JP5561989B2 - レーザーを用いたパターン形成方法 - Google Patents

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本発明は、レーザーを用いたパターン形成方法に関する。
半導体集積回路(IC)やフラットパネルディスプレイのような各種の電子装置においては、集積度の向上、あるいは高画質化に伴って、それらに含まれる電極や配線パターンも微細化されている。これら電極、配線等の形成は、ガラスやセラミックス等の基板上にフォトリソグラフィー技術を利用して所定のパターンを形成した後、高温下で長時間焼成することでパターン形成する方法が一般的である。
例えば、フラットパネルディスプレイの一種であるプラズマディスプレイパネル(以下、PDP)のフロントパネルの製造においては、ITOのパターンを形成した後、感光性ペーストによるフォトリソグラフィー技術を利用したバス電極パターニング→焼成→誘電体塗布→焼成という工程を経ることが一般的であり、更にブラックマトリックスを設ける場合は、バス電極の焼成後にブラックマトリックスパターニング→焼成という工程が追加される。
このようにPDPの製造においては各種パターンの形成毎に焼成工程が繰り返されるが、焼成工程は有機成分のバーンアウトや無機成分の融着を行う工程であるため焼成温度は550℃以上と非常に高温でありキープ時間も長い。さらにガラスパネルが大きいため急激な温度変化は難しく、昇温、冷却時間も非常に長くなる。また温度が高いため必要とするエネルギーも膨大であり、設備も非常に巨大なものとなるため、焼成工程はPDP製造の中でも最も製造コストに占める割合が大きな工程である。そのため、焼成工程を減らすことができればパネルの製造コストの大幅ダウンが可能となる。
焼成回数を減らす方法としては、熱硬化樹脂、酸化銀を含むペーストを用いたレーザーパターニング方法が開示されている。この方法は、酸化銀が熱又は光により分解し活性酸素を放出するという性質を利用したものであり、基材にペーストを塗布し、一夜間かけてペーストを硬化し、その後にレーザー照射することによって基材上に所望の電極パターンを形成する。その後、全面紫外線露光することで、レーザー未照射部の有機成分を上述の活性酸素により酸化分解し劣化させ、ブラッシング等することで焼成工程を経ずに所望の電極パターンを形成するというものである(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−195715号公報(請求の範囲)
しかしながら、この方法ではペーストを基材に塗布後、一夜間かけて基材上のペーストを硬化させる工程やレーザーパターニング後に全面紫外線露光する工程など工程数が多いため依然としてタクトタイムの短縮という面で問題がある。
そこで、本発明の発明者らは、無機粉末と、カルボキシル基含有樹脂と、ガラスフリットと、溶剤からなるフォトリソグラフィーと焼成工程を含むパターン形成方法に用いられている従来のペーストを用い、これを基板上に塗布する塗布・乾燥し、得られた乾燥塗膜にレーザーを照射することによりパターンを描画し、その後、アルカリ溶液を用いて前記パターンを現像するパターン形成方法を発明し、出願している(特願2009−087332号)。
かかる発明によれば、従来のペーストと現像工程を用い、焼成工程を要することなく十分に実用可能なパターン形成ができることを確認している。本発明の発明者らは上記発明のパターン形成方法のさらなる改良検討を進めたところ、最終的に得られたパターンの線幅がレーザー光の照射幅よりも大きくなるという知見が得られた。
そこで、この原因を究明するため種々の検討を行った結果、レーザー照射時に乾燥塗膜内で生ずる熱拡散によって描画線幅が拡大することを突き止めた。これに対し、レーザー照射と同時にその照射部を冷却することにより線幅の拡大を抑止し高精細なパターンの形成を可能にした。
本発明は、かかる知見に基づきなされたもので、その目的は、高精細なパターンを形成することができるレーザーを用いたパターン形成方法を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明の一態様のパターン形成方法は、基材上に形成した無機粉末を含む塗膜に対し、パターンを描画するレーザー照射と同時にそのレーザー照射部を冷却する冷却工程と、前記パターン以外の部分を除去する工程と、を含み、前記冷却工程は、前記塗膜が形成された面を台座に接触させ、又は、水中に浸漬させる方法であることを特徴とするものである。
本発明の他の態様によれば、前記冷却は、レーザー照射部にこのレーザー照射部よりも低い温度の空気を噴射するパターン形成方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、前記冷却は、前記塗膜が形成された面を台座に接触するよう載置するパターン形成方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、前記冷却は、前記塗膜が形成された面を水中に浸漬させるパターン形成方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、前記無機粉末は、耐熱顔料としての導電性粉末であり、前記塗膜中の前記導電粉末が60質量%以上であることを特徴とするパターン形成方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、前記レーザーの波長は、266〜10600nmであることを特徴とするパターン形成方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、前記レーザー照射に、YVOレーザーの第二高調波が用いられることを特徴とするパターン形成方法が提供される。
