JP2004259877A - 電磁波シールド体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】視認性を損なうことがなく、しかも、導電性の発現や保持力を確保できる電磁波シールド体の製造方法を提供する。
【解決手段】透明ガラス30の表面に紫外線により硬化する黒色層34と導電層35とを順次重ねて積層形成する工程と、これらをパターンマスク36を介してパターン露光、現像するとともに、透明ガラス30の裏面側から黒色層34を露光して中間体を形成する工程と、中間体を熱処理して電磁波シールド層を導電パターン形成する工程とを備える。そして、電磁波シールド層の熱処理後におけるマイクロビッカース硬さを30〜95Hvの範囲とする。透明ガラス30と導電層35の間に、光線を吸収する無彩色の黒色層34を介在させるので、透明ガラス30が全体として曇ることがなく、透明ガラス30に求められる視認性を向上させ得る。
【選択図】 図3
【解決手段】透明ガラス30の表面に紫外線により硬化する黒色層34と導電層35とを順次重ねて積層形成する工程と、これらをパターンマスク36を介してパターン露光、現像するとともに、透明ガラス30の裏面側から黒色層34を露光して中間体を形成する工程と、中間体を熱処理して電磁波シールド層を導電パターン形成する工程とを備える。そして、電磁波シールド層の熱処理後におけるマイクロビッカース硬さを30〜95Hvの範囲とする。透明ガラス30と導電層35の間に、光線を吸収する無彩色の黒色層34を介在させるので、透明ガラス30が全体として曇ることがなく、透明ガラス30に求められる視認性を向上させ得る。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)の表示画面等から放射される電磁波をシールドする電磁波シールド体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カラーテレビには様々なタイプがあるが、近年、図6に示すようなカラーのPDP1が注目されている。このPDP1は、発光部であるパネル本体2と、このパネル本体2の前面に装着される前面パネル3とを備え、視野角、応答速度、低消費電力に優れるという特徴を有している。
【0003】
前面パネル3は、図7に示すように、透明ガラス30の表面に電磁波シールド層31と無反射処理層32とが順次積層され、透明ガラス30の裏面には近赤外線吸収層33が積層形成されている。透明ガラス30の表面には、電磁波をシールド(遮蔽)して周囲の電気・電子機器や人体等に対する悪影響を抑制防止する電磁波シールド層31が形成されるが、この電磁波シールド層31を形成する場合には、例えば透明ガラス30の表面に、導電性の金属粉末を含有したインクをスクリーン印刷法によりパターン形成する方法が採用される(特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭62‐57297号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平9‐283977号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電磁波シールド体は、以上のように透明ガラス30に、金属粉末含有のインクをスクリーン印刷法により単にパターン形成しているが、これでは、パターンの形成に伴い、透明ガラス30が全体として曇るので、透明ガラス30に求められる重要な視認性を損なうという問題がある。また、導電性の発現や保持力を十分に確保できないおそれもある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたもので、視認性を損なうことがなく、しかも、導電性の発現や保持力を確保することのできる電磁波シールド体の製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、上記課題を達成するため、電磁波をシールドするものの製造方法であって、
透明基板の一面に感光性の視認性保持層と導電層とを重ねて形成する工程と、これらをパターン露光、現像して中間体を形成する工程と、この中間体を熱処理して電磁波シールド層を導電化する工程とを含み、
電磁波シールド層の熱処理後におけるマイクロビッカース硬さを30〜95Hvの範囲とすることを特徴としている。
【0009】
なお、視認性保持層を、紫外線により硬化する樹脂組成物を含有する黒色インクにより形成し、
導電層を、熱重量分析における5%重量減少温度が200〜350℃の範囲にあり、紫外線により硬化する第一の樹脂組成物、この第一の樹脂組成物よりも5%重量減少温度が50℃以上高い第二の樹脂組成物、及び導電性付与フィラーを含有した導電インクにより形成することが好ましい。
また、導電層の第二の樹脂組成物に対する導電性付与フィラーの配合割合を、容量比で1:1〜1:5の範囲とすることが好ましい。
【0010】
ここで特許請求の範囲における透明基板としては、強化ガラスの他、歪みの問題を生じなければ、例えばアクリル基板等が使用される。この透明基板には、電磁波シールド層の他、無反射処理層や電子機器の誤作動を防止する近赤外線吸収層を適宜形成することができる。視認性保持層は、黒色層を形成する黒インクが主に使用されるが、光線を吸収し、視認性を確保することができるのであれば、特に限定されるものではない。この視認性保持層は、導電性又は絶縁性を有していても良いし、そうでなくても良い。
【0011】
マイクロビッカース硬さとは、最小荷重を1〜100gとした場合のビッカース硬さをいう。本発明に係る電磁波シールド体は、PDPの前面パネルの一部として使用されるが、何らこれに限定されるものではない。例えば、FED等の他の機器に応用することもできる。PDPには、DC型、AC型、ハイブリッド型があるが、何ら限定されるものではない。
【0012】
本発明によれば、透明基板に導電層を直接設けるのではなく、透明基板と導電層との間に、光線を吸収する視認性保持層を介在させ、透明基板に導電層を間接的に設けるので、透明基板の曇りを抑制することができる。したがって、透明基板の視認性を向上させることができる。
また、熱処理後における電磁波シールド層のマイクロビッカース硬さを30〜95Hvの範囲とすれば、電磁波シールド層における初期の耐久性を維持したり、パターンの耐久性を確保することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における電磁波シールド体の製造方法は、図1ないし図5に示すように、透明ガラス30の表面に紫外線硬化型の黒色層34と導電層35とを順次重ねて積層形成する工程と、これらをパターンマスク36を介してパターン露光、現像するとともに、透明ガラス30の裏面側から黒色層34を露光して中間体37を形成する工程と、この中間体37を熱処理して電磁波シールド層31を導電パターン形成する工程等を備えるようにしている。
【0014】
透明ガラス30は、例えば強化されて耐熱性や透光性に優れる平面略矩形のガラス板からなる。この透明ガラス30は、例えば平坦なソーダライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が使用される。透明ガラス30の厚さは、特に限定されるものではないが、視認性や透光性の確保の観点から薄いほうが良い。具体的には、視認性、透光性、機械的強度の観点から、0.05〜5mm、好ましくは1.5〜3.0mm程度の厚さに形成される。
【0015】
黒色層34は、少なくとも紫外線により硬化可能な樹脂組成物を含有した黒色インクからなるとともに、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、沈殿防止剤等が必要に応じて加えられ、透明ガラス30の全表面に形成される。この黒色層34は、例えば、紫外線硬化型の樹脂組成物、黒色顔料、金属酸化物系着色剤、所定の溶剤等を適宜配合して調製される。
【0016】
導電層35は、熱重量分析における5%重量減少温度が200〜350℃の範囲にあり、紫外線により硬化する第一の樹脂組成物と、この第一の樹脂組成物よりも5%重量減少温度が50℃以上高い第二の樹脂組成物と、金属粒子等からなる導電性付与フィラーとを含有した導電インクからなり、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、沈殿防止剤等が必要に応じて加えられており、黒色層34の全表面に重ねて形成される。
【0017】
紫外線により硬化する黒色層34の樹脂組成物、そして導電層35の第一の樹脂組成物としては、水、アルカリ性水溶液、溶剤等により現像できれば良く、これらの中でも、解像度や作業性の観点からアルカリ性水溶液により現像可能な樹脂組成物が望ましい。このような樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、不飽和二重結合を有する架橋性モノマー又はオリゴマー、光重合開始剤からなることで達成される。
