JP4516196B2 - 感光性黒色ペースト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプラズマディスプレイ、プラズマアドレス液晶等の表示素子の前面板電極の製造に使用し、表示コントラストの高い黒色電極を高い精度で得ることの出来る感光性黒色ペーストに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、典型的には一対の前面および背面絶縁基板を含み、その前面および背面板は互いに対向するように配置されて、一定の間隔で支持された前記絶縁基板とその絶縁基板の間に配置されたセル障壁とによってそれぞれ規定されたディスプレイ素子としての複数のセルを形成しており、前記絶縁基板の内表面上に誘電体層をはさんで位置する2つの電極はその間に交流電圧をかけることによりセル内で放電し、セル障壁の表面上に形成された蛍光体スクリーンを発光させ、透明な絶縁基板を透過した光によって画像を表示するものである。
【0003】
PDPにおいて、画像の解像度および輝度は、電極の幅、相互接続用導体のピッチ、および誘電体層透明度などに依存する。電極および相互接続用導体のパターンを形成する際に、スクリーン印刷やスパッタリング、または化学的エッチング法などでは精細なパターンを得ることが難しい。精細なパターンを得る方法として、感光性ペースト法がある。これは、感光性ペーストすなわち感光性を有する導体ペーストを基板上に前面塗布し、所定のマスクで露光後、現像し、得られたパターンを焼成することで高精細な導体パターンを得るものであり、感光性ペーストとしては導体粉末と感光性樹脂バインダーを含むものが使用される。
【0004】
また、ディスプレイの表示コントラストを向上させるために前面基板上に配置された電極からの外光の反射を減少させることが必須である。この外光の反射を減少させるには、反射率の高い金属性の電極の前面絶縁基板側に、光線透過率と反射率の低い黒色の電極を形成し、ディスプレイ前面プレートから見たときに電極を黒くすることが最も良好な方法である。
【0005】
図1にプラズマディスプレイ前面板の表示電極の構成例を示した。プラズマ放電を行う透明表示電極(ITO)2の上に、外光反射を防ぎ表示コントラストを向上させる黒色電極3が形成され、その上に電極の抵抗値を下げるための金属電極4(銀など)が形成されている。この黒色電極を形成するための高い黒色度と導電性を兼ね備えた材料として、例えば特開平10−255670号公報では、酸化ルテニウムが用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、酸化ルテニウムは高い黒色度と導電性を兼ね備えた優れた材料であるが、非常に高価であるという難点がある。本発明は、高い黒色度と導電性を備えた優れたディスプレイ前面板電極を形成するための材料として、それぞれ導電性と黒色度を有する複数の材料を組み合わせることにより高価な酸化ルテニウムを用いずに優れた性能の感光性黒色ペーストを得るものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、無機粉末と、感光性有機成分として少なくともアルカリ可溶性のアクリル系共重合体と、光重合開始剤を必須成分とし、前記無機粉末としてガラス粉末、金属酸化物系の黒色無機顔料、金属粉末を含有する感光性黒色ペーストであって、金属粉末の含有量が、無機粉末全量に対して1重量%以上25重量%未満であり、ガラス粉末として、軟化点が400℃以上520℃未満のものを含み、黒色顔料と金属粉末の合計量が無機粉末全量の25重量%未満であることを特徴とする感光性黒色ペーストである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0009】
本発明は、無機粉末と、感光性有機成分として少なくともアルカリ可溶性のアクリル系共重合体と、光重合開始剤を必須成分とするペーストであり、前記無機粉末としてガラス粉末、金属酸化物系の黒色無機顔料、金属粉末を含有する感光性黒色ペーストであって、ガラス粉末として、軟化点が400℃以上520℃未満のものを含むことを特徴とする感光性黒色ペーストである。
【0010】
