JP2006286708A - 電磁波シールド板およびその製造方法 - Google Patents

電磁波シールド板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ヘイズが低く、かつ高透過率の電磁波シールド板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 透明基板3上に導電体パターン2の上面を、所定の光学濃度の黒色ガラス層1で被覆することによりヘイズが低く、高透過率の電磁波シールド板を作製できる。当該電磁波シールド板の製造工程は感光性を有する銀ペースト、黒色ガラスペーストを順次塗布・乾燥して積層塗布膜を設ける工程、前記積層塗布膜を一括して露光・現像する工程、焼成する工程で構成される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、壁掛けテレビや大型モニターに用いられるディスプレイに用いられる電磁波シールド板に係り、十分な電磁波遮断性能を有し、濁度が低く、透過率の高い高性能な電磁波シールド板およびその製造方法に関する。
電磁波シールド板は、たとえば、ディスプレイから漏洩する電磁波を遮断するために、ディスプレイに装着される前面フィルターとして広く用いられる。ディスプレイの前面板として用いられる電磁波シールド板には、電磁波を遮断する機能の他に、ディスプレイの表示画面の視認性を低下させないことが求められる。このような電磁波シールド板としては、たとえば、金属箔がメッシュ状にエッチングされたエッチングシートを透明基板に貼りあわせた電磁波シールド板が用いられているが、金属箔のラミネート工程やエッチング工程などの多くの工程が必要になる問題があった。また、視認性を向上するために、格子状の金属表面にクロムメッキ等の黒色化するための表面処理工程が必要になり、複雑な工程が必要になる問題があった。この問題を解決する方法として、透明基板の一面に感光性の黒色層と導電層を重ねて積層し、露光・現像により中間体を形成後、焼成することにより黒色層と導電層を積層した電磁波シールド板が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、この方法では積層膜の構成として下層が黒色層、上層が導電層であるため、導電層の上面および側面が導電層の反射の影響によりヘイズが高くなり、ディスプレイの表示に悪い影響を与える可能性がある。また、導電層側からフォトマスクを介して露光するため、露光時に導電膜表面とフォトマスクの酸化クロム膜の間による乱反射の影響および膜表面での光散乱の影響により、マスクパターンの設計幅よりも太いパターンとなる。そのため電磁波シールド用に必要な高い透過率特性を有するパターンを得ることができない課題があった。
特開2004-281684号公報 特開2004-266142号公報
そこで、本発明は上記のような課題を解決し、ヘイズの低い、高透過率な電磁波シールド板および製造方法を提供することを目的としている。
本願発明者らは、上記課題解決のため鋭意検討した結果、透明基板上に導電体パターンの上面を、所定の光学濃度の黒色ガラス層で被覆することによりヘイズの低い、高透過率な電磁波シールド板を作製できることを見出した。さらに、本願発明者らは、感光性を有する銀ペースト、黒色ガラスペーストを順次塗布・乾燥して積層塗布膜を設ける工程、前記積層塗布膜を一括して露光・現像する工程、焼成する工程を含むことにより上記本発明の電磁波シールド板を作製可能であることを見出した。
すなわち、本発明は、透明基板上に導電体パターンを有する電磁波シールド板であって、前記導電体パターンの少なくとも上面が黒色ガラス層で被覆されており、該黒色ガラス層の光学濃度が0.6以上であることを特徴とする電磁波シールド板を提供する。また、本発明は、透明基板上に感光性を有する銀ペースト、黒色ガラスペーストを順次塗布・乾燥して積層塗布膜を設ける工程、前記積層塗布膜を一括して露光・現像する工程、焼成する工程を含むことを特徴とする上記本発明の電磁波シールド板の製造方法を提供する。
本発明の電磁波シールド板およびその製造方法によって導電体パターンの上面を黒色ガラス層を設け、側面部をガラス被服した電磁波シールド板が作製できるため、曇価の低い導電性メッシュパターン形成が達成できる。また、上記の導電体パターンを通常のフォトリソ法で行うため高精度なパターン形成ができ、製造工程とコストの削減が大いに期待できる。
