JP2011181338A - レーザーを用いた導電パターン形成方法及びその方法に用いる組成物 - Google Patents

レーザーを用いた導電パターン形成方法及びその方法に用いる組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】低コストで、タクトタイムの短縮が可能な導電パターンの形成方法及びこれに用いる組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の導電パターン形成方法によれば、AlN粉末、ガラスフリット及び溶剤を含むペーストを基板上に塗布する塗布工程と、塗布された前記ペーストを乾燥し、乾燥塗膜を形成する乾燥工程と、レーザー光の照射により、前記乾燥塗膜に導電パターンを描画するレーザー描画工程と、前記乾燥塗膜のうち、前記レーザー光の未照射部分を、現像液を用いて除去する現像工程とを含むことを特徴とする
【選択図】なし

Description

本発明は、レーザーを用いた導電パターン形成方法及びその方法に用いる組成物に関する。
半導体集積回路(IC)やフラットパネルディスプレイのような各種の電子装置においては、集積度の向上、あるいは高画質化に伴って、それらに含まれる電極や配線パターンも微細化されている。これら電極、配線等の形成は、ガラスやセラミックス等の基板上にフォトリソグラフィー技術を利用して所定のパターンを形成した後、高温下で長時間焼成することでパターン形成する方法が一般的である。
例えば、フラットパネルディスプレイの一種であるプラズマディスプレイパネル(以下、PDP)のフロントパネルの製造においては、ITOのパターンを形成した後、感光性ペーストによるフォトリソグラフィー技術を利用したバス電極パターニング→焼成→誘電体塗布→焼成という工程を経ることが一般的であり、更にブラックマトリックスを設ける場合は、バス電極の焼成後にブラックマトリックスパターニング→焼成という工程が追加される。
このようにPDPの製造においては各種パターンの形成毎に焼成工程が繰り返されるが、焼成工程は有機成分のバーンアウト、無機成分の融着を行う工程であるため焼成温度は550℃以上と非常に高温であり、キープ時間も長い。さらに、ガラスパネルが大きいため急激な温度変化は難しく、昇温、冷却時間も非常に長くなる。また、温度が高いため必要とするエネルギーも膨大であり、設備も非常に巨大なものとなるため、焼成工程はPDP製造の中でも最も製造コストに占める割合が大きな工程である。そのため、焼成工程を減らすことができればパネルの製造コストの大幅ダウンが可能となる。
焼成回数を減らす方法としては、熱硬化樹脂、酸化銀を含むペーストを用いたレーザーパターニング方法が開示されている。この方法は、酸化銀が熱又は光により分解し、活性酸素を放出するという性質を利用したもので、基材にペーストを塗布し、一昼夜かけてペーストを硬化し、その後にレーザー照射することによって基材上に所望の電極パターンを形成する。その後、全面紫外線露光することで、レーザー未照射部の有機成分を上述の活性酸素により、酸化分解し劣化させ、ブラッシング等することで焼成工程を経ずに所望の電極パターンを形成するというものである(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この方法では、ペーストを基材に塗布後、一昼夜かけて基材上のペーストを硬化させる工程やレーザーパターニング後に全面紫外線露光する工程など工程数が多いため依然としてタクトタイムの短縮という面で問題がある。
一方、電極、配線パターンに用いられる感光性ペーストは、一般に導電性粉末、ガラスフリット、有機バインダー等からなり、この導電性粉末には、抵抗値が低く大気雰囲気下でも焼成できるという点から、銀粉末が用いられている。しかし、銀粉末は高価な為、材料コストに占める割合が最も大きい。従って、銀粉末に代わる安価な導電性粉末を用いることができれば、材料コストの低減が可能となる。
銀粉末に代わる安価な他の導電性粉末については種々検討されており、価格、導電性の点から、例えば銅、アルミニウム等が挙げられるが、酸化しやすく、導電パターンとして満足できる抵抗値を得ることができない。
また、銀粉末を用いない配線パターン形成方法として、窒化アルミニウム(以下、「AlN」という。)基板に対するレーザーパターニング方法が開示されている。この方法は窒化アルミニウムが熱分解によって金属アルミニウム(単体)を生成するという性質を利用したもので、不活性ガス雰囲気下、AlN基板へ直接レーザーを照射し、この照射領域に金属アルミニウム(単体)を析出させ、このアルミニウム層を核とした無電解めっき処理によって配線パターン形成を行うというものである(例えば非特許文献1参照)。
しかしながら、この方法では、基材としてAlN基板等のセラミック基板を用いなければならず、例えばガラス基板といった他の基板に対しては適用することができない。
特開2005−195715号公報(特許請求の範囲)
日本機械学会論文集(1989)C編 55(515)p1796
本発明は、上記課題を解決すべく開発されたものであり、導電パターン形成の低コスト化が可能なパターン形成方法及びそれに用いる組成物を提供することを目的とする。
