金といった強磁性体の金属を用いるとよい。
非磁性の金属でも良いが、より好ましくは磁束の吸収の良いニッケル、鉄、磁性ステンレス、コバルト−ニッケル合金等の金属が良い。本例ではニッケルを用いた。
発熱層1の厚さは好ましくは1〜100μmがよい。発熱層1の厚みが1μmよりも小さいとほとんどの電磁エネルギーが吸収しきれないため効率が悪くなる。また、発熱層1が100μmを超えると剛性が高くなりすぎ、また屈曲性が悪くなり回転体として使用するには現実的ではない。従って、発熱層1の厚みは1〜100μmが好ましい。本例では50μmとした。
b.弾性層2
弾性層2は、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等で耐熱性がよく、熱伝導率がよい材質である。
弾性層2の厚さは10〜500μmが好ましい。この弾性層2は定着画像品質を保証するために必要な厚さである。
カラー画像を印刷する場合、特に写真画像などでは被記録材P上で大きな面積に渡ってベタ画像が形成される。この場合、被記録材の凹凸あるいはトナー層の凹凸に加熱面(離型層3)が追従できないと加熱ムラが発生し、伝熱量が多い部分と少ない部分で画像に光沢ムラが発生する。伝熱量が多い部分は光沢度が高く、伝熱量が少ない部分では光沢度が低い。
弾性層2の厚さとしては、10μm以下では被記録材あるいはトナー層の凹凸に追従しきれず画像光沢ムラが発生してしまう。また、弾性層2が1000μm以上の場合には弾性層の熱抵抗が大きくなりクイックスタートを実現するのが難しくなる。より好ましくは弾性層2の厚みは50〜500μmがよい。
弾性層2の硬度は、硬度が高すぎると被記録材あるいはトナー層の凹凸に追従しきれず画像光沢ムラが発生してしまう。そこで、弾性層2の硬度としては60°(JIS−A、すなわちJIS−K6301のA型硬度計により規定される硬度)以下、より好ましくは45°以下がよい。
弾性層2の熱伝導率λに関しては、
6×10−4〜2×10−3[cal/cm・sec・deg.]
がよい。
熱伝導率λが6×10−4〜2×10−3[cal/cm・sec・deg.]よりも小さい場合には、熱抵抗が大きく、定着フィルムの表層(離型層3)における温度上昇が遅くなる。
熱伝導率λが2×10−3[cal/cm・sec・deg.]よりも大きい場合には、硬度が高くなりすぎたり、圧縮永久歪みが悪化したりする。
よって熱伝導率λは6×10−4〜2×10−3[cal/cm・sec・deg.]がよい。より好ましくは8×10−4〜1.5×10−3[cal/cm・sec・deg.]がよい。
c.離型層3
離型層3はフッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、PFA、PTFE、FEP等の離型性かつ耐熱性のよい材料を選択することができる。
離型層3の厚さは1〜100μmが好ましい。離型層3の厚さが1μmよりも小さいと塗膜の塗ムラで離型性の悪い部分ができたり、耐久性が不足したりといった問題が発生する。また、離型層3が1001μmを超えると熱伝導が悪化するという問題が発生し、特に樹脂系の離型層の場合は硬度が高くなりすぎ、弾性層2の効果がなくなってしまう。
また、図6(b)に示すように、定着フィルム10の構成において、発熱層1のフィルムガイド部材面側(発熱層1の弾性層2とは反対面側)に断熱層4を設けてもよい。
断熱層4としては、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂などの耐熱樹脂がよい。
また、断熱層4の厚さとしては10〜1000μmが好ましい。断熱層4の厚さが10μmよりも小さい場合には断熱効果が得られず、また、耐久性も不足する。一方、1000μmを超えると磁性コア17a・17b・17c及び励磁コイル18から発熱層1までの距離が大きくなり、磁束が十分に発熱層1に吸収されなくなる。
断熱層4は、発熱層1に発生した熱が定着フィルム10の内側に向かわないように断熱できるので、断熱層4がない場合と比較して被記録材P側への熱供給効率が良くなる。よって、消費電力を抑えることができる。
前記フィルムガイド部材16aは、磁場発生手段15としての磁性コア17a・17b・17cと励磁コイル18を内側に保持している。