本発明によれば、レーザー照射工程に冷却手段を併用することにより、レーザー照射に伴う熱拡散を抑止し、高精細なパターンを形成することが可能なレーザーを用いたパターン形成方法を提供することができる。
本発明の一実施形態におけるスポット冷却による冷却工程を示す概略図である。 本発明の一実施形態におけるステージ冷却(ガラス基材面照射)による冷却工程を示す概略図である。 本発明の一実施形態における水中冷却(水面−ガラス基材面照射)による冷却工程を示す概略図である。
以下、本実施形態のパターン形成方法について詳細に説明する。
まず、本実施形態のパターン形成方法に用いられるペーストは、無機粉末を含有していればよく、必要に応じ、溶剤、有機樹脂、安定剤等を含んでもよい。
塗布工程として、本実施形態のパターン形成方法に用いられるペーストは、スクリーン印刷法、バーコーター、ブレードコーターなど適宜の塗布方法で基材上に塗布される。
乾燥工程として、上記塗布工程で得られた塗膜を熱風循環式乾燥炉、遠赤外線乾燥炉等で例えば約60〜150℃で5〜60分程度乾燥させて有機溶剤を蒸発させ、タックフリーの塗膜を得る。なお、本実施形態のペーストは、予めフィルム状に成膜したドライフィルムとして用いてもよい。
レーザー照射工程として、上記乾燥工程で得られた乾燥塗膜に対してレーザー照射を行い所望のパターンを形成する。レーザーを照射された領域は、塗膜中の有機成分はほとんどバーンアウトし、無機粉末は基材上に融着される。このようなレーザー照射工程としては、例えば、CADなどで所望のパターンを作成し、これに従ってレーザーを照射するレーザー描画法が用いられる。用いられるレーザーとしては、基本波の波長が、266〜10600nmの範囲が好ましい。具体的には、YVOレーザーが好適に用いられる。
レーザー出力及び照射速度は、塗膜中の無機粉末が融着できる程度の熱量になるよう適宜調節する。後述する冷却工程の冷却方法によりその最適範囲は若干変動するが、具体的には、レーザー出力は、0.2〜4.0W、照射速度は、0.1〜1.5mm/sの範囲で適宜調節されるのが好ましい。レーザー出力が、0.2Wより小さい場合、十分な融着ができなくなる。一方、4.0Wより大きいと、照射部分の熱の拡散が大きくなり線幅が太くなる。照射速度は0.1mm/sより遅いとパターン形成のタクトタイム短縮の観点から好ましくない。一方、1.5mm/sより速いと、十分に有機バインダー等がバーンアウトされない。なお、ここではレーザー描画を挙げているが、これに限定されず、例えば、電子線ビーム、イオンビーム、荷電ビーム等を用いて描画してもよい。
冷却工程として、上述のレーザー照射と同時にそのレーザー照射部の冷却を行う。これにより、レーザー照射による熱拡散が緩和されパターンの線幅の低減が可能となる。
本実施形態の冷却工程における冷却方法の例を、図1、2、3を用いて具体的に説明するが、本発明にかかる冷却工程は、レーザー照射部の熱拡散を緩和するものであればよく、以下に示す冷却方法に限定されない。
図1は、レーザーの照射と同時にその照射部に低温空気を噴射し冷却するスポット冷却を表わす概略図である。乾燥工程を経た乾燥塗膜2に対し、レーザー1を照射し所望のパターンを形成すると同時に低温空気4をレーザー照射部に噴射する。ここでの雰囲気温度は0℃以下が好ましい。
図2は、形成された乾燥塗膜面を台座に接触するよう載置させるステージ冷却を表わす概略図である。乾燥工程を経た乾燥塗膜2の面が冷却(放熱)効果のある台座5に接触するように載置し、基材3の面を介してレーザー1を照射し所望のパターンを形成する。
図3は、乾燥塗膜面を水中に浸漬させておく水中冷却を表わす概略図である。乾燥工程を経た乾燥塗膜2の面を水浴6に浸漬させておき、基材3の面を介してレーザー1を照射し所望のパターンを形成する。
また、上記スポット冷却の他の態様として、基材面を介してレーザーを照射し所望のパターンを形成すると同時に乾燥塗膜のレーザー照射部に低温空気を噴射し冷却する方法等もある。
パターン以外の部分を除去する工程としては、スプレー法、浸漬法等あるいは超音波による方法、サンドブラスト法、粘着テープによる剥離方法等が用いられる。パターン以外の部分を除去すればよく、上記のような方法に限定されるものではない。スプレー法を用いた場合、現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウムなどの金属アルカリ水溶液や、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン水溶液、有機溶剤現像の場合、メタノール、ブタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸n−プロピル等のエステル類、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のエーテル類が用いられる。アルカリ現像の場合、特に約1.5wt%以下の濃度の金属アルカリ水溶液が好適に用いられるが組成物中のカルボキシル基を含有する樹脂のカルボキシル基がケン化され未照射部が除去されればよく、上記のような現像液に限定されるものではない。また、現像後に不要な現像液の除去のため、水洗や酸中和を行うことが好ましい。