本発明の一形態によれば、AlN粉末、ガラスフリット及び溶剤を含むペーストを基板上に塗布する塗布工程と、塗布された前記ペーストを乾燥し、乾燥塗膜を形成する乾燥工程と、レーザー光の照射により、前記乾燥塗膜に導電パターンを描画するレーザー描画工程と、前記乾燥塗膜のうち、前記レーザー光の未照射部分を、現像液を用いて除去する現像工程とを含む導電パターン形成方法が提供される。これにより、導電パターン形成のタクトタイムの短縮が達成でき、さらに従来に比較して、安価なペーストを用いているため、導電パターン形成のトータル的低コスト化が可能となる。
また、本発明の一形態によれば、前記ペーストは、さらに、有機バインダーを含むパターン形成方法が提供される。また、好適な形態としては、前記有機バインダーは、カルボキシル基含有樹脂を含む。これにより、アルカリ溶液での現像が可能となる。
また、本発明の一形態によれば、前記レーザーは、YAGレーザーであるパターン形成方法が提供される。
また、本発明の一形態によれば、AlN粉末、ガラスフリット及び溶剤とを含むレーザーパターニング用組成物が提供される。
また、本発明の形態によれば、さらに、有機バインダーを含むレーザーパターニング用組成物が提供される。好適な形態としては、前記有機バインダーは、カルボキシル基含有樹脂を含む。
また、本発明の一形態によれば、上記組成物の塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥した後、レーザー照射により、前記塗布膜に導電パターンを描画し、現像することで得られる導電パターンが提供される。
また、本発明の一形態によれば、上記組成物を用いて得られる導電パターンを有する基板が提供される。
本発明によれば、低コストで、タクトタイムの短縮が可能な導電パターンの形成方法及びこれに用いる組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
先ず、本実施形態のパターン形成方法に用いるペーストについて詳細に説明する。
本実施形態のペーストは、AlN粉末と、ガラスフリットと、溶剤とを含むものである。また、好適な形態としては、有機バインダーを含有し、特に有機バインダーとして、カルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。
AlN粉末は、従来の導電性ペーストに配合される導電性粉末の代わりに配合される。上述のとおり、AlN自体は絶縁性の物質であるが、ある温度以上で熱分解を起こし、下記式(1)に示すように金属Al(アルミニウム単体)が生成される。
AlN Al + 1/2N・・・・(1)
このような上記式(1)に示す反応を後述する本実施形態のパターン形成方法におけるレーザー光の照射によって進行させ、生成した金属Alが導体として機能する。
また、必要に応じて、導電性粉末を加えることができる。このような導電性粉末としては、例えば、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Cu、Al、Sn、Pb、Zn、Fe、Ir、Os、Rh、W、Mo、Ru等の単体とその合金の他、酸化錫(SnO2)、酸化インジウム(In23)、ITO(Indium Tin Oxide)などを用いることができる。
上記のAlN粉末及び導電性粉末は、一次粒径が0.1〜10μmであるものが好ましい。一次粒径が10μmより大きいと、レーザーパターニング後に導体パターンにピンホールや隙間が生じやすくなり十分な導電性が得られ難くなる。より好ましくは1〜5μmである。また、このようなAlN粉末及び導電性粉末は、球状、フレーク状、デンドライト状など種々の形状のものを用いることができるが、光特性や分散性を考慮すると、球状のものを用いることが好ましい。
なお、本明細書において、一次粒径とは、電子顕微鏡(SEM)を用いて10,000倍にて観察したランダムな10個の無機粉末の平均粒径を意味する。
ガラスフリット(低融点ガラス粉末)としては、ガラス転移点が360〜500℃、ガラス軟化点が420〜580℃であることが好ましい。また、ガラスフリットの熱膨張係数α300は、60〜110×10−7のものが好ましい。このようなガラスフリットとしては、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化リチウム、またはアルカリホウケイ酸塩を主成分とするものが好適に用いられる。
酸化鉛を主成分とするガラスフリットの好ましい例としては、酸化物基準の質量%で、PbOが48〜82%、Bが0.5〜22%、SiOが3〜32%、Alが0〜12%、BaOが0〜15%、TiOが0〜2.5%、Biが0〜25%の組成を有し、軟化点が420〜580℃である非晶性ガラスフリットが挙げられる。
また、酸化ビスマスを主成分とするガラスフリットの好ましい例としては、酸化物基準の質量%で、Biが6〜88%、Bが5〜30%、SiOが5〜25%、Alが0〜5%、BaOが0〜20%、ZnOが1〜20%の組成を有し、軟化点が420〜580℃である非晶性ガラスフリットが挙げられる。
また、酸化亜鉛を主成分とするガラスフリットの好ましい例としては、酸化物基準の質量%で、ZnOが25〜60%、KOが2〜15%Bが25〜45%、SiOが1〜7%、Alが0〜10%、BaOが0〜20%、MgOが0〜10%の組成を有し、軟化点が420〜580℃である非晶性ガラスフリットが挙げられる。