励磁コイル18のフィルムガイド部材16aからの引出線すなわち給電線18a・18b(図5)については、フィルムガイド部材16aから外の部分について束線の外側に絶縁被覆を施している。
また、フィルムガイド部材16aには良熱伝導性部材40が定着ニップ部Nの加圧ローラ30との対向面側で、定着フィルム10の内側に配設してある。
本例においては、良熱伝導性部材40にアルミニウムを用いている。良熱伝導性部材40は熱伝導率kがk=240[w・m−1・K−1]であり、厚さ1[mm]である。
また、良熱伝導性部材40は磁場発生手段15である励磁コイル18と磁性コア17a・17b・17cから発生する磁場(磁束)の影響を受けないように、この磁場の外に配設してある。
具体的には、良熱伝導性部材40を励磁コイル18に対して磁性コア17b・17cを隔てた位置に配設し、励磁コイル18による磁路の外側に位置させて良熱伝導性部材40に影響を与えないようにしている。
22は良熱伝導性部材40の定着ニップ部Nに対応する部分の裏面側とフィルムガイド部材16bの内面平面部とに当接させて配設した加圧用剛性ステイである。加圧用剛性ステイ22は、定着フィルム10の被加熱材搬送方向Yと直交(交差)する長手方向に細長い部材に構成されており、その両端を装置100の手前側と奥側の第3シャーシ側板33a,33bにそれぞれ固定保持させて配設してある。
19は磁性コア17a・17b・17c及び励磁コイル18と加圧用剛性ステイ22の間を絶縁するための絶縁部材である。
フランジ部材23a・23bはフィルムガイド部材16a・16bのアセンブリの左右両端部に外嵌し、前記左右位置を固定しつつ回転自在に取り付け、定着フィルム10の回転時に前記定着フィルム10の端部を受けて定着フィルムのフィルムガイド部材長手に沿う寄り移動を規制する役目をする。
加圧部材としての加圧ローラ30は、芯金30aと、前記芯金周りに同心一体にローラ状に成形被覆させた、シリコーンゴム・フッ素ゴム・フッ素樹脂などの耐熱性・弾性材層30bとで構成されており、芯金30aの両端部を装置100の手前側と奥側の第1のシャーシ側板31a,31bにそれぞれ軸受35a,35bを介して回転自由に保持させて配設してある。
加圧用剛性ステイ22の両端部と第3シャーシ側板33a,33bに設けたバネ受け部材29a・29bとの間にそれぞれ加圧バネ25a・25bを縮設することで加圧用剛性ステイ22に押し下げ力を作用させている。これにより良熱伝導性部材40の定着ニップ部Nに対応する部分の下面と加圧ローラ30の上面とが定着フィルム10を挟んで圧接されることにより被記録材搬送方向Yで所定幅の定着ニップ部Nが形成される。
フルカラー画像形成装置の定着装置100において定着ニップ部Nの被記録材搬送方向Yのニップ幅は、トナー載り量の多いフルカラー画像の定着性を十分に確保するために、最短でも7.0mm以上が好ましい。これ以下であると、未定着トナーと被記録材に定着に十分な熱量を与えることができないため、定着不良が発生してしまう。
また、OHTのフルカラー画像の透過性を十分に確保するために、さらに定着ニップ部Nの面圧は7.8N/cm(0.8kgf/cm)以上が好ましい。これ以下であると、定着されたトナー層表面を十分に平滑にすることができないため、乱反射光が多くなり、OHT画像部の透過光量が少なくなってしまう。
以上の観点から、本実施例の定着装置100では、加圧ローラ30と定着フィルム10を205.9N(21kgf)で加圧させ、ニップ幅を約8.0mm、ニップ部の面圧を11.8N/cm(1.2kgf/cm)とした(ニップ部の長手方向の長さは220mm)。
加圧ローラ30は芯金30aに取り付けた駆動ギアG1が第1駆動系M1によって回転駆動されることにより矢示の反時計方向に回転される。この加圧ローラ30の回転により、前記加圧ローラ30と定着フィルム10の外面との摩擦力で定着フィルム10に回転力が作用し、前記定着フィルム10はその内面が定着ニップNにおいて良熱伝導性部材40の下面に密着して摺動しながら矢示の時計方向に加圧ローラ30の周速度にほぼ対応した周速度をもってフィルムガイド部材16a・16bの外周を回転する。
