JP2009041589A - 軸受装置ならびにデファレンシャル - Google Patents

軸受装置ならびにデファレンシャル Download PDF

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Abstract

【課題】回転軸の両方の転がり軸受の潤滑、冷却条件を良好として耐焼付き性の向上を図る。
【解決手段】ケース1内に回転軸4を横置き姿勢で回転自在に支持するようケース1と回転軸4との間に軸方向に離れて介装される一対の転がり軸受5,6と、両転がり軸受5,6の各内輪間に介装される筒状のスペーサ8とを含み、かつケース1に、両転がり軸受5,6間の環状空間の上方にオイルを吐出させるためのオイル供給路11が設けられる軸受装置において、スペーサ8の外周には、オイル供給路11から吐出されるオイルを両転がり軸受5,6へ向けて分流させるための径方向外向き壁15が設けられている。ケース1内周には、径方向外向き壁15と軸方向に接近して対向する径方向内向き壁16が設けられている。
【選択図】図1

Description

本発明は、軸受装置、ならびに当該軸受装置を用いたデファレンシャルに関する。なお、デファレンシャルは、自動車等の車両に搭載されるものである。
自動車等の車両に搭載されるデファレンシャルは、一般的に、その入力軸となるドライブピニオンシャフトを軸方向に離した一対の転がり軸受でデファレンシャルケースに回転自在に支持させるようになっている。
そして、デファレンシャルケース内のオイルを、リングギヤの回転で跳ね上げて、デファレンシャルケースの天井側に設けてあるオイル供給路を通じて前記一対の転がり軸受間の環状空間に導き、前記両転がり軸受を潤滑させるようにしている。このような潤滑形態を、オイルはねかけ潤滑方式と呼んでいる。
ところで、車両にデファレンシャルを搭載した状態では、デファレンシャルが前上がり姿勢に傾く場合がある。そのような場合、前記高い側(ドライブピニオンシャフトのフランジ継手側)に位置する転がり軸受に対するオイル供給量が不足する傾向となる。
これに対し、前記一対の転がり軸受のうち、前記低い側(ドライブピニオンギヤ側)に位置する転がり軸受に対するオイル供給を制限することによって、前記高い側(ドライブピニオンシャフトのフランジ継手側)に位置する転がり軸受に対するオイル供給量を増加させるようにするものが提案されている(例えば特許文献1参照。)。
この従来例では、一対の転がり軸受の間に介装されるスペーサの軸方向所定位置に径方向外向きに突出する突出部を一体に形成するようになっている。
上記特許文献1に係る従来例では、オイルが過剰に供給される条件となる側の転がり軸受に対するオイル供給を制限して、オイル供給が不足しがちな条件となる側の転がり軸受に対するオイル供給量を増加させるという目的であって、この目的を達成するために、スペーサの突出部をオイル供給路よりもドライブピニオンギヤ側に配置し、その外周縁をケースの内周面に微小隙間を介して対向させるようにしている。
つまり、前記突出部が堰となって、オイルがドライブピニオンギヤ側の転がり軸受へ流れることをほとんど阻止して、オイル供給路から吐出されるオイルの略すべてをドライブピニオンシャフトのフランジ継手側の転がり軸受へ向けて流すようにしている。
このような特許文献1に係る従来例に対し、前記一対の転がり軸受に対するオイル供給量をそれぞれ過不足のないようにすることを目的としたものが提案されている(例えば特許文献2参照。)。
この従来例では、一対の転がり軸受の間にオイルシールを配置するような構成になっている。
特開2005−163973号公報 特開平8−326877号公報
上記特許文献2に係る従来例では、両方の転がり軸受に対するオイル供給量をそれぞれ過不足のないようにするという目的思想が伺えるものの、この目的思想を具現化するための構成について改良の余地があると言える。
すなわち、この従来例では、オイルシールを用いているが、その場合、このオイルシールの芯金をケースに対して圧入する必要が生じるために、その組み込み作業が面倒となることが懸念される。さらに、オイルシールのシールリップをスペーサの外周面に接触させている関係より、その摺接抵抗がドライブピニオンシャフトのフリクションロスとなり、動作円滑性を損なうことが懸念される。