【0018】
アルカリ可溶性樹脂の具体例をあげると、例えばカルボン酸のような酸性基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体が最適である。酸性基の成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、コハク酸2‐メタクリロイルオキシエチル、コハク酸2‐アクリロイルオキシエチル、フタル酸2‐メタクリロイルオキシエチル、フタル酸2‐アクリロイルオキシエチル等があげられる。
【0019】
エチレン性不飽和成分としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n‐プロピルアクリレート、n‐プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n‐ブチルアクリレート、n‐ブチルメタクリレート、sec‐ブチルアクリレート、sec‐ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert‐ブチルアクリレート、tert‐ブチルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等があげられる。
アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像性を損なわない範囲で上記成分と他のモノマーとの種々の共重合体を使用することができる。
【0020】
不飽和二重結合を有する架橋性モノマーは、少なくとも1のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であり、光照射により光重合開始剤から発生したラジカルで反応し、アルカリ現像液に対する溶解性を低下させてパターンを形成する。具体的には、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2‐メトキシアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4‐ブタンジオールジアクリレート、1,5‐ペンタンジオールジアクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート、1,3‐プロパンジオールジアクリレート、1,4‐シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2‐ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4‐ブタントリオールトリアクリレート、2,2,4‐トリメチル‐1,3‐ペンタンジオールジアクリレート、1,10‐デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び上記アクリレートをメタクリレートに置き換えたもの、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1‐ビニル‐2‐ピロドリン等があげられる。なお、上記架橋性モノマーを2種以上組み合わせても良い。
【0021】
光重合開始剤は、通常のネガタイプのフォトリソグラフに使用可能であれば、特に限定されるものではない。具体的には、ベンゾフェノン、o‐ベンゾイル安息香酸メチル、4‐ジメチルアミノ安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α‐アミノアセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4‐ベンゾイル‐4‐メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトン、フルオレソン、2,2‐ジエトキシアセトフェノン、2,2‐ジメトキシ‐1,2‐ジフェニルエタン‐1‐オン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1 フェニルプロパン‐1‐オン、p‐t‐ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2‐メチルチオキサントン、2‐クロロチオキサントン、2‐イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジル‐メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2‐t‐ブチルアントラキノン、2‐アミルアントラキノン、β‐クロロアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4‐アジトベンザルアセトフェノン、2,6‐ビス(p‐アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6‐ビス(p‐アジトベンジリデン)‐4‐メチルシクロヘキサノン、2‐フェニル‐1,2ブタジオン‐2‐(o‐メトキシカルボニル)オキシム、1‐フェニル‐プロパンジオン‐2‐(o‐エトキシカルボニル)オキシム、1‐フェニル‐3‐エトキシ‐プロパントリオン‐2‐(o‐ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2メチル‐1〔4‐(メチルチオ)フェニル〕‐2‐モルフォリノプロパン‐1‐オン、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルフォニルクロライド、N‐フェニルチオアクドリン、4,4‐アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールスルフィド、トリフェニルフォスフィン、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド、カンファーキノン等であるが、2種以上併用することも可能である。
【0022】
なお、導電インク中に、金属粒子等からなる導電性付与フィラーを含む場合には、導電性付与フィラーを含まない場合に比べ、紫外線の透過が阻害されるおそれが考えられる。
そこで、透過性の高い比較的長波長の紫外線に基づく重合の開始を実現するため、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド、又は2‐メチル‐1〔4‐(メチルチオ)フェニル〕‐2‐モルフォリノプロパン‐1‐オンを使用することが好ましい。さらに、これらに、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトン、又は2,2‐ジメトキシ‐1,2‐ジフェニルエタン‐1‐オンを併用すると良い。
【0023】
第一の樹脂組成物は、熱重量分析における5%重量減少温度が200〜350℃の範囲とされる。これは、200℃未満の場合には、導電性付与フィラーの融着に基づく高い導電性を得ることが困難になるからである。逆に、350℃を超える場合には、第二の樹脂組成物の使用範囲が狭くなり、本実施形態における製造方法の実施範囲が狭まるからである。
【0024】
第二の樹脂組成物は第一の樹脂組成物との関係で選択される。この第二の樹脂組成物は、重量減少温度の差が大きいほど好ましく、この点からすると、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、及びこれらの前駆体が用いられる。
【0025】
導電性付与フィラーとしては、例えば高い導電率を有する金属粒子、具体的には金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金の粒子等があげられる。これらは、単独で使用しても良いが、複数種を併用することもできる。これらの金属粒子の中では、入手の容易性、コスト、導電性、耐酸化性の観点から銀の粒子が望ましい。また、金属粒子は、各種の分散剤により表面処理され、二次凝集の生じないことが望ましい。分散剤としては、熱処理工程で分解、あるいは揮発する性質のものが好適に使用される。
【0026】
金属粒子は、平均粒径が0.05〜1μm、好ましくは0.07〜0.8μmに形成されるとともに、真球度が0.7以上、好ましくは0.8以上の略球形に形成される。これは、平均粒径が0.05μm未満の場合には、導電性確保のために添加量を増加する必要があるからである。逆に、1μmを超える場合には、光透過率に悪影響を与え、微細なパターンを得ることができなくなる。また、真球度が0.7未満の場合には、光透過率が悪化し、微細なパターンを形成することが困難になるという理由に基づく。この真球度の測定に際しては、金属粒子を適当な分散媒に分散させて顕微鏡等により拡大観察し、個々の粒子の長径、短径を計測し、真球度=短径/長径により算出したものの平均値とする。