この場合、定着ニップ部Nにおける良熱伝導性部材40の下面と定着フィルム10の内面との相互摺動摩擦力を低減化させるために定着ニップ部Nの良熱伝導性部材40の下面と定着フィルム10の内面との間に耐熱性グリースなどの潤滑剤を介在させる、あるいは良熱伝導性部材40の下面を潤滑部材41で被覆することもできる。これは、良熱伝導性部材40としてアルミニウムを用いた場合のように表面滑り性が材質的によくない或いは仕上げ加工を簡素化した場合に、摺動する定着フィルム10に傷をつけて定着フィルム10の耐久性が悪化してしまうことを防ぐものである。
また、図5に示すように、フィルムガイド部材16aの周面に、その長手方向すなわち定着フィルム10の長手方向に沿い所定の間隔を置いて凸リブ部16eを形成具備させ、フィルムガイド部材16aの周面と定着フィルム10の内面との接触摺動抵抗を低減させて定着フィルム10の回転負荷を少なくしている。このような凸リブ部16eはフィルムガイド部材16bにも同様に形成具備することができる。
図3において、Aは装置100に対する被記録材Pの最大通紙幅(最大導入サイズ)である。Bは最大通紙幅Aよりも幅が小さい小サイズ被記録材の通紙幅に対応している。なお、本実施例の装置においては被記録材の通紙は中央基準搬送にてなされるものとする。Oはその中央基準線である。B´・B´は小サイズ被記録材を定着ニップ部Nに通紙したときに生じる非通紙部領域(非導入搬送領域)であり、通紙幅Bよりも幅が大きい大サイズ被記録材の最大通紙幅Aと小サイズ被記録材の通紙幅Bとの差領域である。
フィルムガイド部材16bには定着ニップ部Nの近傍に温度検知手段として第1と第2の温度検知素子(サーミスタなどの温度センサ)26・53がそれぞれ配設してある。第1の温度センサ26は最大通紙幅Aおよび小サイズ被記録材の通紙幅Bに対応する部分に、第2の温度センサ53は非通紙部領域B´に対応する部分にそれぞれ配置してある。第1と第2の温度検知素子26・53はそれぞれ定着フィルム10内面の温度を検知し、その温度情報をCPUとRAMやROM等のメモリからなる制御手段としての制御部27に出力する。
B)定着動作の説明
制御部27では、第1の温度検知素子26からの温度情報に基づいて励磁回路28から励磁コイル18に対する電流供給を制御する。これにより励磁回路28から磁場発生手段15の励磁コイル18に交番電流(高周波電流)が印加され、励磁コイル18は交番電流に応じた交番磁束を発生する。励磁コイル18から発生した交番磁束は磁性コア17a・17b・17cに導かれる。
磁性コア17a・17b・17cに導かれた交番磁束は、磁性コア17aと磁性コア17bとの間、そして磁性コア17aと磁性コア17cとの間において定着フィルム10の発熱層1(図7)に渦電流を発生させる。この渦電流は発熱層1の固有抵抗によって発熱層1にジュール熱(渦電流損)を発生させる。その渦電流によるジュール熱により定着フィルム10の発熱層1が自己発熱(誘導発熱)して、定着フィルム10が昇温していく。
定着フィルム10の誘導加熱は、定着フィルム内周に関して、励磁コイル18の巻き線形態上から定着フィルム内周上に対しては局部加熱する構造となっている。本実施例の場合には、図2に示すように、励磁コイル18の巻き線形態上から定着フィルム内周上に対してフィルムガイド部材16a側の上下2箇所の局部加熱となっている。そのため立ち上げや被記録材搬送等の定着フィルム加熱時には定着フィルム10を回転させてから加熱動作を行うことで定着フィルム温度を円周方向で均一化させている。
定着ニップ部Nの温度は、温度検知素子26を含む制御系28により励磁回路27に対する電流供給が制御されることで所定の定着温度(目標温度)に維持されるように温調される。
而して、定着フィルム10が回転し、励磁回路27から励磁コイル18への給電により上記のように定着フィルム10の電磁誘導発熱がなされて定着ニップ部Nが所定の温度に立ち上がって温調された状態において、画像形成手段部から未定着トナー画像tを形成担持させた被記録材Pが搬送され、定着ニップ部Nに画像面を上向きにして、即ち画像面を定着フィルム面に対向させて導入されると、被記録材Pは定着ニップ部Nにおいて画像面が定着フィルム10の外面に密着して定着フィルム10と一緒に定着ニップ部Nを挟持搬送されていく。
この定着ニップ部Nを定着フィルム10と一緒に被記録材Pが挟持搬送されていく過程において定着フィルム10の電磁誘導発熱で加熱されて被記録材P上の未定着トナー画像tが被記録材面上に加熱定着される。
被記録材Pは定着ニップ部Nを通過すると定着フィルム10の外面から分離して排出搬送されていく。