このようなガラスフリットの配合量は、レーザー照射後のパターンの密着性並びに抵抗値低減の観点からAlN粉末に対して、1〜30質量%が好ましい。より好ましくは1〜20質量%である。
溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テルピネオールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら溶剤の配合量は、塗布作業性の観点からペースト中のAlN粉末に対して、20〜50質量%の割合で配合する。
有機バインダーとしては、カルボキシル基を有する樹脂、具体的にはそれ自体がエチレン性二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のいずれも使用可能である。好適に使用できる樹脂(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)としては、以下のようなものが挙げられる。
(1)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物を共重合させることによって得られるカルボキシル基含有樹脂、
(2)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、グリシジル(メタ)アクリレートや(メタ)アクリル酸クロライドなどにより、エチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(3)グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と、メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基にテトラヒドロフタル酸無水物などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(4)無水マレイン酸などの不飽和二重結合を有する酸無水物と、スチレンなどの不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(5)多官能エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基にテトラヒドロフタル酸無水物などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(6)メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物とグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体のエポキシ基に、1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸を反応させ、生成した2級の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(7)ポリビニルアルコールなどの水酸基含有ポリマーに多塩基無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、及び
(8)ポリビニルアルコールなどの水酸基含有ポリマーに、テトラヒドロフタル酸無水物などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂に、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物をさらに反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂などが挙げられ、特に(1)、(2)、(3)、(6)の樹脂が好適に用いられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタアクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
このようなカルボキシル基含有感光性樹脂及びカルボキシル基含有樹脂としては、それぞれ重量平均分子量が1,000〜100,000、かつ酸価が20〜250mgKOH/gであることが好ましい。重量平均分子量が1,000未満の場合、現像時の塗膜の密着性に悪影響を与える。一方、100,000を超えた場合、現像不良を生じやすくなる。より好ましくは5,000〜70,000である。また、酸価が20mgKOH/g未満の場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が不十分となり現像不良を生じやすい。一方、250mgKOH/gを超えた場合、現像時に塗膜の密着性の劣化が生じてしまう。より好ましくは40〜200mgKOH/gである。
このようなカルボキシル基含有感光性樹脂及びカルボキシル基含有樹脂は、単独で又は混合して用いてもよいが、いずれの場合でもこれらは合計でペースト全量あたり5〜50質量部で配合されることが好ましい。これらの配合量が5質量部未満の場合、形成する塗膜中の上記樹脂の分布が不均一になりやすく、現像によるパターニングが困難となる。一方、50質量部を超えた場合、パターンのよれや線幅収縮を生じやすくなる。
