本発明はカラー画像表示機能を有する液晶表示装置、とりわけ絵素毎にスイッチング素子を有するアクティブ型の液晶表示装置に関するものである。
近年のガラス基板と対応部材及び生産設備の大型化により5〜100cm対角の液晶表示装置でテレビジョン画像や各種の画像表示機器が既に商用ベースで大量に提供されている。また液晶パネルを構成する2枚のガラス基板の一方にRGBの着色層を形成しておくことによりカラー表示も容易に実現している。特にスイッチング素子を絵素毎に内蔵させた、いわゆるアクティブ型の液晶パネルではクロストークも少なく、応答速度も早く高いコントラスト比を有する画像が製品化の当初から保証されていた。
これらの液晶表示装置(液晶パネル)は走査線としては200〜1200本、信号線としては300〜1600本程度のマトリクス編成が一般的であるが、最近は表示容量の増大に対応すべく大画面化と高精細化とが同時に進行している。
図19は液晶パネルへの実装状態を示し、液晶パネル1を構成する一方の透明性絶縁基板、例えばガラス基板2上に形成された走査線の電極端子5に駆動信号を供給する半導体集積回路チップ3を導電性の接着剤を用いて接続するCOG(Chip−On−Glass)方式や、例えばポリイミド系樹脂薄膜をベースとし、金または半田メッキされた銅箔の端子を有するTCPフィルム4を信号線の電極端子6に導電性媒体を含む適当な接着剤で圧接して固定するTCP(Tape−Carrier−Package)方式などの実装手段によって電気信号が画像表示部に供給される。ここでは便宜上二つの実装方式を同時に図示しているが実際には何れかの方式が適宜選択される。
液晶パネル1のほぼ中央部に位置する画像表示部内の絵素と、走査線及び信号線の電極端子5,6との間を接続する配線路が7、8で、必ずしも電極端子5,6と同一の導電材で構成される必要はない。9は全ての液晶セルに共通する透明導電性の対向電極を対向面上に有するもう1枚の透明性絶縁基板である対向ガラス基板またはカラーフィルタである。
図20はスイッチング素子として絶縁ゲート型トランジスタ10を絵素毎に配置したアクティブ型液晶表示装置の等価回路図を示し、11(図20では7)は走査線、12(図20では8)は信号線、13は液晶セルであって、液晶セル13は電気的には容量素子として扱われる。実線で描かれた素子類は液晶パネルを構成する一方のガラス基板2上に形成され、点線で描かれた全ての液晶セル13に共通な対向電極14はもう一方のガラス基板9の対向する主面上に形成されている。絶縁ゲート型トランジスタ10のOFF抵抗あるいは液晶セル13の抵抗が低い場合や表示画像の階調性を重視する場合には負荷としての液晶セル13の時定数を大きくするための補助の蓄積容量15を液晶セル13に並列に加える等の回路的工夫が加味される。なお16は蓄積容量15の共通母線となる蓄積容量線または共通電極である。
図21は液晶表示装置の画像表示部の要部断面図を示し、液晶パネル1を構成する2枚のガラス基板2,9は樹脂性のファイバ、ビーズあるいはカラーフィルタ9上に形成された柱状スペーサ等のスペーサ材(何れも図示せず)によって数μm程度の所定の距離を隔てて形成され、その間隙(ギャップ)はガラス基板9の周縁部において有機性樹脂よりなるシール材と封口材(何れも図示せず)とで封止された閉空間になっており、この閉空間に液晶17が充填されている。
カラー表示を実現する場合には、ガラス基板9の閉空間側に着色層18と称する染料または顔料の何れか一方もしくは両方を含む厚さ1〜2μm程度の有機薄膜が被着されて色表示機能が与えられるので、その場合にはガラス基板9は別名カラーフィルタ(Color Filter 略語はCF)と呼称される。そして液晶材料17の性質によってはガラス基板9の上面またはガラス基板2の下面の何れかもしくは両面上に偏光板19が貼付され、液晶パネル1は電気光学素子として機能する。現在、市販されている大部分の液晶パネルでは液晶材料にTN(ツイスト・ネマチック)系の物を用いており、偏光板19は通常2枚必要である。図示はしないが、透過型液晶パネルでは光源として裏面光源が配置され、下方より白色光が照射される。
液晶17に接して2枚のガラス基板2,9上に形成された例えば厚さ0.1μm程度のポリイミド系樹脂薄膜20は液晶分子を決められた方向に配向させるための配向膜である。21は絶縁ゲート型トランジスタ10のドレインと透明導電性の絵素電極22を接続するドレイン電極(配線)であり、信号線(ソース線)12と同時に形成されることが多い。ソース電極12とドレイン電極21との間に位置するのは半導体層23であり詳細は後述する。カラーフィルタ9上で隣り合った着色層18の境界に形成された厚さ0.1μm程度のCr薄膜層24は半導体層23と走査線11及び信号線12に外部光が入射するのを防止するための光遮蔽部材で、所謂ブラックマトリクス(Black Matrix 略語はBM)として定着化した技術であるが、BMには膜厚1μm程度の黒色顔料分散型の感光性樹脂を用いることも多い。
走査線、信号線、スイッチング素子としての絶縁ゲート型トランジスタ及び絵素電極を形成されたアクティブ基板2の作製には半導体集積回路のようにフォトマスクを用いた複数回のフォトリソグラフィ(写真食刻)工程が不可欠である。詳細な経緯は省略するが、半導体層の島化工程の合理化と走査線へのコンタクト形成工程が削減された結果、当初は7〜8枚程度必要であったフォトマスクもドライエッチ技術の導入により現時点では5枚に減少してプロセスコストの削減に大きく寄与している。液晶表示装置の生産コストを下げるためにはアクティブ基板の作製工程ではプロセスコストを、またパネル組立工程とモジュール実装工程では部材コストを下げることが有効であることは周知の開発目標であり、写真食刻工程を含めてアクティブ基板の製造工程数を削減する事が液晶表示装置の生産性向上とコストダウンに大きく寄与することは自明である。
既に述べたようにアクティブ基板2の作製において5回の写真食刻工程を必要とする製造方法が一般的であり、さらなる製造コスト低減のために提案されている先行例の中から一部で既に量産されており、特許文献1の特開2000−206571号公報で開示されている4枚マスク・プロセスを従来例として紹介する。この4枚マスク・プロセスは下記に説明するようにハーフトーン露光技術を用いてチャネルを含む半導体層の島化工程とソース・ドレイン配線工程を1枚のフォトマスクで形成する工程削減技術あるいは合理化技術である。図22は4枚マスク・プロセスに対応したアクティブ基板の単位絵素の平面図で、図22(f)のA−A’(絶縁ゲート型トランジスタ領域)、B−B’(走査線の電極端子領域)及びC−C’(信号線の電極端子領域)線上の製造工程断面図を図23に示す。現在、絶縁ゲート型トランジスタには2種類のものが多用されているが、ここではチャネルエッチ型の絶縁ゲート型トランジスタが必要である。
先ず図22(a)と図23(a)に示したように耐熱性と耐薬品性と透明性が高い絶縁性基板として厚さ0.5〜1.1mm程度のガラス基板2、例えばコーニング社製の商品名1737の一主面上にSPT(スパッタ)等の真空製膜装置を用いて膜厚0.1〜0.3μm程度の第1の金属層を被着し、微細加工技術によりゲート電極11Aも兼ねる走査線11と蓄積容量線16を選択的に形成する。走査線の材質は耐熱性、耐薬品性、耐弗酸性及び導電性を総合的に勘案して選択するが一般的には耐熱性の高いCr,Ta等の金属薄膜層またはMoW合金等の合金薄膜層が使用される。
液晶パネルの大画面化や高精細化に対応して走査線の抵抗値を下げるためには走査線の材料としてAL(アルミニウム)を用いるのが合理的であるが、ALは単体では耐熱性が低いので上記した耐熱金属であるCr,Ta,Moまたはそれらのシリサイドと積層化する構成が現在では一般的である。すなわち走査線11は通常1層以上の金属層で構成される。
次にガラス基板2の全面にPCVD(プラズマ・シーブイディ)装置を用いてゲート絶縁層となる第1のシリコン窒化(SiNx)層30、不純物をほとんど含まず絶縁ゲート型トランジスタのチャネルとなる第1の非晶質シリコン(a−Si)層31、及び不純物として燐を含み絶縁ゲート型トランジスタのソース・ドレインとなる第2の非晶質シリコン層(n+a−Si)33と3種類の薄膜層を、例えば0.3−0.2−0.05μm程度の膜厚で順次被着する。引き続き、図22(b)と図23(b)に示したようにSPT等の真空製膜装置を用いて膜厚0.1μm程度の耐熱金属層として例えばTi薄膜層34と、膜厚0.3μm程度の低抵抗金属層としてAL薄膜層35と、さらに膜厚0.1μm程度の中間導電層として例えばTi薄膜層36を順次被着する。
そして微細加工技術によりゲート電極11Aと一部重なるように耐熱金属層34A、低抵抗金属層35A及び中間導電層36Aとの積層よりなり絶縁ゲート型トランジスタのソース電極も兼ねる信号線12と、同じくゲート電極11Aと一部重なるように耐熱金属層34B、低抵抗金属層35B及び中間導電層36Bとの積層よりなる絶縁ゲート型トランジスタのドレイン電極21を選択的に形成するのであるが、この選択的パターン形成に当たりハーフトーン露光技術により図22(c)と図23(c)に示したようにソース・ドレイン間のチャネル形成領域80B(斜線部)の膜厚が例えば1.5μmで、ソース・ドレイン配線形成領域80A(12),80A(21)の膜厚が3μmであるような感光性樹脂パターン80A,80Bを形成する点が4枚マスク・プロセスの大きな特徴である。
アクティブ基板2の作製には通常ポジ型の感光性樹脂を用いるので、このような感光性樹脂パターン80A,80Bは、ソース・ドレイン配線形成領域80Aが黒、すなわちCr薄膜が形成されており、チャネル形成領域80Bは灰色(中間調)でフォトマスク通過光を低減させるようなたとえば幅0.5〜1.5μm程度のラインアンドスペースのCrパターンが形成されており、その他の領域は白、すなわちCr薄膜が除去されているようなフォトマスクを用いれば良い。灰色領域は露光機の解像力が不足しているためにラインアンドスペースが解像されることはなく、ランプ光源からのフォトマスク照射光を半分程度透過させることが可能であるので、ポジ型感光性樹脂の残膜特性に応じて図23(c)に示したような凹型の断面形状を有する感光性樹脂パターン80A,80Bを得ることができる。なお、灰色領域はスリットパターンに変えて膜厚や透過率の異なった金属層、例えばMoSi2の薄膜で構成することも可能である。
上記感光性樹脂パターン80A,80Bをマスクとして図22(c)と図23(c)に示したようにTi薄膜層36、AL薄膜層35、Ti薄膜層34、第2の非晶質シリコン層33及び第1の非晶質シリコン層31を順次食刻してゲート絶縁層30を露出した後、酸素プラズマ等の灰化手段により感光性樹脂パターン80A,80Bを1.5μm以上膜減りさせると感光性樹脂パターン80Bが消失してチャネル形成領域のTi薄膜層36A(図示せず)が露出するとともに、ソース・ドレイン配線形成領域にのみ膜減りした感光性樹脂パターン80C(12),80C(21)を残すことができる。
そこで膜減りした感光性樹脂パターン80C(12),80C(21)をマスクとして図22(d)と図23(d)に示したように、再びソース・ドレイン配線間(チャネル形成領域)のTi薄膜層,AL薄膜層,Ti薄膜層,第2の非晶質シリコン層33A及び第1の非晶質シリコン層31Aを順次食刻し、第1の非晶質シリコン層31Aは0.05〜0.1μm程度残して食刻する。この時点で第2の非晶質シリコン層よりなるソース33Sとドレイン33Dの分離がなされる。ソース・ドレイン配線12,21の形成が金属層をエッチングした後に第1の非晶質シリコン層31Aを0.05〜0.1μm程度残して食刻することによりなされるので、このような製法で得られる絶縁ゲート型トランジスタはチャネルエッチと呼称されている。なお上記酸素プラズマ処理において感光性樹脂パターン80Aは膜減りした感光性樹脂パターン80Cに変換されるのでパターン寸法の変化を抑制するため異方性を強めることが望ましく、具体的にはRIE(Reactive Ion Etching)方式、さらに高密度のプラズマ源を有するICP(Inductive Coupled Plasma)方式やTCP(Transfer Coupled Plasma)方式の酸素プラズマ処理がより望ましい。
さらに上記感光性樹脂パターン80C(12),80C(21)を除去した後はガラス基板2の全面に透明性の絶縁層として0.3μm程度の膜厚の第2のSiNx層を被着してパシベーション絶縁層37とし、図22(e)と図23(e)に示したようにドレイン電極21上と、画像表示部外の領域で走査線11と信号線12の電極端子が形成される領域に夫々開口部62,63,64を形成し、開口部63内のパシベーション絶縁層37とゲート絶縁層30を除去して開口部63内に走査線の一部5を露出するとともに、開口部62,64内のパシベーション絶縁層37を除去してドレイン電極21の一部と信号線の一部6を露出する。同様に蓄積容量線16上には開口部65を形成して蓄積容量線16の一部を露出する。
最後にSPT等の真空製膜装置を用いて膜厚0.1〜0.2μm程度の透明導電層として例えばITO(Indium−Tin−Oxide)またはIZO(Indium−Zinc−Oxide)あるいはこれらの混晶体を被着し、図22(f)と図23(f)に示したように微細加工技術によりパシベーション絶縁層37上に開口部62を含んで透明導電性の絵素電極22を選択的に形成してアクティブ基板2として完成する。蓄積容量15の構成に関しては、図22(e)と図23(e)に示したようにドレイン電極21と蓄積容量線16とがゲート絶縁層30と第1の非晶質シリコン層31Aと第2の非晶質シリコン層33Dを介して平面的に重なることで構成している例(右下がり斜線部50)を例示している。また電極端子に関しては開口部63,64を含んでパシベーション絶縁層37上に透明導電性の電極端子5A,6Aを選択的に形成している。
上記したようにソース・ドレイン配線12,21にALを用いようとすると、第2の非晶質シリコン33との間の電気的な接続を確保するために耐熱金属層34が必要であり、さらに透明導電層との間にはアルカリ液中での酸化還元反応を回避するために中間導電層36が必要であり、結果的にソース・ドレイン配線は3層構成とならざるを得ないが、ソース・ドレイン配線の抵抗値の制約が厳しくなる大画面あるいは高精細の液晶パネルでは低抵抗金属層の使用を回避することは困難である。さらに耐熱金属層34と中間導電層36にTiを用いると、その食刻には塩素系のガスを用いたドライエッチ処理が必要であり、自動的にALの食刻も塩素系のガスを用いたドライエッチ処理となり、材料面のみならず生産設備上の負担も大きくなる。Tiに換えて耐熱金属層34と中間導電層36にMoを用いた場合には、適量の硝酸を添加した燐酸溶液でMo/AL/Moの3層構成を1回の薬液処理で行うことが可能であり、生産設備の投資負担も低減するがソース・ドレイン配線の簡素化も生産コスト低減には有効である事は説明を要しない。
