JP2004288973A - 電磁波シールド体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】半強化ガラスからなる透明ガラス30の表面に感光性の黒色層34と銀層35を重ねて積層形成する工程と、これらをパターン露光、現像し、透明ガラス30の裏面側から黒色層34を露光して中間体を形成する工程と、中間体を熱処理して電磁波シールド層を導電パターン形成する工程とを備える。そして、銀層35を、紫外線により硬化する樹脂組成物に銀粒子を含有した銀インクにより形成し、銀インクの銀粒子をレーザ回析法の測定で0.1〜0.5μmの平均粒子径とするとともに、この平均粒子径±0.1μmの範囲に全銀粒子の30質量%以上を含ませ、銀粒子のアスペクト比を1.5以下とする。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)の表示画面等から放射される電磁波をシールドする電磁波シールド体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カラーテレビには様々なタイプがあるが、近年、図6に示すようなカラーのPDP1が注目されている。このPDP1は、発光部であるパネル本体2と、このパネル本体2の前面に装着される前面パネル3とを備え、視野角、応答速度、低消費電力に優れるという特徴を有している。
【0003】
前面パネル3は、図7に示すように、透明ガラス30の表面に電磁波シールド層31と無反射処理層32とが順次積層され、透明ガラス30の裏面には近赤外線吸収層33が積層形成されており、図示しない枠フレーム等と組み合わされる。透明ガラス30の表面には、電磁波をシールド(遮蔽)して周囲の電気・電子機器や人体等に対する悪影響を抑制防止する電磁波シールド層31が形成されるが、この電磁波シールド層31を形成する場合には、透明ガラス30に感光性の銀ペーストを塗布して銀層を形成し、この銀層をパターン露光、現像して中間体を形成し、この中間体を500℃程度で焼成処理して電磁波シールド層31を導電化するようにしている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002‐40640号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電磁波シールド層31は、以上のように中間体を500℃程度の温度で焼成処理しなければならないので、高価な加熱設備が必要となり、しかも、昇温・冷却に長時間を要するという問題がある。また、500℃前後の高温で焼成処理すると、透明ガラス30が強化ガラスの場合、その強化の意義を没却するおそれが少なくない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みなされたもので、高価な加熱設備を省略することができ、しかも、透明基板が強化ガラス等の場合、強化の意義を失うことのない電磁波シールド体及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、上記課題を達成するため、透明基板の電磁波シールド層を、透明基板の一面に形成される黒色層と、この黒色層に重ねて形成される銀層とから構成したものであって、
銀層を、紫外線により硬化する樹脂組成物に銀粒子を含有した銀インクにより形成するようにし、この銀インクの銀粒子をレーザ回析法による測定で0.1〜0.5μmの平均粒子径とするとともに、この平均粒子径±0.1μmの範囲に全銀粒子の30質量%以上を含ませ、銀粒子のアスペクト(粒子の長径/短径)比を1.5以下にするようにしたことを特徴としている。
なお、透明基板を、強化ガラスと半強化ガラスのいずれか一方とすることが好ましい。
【0008】
また、本発明においては、上記課題を達成するため、電磁波をシールドするものの製造方法であって、
透明基板の一面に感光性の黒色層と銀層とを重ねて形成する工程と、これらをパターン露光、現像して中間体を形成する工程と、この中間体を熱処理して電磁波シールド層を導電形成する工程とを含み、
銀層を、紫外線により硬化する樹脂組成物に銀粒子を含有した銀インクにより形成し、この銀インクの銀粒子をレーザ回析法による測定で0.1〜0.5μmの平均粒子径とするとともに、この平均粒子径±0.1μmの範囲に全銀粒子の30質量%以上を含ませ、銀粒子のアスペクト比を1.5以下とすることを特徴としている。
なお、透明基板を、強化ガラスと半強化ガラスのいずれか一方とすることが好ましい。
【0009】