次に、本実施形態のパターン形成方法に用いられるペーストについて説明する。
本実施形態のパターン形成方法に用いられるペーストには、かかる方法の為の特別な材料を用いなければならないということは無く、無機粉末が均一に分散されていれば良く、一例として、フォトリソグラフィーと焼成工程を含むパターン形成方法において従来から用いられているアルカリ現像型の材料を使用することができる。
本実施形態のパターン形成方法に用いるペーストに配合される無機粉末は、パターンの用途によって異なる。配線などの導電パターンを形成する場合は導電性粉末、ガラスフリット、ブラックマトリックスパターンを形成する場合は耐熱顔料がそれぞれ用いられる。このような導電性粉末としては、例えば、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Cu、Al、Sn、Pb、Zn、Fe、Ir、Os、Rh、W、Mo、Ru等の単体とその合金の他、酸化錫(SnO2)、酸化インジウム(In23)、ITO(Indium Tin Oxide)などを用いることができる。耐熱顔料としては、Cu、Fe、Cr、Mn、Co、Ru、La等の単独の金属酸化物及び/又は金属元素2種以上からなる複合酸化物が好適に用いることができる。黒色度の点で四三酸化コバルトを用いることが好ましい。
このような無機粉末の配合量は、導電性粉末を用いる場合、乾燥塗膜中に60質量%以上の割合で配合される。導電性粉末が60質量%より少ない場合、レーザー照射後の導電パターンがポーラスな状態となり充分な導電性が得られ難くなる。一方、耐熱顔料を用いる場合、乾燥塗膜中に10質量%以上の割合で配合される。耐熱顔料が10質量%より少ない場合、レーザー照射後のパターンがポーラスな状態となり充分な黒色度が得られ難くなる。
このような無機粉末は、一次粒径が0.1〜5μmであるものが好ましい。一次粒径が5μmより大きいと、導電性粉末の場合、レーザーパターニング後に導体パターンにピンホールや隙間が生じやすくなり十分な導電性が得られ難くなる。また、耐熱顔料の場合、導電性粉末の場合と同様にパターンにピンホールや隙間が生じやすくなるため黒色度が低下する。粒径が小さくなると、より高価となるため低コスト化という観点から0.1μm以上が好ましい。より好ましくは0.2〜3.1μmである。また、このような無機粉末は、球状、フレーク状、デンドライト状など種々の形状のものを用いることができるが、光特性や分散性を考慮すると球状のものを用いることが好ましい。なお、本実施形態において、無機粉末の一次粒径とは、電子顕微鏡(SEM)を用いて10,000倍にて観察したランダムな10個の無機粉末の平均粒径を意味する。
本実施形態のパターン形成方法に用いるペーストに配合されるガラスフリットとしては、ガラス軟化点が420〜580℃である低融点のものが好ましい。より好ましくは、ガラス転移点が360〜500℃である。また、ガラスフリットの熱膨張係数α300は、60〜110×10−7のものが好ましい。このようなガラスフリットとしては、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化リチウム、またはアルカリホウケイ酸塩を主成分とするものが好適に用いられる。
例えば、酸化鉛を主成分とするガラスフリットの好ましい例としては、酸化物基準の質量%で、PbOが48〜82%、Bが0.5〜22%、SiOが3〜32%、Alが0〜12%、BaOが0〜15%、TiOが0〜2.5%、Biが0〜25%の組成を有し、軟化点が420〜580℃である非晶性ガラスフリットが挙げられる。
酸化ビスマスを主成分とするガラスフリットの好ましい例としては、酸化物基準の質量%で、Biが6〜88%、Bが5〜30%、SiOが5〜25%、Alが0〜5%、BaOが0〜20%、ZnOが1〜20%の組成を有し、軟化点が420〜580℃である非晶性ガラスフリットが挙げられる。
酸化亜鉛を主成分とするガラスフリットの好ましい例としては、酸化物基準の質量%で、ZnOが25〜60%、KOが2〜15%Bが25〜45%、SiOが1〜7%、Alが0〜10%、BaOが0〜20%、MgOが0〜10%の組成を有し、軟化点が420〜580℃である非晶性ガラスフリットが挙げられる。
このようなガラスフリットの配合量は、無機粉末に導電性粉末を用いた場合では、レーザー照射後のパターンの密着性並びに抵抗値低減の観点から導電性粉末に対して、1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%で配合することができる。一方、無機粉末に耐熱顔料を用いた場合では、レーザー照射後のパターンの密着性並びに黒色度の観点から耐熱顔料に対して1〜100質量%、より好ましくは30〜70質量%で配合することができる。
本実施形態のパターン形成方法に用いるペーストに配合される有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テルピネオールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの有機溶剤の配合量は、塗布作業性の観点からペースト中の有機成分に対して、5〜90質量%の割合で配合する。より好ましくは20〜70質量%で配合することができる。