このように4枚マスク・プロセスにおいてはドレイン電極21と走査線11へのコンタクト形成工程が同時になされるため、それらに対応した開口部62,63内の絶縁層の厚さと種類が異なっている。パシベーション絶縁層37はゲート絶縁層30に比べると製膜温度が低く膜質が劣悪で、弗酸系のエッチング液による食刻では食刻速度が夫々数1000Å/分、数100Å/分と1桁も異なり、ドレイン電極21上の開口部62の断面形状は上部に余りにも過食刻が生じて穴径が制御できない理由から弗素系のガスを用いた乾式食刻(ドライエッチ)を採用している。
しかしながらドライエッチを採用してもドレイン電極21上の開口部62はパシベーション絶縁層37のみであるので、走査線11上の開口部63と比較して過食刻になるのは避けられず、材質によってはドレイン電極21(中間導電層36B)が食刻ガスによって膜減りすることがある。また食刻終了後の感光性樹脂パターンの除去に当たり、まずは弗素化された表面のポリマー除去のために酸素プラズマ灰化で感光性樹脂パターンの表面を0.1〜0.3μm程度削り、その後に有機剥離液、例えば東京応化社製のレジスト剥離液106等を用いた薬液処理がなされるのが一般的であるが、中間導電層36Bが膜減りして下地のアルミニウム層35Bが露出した状態になっていると、酸素プラズマ灰化処理でアルミニウム層35Bの表面に絶縁体であるAL2O3が形成されて、ドレイン電極36Bと絵素電極22との間でオーミック接触が得られなくなることも稀ではない。
そこで中間導電層36Bが膜減りしても良いようにその膜厚を例えば0.2μmと厚く設定することでこの問題から逃れようとしている。あるいは開口部62〜65の形成時、アルミニウム層35Bを除去して下地の耐熱金属層であるTi薄膜層34Bを露出してから絵素電極22を形成する回避策も可能であり、この場合には当初から中間導電層36は不要となるメリットもある。
しかしながら前者の対策ではこれら薄膜の膜厚の面内均一性が良好でないとこの取組も必ずしも有効に作用するわけではなく、また食刻速度の面内均一性が良好でない場合にも全く同様である。後者の対策では中間導電層36Bは不要となるが、アルミニウム層35Bの除去工程が増加し、また開口部62の断面制御が不十分であると絵素電極22が段切れを起こす恐れがあった。
また4枚マスク・プロセスにおいて適用されているチャネル形成工程はソース・ドレイン配線12,21間のソース・ドレイン配線材と不純物を含む半導体層を同時に除去するので、絶縁ゲート型トランジスタのON特性を大きく左右するチャネルの長さ(現在の量産品で4〜6μm)を決定する工程である。このチャネル長の変動は絶縁ゲート型トランジスタのON電流値を大きく変化させるので、通常は厳しい製造管理を要求されるが、チャネル長、すなわちハーフトーン露光領域のパターン寸法は露光量(光源強度とフォマスクのパターン精度、特にライン&スペース寸法)、感光性樹脂の塗布厚、感光性樹脂の現象処理条件、および当該のエッチング工程における感光性樹脂の膜減り量等多くのパラメータに左右され、加えてこれら諸量の面内均一性もあいまって必ずしも歩留高く安定して生産できるわけではなく、従来の製造管理よりも一段と厳しい製造管理が必要となり、決して高度に完成したレベルにあるとは言えないのが現状である。特にチャネル長が6μm以下では感光性樹脂パターン80A(12),80A(21)の膜厚減少に伴って発生するパターン寸法の影響が大きくその傾向が顕著となる。
フォトマスクの寸法を前もって太くしておき、前記感光性樹脂パターンの膜厚減少に伴って発生するパターン寸法の細りを回避することは比較的容易であるが、チャネル領域である感光性樹脂パターン80C(12)と80C(21)との間隙は露光機の解像力(最小3μm程度)よりも細くすることは出来ないので、結局、チャネル長は感光性樹脂パターンの横方向の膜減り量の2倍分だけ長くなり、しかもその膜減り量のガラス基板面内における変動も大きく、現存するガラス基板サイズが1m以上の生産ラインに4枚マスク・プロセスの導入が遅れている原因の一つと考えられる。
本発明はかかる現状に鑑みなされたもので、厳しいパターン精度管理を必要としないだけでなく、信号線12の構成を簡素化し、かつ絵素電極形成工程の合理化により製造工程の削減を推進するものである。
特開2000−206571号公報
特開2004−317685号公報
特開2005−17669号公報
特開2005−19664号公報
月間「高分子加工」2002年11月号
本発明は絵素電極をドレイン電極に接続するための開口部形成工程において、絵素電極形成領域の絶縁層を除去してガラス基板を露出し、露出したドレイン電極を含んでガラス基板上に絵素電極をリフトオフで形成することで製造工程の削減を達成している。リフトオフによる絵素電極形成を容易ならしめるために、上記絶縁層の除去工程ではその断面形状が逆テーパ状である感光性樹脂パターンを用いる点と、絵素電極がドレイン電極と段切れする事なく良好な電気接続が得られるように低抵抗金属層と耐熱金属層との積層よりなるドレイン電極の上層部の低抵抗金属層を除去して下層部の耐熱金属層を露出する工程が付加されている点が本発明の重要な着眼点である。
請求項1に記載の液晶表示装置は、
絶縁ゲート型トランジスタがボトムゲート型であり、
低抵抗金属層と絶縁層の食刻ガスで除去可能な耐熱金属層との積層よりなるソース・ドレイン配線が形成され、
絶縁ゲート型トランジスタの少なくともチャネルと信号線を保護する手段が与えられ、
画像表示部ではドレイン配線の一部を含む絵素電極形成領域と、画像表示部外の領域では走査線の一部を含む走査線の電極端子形成領域及び信号線の一部を含む信号線の電極端子形成領域に開口部が形成され、前記開口部内の絶縁層が除去されて夫々前記耐熱金属層よりなるドレイン配線の一部と前記第1の透明性絶縁基板、走査線の一部、及び前記耐熱金属層よりなる信号線の一部が露出し、
同一の導電性薄膜よりなり、前記ドレイン配線の一部を含んで絵素電極形成領域に絵素電極と、前記走査線の一部を含んで走査線の電極端子形成領域に走査線の電極端子、及び前記信号線の一部を含んで信号線の電極端子形成領域に信号線の電極端子が形成されていることを特徴とする。
この構成により耐熱金属層よりなるドレイン電極の一部と絵素電極、同じく耐熱金属層よりなる信号線の一部と信号線の電極端子との電気的な接続は確保され、さらにソース・ドレイン配線が低抵抗金属層と耐熱金属層との2層構成で良く構成が簡素化される。
請求項2に記載の液晶表示装置は、
ボトムゲート型の絶縁ゲート型トランジスタがチャネルエッチ型であり、
ゲート絶縁層を介してゲート電極上にゲート電極よりも幅太く不純物を含まない第1の半導体層が島状に形成され、
前記第1の半導体層上にゲート電極と一部重なるように絶縁ゲート型トランジスタのソース・ドレインを兼ねる一対の不純物を含む第2の半導体層が形成され、
前記ソース・ドレインとゲート絶縁層上にソース・ドレイン配線が形成され、
前記開口部を除いてパシベーション絶縁層が第1の透明性絶縁基板の最上層に形成されている請求項1に記載の液晶表示装置である。
この構成によりチャネルも含めて絶縁ゲート型トランジスタと走査線及び信号線、すなわち、絵素電極を除くアクティブ基板の構成要素がパシベーション絶縁層によって保護されて液晶表示装置の信頼性が保証される。
請求項3に記載の液晶表示装置は、
ボトムゲート型の絶縁ゲート型トランジスタがチャネルエッチ型であり、
チャネル領域は膜厚が薄く、かつゲート電極と一部重なるように前記チャネル領域と連続して膜厚の厚い不純物を含まない第1の半導体層がゲート絶縁層上に形成され、
チャネル領域を除く前記第1の半導体層上に不純物を含む第2の半導体層が形成され、
前記第2の半導体層上に前記チャネル領域と自己整合するソース・ドレイン配線が形成され、
前記開口部を除いてパシベーション絶縁層が第1の透明性絶縁基板の最上層に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置である。
この構成は、同一のフォトマスクとハーフトーン露光技術を用いてチャネルエッチ型の絶縁ゲート型トランジスタのチャネルを含む半導体層とソース・ドレイン配線を形成することによって可能となり、これは従来の4枚マスク・プロセスにおけるソース・ドレイン配線工程と半導体層の形成工程と同一である。そして請求項2に記載の液晶表示装置と同様にアクティブ基板はパシベーション絶縁層によって保護されている。
請求項4に記載の液晶表示装置は、
ボトムゲート型の絶縁ゲート型トランジスタがチャネルエッチ型であり、
第1の透明性絶縁基板の一主面上にゲート電極も兼ねる走査線が形成され、
前記走査線上にはゲート絶縁層が形成されるとともに走査線の側面にはゲート絶縁層と異なった絶縁層が形成され、
ゲート電極上にゲート絶縁層を介してチャネルとなる不純物を含まない第1の半導体層が島状に形成され、
前記第1の半導体層上に絶縁ゲート型トランジスタのソース・ドレインを兼ねる一対の不純物を含む第2の半導体層が形成され、
前記ソース・ドレインと第1の透明性絶縁基板上にソース・ドレイン配線が形成され、
前記開口部を除いてパシベーション絶縁層が第1の透明性絶縁基板の最上層に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置である。
この構成は、同一のフォトマスクとハーフトーン露光技術を用いてチャネルエッチ型の絶縁ゲート型トランジスタのチャネルを含む半導体層と走査線を形成することによって可能となり、写真食刻工程数の削減が可能である。また露出した走査線の側面にはゲート絶縁層とは異なった絶縁層が付与されて走査線と信号線との交差が可能になる。そして請求項2に記載の液晶表示装置と同様にアクティブ基板はパシベーション絶縁層によって保護されている。
請求項5に記載の液晶表示装置は、
ボトムゲート型の絶縁ゲート型トランジスタがチャネル上に保護絶縁層を有するエッチストップ型であり、
前記保護絶縁層と一部重なるように絶縁ゲート型トランジスタのソース・ドレインを兼ねる不純物を含む第2の半導体層と耐熱金属層と低抵抗金属層との積層よりなるソース・ドレイン配線が形成され、
前記開口部を除いてパシベーション絶縁層が第1の透明性絶縁基板の最上層に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置である。
この構成により絶縁ゲート型トランジスタのチャネルは保護絶縁層と従来のSiNx層を用いたパシベーション絶縁層との積層で、またソース・ドレイン配線は従来のSiNx層を用いたパシベーション絶縁層によって保護されて液晶表示装置の信頼性が保証される。
請求項6に記載の液晶表示装置は、
ボトムゲート型の絶縁ゲート型トランジスタがチャネル上に保護絶縁層を有するエッチストップ型であり、
前記保護絶縁層と一部重なるように絶縁ゲート型トランジスタのソース・ドレインを兼ねる不純物を含む第2の半導体層と耐熱金属層と低抵抗金属層との積層よりなるソース・ドレイン配線が形成され、
画像表示部外の信号線の電極端子領域を除いて信号線上に感光性有機絶縁層が形成されている請求項1に記載の液晶表示装置である。
この構成により絶縁ゲート型トランジスタのチャネルは保護絶縁層で、また信号線は感光性有機絶縁層によって保護されて液晶表示装置の信頼性が保証されるので、従来のSiNx層を用いたパシベーション絶縁層は不要である。
請求項7に記載の液晶表示装置は、
ボトムゲート型の絶縁ゲート型トランジスタがチャネル上に保護絶縁層を有するエッチストップ型であり、
第1の透明性絶縁基板の一主面上にゲート電極も兼ねる走査線が形成され、
前記走査線上にはゲート絶縁層が形成されるとともに走査線の側面にはゲート絶縁層と異なった絶縁層が形成され、
ゲート電極上にゲート絶縁層を介してチャネルとなる不純物を含まない第1の半導体層が島状に形成され、
前記第1の半導体層上に走査線と自己整合して第1の半導体層よりも幅細く保護絶縁層が形成され、
前記保護絶縁層の一部上と第1の半導体層上と第1の透明性絶縁基板上に絶縁ゲート型トランジスタのソース・ドレインを兼ねる不純物を含む第2の半導体層と耐熱金属層と低抵抗金属層との積層よりなるソース・ドレイン配線が形成され、
画像表示部外の信号線の電極端子領域を除いて信号線上に感光性有機絶縁層が形成されている請求項1に記載の液晶表示装置である。
この構成は、同一のフォトマスクとハーフトーン露光技術を用いてエッチストップ型の絶縁ゲート型トランジスタの保護絶縁層と走査線の形成を形成することによって可能となり、写真食刻工程数の削減が可能である。また露出した走査線の側面にはゲート絶縁層とは異なった絶縁層が付与されて走査線と信号線との交差が可能になる。そして請求項5に記載の液晶表示装置と同様に絶縁ゲート型トランジスタのチャネルは保護絶縁層で、また信号線は感光性有機絶縁層によって保護されており、従来のSiNx層を用いたパシベーション絶縁層は不要である。
請求項8は請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法であって、
第1の透明性絶縁基板の一主面上に走査線と、チヤネルエッチ型の絶縁ゲート型トランジスタのゲート絶縁層と半導体層、及び低抵抗金属層と絶縁層の食刻ガスで除去可能な耐熱金属層との積層よりなるソース・ドレイン配線を形成する工程と、
前記第1の透明性絶縁基板上にパシベーション絶縁層を被着後、画像表示部ではドレイン配線の一部を含む絵素電極形成領域と、画像表示部外の領域では走査線の一部を含む電極端子形成領域と信号線の一部を含む電極端子形成領域に開口部を有するとともに、その断面形状が逆テーパ形状の感光性樹脂パターンを前記パシベーション絶縁層上に形成する工程と、
前記感光性樹脂パターンをマスクとして前記開口部内のパシベーション絶縁層とゲート絶縁層を除去し、前記開口部内に夫々ドレイン配線の一部と第1の透明性絶縁基板、走査線の一部及び信号線の一部を露出する工程と、
前記開口部内に露出している低抵抗金属層を除去して何れも耐熱金属層よりなるドレイン配線の一部と信号線の一部を露出する工程と、
前記第1の透明性絶縁基板上に導電性薄膜層を被着する工程と、
前記感光性樹脂パターンを除去し、前記ドレイン配線の一部を含んで絵素電極形成領域に絵素電極と、前記走査線の一部を含んで走査線の電極端子形成領域に走査線の電極端子、及び前記信号線の一部を含んで信号線の電極端子形成領域に信号線の電極端子を形成する工程とからなることを特徴とする。