【0027】
金属粒子の粒径バラツキは、3σで平均粒径の値以下が好ましい。これは、金属粒子の粒径バラツキが大き過ぎると、大きな金属粒子間に小さな金属粒子が侵入し、良好な光線透過率を得ることが困難になるからである。
【0028】
上記において、電磁波シールド体38を製造する場合には、先ず、所定の厚さの透明ガラス30を用意し(図1参照)、この透明ガラス30の全表面に黒色インクからなる黒色層34を塗布形成して乾燥させ、この全黒色層34上に導電層35を重ねて塗布形成して乾燥させる(図2参照)。導電層35の形成に際しては、例えばスクリーン印刷法、ロールコータ、カーテンコータ等を用いることができる。
【0029】
黒色層34と導電層35とを多層に積層形成したら、導電層35上に所定のパターン付きのパターンマスク36を配置し、黒色層34と導電層35とを露光装置の紫外線により部分的に露光(図3参照)して現像液に対して不溶化させ、所定の現像液により係る多層構造の透明ガラス30をスプレーやディッピング等の方法により現像し、黒色層34及び導電層35が所定のパターンに形成された中間体37を形成する(図4参照)。この現像作業の際、透明ガラス30の裏面側から黒色層34を露光すれば、耐食性等を向上させることができる。
【0030】
上記作業に使用する露光装置は、特に限定されるものではないが、図3に矢印で示す紫外線を照射して一括露光するタイプが好ましい。また、パターンマスク36は、導電層35に間隔をおいて対向させても良いが、解像度を向上させる観点から導電層35に密着させると良い。黒色層34及び導電層35は、現像時に露光されない不要領域が除去され、格子形、ストライプ形、幾何学模様等にパターン形成される。
【0031】
次いで、中間体37をオーブン等に投入して200〜600℃の温度で熱処理し、この熱処理を所定の時間維持して所定温度に冷却する。そして、オーブンから中間体37を取り出し、その後、中間体37を所定時間放置して電磁波シールド層31を完全に導電パターン化すれば、電磁波シールド体38を製造することができる(図5参照)。
【0032】
電磁波シールド層31におけるパターンの線幅は2〜40μmが好ましい。これは、線幅が2μm未満の場合には、電磁波のシールド特性が劣化し、パターンの断線を招くおそれがあるからである。逆に、線幅が40μmを超える場合には、透光性とシールド特性の両立が困難化するという理由に基づく。また、熱処理後における電磁波シールド層31、より詳しくは、導電層35のマイクロビッカース硬さは、30〜95Hv、好ましくは45〜80Hvの範囲とされる。これは、30Hv未満の場合には、初期の耐久性が低減し、95Hvを超える場合には、熱衝撃試験等によるパターン耐久性が劣化するからである。
【0033】
電磁波シールド体38を製造したら、透明ガラス30の裏面に近赤外線吸収層33を透明の接着剤により接着し、電磁波シールド層31に無反射処理層32を透明の接着剤により接着し、図示しない枠フレーム等と組み合わせる。こうすれば、前面パネル3を得ることができる。
なお、無反射処理層32は、必要がなければ、適宜省略することができる。
【0034】
上記によれば、透明ガラス30に導電層35を直接形成するのではなく、透明ガラス30と導電層35との間に、光線を吸収する無彩色の黒色層34を介在させるので、透明ガラス30が全体として曇ることがない。したがって、透明ガラス30に求められる視認性を著しく向上させることができる。また、熱処理後における電磁波シールド層31のマイクロビッカース硬度を30〜95Hvの範囲とすれば、電磁波シールド層31における初期の耐久性を確実に維持したり、導電性の発現、パターンの耐久性や保持力を有効に確保することができる。
【0035】
また、黒色層34と導電層35とをそれぞれ感光性とし、通常のフォトリソ法を用いるので、スクリーン印刷法や凸版印刷法等と比較して高精度のパターン形成が可能になり、しかも、製造工程とコストの削減が大いに期待できる。また、導電層35の第二の樹脂組成物に対する導電性付与フィラーの配合割合を、容量比で1:1〜1:5の範囲とすれば、導電性付与フィラーの量を十分に確保し、しかも、導電性、シールド性、耐久性を有効に維持することが可能になる。さらに、透明ガラス30の裏面側から黒色層34を露光して透明ガラス30と黒色層34との境界面を硬化させれば、耐食性等が向上し、長期にわたり安定して使用することが可能になる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施例について比較例と共に説明する。
実施例1,2,3,4、比較例1,2,3,4,5の電磁波シールド体をそれぞれ製造し、各電磁波シールド体のシールド効果、透光性、視認性、マイクロビッカース硬度、パターン耐久性を試験してその結果を表1にまとめた。
【0037】
実施例1
先ず、厚さ2.5mmの透明ガラスを用意し、この透明ガラスの全表面に黒色インクからなる黒色層を塗布形成して乾燥させ、この全黒色層上に導電インクからなる導電層を重ねて塗布形成して乾燥させた。透明ガラスとしては、ソーダライムガラスを使用した。また、黒色インクは、表1に記載した樹脂成分、黒色顔料、溶剤であるメトキシブチルアセテートを調製して製造した。表1の黒色顔料の配合比は、樹脂材料に対する容量配合比である。この黒色層の塗布乾燥後における厚さは1μmとした。
【0038】
導電層は、表1に記載した樹脂成分、導電性付与フィラー、溶剤であるメトキシブチルアセテートを調製して製造した。表1の導電性付与フィラーの配合比は、樹脂材料に対する容量配合比である。この導電層の塗布乾燥後における厚さは10μmに設定した。
【0039】
なお、表1に記載した樹脂成分中、UV▲1▼は、スチレン‐無水マレイン酸共重合体系のアルカリ可溶性樹脂、架橋性モノマーであるポリエチレングリコールジメタクリレート、光重合開始剤であるビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイドと1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトンを、アルカリ可溶性樹脂及び架橋性モノマーの合計100質量部に対して光重合開始剤を各5質量部添加したものである。
【0040】
また、表1に記載した樹脂成分中、UV▲2▼は、酸価100(mg・KOH/g)のトリスフェノールメタン型エポキシアクリレートオリゴマーにUV▲1▼と同様の光重合開始剤を添加したものであり、UV▲3▼は酸価100(mg・KOH/g)のフェノールノボラック型エポキシアクリレートオリゴマーにUV▲1▼と同様の光重合開始剤を添加したものである。PIはポリイミド樹脂〔株式会社丸善石油製 商品名BANI‐H〕であり、熱可塑▲1▼はスチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン共重合樹脂を示す。
【0041】
次いで、銀色層からなる導電層上にパターンマスクを重ねて配置し、黒色層と導電層とを露光装置により部分的に露光して現像液に対して不溶化させ、1.0質量%の炭酸ナトリウム水溶液からなる現像液中に係る多層構造の透明ガラスを浸漬して現像し、黒色層及び導電層が所定のパターンに形成された中間体を形成した。
パターンマスクは、所定のパターンが透明のネガタイプとした。また、露光装置については、3kWメタルハライドランプを備えたフルネルレンズ使用の平行光露光装置を使用することとし、紫外線の露光量を800mJ/cm2に設定した。黒色層及び導電層は、15°のバイアスを有し、表1記載の幅、ピッチを有する格子形のパターンに形成した。
【0042】
次いで、中間体をプログラマブルオーブン等に投入して室温から昇温スピード10℃/分で昇温し、表1の熱処理条件欄に記載の300℃で熱処理し、この温度を60分間維持した。そして、冷却スピード10℃/分で180℃まで冷却したところで中間体を取り出し、その後、中間体を室温まで放冷して電磁波シールド層が導電化された電磁波シールド体を製造した。
熱処理後における電磁波シールド層のパターン幅は10μmとし、パターンピッチは0.2mmに設定した。本実施例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件を表1に示す。
【0043】
実施例2
実施例1と略同様であるが、真球状ではない銀フレークを導電性付与フィラーとし、熱処理後の電磁波シールド層のパターン幅を20μmに設定するとともに、パターンピッチを0.25mmに設定した。本実施例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件を表1に示す。
実施例3