本実施形態のパターン形成方法に用いるペーストには、有機バインダーを配合することができる。有機バインダーとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができ、より好ましくは、レーザーにより有機バインダーがバーンアウトしやすく、かつパターン以外の部分を除去する工程に適したものがよい。
一例として、パターン以外の部分を除去する工程がアルカリ現像の場合、有機バインダーとしては、カルボキシル基を有する樹脂、具体的にはそれ自体がエチレン性二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂及びエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のいずれも使用可能である。好適に使用できる樹脂(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)としては、以下のようなものが挙げられる。
(1)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物を共重合させることによって得られるカルボキシル基含有樹脂、
(2)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、グリシジル(メタ)アクリレートや(メタ)アクリル酸クロライドなどにより、エチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(3)グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と、メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基にテトラヒドロフタル酸無水物などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(4)無水マレイン酸などの不飽和二重結合を有する酸無水物と、スチレンなどの不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(5)多官能エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基にテトラヒドロフタル酸無水物などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(6)メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物とグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体のエポキシ基に、1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸を反応させ、生成した2級の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(7)ポリビニルアルコールなどの水酸基含有ポリマーに多塩基無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、及び
(8)ポリビニルアルコールなどの水酸基含有ポリマーに、テトラヒドロフタル酸無水物などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂に、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物をさらに反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂などが挙げられ、特に(1)、(2)、(3)、(6)の樹脂が好適に用いられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
このようなカルボキシル基含有感光性樹脂及びカルボキシル基含有樹脂としては、それぞれ重量平均分子量が1,000〜100,000、かつ酸価が20〜250mgKOH/gであることが好ましい。重量平均分子量が1,000未満の場合、現像時の塗膜の密着性に悪影響を与える。一方、100,000を超えた場合、現像不良を生じやすくなる。より好ましくは5,000〜70,000である。また、酸価が20mgKOH/g未満の場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が不十分で現像不良を生じやすい。一方、250mgKOH/gを超えた場合、現像時に塗布膜の密着性の劣化が生じてしまう。より好ましくは40〜200mgKOH/gである。
このようなカルボキシル基含有感光性樹脂及びカルボキシル基含有樹脂は、単独で又は混合して用いてもよいが、いずれの場合でもこれらは合計でペースト全量の5〜50質量部で配合されることが好ましい。これらのポリマーの配合量が5質量部未満の場合、形成する皮膜中の上記樹脂の分布が不均一になりやすく、現像によるパターニングが困難となる。一方、50質量部を超えた場合、パターンのよれや線幅収縮を生じやすくなる。