被記録材P上の加熱定着トナー画像は定着ニップ部通過後、冷却して永久固着像となる。
C)外部磁性体コアの説明
ところで、本実施例の定着装置100においては、励磁回路27の周波数をf=30kHzとし、発熱層に厚み50μmのNiを用いているので、非透磁率μ=46、抵抗率ρ=7.2×10−7Ωmとなる。
これを、表皮深さσ(mm)の式
Figure 2006308933
に当てはめると、本実施例での表皮深さσはσ=363μmとなり発熱層1の厚み(50μm)よりも深くなり一部の交番磁束Cが定着フィルム1を突き抜けてしまい、効率的に発熱に使われていない。
そこで、本実施例では、この突き抜けた交番磁束Cを再び発熱層1に集中させるために、定着フィルム外周において定着フィルム10を挟んで磁場発生手段15の励磁コイル18から磁束の影響を受ける位置に磁性体コアを配置した(図2、図3)。
以下に本発明の特徴である、定着フィルム10から突き抜けた交番磁束Cを該定着フィルムの発熱層1に集中させる磁性体コアについて説明する。
本実施例では、磁性体コアとして、定着フィルム10の長手方向に沿って3つの磁性体コア50a・50b1・50b2を並列に配置している。そして、これらの磁性体コア50a・50b1・50b2は何れも励磁コイル18からの磁束に影響を与える位置すなわち定着フィルム10の長手方向において励磁コイル18と対向する位置に配置してある。これら3つの磁性体コア50a・50b1・50b2のうち、中央の磁性体コア50aは長手方向の長さが小サイズ被記録材の通紙幅Bと略同じである。また中央の磁性体コア50aと隣り合う外側の2つの磁性体コア50b1・50b2はそれぞれ長手方向の長さが非通紙部領域B´と略同じである。また、磁性体コア50a・50b1・50b2は、磁場発生手段15の磁性コア17a・17b・17cと同様、高透磁率の部材であり、フェライトやパーマロイ等といったトランスのコアに用いられる材料がよい。
中央の磁性体コア50aは、第1の支持部材52上に配置されている。第1の支持部材52は、定着ニップ部Nを除いて定着フィルム10を非接触状態に囲繞する横断面略馬蹄形状に形成され、その両端を装置100の手前側と奥側の第2シャーシ側板32a・32bにそれぞれ固定保持させて配設してある。この第1の支持部材52上において中央の磁性体コア50aが小サイズ被記録材の通紙幅Bと対応する位置に配置されている。
中央の磁性体コア50aと隣り合う外側の2つの磁性体コア50b1・50b2は、それぞれ、移動部材としての第2の支持部材51a・51b上に配置されている。第2の支持部材51a・51bは、それぞれ、第1の支持部材52の端部側を接触若しくは非接触状態に囲繞する横断面円筒形状の基部51a1・51b1と、この基部51a1・51b1の内端から第1の支持部材52上の磁性体コア50aに向けて突出する横断面円弧状のコア支持片51a2・51b2を有している。この第2の支持部材51a・51bにおいて基部51a1・51b1が装置100の手前側と奥側の第1シャーシ側板31a・31bに軸受36a・36bを介して回転自由に保持させて配設してある。そしてそれぞれのコア支持片51a2・51b2上において磁性体コア50b1・50b2が非通紙部領域B´・B´と対応する位置に配置されている。
次に、磁性体コアの作用、および磁性体コアの動作シーケンス制御を、図7〜図9を参照して説明する。
図7は、磁性体コアを設けていない場合の定着フィルム10への交番磁束Cの作用状態を示したものである。図8は、磁性体コアを設けた場合の定着フィルム10への交番磁束Cの作用状態を示したものである。図9において、(a)は磁性体コアを動作させる前の状態を示す説明図、(b)は外側の磁性体コアを動作させた状態を示す説明図である。
図7においては、励磁コイル18により発生した交番磁束Cは磁性コア17a・17b・17cにより、定着フィルム10の発熱層1へ集中させられているが、前述の表皮深さよりも発熱層1が薄いために、交番磁束Cは発熱層1を突き抜けている。
図8においては、前述の突き抜けた交番磁束Cを、定着フィルム10の外周に沿った磁性体コア50a・50b1・50b2により発熱層1に集中させている。すなわち、磁性体コア50a・50b1・50b2は、それぞれ、定着フィルム10の長手方向において励磁コイル18と対向する位置にあり(図3、図9(a))、定着フィルム10の最大通紙幅A全域において発熱層1に交番磁束Cを効率的に作用させている。これによって、定着フィルム10の最大通紙幅A全域の発熱効率をより向上させることができる。
