JP2006274869A - 鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】スロットルグリップの操作に加え、ライダの体重移動に応じて駆動力を制御することの可能な鞍乗り型車両用操縦制御装置を提供する。
【解決手段】スロットルグリップ回動トルクセンサ11及びスロットルグリップ回動トルク演算部34でスロットルグリップ回動トルク要素TH'を算出し、さらにスロットルグリップ疑似開度演算部36で積分してスロットルグリップ疑似開度要素THを算出する。また、ハンドル荷重センサ12及びハンドル荷重演算部38でハンドル荷重FFを検出するとともに、左右のステップ荷重センサ13,14と左右のステップ荷重演算部40,41で左右のステップ荷重FR,FLを検出し、さらに重心移動要素演算部42で重心移動要素Fを算出する。そして、これらの要素を考慮に入れて目標スロットル開度THtargetを決定し、PID制御によりスロットルバルブを回動させる。
【選択図】図3

Description

本発明は、鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置に関し、さらに詳しくは、自動二輪車、四輪バギー(ATV; All Terrain Vehicle)、スノーモビル、水上滑走艇など、ライダが自身の体重を移動させながら操縦する鞍乗り型輸送機器、特に自動二輪車に代表される鞍乗り型車両に好適な操縦制御装置に関する。
鞍乗り型車両では、ハンドルに装備されたスロットルグリップをライダが手で操作することによってスロットル開度を調整している。アクセルペダルをドライバが足で操作することによってスロットル開度を調整する四輪自動車と異なり、鞍乗り型車両では、ライダの体重移動が操縦に大きく影響する。
自動二輪車、特にオフロードモデルでは、加減速時やコーナリング時におけるライダの姿勢は極めて重要である。加速時には、ライダは体重を前に移動することによって前輪が浮き上がるウィリーを抑えることができる。減速時には、ライダは体重を後ろに移動することによって後輪が浮き上がるジャックナイフを抑えることができる。コーナリング時には、ライダは体重を前に移動することによって後輪の横滑りに対して安定的に乗車でき、かつフロントタイヤの接地荷重を増加させてグリップ力を高め、その結果、旋回性を向上させることができる。
しかしながら、このような体重移動は経験の豊富なライダには容易であるが、経験の浅いライダには難しいものがある。
特開平5−118237号公報(特許文献1)には、減速時に生じるおそれのある見かけ上の加速スリップを防止するために、減速時にはトラクションコントロールを停止させるようにした装置が開示されている。
特開平11−241955号公報(特許文献2)には、スロットルグリップを大きく回さなくても駆動力を上げることができるように、スロットルグリップの回動トルクを検知してスロットルバルブを開閉するようにした装置が開示されている(同公報の図26参照)。
しかしながら、上記いずれの文献にも、ライダの体重移動に応じて駆動力を制御することは記載されていない。
特開平5−118237号公報 特開平11−241955号公報
本発明の目的は、スロットル等の操作に加え、ライダの体重移動に応じて駆動力を制御することの可能な鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置を提供することである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明による鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置は、操作量検出手段と、重心移動量検出手段と、出力制御手段とを備える。操作量検出手段は、ライダが原動機の出力を制御するための操作子の操作量を検出する。重心移動量検出手段は、ライダの重心の移動量を検出する。出力制御手段は、操作量検出手段により検出された操作量及び重心移動量検出手段により検出された重心の移動量に応じて原動機の出力を制御する。
ここで、原動機は、エンジン、電動モータなどを含む。エンジンの出力を制御するためには、たとえばスロットルバルブを開閉して吸入される空気の量を加減したり、燃料噴射量を加減したりすればよい。電動モータの出力を制御するためには、電動モータに供給される電圧及び/又は電流を加減すればよい。原動機としてエンジンを用いる場合、操作子はスロットルであり、原動機として電動モータを用いる場合、操作子はアクセルである。