ここで特許請求の範囲における透明基板としては、JIS R 3206に規定されている強化ガラス、あるいはJIS R 3222の規定が一般的に適用される半強化ガラスがあげられる。この透明基板には、電磁波シールド層の他、無反射処理層や電子機器の誤作動を防止する近赤外線吸収層を適宜形成することができる。黒色層は、導電性又は絶縁性を有していても良いし、そうでなくても良い。また、本発明に係る電磁波シールド体は、PDPの前面パネルの一部として使用されるが、何らこれに限定されるものではない。例えば、FED等の他の機器に応用することもできる。PDPには、DC型、AC型、ハイブリッド型があるが、何ら限定されるものではない。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における電磁波シールド体の製造方法は、図1ないし図5に示すように、透明ガラス30の表面に感光性の黒色層34と銀層35とを順次重ねて積層形成する工程と、これらをパターン露光、現像するとともに、透明ガラス30の裏面側から黒色層34を露光して中間体37を形成する工程と、この中間体37を熱処理して電磁波シールド層31を導電パターン形成する工程とを備えるようにしている。
【0011】
透明ガラス30は、例えば耐熱性や透光性に優れる平面略矩形の半強化ガラス板からなる。この透明ガラス30は、例えば平坦なソーダライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が使用される。透明ガラス30の厚さは、特に限定されるものではないが、視認性や透光性確保の観点から薄いほうが好ましい。具体的には、視認性、透光性、機械的強度の観点から、0.05〜5mm、好ましくは1.5〜3.0mm程度の厚さに形成される。
なお、半強化ガラス板の「半強化」については、JIS R 3222(倍強化ガラス、以下同じ)の規定が一般的に適用されるが、この規定によっても、ガラス板の厚さが6〜10mmと厚いので、測定法と値だけで「半強化」と称することとする。
【0012】
黒色層34は、少なくとも紫外線により硬化可能な樹脂組成物を含有した黒色インクからなるとともに、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、沈殿防止剤等が必要に応じて加えられ、透明ガラス30の全表面に形成される。この黒色層34は、例えば、紫外線硬化型の樹脂組成物、黒色顔料、金属酸化物系着色剤、所定の溶剤等を適宜配合して調製される。
【0013】
銀層35は、例えば紫外線により硬化する樹脂組成物に導電性付与フィラー、換言すれば、入手の容易性、コスト、導電性、耐酸化性に優れる銀粒子を含有した銀インクからなる。この銀インクは、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、沈殿防止剤等が必要に応じて加えられ、黒色層34の全表面に重ねて形成される。
【0014】
黒色層34と銀層35に用いられる紫外線硬化型の樹脂組成物としては、水、アルカリ性水溶液、溶剤等により現像できれば良く、これらの中でも、解像度や作業性の観点からアルカリ性水溶液により現像可能な樹脂組成物が好ましい。このような樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、不飽和二重結合を有する架橋性モノマー又はオリゴマー、光重合開始剤からなることで達成される。
【0015】
アルカリ可溶性樹脂の具体例をあげると、例えばカルボン酸のような酸性基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体が最適である。酸性基の成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、コハク酸2‐メタクリロイルオキシエチル、コハク酸2‐アクリロイルオキシエチル、フタル酸2‐メタクリロイルオキシエチル、フタル酸2‐アクリロイルオキシエチル等があげられる。
【0016】
エチレン性不飽和成分としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n‐プロピルアクリレート、n‐プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n‐ブチルアクリレート、n‐ブチルメタクリレート、sec‐ブチルアクリレート、sec‐ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert‐ブチルアクリレート、tert‐ブチルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等があげられる。
アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像性を損なわない範囲で上記成分と他のモノマーとの種々の共重合体を使用することができる。