このようにチヤネルエッチ型の絶縁ゲート型トランジスタと、低抵抗金属層とパシベーション絶縁層及びゲート絶縁層の食刻ガスで除去可能な耐熱金属層との積層よりなるソース・ドレイン配線を形成し、パシベーション絶縁層を被着後、ドレイン配線の一部を含む絵素電極形成領域と、走査線の一部を含む電極端子形成領域、及び信号線の一部を含む電極端子形成領域に開口部を有するとともにその断面形状が逆テーパ形状の感光性樹脂パターンを形成し、前記感光性樹脂パターンをマスクとして開口部内のパシベーション絶縁層とゲート絶縁層を除去すると、低抵抗金属層がマスクとなってその下地の耐熱金属層(と半導体層とゲート絶縁層)も一部除去されて生じる低抵抗金属層の庇(オーバハング)は低抵抗金属層の除去によって消失し、開口部内には耐熱金属層よりなるドレイン配線の一部と信号線の一部が露出する。さらに絵素電極用薄膜層を被着して、開口部形成に用いられた感光性樹脂パターンを除去すると開口部内には夫々絵素電極と信号線の電極端子が自己整合的に形成される。一方、走査線の電極端子領域の走査線の一部は低抵抗金属層の除去の影響を受けることなく、絵素電極及び信号線の電極端子の形成と同時に走査線の電極端子が自己整合的に形成される。すなわち、上記の構成により走査線と信号線及びドレイン電極との接続のための開口部形成工程と絵素電極形成工程とを1枚のフォトマスクを用いて実施可能な工程削減が実現する。
請求項9は請求項2に記載の液晶表示装置の製造方法であって、半導体層の形成が、
ゲート絶縁層の被着後、不純物を含まない第1の非晶質シリコン層と不純物を含む第2の非晶質シリコン層との積層よりなる島状の半導体層を形成する工程と、
ソース・ドレイン配線を形成する工程と、
前記ソース・ドレイン配線の形成に用いられた感光性樹脂パターンをマスクとしてソース・ドレイン配線間の第2の非晶質シリコン層を選択的に除去する工程とからなることを特徴とする。
この構成によりハーフトーン露光技術を併用することなく、走査線の形成工程、半導体層の島化工程、ソース・ドレイン配線の形成工程、及び開口部と絵素電極の同時形成と、4枚のフォトマスクを用いてアクティブ基板を作製することができる。
請求項10は請求項3に記載の液晶表示装置の製造方法であって、半導体層の形成が、
走査線の形成後、ゲート絶縁層、不純物を含まない第1の非晶質シリコン層、不純物を含む第2の非晶質シリコン層、絶縁層の食刻ガスで除去可能な耐熱金属層及び低抵抗金属層を順次被着する工程と、
ソース・ドレイン配線とチャネル領域に対応し、チャネル形成領域の膜厚がソース・ドレイン配線形成領域の膜厚よりも薄い感光性樹脂パターンを形成する工程と、
前記感光性樹脂パターンをマスクとして前記低抵抗金属層、耐熱金属層、第2の非晶質シリコン層、及び第1の非晶質シリコン層を除去してゲート絶縁層を露出する工程と、
前記感光性樹脂パターンの膜厚を減じてチャネル形成領域の低抵抗金属層を露出する工程と、
前記膜厚を減ぜられた感光性樹脂パターンをマスクとして再びソース・ドレイン配線間の低抵抗金属層と耐熱金属層及び第2の非晶質シリコン層を除去する工程とからなることを特徴とする。
この構成により走査線の形成工程、ハーフトーン露光技術を用いた半導体層とソース・ドレイン配線の同時形成、及び開口部と絵素電極の同時形成と、3枚のフォトマスクを用いてアクティブ基板を作製することができる。
請求項11は請求項4に記載の液晶表示装置の製造方法であって、半導体層の形成が、
走査線用金属薄膜層の被着後、ゲート絶縁層、不純物を含まない第1の非晶質シリコン層、及び不純物を含む第2の非晶質シリコン層を順次被着する工程と、
走査線とゲート電極上の半導体層領域に対応し、半導体層形成領域の膜厚が他の領域よりも厚い感光性樹脂パターンを形成する工程と、
前記感光性樹脂パターンをマスクとして前記第2の非晶質シリコン層、第1の非晶質シリコン層、ゲート絶縁層及び走査線用金属薄膜層を除去して第1の透明性絶縁基板を露出する工程と、
前記感光性樹脂パターンの膜厚を減じて前記第2の非晶質シリコン層を露出する工程と、
前記膜厚を減ぜられた感光性樹脂パターンをマスクとしてゲート電極上に第2の非晶質シリコン層と第1の非晶質シリコン層との積層よりなる半導体層領域を形成して前記ゲート絶縁層を露出する工程と、
露出している走査線の側面にゲート絶縁層とは異なった絶縁層を形成する工程と、
絶縁層の食刻ガスで除去可能な耐熱金属層と、低抵抗金属層との積層よりなるソース・ドレイン配線を形成する工程と、
前記ソース・ドレイン配線の形成に用いられた感光性樹脂パターンをマスクとしてソース・ドレイン配線間の第2の非晶質シリコン層を選択的に除去する工程とからなることを特徴とする。
この構成によりハーフトーン露光技術を用いた走査線と半導体層との同時形成、ソース・ドレイン配線の形成工程、及び開口部と絵素電極の同時形成と、3枚のフォトマスクを用いてアクティブ基板を作製することができる。
請求項12も請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法であって、
第1の透明性絶縁基板の一主面上に走査線と、エッチストップ型の絶縁ゲート型トランジスタのゲート絶縁層と半導体層及び保護絶縁層を形成する工程と、
不純物を含む第2の非晶質シリコン層と、絶縁層の食刻ガスで除去可能な耐熱金属層及び低抵抗金属層を被着する工程と、
ソース・ドレイン配線を形成する工程と、
少なくとも画像表示部内の信号線を保護する絶縁層を形成する工程と、
画像表示部では前記ドレイン配線の一部を含む絵素電極形成領域と、画像表示部外の領域では走査線の一部を含む電極端子形成領域と前記信号線の一部を含む電極端子形成領域に開口部を有するとともに、その断面形状が逆テーパ形状の感光性樹脂パターンを前記第1の透明性絶縁基板上に形成する工程と、
前記感光性樹脂パターンをマスクとして前記開口部内の(信号線を保護する絶縁層と)ゲート絶縁層を除去し、前記開口部内に夫々ドレイン配線の一部と第1の透明性絶縁基板、走査線の一部及び信号線の一部を露出する工程と、
前記開口部内に露出している低抵抗金属層を除去して何れも耐熱金属層よりなるドレイン配線の一部と信号線の一部を露出する工程と、
前記第1の透明性絶縁基板上に導電性薄膜層を被着する工程と、
前記感光性樹脂パターンを除去し、前記ドレイン配線の一部を含んで絵素電極形成領域に絵素電極と、前記走査線の一部を含んで走査線の電極端子形成領域に走査線の電極端子、及び前記信号線の一部を含んで信号線の電極端子形成領域に信号線の電極端子を形成する工程とからなることを特徴とする。
このようにエッチストップ型の絶縁ゲート型トランジスタと、低抵抗金属層とゲート絶縁層の食刻ガスで除去可能な耐熱金属層との積層よりなるソース・ドレイン配線を形成し、パシベーション絶縁層を用いてアクティブ基板を保護するか、あるいは画像表示部外の一部を除いて信号線上にのみ感光性有機絶縁層を有するソース・ドレイン配線を形成して信号線を保護し、ドレイン配線の一部を含む絵素電極形成領域と、走査線の一部を含む電極端子形成領域、及び前記信号線の一部を含む電極端子形成領域に開口部を有するとともにその断面形状が逆テーパ形状の感光性樹脂パターンを形成し、前記感光性樹脂パターンをマスクとして開口部内の(パシベーション絶縁層と)ゲート絶縁層を除去し、さらに開口部内の低抵抗金属層を除去した後、絵素電極用薄膜層を被着してから開口部形成に用いられた感光性樹脂パターンを除去すると開口部内には夫々絵素電極と、走査線の電極端子と、信号線の電極端子が自己整合的に形成される。すなわち、請求項8に記載の製造方法と同様に、この構成により走査線と信号線及びドレイン電極との接続のための開口部形成工程と絵素電極形成工程を1枚のフォトマスクを用いて実施可能な工程削減が実現する。
請求項13は請求項5に記載の液晶表示装置の製造方法であって、
半導体層及び保護絶縁層の形成が、
走査線の形成後、ゲート絶縁層と、不純物を含まない第1の非晶質シリコン層及びチャネルを保護する絶縁層を被着する工程と、
ゲート電極上にゲート電極よりも幅細く保護絶縁層を残して前記第1の非晶質シリコン層を露出する工程とからなり、
信号線を保護する絶縁層が前記第1の透明性絶縁基板上に形成されたパシベーション絶縁層であることを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置の製造方法である。
この構成によりハーフトーン露光技術を併用することなく、走査線の形成工程、保護絶縁層の形成工程、ソース・ドレイン配線の形成工程、及び開口部と絵素電極の同時形成と、4枚のフォトマスクを用いてアクティブ基板を作製することができる。
請求項14は請求項6に記載の液晶表示装置の製造方法であって、
半導体層及び保護絶縁層の形成が、
走査線の形成後、ゲート絶縁層と、不純物を含まない第1の非晶質シリコン層及びチャネルを保護する絶縁層を被着する工程と、
ゲート電極上にゲート電極よりも幅細く保護絶縁層を残して前記第1の非晶質シリコン層を露出する工程とからなり、
信号線を保護する絶縁層が、
ソース・ドレイン配線に対応し、ドレイン配線形成領域と画像表示部外の領域で信号線形成領域の膜厚が画像表示部内の信号線形成領域の膜厚よりも薄い感光性有機絶縁層パターンを形成する工程と、
前記感光性有機絶縁層パターンをマスクとして前記低抵抗金属層、耐熱金属層、第2の非晶質シリコン層、及び第1の非晶質シリコン層を除去してゲート絶縁層と保護絶縁層を露出する工程と、
前記感光性有機絶縁層パターンの膜厚を減じて前記ドレイン配線と前記信号線の一部を露出する工程とからなることを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置の製造方法である。
この構成により走査線の形成工程、保護絶縁層の形成工程、ハーフトーン露光技術を用いたソース・ドレイン配線の形成工程、及び開口部と絵素電極の同時形成と、4枚のフォトマスクを用いてアクティブ基板を作製することができる。
請求項15は請求項7に記載の液晶表示装置の製造方法であって、
半導体層及び保護絶縁層の形成が、
走査線用金属薄膜層と、ゲート絶縁層、不純物を含まない第1の非晶質シリコン層及びチャネルを保護する絶縁層を被着する工程と、
走査線と保護絶縁層に対応し、走査線形成領域の膜厚が保護絶縁層形成領域の膜厚よりも薄い感光性樹脂パターンを形成する工程と、
前記感光性樹脂パターンをマスクとしてチャネルを保護する絶縁層、不純物を含まない第1の非晶質シリコン層、ゲート絶縁層及び走査線用金属薄膜層を除去して第1の透明性絶縁基板を露出する工程と、
前記感光性樹脂パターンの膜厚を減じてチャネルを保護する絶縁層を露出する工程と、
前記膜厚を減ぜられた感光性樹脂パターンをマスクとしてゲート電極上にゲート電極よりも幅細く保護絶縁層を残して前記第1の非晶質シリコン層を露出する工程と、
露出している走査線の側面にゲート絶縁層とは異なった絶縁層を形成する工程とからなり、
信号線を保護する絶縁層が、
ソース・ドレイン配線に対応し、ドレイン配線形成領域と画像表示部外の領域で信号線形成領域の膜厚が画像表示部内の信号線形成領域上の膜厚よりも薄い感光性有機絶縁層パターンを形成する工程と、
前記感光性有機絶縁層パターンをマスクとして前記低抵抗金属層、耐熱金属層、第2の非晶質シリコン層、及び第1の非晶質シリコン層を除去してゲート絶縁層と保護絶縁層を露出する工程と、
前記感光性有機絶縁層パターンの膜厚を減じて前記ドレイン配線と前記信号線の一部を露出する工程とからなることを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置の製造方法である。
この構成によりハーフトーン露光技術を用いた保護絶縁層と走査線の同時形成、ハーフトーン露光技術を用いたソース・ドレイン配線の形成工程、及び開口部と絵素電極の同時形成と、3枚のフォトマスクを用いてアクティブ基板を作製することができる。
請求項16に記載の液晶表示装置は、
走査線と同時に第1の透明性絶縁基板上に形成された対抗電極と、前記対抗電極とは所定の距離を隔てて形成された絵素電極を一対の電極として横方向の電界を制御する請求項1に記載の液晶表示装置である。
この構成により視野角特性の優れたIPS(In−Plain−Switching)方式の液晶表示装置を得ることができる。しかも絵素電極の上に絶縁層が存在しないので表示画像の焼付けが起こり難くなっている。
請求項17に記載の液晶表示装置は、
走査線と同時に第1の透明性絶縁基板上に形成された共通電極と、前記共通電極の一部を含んで対抗電極形成領域に開口部が形成され、前記開口部内の絶縁層が除去されて共通電極の一部と前記第1の透明性絶縁基板が露出し、前記共通電極の一部を含んで対抗電極形成領域に形成された対抗電極と、前記対抗電極と同時に前記対抗電極とは所定の距離を隔てて形成された絵素電極を一対の電極として横方向の電界を制御する請求項1に記載の液晶表示装置である。
この構成により視野角特性の優れたIPS方式の液晶表示装置を得ることができる。しかも絵素電極と対抗電極がともに第1の透明性絶縁基板上に存在するので配向処理が容易となりコントラスト比が向上する。さらにこれら表示電極の上に絶縁層が存在しないので表示画像の焼付けが生じない。
請求項18に記載の液晶表示装置は、
液晶が電圧無印加時に垂直配向する垂直配向型の液晶であり、
第1の透明性絶縁基板上に前記液晶に電圧を印加した時に液晶が配向する方向を規制する第1の配向制御手段が、第1の透明性絶縁基板上に形成された複数の透明導電層よりなる帯状の絵素電極間に位置する絶縁層または第1の透明性絶縁基板であり、
第2の透明性絶縁基板上またはカラーフィルタ上に前記液晶に電圧を印加した時に液晶が配向する方向を規制する第2の配向制御手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置である。
この構成により帯状の絵素電極間に存在するパシベーション絶縁層とゲート絶縁層との積層構成、ゲート絶縁層またはパシベーション絶縁層、あるいは絵素電極のスリット(切れ目)が垂直配向型液晶の配向制御手段として機能して液晶セルが配向分割される結果、TN型液晶表示装置よりも視野角の優れたVA(Vertical−Align:垂直配向)方式の液晶表示装置を得ることができる。配向制御能力は上記の順に強く、従って応答速度もこの順に速くなる。
請求項19は請求項18に記載の液晶表示装置の製造方法であって、逆テーパ形状の感光性樹脂パターンの断面形状を制御することにより、前記帯状の絵素電極の大きさを制御することを特徴とする。
この構成により帯状の絵素電極間に位置する絶縁層の側面に形成される透明導電層を少なくして、第1の配向制御手段による配向の規制力を強めることが出来て液晶表示装置の応答速度を早くすることが可能となる。