制御部28は、第2の温度検知素子53で検知した定着フィルム10の非通紙部領域B´の温度情報を入力し、その温度情報に基づいて、メモリに記憶されている磁性体コア・動作シーケンスモードを実行する。
すなわち、定着フィルム10の非通紙部領域B´の温度が高温オフセット発生温度、定着フィルム耐熱温度等の所定の判定基準温度(例えば235℃)を超えたか否かを判断し、非通紙部領域B´の温度が判定基準温度を超えた場合に、第2駆動系M2a・M2bを駆動して支持部材51a・51bの基部51a1・51b1に設けた駆動ギアG2を回転駆動させる。この駆動ギアG2の回転駆動により支持部材51a・51bは反時計方向に所定角度だけ回転移動されて停止する(図9(b))。駆動ギアG2による支持部材51a・51bの回転移動量は、磁性体コア50b1・50b2が図3・図9(a)に示す待機位置(ホームポジション)から交番磁束Cを定着フィルム10の発熱層1に集中させない位置(磁束Cに影響を与えない位置)すなわち励磁コイル18からの磁束が影響を受けない位置、つまり励磁コイル18と対向しない反対側の図9(b)に示す退避位置まで移動する回転移動量と等しい。磁性体コア50b1・50b2を退避位置に回転移動させることで定着フィルム10の非通紙部領域B´・B´全域において発熱層1に交番磁束Cが集中して作用しなくなることから、非通紙部領域B´・B´での発熱効率を定着フィルム10の小サイズ被記録材の通紙幅Bの発熱効率よりも低下させることができる。これによって、定着フィルム10の非通紙部領域B´・B´での非通紙部昇温を抑えることができる。従って、定着フィルム10の非通紙部領域B´での高温オフセットの発生、定着フィルム10の破壊等も防止できる。
そして、小サイズ被記録材に対する定着動作が終了した場合、或いは大サイズ被記録材に対する定着動作が開始される場合に、第2駆動系M2a・M2bを駆動して駆動ギアを回転駆動させることにより、支持部材51a・51bを元の位置まで時計方向に回転移動させる。この支持部材51a・51bの回転移動によって磁性体コア50b1・50b2を退避位置から待機位置に戻す。
図10は本発明に係る定着装置の他の例の横断側面模型図である。本実施例では、実施例1の定着装置100と共通する手段、部材、部分に同一の符号を付して再度の説明を省略する。
本実施例に示す定着装置200は、大略、定着フィルム10の外側に磁場発生手段15を配置し、定着フィルム10の内側に磁場発生手段の励磁コイル18と対向させて磁性体コア50a・50b1・50b2を配置した装置構成である。具体的には、無端ベルト・円筒形状の定着フィルム10と、定着フィルム10の円周と対向する所定の位置に対をなして配置された磁場発生手段としての電磁誘導加熱装置17と、定着フィルム10に圧接される加圧ローラ30と、定着フィルム10の内周面を支持すると共に加圧ローラ30との間に定着フィルム10を挟みこむ加圧パッド55と、前記加圧パッド55を支持すると共に定着フィルム10を所定の円筒形状に維持するガイド部材16と、を有している。また、前記定着フィルム10の温度を検知する温度検知素子26が定着ニップN付近で定着フィルム回転方向下流側に設けられている。本実施例では温度検知素子26はガイド部材16に配置されている。
前記定着フィルム10は実施例1に記載されているものと同様なものを用いている。つまり、発熱層(導電層)1を基層とし、その上に弾性層2と離型層3を設けている。前記加圧ローラ30も実施例1に記載されているものと同様である。
前記電磁誘導加熱装置17は、定着フィルム10の発熱層1を発熱させるものであり、装置200の奥側と手前側の図示しない任意のシャーシ側板にそれぞれ固定保持させて配設してある。そして、前記電磁誘導加熱装置17は、定着フィルム10の外周面に沿って、この外周面とギャップが1〜3mmとなるように配置されている。この電磁誘導加熱装置17は、フェライト等からなる磁性コア17aと、励磁コイル17bと、この励磁コイル17bに交番電流(以下「交流電流」と記す)を供給する励磁回路27からなる。