実施例1と略同様であるが、導電層の第二の樹脂組成物に対する導電性付与フィラーの配合割合を、容量比で1:1から1:5に変更した。本実施例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件を表1に示す。
【0044】
実施例4
第一、第二の樹脂組成物にそれぞれUV硬化樹脂を使用した他は、実施例1と略同様である。本実施例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件は表1に示す通りである。
【0045】
比較例1
黒色層と導電層の各樹脂成分をUV樹脂ではなく、ポリイミド樹脂と熱可塑性樹脂とした。また、UV露光を採用するのではなく、透明ガラスの全表面に黒色インクからなる黒色層を部分的にスクリーン印刷して乾燥させ、この全黒色層上に導電インクからなる導電層を部分的にスクリーン印刷して乾燥させた。本比較例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件を表1に示す通りである。
【0046】
比較例2
黒色インクを省略し、透明ガラスの全表面に、UV樹脂含有の導電インクからなる導電層を直接塗布して乾燥させ、その後、UV露光することとした。本比較例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件、評価結果は表1に示す通りである。
比較例3
黒色インクを省略し、透明ガラスの全表面に、熱可塑性樹脂含有の導電インクからなる導電層をスクリーン印刷して乾燥させた。電磁波シールド層のパターン幅は広く50μmとし、パターンピッチは0.3mmに設定した。本比較例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件を表1に示す。
【0047】
比較例4
第一、第二の樹脂組成物の5%重量減少温度差を33℃とし、熱処理後における電磁波シールド層のマイクロビッカース硬さを30〜95Hvの範囲外の97Hvとした。本比較例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件を表1に示す。
比較例5
導電層の第二の樹脂組成物に対する導電性付与フィラーの配合割合を、容量比で1:1から1:0.5に変更した。本実施例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件を表1に示す。
【0048】
シールド効果試験
各電磁波シールド体を縦横20×20cmにカットし、アドバンテスト法により周波数0.1MHz〜1GHzの範囲における電磁波の減衰率(dB)を測定し、上記周波数における各電磁波シールド体のシールド効果を評価した。表1には、シールド効果の指標として、周波数200MHzにおける電磁波の減衰率(dB)を以下の評価基準で評価した結果を記載した。
〔評価基準〕
××: 0〜10dB以下
× :10超過〜20dB以下
△ :20超過〜40dB以下
○ :40超過〜50dB以下
◎ :51dB超
【0049】
透光性試験
各電磁波シールド体の可視光線(波長400〜700nm)の分光透過率を測定し、その最低値を指標として各電磁波シールド体の透光性を以下の評価基準で評価した。
〔評価基準〕
××: 0〜40%以下
× :40超過〜50%以下
△ :50超過〜60%以下
○ :60超過〜70%以下
◎ :71%超
【0050】
視認性試験
各電磁波シールド体の電磁波シールド層を内側にし、これをPDPの表示画面の前面に5mmの間隔を空けて設置し、表示画面の視認性を以下の評価基準で評価した。
〔評価基準〕
× :全面に亘ってムラやメッシュを確認した
△ :かすかにムラやメッシュを確認した
○ :ムラやメッシュを全く確認することがなく、しかも、コントラストも十分に高く、良好な画像を得た
◎ :ムラやメッシュを全く確認することがなく、しかも、コントラストが著しく高く、きわめて良好な画像を得た
【0051】
マイクロビッカース硬度試験
各電磁波シールド体を超微小硬度計〔島津製作所製 商品名DUH‐200〕にセットした。そして、三角錐圧子(115°)、試験荷重0.5g、負荷速度2の条件で試験した。
【0052】
パターン耐久性試験
各電磁波シールド体の電磁波シールド層領域に、プラスチック消しゴムを接触面積10mm×10mm、荷重2kgの条件で接触させ、動作幅50mm、動作スピード60往復/分で試験し、目視によりカスレの認められた時点における往復回数で以下の基準により評価した。
〔評価基準〕
×× :30往復未満
× :30〜59往復
△ :60〜299往復
○ :300〜599往復
◎ :600往復超
【0053】
【表1】
【0054】
試験結果
実施例1の電磁波シールド体に関しては、非常に良好なシールド効果、透光性、視認性、マイクロビッカース硬度、パターン耐久性を確認した。
実施例2の電磁波シールド体に関しては、導電性付与フィラーとして真球状ではない銀フレークを使用する関係上、UV透過性の低下を招くことが予想されたため、熱処理後における電磁波シールド層のパターン幅を20μmの広めに設定するとともに、パターンピッチも0.25mmと広くした。この結果、非常に良好なシールド効果、透光性、視認性、マイクロビッカース硬度、パターン耐久性を確認した。
【0055】
実施例3の電磁波シールド体に関しては、パターン耐久性について実施例1には及ばないものの、実用レベルでは問題ないのを確認した。その他のシールド効果、透光性、視認性、マイクロビッカース硬度については実に良好な結果を得ることができた。
実施例4の電磁波シールド体に関しては、実施例1同様、非常に良好なシールド効果、透光性、視認性、マイクロビッカース硬度、パターン耐久性を得ることができた。
【0056】
これに対し、比較例1の電磁波シールド体については、黒色層と導電層をスクリーン印刷したが、これら黒色層と導電層の重ねあわせが非常に困難であり、結果として位置ずれを招き、十分な透光性や視認性を得ることができなかった。また、パターン耐久性については試験することができなかった。
比較例2の電磁波シールド体については、十分なシールド効果と透光性を得ることができたものの、導電層が銀色のために反射して十分な視認性を確認することができず、実用可能な品質レベルに到達しなかった。また、パターン耐久性については、若干の劣化が判明した。
【0057】
比較例3の電磁波シールド体については、実用上問題のないシールド効果を得ることができたが、導電層が銀色のために全体として曇り、十分な透光性、視認性を得られなかった。また、パターン耐久性については、若干の劣化が判明した。
比較例4の電磁波シールド体については、樹脂の分解を制御することができず、電磁波シールド層のパターン硬度が高くなり、特に熱衝撃試験実施後のパターン耐久性が著しく悪化した。
【0058】
さらに、比較例5の電磁波シールド体に関しては、導電層の第二の樹脂組成物に対する導電性付与フィラーの配合割合を1:0.5としたので、熱処理後における導電性付与フィラーの量が不足して導電性が低下した。さらにまた、電磁波シールド層のパターン硬度が不足し、パターン耐久性の悪化を招いた。
【0059】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、透明基板の一面に感光性の視認性保持層と導電層とを重ねて形成する工程と、これらをパターン露光、現像して中間体を形成する工程と、この中間体を熱処理して電磁波シールド層を導電化する工程とを含み、電磁波シールド層の熱処理後におけるマイクロビッカース硬さを30〜95Hvの範囲とするので、視認性を損なうことがないという効果がある。また、導電性の発現や保持力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施形態における透明ガラスを示す模式説明図である。
【図2】本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施形態における透明ガラスの全表面に黒色層を塗布して乾燥させ、この全黒色層上に導電層を塗布する状態を示す模式説明図である。
【図3】本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施形態における導電層上にパターンマスクをセットし、黒色層と導電層を紫外線により露光する状態を示す模式説明図である。
【図4】本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施形態における黒色層及び導電層が所定のパターンに形成された中間体を示す模式説明図である。
【図5】本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施形態における電磁波シールド層を完全に導電化した電磁波シールド体を示す模式説明図である。
【図6】プラズマディスプレイを示す全体斜視説明図である。
【図7】プラズマディスプレイの前面パネルを示す説明図である。