本実施形態のパターン形成方法に用いるペーストには、現像性を向上させる目的で低分子モノマーを配合することができる。このような低分子モノマーは、分子量1000以下のモノマーであり、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び上記アクリレートに対応する各メタクリレート類;フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、こはく酸、トリメリット酸、テレフタル酸等の多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−、またはそれ以上のポリエステルなどの重合性モノマーが挙げられるが、特定のものに限定されるものではなく、またこれらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの低分子モノマーの中でも、1分子中に2個以上のアクリロイル基又はメタアクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。
このような低分子モノマーの配合量は、有機バインダー100質量部あたり20〜100質量部が適当である。配合量が20質量部未満の場合、アルカリ現像によるパターン形成が困難となる。一方、100質量部を超えると、アルカリ水溶液に対する溶解性が低下する。
また、必要に応じて、安定剤として、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸等の各種無機酸;ギ酸、酢酸、アセト酢酸、クエン酸、ステアリン酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、スルファミン酸等の各種有機酸;リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸ブチル、リン酸フェニル、亜リン酸エチル、亜リン酸ジフェニル、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等の各種リン酸化合物(無機リン酸、有機リン酸)などを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このような安定剤は、ガラスフリット100質量部当り0.1〜10質量部の割合で添加することが好ましい。
上述した各必須成分、ならびに任意成分との混練分散は、三本ロールやブレンダー等の機械が用いられ、本発明にかかるパターン形成方法に好適に用いられる。
このように本発明のレーザーを用いたパターン形成方法は、従来から用いられているアルカリ現像型の有機バインダー等を使用することができ、一夜間かけて基材上のペーストを硬化させる工程及びレーザーパターニング後の全面紫外線露光工程を行う必要がなくタクトタイムの短縮が可能となり、パターン形成の低コスト化が可能となる。また、レーザー照射の熱拡散を緩和することによりパターンの細線化が可能となる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。なお、以下において「部」は、特に断りのない限りすべて質量部であるものとする。
[有機バインダーの合成]
温度計、攪拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコに、メチルメタクリレートとメタクリル酸を0.76:0.24のモル比で仕込み、溶媒としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル、触媒としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を入れ、窒素雰囲気下、80℃で2〜6時間攪拌し樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を冷却し、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン、触媒としてテトラブチルホスホニウムブロマイドを用い、グリシジルメタクリレートを95〜105℃で16時間の条件で上記樹脂のカルボキシル基1モルに対し0.12モルの割合の付加モル比で付加反応させ冷却後取り出し有機バインダーを得た。この有機バインダーは、重量平均分子量が約10,000、固形分酸価が59mgKOH/g、二重結合当量が950であった。なお、得られた共重合樹脂の重量平均分子量の測定は、島津製作所社製ポンプLC−6ADと昭和電工社製カラムShodex(登録商標)KF−804、KF−803、KF−802を三本つないだ高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
[試験基板作成]
塗布及び乾燥工程:
高歪点ガラス(PD200:旭ガラス社製)基板上に、後述する評価用のペーストを200メッシュのポリエステルスクリーンを用いて全面に塗布し、次いで、熱風循環式乾燥炉にて90℃で30分間乾燥して指触乾燥性の良好な乾燥塗膜(膜厚10μm)を形成した。
レーザー照射及び冷却工程:
(スポット冷却)
上記の方法で作成した乾燥塗膜を、照射距離3cmにて乾燥塗膜の塗膜表面に焦点距離を合わせ、YVOレーザー(第二高調波;532nm)を照射し、これに合わせて低温空気をレーザー照射部に噴射し評価パターンを形成した。この際、冷却機器としてTOHINエアクーラー(東浜工業社製)を用いた。スポット冷却時の雰囲気温度は−2℃から−3℃であった。
(ステージ冷却;ガラス基材面照射)