図1に本発明の導電パターンおよび黒色ガラス層の断面図を示す。透明基板3上に導電体パターン2が形成され、さらにパターン上面に黒色ガラス層1が被覆されているため、パターン表面での散乱が防止でき、透明基板3が全体として曇ることがない。つまり、電磁波シールド板として求められる視認性を著しく向上させることができる。本発明における黒色ガラス層の黒色度は光学濃度(OD値)で表され、その範囲は0.6以上であり、0.6〜2.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましい。0.6未満になると曇って見えるため視認性が悪くなる傾向になる。2.0を超えると、視認性は良いが、黒色顔料の添加量が多くなりすぎて他の特性に悪い影響が出る。OD値が0.6〜2.0の範囲にあることによって、導電体からの反射光を十分に押さえることができるため視認性が向上する。ここで言うのOD値とは、反射で測定した値で入射光強度をI0と反射光強度をIとした場合に、その比(I/I0)=Rは反射率であるが、OD値は−logRで定義されたものである。測定には印刷用濃度計であるマクベス反射濃度計TR−927を用いた。なお、下記実施例で測定に用いた試料は、ガラス基板上に導電ペーストをスクリーン印刷法で塗布・乾燥し、さらに黒色ガラスペーストを同様にスクリーン印刷法で塗布・乾燥後、570℃で15分間焼成して、導電体膜厚5μm、黒色ガラス層膜厚2μmの積層膜としたものである。
さらに、図2に示すとおり導電パターン2の断面形状における厚さ方向の側面長さ5の20%以上をガラス成分4で被覆することでより視認性を向上することができる。導電パターンの側面をガラスで被覆することにより、ディスプレイに電磁波シールド板を取り付け表示を行った場合、外光からの反射光を上面の黒色ガラス層1で光を吸収し、さらにパネル発光による散乱を側面のガラス被覆層4で吸収することでより視認性を向上することができるものである。なお、このガラス被覆層4は、例えば、後述する、導電パターンを形成する金属ペースト中にガラスフリットを配合することにより形成することができる。金属ペースト中にガラスフリットを配合することによりガラス被覆層4が形成される理由は、次の通りである。まずガラスフリットの役割として、焼成時にガラスフリットが軟化しガラス基板と接触する。さらに焼成が進むと、金属粉末の焼結が始まり、この金属成分とガラス基板との界面でガラスフリットによる接着が行なわれることが一般的であるが、本発明では過剰のガラスフリット量を添加することで側面への付着を可能としている。
電磁波シールド板の視認性を定量的に表す方法としてはさまざまな測定方法があるが、本発明ではヘイズ測定により電磁波シールド板の視認性を表している。ここでヘイズとは積分球式光線透過率装置を用いて拡散透過率および全光線透過率を測定し、その比を求めたものであってJIS−K7105の規格に基づいて測定し下記の式により算出される。
Figure 2006286708
本発明では、ヘイズが6%以下であることが視認性の優れた電磁波シールド板として使用する上で好ましく、さらに好ましくは4%以下である。6%以上であると、ディスプレイの表示が曇って見えるため鮮明な映像とならない。さらに図3のように、導電体パターンの断面形状が逆テーパ形状であると視野角に依存なく、よりヘイズの低い特性が得られる。つまり、図2の形状においては上面から見た場合は視認性は良いが、斜め方向から見た場合は導電体側面部分の反射の影響によりやや曇って見える。しかしながら、図3のように導電体パターンの断面形状が逆テーパ形状である場合は、斜め方向から見た場合でも、導電体による反射光が入りにくいため、曇って見えない。なお、このような逆テーパ形状は、例えば、上層である黒色ガラス成分中の黒色顔料の添加量や現像時間の制御により形成することができる。
次に本発明の電磁波シールド板の製造法について説明する。
透明基材