本発明の感光性黒色ペーストの無機粉末としては、ガラス粉末、黒色無機顔料、導電性粉末が含まれる。本発明による感光性黒色ペーストは、塗布、パターン加工、焼成の後に高い黒色度と導電性を備えたものであり、黒色度は黒色無機顔料により達成され、導電性は導電性粉末により達成される。また、本ペーストは、ガラス基板上に塗布焼成して電極形成するため、600℃未満の温度で焼成する必要がある。通常の黒色無機顔料や導電性粉末は600℃未満では焼結しないために、これらを焼成するためには低軟化点のガラス粉末を結着剤として含む必要がある。
【0011】
本発明で用いられる無機顔料は着色されていれば特に限定されないが、より好ましくは光透過率、反射率の点より黒色であることが好ましい。ここで用いる黒色とは、背景に対し視覚的に有意差が得られるようなコントラストを示す黒い色を指すものであり、濃淡の全くない黒色に限定されるものではない。なお、本発明の実施一態様として、黒色顔料を用いて説明を行うが、これに限定されるものではない。
【0012】
黒色無機顔料としては、金属酸化物が好ましく用いられる。金属酸化物としては、チタンブラックや、銅、鉄、マンガンの酸化物やそれらの複合酸化物、コバルト酸化物などがあるが、ガラスと混合して焼成したときに退色が少ない点でコバルト酸化物が優れている。コバルト酸化物類としては、CoO:酸化コバルト(II)、Co2O3(H2O):酸化コバルト(III)およびCo3O4:酸化二コバルト(III)コバルト(II)等があげられるが本発明はこれらに限られるものではない。これらはいずれも黒色系の物質であるが、酸化コバルト(II)は空気中で390〜900℃に加熱することで、また酸化コバルト(III)は真空中で150℃に加熱することでいずれも酸化二コバルト(III)コバルト(II)に変わることが知られており、本発明の熱処理により退色しない目的のためには酸化二コバルト(III)コバルト(II)が最も好適である。また、酸化コバルト(II)は粒子径により種々の色合いを示し、酸化コバルト(III)は褐色ががった黒色であるのに対して、酸化二コバルト(III)コバルト(II)は灰黒色から黒色を示し、無彩色の黒である。表示素子のコントラスト向上という本発明の目的からすれば黒色電極は無彩色であることが表示品位の点から好ましいのでこの点でも酸化二コバルト(III)コバルト(II)が好適である。黒色無機顔料の平均粒子径としては、10nm以上、100nm未満であることが望ましい。10nm未満の粒子は、良好な分散が極度に困難であり、実質的に使用不可能である。また100nm以上になると光線の散乱が生じるために黒色度が低下する。
【0013】
黒色無機顔料の添加量としては、無機粉末全量の1重量%以上25重量%未満であることが望ましい。1重量%未満であると十分な黒色度が得られず、25重量%以上であると焼結性が低下する。
【0014】
導電性粉末としては、金属粉末または金属酸化物粉末が挙げられる。金属粉末としては電極材料として通常用いられる金、銀、銅、ニッケルなどを特に制限無く用いることが出来るが、安価で導電性が良好であると言う点でニッケルが好ましい。金属酸化物粉末としては、酸化スズ、あるいはインジウムとスズの合金酸化物であるITO(Indium Tin Oxide)などがあげられるがこれらに限定されるものではない。導電性向上のために、これら金属酸化物には微量元素のドーピングを行っても良い。例えば、酸化スズに対して数%のリンまはたアンチモンを含むことで導電性が向上する。導電性粉末の平均粒子径は0.1μm以上、5μm未満であることが望ましい。0.1μm未満の導電性粉末は良好な分散が困難であり、5.0μm以上の粉末は電極の平坦性や電極パターンの形状が悪化するので好ましくない。
【0015】
導電性粉末の添加量としては、無機粉末全量の1重量%以上25重量%未満であることが望ましい。1重量%未満であると十分な導電性が得られず、25重量%以上であると焼結性が低下する。
【0016】
黒色顔料と金属粉末の添加量は、その合計量が無機粉末全量の25重量%未満であることが望ましい。合計量が25重量%以上であると焼結性が低下する。
【0017】
ガラス粉末としては、軟化点が400℃以上、520℃未満であることが好ましい。軟化点が400℃未満のガラスは、バインダー樹脂が分解、揮発する前に軟化し始めるために脱バインダーを阻害するので好ましくない。また、軟化点が520℃以上では焼結性が低下するために、黒色顔料と金属粉末を十分な量添加することが出来ない。この軟化点範囲を満たすガラスであれば特に制限なく種々のものを用いることが出来るが、鉛やビスマスを含むホウケイ酸系のガラスが好ましく用いられる。近年特に鉛を含む材料の規制が進みつつあることを考慮するとビスマス系ガラスがより好ましい。