以上述べたように本発明の中心に位置するのは、第1の透明性絶縁基板上に走査線と絶縁ゲート型トランジスタの少なくともゲート絶縁層と半導体層を形成する工程と、低抵抗金属層と、(パシベーション絶縁層と)ゲート絶縁層の食刻ガスで除去可能な耐熱金属層との積層よりなるソース・ドレイン配線を形成する工程と、少なくとも絶縁ゲート型トランジスタのチャネルと信号線を保護する手段を付与した後、ドレイン電極の一部を含んで絵素電極形成領域と、走査線の一部を含む電極端子形成領域及び信号線の一部を含む電極端子形成領域に開口部を有するとともに、その断面形状が逆テーパ形状の感光性樹脂パターンを形成する工程と、前記感光性樹脂パターンをマスクとして前記開口部内の(パシベーション絶縁層と)ゲート絶縁層を除去し、前記開口部内に夫々ドレイン配線の一部と第1の透明性絶縁基板、走査線の一部及び信号線の一部を露出する工程と、前記開口部内に露出している低抵抗金属層を除去して何れも耐熱金属層よりなるドレイン配線の一部と信号線の一部を露出する工程と、前記第1の透明性絶縁基板上に絵素電極となる導電性薄膜層を被着する工程と、前記感光性樹脂パターンを除去し、前記ドレイン配線の一部を含んで絵素電極形成領域に絵素電極と、前記走査線の一部を含んで走査線の電極端子形成領域に走査線の電極端子、及び前記信号線の一部を含んで信号線の電極端子形成領域に信号線の電極端子を形成する工程を有する液晶表示装置の製造方法であって、この構成によりゲート絶縁層への開口部形成工程と絵素電極形成工程を1枚のフォトマスクで処理する工程削減を実現している。
加えてソース・ドレイン配線が耐熱金属層と低抵抗金属層との積層で構成されるので信号線の低抵抗化が容易なだけでなく、中間導電層を含む従来の3層構成よりも簡素化されてさらなる低コスト化にも寄与する。
チャネルエッチ型の絶縁ゲート型トランジスタを用いたアクティブ基板においてはハーフトーン露光技術を用いなくても4枚のフォトマスクでアクティブ基板を作製することが可能となり、高価なハーフトーンマスクと厳しいパターン寸法の管理が不要な、換言すれば安定した歩留と品質が保証される。またエッチストップ型の絶縁ゲート型トランジスタを用いたアクティブ基板においても従来のパシベーション絶縁層を用いればハーフトーン露光技術を用いなくても4枚のフォトマスクでアクティブ基板を作製することが可能であり、
さらにはパターン精度の変動が容認されるハーフトーン露光技術を用いて4枚のフォトマスクでアクティブ基板を作製することも可能である。
そしてチャネルエッチ型の絶縁ゲート型トランジスタにおいては半導体層とソース・ドレイン配線を形成するために、あるいは走査線と半導体層を形成するために、またエッチストップ型の絶縁ゲート型トランジスタにおいては走査線と保護絶縁層を形成するためにハーフトーン露光技術を併用すれば、さらに製造工程の削減が推進されて3枚のフォトマスクでアクティブ基板を作製することが可能となり、製造コストの低減が大きく前進する。ハーフトーン露光技術を用いて半導体層とソース・ドレイン配線を同時に形成するチャネルエッチ型の絶縁ゲート型トランジスタでは厳しいチャネル長の管理は依然として必要であるが、ハーフトーン露光技術を用いて走査線と半導体層を同時に形成するチャネルエッチ型の絶縁ゲート型トランジスタとエッチストップ型の絶縁ゲート型トランジスタでのチャネル長の管理は容易である。
絵素電極のリフトオフ形成の支障にならない膜質と膜厚であれば、絵素電極用導電性薄膜への制約は緩く、透明性の有無は問題にはならない。ただし、図示はしないが反射型液晶表示装置の反射電極は鏡面反射を回避するため、その下地が平坦ではなく、深さが0.5〜1μm前後の凹凸面が必要である。多くの場合、このような凹凸面を有する下地の形成には感光性アクリル樹脂が用いられており、コスト的な課題はあるが、ゲート絶縁層の被着後、適切な時期に感光性アクリル樹脂層を用いて凹凸を形成しておき、本発明によるゲート絶縁層への開口部形成工程と、反射電極か透過電極の何れかの絵素電極形成工程を1枚のフォトマスクを用いてアクティブ基板を作製してもプロセス削減の目的は達せられる。
より合理的には透明導電層と(アルカリ反応抑制のためのMo薄膜層と)高反射率のAL薄膜層を被着した後、本発明による透明導電層と(Mo薄膜層と)AL薄膜層との積層よりなる擬似絵素電極形成を行い、微細加工技術により透明電極形成領域の(Mo薄膜層と)AL薄膜層を選択的に除去すると良いが、詳細な説明は別の機会に譲る。
本発明はこのように透過型だけでなく反射型や半透過型の液晶表示装置においても有効であり、さらに製造方法は同一であるが、透明導電性の絵素電極のパターン形状を変えることによりTN型液晶モードに限らず、IPS型液晶モード及び垂直配向型の液晶モードに対しても有効であり、工程削減と視野角改善の2つの課題を同時に克服できる優れた技術である。
本発明の要件は上記の説明からも明らかなように低抵抗金属層と(パシベーション絶縁層と)ゲート絶縁層の食刻ガスで除去可能な耐熱金属層との積層よりなるソース・ドレイン配線を形成し、少なくとも絶縁ゲート型トランジスタのチャネルと信号線を保護する手段を付与した後、その断面形状が逆テーパ形状の感光性樹脂パターンを用いて前記(パシベーション絶縁層と)ゲート絶縁層を含む絶縁層への開口部を形成し、前記開口部内に露出する電極部位の低抵抗金属層を除去して前記電極の下地の耐熱金属層を露出し、さらに前記感光性樹脂パターンをリフトオフ材として絵素電極用導電性薄膜層のリフトオフにより絵素電極を形成することで、開口部形成工程と開口部形成工程に続く絵素電極形成工程を1枚のフォトマスクでハーフトーン露光技術を用いずに処理可能とした点にある。したがって、それ以外の構成に関しては走査線、ゲート絶縁層等の材質や膜厚等が異なった液晶表示装置あるいはその製造方法の差異も本発明の範疇に属することは自明であり、本発明が透過型だけでなく反射型や半透過型の液晶表示装置においても有効であることも証明されている。また絶縁ゲート型トランジスタの半導体層も非晶質シリコン層に限定されないことも明らかである。
本発明の実施例を図1〜図18に基づいて説明する。図1に本発明の実施例1に係るアクティブ基板の平面図を示し、図2に図1(g)のA−A’線上とB−B’線上及びC−C’線上の製造工程の断面図を示す。同様に実施例2は図3と図4、実施例3は図5と図6、実施例4は図7と図8、実施例5は図9と図10、実施例6は図11と図12で夫々アクティブ基板の平面図と製造工程断面図を示し、実施例7は図13、実施例8は図14、実施例9は図15で夫々アクティブ基板の平面図と断面図を示し、実施例10は図16でアクティブ基板の平面図と断面図を示すとともに図17と図18でアクティブ基板の製造工程断面図の一部を示す。なお従来例と同一の部位については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
実施例1では先ずガラス基板2の一主面上にSPT等の真空製膜装置を用いて膜厚0.1〜0.3μm程度の第1の金属層として例えばCr等の耐熱性の高い金属層を被着し、図1(a)と図2(a)に示したように微細加工技術によりゲート電極11Aも兼ねる走査線11と蓄積容量線16を選択的に形成する。走査線の低抵抗化のためにALを用いるならば先述したように耐熱金属層でサンドイッチすると良い。あるいは本発明の信号線と同様に、適当な耐熱金属層と、耐熱性を高めるためTa,Nd,Hf,Ni等の金属を添加したAL合金との積層も可能である。その理由は後述する。
次に従来例と同様にガラス基板2の全面にPCVD装置を用いてゲート絶縁層となる第1のSiNx層30、不純物をほとんど含まず絶縁ゲート型トランジスタのチャネルとなる第1の非晶質シリコン層31、及び不純物を含み絶縁ゲート型トランジスタのソース・ドレインとなる第2の非晶質シリコン層33と3種類の薄膜層を、例えば0.3−0.2−0.05μm程度の膜厚で順次被着する。そして図1(b)と図2(b)に示したように微細加工技術によりゲート電極11A上に第2の非晶質シリコン層33Aと第1の非晶質シリコン層31Aとの積層よりなる島状の半導体層をゲート11電極Aよりも幅広く選択的に形成してゲート絶縁層30を露出する。
引き続きソース・ドレイン配線の形成工程ではSPT等の真空製膜装置を用いて膜厚0.1μm程度の耐熱金属層として例えばMoSi2等の薄膜層34と、膜厚0.3μm程度の低抵抗金属層としてAL薄膜層35を順次被着する。本発明において、耐熱金属層34は後続の開口部形成工程で用いられる弗素系のガスで除去可能な性質が必要であり、例えばMo,W,Ta等の高融点金属とその合金、あるいはCr,Ti,Mo,W,Ta等の高融点金属のシリサイドが選ばれる。また低抵抗金属層としてCuを用いても良い。そして図1(c)と図2(c)に示したように微細加工技術により感光性樹脂パターンを用いてこれらの薄膜層を順次食刻し、ゲート電極11Aと一部重なるように耐熱金属層34Aと低抵抗金属層35Aとの積層よりなり絶縁ゲート型トランジスタのソース配線も兼ねる信号線12と、ゲート電極11Aと一部重なるように耐熱金属層34Bと低抵抗金属層35Bとの積層よりなる絶縁ゲート型トランジスタのドレイン電極21を選択的に形成するが、ここでは前記感光性樹脂パターンを用いて引き続き第2の非晶質シリコン層33A及び第1の非晶質シリコン層31Aを順次食刻し、第1の非晶質シリコン層31Aは0.05〜0.1μm程度残して食刻する。この時点で第2の非晶質シリコン層よりなるソース33Sとドレイン33Dの分離がなされる。
ソース・ドレイン配線12,21の形成後は従来の4枚マスク・プロセスと同様にガラス基板2の全面に透明性の絶縁層として0.3μm程度の膜厚の第2のSiNx層を被着してパシベーション絶縁層37とした後、図1(d)と図2(d)に示したようにドレイン電極21の一部を含んで絵素電極形成領域と、画像表示部外の領域で走査線11の一部5上、信号線12の一部6上及び蓄積容量線16の一部上に夫々開口部38,63,64及び65を有するとともに開口部の断面形状が逆テーパ状の感光性樹脂パターン88を形成する。開口部の断面形状が逆テーパ状となるような感光性樹脂としては、例えば東京応化社の製品名TELR−N101PMを用いると良い。その膜厚としては1μm以上あれば十分である。この製品は有機EL表示装置の製作にあたり有機EL発光層形成後の電極形成工程においてその逆テーパ状の断面形状のため、被着される電極用の導電性薄膜層を開口部内に分断して形成する用途で開発された化学増幅型のネガ型感光性樹脂であって、通常のポジ型感光性樹脂との差異は現像処理に先立ち、露光後に加熱処理(Post−Exposure−Bake)が必要な特質を有する。
そして感光性樹脂パターン88をマスクとして前記開口部内のパシベーション絶縁層37とゲート絶縁層30を選択的に除去してガラス基板2を露出するとともに上記の電極を露出する。通常、SiNxよりなるパシベーション絶縁層37とゲート絶縁層30の除去には弗素系のガス、例えばCF4またはSF6、あるいはこれらの混合ガスを用いたドライエッチングが行われる。既に述べたように耐熱金属34A,34Bも弗素系のガスでエッチングされるが、低抵抗金属層35A,35BはALとCuの何れであっても弗素系のガスではエッチングされないので、図2(d)に示したように低抵抗金属層35A,35Bがマスクとして機能し、低抵抗金属層35A下層の耐熱金属層34Aとゲート絶縁層30A及び低抵抗金属層35Bの下層の耐熱金属層34Bとゲート絶縁層30Aが過食刻(オーバーエッチ)によりサイドエッチされる結果、開口部64,38内に露出している低抵抗金属層35A,35Bの周囲には庇(オーバハング)が形成されてしまう。このような庇(オーバハング)が存在していると後続の絵素電極形成工程で絵素電極が段切れを起こし、低抵抗金属層35Aと信号線の電極端子との接続及び低抵抗金属層35Bと絵素電極との接続ができなくなる。さらに低抵抗金属層35A,35BにALを選択した場合にはアルカリ性のレジスト剥離液を用いたレジスト剥離処理において透明導電層であるITO,IZOが還元されて消失しまう不具合も回避困難である。
そこで図1(e)と図2(e)に示したように開口部64,38内の低抵抗金属層35A,35Bを除去して庇(オーバーハング)を消去するとともに、これらの電極の下地である耐熱金属層34A,34Bを露出する工程が本発明の重要なポイントである。この低抵抗金属層35A,35Bの除去には下地の熱金属層34A,34Bとの選択比を高めるために、低抵抗金属層35にALを選択した場合には燐酸溶液またはアルカリ性の水酸化ナトリウム(NaOH)あるいは水酸化カリウム(KOH)水溶液、Cuを選択した場合には塩化第2鉄(FeCl3)または塩化第2銅(CuCl2)水溶液を用いる事が望ましい。ただし、実施例1と実施例3を除いて実施例2、実施例4、実施例5及び実施例6では開口部内の耐熱金属層34A,34Bの下部には非晶質シリコン層が存在するので、非晶質シリコン層が消失しないように水酸化ナトリウム(NaOH)や水酸化カリウム(KOH)水溶液を使用してはならない。さらに低抵抗金属層35にAL、耐熱金属層34にMoを選択した組合せでは、燐酸を用いたALの除去時にMoが消失しないように添加剤として硝酸を加えてはならないし、膜減りに対応してMoの膜厚を厚くする必要性もある。その点前記のシリサイドやTaではそのような制約が無く使い易い材料である。例えばMoシリサイド(MoSi2)は非晶質シリコン層31,33と同様に弗素系ガスのドライエッチ、または弗酸に少量の硝酸を混合した食刻液で食刻可能であり、初期のTFT型液晶表示装置には耐熱金属層として用いられていたが、現在のTFT液晶分野では余り知られていない導電性材料である。
このようにして開口部64,38内に耐熱金属層34A,34Bを露出した後、図1(f)と図2(f)に示したようにSPT等の真空製膜装置を用いてガラス基板2上に透明導電層91として膜厚0.1μm程度のITO,IZOまたはこれらの混晶体を被着する。一般的にも透明導電層91の膜厚がこのように薄いことに加えて、断面形状が逆テーパ状であるので感光性樹脂パターン88の側面に被着される透明導電層91は極めて少ない。
したがってレジスト剥離液あるいは特定の有機溶剤を用いて感光性樹脂パターン88の除去を行うと、感光性樹脂パターン88の側面から溶融が始まり、感光性樹脂パターン88上の透明導電層91は容易に剥離してしまう。所謂リフトオフである。その結果、図1(g)と図2(g)に示したようにドレイン電極21の一部を構成する耐熱金属層34Bを含んで絵素電極形成領域である開口部38内のガラス基板2上には絵素電極22と、走査線の一部5を含んで開口部63内には走査線の電極端子5Aと、信号線の一部である耐熱金属層34Aを含んで開口部64内には信号線の電極端子6Aと、蓄積容量線16の一部を含んで開口部65内には番号は付与しないが蓄積容量線の電極端子が自己整合的に形成されるとともに、ガラス基板2上のパシベーション絶縁層37Aが露出し、アクティブ基板2の製造工程を終える。なお、透明導電層91の被着時に膜質改善のため基板加熱を行うならば、余り加熱温度が高いとリフトオフ工程で感光性樹脂パターン88が変質し、その除去が困難になるので、基板加熱温度は150℃以下が望ましい。