励磁回路27により励磁コイル17bに交流電流が流されると、交番磁束Cが発生し、定着フィルム10の発熱層1に渦電流を生じさせ、発熱層1が発熱する。温度検知素子26で定着フィルム10の温度を検知し、その検知温度情報を図示しない制御部28が入力する。制御部28では所定の定着温度になるように励磁回路27により励磁コイル17bに流す電流を調節する。
磁性コア17aは、励磁コイル17bにより発生した交番磁束Cを定着フィルム10の発熱層へ集中させ、効率よく定着フィルム10を発熱させるためのものである。
加圧パッド55はシリコンゴムやフッ素ゴムなどの耐熱弾性体で形成され、加圧ローラ30とで定着フィルム10を挟み込み定着ニップ部Nを形成する。
而して、定着フィルム10が回転し、励磁回路27から励磁コイル18への給電により上記のように定着フィルム10の電磁誘導発熱がなされて定着ニップ部Nが所定の温度に立ち上がって温調された状態において、画像形成部から搬送された未定着トナー画像tを形成担持させた被記録材Pが搬送され、定着ニップ部Nに画像面を上向きにして、即ち画像面を定着フィルム面に対向させて導入されると、被記録材Pは定着ニップ部Nにおいて画像面が定着フィルム10の外面に密着して定着フィルム10と一緒に定着ニップ部Nを挟持搬送されていく。
この定着ニップ部Nを定着フィルム10と一緒に被記録材Pが挟持搬送されていく過程において定着フィルム10の電磁誘導発熱で加熱されて被記録材P上の未定着トナー画像tが被記録材面上に加熱定着される。
被記録材Pは定着ニップ部Nを通過すると定着フィルム10の外面から分離して排出搬送されていく。
横断面略馬蹄形状の胴部を有するガイド部材16内には、磁性体コアとして、定着フィルム10の長手方向に沿って3つの磁性体コア50a・50b1・50b2を並列に配置している。そして、これらの磁性体コア50a・50b1・50b2は何れも励磁コイル18から磁束の影響を受ける位置すなわち定着フィルム10の長手方向において励磁コイル18と対向する位置に配置してある。各磁性体コア50a・50b1・50b2における長手方向の長さは実施例1と同じである。
中央の磁性体コア50aは、ガイド部材16内に挿入された横断面円筒形状の第1の支持部材53上に配置されている。第1の支持部材53は、その両端が装置200の手前側と奥側の図示しない任意のシャーシ側板にそれぞれ固定保持させて配設してある。この第1の支持部材53上において中央の磁性体コア50aが小サイズ被記録材の通紙幅Bと対応する位置に配置されている。
中央の磁性体コア50aと隣り合う外側の2つの磁性体コア50b1・50b2は、それぞれ、移動部材としての第2の支持部材54a・54b上に配置されている。第2の支持部材54a・54bは、それぞれ、第1の支持部材52の端部側を接触若しくは非接触状態に囲繞する横断面円筒形状に形成されて、装置200の手前側と奥側の図示しない任意のシャーシ側板に軸受を介して回転自由に保持させて配設してある。この第2の支持部材54a・54bにおいて磁性体コア50b1・50b2が非通紙部領域B´・B´と対応する位置に配置されている。
上記の磁性体コア50a・50b1・50b2は、それぞれ、実施例1と同様に、定着フィルム10の発熱層1を突き抜けた交番磁束Cを、発熱層1へ集中させて発熱効率を向上させるものである。
次に、制御部28による磁性体コア・動作シーケンス制御、および磁性体コアの動作を、図11及び図12を参照して説明する。図11は、磁性体コアの動作シーケンス制御のフローチャートである。図12において、(a)は磁性体コアを動作させる前の状態を示す説明図、(b)は外側の磁性体コアを動作させた状態を示す説明図である。
図11において、まず、制御部28は、画像形成装置の画像信号発生装置から目的画像情報の時系列電気デジタル画素信号(画像データ)を入力し(S1)、その入力画像データが小サイズ被記録材に対応した小サイズ用画像データか否かを判断する(S2)。
S2において、小サイズ用画像データ以外の画像データであれば(S2のNo)S3に進み、小サイズ用画像データであれば(S2のYes)S6に進む。
S3では、磁性体コア50a・50b1・50b2を待機位置(図12(a))に維持させた状態で大サイズ被記録材に対する定着動作を開始する。この状態では、磁性体コア50a・50b1・50b2は、それぞれ、定着フィルム10の長手方向において励磁コイル18と対向する位置にある。このため、定着フィルム10の最大通紙幅A全域において発熱層1に交番磁束Cを効率的に集中させて作用させることができ、よって定着フィルム10の最大通紙幅A全域の発熱効率をより向上させることができる。