【0017】
不飽和二重結合を有する架橋性モノマーは、少なくとも1のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であり、光照射により光重合開始剤から発生したラジカルで反応し、アルカリ現像液に対する溶解性を低下させてパターンを形成する。具体的には、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2‐メトキシアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4‐ブタンジオールジアクリレート、1,5‐ペンタンジオールジアクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート、1,3‐プロパンジオールジアクリレート、1,4‐シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2‐ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4‐ブタントリオールトリアクリレート、2,2,4‐トリメチル‐1,3‐ペンタンジオールジアクリレート、1,10‐デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び上記アクリレートをメタクリレートに置き換えたもの、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1‐ビニル‐2‐ピロドリン等があげられる。なお、上記架橋性モノマーを2種以上組み合わせても良い。
【0018】
光重合開始剤は、通常のネガタイプのフォトリソグラフに使用可能であれば、特に限定されるものではない。具体的には、ベンゾフェノン、o‐ベンゾイル安息香酸メチル、4‐ジメチルアミノ安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α‐アミノアセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4‐ベンゾイル‐4‐メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトン、フルオレソン、2,2‐ジエトキシアセトフェノン、2,2‐ジメトキシ‐1,2‐ジフェニルエタン‐1‐オン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1 フェニルプロパン‐1‐オン、p‐t‐ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2‐メチルチオキサントン、2‐クロロチオキサントン、2‐イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジル‐メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2‐t‐ブチルアントラキノン、2‐アミルアントラキノン、β‐クロロアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4‐アジトベンザルアセトフェノン、2,6‐ビス(p‐アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6‐ビス(p‐アジトベンジリデン)‐4‐メチルシクロヘキサノン、2‐フェニル‐1,2ブタジオン‐2‐(o‐メトキシカルボニル)オキシム、1‐フェニル‐プロパンジオン‐2‐(o‐エトキシカルボニル)オキシム、1‐フェニル‐3‐エトキシ‐プロパントリオン‐2‐(o‐ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2メチル‐1〔4‐(メチルチオ)フェニル〕‐2‐モルフォリノプロパン‐1‐オン、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルフォニルクロライド、N‐フェニルチオアクドリン、4,4‐アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールスルフィド、トリフェニルフォスフィン、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド、カンファーキノン等であるが、2種以上併用することも可能である。
【0019】