このようにして得られたアクティブ基板2とカラーフィルタ9を貼り合わせて液晶パネル化し、本発明の実施例1が完了する。蓄積容量15の構成に関しては図1(c)に示したようにドレイン配線21と蓄積容量線16とがゲート絶縁層30Aを介して平面的に重なることで構成している例(右下がり斜線部50)を例示している。蓄積容量15の構成に関してもう一つの構成例は実施例2で説明する。なお実施例1では従来例と同様にアクティブ基板2の外周部に開口部66を形成して透明導電性の短絡線40を得ており、透明導電性の電極端子5A,6Aと短絡線40との間を細長いストライプ状に形成することにより高抵抗化して静電気対策用の高抵抗としている。
開口部内のパシベーション絶縁層37とゲート絶縁層30を除去し終えた時点で開口部63,65内には夫々走査線の一部5と蓄積容量線16の一部が露出するが、耐熱性の観点から走査線材料にALが単独で用いられる事はなく、通常Ti,Cr等の耐熱金属層との積層で構成されるため、これらの耐熱金属層を上層、ALを下層とする積層で走査線を構成し、開口部63の大きさを走査線の一部5よりも小さくしておけば開口部63内にはこれらの耐熱金属層が露出するので走査線の一部5がALよりなる低抵抗金属層35A,35Bの除去時に除去されて消滅する事は無い。この場合には走査線の一部5の大きさが走査線の電極端子の大きさを決定する設計指針を与える。また耐熱性の高い、例えばTa,Nd等を数%含んだアルミニウム合金、AL(Ta)やAL(Nd)の単層で形成された走査線11では上記のAL層の除去時にこれらのAL合金が除去されて消滅するので、この場合にはソース・ドレイン配線12,21と同様に、適当な耐熱金属層を下層、前記AL合金を上層とする積層で走査線11を構成しておけば、走査線の電極端子は前記の耐熱金属層よりなる走査線の一部5を含んで形成されて電気的な接触は確保されるし、開口部63の大きさが走査線の一部5よりも大きくても構わない。このように走査線11の構成もソース・ドレイン配線12,21と同様に2層構成で良いので、従来例の3層構成の電極線と比較すると製膜材料が削減され、製膜装置も製膜室あるいは製膜装置台数を削減できるので生産コストも下がる。
なお実施例1では蓄積容量線16が単位絵素内を横切るため、蓄積容量線16に対応して開口部38は上下に2分割され、自動的に絵素電極22も2分割して形成される。したがって図1(d)に示したようにドレイン電極21は二つの開口部38内に露出するように蓄積容量線16の一部と重なって形成しているが、蓄積容量線16を不要とする蓄積容量15を構成することも可能で、その場合は開口部38と絵素電極22を分割する必要は無くなり、それに対応した設計パターンは実施例2で紹介する。
実施例1ではこのようにハーフトーン露光技術を併用する事無く、走査線の形成工程、半導体層の島化工程、ソース・ドレイン配線の形成工程、及び本発明の主目的である開口部と絵素電極の同時形成と、4枚のフォトマスクを用いてアクティブ基板を作製している。従って各パターニング工程における寸法管理は通常のレベルで良いと言う副次的な効果も得られる。また走査線と信号線の積層構成も2層で良く、低コスト化に少なからず貢献するが、後者は本発明の全ての実施例において発揮される特徴でもある。
従来の4枚マスク・プロセスと同様にハーフトーン露光技術を用いて半導体層の島化工程とソース・ドレイン配線の形成工程を1枚のフォトマスクで処理すれば、さらなる製造工程の削減が可能となるので、それを実施例2で説明する。
実施例2では図3(d)と図4(d)に示したようにパシベーション絶縁層37を被着するまでは従来例の4枚マスク・プロセスと同一の製造工程を進行する。従来例との差異はソース・ドレイン配線12,21が耐熱金属層34A,34Bと低抵抗金属層35A,35Bの2層構成で良い事である。そして蓄積容量線16が不要なデバイス構成、アレイ設計を選択しているが、この構成ではソース・ドレイン配線12,21の形成時に前段の走査線11上に蓄積電極72を配置する必要がある。
続いて図3(e)と図4(e)に示したようにドレイン電極21の一部と蓄積電極72の一部を含んで絵素電極形成領域と、画像表示部外の領域で走査線11の一部5上及び信号線12の一部6上に夫々開口部38,63及び64を有するとともに、開口部の断面形状が逆テーパ状の感光性樹脂パターン88を形成する。そして感光性樹脂パターン88をマスクとして開口部内のパシベーション絶縁層37とゲート絶縁層30を選択的に除去してガラス基板2を露出するとともにこれらの電極を露出する。この時実施例1とは若干異なり、開口部64内に露出している信号線12の一部である低抵抗金属層35Aの下層の耐熱金属層34Aと第2の非晶質シリコン層33Sと第1の非晶質シリコン層31Aとゲート絶縁層30A、開口部38内に露出しているドレイン配線21の一部である低抵抗金属層35Bの下層の耐熱金属層34Bと第2の非晶質シリコン層33Dと第1の非晶質シリコン層31Aとゲート絶縁層30A、及び開口部38内に露出している蓄積電極72の一部である低抵抗金属層35Cの下層の耐熱金属層34Cと第2の非晶質シリコン層33C(図示せず)と第1の非晶質シリコン層31Aとゲート絶縁層30Aも過食刻によりサイドエッチングされて、結果的には実施例1と同様に開口部64,38内に露出している低抵抗金属層35A,35B及び35Cの周囲には庇(オーバーハング)が出来てしまう。
そこで実施例1と同様に開口部64,38内の低抵抗金属層35A,35B及び35Cを除去し、その庇(オーバーハング)を解消するとともに、図3(f)と図4(f)に示したようにこれらの電極の下地である耐熱金属層34A,34B及び34Cを露出する。
このようにして開口部64,38内に耐熱金属層34A,34B及び34Cを露出した後、図3(g)と図4(g)に示したようにSPT等の真空製膜装置を用いてガラス基板2上に透明導電層91として膜厚0.1μm程度のITO,IZOまたはこれらの混晶体を被着する。
さらにレジスト剥離液等を用いて前記感光性樹脂パターン88を除去して、感光性樹脂パターン88上の透明導電層91のリフトオフを行う。そして図3(h)と図4(h)に示したようにドレイン電極21の一部である耐熱金属層34Bと蓄積電極72の一部である耐熱金属層34Cを含んで絵素電極形成領域である開口部38内のガラス基板2上には絵素電極22と、走査線の一部5を含んで開口部63内には走査線の電極端子5Aと、信号線の一部である耐熱金属層34Aを含んで開口部64内には信号線の電極端子6Aを自己整合的に形成するとともに、ガラス基板2上のパシベーション絶縁層37Aを露出してアクティブ基板2の製造工程を終える。
このようにして得られたアクティブ基板2とカラーフィルタ9を貼り合わせて液晶パネル化し、本発明の実施例2が完了する。蓄積容量15の構成に関しては図3(h)に示したように、前段の走査線11(の突起部)と、走査線11上に形成された低抵抗金属層35Cと耐熱金属層34Cとの積層よりなる蓄積電極72がゲート絶縁層30Aと第1の非晶質シリコン層31Eと第2の非晶質シリコン層33E(何れも図示せず)を介して平面的に重なることで構成している例(右下がり斜線部52)を例示しているが、走査線11と同時に蓄積容量線16を形成して実施例1と同一のパターンデザインとすることも可能である。実施例2では蓄積容量15を構成する絶縁層がゲート絶縁層30Aと膜厚が0.2μmと厚い第1の非晶質シリコン層31Eとの積層で構成されるために、実施例1と比較すると同じ蓄積容量15を得るためには蓄積電極72の面積を大きくする必要があり、その分、開口率が小さくなる欠点のあることが分かるであろう。静電気対策は実施例1と同一である。
実施例2では上記のように走査線の形成工程、ハーフトーン露光技術を用いた半導体層とソース・ドレイン配線の同時形成、及び本発明の主目的である開口部と絵素電極の同時形成と、3枚のフォトマスクを用いてアクティブ基板を作製することが可能となり、製造コストの低減が大きく前進する。また実施例1と同様に走査線と信号線の積層構成も2層で良い。ただし、ハーフトーン露光技術を用いるのでソース・ドレイン配線のパターン寸法管理が厳しい課題は避けられない。そこで特許文献3の特開2005−17669号公報に記載されているように、ハーフトーン露光技術を用いて走査線の形成工程と半導体層の形成工程を1枚のフォトマスクで処理しても3枚のフォトマスクを用いてアクティブ基板を作製することが可能であるので、それを実施例3で説明する。
実施例3では先ずガラス基板2の一主面上にSPT等の真空製膜装置を用いて膜厚0.1〜0.3μm程度の第1の金属層として例えばCr等の耐熱性の高い金属層を被着する。以降の説明で明確になるが実施例3においてはゲート絶縁層の側面に形成される絶縁層に有機絶縁層を選択する場合には走査線材料に制約は無いが、ゲート絶縁層の側面に形成される絶縁層に陽極酸化層を選択する場合にはその陽極酸化層が絶縁性を保有する必要がある。その場合にはTa単体では抵抗が高いこととAL単体では耐熱性が乏しいことを考慮すると、走査線の低抵抗化のために走査線の構成としてはTa/AL/Ta,Ta/AL(Ta,Zr,Nd)合金等の積層構成が選択可能であるが、Taに換えてシリサイドを用いても良い。なおAL(Ta,Zr,Nd)は数%以下のTa,ZrあるいはNd等が添加された耐熱性の高いAL合金を意味している。
次にガラス基板2の全面にPCVD装置を用いてゲート絶縁層となる第1のSiNx層30、不純物をほとんど含まず絶縁ゲート型トランジスタのチャネルとなる第1の非晶質シリコン層31、及び不純物を含み絶縁ゲート型トランジスタのソース・ドレインとなる第2の非晶質シリコン層33と3種類の薄膜層を例えば、0.3−0.2−0.05μm程度の膜厚で順次被着し、特許文献3に記載されている通り、図5(a)と図6(a)に示したようにゲート電極11A上の半導体層形成領域83Aの膜厚が例えば2μmで、走査線11の形成領域83B(11)と蓄積容量線16の形成領域83B(16)の膜厚が1μmであるような感光性樹脂パターン83A,83Bをハーフトーン露光技術により形成し、感光性樹脂パターン83A,83Bをマスクとして第2の非晶質シリコン層33、第1の非晶質シリコン層31、ゲート絶縁層30及び第1の金属層を選択的に除去してガラス基板2を露出する。走査線11の線幅は抵抗値の関係から最小でも通常10μm以上のパターン幅を有するので83B(中間調領域または灰色領域)を形成するためのフォトマスクの作製もその仕上がり寸法の精度管理も比較的容易である。
続いて酸素プラズマ等の灰化手段により上記感光性樹脂パターン83A,83Bを1μm以上膜減りさせると感光性樹脂パターン83Bが消失して第2の非晶質シリコン層33B(図示せず),33Cが露出すると共に半導体層形成領域にのみ膜減りした感光性樹脂パターン83Cをそのまま残すことができる。感光性樹脂パターン83C(黒領域)、すなわち半導体層領域のパターン幅はソース・ドレイン配線間の寸法にマスク合わせ精度を加算したものであるから、ソース・ドレイン配線間を4〜6μm、合わせ精度を±3μmとすると最小でも10〜12μmとなり寸法精度としては厳しいものではない。しかしながらレジストパターン83Aから83Cへの変換時にレジストパターンが等方的に1μm膜減りすると、寸法が2μm小さくなるだけでなく、後続のソース・ドレイン配線形成時のマスク合わせ精度が1μm小さくなって±2μmとなり、前者よりも後者の影響がプロセス的には厳しいものとなる。したがって上記酸素プラズマ処理でもパターン寸法の変化を抑制するため異方性を強めることが望ましく、RIE方式、さらに高密度のプラズマ源を有するICP方式やTCP方式の酸素プラズマ処理がより望ましい。あるいはレジストパターンの寸法変化量を見込んでレジストパターン83Aのパターン寸法をあらかじめ大きく設計する、またはレジストパターン83Aのパターン寸法が大きくなるような露光・現像条件でプロセス的な対応を図る等の処置が望ましい。
そして図5(b)と図6(b)に示したように膜減りした感光性樹脂パターン83Cをマスクとしてゲート電極11A上に第2の非晶質シリコン層33Aと第1の非晶質シリコン層31Aとの積層よりなる島状の半導体層領域を形成し、走査線11上のゲート絶縁層30Aと蓄積容量線16上のゲート絶縁層30Bを露出する。
前記感光性樹脂パターン83Cを除去した後、図示はしないが走査線11と蓄積容量線16の側面に絶縁層76を形成する。これらの電極線に+(プラス)電位を与えてエチレングリコールを主成分とする化成液中にガラス基板2を浸透させて陽極酸化を行うと、これらの電極線がTaとAL系の合金との積層であれば、例えば化成電圧200Vで0.3μmの膜厚を有する酸化タンタル(Ta2O5)とアルミナ(AL2O3)の積層が形成される。電着の場合には非特許文献1の月間「高分子加工」2002年11月号にも示されているようにペンダントカルボシキル基含有ポリイミド電着液を用いて電着電圧数Vで0.3μmの膜厚を有するポリイミド樹脂層が形成される。なお絶縁層76を形成することによりゲート絶縁層30Aとゲート絶縁層30Bに生じているピンホールが絶縁層であるアルミナまたはポリイミド樹脂で埋められるため、走査線11及び蓄積容量線16と後述する信号線12との間の層間短絡が抑制される副次的な効果もあることを忘れてはならない。
ソース・ドレイン配線の形成工程ではSPT等の真空製膜装置を用いて膜厚0.1μm程度の耐熱金属層として例えばMoSi2等の薄膜層34と、膜厚0.3μm程度の低抵抗金属層としてAL薄膜層35を順次被着する。そして図5(c)と図6(c)に示したように微細加工技術により感光性樹脂パターンを用いてこれらの薄膜層を順次食刻し、ゲート電極11Aと一部重なるように耐熱金属層34Aと低抵抗金属層35Aとの積層よりなり絶縁ゲート型トランジスタのソース配線も兼ねる信号線12と、ゲート電極11Aと一部重なるように耐熱金属層34Bと低抵抗金属層35Bとの積層よりなる絶縁ゲート型トランジスタのドレイン電極21を選択的に形成するが、ここでも前記感光性樹脂パターンをマスクとして第2の非晶質シリコン層33A及び第1の非晶質シリコン層31Aを順次食刻し、第1の非晶質シリコン層31Aは0.05〜0.1μm程度残して食刻することで第2の非晶質シリコン層よりなるソース33Sとドレイン33Dの分離を行う。