S4では、大サイズ被記録材に対する連続画像形成ジョブが有るか否かを判断し、連続画像形成ジョブが有る場合には(Yes)S1に戻ってS1からS3の処理を繰り返し行い、連続画像形成ジョブが無い場合には(No)S5に進む。
S5では、一連の大サイズ被記録材の定着動作を終了する。
S6では、小サイズ被記録材に対する定着動作を開始する。
S7では、第2駆動系M2a・M2bを駆動して支持部材54a・54bに設けた図示しない駆動ギアを回転駆動させる。この駆動ギアの回転駆動により支持部材54a・54bは反時計方向に所定角度だけ回転移動されて停止する(図12(b))。駆動ギアによる支持部材54a・54bの回転移動量は、磁性体コア50b1・50b2が図12(a)に示す待機位置(ホームポジション)から交番磁束Cを定着フィルム10の発熱層1に集中させない位置すなわち励磁コイル18より磁束の影響を受けない位置、つまり励磁コイル18と対向しない図12(b)に示す退避位置まで移動する回転移動量と等しい。磁性体コア50b1・50b2を退避位置に回転移動させることで定着フィルム10の非通紙部領域B´・B´全域において発熱層1に交番磁束Cが集中して作用しなくなることから、非通紙部領域B´・B´での発熱効率を定着フィルム10の小サイズ被記録材の通紙幅Bの発熱効率よりも低下させることができる。これによって、定着フィルム10の非通紙部領域B´・B´での非通紙部昇温を抑えることができる。従って、定着フィルム10の非通紙部領域B´での高温オフセットの発生、定着フィルム10の破壊等も防止できる。
S8では、小サイズ被記録材に対する連続画像形成ジョブが有るか否かを判断し、連続画像形成ジョブが有る場合には(Yes)磁性体コア50b1・50b2を退避位置に維持し、連続画像形成ジョブが無い場合には(No)S9に進む。
S9では、第2駆動系M2a・M2bを駆動させた後に、S5に進む。S9において、
第2駆動系M2a・M2bを駆動して駆動ギアを回転駆動させることにより、支持部材54a・54bを元の位置まで時計方向に回転移動させる。この支持部材51a・51bの回転移動によって磁性体コア50b1・50b2を退避位置から待機位置に戻す。
S5では、一連の小サイズ被記録材の定着動作を終了する。
本実施例の定着装置のように、入力した画像データが小サイズ用画像データである場合に励磁体コア50b1・50b2を移動させることによって、非通紙部昇温が起こる前に、定着フィルム破損やホットオフセットの発生を防止できるとことは勿論であるが、トナーによる定着フィルム表層汚染などの問題も起こらない安定した性能を得ることができる。
以上説明したように、各実施例の定着装置によれば、定着フィルムを挟んで励磁コイルと対向する位置に、磁場発生手段の磁性コアとは別の磁性体コアを配置することで、励磁コイルにより発生し、定着フィルムの発熱層を突き抜けた交番磁束を発熱層に集中させることができ、従来よりも効率よく発熱層を発熱させることができる。
また、励磁コイルと対向する位置にある磁性体コアを定着フィルムの被記録材搬送方向と直交する長手方向に複数具備させ、非通紙部領域にある励磁体コアを第2の支持部材によって、定着フィルムの発熱層を突き抜けた交番磁束を発熱層へ集中させない位置へ移動させることで、非通紙部領域の発熱層の発熱効率を低下させ、非通紙部昇温を抑えることができる。
〔その他〕
1)実施例の定着装置は被記録材の搬送を中央基準で搬送する装置構成であるが、片側基準で搬送する構成の装置にも本発明は有効に適用することができる。
2)本発明の電磁誘導加熱方式の像加熱装置は、実施例の画像加熱定着装置としての使用に限られず、未定着画像を被記録材に仮定着する仮定着装置、定着画像を担持した被記録材を再加熱してつや等の画像表面性を改質する表面改質装置等の像加熱装置としても有効である。