【符号の説明】
1 PDP(プラズマディスプレイ)
3 前面パネル
30 透明ガラス(透明基板)
31 電磁波シールド層
32 無反射処理層
33 近赤外線吸収層
34 黒色層(視認性保持層)
35 導電層
36 パターンマスク
37 中間体
38 電磁波シールド体
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)の表示画面等から放射される電磁波をシールドする電磁波シールド体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カラーテレビには様々なタイプがあるが、近年、図6に示すようなカラーのPDP1が注目されている。このPDP1は、発光部であるパネル本体2と、このパネル本体2の前面に装着される前面パネル3とを備え、視野角、応答速度、低消費電力に優れるという特徴を有している。
【0003】
前面パネル3は、図7に示すように、透明ガラス30の表面に電磁波シールド層31と無反射処理層32とが順次積層され、透明ガラス30の裏面には近赤外線吸収層33が積層形成されている。透明ガラス30の表面には、電磁波をシールド(遮蔽)して周囲の電気・電子機器や人体等に対する悪影響を抑制防止する電磁波シールド層31が形成されるが、この電磁波シールド層31を形成する場合には、例えば透明ガラス30の表面に、導電性の金属粉末を含有したインクをスクリーン印刷法によりパターン形成する方法が採用される(特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭62‐57297号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平9‐283977号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電磁波シールド体は、以上のように透明ガラス30に、金属粉末含有のインクをスクリーン印刷法により単にパターン形成しているが、これでは、パターンの形成に伴い、透明ガラス30が全体として曇るので、透明ガラス30に求められる重要な視認性を損なうという問題がある。また、導電性の発現や保持力を十分に確保できないおそれもある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたもので、視認性を損なうことがなく、しかも、導電性の発現や保持力を確保することのできる電磁波シールド体の製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、上記課題を達成するため、電磁波をシールドするものの製造方法であって、
透明基板の一面に感光性の視認性保持層と導電層とを重ねて形成する工程と、これらをパターン露光、現像して中間体を形成する工程と、この中間体を熱処理して電磁波シールド層を導電化する工程とを含み、
電磁波シールド層の熱処理後におけるマイクロビッカース硬さを30〜95Hvの範囲とすることを特徴としている。
【0009】
なお、視認性保持層を、紫外線により硬化する樹脂組成物を含有する黒色インクにより形成し、
導電層を、熱重量分析における5%重量減少温度が200〜350℃の範囲にあり、紫外線により硬化する第一の樹脂組成物、この第一の樹脂組成物よりも5%重量減少温度が50℃以上高い第二の樹脂組成物、及び導電性付与フィラーを含有した導電インクにより形成することが好ましい。
また、導電層の第二の樹脂組成物に対する導電性付与フィラーの配合割合を、容量比で1:1〜1:5の範囲とすることが好ましい。
【0010】
ここで特許請求の範囲における透明基板としては、強化ガラスの他、歪みの問題を生じなければ、例えばアクリル基板等が使用される。この透明基板には、電磁波シールド層の他、無反射処理層や電子機器の誤作動を防止する近赤外線吸収層を適宜形成することができる。視認性保持層は、黒色層を形成する黒インクが主に使用されるが、光線を吸収し、視認性を確保することができるのであれば、特に限定されるものではない。この視認性保持層は、導電性又は絶縁性を有していても良いし、そうでなくても良い。
【0011】
マイクロビッカース硬さとは、最小荷重を1〜100gとした場合のビッカース硬さをいう。本発明に係る電磁波シールド体は、PDPの前面パネルの一部として使用されるが、何らこれに限定されるものではない。例えば、FED等の他の機器に応用することもできる。PDPには、DC型、AC型、ハイブリッド型があるが、何ら限定されるものではない。
【0012】
本発明によれば、透明基板に導電層を直接設けるのではなく、透明基板と導電層との間に、光線を吸収する視認性保持層を介在させ、透明基板に導電層を間接的に設けるので、透明基板の曇りを抑制することができる。したがって、透明基板の視認性を向上させることができる。
また、熱処理後における電磁波シールド層のマイクロビッカース硬さを30〜95Hvの範囲とすれば、電磁波シールド層における初期の耐久性を維持したり、パターンの耐久性を確保することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における電磁波シールド体の製造方法は、図1ないし図5に示すように、透明ガラス30の表面に紫外線硬化型の黒色層34と導電層35とを順次重ねて積層形成する工程と、これらをパターンマスク36を介してパターン露光、現像するとともに、透明ガラス30の裏面側から黒色層34を露光して中間体37を形成する工程と、この中間体37を熱処理して電磁波シールド層31を導電パターン形成する工程等を備えるようにしている。
【0014】
透明ガラス30は、例えば強化されて耐熱性や透光性に優れる平面略矩形のガラス板からなる。この透明ガラス30は、例えば平坦なソーダライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が使用される。透明ガラス30の厚さは、特に限定されるものではないが、視認性や透光性の確保の観点から薄いほうが良い。具体的には、視認性、透光性、機械的強度の観点から、0.05〜5mm、好ましくは1.5〜3.0mm程度の厚さに形成される。
【0015】
黒色層34は、少なくとも紫外線により硬化可能な樹脂組成物を含有した黒色インクからなるとともに、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、沈殿防止剤等が必要に応じて加えられ、透明ガラス30の全表面に形成される。この黒色層34は、例えば、紫外線硬化型の樹脂組成物、黒色顔料、金属酸化物系着色剤、所定の溶剤等を適宜配合して調製される。
【0016】
導電層35は、熱重量分析における5%重量減少温度が200〜350℃の範囲にあり、紫外線により硬化する第一の樹脂組成物と、この第一の樹脂組成物よりも5%重量減少温度が50℃以上高い第二の樹脂組成物と、金属粒子等からなる導電性付与フィラーとを含有した導電インクからなり、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、沈殿防止剤等が必要に応じて加えられており、黒色層34の全表面に重ねて形成される。
【0017】
紫外線により硬化する黒色層34の樹脂組成物、そして導電層35の第一の樹脂組成物としては、水、アルカリ性水溶液、溶剤等により現像できれば良く、これらの中でも、解像度や作業性の観点からアルカリ性水溶液により現像可能な樹脂組成物が望ましい。このような樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、不飽和二重結合を有する架橋性モノマー又はオリゴマー、光重合開始剤からなることで達成される。
【0018】
アルカリ可溶性樹脂の具体例をあげると、例えばカルボン酸のような酸性基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体が最適である。酸性基の成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、コハク酸2‐メタクリロイルオキシエチル、コハク酸2‐アクリロイルオキシエチル、フタル酸2‐メタクリロイルオキシエチル、フタル酸2‐アクリロイルオキシエチル等があげられる。
【0019】
エチレン性不飽和成分としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n‐プロピルアクリレート、n‐プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n‐ブチルアクリレート、n‐ブチルメタクリレート、sec‐ブチルアクリレート、sec‐ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert‐ブチルアクリレート、tert‐ブチルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等があげられる。
アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像性を損なわない範囲で上記成分と他のモノマーとの種々の共重合体を使用することができる。
【0020】
不飽和二重結合を有する架橋性モノマーは、少なくとも1のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であり、光照射により光重合開始剤から発生したラジカルで反応し、アルカリ現像液に対する溶解性を低下させてパターンを形成する。具体的には、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2‐メトキシアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4‐ブタンジオールジアクリレート、1,5‐ペンタンジオールジアクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート、1,3‐プロパンジオールジアクリレート、1,4‐シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2‐ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4‐ブタントリオールトリアクリレート、2,2,4‐トリメチル‐1,3‐ペンタンジオールジアクリレート、1,10‐デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び上記アクリレートをメタクリレートに置き換えたもの、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1‐ビニル‐2‐ピロドリン等があげられる。なお、上記架橋性モノマーを2種以上組み合わせても良い。
【0021】
光重合開始剤は、通常のネガタイプのフォトリソグラフに使用可能であれば、特に限定されるものではない。具体的には、ベンゾフェノン、o‐ベンゾイル安息香酸メチル、4‐ジメチルアミノ安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α‐アミノアセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4‐ベンゾイル‐4‐メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトン、フルオレソン、2,2‐ジエトキシアセトフェノン、2,2‐ジメトキシ‐1,2‐ジフェニルエタン‐1‐オン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1 フェニルプロパン‐1‐オン、p‐t‐ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2‐メチルチオキサントン、2‐クロロチオキサントン、2‐イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジル‐メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2‐t‐ブチルアントラキノン、2‐アミルアントラキノン、β‐クロロアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4‐アジトベンザルアセトフェノン、2,6‐ビス(p‐アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6‐ビス(p‐アジトベンジリデン)‐4‐メチルシクロヘキサノン、2‐フェニル‐1,2ブタジオン‐2‐(o‐メトキシカルボニル)オキシム、1‐フェニル‐プロパンジオン‐2‐(o‐エトキシカルボニル)オキシム、1‐フェニル‐3‐エトキシ‐プロパントリオン‐2‐(o‐ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2メチル‐1〔4‐(メチルチオ)フェニル〕‐2‐モルフォリノプロパン‐1‐オン、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルフォニルクロライド、N‐フェニルチオアクドリン、4,4‐アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールスルフィド、トリフェニルフォスフィン、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド、カンファーキノン等であるが、2種以上併用することも可能である。
【0022】
なお、導電インク中に、金属粒子等からなる導電性付与フィラーを含む場合には、導電性付与フィラーを含まない場合に比べ、紫外線の透過が阻害されるおそれが考えられる。
そこで、透過性の高い比較的長波長の紫外線に基づく重合の開始を実現するため、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド、又は2‐メチル‐1〔4‐(メチルチオ)フェニル〕‐2‐モルフォリノプロパン‐1‐オンを使用することが好ましい。さらに、これらに、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトン、又は2,2‐ジメトキシ‐1,2‐ジフェニルエタン‐1‐オンを併用すると良い。
【0023】
第一の樹脂組成物は、熱重量分析における5%重量減少温度が200〜350℃の範囲とされる。これは、200℃未満の場合には、導電性付与フィラーの融着に基づく高い導電性を得ることが困難になるからである。逆に、350℃を超える場合には、第二の樹脂組成物の使用範囲が狭くなり、本実施形態における製造方法の実施範囲が狭まるからである。
【0024】
第二の樹脂組成物は第一の樹脂組成物との関係で選択される。この第二の樹脂組成物は、重量減少温度の差が大きいほど好ましく、この点からすると、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、及びこれらの前駆体が用いられる。
【0025】
導電性付与フィラーとしては、例えば高い導電率を有する金属粒子、具体的には金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金の粒子等があげられる。これらは、単独で使用しても良いが、複数種を併用することもできる。これらの金属粒子の中では、入手の容易性、コスト、導電性、耐酸化性の観点から銀の粒子が望ましい。また、金属粒子は、各種の分散剤により表面処理され、二次凝集の生じないことが望ましい。分散剤としては、熱処理工程で分解、あるいは揮発する性質のものが好適に使用される。
【0026】
金属粒子は、平均粒径が0.05〜1μm、好ましくは0.07〜0.8μmに形成されるとともに、真球度が0.7以上、好ましくは0.8以上の略球形に形成される。これは、平均粒径が0.05μm未満の場合には、導電性確保のために添加量を増加する必要があるからである。逆に、1μmを超える場合には、光透過率に悪影響を与え、微細なパターンを得ることができなくなる。また、真球度が0.7未満の場合には、光透過率が悪化し、微細なパターンを形成することが困難になるという理由に基づく。この真球度の測定に際しては、金属粒子を適当な分散媒に分散させて顕微鏡等により拡大観察し、個々の粒子の長径、短径を計測し、真球度=短径/長径により算出したものの平均値とする。
【0027】
金属粒子の粒径バラツキは、3σで平均粒径の値以下が好ましい。これは、金属粒子の粒径バラツキが大き過ぎると、大きな金属粒子間に小さな金属粒子が侵入し、良好な光線透過率を得ることが困難になるからである。
【0028】
上記において、電磁波シールド体38を製造する場合には、先ず、所定の厚さの透明ガラス30を用意し(図1参照)、この透明ガラス30の全表面に黒色インクからなる黒色層34を塗布形成して乾燥させ、この全黒色層34上に導電層35を重ねて塗布形成して乾燥させる(図2参照)。導電層35の形成に際しては、例えばスクリーン印刷法、ロールコータ、カーテンコータ等を用いることができる。
【0029】
黒色層34と導電層35とを多層に積層形成したら、導電層35上に所定のパターン付きのパターンマスク36を配置し、黒色層34と導電層35とを露光装置の紫外線により部分的に露光(図3参照)して現像液に対して不溶化させ、所定の現像液により係る多層構造の透明ガラス30をスプレーやディッピング等の方法により現像し、黒色層34及び導電層35が所定のパターンに形成された中間体37を形成する(図4参照)。この現像作業の際、透明ガラス30の裏面側から黒色層34を露光すれば、耐食性等を向上させることができる。