また、現像性を向上させる目的で、必要に応じて、低分子モノマーを配合することができる。このような低分子モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び上記アクリレートに対応する各メタクリレート類;フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、こはく酸、トリメリット酸、テレフタル酸等の多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−、またはそれ以上のポリエステルなどの重合性モノマーが挙げられる。また、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの低分子モノマーの中でも、1分子中に2個以上のアクリロイル基又はメタアクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。
また、必要に応じて、安定剤として、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸等の各種無機酸;ギ酸、酢酸、アセト酢酸、クエン酸、ステアリン酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、スルファミン酸等の各種有機酸;リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸ブチル、リン酸フェニル、亜リン酸エチル、亜リン酸ジフェニル、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等の各種リン酸化合物(無機リン酸、有機リン酸)などを、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このような安定剤は、ガラスフリット100質量部当り0.1〜10質量部の割合で添加することが好ましい。
次に、本実施態様のパターン形成方法について説明する。
先ず、本実施態様のペーストに関し、上述した各必須成分、ならびに任意成分との混練分散は、三本ロールやブレンダー等の機械が用いられる。こうして分散されたペーストは、スクリーン印刷法、バーコーター、ブレードコーターなど適宜の塗布方法で基材上に塗布される。
次いで指触乾燥性を得るために熱風循環式乾燥炉、遠赤外線乾燥炉などで例えば約60〜150℃で5〜60分程度乾燥させて溶剤を蒸発させ、タックフリーの塗膜を得る。なお、本実施態様のペーストは、予めフィルム状に成膜したドライフィルムとして用いてもよい。
次に、レーザー照射により、上記塗膜に対し所望のパターンを形成する。レーザーが照射された領域は、塗膜中の有機成分はそのほとんどがバーンアウトすると同時に、AIN粉末は熱分解によって金属Alが生成する。この金属Alがガラスフリット及び熱分解しなかったAlNと共に基材上に融着される。即ち、本実施形態の導電パターンは、金属AlとガラスフリットとAlNを含んだものとなる。また、本工程では、大気雰囲気下や例えばNe、He、Ar等の不活性ガス雰囲気下のいずれの場合でも行うことができるが、得られるAl導体の酸化を防止する観点から不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
パターニング方式としては、例えばCADなどで所望のパターンを作成し、これに従って、レーザーを照射するレーザー描画法が用いられる。用いるレーザーとしては、基本波の波長が、532〜10700nmの範囲が好ましい。具体的には、YAGレーザーが好適に用いられる。レーザー出力、周波数及び照射速度は、塗膜中の無機粉末が融着できる程度の熱量になるよう調節する。具体的には、レーザー出力は、0.2〜2.0W、周波数10〜30kHz、照射速度は、0.1〜1.5mm/sの範囲で適宜調節される。レーザー出力が、0.2Wより小さい場合、十分な融着ができない。2.0Wより大きいと、照射部分の熱の拡散によって、線幅が太くなる。周波数は、10kHzより小さいとパターン形成が良くない。30kHzより大きいと導電性が良くない。照射速度は0.1mm/sより遅いとパターン形成のタクトタイム短縮の観点から良くない。照射速度は1.5mm/sより速いと、十分に有機バインダー等がバーンアウトされない。なお、ここではレーザー描画を挙げているが、これに限定されず、例えば、電子線ビーム、イオンビーム、荷電ビーム等を用いて描画してもよい。その後、現像することで、レーザー未照射部を洗い落し、所望のパターンを形成する。
現像工程としては、溶液スプレー法、浸漬法等が用いられる。現像液としては、有機溶媒などでも現像は可能であるが、環境負荷低減の観点からアルカリ性の水溶液が好適に用いられる。また、上記有機バインダーに含まれるカルボキシル基を含有する樹脂は、アルカリ水溶液に対し可溶性があるため、安定した現像が可能になる。