画像形成装置の一例の構成模型図である。 実施例1における定着装置の一例の横断側面模型図である。 実施例1における定着装置の正面模型図である。 実施例1における定着装置の縦断側面模型図である。 実施例1における定着装置の励磁コイルと磁性コアとフィルムガイド部材と励磁回路との関係を示す斜視図である。 定着フィルムの層構成模型図である。 磁性体コアを設けていない場合の定着フィルムへの交番磁束の作用状態を示す説明図である。 磁性体コアを設けた場合の定着フィルムへの交番磁束の作用状態を示す説明図である。 実施例1における定着装置の磁性体コアの説明図であり、(a)は磁性体コアを動作させる前の状態を示す説明図、(b)は外側の磁性体コアを動作させた状態を示す説明図である。 実施例2における定着装置の横断側面模型図である。 実施例2における定着装置の磁性体コア動作シーケンス制御のフローチャートである。 実施例2における定着装置の磁性体コアの説明図であり、(a)は磁性体コアを動作させる前の状態を示す説明図、(b)は外側の磁性体コアを動作させた状態を示す説明図である。
符号の説明
1 発熱層
10 定着フィルム
15 磁場発生手段
16 フィルムガイド部材
17 電磁誘導加熱装置
17b・18 励磁コイル
26・53 温度検知素子
30 加圧ローラ
50a・50b1・50b2 磁性体コア
51a・51b・52 磁性体コア支持部材
C 交番磁束
M 駆動手段
N ニップ
P 記録材
t トナー

Claims (5)

  1. 磁束発生手段と、前記磁束発生手段からの磁束により発熱する発熱部材と、を有し、前記発熱部材の熱により被加熱材上の像を加熱する像加熱装置において、
    前記発熱部材は少なくとも金属層を有し、前記金属層の厚みが前記磁束発生手段からの磁束の吸収深さ以下であり、さらに、前記発熱部材を挟んで前記磁束発生手段からの磁束に影響を与える所定位置に配置され、かつ前記被加熱材搬送方向と交差する長手方向に沿って並列する複数の磁性体コアであって、前記発熱部材を突き抜けた前記磁束発生手段からの磁束を前記金属層に作用させて前記金属層を発熱させる磁性体コアと、前記複数の磁性体コアのうち所定の磁性体コアを前記所定位置から前記磁束発生手段からの磁束に影響を与えない位置に向けて移動させる移動手段と、を有することを特徴とする像加熱装置。
  2. 前記複数の磁性体コアはそれぞれ前記発熱部材と非接触に配置されることを特徴とする請求項2に記載の像加熱装置。
  3. 前記発熱部材の温度を検知する温度検知手段を前記複数の磁性体コアのうち任意の磁性体コアに対応させて複数有し、前記所定の磁性体コアを前記所定の磁性体コアと対応させた温度検知手段の検知温度に基づいて前記移動手段により前記所定位置から前記磁束発生手段からの磁束に影響を与えない位置に向けて移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の像加熱装置。
  4. 前記複数の磁性体コアのうち所定の磁性体コアを前記被加熱材のサイズに応じて前記移動手段により前記所定位置から前記磁束発生手段からの磁束に影響を与えない位置に向けて移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の像加熱装置。
  5. 被加熱材上に像を形成する作像手段と、磁束発生手段と前記磁束発生手段からの磁束により発熱する発熱部材とを有し、前記発熱部材の熱により被加熱材上の像を加熱する像加熱装置と、を有する画像形成装置において、
    前記像加熱装置の前記発熱部材は少なくとも金属層を有し、前記金属層の厚みが前記磁束発生手段からの磁束の吸収深さ以下であり、さらに、前記像加熱装置は、前記発熱部材を挟んで前記磁束発生手段からの磁束に影響を与える位置に配置され、かつ前記被加熱材搬送方向と交差する長手方向に沿って並列する複数の磁性体コアであって、前記発熱部材を突き抜けた前記磁束発生手段からの磁束を前記金属層に作用させて前記金属層を発熱させる磁性体コアと、前記複数の磁性体コアのうち所定の磁性体コアを前記所定位置から前記磁束発生手段からの磁束に影響を与えない位置に向けて移動させる移動手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US8185030B2 (en) * 2008-03-25 2012-05-22 Ricoh Company Limited Fixer, image forming apparatus including same, and fixing method

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