この操縦制御装置では、ライダによる操作子の操作量に加え、ライダの重心の移動量も検出される。そして、検出された操作子の操作量及び重心の移動量の両方に応じて原動機の出力が制御される。そのため、この操縦制御装置を備えた輸送機器では、ライダによる操作子の操作だけでなく、体重移動によっても駆動力を制御することができる。
好ましくは、出力制御手段は、ライダの重心が輸送機器の前部に移動するに従って原動機の出力を上げ、ライダの重心が輸送機器の後部に移動するに従って原動機の出力を下げる。
この場合、ライダが体重を前に移動すると駆動力が上がり、ライダが体重を後ろに移動すると駆動力が下がるので、安定した走行が可能になる。
好ましくは、操作量検出手段は、スロットルグリップの回動トルクを検出する回動トルク検出手段を含む。
この場合、スロットルグリップの回動トルクに応じて原動機の出力が制御される。
さらに好ましくは、操作量検出手段はさらに、回動トルク検出手段により検出された回動トルクを時間で積分してスロットルグリップの疑似開度を算出するスロットルグリップ疑似開度演算手段を含む。
この場合、スロットルグリップの開度は検知されなくても、スロットルグリップの回動トルクを積分して算出される。その結果、スロットルグリップの回動トルクだけでなく、スロットルグリップの疑似開度にも応じて原動機の出力が制御される。
好ましくは、操作量検出手段は、スロットルグリップの開度を検出するスロットルグリップ開度検出手段を含む。
この場合、スロットルグリップの開度に応じて原動機の出力が制御される。
さらに好ましくは、操作量検出手段はさらに、スロットルグリップ開度検出手段により検出されたスロットルグリップの開度を時間で微分してスロットルグリップの回動トルクを算出するスロットルグリップ回動トルク演算手段を含む。
この場合、スロットルグリップの回動トルクは検知されなくても、スロットルグリップの開度を微分して算出される。その結果、スロットルグリップの開度だけでなく、スロットルグリップの回動トルクにも応じて原動機の出力が制御される。
好ましくは、重心移動量検出手段は、ハンドル荷重検出手段と、ステップ荷重検出手段と、重心移動要素演算手段とを含む。ハンドル荷重検出手段は、ハンドルにかかる荷重を検出する。ステップ荷重検出手段は、フットステップにかかる荷重を検出する。重心移動要素演算手段は、ハンドル荷重検出手段により検出された荷重とステップ荷重検出手段により検出された荷重との差を算出する。
この場合、ハンドルにかかる荷重とフットステップにかかる荷重とのバランスに基づいてライダの重心の移動量を検出することができる。
好ましくは、鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置はさらに、前輪車速検出手段と、後輪車速検出手段と、トラクションコントロール要素演算手段とを備える。前輪車速検出手段は、前輪の回転速度に基づいて輸送機器の速度を検出する。後輪車速検出手段は、後輪の回転速度に基づいて輸送機器の速度を検出する。トラクションコントロール要素演算手段は、前輪車速検出手段により検出された速度と後輪車速検出手段により検出された速度との差を算出する。出力制御手段は、前輪車速検出手段により検出された速度が後輪車速検出手段により検出された速度よりも速くなるに従って原動機の出力を上げ、前輪車速検出手段により検出された速度が後輪車速検出手段により検出された速度よりも遅くなるに従って原動機の出力を下げる。
この場合、重心の移動量だけでなく、前後輪の速度差にも応じて原動機の出力が制御され、いわゆるトラクションコントロールが機能する。その結果、前後輪はスリップしにくく、グリップ走行が可能になる。
好ましくは、鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置はさらに、ステアリング角を検出するステアリング角検出手段を備える。出力調整手段は、ステアリング角検出手段により検出されたステアリング角が大きくなるに従って原動機の出力を上げ、ステアリング角が小さくなるに従って原動機の出力を下げる。
この場合、重心の移動量だけでなく、ステアリング角にも応じて原動機の出力が制御される。その結果、安定したコーナリングが可能になる。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[第1の実施の形態]
[操縦制御装置の構成]
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態による操縦制御装置は、自動二輪車に装着される各種センサ11〜18と、キャブレタ20のスロットルバルブを回動させるための電動モータ22と、各種センサ11〜18の出力信号に応じて電動モータ22を制御するためのMCU(Motor Control Unit)24とを備える。