銀粒子は、各種の分散剤により表面処理され、二次凝集の生じないことが好ましい。分散剤としては、熱処理工程で分解、あるいは揮発する性質のものが好適に使用される。また、銀粒子は、レーザ回析法に基づく測定で0.1〜0.5μmの平均粒径とされ、この平均粒子径±0.1μmの範囲に全粒子の30質量%以上が含まれる。これは、レーザ回析法による平均粒径が0.1μm未満の場合には、導電性確保のため、添加量を増加する必要があるからである。逆に、0.5μmを超える場合には、銀粒子同士の融着による導通を得るために高温を要し、特に透明基板として、透明ガラス又は半強化ガラスを用いた際にその強化の意義を喪失するおそれがある。
【0020】
銀粒子は、そのアスペクト(aspect ratio)比が0.7〜1.5以下の略球形に形成される。アスペクト比が0.7〜1.5以下なのは、アスペクト比が係る範囲から逸脱すると、光透過率が悪化し、微細なパターンを形成することが困難になるという理由に基づく。
【0021】
上記において、電磁波シールド体38を製造する場合には、先ず、所定の厚さの透明ガラス30を用意し(図1参照)、この透明ガラス30の全表面に黒色インクを塗布乾燥させて黒色層34を形成し、この全黒色層34上に銀インクを塗布乾燥させて銀層35を重ねて積層形成する(図2参照)。黒色層34や銀層35の形成に際しては、例えばロールコータやカーテンコータ等を用いることができる。
【0022】
電磁波シールド層31を形成する黒色層34と銀層35とを多層に積層形成したら、銀層35上にパターン部が透明でネガタイプのパターンマスク36を配置し、黒色層34と銀層35とを露光装置により部分的に露光(図3参照)して現像液に対して不溶化させ、所定の現像液により係る多層構造の透明ガラス30をスプレーやディッピング等の方法により現像し、黒色層34及び銀層35が所定のパターンに形成された中間体37を形成する(図4参照)。
【0023】
作業に使用するパターンマスク36は、銀層35に間隔をおいて対向させても良いが、解像度を向上させる観点から銀層35に密着させると良い。露光装置は、特に限定されるものではないが、メタルハライド灯を点灯させるフルネルレンズ使用の平行露光タイプ等が使用される。黒色層34及び銀層35は、現像時に露光されない不要領域が除去され、格子形、ストライプ形、幾何学模様等にパターン形成される。この際、透明ガラス30の裏面側から黒色層34を露光して耐食性等を向上させると良い。
【0024】
次いで、中間体37をオーブン等に投入して200〜600℃の温度で熱処理し、この熱処理を所定の時間維持して電磁波シールド層31を形成する銀層35を収縮させ、その後、所定温度に冷却する。そして、オーブンから中間体37を取り出した後、中間体37を所定時間放置して電磁波シールド層31を完全に導電パターン化すれば、電磁波シールド体38を製造することができる(図5参照)。
電磁波シールド層31におけるパターンの線幅は2〜40μmが好ましい。これは、線幅が2μm未満の場合には、電磁波のシールド特性が劣化し、パターンの断線を招くおそれがあるからである。逆に、線幅が40μmを超える場合には、透光性を維持するためにパターン間隔を広げる必要が生じ、透光性とシールド特性の両立が困難化することとなる。
【0025】
電磁波シールド体38を製造したら、透明ガラス30の裏面に近赤外線吸収層33を透明の接着剤により接着し、電磁波シールド層31に無反射処理層32を透明の接着剤により接着し、図示しない枠フレーム等と組み合わせる。こうすれば、前面パネル3を得ることができる。無反射処理層32は、必要がなければ、適宜省略することも可能である。
【0026】
上記によれば、透明ガラス30に銀層35を直接形成するのではなく、透明ガラス30と銀層35との間に、光線を吸収する無彩色の黒色層34を介在させるので、透明ガラス30が全体として曇ることがない。したがって、透明ガラス30に求められる視認性を著しく向上させることができる。また、銀インクの銀粒子をレーザ回析法に基づく測定で0.1〜0.5μmの平均粒子径とし、この平均粒子径±0.1μmの範囲に全銀粒子の30質量%以上を含ませ、かつ銀粒子のアスペクト比を1.5以下とするので、熱処理の温度、換言すれば、TMA(熱機械分析、以下同じ)による融着開始温度を300℃以下の低温にすることができる。したがって、中間体37を500℃程度の高温で焼成処理する必要性が全くないので、大型かつ高価な加熱設備を何ら必要とせず、昇温・冷却に長時間を要することもない。
【0027】