【0018】
ガラス粉末の平均粒子径は0.5μm以上5.0μm未満であることが好ましい。0.5μm未満の場合、良好に分散することが難しく、5μm以上では電極の平坦性や形状が悪化するために好ましくない。
【0019】
本発明において黒色ペーストに使用する感光性ペーストの樹脂成分としては、光硬化型のアクリル系感光樹脂が好ましく用いられる。光硬化型のアクリル系感光性樹脂としては、アルカリ可溶性のアクリル系共重合体と、多官能アクリルモノマーと、光ラジカル発生剤と溶剤からなるものが広く用いられる。ポリマーがアルカリ可溶性を有することで現像液として環境に問題のある有機溶媒ではなくアルカリ水溶液を用いることが出来る。
【0020】
アクリル系共重合体とは、共重合成分に少なくともアクリル系モノマーを含む共重合体であり、アクリル系モノマーとは、具体的な例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレートなどのアクリル系モノマー、およびこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたものなどが挙げられる。アクリル系モノマー以外の共重合成分としては、炭素−炭素2重結合を有する全ての化合物が使用可能であるが、好ましくはスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンなどのスチレン類、γ−メタクリロシキプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。望ましくはアクリル酸アルキルあるいはメタクリル酸アルキル、より好ましくは少なくともメタクリル酸メチルを含むことで、熱分解性の良好な重合体を得ることが出来る。アクリル系共重合体にアルカリ可溶性を付与するためには、モノマーとして不飽和カルボン酸等の不飽和酸を加えることにより達成される。不飽和酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸ビニル、またはこれらの酸無水物等が挙げられる。これらを加えることによるポリマーの酸価は、現像性の観点から50〜140の範囲であることが好ましい。
【0021】
硬化速度を向上させるためには、ポリマーの少なくとも一部が、側鎖または分子末端に炭素−炭素2重結合を有することが好ましい。炭素−炭素2重結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。このような官能基をポリマーに付加させるには、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基と炭素−炭素2重結合を有する化合物や、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させてつくる方法がある。
【0022】
グリシジル基と炭素−炭素2重結合を有する化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエチルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、グリシジルクロトネート、グリシジルイソクロトネートなどが挙げられる。イソシアナート基と炭素−炭素2重結合を有する化合物としては、アクリロイルイソシアネート、メタクロイルイソシアネート、アクリロイルエチルイソシアネート、メタクリロイルエチルイソシアネート等がある。
【0023】
多官能モノマーとしては、1分子中に炭素−炭素2重結合を2つ以上有する化合物が用いられ、その具体的な例としては、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、または上記化合物のアクリル基を1部または全てメタクリル基に代えた化合物等が挙げられる。
【0024】
光重合開始剤としては、市販の光ラジカル開始剤が好適に使用できる。例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、あるいはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンに、2,4−ジエチルチオキサントンなどが例として挙げられるが、本発明に使用できる光重合開始剤系はこれらに限定されるものではない。