本発明は、回転軸をケースに一対の転がり軸受を介して回転自在に支持する軸受装置において、前記両方の転がり軸受の潤滑、冷却条件を良好として耐焼付き性の向上を図ることを目的としている。
また、本発明は、ドライブピニオンシャフトをデファレンシャルケースに一対の転がり軸受を介して回転自在に支持する構成を有するデファレンシャルにおいて、各部の動作円滑化ならびに耐久性の向上を図ることを目的としている。
本発明は、ケース内に回転軸を横置き姿勢で回転自在に支持するようケースと回転軸との間に軸方向に離れて介装される一対の転がり軸受と、両転がり軸受の各内輪間に介装される筒状のスペーサとを含み、かつ前記ケースに、前記両転がり軸受間の環状空間の上方にオイルを吐出させるためのオイル供給路が設けられる軸受装置であって、前記スペーサ外周には、前記オイル供給路から吐出されるオイルを前記両転がり軸受へ向けて分流させるための径方向外向き壁が設けられ、前記ケース内周には、径方向内向き壁が前記径方向外向き壁と軸方向に並んで設けられている、ことを特徴としている。
なお、前記径方向外向き壁については、スペーサ外周の全周に設けるように環状にしてもよいし、また、スペーサ外周の例えば略上半分に設けるように略半円形状にしてもよい。また、前記径方向内向き壁については、ケース内周の全周に設けるように環状にしてもよいし、また、ケース内周の例えば略下半分に設けるように略半円形状にしてもよい。
この構成によれば、径方向外向き壁が主としてオイル供給路から吐出されるオイルを両方の転がり軸受へ向けて分流させるように作用し、また、径方向内向き壁が主として前記分流されたオイルを片方の転がり軸受側へ偏るように流動させないように作用する。
そして、回転軸の回転中は、径方向外向き壁が、その両側に位置するオイルを回転遠心力によって径方向外向きに振り飛ばして前記径方向内向き壁とケース内周との角部へ集めるようにも作用する。この集められたオイルは、径方向内向き壁の存在によって軸方向に流れないように堰き止められるから、この径方向内向き壁を越えて反対側に流れにくくなる。
これにより、前記二つの壁を挟んだ一方の転がり軸受側から他方の転がり軸受側へのオイル流動が抑制または阻止されるようになるから、両転がり軸受の動作環境、つまり潤滑、冷却条件を良好とすることが可能になって、両転がり軸受の耐焼付き性の向上に貢献できるようになる。
しかも、前述した役割を担う二つの壁を非接触に配置しているので、単一のオイルシールを用いる従来例に比べて、フリクションロスの軽減が可能になるとともに、比較的簡単に設置することが可能になる。
好ましくは、前記一対の転がり軸受は、斜接形とされ、それぞれ外向きに組み合わされる状態で設置される。
この構成では、一対の転がり軸受の組み合わせ形態について、ドライブピニオンシャフトの支持剛性が向上するような形態に特定している。
好ましくは、前記径方向外向き壁と径方向内向き壁とが、軸方向に接近して対向する状態に配置される。
この構成では、二つの壁が非接触でありながら、当該二つの壁の一方側から他方側へのオイルの流動を規制する仕切りとなる。また、非接触であるから、オイルシールを用いる従来例のように摺接抵抗が発生することがない。
また、本発明に係るデファレンシャルは、デファレンシャルケースと、デファレンシャルケース内に設けられた差動減速機構と、前端に動力入力軸が連結されかつ後端に前記差動減速機構に備えるリングギヤに噛合するドライブピニオンギヤが設けられるドライブピニオンシャフトと、ドライブピニオンシャフトを前記デファレンシャルケースに回転自在に支持する軸受装置とを含み、前記軸受装置が、上述した構成とされ、ドライブピニオンシャフトが上述した構成の回転軸とされ、前記デファレンシャルケースが上述した構成のケースとされる、ことを特徴としている。
この構成によれば、ドライブピニオンシャフトを支持する一対の転がり軸受に、共に必要十分な量のオイルを供給することが可能になるので、前記両転がり軸受の潤滑、冷却条件が良好となり、デファレンシャルにおける各部の動作円滑化ならびに耐久性の向上を図るうえで有利となる。
好ましくは、前記デファレンシャルは、デファレンシャルケース内のオイルを、リングギヤの回転に伴い上方に跳ね上げるとともに、前記一対の転がり軸受間の環状空間に導くようにしたオイルはねかけ潤滑方式が採用される。
この構成によれば、オイルポンプ等を用いないので、設備コストならびに設置スペースを低減するうえで有利となる。