また、500℃前後の高温で焼成処理する必要がないことから、例え透明ガラス30が半強化ガラスの場合でも、鈍しをきわめて有効に抑制防止することができ、これを通じて透明ガラス強化の意義を没却するおそれを有効に排除することができる。さらに、透明ガラス30の裏面側から黒色層34を露光して透明ガラス30と黒色層34との境界面を硬化させれば、耐食性等が大幅に向上し、長期にわたり安定して使用することが可能になる。さらにまた、黒色層34と銀層35とをそれぞれ感光性とし、通常のフォトリソ法を用いるので、スクリーン印刷法や凸版印刷法等と比較して高精度のパターン形成が可能になり、しかも、製造工程とコストの削減が大いに期待できる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明に係る電磁波シールド体及びその製造方法の実施例について比較例と共に説明する。
実施例1〜4の電磁波シールド体と比較例1〜6の電磁波シールド体をそれぞれ所定の条件で製造し、各電磁波シールド体のシールド効果、強化維持、透光性、視認性について評価検討してその結果を表1にまとめた。
【0029】
実施例1〜4
先ず、厚さ2.5mmの透明ガラスを用意し、この透明ガラスの全表面に黒色インクをロールコータにより塗布乾燥させて黒色層を形成し、この全黒色層上に銀インクをロールコータにより塗布乾燥させて銀層を積層形成した。透明ガラスとしては、半強化ガラスであるソーダライムガラスを使用した。
【0030】
黒色インクは、表1に記載の樹脂成分、黒色顔料、溶剤であるメトキシブチルアセテートを使用して調製した。銀インクは、表1記載の樹脂成分、銀からなる導電性付与フィラー、溶剤であるメトキシブチルアセテートを使用して調製した。これら黒色インクと銀インクに含有されるUV樹脂は、スチレン‐無水マレイン酸共重合体系のアリカリ可溶性樹脂、架橋性モノマーであるポリエチレンギリコールジメタクリレート、光重合開始剤であるビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトンを、アルカリ可溶性樹脂及び架橋性モノマーの合計100質量部に対して各5質量部添加して調製した。
【0031】
なお、表1における黒色顔料と銀からなる導電性付与フィラーの配合比は樹脂材料に対する各材料の質量配合比を示し、厚さは黒色層と銀層の塗布乾燥後の厚さである。導電性付与フィラーの粒度分布は、平均粒径±0.1μmの範囲にある粒子の質量百分率で示した。
【0032】
次いで、銀層上に、ピッチ250μm、線幅20μmのパターンマスクを重ねて真空密着させ、黒色層と銀層とを平行光露光装置により部分的に露光して現像液に対して不溶化させ、係る多層構造の透明ガラスを1.0質量%の炭酸ナトリウム水溶液からなる現像液中に浸漬して現像し、黒色層及び銀層が所定のパターンに形成された中間体を形成した。
パターンマスクは、所定のパターンが透明のネガタイプとした。また、露光装置としては、3kWのメタルハライド灯を点灯させ、800J/cm2の露光量で露光するフルネルレンズ使用の平行露光タイプを用いた。
【0033】
現像に際しては、現像液中に多層構造の透明ガラスを35秒間静止状態でディップさせ、取り出し2秒以内に置換液(水道水)に10秒間静止した状態でディップし、その後、置換液から取り出して先端にフラットコーンノズルを装着したスプレーガンよりイオン交換水を0.4MPaの圧力で吹きかけて黒色層と銀層とをパターン化した。黒色層及び銀層のパターンは、15°のバイアスを有し、表1に記載した幅とピッチを有する格子形とした。
【0034】
そして、中間体をプログラマブルオーブンに投入して所定の条件で焼成処理し、その後、冷却した中間体を取り出して電磁波シールド層が導電パターン化された電磁波シールド体を得た。
焼成条件としては、室温から昇温スピード10℃/分で昇温し、表1記載の280℃に達したら、この温度を60分間維持した。表1における銀層の融着開始温度については、φ10mm、深さ50mmのキャビティ内に適量の導電性付与フィラーを投入し、φ9.95mmの円柱棒で200Nの力で押し固めて1〜3mmの厚さとなるよう試料を調整した後、TMAにより−1%の変位が認められた温度を融着開始温度とした。また、冷却に際しては、冷却スピード10℃/分で180℃まで冷却し、プログラマブルオーブンから取り出して室温まで放冷した。
【0035】
実施例1〜4では以上のようにして電磁波シールド体を製造したが、表1に示すように、実施例毎に銀層の平均粒径、粒度分布、アスペクト比、融着開始温度、熱処理条件を変更した。
【0036】
比較例1〜6
基本的には実施例の製造方法に準じるが、比較例毎に黒色層を省略したり、UV樹脂の代わりに熱可塑樹脂を使用したり、あるいは銀層の平均粒径、粒度分布、アスペクト比、融着開始温度、熱処理条件等を変更した。銀層のUV樹脂の代わりに使用する熱可塑樹脂としては、スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン共重合樹脂を用いた。この熱可塑樹脂を用いる場合、透明ガラスの全表面に銀インクをスクリーン印刷法により直接印刷して銀層を形成するとともに、15°のバイアスを有し、表1に記載した幅とピッチを有する格子形のパターンとした。黒色層を省略したのは、全面に亘ってパターンを位置決めすることが事実上できなかったからである。
