JP2006296286A - ケーキ生地用乳化油脂 - Google Patents

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Abstract

【課題】 乳化安定性に優れ、ケーキ生地に添加した際に生地中で均一に分散し、キメが開いたソフトで口溶け、風味、しとり感に優れたボリュームのある形状の良いケーキ類を得ることができるケーキ生地用乳化油脂を提供する。
【解決手段】 本発明のケーキ生地用乳化油脂は、グリセリン有機酸脂肪酸エステルと、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルとを水中油型乳化物中に含有することを特徴とする。本発明の乳化油脂は、乳化物中にグリセリン有機酸脂肪酸エステル0.01〜20重量%、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル0.1〜10重量%含有することが好ましく、またグリセリン有機酸脂肪酸エステルを構成する有機酸が、ジアセチル酒石酸であるものが好ましい。
【選択図】 なし。

Description

本発明はケーキ生地に練り込んで使用するケーキ生地用乳化油脂に関する。
スポンジケーキ、バターケーキ等のケーキ類の生地は、卵の起泡力を利用した別立て法、共立て法によって製造されていたが、安定した気泡を形成させるために熟練した技術が必要であった。近年、安定した起泡力を有する種々のケーキ用起泡剤が開発された結果、全材料を同時に混合できて大量生産性に優れたオールインミックス法が、ケーキ生地の製造に広く採用されるようになっている。オールインミックス法で用いられている起泡剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が知られており、これらの1種又は2種以上を組み合わせてソルビトール等の糖アルコール中で安定化したり、油脂に添加して水中油型等に乳化して用いられている。しかしながら、上記の起泡剤を用いて得たケーキはソフトさ、口溶け感が良くないという問題があった。一方、特許文献1、特許文献2には、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等のポリグリセリン脂肪酸エステルがケーキ生地の気泡安定性が良好であり、ポリグリセリン脂肪酸エステルをクエン酸塩や酒石酸塩と併用することにより、生地における気泡が安定であり、ソフトで口溶けの良いケーキを得ることができることが記載され、特許文献3には、塩類、糖類、水溶性タンパク質等の水溶性物質と、膨潤制御α化澱粉と、乳化剤と、増粘安定化剤を含む油中水型乳化物をケーキ生地に添加することで、弾力、ソフト感、口溶け、しとり感に優れたケーキが得られること、乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノール酸エステルが好ましいことが記載されている。
特開昭63−304936号公報 特開平1−285145号公報 特開2002−191288号公報
特許文献1、2には、クエン酸塩や酒石酸塩と、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルとを、それぞれ直接生地に添加したり、水中油型乳化物や油中水型乳化物中に含有させて添加する方法が記載されているが、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等を直接生地に添加したり、油中水型乳化物中に含有させて添加すると、生地への分散性が悪く、乳化剤の効果が十分に発揮されず、生地が不安定になるため、得られたケーキに凹凸が生じたりして形状が不良となり、また、クエン酸塩や酒石酸塩と、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを水中油型乳化物中に含有させた場合には、乳化物の安定性が悪くなる結果、ケーキのボリューム感が低下するという問題がある。また特許文献3に記載されているような油中水型乳化物において乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを用いた場合、ケーキ生地中で不安定化し、焼成後のケーキのキメが粗く不均一で、ソフトさが向上しないという問題があった。本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、上記従来の欠点を解消したケーキ生地用乳化油脂を提供することを目的とする。
即ち本発明は、
(1)グリセリン有機酸脂肪酸エステルと、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルとを水中油型乳化物中に含有することを特徴とするケーキ生地用乳化油脂、
(2)乳化物中にグリセリン有機酸脂肪酸エステル0.01〜20重量%、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル0.1〜10重量%含有する上記(1)のケーキ生地用乳化油脂、
(3)グリセリン有機酸脂肪酸エステルを構成する有機酸が、ジアセチル酒石酸である上記(1)又は(2)のケーキ生地用乳化油脂、
を要旨とする。