【0030】
上記作業に使用する露光装置は、特に限定されるものではないが、図3に矢印で示す紫外線を照射して一括露光するタイプが好ましい。また、パターンマスク36は、導電層35に間隔をおいて対向させても良いが、解像度を向上させる観点から導電層35に密着させると良い。黒色層34及び導電層35は、現像時に露光されない不要領域が除去され、格子形、ストライプ形、幾何学模様等にパターン形成される。
【0031】
次いで、中間体37をオーブン等に投入して200〜600℃の温度で熱処理し、この熱処理を所定の時間維持して所定温度に冷却する。そして、オーブンから中間体37を取り出し、その後、中間体37を所定時間放置して電磁波シールド層31を完全に導電パターン化すれば、電磁波シールド体38を製造することができる(図5参照)。
【0032】
電磁波シールド層31におけるパターンの線幅は2〜40μmが好ましい。これは、線幅が2μm未満の場合には、電磁波のシールド特性が劣化し、パターンの断線を招くおそれがあるからである。逆に、線幅が40μmを超える場合には、透光性とシールド特性の両立が困難化するという理由に基づく。また、熱処理後における電磁波シールド層31、より詳しくは、導電層35のマイクロビッカース硬さは、30〜95Hv、好ましくは45〜80Hvの範囲とされる。これは、30Hv未満の場合には、初期の耐久性が低減し、95Hvを超える場合には、熱衝撃試験等によるパターン耐久性が劣化するからである。
【0033】
電磁波シールド体38を製造したら、透明ガラス30の裏面に近赤外線吸収層33を透明の接着剤により接着し、電磁波シールド層31に無反射処理層32を透明の接着剤により接着し、図示しない枠フレーム等と組み合わせる。こうすれば、前面パネル3を得ることができる。
なお、無反射処理層32は、必要がなければ、適宜省略することができる。
【0034】
上記によれば、透明ガラス30に導電層35を直接形成するのではなく、透明ガラス30と導電層35との間に、光線を吸収する無彩色の黒色層34を介在させるので、透明ガラス30が全体として曇ることがない。したがって、透明ガラス30に求められる視認性を著しく向上させることができる。また、熱処理後における電磁波シールド層31のマイクロビッカース硬度を30〜95Hvの範囲とすれば、電磁波シールド層31における初期の耐久性を確実に維持したり、導電性の発現、パターンの耐久性や保持力を有効に確保することができる。
【0035】
また、黒色層34と導電層35とをそれぞれ感光性とし、通常のフォトリソ法を用いるので、スクリーン印刷法や凸版印刷法等と比較して高精度のパターン形成が可能になり、しかも、製造工程とコストの削減が大いに期待できる。また、導電層35の第二の樹脂組成物に対する導電性付与フィラーの配合割合を、容量比で1:1〜1:5の範囲とすれば、導電性付与フィラーの量を十分に確保し、しかも、導電性、シールド性、耐久性を有効に維持することが可能になる。さらに、透明ガラス30の裏面側から黒色層34を露光して透明ガラス30と黒色層34との境界面を硬化させれば、耐食性等が向上し、長期にわたり安定して使用することが可能になる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施例について比較例と共に説明する。
実施例1,2,3,4、比較例1,2,3,4,5の電磁波シールド体をそれぞれ製造し、各電磁波シールド体のシールド効果、透光性、視認性、マイクロビッカース硬度、パターン耐久性を試験してその結果を表1にまとめた。
【0037】
実施例1
先ず、厚さ2.5mmの透明ガラスを用意し、この透明ガラスの全表面に黒色インクからなる黒色層を塗布形成して乾燥させ、この全黒色層上に導電インクからなる導電層を重ねて塗布形成して乾燥させた。透明ガラスとしては、ソーダライムガラスを使用した。また、黒色インクは、表1に記載した樹脂成分、黒色顔料、溶剤であるメトキシブチルアセテートを調製して製造した。表1の黒色顔料の配合比は、樹脂材料に対する容量配合比である。この黒色層の塗布乾燥後における厚さは1μmとした。
【0038】
導電層は、表1に記載した樹脂成分、導電性付与フィラー、溶剤であるメトキシブチルアセテートを調製して製造した。表1の導電性付与フィラーの配合比は、樹脂材料に対する容量配合比である。この導電層の塗布乾燥後における厚さは10μmに設定した。
【0039】
なお、表1に記載した樹脂成分中、UV▲1▼は、スチレン‐無水マレイン酸共重合体系のアルカリ可溶性樹脂、架橋性モノマーであるポリエチレングリコールジメタクリレート、光重合開始剤であるビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイドと1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトンを、アルカリ可溶性樹脂及び架橋性モノマーの合計100質量部に対して光重合開始剤を各5質量部添加したものである。
【0040】
また、表1に記載した樹脂成分中、UV▲2▼は、酸価100(mg・KOH/g)のトリスフェノールメタン型エポキシアクリレートオリゴマーにUV▲1▼と同様の光重合開始剤を添加したものであり、UV▲3▼は酸価100(mg・KOH/g)のフェノールノボラック型エポキシアクリレートオリゴマーにUV▲1▼と同様の光重合開始剤を添加したものである。PIはポリイミド樹脂〔株式会社丸善石油製 商品名BANI‐H〕であり、熱可塑▲1▼はスチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン共重合樹脂を示す。
【0041】
次いで、銀色層からなる導電層上にパターンマスクを重ねて配置し、黒色層と導電層とを露光装置により部分的に露光して現像液に対して不溶化させ、1.0質量%の炭酸ナトリウム水溶液からなる現像液中に係る多層構造の透明ガラスを浸漬して現像し、黒色層及び導電層が所定のパターンに形成された中間体を形成した。
パターンマスクは、所定のパターンが透明のネガタイプとした。また、露光装置については、3kWメタルハライドランプを備えたフルネルレンズ使用の平行光露光装置を使用することとし、紫外線の露光量を800mJ/cm2に設定した。黒色層及び導電層は、15°のバイアスを有し、表1記載の幅、ピッチを有する格子形のパターンに形成した。
【0042】
次いで、中間体をプログラマブルオーブン等に投入して室温から昇温スピード10℃/分で昇温し、表1の熱処理条件欄に記載の300℃で熱処理し、この温度を60分間維持した。そして、冷却スピード10℃/分で180℃まで冷却したところで中間体を取り出し、その後、中間体を室温まで放冷して電磁波シールド層が導電化された電磁波シールド体を製造した。
熱処理後における電磁波シールド層のパターン幅は10μmとし、パターンピッチは0.2mmに設定した。本実施例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件を表1に示す。
【0043】
実施例2
実施例1と略同様であるが、真球状ではない銀フレークを導電性付与フィラーとし、熱処理後の電磁波シールド層のパターン幅を20μmに設定するとともに、パターンピッチを0.25mmに設定した。本実施例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件を表1に示す。
実施例3
実施例1と略同様であるが、導電層の第二の樹脂組成物に対する導電性付与フィラーの配合割合を、容量比で1:1から1:5に変更した。本実施例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件を表1に示す。
【0044】
実施例4
第一、第二の樹脂組成物にそれぞれUV硬化樹脂を使用した他は、実施例1と略同様である。本実施例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件は表1に示す通りである。
【0045】
比較例1
黒色層と導電層の各樹脂成分をUV樹脂ではなく、ポリイミド樹脂と熱可塑性樹脂とした。また、UV露光を採用するのではなく、透明ガラスの全表面に黒色インクからなる黒色層を部分的にスクリーン印刷して乾燥させ、この全黒色層上に導電インクからなる導電層を部分的にスクリーン印刷して乾燥させた。本比較例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件を表1に示す通りである。
【0046】
比較例2
黒色インクを省略し、透明ガラスの全表面に、UV樹脂含有の導電インクからなる導電層を直接塗布して乾燥させ、その後、UV露光することとした。本比較例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件、評価結果は表1に示す通りである。
比較例3