本発明の電磁波シールド板に用いる透明基材は、ディスプレイの前面に配置され得る透明なものであれば、特に制限なく用いることができる。ガラス基板、樹脂基板、フィルムなどを用いることができる。樹脂基板としては厚み0.5〜3mmのアクリル板もしくはポリカーボネート基板等の公知の透明樹脂基板を用いることができる。また、フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリカーボネートフィルムを用いることができる。中でもコスト面・加工の自由度が高い点から、ガラス基板を用いるのが最も好ましい。用いるガラス基板の厚みとしては、通常0.7〜5mm程度、好ましくは1.0〜3.5mm程度の範囲である。厚みが0.7mmより薄いと、取り扱い時及び使用時に破損しやすくなり、厚みが5mmを超えると重くなりすぎて、取り扱い時及びディスプレイ装着時の総重量が大きくなるので、好ましくない。また、取り扱い時及び使用時の破損防止の観点から、ガラス基板は強化処理されているのが好ましく、強化処理の観点からは1.5mm以上の厚みを有するものが好ましい。ガラス基板の強化処理は、パターン形成の前に行っても、後に行ってもよい。すなわち、ガラス基板を強化処理した後、その強化ガラス上にパターンを形成してもよいし、普通ガラスにパターンを形成した後、パターン付きガラスを強化処理してもよい。ガラスの強化処理は、ガラスの表面に圧縮歪みをもたせることによって強度を増す処理であり、表面に圧縮歪みをもたせる方法によって、熱強化処理と化学強化処理に分けられる。ガラスは引張り力により表面から破壊するため、予め表面に圧縮歪みをもたせると、強度を増すことができる。熱強化処理は、板状ガラスをその軟化点付近まで加熱した後、空気ジェットによりガラス表面を急冷し、ガラス表面に圧縮応力層を形成することにより行われる。パターンの形成後に強化処理を行う場合は、連続的又は段階的な加熱室をもった加熱炉で軟化点近くまで加熱した後、一群の空気ノズルからガラス基板の両面に垂直に空気ジェットを吹き付けて急冷することにより行われる。
導電体パターン
このような基板上に、透明な導電膜を形成する方法やメッシュやストライプ状の金属性の導電パターンを形成する方法により、優れた電磁波シールド性を確保することができる。但し、透明導電膜ではシート抵抗値を1Ω以下にすることが困難であり、また、抵抗値を低減するために透明導電膜の厚みをを厚く形成した場合、光線透過率が低下して、ディスプレイの視認性が低下する問題点や長時間の真空工程が必要になり、生産性が著しく低下するという問題点がある。そこで、本発明では、基板上にメッシュ状の導電体パターン、特に、金属材料として抵抗値を低減しやすい銀を用いることで、電磁波シールド性を確保できることを見いだした。前記導電パターンには、銀以外にニッケルやアルミ等の金属を含有しても良い。但し、金属成分の中で銀の含有量を50%以上とすることが抵抗値を低減する上で重要である。銀の含有率が50%以下になると、抵抗値が増大しやすくなる。
銀ペーストは、アクリル系共重合体及びα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を含むものであることが好ましい。ここで、アクリル系共重合体の好ましい例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸又はこれらの酸無水物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2-ヒドロキシエチルアクリレートなどのモノマを選択し、アゾビスイソブチロニトリルのような開始剤を用いて共重合することにより得られるものを挙げることができる。アクリル系共重合体の配合量は、銀ペースト全体の15〜50重量%が好ましい。また、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤の好ましい例としては、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられる。本発明に用いる光重合開始剤の配合量は銀ペースト全体の5〜30重量%の範囲が好ましい。5重量%未満では得られる感光性樹脂の光感度が不足し、30重量%を越えると、現像性が悪くなる傾向にある。また、これらに加えて例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1-ナフチルアクリレート、2-ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレートのようなアクリルモノマーを銀ペースト全体の3〜15重量%程度含んでいると、硬化速度を向上させることができるので好ましい。さらに、銀ペーストは、ガラスフリットを銀ペースト全体の2〜6重量%含んでいることが好ましい。これにより、上記したように、導電パターンの断面の厚さ方向の側面長さの20%以上がガラスで被覆される。