【0025】
本発明におけるプラズマディスプレイパネルの電極複合体を構成する黒色電極の透過率は2%以下であることが望ましく、また、前面透明基板側から測定した透明基板と黒色電極の界面反射率は明度のL値にして20以下であることが望ましい。反射明度のL値が20より大きい場合には、前面透明基板側から見たときの外光反射が大きくなり、プラズマディスプレイパネルの表示コントラストを低下させるので好ましくない。また、反射明度が低い場合でも、透過率が2%より大きい場合には、黒色電極を透過した光線が黒色電極と金属電極の界面で反射し、金属電極の反射率は一般に非常に高いために、この場合も外光反射が大きくなり、プラズマディスプレイパネルの表示コントラストを低下させるため好ましくない。
【0026】
以下に本発明によるペーストを用いた黒色電極の使用方法を具体的な例をあげて説明するが、本発明はこの例により制限を受けるものではない。
【0027】
感光性黒色ペーストを塗布する方法としては、特に限定されないがスクリーン印刷が好ましい。スクリーン印刷は、非感光の厚膜導体ペーストでパターン形成する場合に用いられていることで知られており、また、数μmから数十μmの厚さの塗布膜を形成するのに適した方法である。
【0028】
膜厚が数μmの場合には、凹版印刷や凸版印刷、平版印刷や、それらのオフセット印刷など、スクリーン印刷以外の印刷方法も適用が可能である。また、バーコーターやロールコーター、カーテンコーター等の方法によって塗布を行うことも可能である。
【0029】
ペースト塗布後、70℃〜100℃で数分から1時間加熱して、塗布膜を乾燥させる。
【0030】
塗布された感光性ペーストに露光する場合には、所望するパターン形状のマスクを介して行う。露光は高圧水銀灯などにより、露光量は例えばi線(365nm)における測定で10〜500mJ/cm2 である。
【0031】
露光後、現像液によって未露光部の感光性黒色ペーストを除去し、水洗して所望の導体パターンを得る。これら現像と水洗は、浸漬、スプレー、パドルなどで行うことが出来るが、より高い解像度のパターンが得られるのでスプレー現像が好ましい。現像液のスプレー時間は20秒から200秒であり、水洗は同じくスプレーで10秒から60秒で行う。
【0032】
電極パターン形成後、電気炉、ベルト炉等で焼成を行う。焼成によって、有機成分を揮発させると共に無機粉末を焼結させることにより黒色電極を形成できる。焼成の雰囲気は、大気中、または窒素雰囲気で行われる。導体粉末が金、銀など酸化されにくい金属の場合は大気中で、銅などの酸化しやすい金属である場合は、酸素を10〜100ppm含有する窒素雰囲気、水素雰囲気等で、400〜600℃の温度で1〜60分保持して焼成することが好ましい。
【0033】
黒色電極パターンは、既に形成された透明電極パターンの上に形成され、さらにその上に銀などの金属電極パターンを形成する。金属電極パターンは、金属粉末を含有する感光性ペーストにより形成することが望ましい。
【0034】
黒色電極と金属電極の露光、現像は、それぞれ別に行っても良いし、また、黒色ペーストと金属ペーストを重ねて塗布した後に、一度の露光現像で形成することもできる。
【0035】
本発明の感光性黒色ペーストによって金属電極と透明電極界面に黒色電極層を形成することにより、表示コントラストが高く、性能の高いプラズマディスプレイパネル前面板を得ることが出来るものである。
【0036】
【実施例】
以下の実施例で本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何等の制限を受けるものではない。以下に述べる要領でペーストの調整を行った。
【0037】
A.アクリルポリマー
グリシジルメタクリレート変性メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体酸価100、重量平均分子量30000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でポリスチレン換算)。
【0038】
B.多官能モノマー
プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
3官能モノマーTPA−330(日本化薬)
C.ガラス粉末
ガラス粉末1 軟化点470℃、D50平均粒子径2μm