このようなアルカリ水溶液としては、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウムなどの金属アルカリ水溶液や、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン水溶液等が挙げられる。特に約1.5wt%以下の濃度の金属アルカリ水溶液が好適に用いられるが、上述したとおり組成物中のカルボキシル基を含有する樹脂のカルボキシル基がケン化され、未照射部が除去されればよく、上記のような現像液に限定されるものではない。また、現像後に不要な現像液の除去のため、水洗や酸中和を行うことが好ましい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことは勿論である。尚、以下において「部」は、特に断りのない限りすべて質量部であるものとする。
(有機バインダーの合成)
温度計、攪拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコに、メチルメタクリレートとメタクリル酸を0.76:0.24のモル比で仕込み、溶媒としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを入れ、窒素雰囲気下、80℃で2〜6時間攪拌し、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を冷却し、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン、触媒としてテトラブチルホスホニウムブロマイドを用い、グリシジルメタクリレートを、95〜105℃で16時間の条件で、上記樹脂のカルボキシル基1モルに対し0.12モルの割合の付加モル比で付加反応させ、冷却後取り出し、有機バインダーを得た。この有機バインダーは、重量平均分子量が約10,000、固形分酸価が59mgKOH/g、二重結合当量が950であった。なお、得られた共重合樹脂の重量平均分子量の測定は、島津製作所社製ポンプLC−6ADと昭和電工社製カラムShodex(登録商標)KF−804、KF−803、KF−802を三本つないだ高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
(試験基板作成)
乾燥塗膜:
高歪ガラス(PD200:旭ガラス社製)基板上に、評価用のペーストを200メッシュのポリエステルスクリーンを用いて全面に塗布し、次いで、熱風循環式乾燥炉にて90℃で30分間乾燥して指触乾燥性の良好な乾燥塗膜(膜厚約100μm)を形成した。
パターニング:
上記方法にて作成した乾燥塗膜を、照射距離5mmにて乾燥塗膜の塗膜表面に焦点距離を合わせ、YAGレーザーを照射してパターンを形成し、評価パターンとした。
現像:
上記方法にて作成した評価パターンを、液温30℃の0.4質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー法にてレーザー未照射部分が完全に落ちるまで現像を行った。
評価項目、測定条件は以下の通りである。
(導電性)
上記方法にて作成された評価パターンについて、レーザー照射部にテスターにて導通を評価した。
○;導電性有り。
×;導電性無し。
(抵抗値)
パターニングした部分(5mm)について抵抗計(HIOKI3540mΩHITESTER)にて抵抗値を測定し、単位長さ当たりの抵抗値(Ω/mm)を求めた。
(線幅)
上記現像方法にて得られたパターンの線幅を光学顕微鏡にて測定した。
[実施例1〜16]
上記方法により合成された有機バインダーを用い、表1に示す組成比にて配合し、攪拌機により攪拌後、3本ロールミルにより練肉してペースト化を行い、ペースト状の組成物1、2を得た。
Figure 2011181338
※1:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
※2:平均粒径(D50)2.0 μm、最大粒径(D90)4.1 μm、比表面積8.3 m/g
※3:Bi2O3 50 %、B2O3 16%、ZnO 14%、SiO2 2%、BaO 18%
熱膨張係数α300=86×10-7/℃、ガラス軟化点501℃
このようにして得られた組成物1、2を用いて上記方法により作成した乾燥塗膜について、レーザー出力1.0、2.0Wの場合における周波数10、30kHzで得られた評価パターンの各々の導電性、線幅、抵抗値を上記測定方法にて評価した。評価結果を表1に示す。なお、レーザー照射速度は、1.0mm/sである。
Figure 2011181338
実施例1〜8は、組成物1からなる乾燥塗膜を用いた場合であり、実施例1〜4はAr雰囲気下、実施例5〜8は大気雰囲気下でレーザーパターニングを行った場合である。また、実施例9〜16は、組成物1に対してAlN粉末の含有量の多い組成物2からなる乾燥塗膜を用いた場合であり、実施例9〜12はAr雰囲気下、実施例13〜16は大気雰囲気下でレーザーパターニングを行った場合である。導電性、抵抗値、線幅のいずれも良好な評価結果が得られた。
また、抵抗値に関して、Ar雰囲気下、大気雰囲気下ともに組成物1を用いた実施例1〜8に比べて、AlN粉末の含有量の多い組成物2を用いた実施例9〜16の方が低くなる傾向にある。また、組成物1、組成物2のそれぞれにおいてAr雰囲気下と大気雰囲気下とで比較した場合では、Ar雰囲気下の方が若干低くなる傾向にある。