MCU24は、各種センサ11〜18の出力信号に基づいてPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成するCPU(Central Processing Unit)26と、PWM信号に応じて電動モータ22を駆動するモータドライバ28とを含む。MCU24はバッテリ30に接続され、電力の供給を受ける。
電動モータ22用の配線には電流センサ32が挿入され、電動モータ22に流れる電流の値を検知してCPU26にフィードバックする。これにより、MCU24は電動モータ22に対してPID(Proportional Integral Differential)制御を行う。
車両の状態を検知するセンサとして、スロットルグリップ回動トルクセンサ11と、ハンドル荷重センサ12と、右ステップ荷重センサ13と、左ステップ荷重センサ14と、前輪車速センサ15と、後輪車速センサ16と、ステアリング角センサ17と、スロットルポジションセンサ18とが設けられている。
図2を参照して、スロットルグリップ回動トルクセンサ11はフロントサスペンションの前方に装着され、スロットルグリップにかかる回動トルクを検知する。ハンドル荷重センサ12はハンドルに装着され、ハンドルにかかるライダの荷重(以下「ハンドル荷重」という)を検知する。右ステップ荷重センサ13は右側のフットステップに装着され、右側のフットステップにかかるライダの荷重(以下「右ステップ荷重」という)を検知する。左ステップ荷重センサ14は左側のフットステップに装着され、左側のフットステップにかかるライダの荷重(以下「左ステップ荷重」という)を検知する。前輪車速センサ15は前輪の軸付近に装着され、前輪の速度を検知する。後輪車速センサ16は後輪の軸付近に装着され、後輪の速度を検知する。ステアリング角センサ17はハンドルポストに装着され、ステアリング角(ハンドルの回動角度)を検知する。スロットルポジションセンサ18はキャブレタ20に装着され、スロットルバルブの位置(スロットル開度)を検知する。MCU24はシートの下方に収容される。
図3を参照して、CPU26は、所定のコンピュータプログラムを実行し、スロットルグリップ回動トルク演算部34、スロットルグリップ疑似開度演算部36、ハンドル荷重演算部38、右ステップ荷重演算部40、左ステップ荷重演算部41、重心移動要素演算部42、前輪車速演算部44、後輪車速演算部45、トラクションコントロール要素演算部46、ステアリング角演算部48、重み係数乗算部51〜55、目標スロットル開度設定部56、スロットル開度演算部58、減算部60、及びPID制御部62を構成する。
スロットルグリップ回動トルク演算部34は、スロットルグリップ回動トルクセンサ11の出力信号に基づいてスロットルグリップ回動トルク要素TH'(スロットルグリップの回動トルクに比例する値)を算出する。スロットルグリップ疑似開度演算部36は、算出されたスロットルグリップ回動トルク要素TH'を時間で積分してスロットルグリップ疑似開度要素THを算出する。本実施の形態では、わずかな回動からそのトルクを検知するタイプのスロットルグリップが用いられている。ここでいう疑似開度とは、もし通常のスロットルグリップが用いられていれば得られるであろうスロットルグリップの開度である。
ハンドル荷重演算部38は、ハンドル荷重センサ12の出力信号に基づいてハンドル荷重FFを算出する。右ステップ荷重演算部40は、右ステップ荷重センサ13の出力信号に基づいて右ステップ荷重FRを算出する。左ステップ荷重演算部41は、左ステップ荷重センサ14の出力信号に基づいて左ステップ荷重FLを算出する。重心移動要素演算部42は、算出されたハンドル荷重FF、右ステップ荷重FR及び左ステップ荷重FLに基づいて、次の式(1)に従って重心移動要素Fを算出する。
Figure 2006274869
式(1)から明らかなように、重心移動要素Fは、ハンドル及びフットステップにかかる全荷重のうちハンドルにかかる荷重が占める割合である。したがって、ライダの重心が車両の後部から前部に移動すると重心移動要素Fは増加し、ライダの重心が車両の前部から後部に移動すると重心移動要素Fは減少する。
前輪車速演算部44は、前輪車速センサ15の出力信号に基づいて前輪車速Vfを算出する。前輪車速Vfは前輪の回転速度から算出される車両の速度である。後輪車速演算部45は、後輪車速センサ16の出力信号に基づいて後輪車速Vrを算出する。後輪車速Vrは後輪の回転速度から算出される車両の速度である。トラクションコントロール要素演算部46は、算出された前輪車速Vf及び後輪車速Vrに基づいて、次の式(2)に従ってトラクションコントロール要素Vを算出する。