ソース・ドレイン配線12,21の形成後は実施例1と同様にガラス基板2の全面に透明性の絶縁層として0.3μm程度の膜厚の第2のSiNx層を被着してパシベーション絶縁層37とした後、図5(d)と図6(d)に示したようにドレイン電極21の一部を含んで絵素電極形成領域と、画像表示部外の領域で走査線11の一部5上、信号線12の一部6上及び蓄積容量線16の一部上に夫々開口部38,63,64及び65を有するとともに、開口部の断面形状が逆テーパ状の感光性樹脂パターン88を形成する。そして感光性樹脂パターン88をマスクとして開口部63,65内のパシベーション絶縁層37とゲート絶縁層30A及び開口部38,64内のパシベーション絶縁層37を選択的に除去して走査線11の一部5、蓄積容量線16の一部、ドレイン電極21の一部とガラス基板2及び信号線12の一部6を露出する。この時、低抵抗金属層35A,35Bがマスクとして機能し、低抵抗金属層35Aの下層の耐熱金属層34Aと,低抵抗金属層34Bの下層の耐熱金属層34Bがサイドエッチされる結果、開口部64,38内に露出している低抵抗金属層35A,35Bの周囲には庇(オーバハング)が形成されてしまう。
そこで図5(e)と図6(e)に示したように開口部64,38内の低抵抗金属層35A,35Bを除去してその庇(オーバーハング)を解消するとともに、これらの電極の下地である耐熱金属層34A,34Bを露出する。
このようにして開口部64,38内に耐熱金属層34A,34Bを露出した後、図5(f)と図6(f)に示したようにSPT等の真空製膜装置を用いてガラス基板2の全面に透明導電層91として膜厚0.1μm程度のITO,IZOまたはこれらの混晶体を被着する。
さらにレジスト剥離液等を用いて感光性樹脂パターン88を除去して、透明導電層91のリフトオフを行う。そして図5(g)と図6(g)に示したようにドレイン電極21の一部である耐熱金属層34Bを含んで絵素電極形成領域である開口部38内のガラス基板2上には絵素電極22と、走査線の一部5を含んで開口部63内には走査線の電極端子5Aと、信号線の一部である耐熱金属層34Aを含んで開口部64内には信号線の電極端子6Aと、蓄積容量線16の一部を含んで開口部65内には番号は付与しないが蓄積容量線の電極端子を自己整合的に形成するとともに、ガラス基板2上にパシベーション絶縁層37Aを露出してアクティブ基板2の製造工程を終える。
このようにして得られたアクティブ基板2とカラーフィルタ9を貼り合わせて液晶パネル化し、本発明の実施例3が完了する。蓄積容量15の構成は実施例1と同一であるが、走査線11と蓄積容量線16の側面に絶縁層を形成するためにこれらの電極線はアクティブ基板2の外周部に延長して形成されているので、短絡線40はアクティブ基板2の外周部でこれらの電極線と短絡する。従って走査線の電極端子5Aと短絡線40との間を細いパターンで接続することは意味が無く、静電気対策として走査線側では短絡線40のパターン幅を細くして高抵抗化している。
チャネル上に保護絶縁層を有するエッチストップ型の絶縁ゲート型トランジスタを採用しても本発明による開口部形成と絵素電極の同時形成は可能であり、それを実施例4〜実施例6で説明する。エッチストップ型の絶縁ゲート型トランジスタでは保護絶縁層によるチャネル保護能力が高く、ソース・ドレイン配線材の低抵抗金属層としてCuを用いた場合、Cuの食刻液によるチャネルへの汚染を阻止できる効果が高い特質を有する。
実施例4でも先ず、ガラス基板2の一主面上にSPT等の真空製膜装置を用いて膜厚0.1〜0.3μm程度の第1の金属層として例えばCr等の耐熱性の高い金属層を被着し、図7(a)と図8(a)に示したように微細加工技術によりゲート電極11Aも兼ねる走査線11と蓄積容量線16を選択的に形成する。低抵抗化のために走査線を耐熱金属層とAL合金との積層で構成することも既に述べた通りであり、実施例2と同様に蓄積容量線16を必要としないデバイス設計も可能である。
次にガラス基板2の全面にPCVD装置を用いてゲート絶縁層となる第1のSiNx層30、不純物をほとんど含まず絶縁ゲート型トランジスタのチャネルとなる第1の非晶質シリコン層31、及びチャネルを保護する絶縁層となる第2のSiNx層32と3種類の薄膜層を例えば、0.3−0.05−0.1μm程度の膜厚で順次被着し、図7(b)と図8(b)に示したように微細加工技術によりゲート電極11A上の第2のSiNx層をゲート電極11Aよりも幅細く選択的に残して保護絶縁層(エッチストップ層またはチャネル保護層)32Dとし、第1の非晶質シリコン層31を露出する。
続いて同じくPCVD装置を用いて全面に不純物として例えば燐を含む第2の非晶質シリコン層33を例えば0.05μm程度の膜厚で被着した後、引き続きSPT等の真空製膜装置を用いて膜厚0.1μm程度の耐熱金属層として例えば,Moシリサイド等の薄膜層34と、低抵抗金属層として膜厚0.3μm程度のAL薄膜層35を順次被着し、図7(c)と図8(c)に示したように微細加工技術により感光性樹脂パターンを用いて保護絶縁層32Dと一部重なるように耐熱金属層34Aと低抵抗金属層35Aの積層よりなり絶縁ゲート型トランジスタのソース配線も兼ねる信号線12と、保護絶縁層32Dと一部重なるように耐熱金属層34Bと低抵抗金属層35Bの積層よりなる絶縁ゲート型トランジスタのドレイン電極21を選択的に形成する。この時点で第2の非晶質シリコン層33はソース33Sとドレイン33Dに分離される。
Moシリサイドは先述したように非晶質シリコン層31,33と同様に弗素系ガスのドライエッチ食刻が可能であり、この選択的パターン形成は前記感光性樹脂パターンをマスクとしてAL薄膜層35を食刻した後、ソース・ドレイン電極12,21間のMoシリサイド薄膜層34と第2の非晶質シリコン層33を除去して保護絶縁層32Dを露出するとともに、その他の領域では第1の非晶質シリコン層31をも除去してゲート絶縁層30を露出することによってなされる。このようにチャネルの保護層である第2のSiNx層32Dが存在して第2の非晶質シリコン層33の食刻が自動的に終了することからこの製法で作製される絶縁ゲート型トランジスタはエッチストップ型と呼称される。
ソース・ドレイン配線12,21の形成後は実施例2と同一の製造工程を進行し、ガラス基板2の全面に透明性の絶縁層として0.3μm程度の膜厚の第2のSiNx層を被着してパシベーション絶縁層37とした後、図7(d)と図8(d)に示したようにドレイン電極21の一部を含んで絵素電極形成領域と、画像表示部外の領域で走査線11の一部5上、信号線12の一部6上及び蓄積容量線16の一部上に夫々開口部38,63,64及び65を有するとともに、開口部の断面形状が逆テーパ状の感光性樹脂パターン88を形成する。そして感光性樹脂パターン88をマスクとして開口部内のパシベーション絶縁層37とゲート絶縁層30を選択的に除去してガラス基板2を露出するとともにこれらの電極を露出する。この時実施例2と同様に、開口部64内に露出している信号線の一部である低抵抗金属層35Aの下層の耐熱金属層34Aと第2の非晶質シリコン層33Sと第1の非晶質シリコン層31Aとゲート絶縁層30A及び開口部38内に露出しているドレイン配線21の一部である低抵抗金属層35Bの下層の耐熱金属層34Bと第2の非晶質シリコン層33Dと第1の非晶質シリコン層31Aとゲート絶縁層30Aも過食刻によりサイドエッチングされて、開口部64,38内に露出している低抵抗金属層35A及び35Bの周囲には庇(オーバハング)が形成されてしまう。
そこで図7(e)と図8(e)に示したように開口部64,38内の低抵抗金属層35A,35Bを除去してその庇(オーバーハング)を解消するとともに、これらの電極の下地である耐熱金属層34A,34Bを露出する。
このようにして開口部64,38内に耐熱金属層34A,34Bを露出した後、図7(f)と図8(f)に示したようにSPT等の真空製膜装置を用いてガラス基板2の全面に透明導電層91として膜厚0.1μm程度のITO,IZOまたはこれらの混晶体を被着する。
さらにレジスト剥離液等を用いて感光性樹脂パターン88を除去して、透明導電層91のリフトオフを行う。そして図7(g)と図8(g)に示したようにドレイン電極21の一部である耐熱金属層34Bを含んで絵素電極形成領域である開口部38内のガラス基板2上には絵素電極22と、走査線の一部5を含んで開口部63内には走査線の電極端子5Aと、信号線の一部である耐熱金属層34Aを含んで開口部64内には信号線の電極端子6Aと、蓄積容量線16の一部を含んで開口部65内には番号は付与しないが蓄積容量線の電極端子を自己整合的に形成するとともに、ガラス基板2上にパシベーション絶縁層37Aを露出してアクティブ基板2の製造工程を終える。
このようにして得られたアクティブ基板2とカラーフィルタ9を貼り合わせて液晶パネル化し、本発明の実施例4が完了する。蓄積容量15の構成は図7(c)に示したようにドレイン配線21と蓄積容量線16とがゲート絶縁層30Aと第1の非晶質シリコン層31Eと第2の非晶質シリコン層33E(何れも図示せず)を介して平面的に重なることで構成している例(右下がり斜線部50)を例示しており、第1の非晶質シリコン層31Eの膜厚差を除けば実施例2と酷似している。ただし実施例2では蓄積容量15は絵素電極22(ドレイン配線21)に接続された蓄積電極72と前段の走査線11との間で構成している。なお静電気対策は実施例1と同一である。
実施例4でもこのようにハーフトーン露光技術を併用する事無く、走査線の形成工程、保護絶縁層の形成工程、ソース・ドレイン配線の形成工程、及び本発明の主目的である開口部と絵素電極の同時形成と、4枚のフォトマスクを用いてアクティブ基板を作製している。
従って各パターニング工程における寸法管理は通常のレベルで良いと言う副次的な効果も得られる。
アクティブ基板2を保護するために形成されるSiNxよりなるパシベーション絶縁層37は原理的には最低限、絶縁ゲート型トランジスタのチャネルと信号線12を保護すれば良く、ドレイン電極21を保護する必要性は無い。なぜならば液晶セルに印可される駆動信号は基本的に交流であり、カラーフィルタ9の対向面上に形成された対向電極14と絵素電極22との間には直流電圧成分が少なくなるように対向電極14の電圧は画像検査時に調整されるので(フリッカ低減調整)、信号線12上にのみ直流成分が流れないように絶縁層を形成しておけば良いからである。従って製造工程の途中でチャネル上に保護絶縁層が形成されるエッチストップ型の絶縁ゲート型トランジスタを用いたアクティブ基板ではパシベーション絶縁層37に換えて新規な構成のパシベーションが可能であり、それによって製造コストの低減が見込まれる。
実施例5では図9(b)と図10(b)に示したように微細加工技術によりゲート電極11A上の第2のSiNx層をゲート電極11Aよりも幅細く選択的に残して保護絶縁層32Dとし、第1の非晶質シリコン層31を露出するまでは実施例4と同一の製造工程を進行する。
続いて同じくPCVD装置を用いて全面に不純物として例えば燐を含む第2の非晶質シリコン層33を例えば0.05μm程度の膜厚で被着した後、引き続きSPT等の真空製膜装置を用いて膜厚0.1μm程度の耐熱金属層として例えば,Moシリサイド等の薄膜層34と、低抵抗金属層として膜厚0.3μm程度のAL薄膜層35を順次被着し、図9(c)と図10(c)に示したように微細加工技術により感光性有機絶縁層パターン86A,86Bを用いて保護絶縁層32Dと一部重なるように耐熱金属層34Aと低抵抗金属層35Aの積層よりなり絶縁ゲート型トランジスタのソース配線も兼ねる信号線12と、保護絶縁層32Dと一部重なるように耐熱金属層34Bと低抵抗金属層35Bの積層よりなる絶縁ゲート型トランジスタのドレイン電極21を選択的に形成する。
この選択的パターン形成は感光性有機絶縁層パターン86A,86BをマスクとしてAL薄膜層35を食刻した後、ソース・ドレイン電極12,21間のMoシリサイド薄膜層34と第2の非晶質シリコン層33を除去して保護絶縁層32Dを露出するとともに、その他の領域では第1の非晶質シリコン層31をも除去してゲート絶縁層30を露出することによってなされる。この結果、第2の非晶質シリコン層33はソース33Sとドレイン33Dに分離される。
この時に先行特許文献2の特開2004−317685号公報にも記載されているように、信号線12の形成領域86Aの膜厚が例えば3μmで、ドレイン電極21の形成領域86B(21)と画像表示部外の領域で信号線の一部6の形成領域86B(6)の膜厚が1.5μmであるような感光性有機絶縁層パターン86A,86Bをハーフトーン露光技術により形成しておくことが実施例5の重要な特徴である。従来例で説明したように1回の露光処理と2回の食刻処理で形成するソース・ドレイン配線12,21と比較すると実施例5におけるソース・ドレイン配線12,21は1回の露光処理と1回の食刻処理で形成されるためにパターン幅の変動する要因が少なく、ソース・ドレイン配線12,21の寸法管理も、ソース・ドレイン配線12,21間の寸法管理も従来のハーフトーン露光技術よりはパターン精度の管理が容易である。またチャネルエッチ型の絶縁ゲートトランジスタとエッチストップ型の絶縁ゲート型トランジスタを比較すると後者のON電流を決定するのは保護絶縁層32Dの寸法であってソース・ドレイン配線12,21間の寸法ではないことからもプロセス管理がさらに容易となる。
ソース・ドレイン配線12,21の形成後、酸素プラズマ等の灰化手段により上記感光性有機絶縁層パターン86A,86Bを1.5μm以上膜減りさせると感光性有機絶縁層パターン86Bが消失し、図9(d)と図10(d)に示したようにドレイン電極21と信号線の一部6が露出すると共に信号線12上にのみ膜減り感光性樹脂パターン86Cをそのまま残すことができるが、上記酸素プラズマ処理で感光性有機絶縁層パターン86Cが等方的に膜減りして感光性樹脂パターン86Cのパターン幅が細くなると信号線12の上面が露出し、液晶表示装置としての信頼性が低下するので酸素プラズマ処理には既に述べたようにRIE方式、さらに高密度のプラズマ源を有するICP方式やTCP方式の酸素プラズマ処理で異方性を強めてパターン寸法の変化を抑制することが望ましい。
この後は実施例1と同様で、図9(e)と図10(e)に示したようにドレイン電極21の一部を含んで絵素電極形成領域と、画像表示部外の領域で走査線11の一部5上、信号線12の一部6上及び蓄積容量線16の一部上に夫々開口部38,63,64及び65を有するとともに、開口部の断面形状が逆テーパ状の感光性樹脂パターン88を形成する。実施例1〜実施例4と異なりガラス基板2上にパシベーション絶縁層37は製膜されていないので、ドレイン電極21の一部と信号線12の一部6は前記開口部38,64を形成した時点で既に開口部内に露出しているが、感光性樹脂パターン88をマスクとして開口部38,63,64及び65内のゲート絶縁層30を選択的に除去してガラス基板2を露出するとともに走査線11の一部5と蓄積容量線16の一部も露出する。この時実施例2と同様に、開口部64内に露出している信号線12の一部である低抵抗金属層35Aの下層の耐熱金属層34Aと第2の非晶質シリコン層33Sと第1の非晶質シリコン層31Aとゲート絶縁層30A及び開口部38内に露出しているドレイン配線21の一部である低抵抗金属層35Bの下層の耐熱金属層34Bと第2の非晶質シリコン層33Dと第1の非晶質シリコン層31Aとゲート絶縁層30Aも過食刻によりサイドエッチングされて、開口部64,38内に露出している低抵抗金属層35A及び35Bの周囲には庇(オーバハング)が形成されてしまう。