黒色インクを省略し、透明ガラスの全表面に、熱可塑性樹脂含有の導電インクからなる導電層をスクリーン印刷して乾燥させた。電磁波シールド層のパターン幅は広く50μmとし、パターンピッチは0.3mmに設定した。本比較例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件を表1に示す。
【0047】
比較例4
第一、第二の樹脂組成物の5%重量減少温度差を33℃とし、熱処理後における電磁波シールド層のマイクロビッカース硬さを30〜95Hvの範囲外の97Hvとした。本比較例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件を表1に示す。
比較例5
導電層の第二の樹脂組成物に対する導電性付与フィラーの配合割合を、容量比で1:1から1:0.5に変更した。本実施例の材料、構成、パターン形成方法、製造条件を表1に示す。
【0048】
シールド効果試験
各電磁波シールド体を縦横20×20cmにカットし、アドバンテスト法により周波数0.1MHz〜1GHzの範囲における電磁波の減衰率(dB)を測定し、上記周波数における各電磁波シールド体のシールド効果を評価した。表1には、シールド効果の指標として、周波数200MHzにおける電磁波の減衰率(dB)を以下の評価基準で評価した結果を記載した。
〔評価基準〕
××: 0〜10dB以下
× :10超過〜20dB以下
△ :20超過〜40dB以下
○ :40超過〜50dB以下
◎ :51dB超
【0049】
透光性試験
各電磁波シールド体の可視光線(波長400〜700nm)の分光透過率を測定し、その最低値を指標として各電磁波シールド体の透光性を以下の評価基準で評価した。
〔評価基準〕
××: 0〜40%以下
× :40超過〜50%以下
△ :50超過〜60%以下
○ :60超過〜70%以下
◎ :71%超
【0050】
視認性試験
各電磁波シールド体の電磁波シールド層を内側にし、これをPDPの表示画面の前面に5mmの間隔を空けて設置し、表示画面の視認性を以下の評価基準で評価した。
〔評価基準〕
× :全面に亘ってムラやメッシュを確認した
△ :かすかにムラやメッシュを確認した
○ :ムラやメッシュを全く確認することがなく、しかも、コントラストも十分に高く、良好な画像を得た
◎ :ムラやメッシュを全く確認することがなく、しかも、コントラストが著しく高く、きわめて良好な画像を得た
【0051】
マイクロビッカース硬度試験
各電磁波シールド体を超微小硬度計〔島津製作所製 商品名DUH‐200〕にセットした。そして、三角錐圧子(115°)、試験荷重0.5g、負荷速度2の条件で試験した。
【0052】
パターン耐久性試験
各電磁波シールド体の電磁波シールド層領域に、プラスチック消しゴムを接触面積10mm×10mm、荷重2kgの条件で接触させ、動作幅50mm、動作スピード60往復/分で試験し、目視によりカスレの認められた時点における往復回数で以下の基準により評価した。
〔評価基準〕
×× :30往復未満
× :30〜59往復
△ :60〜299往復
○ :300〜599往復
◎ :600往復超
【0053】
【表1】
【0054】
試験結果
実施例1の電磁波シールド体に関しては、非常に良好なシールド効果、透光性、視認性、マイクロビッカース硬度、パターン耐久性を確認した。
実施例2の電磁波シールド体に関しては、導電性付与フィラーとして真球状ではない銀フレークを使用する関係上、UV透過性の低下を招くことが予想されたため、熱処理後における電磁波シールド層のパターン幅を20μmの広めに設定するとともに、パターンピッチも0.25mmと広くした。この結果、非常に良好なシールド効果、透光性、視認性、マイクロビッカース硬度、パターン耐久性を確認した。
【0055】
実施例3の電磁波シールド体に関しては、パターン耐久性について実施例1には及ばないものの、実用レベルでは問題ないのを確認した。その他のシールド効果、透光性、視認性、マイクロビッカース硬度については実に良好な結果を得ることができた。
実施例4の電磁波シールド体に関しては、実施例1同様、非常に良好なシールド効果、透光性、視認性、マイクロビッカース硬度、パターン耐久性を得ることができた。
【0056】
これに対し、比較例1の電磁波シールド体については、黒色層と導電層をスクリーン印刷したが、これら黒色層と導電層の重ねあわせが非常に困難であり、結果として位置ずれを招き、十分な透光性や視認性を得ることができなかった。また、パターン耐久性については試験することができなかった。
比較例2の電磁波シールド体については、十分なシールド効果と透光性を得ることができたものの、導電層が銀色のために反射して十分な視認性を確認することができず、実用可能な品質レベルに到達しなかった。また、パターン耐久性については、若干の劣化が判明した。
【0057】
比較例3の電磁波シールド体については、実用上問題のないシールド効果を得ることができたが、導電層が銀色のために全体として曇り、十分な透光性、視認性を得られなかった。また、パターン耐久性については、若干の劣化が判明した。
比較例4の電磁波シールド体については、樹脂の分解を制御することができず、電磁波シールド層のパターン硬度が高くなり、特に熱衝撃試験実施後のパターン耐久性が著しく悪化した。
【0058】
さらに、比較例5の電磁波シールド体に関しては、導電層の第二の樹脂組成物に対する導電性付与フィラーの配合割合を1:0.5としたので、熱処理後における導電性付与フィラーの量が不足して導電性が低下した。さらにまた、電磁波シールド層のパターン硬度が不足し、パターン耐久性の悪化を招いた。
【0059】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、透明基板の一面に感光性の視認性保持層と導電層とを重ねて形成する工程と、これらをパターン露光、現像して中間体を形成する工程と、この中間体を熱処理して電磁波シールド層を導電化する工程とを含み、電磁波シールド層の熱処理後におけるマイクロビッカース硬さを30〜95Hvの範囲とするので、視認性を損なうことがないという効果がある。また、導電性の発現や保持力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施形態における透明ガラスを示す模式説明図である。
【図2】本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施形態における透明ガラスの全表面に黒色層を塗布して乾燥させ、この全黒色層上に導電層を塗布する状態を示す模式説明図である。
【図3】本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施形態における導電層上にパターンマスクをセットし、黒色層と導電層を紫外線により露光する状態を示す模式説明図である。
【図4】本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施形態における黒色層及び導電層が所定のパターンに形成された中間体を示す模式説明図である。
【図5】本発明に係る電磁波シールド体の製造方法の実施形態における電磁波シールド層を完全に導電化した電磁波シールド体を示す模式説明図である。
【図6】プラズマディスプレイを示す全体斜視説明図である。
【図7】プラズマディスプレイの前面パネルを示す説明図である。
【符号の説明】
1 PDP(プラズマディスプレイ)
3 前面パネル
30 透明ガラス(透明基板)
31 電磁波シールド層
32 無反射処理層
33 近赤外線吸収層
34 黒色層(視認性保持層)
35 導電層
36 パターンマスク
37 中間体
38 電磁波シールド体
Claims (3)
- 電磁波をシールドする電磁波シールド体の製造方法であって、
透明基板の一面に感光性の視認性保持層と導電層とを重ねて形成する工程と、これらをパターン露光、現像して中間体を形成する工程と、この中間体を熱処理して電磁波シールド層を導電化する工程とを含み、
電磁波シールド層の熱処理後におけるマイクロビッカース硬さを30〜95Hvの範囲とすることを特徴とする電磁波シールド体の製造方法。 - 視認性保持層を、紫外線により硬化する樹脂組成物を含有する黒色インクにより形成し、
導電層を、熱重量分析における5%重量減少温度が200〜350℃の範囲にあり、紫外線により硬化する第一の樹脂組成物、この第一の樹脂組成物よりも5%重量減少温度が50℃以上高い第二の樹脂組成物、及び導電性付与フィラーを含有した導電インクにより形成する請求項1記載の電磁波シールド体の製造方法。 - 導電層の第二の樹脂組成物に対する導電性付与フィラーの配合割合を、容量比で1:1〜1:5の範囲とする請求項2記載の電磁波シールド体の製造方法。
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