前記導電パターンをメッシュ状やストライプ状に形成することで、メッシュやストライプの開口部分から光を透過することができる。また、十分な電磁波遮蔽性能が得るためには、導電パターンの表面抵抗率として、1Ω/□以下、好ましくは0.1Ω/□以下とする必要がある。このためには、メッシュやストライプ状に形成する導電パターンの線幅を5〜30μmとすることが望ましい。メッシュやストライプの線幅としては、5μmよりも小さいとパターンの欠損が生じやすく、30μm以上になると光透過率が低下する問題がある。また、導電パターンの厚みは0.5〜10μmが好ましく、より好ましくは2〜5μmである。2μmよりも薄いと抵抗値が高くなり、電磁波遮蔽性能が不足する。一方、5μmよりも厚くなると、メッシュやストライプの形成工程が複雑になることや材料コストが増加するという問題がある。また、メッシュやストライプの形成ピッチは、粗くなるとモアレ現象により表示特性が低下する場合があり、繰り返し形成ピッチとしては、PDPの画素ピッチの1/2以下とする必要がある。つまり、通常のPDPは0.7〜1mm四方の画素で形成されていることから、メッシュやストライプの形成ピッチは0.1〜0.5mmピッチで形成することが好ましい。
黒色ガラス層
本発明の黒色ガラス層はコントラストを向上するために形成し、ガラス成分と黒色顔料で構成することが好ましい。また、黒色層に含まれるガラス成分としては、軟化温度が550℃以下、好ましくは、350〜500℃のガラス成分を用いることができる。軟化温度350℃未満のガラスは化学的安定性が低く、また、軟化温度500℃超、特に、550℃を超えると、基板上で十分な軟化を行うことが困難になるため、黒色層にヘイズ感が生じやすくなる。軟化温度が550℃以下、好ましくは、350〜500℃のガラス成分であれば、特に制限なく用いることができるが、黒色層と接触する金属層との反応を考慮すると、鉛、ビスマス、および亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一種類の元素を含むホウケイ酸系のガラス粉末が好ましく用いられる。また、環境面を考慮すると、酸化ビスマスや酸化亜鉛を主成分とするガラス粉末が好ましい。さらに、アルカリ金属を含むガラス粉末を用いた場合には、焼成時に基板ガラスとのイオン交換反応により、基板の反りを生じることがあるため、アルカリ金属の含有量は10重量%以下とすることが好ましい。
黒色層に用いるガラス粉末の平均粒子径は0.3〜5μmであることが好ましい。0.3μm未満の場合には良好に分散することが難しく、5μmを超えると黒色層の平坦性や形状が悪化することがあるため好ましくない。黒色顔料としては、コバルト、ニッケル、銅、鉄、マンガン、クロム、ルテニウムの酸化物を含む無機酸化物からなる顔料を用いることができる。それぞれの元素単独の酸化物を用いることもできるが、3種以上の元素で構成されるスピネル化合物を用いることも有効である。特に、400〜700℃に加熱する工程を経る際には、Co−Cr−Fe、Co−Mn−Fe、Co−Cu−Mn、Co−Ni−Mn、Co−Ni−Cr−Mn、Co−Ni−Cu−MnなどのCo元素を含むスピネル化合物を用いることにより、高温での退色を防止することが可能である。
これら黒色顔料は平均粒子径が0.1〜5μmの顔料を用いることが好ましい。0.1μm未満になると凝集が発生しやすく、黒色度が不均一になりやすい。また、5μmを越えると黒色度が低下しやすくなる課題がある。0.1μm〜5μmとすることで、均一かつ十分な黒色度の光遮光層を形成することができる。また、黒色顔料として、カーボンを用いることができる。特に、本発明では400℃以上の加熱工程を経るため耐熱性カーボンを用いることがより好ましい。黒色顔料の添加量としては、(1)十分な黒色度であること、(2)銀ペーストと黒色ガラスペーストの積層膜を一括して露光するため、下層である銀層にはある程度の紫外線が照射されること、を満たすため、3〜15重量%の範囲にあることが好ましい。3重量%未満であると黒色度が不十分であるため、ヘイズが高くなる。また、15重量%を超えると、一括露光による導電体パターンの形成ができない。この範囲にすることで、一括露光によるパターン形成が可能でありながら、十分な黒色度を有する導電体パターンが得られるため、ディスプレイに用いた場合に十分なコントラストを得ることができる。黒色層の厚みとしては、黒色層の黒さにも影響されるが、0.5〜3μmが好ましい。十分な黒色度を得るには0.5μm以上の厚みが通常必要であり、また、材料コスト面で3μm以下とすることが好ましい。