本発明の軸受装置によれば、回転軸支持用の一対の転がり軸受における潤滑、冷却条件を良好として耐焼付き性の向上を図ることが可能になる。
本発明のデファレンシャルによれば、各部の動作円滑化ならびに耐久性の向上を図ることが可能になる。
以下、本発明の最良の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1から図4に本発明の一実施形態を示している。図示しているデファレンシャルは、フロントエンジン・リヤドライブ(FR)形式の自動車に搭載されるタイプを例に挙げている。
本発明の特徴を適用した部分の説明に先立ち、本発明の適用対象となる自動車用のデファレンシャルの概要について、図1および図2を参照して説明する。
図1には、デファレンシャルを縦断面にした状態を、図2には、デファレンシャルを横断面にした状態をそれぞれ示している。図中、1はデファレンシャルケース(デフキャリアとも呼ばれる)、2は差動変速機構、3はドライブピニオンギヤ、4はドライブピニオンシャフトである。
デファレンシャルケース1は、例えばフロントケース1aと、リヤケース1bとを組み合わせるツーピース構造になっている。このデファレンシャルケース1の内部には、潤滑用のオイルが所定量貯溜されている。
差動変速機構2は、ドライブピニオンシャフト4から入力される動力を、必要に応じて左右の車軸(ドライブシャフトと呼ばれる)13a,13bに分配して車輪(図示省略)に駆動力を出力するもので、デファレンシャルケース1のフロントケース1a側に配設されている。
この差動変速機構2は、一般的に公知の構成であるが、本発明の特徴に直接的に関与しない部分であるので、図1においては、リングギヤ2aのみを図示し、その他の構成要素(ピニオンギヤやサイドギヤ等)の詳細な図示や説明を割愛する。
ドライブピニオンギヤ3は、差動変速機構2のリングギヤ2aに噛合されるもので、ドライブピニオンシャフト4の内端側に一体に形成されている。
ドライブピニオンシャフト4は、その軸方向に離れた二箇所がそれぞれ転がり軸受5,6を介してデファレンシャルケース1のフロントケース1aの所要位置に回転自在に支持されている。このドライブピニオンシャフト4は、横置き姿勢とされている。
このドライブピニオンシャフト4の外端側には、図示しない推進軸(プロペラシャフト等と呼ばれる)が連結されるフランジ継手7が取り付けられている。つまり、このドライブピニオンシャフト4が駆動力の入力軸となっている。
前述した二つの転がり軸受5,6は、この実施形態において、両方ともに円すいころ軸受とし、この二つの円すいころ軸受を外向きに組み合わせた状態で組み込み、それらの内輪(符号省略)間に筒形のスペーサ8を介装することにより、両転がり軸受5,6の相対位置が規定されている。
参考までに、二つの転がり軸受5,6のうち、動力伝達方向の上流側つまりフランジ継手7側に位置するほうがフロント側(またはテール側)と呼ばれ、動力伝達方向の下流側つまりドライブピニオンギヤ3側に位置するほうがリヤ側(またはヘッド側)と呼ばれる。一般的に、フロント側の転がり軸受5よりリヤ側の転がり軸受6のほうが負荷容量の大きい大型サイズとされる。
ところで、ドライブピニオンシャフト4の外端側の外周面と、デファレンシャルケース1のフロントケース1aにおける小端側内周面との対向間には、デファレンシャルケース1の外部へのオイル漏洩を防止するためのオイルシール9が装着されている。このオイルシール9は図に詳細に記載していないが、例えば内径側にフランジ継手7の外周面に接触するシールリップを有するタイプとされる。
上述したデファレンシャルは、デファレンシャルケース1の底側に存在するオイルをリングギヤ2aで跳ね上げて一対の転がり軸受5,6間の環状空間に導くようにしたオイルはねかけ潤滑方式が採用されている。
図1に示すように、デファレンシャルケース1のフロントケース1aにおける上半分の頂上部には、オイル供給路11が設けられている。
このオイル供給路11は、リングギヤ2aで跳ね上げられたオイルを受け入れてから、このオイルを一対の転がり軸受5,6間における環状空間の上方に吐出させるものである。
また、図2に示すように、デファレンシャルケース1のフロントケース1aにおける一側の所定位置(例えば時計文字盤の短針6時から9時の間に相当する領域)には、オイル還流路12が設けられている。