ガラス粉末2 軟化点390℃、D50平均粒子径2μm
ガラス粉末3 軟化点520℃、D50平均粒子径2μm
ガラス粉末4 軟化点470℃、D50平均粒子径0.3μm
ガラス粉末5 軟化点470℃、D50平均粒子径5μm
D.黒色顔料
コバルト酸化物1(Co3O4)D50平均粒子径70nm
コバルト酸化物2(Co3O4)D50平均粒子径100nm
コバルト酸化物3(CoO) D50平均粒子径50nm
Fe−Mn−Cu複合酸化物 D50平均粒子径50nm
カーボンブラック D50平均粒子径30nm
E.導電性粉末
ニッケル粉末1 D50平均粒子径2μm
ニッケル粉末2 D50平均粒子径0.05μm
ニッケル粉末1 D50平均粒子径5μm
銀粉末 D50平均粒子径2μm
ITO粉末 D50平均粒子径3μm
酸化スズ粉末 D50平均粒子径1μm リン ドープ品
酸化スズ粉末 D50平均粒子径1μm アンチモン ドープ品
F.光開始剤
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバスペシャリティケミカルズ“イルガキュア”369)
G.分散剤
“ノプコスパース092”(サンノプコ(株)製)
H.可塑剤
フタル酸ジ−n−ブチル(以下DBPと表記する)(和光純薬(株)製)
J.安定剤
1,2,3−ベンゾトリアゾール(和光純薬(株)製)
K.溶剤
γブチロラクトン(東燃化学(株)製)
L.アルカリ現像液
炭酸ナトリウム0.4重量%水溶液
以下の作業は、全て黄色灯下で行った。
ペースト調整
(1)ポリマーと溶剤を混合し、60℃で3時間加熱して溶解させた。
(2)ポリマー溶液を室温に冷却し、その他の有機組成と、無機粉末を混合し、モーターと撹拌羽を用いて200rpmで30分室温で均一に混合した。
(3)得られたスラリーを、3本ロール(EXACT model 50)で混練し、黒色ペーストを得た。
【0039】
パターン加工
(1)黒色ペーストをガラス基板(120mm角、厚み1.2mm)上に、スクリーンマスク(PET#380)を用いて全面印刷し、80℃で40分間乾燥した。乾燥後の厚みは4μmであった。
(2)高圧水銀灯(15mW/cm2)を用いて、パターンマスクを介してペーストの露光を40秒間行った。パターンマスクは長さパターン幅50μm、ピッチ140μm、長さ100mmのストライプパターンのネガマスクを用いた。
(4)アルカリ現像液を用いて、露光後の基板を浸漬し、揺動させて現像し、その後水シャワーでリンスした。
(5)得られたパターンを、電気炉を用いて、大気中、2時間で室温から580℃まで昇温し、その後580℃で20分保持し、炉中で自然冷却した。
【0040】
黒色度の測定
(1)黒色ペーストをガラス基板(120mm角、厚み1.2mm)上に、スクリーンマスク(SUS#325メッシュ)を用いて全面印刷し、80℃で40分間乾燥した。乾燥後の厚みは4μmであった。
(2)全面印刷膜を、電気炉を用いて、大気中、2時間で室温から580℃まで昇温し、その後580℃で20分保持し、炉中で自然冷却した。
(3)焼成後の膜厚はいずれも1〜2μmであった。
(4)焼成後の膜を、比色計CM2002(ミノルタ(株)製)のSCE(正反射除去)モードにより、L*値を測定した。測定はガラス面から、ガラス、黒色膜界面の反射光を測定した。
【0041】
導電性の評価
(1)銀ペースト(組成表5)をガラス基板上に10μm厚さで、60×60mm角の形状に印刷した。
(2)その上に、同じ形状にて10mm位置をずらして黒色ペーストを4μm厚さで印刷した。
(3)得られたガラス基板上の銀/黒の積層体を、電気炉を用いて、大気中2時間で室温から580℃まで昇温し、580℃で20分保持、その後炉中にて自然冷却した。
(4)テスターを用いて、一方の端子を銀に、もう一方を銀層の上に積層された部分の黒色層に当て、導通の有無を確認した。
【0042】
結果を表1〜表4に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
表1にはガラス粉末の軟化点と粒子径の、パターン加工性および焼成性に対する影響を示した。 実施例1では良好なパターン加工性と焼成性を持つ感光性黒色ペーストが得られた。比較例1ではガラスの軟化点が低すぎるために、有機物が全て分解飛散する前にガラスが軟化して有機物を包み込むために有機物が残り、脱バインダー性が不良となった。比較例2ではガラスの軟化点が高すぎて、黒色顔料と金属粉末を含んだ状態では焼結できなかった。実施例2および実施例3ではガラスの軟化点は実施例1と同じであり、平均粒子径を変化させた結果、焼成性の影響は少ないがパターン加工性に影響が出た。
