JP2006283791A - 車両用ピニオン軸支持装置 - Google Patents

Abstract

【課題】潤滑オイルの流通状況をスムースな流れとすることにより、円錐ころ軸受としての負荷容量を確保したままで撹拌抵抗等による回転トルクを低減することのできる車両用ピニオン軸支持装置を提供する。
【解決手段】ディファレンシャル装置のリングギヤ２と噛合うピニオンギヤ３を有するピニオン軸５を回転支持する転がり軸受（４，６）を備え、潤滑オイルが、リングギヤ２の回転によるはねかけにより、転がり軸受６のテール側開口部より内部に流入し、ピニオンギヤ３側開口部より流出する車両用ピニオン軸支持装置において、転がり軸受６のピニオンギヤ側開口部直近に、軸方向に延設するはねかけオイル遮蔽板７を設ける。或いは、前記はねかけオイル遮蔽板７の径方向外側直近に、径方向に延設するはねかけオイル反射板８を設ける。更に、前記はねかけオイル遮蔽板７の代わりにはねかけオイル反射ブロックを設ける。
【選択図】図１

Description

本発明は、例えば自動車のディファレンシャル装置やトランスアクスル装置に組み込まれる車両用ピニオン軸支持装置、特にディファレンシャルケースやトランスアクスルケース内における潤滑オイルの流入と流出時の衝突による撹拌抵抗トルクを低減することのできる車両用ピニオン軸支持装置に関する。

近年地球環境の保全、温暖化防止の見地から自動車の燃費向上もより一層要求されるようになっている。そのための１つの手段としてディファレンシャル装置等のピニオン軸支持装置の効率の向上、特に回転トルクの低減を向上させることが挙げられる。自動車のディファレンシャル装置は、図７に示すように、ケース１のボス部１ｂに固定された円錐ころ軸受４と６によって支持されるピニオン軸５の端部に設けられたピニオン３と、該ピニオン３と噛合するリングギヤ２と、該リングギヤ２に固定されるディファレンシャルギヤケース２０と、該ディファレンシャルギヤケース２０に回転可能に取り付けられた遊星歯車２１，２２と、該遊星歯車２１，２２と噛合する左・右の大歯車２３，２４と、で構成される。カーブ走行時に遊星歯車２１，２２が自転して左・右の大歯車２３，２４の回転数に差が生じて車軸２５，２６の回転数に差が生じるような機構としてある。

ディファレンシャル装置では、図７に示すように、転がり軸受としてテール側とピニオンギヤ側ともに円錐ころ軸受４、６が使用される例が多いが、一般的に円錐ころ軸受は、回転トルクが大きいという問題がある。ディファレンシャル装置は、粘性の大きい潤滑オイルが使用されるため回転トルクにも影響し、特に軸受周辺の潤滑オイルの流れが影響する。即ち、ディファレンシャル装置の内部の潤滑オイルをいかにスムースに移動させるかによってユニット全体のトルクが変わって来る。

自動車のディファレンシャル装置等で用いられる円錐ころ軸受のように、多量の潤滑オイルを流入させて潤滑する場合には、潤滑オイルの撹拌抵抗の影響が大きくなる。特に、運転中のディファレンシャル装置においては、ディファレンシャルギヤケース内のリングギヤによる潤滑オイルのはね上げ作用によって円錐ころ軸受４と６の配置空間へ偏る現象が起きる。この偏りは高速回転になるほど顕著になる。そこで、この偏りを防止するためピニオンギヤ軸の軸方向に離れた２カ所を回転自在に支持する２つの円錐ころ軸受の中間領域に潤滑オイルを導いた後リングギヤ側に戻すようにしたオイル循環構造を有するもので、前記両円錐ころ軸受の対向する端面の少なくとも上半分の領域に、当該両軸受内への潤滑オイルの流入を制限する障壁が設けられたものが提案されている。この引用例は、潤滑オイル中のギヤ摩耗粉等の円錐ころ軸受内への流入を少なくしようとするものであるが，結果的に潤滑オイルの流入も減少させて撹拌抵抗を低減することにもなる（特許文献１）。