透明導電層
また、抵抗値を低減して電磁波遮蔽性能を向上しつつ、光透過率を向上するための方法として、基板表面に透明導電層を形成した基板を用いる方法がある。つまり、ガラス基板表面に、ITOや酸化錫からなる透明な導電層を形成したガラス基板を用いることにより、電磁波シールド性を向上することができる。これらの透明導電層は、基板上にスパッタやCVD(ケミカル・ベーパー・デポジション)法により形成できる。
本発明では透明導電層と金属層を両立させる、つまり、金属層と基板の間に透明導電層を形成することが、光透過率を確保し、かつ、抵抗値を低減するために有用であることを見いだした。透明導電層としては、ITOが酸化錫と比較して低抵抗化が可能な利点はあるが、基板としてガラスを用いる場合は、高価なインジウムを使用しない酸化錫の方がコスト面で優れる。また、金属層との組み合わせの点でも、銀をガラス基板上に形成する際に、銀/ガラス間の反応によって黄色化する問題は、緻密な酸化錫膜によって抑制できる利点がある。
形成法
本発明の導電パターンの形成方法は公知の方法を用いることができる。オフセット印刷、スクリーン印刷等のパターン印刷法を用いても良い、但し、オフセット印刷は、形成厚みを厚くすることが難しく、スクリーン印刷は、ライン幅を30μm以下に細くすることが困難という問題がある。そこで、好ましい方法としては、感光性ペースト法がある。感光性ペースト法は、感光性有機成分と無機成分を含有するペーストを用いて、フォトリソグラフィー法によるパターン形成する方法である。ここで用いられる感光性有機成分としては、ポリマーと、1分子中に2つ以上の炭素−炭素2重結合を有する多官能モノマーと、光重合開始剤を必須成分とする。感光性有機成分のポリマーは特に限定されないが、感光性樹脂のパターン加工が、有機溶媒ではなくアルカリ水溶液現像で行えるためにアルカリ可溶性のポリマーであることが望ましい。アルカリ可溶性のポリマーとしては、アクリル系共重合体があげられる。アクリル系共重合体とは、共重合成分に少なくともアクリル系モノマーを含む共重合体であり、アクリル系モノマーとは、具体的な例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレートなどのアクリル系モノマー、およびこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたものなどが挙げられる。
このフォトリソグラフィー法により電磁波シールド板を作製する一例としては、透明基板上に感光性を有する銀ペースト、黒色ガラスペーストを順次塗布・乾燥して積層塗布膜を設ける工程、前記積層塗布膜を一括して露光・現像する工程、焼成することにより作製することができる。基板としてガラス基板を用いた場合は、400〜700℃に加熱して、黒色層・金属層中の有機成分を焼去して、より黒色度が高く、抵抗値の低い層を形成できる。焼成温度が400℃未満の場合、パターン中の有機物が十分に減少しないため、ガラスフリットとガラス基板との密着性が不十分となる。一方、焼成温度が700℃を超えると、ガラス基板自体に変形を生じるおそれがある。ガラスフリットを十分に密着させるためには、パターン中の有機物の残存量は、焼成前の重量の10%以下となるようにするのが好ましく、さらには5%以下となるようにするのが一層好ましい。焼成時間は、好ましい温度範囲内で、残存有機物が好ましい範囲まで減少するように調整すればよい。また、パターンが形成されるガラス基板として、強化処理ガラスを用いる場合は、強化がなまされないよう、焼成条件を当該ガラスの歪点よりも低く設定する必要がある。そのためには、ガラスの歪点よりも30℃以上低い温度で焼成を行うのが好ましく、さらには50℃以上、とりわけ100℃以上低い温度で焼成を行うのが一層好ましい。一方、普通ガラスにパターンを形成してから焼成を行う場合は、ガラス基板の軟化点に近い温度で焼成した後、急冷することにより、ガラス基板の強化も同時に行うことができる。具体的には例えば、600〜700℃で数十秒〜十数分程度加熱した後、空気を吹き付けて急冷することにより、パターンの焼成と基材の強化処理を同時に行うことができる。強化処理条件は、ガラス基板の厚みや必要な強化度合いにより適宜決定される。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(1)黒色ガラスペーストの作製方法