【0037】
シールド効果
実施例と比較例における各電磁波シールド体を縦横20cm×20cmの大きさに切り出し、アドバンテスト法により、周波数0.1MHz〜1GHzの範囲における電磁波の減衰率(dB)を測定し、係る周波数範囲における各電磁波シールド体のシールド効果を評価した。評価に際しては、シールド効果の指標として周波数200MHzにおける電磁波の減衰率を以下の評価基準に基づき評価し、表1にまとめた。
〔評価基準〕
◎ :51dB超
○ :40を超え、50dB
△ :20を超え、40dB
× :10を超え、20dB
××: 0〜10dB
【0038】
強化維持
JIS R 3222の規定により、熱処理前後の表面圧縮応力を測定し、熱処理後の測定値が熱処理前の測定値に対し、±10%以内の変化割合の場合には、「OK」とした。これに対し、±10%以外の変化割合の場合には、「NG」とした。
【0039】
透光性
実施例と比較例における各電磁波シールド体の可視光線(波長400〜700nm)の分光透過率を測定し、最低値を指標として各電磁波シールド体の透光性を以下の評価基準に基づいて評価し、表1にまとめた。
〔評価基準〕
◎ :71%超
○ :60を超え、70%
△ :50を超え、60%
× :40を超え、50%
××: 0〜40%
【0040】
視認性
実施例と比較例における各電磁波シールド体の電磁波シールド層を内側にし、これをPDPパネルにおける表示画面の前面に5mmの空隙を設けて設置し、表示画面の視認性を以下の評価基準に基づいて評価し、表1にまとめた。
〔評価基準〕
◎ :ムラやメッシュが全く見られず、コントラストが非常に高く、きわめて良好な画像が得られた。
○ :ムラやメッシュが全く見られず、コントラストが実に高く、良好な画像が得られた。
△ :かすかにムラやメッシュが確認された。
× :全面に亘ってムラやメッシュが確認された。
【0041】
【表1】
【0042】
検討結果
実施例1
シールド効果、強化維持、透光性、視認性について、きわめて良好な性能を有する電磁波シールド体を得ることができた。
実施例2
銀粒子の平均粒径が実施例1よりも大きいので、融着開始温度が若干上昇した。このため、熱処理時の融着度が低下してシールド効果の低下を招いたが、実用上問題を生じなかった。その他の強化維持、透光性、視認性については、良好な性能を有する電磁波シールド体を得ることができた。
【0043】
実施例3
銀粒子の平均粒径が実施例1よりも小さく、粒度分布が若干ブロードな銀粒子を使用したので、融着開始温度が低下した。このため、熱処理温度を低めに設定したが、シールド効果、強化維持、透光性、視認性に関し、きわめて良好な性能の電磁波シールド体を得た。
実施例4
銀粒子のアスペクト比が実施例1よりも大きいので、融着開始温度が若干上昇した。現像性やシールド効果が僅かながら低下したが、実用上問題を生じなかった。その他の強化維持、透光性、視認性に関しては、良好な性能の電磁波シールド体を得た。
【0044】
比較例1
融着開始温度が低く、低温で融着処理することができたものの、銀粒子の平均粒径が0.1〜0.5μm外の0.05μmなので、現像性が非常に悪く、パターンが崩壊した。この結果、シールド効果や視認性について、実に劣悪な性能の電磁波シールド体しか得ることができなかった。
比較例2
銀粒子の平均粒径が0.1〜0.5μm外の0.6μmなので、融着開始温度が上昇した。透明ガラスの強化を維持するため、300℃で熱処理したところ、シールド効果が劣悪な電磁波シールド体しか得ることができなかった。
【0045】
比較例3
比較例2と同様にして融着温度を十分に超える値に熱処理温度を設定した。シールド効果は実用上問題のないレベルに達したものの、透明ガラスの強度が低下した。
比較例4
銀粒子のアスペクト比1.5を超える1.8なので、現像性が非常に悪く、パターンが崩壊した。この結果、シールド効果や視認性に関して実に劣悪な性能の電磁波シールド体しか得られなかった。
【0046】
比較例5
銀粒子の粒度分布が本発明の範囲外のブロードな銀粒子を使用したので、融着開始温度が著しく上昇した。十分なシールド効果を得るため、高温で熱処理したところ、透明ガラスの強度が低下した。
比較例6