また、線幅に関しては、大気雰囲気下でレーザーパターニングを行った実施例5〜8と各々に対応する実施例13〜16とを比較した場合、組成物1を用いた実施例5〜8に比べて、AlN粉末の含有量の多い組成物2を用いた実施例13〜16の方が太くなる傾向にある。一方、Ar雰囲気下でレーザーパターニングを行った実施例1〜4と各々に対応する実施例9〜12とを比較した場合、組成物1を用いた実施例1〜4に比べて、AlN粉末の含有量の多い組成物2を用いた実施例9〜12の方が細くなる傾向にある。
[実施例17〜20]
表3に示す組成比にて配合し、攪拌機により攪拌後、3本ロールミルにより練肉して組成物3、4を得た。
Figure 2011181338
※1:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
※2:テルピネオール
※3:平均粒径(D50)2.0μm、最大粒径(D90)4.1μm、比表面積8.3m/g
※4:平均粒径(D50)3.9μm、最大粒径(D90)6.3μm、比表面積2.3m/g
※5:Bi2O3 50%、B2O3 16%、ZnO 14%、SiO2 2%、BaO 18%
熱膨張係数α300=86×10-7/℃、ガラス軟化点501℃
このようにして得られた組成物3、4を用いて上記方法により作成した乾燥塗膜について、レーザー出力1.0、2.0Wの場合における周波数10kHzで得られた評価パターンの各々の導電性、線幅、抵抗値を上記測定方法にて評価した。評価結果を表4に示す。なお、レーザー照射速度は、1.0mm/sである。
Figure 2011181338
実施例17、18は、組成物2に対して有機バインダーを含有していない組成物3からなる乾燥塗膜を用いた場合であり、Ar雰囲気下でレーザーパターニングを行った場合である。また、実施例19、20は、有機バインダーを含有していない組成物3に対してAlN粉末の粒径を大きくした組成物4からなる乾燥塗膜を用いた場合であり、Ar雰囲気下でレーザーパターニングを行った場合である。導電性、抵抗値、線幅のいずれも良好な評価結果が得られた。
また、抵抗値に関して、有機バインダーを含有していない組成物3を用いた実施例17、18に比べて、AlN粉末の粒径が大きくした組成物4を用いた実施例19、20の方が低くなる傾向にある。また、有機バインダーを含有している組成物2を用いた実施例9、11とで比較した場合では、有機バインダーを含有していない組成物3を用いた実施例17、18の方が低くなる傾向にある。
また、線幅に関しては、有機バインダーを含有していない組成物3を用いた実施例17、18に比べて、AlN粉末の粒径を大きくした組成物4を用いた実施例19、20の方が細くなる傾向にある。一方、有機バインダーを含有している組成物2を用いた実施例9、11と各々に対応する実施例17、18とを比較した場合、有機バインダーを含有している組成物2を用いた実施例9、11に比べて、有機バインダーを含有していない組成物3を用いた実施例17、18の方が太くなる傾向にある。

Claims (10)

  1. AlN粉末、ガラスフリット及び溶剤を含むペーストを基板上に塗布する塗布工程と、
    塗布された前記ペーストを乾燥し、乾燥塗膜を形成する乾燥工程と、
    レーザー光の照射により、前記乾燥塗膜に導電パターンを描画するレーザー描画工程と、
    前記乾燥塗膜のうち、前記レーザー光の未照射部分を、現像液を用いて除去する現像工程と
    を含むことを特徴とする導電パターン形成方法。
  2. 前記ペーストは、さらに、有機バインダーを含むことを特徴とする請求項1に記載の導電パターン形成方法。
  3. 前記有機バインダーは、カルボキシル基含有樹脂を含むことを特徴とする請求項2に記載の導電パターン形成方法。
  4. 前記レーザーは、YAGレーザーであることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の導電パターン形成方法。
  5. 前記現像液は、アルカリ溶液であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の導電パターン形成方法。
  6. AlN粉末、ガラスフリット及び溶剤を含むことを特徴とするレーザーパターニング用組成物。
  7. さらに、有機バインダーを含むことを特徴とする請求項6に記載のレーザーパターニング用組成物。
  8. 前記有機バインダーは、カルボキシル基含有樹脂を含むことを特徴とする請求項7に記載のレーザーパターニング用組成物。
  9. 請求項6から請求項8の何れか一項に記載の組成物の塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥した後、
    レーザー光の照射により、前記塗布膜に導電パターンを描画し、前記レーザー光の未照射部分を、現像除去することで得られることを特徴とする導電パターン。
  10. 請求項6から請求項8を何れか一項に記載の組成物を用いて得られる導電パターンを有することを特徴とする基板。
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