このオイル還流路12は、フロント側の転がり軸受5より動力伝達方向上流に存在するオイルをデファレンシャルケース1のリヤケース1b側へ戻すものである。
上述したデファレンシャルにおいて、デファレンシャルケース1、ドライブピニオンシャフト4、一対の転がり軸受5,6、スペーサ8等で、軸受装置を構成している。
次に、本発明の特徴を適用した部分について説明する。
そもそも、上述したデファレンシャルは、自動車に搭載された状態で、一般的に、例えば図1に示すように、若干前上がり姿勢になっている関係より、一対の転がり軸受5,6の間における環状空間に供給されるオイルが、リヤ側の転がり軸受6へ向けて流れやすくなるために、フロント側の転がり軸受5の潤滑、冷却条件が比較的厳しくなりやすい、と言える。
その理由は、前述した前上がり姿勢にしていることの他にも、一般的にリヤ側の転がり軸受6についてフロント側の転がり軸受5よりも負荷容量の大きいタイプが採用されるため、リヤ側の転がり軸受6の内部空間をオイルが通過するときの抵抗が小さいうえ、リヤ側の転がり軸受6により発生するオイル送り作用(ポンプ作用)がフロント側の転がり軸受5のそれより高い、ということも関係していると考えられる。
この点を考慮し、この実施形態では、上述したデファレンシャルにおいて、オイル供給路11から吐出されるオイルを、一対の転がり軸受5,6へそれぞれ必要十分な量のオイルを供給させるように工夫し、前記のようなオイルの偏り流動傾向を是正している。
まず、スペーサ8の外周において軸方向中央位置には、径方向外向き壁15が設けられている。この径方向外向き壁15は、オイル供給路11から吐出されるオイルを両方の転がり軸受5,6へ向けて適宜の割合で分流させるのに役立つ。
具体的に、径方向外向き壁15は、スペーサ8と別体の円環状プレートで形成されており、スペーサ8の小径部側の外周において大径部との境目寄りに、例えば圧入により嵌合されることによって軸方向に位置決め固定されている。このため、径方向外向き壁15をスペーサ8に取り付けた状態でフロントケース1a内に組み込むことが可能になり、その設置作業がオイルシールを用いる従来例に比べて簡単になる。
また、デファレンシャルケース1のフロントケース1aの内周には、径方向内向き壁16が設けられている。この径方向内向き壁16は、フロント側の転がり軸受5側に供給されたオイルがリヤ側の転がり軸受6側へ流動することを規制するのに役立つ。
具体的に、径方向内向き壁16は、フロントケース1aの下半分の領域に半円形状に一体的に形成されている。
これら径方向外向き壁15と径方向内向き壁16とは、軸方向に並ぶ状態で設けられている。但し、径方向外向き壁15はフロント側の転がり軸受5側に配置され、また、径方向内向き壁16はリヤ側の転がり軸受6側に配置されている。
そして、径方向外向き壁15の外径R1と、径方向内向き壁16の内径R2との関係が、例えばR1>R2に設定されている。これにより、径方向外向き壁15と径方向内向き壁16とが、径方向でオーバーラップ、つまり軸方向に接近した状態で対向されている。
なお、例えば径方向外向き壁15の外径R1と径方向内向き壁16の内径R2とは、等しく設定してもよいし、また、若干であれば小さく設定してもよい。後者のように小さくする場合には、両壁15,16の寸法差を可及的に小さくするのが好ましい。
また、両壁15,16の軸方向での対向隙間は、任意であるが、例えばいわゆるラビリンスシールと呼ばれるような密封作用を発揮するように、小さく設定するのが好ましい。
次に、上述した特徴を適用した実施形態のデファレンシャルの動作中におけるオイルの動きを説明する。
ドライブピニオンシャフト4が回転停止している場合には、例えばデファレンシャルケース1内におけるオイル液面高さは、図1中のHで示すように設定されている。
ここで、ドライブピニオンシャフト4の回転すると、このドライブピニオンシャフト4により回転駆動されるリングギヤ2aでもってリヤケース1b内のオイルが、跳ね上げられてオイル供給路11に導入されることになる。このオイル供給路11に導入されたオイルは、一対の転がり軸受5,6間の環状空間における上方の軸方向略中央から吐出されることになる。
このとき、デファレンシャルの構造や設置姿勢の関係より、オイル供給路11から前記環状空間に吐出されたオイルが、フロント側の転がり軸受5よりもリヤ側の転がり軸受6へ向けて多く流れようとする傾向になっているものの、オイル供給路11から環状空間内に吐出されたオイルは、まず、径方向外向き壁15によってフロント側の転がり軸受5とリヤ側の転がり軸受6とに適宜の割合(例えば半々)で分流されることになる。