黒色層を省略し、透明ガラスの全表面に銀インクをスクリーン印刷法により直接形成して銀層を形成した。十分なシールド効果を得ることができたが、視認性の低下を招き、透明ガラスの強度が低下した劣悪な電磁波シールド体しか得られなかった。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、熱処理の低温化を通じて高価な加熱設備を省略することができ、しかも、透明基板が強化ガラス等の場合、強化の意義を失うことがないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施形態における透明ガラスを示す模式説明図である。
【図2】本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施形態における透明ガラスの全表面に黒色インクからなる黒色層を塗布して乾燥させ、この全黒色層上に銀インクからなる銀層を塗布形成する状態を示す模式説明図である。
【図3】本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施形態における銀層上にパターンマスクをセットし、黒色層と銀層を紫外線により露光する状態を示す模式説明図である。
【図4】本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施形態における黒色層及び銀層が所定のパターンに形成された中間体を示す模式説明図である。
【図5】本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施形態における電磁波シールド層を完全に導電パターン化した電磁波シールド体を示す模式説明図である。
【図6】プラズマディスプレイを示す全体斜視説明図である。
【図7】プラズマディスプレイの前面パネルを示す説明図である。
【符号の説明】
1 PDP
3 前面パネル
30 透明ガラス(透明基板)
31 電磁波シールド層
34 黒色層
35 銀層
36 パターンマスク
37 中間体
38 電磁波シールド体
Claims (4)
- 透明基板の電磁波シールド層を、透明基板の一面に形成される黒色層と、この黒色層に重ねて形成される銀層とから構成した電磁波シールド体であって、
銀層を、紫外線により硬化する樹脂組成物に銀粒子を含有した銀インクにより形成するようにし、この銀インクの銀粒子をレーザ回析法による測定で0.1〜0.5μmの平均粒子径とするとともに、この平均粒子径±0.1μmの範囲に全銀粒子の30質量%以上を含ませ、銀粒子のアスペクト比を1.5以下にするようにしたことを特徴とする電磁波シールド体。 - 透明基板を、強化ガラスと半強化ガラスのいずれか一方とした請求項1記載の電磁波シールド体。
- 電磁波をシールドする電磁波シールド体の製造方法であって、
透明基板の一面に感光性の黒色層と銀層とを重ねて形成する工程と、これらをパターン露光、現像して中間体を形成する工程と、この中間体を熱処理して電磁波シールド層を導電形成する工程とを含み、
銀層を、紫外線により硬化する樹脂組成物に銀粒子を含有した銀インクにより形成し、この銀インクの銀粒子をレーザ回析法による測定で0.1〜0.5μmの平均粒子径とするとともに、この平均粒子径±0.1μmの範囲に全銀粒子の30質量%以上を含ませ、銀粒子のアスペクト比を1.5以下とすることを特徴とする電磁波シールド体の製造方法。 - 透明基板を、強化ガラスと半強化ガラスのいずれか一方とする請求項3記載の電磁波シールド体の製造方法。
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100658429B1 (ko) | 2005-03-02 | 2006-12-15 | 김관 | 화학석판인쇄방법 |
JP2008276220A (ja) * | 2007-04-27 | 2008-11-13 | Samsung Sdi Co Ltd | フィルタ、およびプラズマディスプレイ装置 |
KR101186834B1 (ko) | 2011-07-07 | 2012-09-28 | 정성표 | 전자파 차폐기능을 갖는 휴대단말기용 보호커버 |
US9305854B2 (en) | 2012-08-21 | 2016-04-05 | Stats Chippac, Ltd. | Semiconductor device and method of forming RDL using UV-cured conductive ink over wafer level package |
-
2003
- 2003-03-24 JP JP2003080622A patent/JP2004288973A/ja active Pending
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