そこで図9(f)と図10(f)に示したように開口部64,38内の低抵抗金属層35A,35Bを除去してその庇(オーバーハング)を解消するとともに、これらの電極の下地である耐熱金属層34A,34Bを露出する。
このようにして開口部64,38内に耐熱金属層34A,34Bを露出した後、図9(g)と図10(g)に示したようにSPT等の真空製膜装置を用いてガラス基板2の全面に透明導電層91として膜厚0.1μm程度のITO,IZO又はこれらの混晶体を被着する。
さらにレジスト剥離液等を用いて感光性樹脂パターン88を除去して、感光性樹脂パターン88上の透明導電層91のリフトオフを行う。そして図9(h)と図10(h)に示したようにドレイン電極21の一部である耐熱金属層34Bを含んで絵素電極形成領域である開口部38内のガラス基板2上には絵素電極22と、走査線の一部5を含んで開口部63内には走査線の電極端子5Aと、信号線の一部である耐熱金属層34Aを含んで開口部64内には信号線の電極端子6Aと、蓄積容量線16の一部を含んで開口部65内には番号は付与しないが蓄積容量線の電極端子を自己整合的に形成するとともに、ガラス基板2上にゲート絶縁層30A、保護絶縁層32D、感光性有機絶縁層パターン86C及びその表面が低抵抗金属層35Bであるドレイン電極21の大部分を露出し、アクティブ基板2の製造工程を終える。
このようにして得られたアクティブ基板2とカラーフィルタ9を貼り合わせて液晶パネル化し、本発明の実施例5が完了する。実施例5では感光性有機絶縁層パターン86Cは液晶に接しているので、感光性有機絶縁層はノボラック系の樹脂を主成分とする通常の感光性樹脂ではなく、純度が高く主成分にアクリル樹脂やポリイミド樹脂を含む耐熱性の高い感光性有機絶縁層を用いることが大切であり、材質によっては加熱することで流動化して信号線12の側面を覆うように構成することも可能で、この場合には液晶パネルとして信頼性が一段と向上する。蓄積容量15の構成に関しては実施例1と同一のパターンデザインであり、図9(d)に示したようにドレイン配線21と蓄積容量線16とがゲート絶縁層30Aと第1の非晶質シリコン層31Eと第2の非晶質シリコン層33E(何れも図示せず)を介して平面的に重なることで構成している例(右下がり斜線部50)を例示しており、実施例2と同様に蓄積容量15を構成する絶縁層がゲート絶縁層30Aと不純物を含まない第1の非晶質シリコン層31Eとの積層で構成されるが、第1の非晶質シリコン層31Eの膜厚が実施例2では0.2μmと厚く実施例5では0.05μmと薄いので、実施例2と比較すると実施例5では開口率の低下は小さい。静電気対策は実施例1と同一である。
実施例5ではこのように走査線の形成工程、保護絶縁層の形成工程、ハーフトーン露光技術を用いてソース・ドレイン配線の形成工程、及び本発明の主目的である開口部と絵素電極の同時形成と、4枚のフォトマスクを用いてアクティブ基板を作製することが可能となり、製造コストの低減が前進する。また実施例2と同様にハーフトーン露光技術は必要であるが、実施例2と異なりパターン寸法の変動が容認されるので各パターニング工程における寸法管理は通常のレベルで良いと言う副次的な効果も得られる。さらに走査線と信号線の積層構成も2層で良い。
したがって、先行特許文献4の特開2005−19664号公報に記載されているようにハーフトーン露光技術を用いて走査線の形成工程と保護絶縁層の形成工程を1枚のフォトマスクで処理すれば、さらなる製造工程の削減が可能となるので、それを実施例6で説明する。
実施例6では先ずガラス基板2の一主面上にSPT等の真空製膜装置を用いて膜厚0.1〜0.3μm程度の第1の金属層として例えばCr等の耐熱性の高い金属層を被着する。実施例6においても実施例3と同様にゲート絶縁層の側面に形成される絶縁層に有機絶縁層を選択する場合には走査線材料に制約は無いが、ゲート絶縁層の側面に形成される絶縁層に陽極酸化層を選択する場合にはその陽極酸化層が絶縁性を保有する必要がある。
次にガラス基板2の全面にPCVD装置を用いてゲート絶縁層となる第1のSiNx層30、不純物をほとんど含まず絶縁ゲート型トランジスタのチャネルとなる第1の非晶質シリコン層31、及びチャネルを保護する絶縁層となる第2のSiNx層32と3種類の薄膜層を例えば、0.3−0.05−0.1μm程度の膜厚で順次被着し、特許文献4に記載されている通り、図11(a)と図12(a)に示したようにゲート電極11A上の保護絶縁層形成領域81Aの膜厚が例えば2μmで、走査線11の形成領域81B(11)と蓄積容量線16の形成領域81B(16)の膜厚が1μmであるような感光性樹脂パターン81A,81Bをハーフトーン露光技術により形成し、感光性樹脂パターン81A,81Bをマスクとして保護絶縁層32、第1の非晶質シリコン層31、ゲート絶縁層30及び第1の金属層を選択的に除去してガラス基板2を露出する。走査線11の線幅は抵抗値の関係から最小でも通常10μm以上のパターン幅を有するので81B(中間調領域または灰色領域)を形成するためのフォトマスクの作製もその仕上がり寸法の精度管理も比較的容易である。
続いて酸素プラズマ等の灰化手段により上記感光性樹脂パターン81A,81Bを1μm以上膜減りさせると感光性樹脂パターン81Bが消失して第2のSiNx層32A(図示せず),32Bが露出すると共に保護絶縁層形成領域にのみ膜減りした感光性樹脂パターン81Cをそのまま残すことができる。感光性樹脂パターン81C(黒領域)、すなわち保護絶縁層のパターン幅はソース・ドレイン配線間の寸法にマスク合わせ精度を加算したものであるから、ソース・ドレイン配線間を4〜6μm、合わせ精度を±3μmとすると最小でも10〜12μmとなり寸法精度としては厳しいものではない。しかしながらレジストパターン81Aから81Cへの変換時にレジストパターンが等方的に1μm膜減りすると、寸法が2μm小さくなるだけでなく、後続のソース・ドレイン配線形成時のマスク合わせ精度が1μm小さくなって±2μmとなり、前者よりも後者の影響がプロセス的には厳しいものとなる。したがって上記酸素プラズマ処理でもパターン寸法の変化を抑制するため異方性を強めることが望ましく、RIE方式、さらに高密度のプラズマ源を有するICP方式やTCP方式の酸素プラズマ処理がより望ましい。あるいはレジストパターンの寸法変化量を見込んでレジストパターン81Aのパターン寸法をあらかじめ大きく設計する、またはレジストパターン81Aのパターン寸法が大きくなるような露光・現像条件でプロセス的な対応を図る等の処置が望ましい。
そして図11(b)と図12(b)に示したように膜減りした感光性樹脂パターン81Cをマスクとして第2のSiNx層32Bをゲート電極11Aよりも幅細く選択的に食刻して保護絶縁層32Dとするとともに走査線11上の第1の非晶質シリコン層31Aと、蓄積容量線16上の第1の非晶質シリコン層31Bを露出する。
前記感光性樹脂パターン81Cを除去した後、図示はしないが実施例3と同様に走査線11と蓄積容量線16の側面に絶縁層76を形成する。これらの電極線に+(プラス)電位を与えてエチレングリコールを主成分とする化成液中にガラス基板2を浸透させて陽極酸化を行うと、これらの電極線がTaとAL系の合金との積層であれば、例えば化成電圧200Vで0.3μmの膜厚を有する酸化タンタル(Ta2O5)とアルミナ(AL2O3)の積層が形成される。電着の場合にはペンダントカルボシキル基含有ポリイミド電着液を用いて電着電圧数Vで0.3μmの膜厚を有するポリイミド樹脂層が形成される。なお絶縁層76を形成することにより走査線11及び蓄積容量線16と後述するソース配線12との間の層間短絡が抑制される副次的な効果はここでも変わらない。
その後、PCVD装置を用いてガラス基板2の全面に不純物として例えば燐を含む第2の非晶質シリコン層33を例えば0.05μm程度の膜厚で被着した後、引き続きSPT等の真空製膜装置を用いて膜厚0.1μm程度の耐熱金属層として例えば,Moシリサイド等の薄膜層34と、低抵抗金属層として膜厚0.3μm程度のAL薄膜層35を順次被着し、図11(c)と図12(c)に示したように微細加工技術により感光性有機絶縁層パターン86A,86Bを用いて保護絶縁層32Dと一部重なるように第2の非晶質シリコン層33Sと耐熱金属層34Aと低抵抗金属層35Aとの積層よりなる絶縁ゲート型トランジスタのソース配線も兼ねる信号線12と、保護絶縁層32Dと一部重なるように第2の非晶質シリコン層33Dと耐熱金属層34Bと低抵抗金属層35Bとの積層よりなる絶縁ゲート型トランジスタのドレイン電極21を選択的に形成する。
この時に実施例5と同様に信号線12の形成領域86Aの膜厚が例えば3μmで、ドレイン電極21の形成領域86B(21)と画像表示部外の領域で信号線の一部6の形成領域86B(6)の膜厚が1.5μmであるような感光性有機絶縁層パターン86A,86Bをハーフトーン露光技術により形成しておく必要がある。
ソース・ドレイン配線12,21の形成後、酸素プラズマ等の灰化手段により上記感光性有機絶縁層パターン86A,86Bを1.5μm以上膜減りさせて感光性有機絶縁層パターン86Bを除去し、図11(d)と図12(d)に示したようにドレイン電極21と信号線の一部6を露出すると共に信号線12上にのみ膜減りした感光性有機絶縁層パターン86C(12)をそのまま残す。
さらに図11(e)と図12(e)に示したようにドレイン電極21の一部を含んで絵素電極形成領域と、画像表示部外の領域で走査線11の一部5上、信号線12の一部6上及び蓄積容量線16の一部上に夫々開口部38,63,64及び65を有するとともに、開口部の断面形状が逆テーパ状の感光性樹脂パターン88を形成する。そして感光性樹脂パターン88をマスクとして開口部63,65内のゲート絶縁層30A,30Bを選択的に除去して走査線11の一部5と蓄積容量線16の一部を露出する。開口部の形成当初から開口部38内にはドレイン電極21の一部とガラス基板2が露出し、開口部64内には信号線12の一部6とガラス基板2が露出している。この時、低抵抗金属層35A,35Bがマスクとして機能し、低抵抗金属層35Aの下層の耐熱金属層34Aと第2の非晶質シリコン33S及び低抵抗金属層35Bの下層の耐熱金属層34Bと第2の非晶質シリコン33Dがサイドエッチされる結果、開口部64,38内に露出している低抵抗金属層35A,35Bの周囲には庇(オーバハング)が形成されてしまう。
そこで図11(f)と図12(f)に示したように開口部64,38内の低抵抗金属層35A,35Bを除去してその庇(オーバーハング)を解消するとともに、これらの電極の下地である耐熱金属層34A,34Bを露出する。
このようにして開口部64,38内に耐熱金属層34A,34Bを露出した後、図11(g)と図12(g)に示したようにSPT等の真空製膜装置を用いてガラス基板2の全面に透明導電層91として膜厚0.1μm程度のITO,IZO又はこれらの混晶体を被着する。
さらにレジスト剥離液等を用いて感光性樹脂パターン88を除去して、感光性樹脂パターン88上の透明導電層91のリフトオフを行う。そして図11(h)と図12(h)に示したようにドレイン電極21の一部である耐熱金属層34Bを含んで絵素電極形成領域である開口部38内のガラス基板2上には絵素電極22と、走査線の一部5を含んで開口部63内には走査線の電極端子5Aと、信号線の一部である耐熱金属層34Aを含んで開口部64内には信号線の電極端子6Aと、蓄積容量線16の一部を含んで開口部65内には番号は付与しないが蓄積容量線の電極端子を自己整合的に形成するとともに、ガラス基板2上にゲート絶縁層30A、30B、保護絶縁層32D、感光性有機絶縁層パターン86C及びその表面が低抵抗金属層35Bであるドレイン電極21の大部分を露出し、アクティブ基板2の製造工程を終える。
このようにして得られたアクティブ基板2とカラーフィルタ9を貼り合わせて液晶パネル化し、本発明の実施例6が完了する。実施例6でも感光性有機絶縁層パターン86Cは液晶に接しているので、純度が高く主成分にアクリル樹脂やポリイミド樹脂を含む耐熱性の高い感光性有機絶縁層を用いることが大切である。蓄積容量15の構成は実施例5と同一であるが、実施例3と同様に走査線11と蓄積容量線16の側面に絶縁層を形成するためにこれらの電極線はアクティブ基板2の外周部に延長して形成されているので、短絡線40はアクティブ基板2の外周部でこれらの電極線と短絡する。従って走査線の電極端子5Aと短絡線40との間を細いパターンで接続することは意味が無く、静電気対策として走査線側では短絡線40のパターン幅を細くして高抵抗化している。
実施例6ではこのようにハーフトーン露光技術を用いて走査線と保護絶縁層の同時形成、ハーフトーン露光技術を用いてソース・ドレイン配線の形成工程、及び本発明の主目的である開口部と絵素電極の同時形成と、3枚のフォトマスクを用いてアクティブ基板を作製することが可能となり、製造コストの低減が大きく前進する。また実施例5と同様にパターン寸法の変動が容認されるので各パターニング工程における寸法管理は通常のレベルで良いと言う副次的な効果も得られる。さらに走査線と信号線の積層構成も2層で良い。
実施例1〜実施例6に記載のアクティブ基板2は、透明導電性の絵素電極22とカラーフィルタ9上の同じく透明導電性の対向電極14を電極とする液晶モードを採用したTN型の液晶表示装置において用いられるアクティブ基板であった。アクティブ基板2の製造方法を変えることなく、開口部(絵素電極)のパターンを変更することにより、視野角の広い液晶表示装置を得ることができるので、それを以下の実施例で説明する。
TN型液晶とは異なり、アクティブ基板2上に形成された対抗電極と、前記対抗電極とは所定の距離を隔てて形成された絵素電極を一対の電極として液晶セルの横方向の電界を制御する表示デバイスがIPS型液晶パネルである。この基本構成を本発明のアクティブ基板2に適用すると、図13(a)と図13(b)に示したように、走査線11と同時に形成されて蓄積容量線も兼ね、画素内に帯状の分岐を有する対抗電極16と、ドレイン電極21に接続された帯状の絵素電極22とが所定の距離を隔てていれば良い。なお絵素電極22は透明導電性のITOまたはIZOである必然は無く、膜厚0.1μm程度の金属層でも支障は無いが、金属層を用いる場合は静電気対策用の短絡線40の形成には別途工夫が必要である。そしてIPS型液晶パネルではカラーフィルタ9上に対向電極14は不要である。なお72はソース・ドレイン配線12・21と同時に形成された蓄積電極で、蓄積容量線16とゲート絶縁層30Aを含む絶縁層を介して蓄積容量15を構成しているが、実施例2と同様に前段の走査線11上に蓄積電極72を形成することも可能であり、この場合対抗電極16は蓄積容量線を兼ねないので共通電極と称することも多い。また複数本の帯状に形成された絵素電極22は蓄積電極72を介して相互接続している。