本発明のケーキ生地用乳化油脂は乳化安定性に優れるため、ケーキ生地中で均一に分散し、キメが開いたソフトで口溶け、風味、しとり感に優れたボリュームのある形状の良いケーキ類を得ることができる。
本発明において用いるグリセリン有機酸脂肪酸エステルは、グリセリンに脂肪酸と有機酸の両方がそれぞれ1個から2個エステル結合した構造の化合物で、モノグリセリン脂肪酸エステルと有機酸との反応、油脂と有機酸とのエステル交換、又はグリセリンと有機酸と脂肪酸との反応などにより得ることができる。有機酸として例えば、酢酸、乳酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸、クエン酸等が挙げられる。また、構成脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれでも良い。グリセリン有機酸脂肪酸エステルは、有機酸や脂肪酸の種類の異なるものを混合して用いることもできる。本発明において用いるグリセリン有機酸脂肪酸エステルは、有機酸がコハク酸、ジアセチル酒石酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸であるものが好ましく、有機酸がジアセチル酒石酸、脂肪酸がステアリン酸であるものがさらに好ましい。グリセリン有機酸脂肪酸エステルの本発明乳化油脂中における含有率は、0.01〜20重量%が好ましい。グリセリン有機酸脂肪酸エステルの含有率が0.01重量%未満の場合、乳化油脂の乳化安定性が低下し、ケーキ等のソフトさが低下する虞がある。また、20重量%を超えるとケーキ等の口溶け感が低下する虞がある。
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルとは、リシノール酸同士が縮合したエステルと、ポリグリセリンとがエステル化したものであり、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを構成するポリグリセリンとしては、重合度4〜10量体が好ましい。また縮合リシノール酸としては3〜6量体がエステル結合しているものが好ましい。
本発明の乳化油脂は、水中油型乳化物中における上記グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの好ましい割合は、それぞれ0.01〜10重量%、0.1〜5重量%であるが、より好ましくは、グリセリン有機酸脂肪酸エステル0.1〜5重量%、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル0.5〜2.5重量%である。ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル含有率が0.1重量%未満の場合、ケーキ等の風味が低下する虞がある。また、5重量%を超える場合、乳化が不安定となり、風味、食感が低下する虞がある。また本発明の乳化油脂中における水分量は、20〜80重量%が好ましく、より好ましくは、50〜65重量%である。また油脂量は、5〜40重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。
本発明の乳化油脂に用いられる油脂としては、動植物油脂、動植物油脂の硬化油、動植物油脂のエステル交換油等、食用に適するものであれば全て使用可能である。例えば、ナタネ油、大豆油、魚油、豚脂、大豆硬化油、パーム液体脂とナタネ油のエステル交換油等が挙げられるが、ケーキの食感により、ソフトさ、しとり感を与えるためには、室温で液状の食用油が好ましい。
本発明の乳化油脂中には、更に糖類、タンパク質を含有しても良い。糖類を含有していると起泡性やしとり感を向上させる効果があり、タンパク質を含有していると乳化安定性や口溶けが向上する効果がある。糖類としてはグルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類、ショ糖、麦芽糖、水飴、マルトース、乳糖、トレハロース、オリゴ糖、異性化糖、サイクロデキストリン、転化糖、分岐サイクロデキストリン、デキストリン等の多糖類、ソルビトール、マルチトール、キシリトール等の糖アルコール、澱粉加水分解物などの還元糖等が挙げられる。またタンパク質としては、大豆タンパク、卵タンパク、カゼイン等の乳タンパク、小麦タンパク等が挙げられる。乳化油脂中の糖類の割合は5〜50重量%が好ましい。また、乳化油脂中のタンパク質の割合は、0.5〜7.0重量%が好ましく、1〜2.5重量%がより好ましい。タンパク質の含量が、0.5重量%未満の場合、乳化が不安定となり易く、7重量%を超えると粘度が高くなり生地への分散性が低下する虞がある。
本発明の乳化油脂中には、グリセリン有機酸脂肪酸エステルと、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル以外の食品用乳化剤を含有しても良い。他の乳化剤を含有していると、生地安定性や起泡性を更に向上させる効果が得られる。他の乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられるが、特に、グリセリンモノ脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルが好ましい。