以下の成分をプラネタリーミキサーおよび三本ローラーミルで混合して作製した。
(a) 有機溶剤:BCA「酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル」(和光純薬社製)
(b) ポリマー溶液:アクリル系ポリマー(スチレン/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応したもの。重量平均分子量43,000、酸価95)の40%BCA溶液(東レ社製)
(c) アクリルモノマー:ポリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学社製)
(d) 光重合開始剤:2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン(チバガイギー社製「イルガキュア907」)
(e) 黒色顔料:Co−Cu−Mn系化合物(平均粒子径0.2μm、泉陽硝子社製)
(f) ガラス粉末:(平均粒径0.3μm、泉陽ガラス社製)
(2)感光性銀ペーストの作製方法
以下の成分をプラネタリーミキサーおよび三本ロールミルで混合して作製した。
(a) 有機溶剤:BCA「酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル」(和光純薬社製)
(b) ポリマー溶液:アクリル系ポリマー(スチレン/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応したもの。重量平均分子量43,000、酸価95)の40%BCA溶液(東レ社製)
(c) アクリルモノマー:ポリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学社製)
光重合開始剤:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1 (チバガイギー社製「イルガキュア369」)
(d) 銀粉末:同和鉱業製銀粉末(平均粒子径:2μm)
(e) ガラスフリット:(軟化温度480℃、泉陽ガラス社製)
スクリーン版:中沼アートスクリーン社製(380メッシュ)
(3)印刷 :ニューロング社製スクリーン印刷機(中沼アートスクリーン社製スクリーン版、380メッシュを用いた)
(4)乾燥 :日本ガイシ社製IR乾燥炉(乾燥条件120℃、10分)
(5)露光 :大日本科研社製縦型露光機(光源:5kW超高圧水銀灯、ソノコム社製クロム仕様フォトマスク、線幅15μm、ピッチ300μmのパターン)
(6)現像 :ミクロ技研社製現像機(炭酸ナトリウム 3.5重量部水溶液を用いてシャワー現像を行った)
(7)焼成 :光洋サーモテック社製ローラーハース焼成炉
(8)形状・視認性評価
実施例および比較例において得られたパターンのライン幅、側面観察および厚みを面内9箇所測定した。測定はデジタルマイクロスコープ(VH-8000 キーエンス社製)および電子顕微鏡(S−2400 日立計測器サービス社製)により観察・測定した。側面被覆長さ及び側面被覆割合(%)の測定は、具体的には次のようにして行った。まず電子顕微鏡による断面形状観察によりパターンの側面長さ(A)及びガラス成分による被覆長さ(B)を測長し、その比であるB/Aを求めることによって側面被覆割合とした。また、視認性を定量的に評価するためヘイズメーター(NDH2000 日本電色工業社製)で測定した。OD値の測定はマクベス反射濃度計TR−927を用いて反射のOD値を測定した。視認性評価は目視による評価を行い、○:良好であり電磁はシールド板として十分使用できるレベル、△:やや曇って見えるが何とか使用できるレベル、×:非常に曇って見えるため電磁波シールド板としては使用できないレベルという判断基準とした。