【0048】
表2には黒色顔料の違いによる黒色度の比較を行った。黒色度は反射明度L* 値で評価した。この値が小さいほど黒色度が高く、20以下であれば目視でも黒いと判断された。実施例1(表1の実施例1に同組成)実施例4〜6、および実施例5では、いずれも金属酸化物系の黒色顔料を用いたため、焼成後の測定において反射明度L* 値≦20が得られており良好な黒色度であった。比較例3では金属酸化物系の黒色顔料ではなく一般的な黒色顔料であるカーボンブラックを使用したが、焼成により分解し、焼成後にはほとんど残存せずに黒色度は非常に低かった。
【0049】
表3には導電性粉末の粒子径と種類の印刷性と黒色度に対する影響を示した。実施例1(表1の実施例1と同組成)および実施例9では非常に良好な印刷性が得られているが、実施例7および8ではやや印刷性の低下が見られた。また実施例9では銀を用いたが、銀の光沢はニッケルよりも黒色度に影響しやすくL* 値がやや増大した。
【0050】
参考例1〜3には導電性粉末としてITOおよび酸化スズを用いたが、いずれもニッケル粉末の場合と同等の良好な結果が得られた。
【0051】
表4には黒色顔料および金属粉末添加量の影響を示した。黒色顔料を減らした実施例10では実施例1に比べて黒色度が劣っていた。比較例4及び比較例5では、実施例1に比べて焼成性がやや低下していた。実施例11では実施例1よりも金属粉末量を減少させた場合であり、黒色度、焼成性には影響なかったが導電性がやや劣っていた。
【0052】
【発明の効果】
本発明は上述のような構成を有することにより、プラズマディスプレイパネルの前面板の電極を形成する場合において、表示コントラスト向上のための、高い黒色度と電気伝導性を持つ黒色電極を、高精度で形成できるペーストが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラズマディスプレイパネル前面板電極の構造例。
【符号の説明】
1 ガラス基板
2 透明電極
3 黒色電極パターン
4 金属電極パターン
Claims (8)
- 無機粉末と、感光性有機成分として少なくともアルカリ可溶性のアクリル系共重合体と、光重合開始剤を必須成分とし、前記無機粉末としてガラス粉末、金属酸化物系の黒色無機顔料、金属粉末を含有する感光性黒色ペーストであって、金属粉末の含有量が、無機粉末全量に対して1重量%以上25重量%未満であり、ガラス粉末として、軟化点が400℃以上520℃未満のものを含み、黒色顔料と金属粉末の合計量が無機粉末全量の25重量%未満であることを特徴とする感光性黒色ペースト。
- 前記ガラス粉末の平均粒子径が0.5μm以上5μm未満であることを特徴とする請求項1記載の感光性黒色ペースト。
- 前記黒色無機顔料の含有量が無機粉末全量の1重量%以上25重量%未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性黒色ペースト。
- 前記黒色無機顔料が、鉄、銅、マンガン、コバルトのうちから選ばれた少なくとも1つの金属の酸化物、あるいはこれらのうちから選ばれた少なくとも2種の金属の複合酸化物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性黒色ペースト。
- 前記黒色無機顔料として少なくとも酸化二コバルト(III)コバルト(II)を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光性黒色ペースト。
- 前記黒色無機顔料の平均粒子径が、10nm以上100nm未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感光性黒色ペースト。
- 前記金属粉末がニッケルを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の感光性黒色ペースト。
- 前記金属粉末の平均粒子径が、0.1μm以上5μm未満であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の感光性黒色ペースト。
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