特開平１１−０４８８０５号

ディファレンシャル装置のピニオン軸支持装置において、潤滑オイルの流入する小端側対向部周辺では内輪や軸の回転に伴う遠心力の作用により潤滑オイルの流れが不規則となり、オイル流入時の作用により撹拌抵抗増大の原因となっている。特に、テール側の円錐ころ軸受４の周辺は、比較的潤滑オイル量が少ないので潤滑オイルの流れの影響は少ない。一方、ヘッド側の円錐ころ軸受６の周辺には十分な潤滑オイル量が存在する。そして円錐ころ軸受６の内輪６ｂの小端部側から流入し、図８に示すように、大端部側から流出した潤滑オイルとリングギヤ２のはねかけによる潤滑オイルとが衝突し、激しい撹拌が起こっている。ディファレンシャル装置では、円錐ころ軸受は玉軸受等に比較して回転トルクが大きい上、かかる潤滑オイルの撹拌抵抗による回転トルクも比較的大きいという問題がある。

この発明は、上記する課題に対処するためになされたものであり、撹拌抵抗を考慮して潤滑オイルの流通状況をスムースな流れとすることにより、円錐ころ軸受としての負荷容量を確保したままで撹拌抵抗等による回転トルクを低減することのできる車両用ピニオン軸支持装置を提供することを目的としている。

即ち、上記課題を解決するため、請求項１に記載の発明は、リングギヤと噛合うピニオンギヤを有するピニオン軸のヘッド ギヤ側とテール側をそれぞれ回転支持する転がり軸受を備え、ケース内に貯留される潤滑オイルが、リングギヤの回転によるはねかけにより、ピニオンギヤ側の転がり軸受のテール側開口部よりこの転がり軸受内部に流入し、ピニオンギヤ側開口部より流出する車両用ピニオン軸支持装置において、
ピニオンギヤ側転がり軸受のピニオンギヤ側開口部直近に、軸方向に延設するはねかけオイル遮蔽板を設けることを特徴とする。

また、請求項２に記載の発明は、前記はねかけオイル遮蔽板の径方向外側直近に、径方向に延設するはねかけオイル反射板を設けることを特徴とする。

また、請求項３に記載の発明は、ケース内壁或いはケースボス部に、前記ピニオンギヤ側開口部の転がり軸受の軸受外輪外周面より軸方向に延びる円筒面と該円筒面に対して径外方に平面を有するはねかけオイル反射ブロックを設けることを特徴とする。

本発明は、上記各手段により、リングギヤによる潤滑オイルのはねかけによって発生する潤滑オイルの流れと、円錐ころ軸受内へ内輪の小端部の開口部側から内部へ流入し大端部から流出する潤滑オイルの流れとの衝突を回避し、且つ整流することにより撹拌抵抗による回転トルクを低減しようとするものである。上記請求項１の手段によれば、リングギヤによる潤滑オイルのはねかけの流れがはねかけオイル遮蔽板により遮蔽されてディファレンシャル装置側へ反転されると共に、円錐ころ軸受の大端部から流出する潤滑オイルの流れもリングギヤによる潤滑オイルのはねかけの流れと衝突することなくそのまま流出することができる。

また、請求項２および請求項３の手段によれば、リングギヤによる潤滑オイルのはねかけの流れがはねかけオイル遮蔽板の外側直近の反射板（面）或いはブロックによりにより反射されてディファレンシャル装置側へ反射される。そして、円錐ころ軸受の大端部から流出する潤滑オイルの流れもリングギヤによる潤滑オイルのはねかけの流れと衝突することなくそのまま流出することができる。こうして、リングギヤやピニオン軸及び円錐ころ軸受の内輪回転等によるケース内の潤滑オイルの流れが整流化され、その結果ディファレンシャル装置内の撹拌抵抗による回転トルクは減少させることができる。