(9)電磁波シールド板特性評価
電磁波シールド板としての評価として、KEC法(電界)にて10MHz〜1GHz の領域で測定した。
実施例1
大きさ970mm×580mmで厚み1.8mmのソーダガラス上に、感光性銀ペーストを380メッシュのスクリーン版を用いて全面塗布し、さらに、感光性黒色ガラスペーストを塗布・乾燥して積層膜を作製した。このようにして得られた積層膜に線間隔300μm、線幅15μmのメッシュ状に開口部が形成されたフォトマスクを介して、2000mJ/cm2の露光を行って、70秒間現像後、水洗によるリンス、エアナイフによる水切りを行い、パターンを作製した。そのあと、この格子パターン付きガラス基板を580℃で5分間焼成することによって電磁波シールド板を作製した。得られた電磁波シールド板の評価結果を表1に示す。
Figure 2006286708
黒色ガラス層の黒色度は高いが、導電体層の側面の被覆が不十分なため若干ヘイズが上がっているが電磁はシールド板としては使用できるレベルのものであった。
実施例2
銀ペーストのガラスフリット量を増加した以外は実施例1と同様に行った。実施例1に比べてガラスフリット量を増加したため、導電体層の側面被服量が増えた。その結果、ヘイズが低下して視認性が上がり電磁はシールド版としては非常によいレベルとなった。
比較例1
黒色ガラスペーストを使用しない以外は実施例1と同様に行った。表面の黒色層がないことと銀パターンの太りが見られる点から全体的に曇って見え、視認性が非常に悪いため電磁波シールド版としては使えないレベルと判断した。
比較例2
黒色顔料の添加量を減少させた以外は実施例1と同様に行った。黒色顔料の添加量が少なすぎたため表面の黒色度が低下した。そのためヘイズが高くなり全体的に曇って見える結果となったため、電磁はシールド板としては使用できないレベルと判断した。
本発明の1実施例の電磁波シールド板の模式断面図であり、黒色ガラス層と導電体層が積層されていることを示す図である。 本発明の他の1実施例の電磁波シールド板の模式断面図であり、黒色ガラス層と導電体層が積層され、導電体層が矩形の断面形状で側面がガラス層で被服されていることを示す図である。 本発明の他の1実施例の電磁波シールド板の模式断面図であり、黒色ガラス層と導電体層の積層膜であり、導電体層が逆テーパー形状の断面形状で側面がガラス層で被覆されていることを示す図である。
符号の説明
1 黒色ガラス層
2 導電体層
3 透明基板
4 ガラス成分
5 厚さ方向の側面長さ

Claims (7)

  1. 透明基板上に導電体パターンを有する電磁波シールド板であって、前記導電体パターンの少なくとも上面が黒色ガラス層で被覆されており、該黒色ガラス層の光学濃度が0.6以上であることを特徴とする電磁波シールド板。
  2. 前記光学濃度が2.0以下であることを特徴とする請求項1記載の電磁波シールド板。
  3. 前記導電体パターンがメッシュ状パターンを有しており、ヘイズが6%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波シールド板。
  4. 前記導電体パターン断面における厚さ方向の側面長さの20%以上がガラスで被覆されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁波シールド板。
  5. 透明基板上に感光性を有する銀ペースト、黒色ガラスペーストを順次塗布・乾燥して積層塗布膜を設ける工程、前記積層塗布膜を一括して露光・現像する工程、焼成する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電磁波シールド板の製造方法。
  6. 前記銀ペーストがアクリル系共重合体、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を必須成分とする請求項5に記載の電磁波シールド板の製造方法。
  7. 前記黒色ガラスペースト中に、平均粒子径が0.1〜5μmの黒色顔料を3〜15重量%含有することを特徴とする請求項5または6に記載の電磁波シールド板の製造方法。

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