上記の方法で作成した乾燥塗膜の塗膜面をステンレス製の台座に接触するよう載置し、その上方から照射距離3cmにてガラス基材面を介して乾燥塗膜に焦点距離を合わせ、YVOレーザー(第二高調波;532nm)を照射して評価パターンを形成した。(図2参照)
(水中冷却;水面−ガラス基材面照射)
上記の方法で作成した乾燥塗膜の塗膜面を水中に浸漬させておき、その上方から照射距離3cmにてガラス基材面を介して乾燥塗膜に焦点距離を合わせ、YVOレーザー(第二高調波;532nm)を照射して評価パターンを形成した。(図3参照)
現像工程:
上記の方法で作成した評価パターンを、液温30℃の0.4質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー法にてレーザー未照射部分が完全に落ちるまで現像を行った。
[試験基板評価]
<線幅>
上記方法にて作成された現像後の評価パターンの線幅を光学顕微鏡にて測定した。
上記方法により合成された有機バインダーを用い、表1に示す配合比にて配合し、攪拌機により攪拌後、3本ロールミルにより練肉してペースト化を行い、導電ペーストを得た。
Figure 0005561989
*1:平均粒径(D50)2.2μm、最大粒径(Dmax)6.3μm、表面積0.3m/g
*2:Bi 50%、B 16%、ZnO 14%、SiO 2%、BaO 18%。熱膨張係数α300=86×10−7/℃、ガラス軟化点501℃
参考例1〜24、比較例1〜24]
パターニング方法評価1
上記で得られた導電ペーストを用いて上記方法により作成した乾燥塗膜について、冷却工程としてスポット冷却を行ったパターニング方法及び冷却工程を含まないパターニング方法(通常照射)によるレーザー出力0.2、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0Wの場合におけるレーザー照射速度0.1、0.5、1.0、1.5mm/sで得られた評価パターンの各々の線幅を上記測定方法にて評価した。参考例としてスポット冷却を行った場合の評価結果を表2に、比較例として通常照射の場合の評価結果を表3に示す。
Figure 0005561989
Figure 0005561989
表2に示す参考例1〜24は、冷却方法としてスポット冷却を行った場合である。線幅に関し、表3に示す比較例1〜24の通常照射の場合と比べて、いずれも線幅が細くなっていることがわかる。
[実施例1〜16
パターニング方法評価2
上述のスポット冷却以外の冷却方法として、ステージ冷却(ガラス基材面照射)、水中冷却(水面−ガラス基材面照射)について評価を行った。
上記方法により得られた乾燥塗膜について、レーザー出力0.2、1.0Wの場合におけるレーザー照射速度0.1、0.5、1.0、1.5mm/sで得られた各々の評価パターンの線幅を上記方法にて評価した。ステージ冷却を行った場合を実施例1〜8、水中冷却を行った場合を実施例9〜16とした。評価結果を表4に示す。なお、表4中の比較例1〜4、9〜12は表3に示した通常照射の場合の、また、参考例1〜4、9〜12は表2に示したスポット冷却を行った場合の、レーザー出力0.2、1.0Wにおける線幅の評価結果である。
Figure 0005561989
実施例1〜8は、ステージ冷却を行った場合である。実施例1〜4は、レーザー出力0.2Wの場合であり、いずれもスポット冷却(参考例1〜4)を用いた場合よりも線幅はさらに細くなっていることがわかる。実施例5〜8は、レーザー出力1.0Wの場合であり、照射速度1.0、1.5mm/sの場合(実施例5、6)では、スポット冷却を行った場合より線幅はさらに細くなっていることがわかる。照射速度0.5mm/sの場合、スポット冷却とほぼ同じ線幅となり、0.1mm/sではスポット冷却(参考例12)よりも線幅は太くなるが、いずれの場合も、通常照射(比較例9〜12)よりも線幅が細くなっていることがわかる。
実施例9〜16は、水中冷却(水面−ガラス基材面照射)を行った場合である。実施例9〜12は、レーザー出力0.2Wの場合であり、いずれの照射速度においても十分にレーザーが届かなかったため、現像後のパターン形成ができなかった。しかし、レーザー出力1.0Wとした実施例13〜16では、レーザー出力が十分であり、いずれの照射速度においても通常照射の場合と比較して線幅が細くなっていることがわかる。また、スポット冷却(参考例9〜12)、ステージ冷却(実施例5〜8)よりも線幅が細くなっていることがわかる。
1…レーザー
2…塗膜
3…基材
4…低温空気
5…台座
6…水浴

Claims (3)

  1. 基材上に形成した無機粉末を含む塗膜に対し、パターンを描画するレーザー照射と同時にそのレーザー照射部を冷却する冷却工程と、前記パターン以外の部分を除去する工程と、
    含み、前記冷却工程は、前記塗膜が形成された面を台座に接触させ、又は、水中に浸漬させる方法であることを特徴とするパターン形成方法。
  2. 前記レーザーの波長は、266〜10600nmであることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
  3. 前記レーザー照射に、YVOレーザーの第二高調波が用いられることを特徴とする請求項2に記載のパターン形成方法。
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