本発明の乳化油脂は、水相に油相を添加し、ホモミキサー等で攪拌後、ホモゲナイザー等を使用し、30〜200kg/cm2の圧力をかけて均質化し、均質化後、冷却することにより得ることができる。この際に油相としては、グリセリン有機酸脂肪酸エステルとポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを油脂に添加し、調製したものを用いる。また、水相としては糖類、タンパク質、必要に応じてグリセリンモノ脂肪酸エステルを水に添加して調製したものを用いる。グリセリンモノ脂肪酸エステルは油相、水相の両方に含有されていても良いが、どちらか一方に含有されていれば良い。
本発明の乳化油脂は、ケーキ生地に用いる小麦粉や米粉等の穀粉に対して、5〜30%添加することが好ましく、さらに好ましくは15〜25%である。
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1〜5、比較例1〜3
表1に示す油相、水相により乳化油脂を製造した。油相は、油脂を70℃に調温後、各乳化剤を添加し調製した。水相は、水を60℃に調温し、カゼインNaとソルビトールを添加し調製した。油相を70℃で、水相を60℃で保持し、ホモミキサーで攪拌しながら水相に油相の全量を添加し、水中油型に乳化させた後、ホモジナイザーで150kg/cm2の圧力をかけて均質化し、均質化後、冷却した。得られた乳化油脂の経時的乳化安定性を表1に合わせて示した。
Figure 2006296286
※1 SYグリスターCR−ED(坂本薬品工業株式会社製)
※2 ポエムW−10(理研ビタミン株式会社製)
※3 ポエムB−10(理研ビタミン株式会社製)
※4 リケマールPB−100(理研ビタミン株式会社製)
※5 エマルジーMS−A(理研ビタミン株式会社製)
※6:経時的乳化安定性は各乳化油脂を10℃にて保存し、乳化状態を目視観察して以下の基準で評価した。
◎:保存90日経過後も乳化状態は変わらず良好。
○:保存30日経過後、乳化状態は変わらず良好。
△:保存30日経過後、僅かにオイルオフあるいは、離水が生じている。
×:保存30日経過後、明らかにオイルオフあるいは、離水が生じている。
実施例1〜5、比較例1〜3で得た各乳化油脂を用いてスポンジケーキ生地を調製した。調製した生地450gを、7号丸型に入れて175℃のオーブンで、38分間焼成し、スポンジケーキを得た。ケーキ生地はオールインミックス法により、下記配合物を縦型ミキサーで生地比重が0.45となるようミックスし調製した。
スポンジケーキ生地配合
薄力粉 100重量部
上白糖 110重量部
全卵 150重量部
ベーキンパウダー 1重量部
水 30重量部
乳化油脂組成物 20重量部
上記の配合で得られたスポンジケーキのキメ、ボリューム、形状、風味、食感としてソフトさ、しとり感、口溶け感を下記方法により評価した。結果を表2に示す。
Figure 2006296286
※7:スポンジケーキの形状
得られたスポンジケーキの外周部の高さと中央部の高さを測定し、外周部の高さ/中央部の高さで比率を算出して比較し、以下の基準で評価した。
○:比率0.9以上〜1.0未満
△:比率0.8以上〜0.9未満
×:比率0.8未満もしくは、1.0以上
※8:スポンジケーキのキメ
得られたスポンジケーキを縦半分、横三等分にカットし、ケーキのキメを目視により評価し、以下の基準で評価した。
○:キメが開き、かつ均一である。
△:キメが開いているが、均一性に乏しい。
×:キメが同等か、細かい、または不均一。
※9:スポンジケーキの比容積
得られたスポンジケーキの比容積(ml/g)を菜種置換法により測定し、平均値を算出した。
※10:スポンジケーキの風味、食感
パネラー15名により、上記配合により得られたスポンジケーキの1.風味、2.ソフトさ、3.しとり感、4.口溶け感を官能試験により比較評価した。
上記1〜4各項目における評点基準は以下の通りである。
1.風味
良好 3点
やや良好 2点
不良 1点
2.ソフトさ
ソフトである 3点
ややソフトである 2点
ソフトでない 1点
3.しとり感
しとり感がある 3点
ややしとり感がある 2点
しとり感がない 1点
4.口溶け感
良好 3点
やや良好 2点
不良 1点
各項目別にパネラー15名の合計評点により、下記の基準を設け、各項目の評価結果とした。
◎:40点以上〜45点
○:35点以上〜40点未満
△:25点以上〜35点未満
×:25点未満

Claims (3)

  1. 脂肪酸モノグリセリドの有機酸エステルと、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルとを水中油型乳化物中に含有することを特徴とするケーキ生地用乳化油脂。
  2. 乳化物中にグリセリン有機酸脂肪酸エステル0.01〜20重量%、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル0.1〜10重量%含有する請求項1記載のケーキ生地用乳化油脂。
  3. グリセリン有機酸脂肪酸エステルを構成する有機酸が、ジアセチル酒石酸である請求項1又は2記載のケーキ生地用乳化油脂。
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