この分流割合は、径方向外向き壁15の軸方向位置や径方向高さによって、適宜に設定することが可能である。
そして、前記分流されたオイルは、両方の転がり軸受5,6の内部空間を通過して、必要部位を潤滑、冷却する。この後、リヤ側の転がり軸受6を通過したオイルはリヤケース1bへ直接的に排出されるが、フロント側の転がり軸受5を通過したオイルは、オイル還流路12を介してリヤケース1bへ戻される。
ところで、前記環状空間において径方向外向き壁15を中心としてフロント側の転がり軸受5側に供給されたオイルは、ドライブピニオンシャフト4の回転中、それと一体回転する径方向外向き壁15の回転遠心力によってフロントケース1aの内周面へ押しやられることになる。
この外径側に押しやられたオイルは、径方向内向き壁16の存在により堰き止められるので、リヤ側の転がり軸受6へ向けて流れずに、フロント側の転がり軸受5側へ向けて流れるようになる。
前記堰き止め作用について詳しく説明する。前述したように径方向外向き壁15と径方向内向き壁16とを軸方向に非接触にしているものの、その隙間をラビリンスシールのごとく微小に設定している。しかも、前記隙間を形成する径方向外向き壁15においてリヤ側転がり軸受6寄りの側面を、オイルが回転遠心力で径方向外向きに流れるようになる。これらのことから、前記隙間内でオイルが径方向内向きに流れることが阻止または制限されることになって、径方向内向き壁16で堰き止めたオイルがリヤ側の転がり軸受6へ向けて流れなくなるのである。
なお、径方向外向き壁15と径方向内向き壁16とを非接触状態にしていれば、オイルシールを用いる従来例のように摺接抵抗が発生することがなく、ドライブピニオンシャフト4のフリクションロスを前記従来例に比べて軽減することが可能になる。
このようにして、リヤ側の転がり軸受6へ向けて大半のオイルが偏って流動することを防止して、フロント側の転がり軸受5へ必要十分な量のオイルを供給させるようになっている。
参考までに、径方向外向き壁15および径方向内向き壁16の設置場所や、それらの軸方向隙間等については、フロント側の転がり軸受5とリヤ側の転がり軸受6の潤滑、冷却条件を安定させるうえで必要なオイル量を予め実験等により把握しておき、いかなる運転状態においてもフロント側の転がり軸受5とリヤ側の転がり軸受6とに対するオイル供給量が必要最小限を下回らないように、かつ、過剰供給とならないように、設定される。
以上説明したように、本発明の特徴を適用した実施形態では、オイル供給路11から吐出されるオイルを、フロント側の転がり軸受5とリヤ側の転がり軸受6とに適正に分配可能にしたうえで、フロント側の転がり軸受5へ分配供給したオイルをリヤ側転がり軸受6側へ流動することを防止している。
これにより、両方の転がり軸受5,6の潤滑、冷却条件を良好にできるから、耐焼付き性を向上するうえで有利となるとともに、デファレンシャルの各部の動作円滑化ならびに耐久性の向上を図るうえで有利となる。
しかも、前記のオイル偏り流動を抑制または防止させるための構成として、非接触の二つの壁15,16を利用しているから、それらの摺接抵抗が発生せずに済むとともに、オイルシールを用いる従来例に比べて比較的簡単に設置することが可能になる。
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲で包含されるすべての変形や応用が可能である。以下で例を挙げる。
(1)上記実施形態では、一対の斜接形の転がり軸受5,6を共に円すいころ軸受とした例を挙げているが、両方の転がり軸受5,6を共にアンギュラ玉軸受やタンデム型複列玉軸受等としたり、あるいはフロント側の転がり軸受5をアンギュラ玉軸受やタンデム型複列玉軸受としたうえで、リヤ側の転がり軸受6を円すいころ軸受とした組み合わせとしたり、することが可能である。
(2)上記実施形態では、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)方式の車両に搭載されるデファレンシャルを例に挙げている。しかし、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式の車両や、4WD(4ホイールドライブ)方式の車両に搭載されるデファレンシャルに対しても、本発明を適用することが可能である。