以下、本発明の最良の実施の形態について説明する。

図１は、本発明の第１の実施の形態を示すディファレンシャル装置内の一部軸方向断面図である。本発明の車両用ピニオン軸支持装置は、ケース１内に配置されるディファレンシャル装置のリングギヤ２と、該リングギヤ２と噛合するピニオンギヤ３と、該ピニオンギヤ３を端部に固定するピニオン軸５と、該ピニオン軸５を支持するプロペラシャフト側（テール側）の円錐ころ軸受４と、前記ピニオンギヤ側（ヘッド側）の円錐ころ軸受６と、で構成される。前記テール側の円錐ころ軸受４とピニオンギヤ側円錐ころ軸受６は、これらの外輪４ａ、６ａが外ケース１内側のボス部１ｂ（或いは内壁）に固定されて取り付けられる。前記ピニオンギヤ３と噛合するリングギヤ２は、ピニオンギヤ３により駆動されて差動歯車機構を介して、左右の車軸（図示省略）を駆動する。

図２は、図１のＡーＡ矢視図であって車両用ピニオン軸支持装置部分を他の軸方向からみた断面図であり、図３は、図２のＢーＢ矢視図である。
前記ピニオンギヤ側（ヘッド側）の円錐ころ軸受６の外輪６ａは、ケース１内側のボス部１ｂ（或いはケース１内壁）に固定され、撹拌された潤滑オイルは、ケース１の内部の空間１２を通過してテール側の円錐ころ軸受４とピニオンギヤの円錐ころ軸受６の間に流入し、該円錐ころ軸受６の内輪６ｂの小端側開口部より流入して大端側開口部から排出される。即ち、この車両用ピニオン軸支持装置は、内輪６ｂのテール側の開口部側より潤滑オイルが流入し、内輪６ｂの大端部側（ピニオンギヤ側）の開口部から流出する条件で使用される場合に適用される。前記円錐ころ軸受６の外輪６ａを嵌合固定するケース１の内側のボス部１ｂのピニオンギヤ３側の開口部直近に、軸方向に延設するはねかけオイル遮蔽板７が設けてある。この遮蔽板７は、ケース１内側のボス部１ｂと一体に形成してもよい。

上記するように、前記ケース１のボス部１ｂのピニオンギヤ３側の開口部直近の軸方向にはねかけオイル遮蔽板７を延設すると、図１のＰ部拡大図である図４に示すように、リングギヤ２による潤滑オイルのはねかけの流れがはねかけオイル遮蔽板７により遮蔽されてディファレンシャル装置側へ反転される。そして円錐ころ軸受６の内輪６ｂの大端部から流出する潤滑オイルの流れはリングギヤ２による潤滑オイルのはねかけの流れと衝突することなくそのまま流出するので、潤滑オイルの流れが全体として整流化され、撹拌抵抗を低減することができる。

図５（Ａ）は、この発明の第２の実施の形態を示すディファレンシャル装置内の一部軸方向断面図である。即ち、この実施の形態では、前記ケース１の内壁或いはケース１と一体のボス部１ｂのピニオンギヤ３側開口部直近の軸方向にはねかけオイル遮蔽板７を延設し、且つ前記はねかけオイル 遮蔽板７ の径方向に側直近に、径方向に延設するはねかけオイル反射板８を設けるものである。或いは、第３の実施の形態として、図５（Ｂ）に示すように、軸方向の下面９ａと該下面９ａに対して径外方に反射面９ｂとを有するはねかけオイル反射ブロック９を設けてもよい。このような構成により、円錐ころ軸受６の内輪６ｂの大端部から流出する潤滑オイルの流れは前記リングギヤ２による潤滑オイルのはねかけの流れがはねかけオイル反射板８や跳掛オイル反射ブロック９により反射され、円錐ころ軸受より排出される潤滑オイルと衝突することなくそのまま流出するので、潤滑オイルの流れが全体としてスムースな流れとなるよう整流化され、撹拌抵抗を低減することができる。