対抗電極16と絵素電極22の夫々の電極内の電位は一定であり、液晶セルの横方向の電界で液晶分子を制御するので、対抗電極16と絵素電極22との間隙が表示に寄与する領域であって、既に述べたように対抗電極16と絵素電極22は例え透明導電層で構成されていても基本的には表示に寄与しない。従ってIPS型液晶パネルでは開口率を高めるためにはこれらの電極のパターン幅は細い方が望ましいが、対抗電極16と絵素電極22との間隙はTN型液晶パネルでは液晶セルのセル厚(ギャプ)に相当し、これらの電極パターン幅のばらつきは輝度斑の主原因となるので自ずと変動の影響が少ない電極パターン幅が選択され、現状では4μmを下回ることは無い。
図13(a)と図13(b)は実施例1で説明した4枚マスク・プロセスに対応したデバイスであるが、その他の実施例で説明した4枚マスク・プロセスと3枚マスク・プロセスに対応したアレイ設計も可能である。本発明のIPS型液晶パネルの特徴の一つして表示画像の焼付けが少ないことが挙げられる。製膜温度が低くゲート絶縁層30Aと比較するとパシベーション絶縁層37Aは膜質が劣悪で電荷の蓄積が生じやすいにも関わらず、数年前のIPS液晶パネルでも図示はしないがTN型液晶パネルと同様にアクティブ基板2の全面にパシベーション絶縁層37を保護膜として形成していた。このため、長期あるいは高温の動作時に表示画像の焼付けが生じ易く、品質管理上は長時間のエージング試験及びそれに続く良品検査を必要としていた。これに対して本発明によるIPS型液晶パネルでは全ての実施例において絵素電極22上には絶縁層が存在せず、実施例1〜実施例4に記載のプロセスに対応したIPS型液晶パネルでは対抗電極16上にパシベーション絶縁層37Aとゲート絶縁層30Aまたは30Bとの積層が存在し、実施例5と実施例6に記載のプロセスに対応したIPS型液晶パネルでは対抗電極16上にゲート絶縁層30Aまたは30Bのみが存在しているので、パシベーション絶縁層37Aの寄与率が低くなる構成毎に表示画像の焼付けが改善される。特に実施例5と実施例6に記載のプロセスに対応したIPS型液晶パネルではパシベーション絶縁層37Aが存在せず、表示画像の焼付けを原理的にも皆無とすることができる。
実施例7に記載のIPS型液晶パネルは、対抗電極16上にゲート絶縁層30Aまたは30B、あるいはゲート絶縁層30Aまたは30Bとパシベーション絶縁層37Aとの積層が存在するので対抗電極16と絵素電極22とが短絡するような不良は発生し難いが、これらの電極は、異なった導電性薄膜層が異なったフォトマスクを用いて形成されるのでマスク合わせに関連した絵素電極22と対抗電極16の電極間距離の変動に伴う輝度斑には細心の注意が必要である。
対抗電極を蓄積容量線と別の導電性部材で構成することも可能であり、実施例1の4枚マスク・プロセスに対応した別のIPS型液晶パネル向けアクティブ基板2を図14(a)と図14(b)で実施例8として説明する。なお、その他の実施例2〜実施例6に記載のプロセスに対応したアレイ設計も容易である。このためには図示はしないが蓄積容量線(共通電極)16の一部を含んで対抗電極形成領域に開口部38,63,64及び65とは別の開口部を形成し、前記開口部内の絶縁層を除去して蓄積容量線16の一部とガラス基板2を露出し、絵素電極22と同時に前記蓄積容量線16の一部を含んで対抗電極形成領域に対抗電極16Aを形成すれば良い。ここでも実施例7と同様に絵素電極22は透明導電性のITOまたはIZOである必然は無く、膜厚0.1μm程度の金属層でも支障は無い。
実施例8では絵素電極22と対抗電極16Aがともにガラス基板2上に存在するのでこれらの電極の間に段差も無く、配向処理が容易となりコントラスト比が向上する利点も生まれる。さらにこれら表示電極の上には絶縁層が一切存在しないので、既に説明したように電荷の蓄積が起こらず、表示画像の焼付けが生じない。
実施例8に記載のIPS型液晶パネルは、対抗電極16Aと絵素電極22が同一の導電性薄膜層で構成され、しかも同一のフォトマスクを用いて形成されるため、実施例7に記載のIPS型液晶パネルとは逆の振舞いを示し、これらの電極間の距離の変動は殆ど発生しない代わりに、これらの電極が短絡するような不良が発生し易いので、ダスト・異物の介在による電極の短絡と断線には細心の注意が必要となる。
TN型液晶やIPS型液晶と異なり配向処理の不要な垂直配向型液晶では液晶セルを構成する2枚のガラス板の少なくとも一方、好ましくは双方のガラス基板に配向規制手段としての構成部材が必要である。垂直配向型液晶パネルでは商品化の開発当初は感光性樹脂を用いてアクティブ基板2とカラーフィルタ9の双方に幅10μm、高さ2〜3μm程度の突起と称する断面形状が蒲鉾型の構造物を作製していたが、突起の形成工程も液晶パネルの製造コストに反映するので、アクティブ基板2の構成を工夫して製造工程が増加しないように技術開発が進められている。
既に説明したように本発明によるアクティブ基板の製造方法では絵素電極をアクティブ基板上の絶縁層に設けた開口部内に自己整合的に形成することができる。そこで絵素電極に隣り合って存在する絶縁層を突起として利用することにより、実施例1で説明した4枚マスク・プロセスに対応して図15(a)と図15(b)に示したような垂直配向型液晶パネル向けのアクティブ基板2を得ることができる。ここでも72はソース・ドレイン配線12,21と同時に形成された蓄積電極で、蓄積容量線(共通電極)16とゲート絶縁層30Aを含む絶縁層を介して蓄積容量15を構成する。また複数本の帯状に形成された透明導電性の絵素電極22−1〜22−4も蓄積電極72を介して相互接続している。無論、その他の実施例2〜実施例6に記載のプロセスでも対応したアレイ設計をすることは容易である。多くの場合、帯状に分割された絵素電極22−1〜22−4のほぼ中央部分に対応して、アクティブ基板2と対向するカラーフィルタ9の一主面上に形成された透明導電性の対向電極14上にその断面形状が蒲鉾型の感光性樹脂よりなる突起60が形成されている。そして絵素電極22−1と22−3及び絵素電極22−2と22−4とは夫々略直交している。この結果、液晶セルに電圧が印加されて液晶分子が傾斜する方向を4方向に配向分割して視野角の拡大を実現している。配向規制力は低下するが、突起60に変えて対向電極14を部分的に除去してスリット(切れ目)とすることも可能である。
実施例1、実施例2及び実施例4に記載のプロセスに対応した構成では絵素電極22−1と絵素電極22−2との間隙は図15(b)に示したようにパシベーション絶縁層37Aとゲート絶縁層30Aとの積層よりなる蒲鉾型の構造物となり、実施例3に記載のプロセスに対応した構成ではパシベーション絶縁層37Aのみの蒲鉾型の構造物となり、実施例5に記載のプロセスに対応した構成ではゲート絶縁層30Aのみの蒲鉾型の構造物となり、実施例6に記載のプロセスに対応した構成ではガラス基板2となり構造物が存在しない。すなわち実施例6に記載のプロセスに対応した構成では上記の間隙は突起状の構造物ではなく、絵素電極のスリット(切れ目)となっている。蒲鉾型の構造物よりなる突起の側面に沿って垂直配向型の液晶分子は垂直に配向するので、この側面が長い程、すなわち蒲鉾型の構造物の高さが高ければ高い程、あるいは蒲鉾型の構造物の傾斜が緩やかであればある程、液晶分子の規制力が強くなる。従って応答速度も実施例1、実施例2及び実施例4に記載のプロセスに対応した構成が最も速く、次いで実施例3または実施例5に記載のプロセスに対応した構成、そして実施例6に記載のプロセスに対応した構成の順に遅くなる。
本発明によるアクティブ基板の製造方法では、その断面形状が逆テーパ状の感光性樹脂パターン88を用いたリフトオフにより絵素電極22をアクティブ基板2上の絶縁層に設けた開口部内に自己整合的に形成している。一般的に感光性樹脂パターンの断面形状は、膜厚、プリベーク時間、露光量及び現像時間によって変化することが知られており、通常はレジストメーカの推奨値を参考にして標準的なレシピを使用者が決定している。
その断面形状が逆テーパ状の感光性樹脂パターン88を用いた場合、逆テーパ角度が大きいと、感光性樹脂パターン88の上層部がマスク機能を発揮して、開口部38,63,64及び65内に被着される透明導電層91の製膜領域をわずかではあるが制御できる。これを実施例10として図16(a)の平面図と図16(b)の断面図で示す。しかしながら開口部の周囲の絶縁層はゲート絶縁層30Aとパシベーション絶縁層37Aとの積層、またはゲート絶縁層30Aあるいはパシベーション絶縁層37Aのみであり、これらの絶縁層の厚みと、開口部形成時のドライエッチによるテーパ角度を考慮してもその制御量は最大でも1μmを超えることは無く、TN型液晶表示装置とIPS型液晶表示装置においては、絵素電極22の大きさをある程度制御できたとしても表示画像の画質に与える影響は皆無に近い。
然るに垂直配向型液晶表示装置においては絵素電極22−1と22−2及び絵素電極22−3と22−4の間に形成されたこれらの絶縁層よりなる蒲鉾型の構造物は突起として作用するので、突起側面に絵素電極が形成されると液晶セルに電圧が印加されて液晶分子が傾斜する時に、突起による配向規制力が液晶セルの電界と逆向きに作用すると考えられる。
そこで図17(a)『実施例1における図2(d)と同一工程』に示した感光性樹脂パターン88の形成工程において感光性樹脂パターン88の逆テーパ角度が大きくなるようなプリベークの温度と時間、露光条件、露光後加熱条件、現像条件等の調整により、図17(b)に示したようにより大きな逆テーパ角度を有する感光性樹脂パターン88aを形成する。上述した理由により図17(a)と図17(b)に対応して得られる絵素電極22−1と22−2は図18(a)と図18(b)との比較からも分かるようにゲート絶縁層30Aとパシベーション絶縁層37Aとの積層(またはゲート絶縁層30Aあるいはパシベーション絶縁層37A)よりなる突起の側面への被着を抑制することができる。なお、逆テーパ角度を大きくするため、感光性樹脂パターン88の膜厚を厚くすると、さらに突起の側面への被着を抑制することが容易となる。なお感光性樹脂パターン88の逆テーパ角度を変化させても図15(a)と図16(a)との比較からも分かるようにアクティブ基板2の平面的な配置とパターン寸法には殆ど変化が無い。
垂直配向型液晶パネルにおいては突起の側面に絵素電極が形成されていると、電圧印加時に突起の配向規制力が絵素電極周辺の局所電界によって弱められて液晶パネルの応答速度が遅くなるので、このようなプロセス的な対応で絵素電極を可能な限り開口部内にのみ形成して応答速度を早くできることは従来の垂直配向型の液晶表示装置には無い特徴である。
以上述べたように本発明による4枚マスク・プロセスと3枚マスク・プロセスは単に製造工程を削減して製造コストの低減をもたらすだけでなく、製造管理が容易となる、配向処理が容易となりコントラスト比が向上する、あるいは応答速度が速くなる等の優れた副次効果も多く、またTN型液晶パネル、IPS型液晶パネル及び垂直配向型液晶パネルと液晶デバイスの差異によらずアクティブ基板の製造プロセスを同一とすることができるので機種変更に伴う生産組換準備損失が無く、量産規模の大きい生産ライン程、本発明のメリットを享受できる。
本発明の実施例1にかかるアクティブ基板の平面図
本発明の実施例1にかかるアクティブ基板の製造工程断面図
本発明の実施例2にかかるアクティブ基板の平面図
本発明の実施例2にかかるアクティブ基板の製造工程断面図
本発明の実施例3にかかるアクティブ基板の平面図
本発明の実施例3にかかるアクティブ基板の製造工程断面図
本発明の実施例4にかかるアクティブ基板の平面図
本発明の実施例4にかかるアクティブ基板の製造工程断面図
本発明の実施例5にかかるアクティブ基板の平面図
本発明の実施例5にかかるアクティブ基板の製造工程断面図
本発明の実施例6にかかるアクティブ基板の平面図
本発明の実施例6にかかるアクティブ基板の製造工程断面図
本発明の実施例7にかかるアクティブ基板の平面図と断面図
本発明の実施例8にかかるアクティブ基板の平面図と断面図
本発明の実施例9にかかるアクティブ基板の平面図と断面図
本発明の実施例10にかかるアクティブ基板の平面図と断面図
本発明の実施例1と実施例10にかかるアクティブ基板の製造工程断面図
本発明の実施例1と実施例10にかかるアクティブ基板の断面図
液晶パネルの実装状態を示す斜視図
液晶パネルの等価回路図
従来の液晶パネルの断面図
従来例の合理化されたアクティブ基板の平面図
従来例の合理化されたアクティブ基板の製造工程断面図
符号の説明
1:液晶パネル
2:アクティブ基板(ガラス基板)
3:半導体集積回路チップ
4:TCPフィルム
5:走査線の一部または電極端子
5A:透明導電性の走査線の電極端子
6:信号線の一部または電極端子
6A:透明導電性の信号線の電極端子
9:カラーフィルタ(対向するガラス基板)
10:絶縁ゲート型トランジスタ
11:走査線
11A:ゲート配線、ゲート電極
12:信号線(ソース配線、ソース電極)
16:蓄積容量線(IPS型液晶表示装置では対抗電極)、共通電極
16A:(IPS型液晶表示装置の)対抗電極
17:液晶
21:ドレイン電極(ドレイン配線、ドレイン電極)
22:(透明導電性の)絵素電極
30:ゲート絶縁層
31:不純物を含まない(第1の)非晶質シリコン層
32D:保護絶縁層(エッチストップ層、チャネル保護絶縁層)
33:不純物を含む(第2の)非晶質シリコン層
34:耐熱金属層(シリサイドも含む)
35:低抵抗金属層(AL薄膜層またはCu薄膜層)
36:中間導電層
37:パシベーション絶縁層
38:(絵素電極形成領域)の開口部
50,52:蓄積容量形成領域
60:(カラーフィルタ9上の樹脂製の)突起
62:(ドレイン電極上の)開口部
63:(走査線の一部上または走査線の電極端子上の)開口部
64:(信号線の一部上または信号線の電極端子上の)開口部
65:(対向電極上の)開口部
72:蓄積電極
81A,81B,83A,83B:ハーフトーン露光で形成された感光性樹脂パターン
86A,86B:ハーフトーン露光で形成された感光性有機絶縁層パターン
88:開口部の断面形状が逆テーパ状の感光性樹脂パターン