(3)上記実施形態では、径方向外向き壁15をスペーサ8と別の単独部品とした例を挙げているが、スペーサ8に径方向外向き壁15に相当する部分を一体に形成するようにしたものも、本発明に含まれる。
この場合、部品点数を減らせるとともに、径方向外向き壁15の設置作業を無くすことができるから、設備コストを低減するうえで有利となる。
(4)上記実施形態では、径方向外向き壁15を全周に連続するように形成した例を挙げているが、デファレンシャルケース1のフロントケース1aの略上半分に略半円形状に形成したものも本発明に含まれる。また、この径方向外向き壁15は前述した半円より大きくしてもよい。
この場合でも、径方向外向き壁15が、オイル供給路11から吐出されるオイルを、フロント側の転がり軸受5とリヤ側の転がり軸受6の両方へ適宜の割合で分流させるという、本来の機能を発揮することが可能である。
(5)上記実施形態では、径方向内向き壁16をデファレンシャルケース1のフロントケース1aの略下半分に略半円形状に形成した例を挙げているが、半円よりも大きくしてもよいし、また、全周に連続するように形成したものも本発明に含まれる。
但し、その場合、径方向内向き壁16をフロントケース1aと別体に形成し、それをフロントケース1aに取り付けるようにすることが、実用上好ましい。
このような場合でも、径方向内向き壁16が、それよりフロント側の転がり軸受5に存在するオイルを、リヤ側の転がり軸受6へ流動させないようにするという、本来の機能を発揮することが可能である。
本発明の一実施形態である自動車用のデファレンシャルの縦断面図である。 図1のデファレンシャルの横断面図である。 図1の(3)−(3)線断面の矢視図である。 図1の径方向外向き壁および径方向内向き壁を示す斜視図である。
符号の説明
1 デファレンシャルケース
1a フロントケース
1b リヤケース
2 差動変速機構
2a リングギヤ
3 ドライブピニオンギヤ
4 ドライブピニオンシャフト
5 フロント側の転がり軸受
6 リヤ側の転がり軸受
8 スペーサ
11 オイル供給路
12 オイル還流路
15 径方向外向き壁
16 径方向内向き壁

Claims (5)

  1. ケース内に回転軸を横置き姿勢で回転自在に支持するようケースと回転軸との間に軸方向に離れて介装される一対の転がり軸受と、両転がり軸受の各内輪間に介装される筒状のスペーサとを含み、かつ前記ケースに、前記両転がり軸受間の環状空間の上方にオイルを吐出させるためのオイル供給路が設けられる軸受装置であって、
    前記スペーサ外周には、前記オイル供給路から吐出されるオイルを前記両転がり軸受へ向けて分流させるための径方向外向き壁が設けられ、
    前記ケース内周には、径方向内向き壁が前記径方向外向き壁と軸方向に並んで設けられている、ことを特徴とする軸受装置。
  2. 請求項1に記載の軸受装置において、
    前記一対の転がり軸受は、斜接形とされ、それぞれ外向きに組み合わされる状態で設置される、ことを特徴とする軸受装置。
  3. 請求項1または2に記載の軸受装置において、
    前記径方向外向き壁と径方向内向き壁とが、軸方向に接近して対向する状態に配置される、ことを特徴とする軸受装置。
  4. デファレンシャルケースと、デファレンシャルケース内に設けられた差動減速機構と、外端に動力入力軸が連結されかつ内端に前記差動減速機構に備えるリングギヤに噛合するドライブピニオンギヤが設けられるドライブピニオンシャフトと、ドライブピニオンシャフトを前記デファレンシャルケースに回転自在に支持する軸受装置とを含み、
    前記軸受装置が、請求項1から3のいずれか一つに記載の構成とされ、前記ドライブピニオンシャフトが請求項1から3のいずれか一つに記載の回転軸とされ、前記デファレンシャルケースが請求項1から3のいずれか一つに記載のケースとされる、ことを特徴とするデファレンシャル。
  5. 請求項4に記載のデファレンシャルは、デファレンシャルケース内のオイルを、リングギヤの回転に伴い上方に跳ね上げるとともに、前記一対の転がり軸受間の環状空間に導くようにしたオイルはねかけ潤滑方式が採用される、ことを特徴とするデファレンシャル。
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