上記するように、本発明の車両用ピニオン軸支持装置は、ディファレンシャル装置内の潤滑オイルによる撹拌抵抗、特にリングギヤ２の跳掛けによるオイルとピニオン３側の円錐ころ軸受６から排出される潤滑オイルの衝突を避けると共に、円錐ころ軸受６からの潤滑オイルの流れをスムースな流れとして整流化し撹拌抵抗を低減しようとするものである。その手段としてケース１の内壁やボス部１ｂに軸方向の遮蔽板７や該遮蔽板７の径方向外側直近に径方向に延設するはねかけ反射板８等を設けるものであるが、更に、潤滑オイルの衝突やスムースな流れとするために、本発明の第４の実施の形態として図６に示すように、円錐ころ軸受６の外輪６ａを嵌合固定しているケース１内側やボス部１ｂの端部に軸方向に対して径外方斜方向に遮蔽板１０を設けてもよい。また、ディファレンシャル装置だけでなく、リングギヤと転がり軸受内部より排出される潤滑オイルが衝突するような部分でも遮蔽板や反射板等を用いて流れを整流化して撹拌抵抗を低減することに応用することができる。

本発明の第１の車両用ピニオン軸支持装置を有するディファレンシャル装置の一部断面図である。 図１のＡーＡ矢視図であって車両用ピニオン軸支持装置部分を他の軸方向からみた断面図である。 本発明の第１の実施の形態の車両用ピニオン軸支持装置の断面図であって、図２のＢーＢ矢視図である。 図１のＰ部拡大図である。 図５（Ａ）は、この発明の車両用ピニオン軸支持装置の第２の実施の形態を有するディファレンシャル装置内の軸方向の一部断面図であり、図５（Ｂ）は、この発明の第３の実施の形態を示す一部断面図である。 この発明の車両用ピニオン軸支持装置の第４の実施の形態を示すディファレンシャル装置内の軸方向の一部断面図である。 従来の車両用ピニオン軸支持装置を有するディファレンシャル装置内の軸方向一部断面図である。 従来の車両用ピニオン軸支持装置部分における潤滑オイルの撹拌時の流れを示す図である。

符号の説明

１ ケース
２ リングギヤ
３ ピニオン
４ 円錐ころ軸受（テール側）
５ ピニオン軸
６ 円錐ころ軸受（ヘッド側）
７ はねかけオイル遮蔽板
８ はねかけオイル反射板
９ はねかけオイル反射ブロック
１０ 径外方斜方向の遮蔽板

Claims (3)

1. リングギヤと噛合うピニオンギヤを有するピニオン軸のヘッド ギヤ側とテール側をそれぞれ回転支持する転がり軸受を備え、ケース内に貯留される潤滑オイルが、リングギヤの回転によるはねかけにより、ピニオンギヤ側の転がり軸受のテール側開口部よりこの転がり軸受内部に流入し、ピニオンギヤ側開口部より流出する車両用ピニオン軸支持装置において、
   ピニオンギヤ側転がり軸受のピニオンギヤ側開口部直近に、軸方向に延設するはねかけオイル遮蔽板を設けることを特徴とする車両用ピニオン軸支持装置。
2. 前記はねかけオイル遮蔽板の径方向外側直近に、径方向に延設するはねかけオイル反射板を設けることを特徴とする請求項１に記載の車両用ピニオン軸支持装置。
3. ケース内壁或いはケースボス部に、前記ピニオンギヤ側開口部の転がり軸受の軸受外輪外周面より軸方向に延びる円筒面と該円筒面に対して径外方に平面を有するはねかけオイル反射ブロックを設けることを特徴とする請求項１に記載の車両用ピニオン軸支持装置。

Images