V=Vf−Vr (2)
式(2)から明らかなように、トラクションコントロール要素Vは前輪車速Vfから後輪車速Vrを減じた差である。したがって、加速時等に後輪(駆動輪)の回転速度が早くなり過ぎて後輪がスリップし始めるとトラクションコントロール要素Vは減少し、減速時等に後輪の回転速度が遅くなり過ぎて後輪がスリップし始めるとトラクションコントロール要素Vは増加する。
ステアリング角演算部48は、ステアリング角センサ17の出力信号に基づいてステアリング角δをコーナリングアシスト要素として算出する。
重み係数乗算部51は、算出されたスロットルグリップ疑似開度要素THに所定の重み係数w1を乗算する。重み係数乗算部52は、算出されたスロットルグリップ回動トルク要素TH'に所定の重み係数w2を乗算する。重み係数乗算部53は、算出された重心移動要素Fに所定の重み係数w3を乗算する。重み係数乗算部54は、算出されたトラクションコントロール要素Vに所定の重み係数w4を乗算する。重み係数乗算部55は、算出されたステアリング角(コーナリングアシスト要素)δに所定の重み係数w5を乗算する。重み係数w1〜w5は、本操縦制御装置を搭載する車両の特性等を考慮して適宜設定される。
目標スロットル開度設定部56は、次の式(3)に従い、重み付けされた全ての要素の和を演算して目標スロットル開度THtargetを算出する。
THtarget=w1×TH+w2×TH'+w3×F+w4×V+w5×δ (3)
一方、スロットル開度演算部58は、スロットルポジションセンサ18の出力信号に基づいて現在のスロットル開度THcurrentを算出する。減算部60は、目標スロットル開度THtargetから現在のスロットル開度THcurrentを減算してその差を算出する。PID制御部62は、算出されたスロットル開度の差(THtarget−THcurrent)及びフィードバックされた電動モータ22の電流値に基づいてPID制御を行い、電動モータ22を制御するためのPWM信号を生成する。
[スロットルグリップ回動トルクセンサの構造]
図4を参照して、スロットルグリップ回動トルクセンサ11は、車体に取り付けられる台座64と、台座64に回動自在に支持されたリンク66と、台座64内に埋設されたロードセル68とを含む。
フロントサスペンションの前方には、このようなスロットルグリップ回動トルクセンサ11が2つ装着される。スロットルグリップの引き側から延出されたスロットルワイヤ70は一方のスロットルグリップ回動トルクセンサ11におけるリンク66の先端に掛止され、戻り側から延出されたスロットルワイヤ70は他方のスロットルグリップ回動トルクセンサ11におけるリンク66の先端に掛止される。スロットルワイヤ70の張力はアジャスタボルト72により調整可能である。
スロットルワイヤ70の張力が強くなると、ロードセル68方向へのリンク66の回動トルクが大きくなり、ロードセル68にかかる荷重が大きくなる。一方、スロットルワイヤ70の張力が弱くなると、ロードセル68方向へのリンク66の回動トルクが小さくなり、ロードセル68にかかる荷重が小さくなる。
したがって、ライダがスロットルグリップを手前側に回動させると、引き側のスロットルワイヤ70が接続されているスロットルグリップ回動トルクセンサ11におけるロードセル68の出力信号は大きくなるが、戻り側のスロットルワイヤ70が接続されているスロットルグリップ回動トルクセンサ11におけるロードセル68の出力信号は小さくなる。
一方、ライダがスロットルグリップを向こう側に回動させて戻すと、引き側のスロットルワイヤ70が接続されているスロットルグリップ回動トルクセンサ11におけるロードセル68の出力信号は小さくなるが、戻り側のスロットルワイヤ70が接続されているスロットルグリップ回動トルクセンサ11におけるロードセル68の出力信号は大きくなる。これら2つのロードセル68の出力信号は差動増幅器(図示せず)の反転入力端子及び非反転入力端子にそれぞれ入力され、これにより約10000倍に増幅され、MCU24に伝送される。
[ハンドル荷重センサの構造]
図5を参照して、ハンドル荷重センサ12はハンドルの左右に架け渡されるブリッジ(後述する図8中の符号73)内に挿入される。ハンドル荷重センサ12は具体的には、インナーカラー74,75と、インナーカラー74,75に挟持されたロードセル76と、ロードセル76を固定するためのケース78とを含む。左側のインナーカラー74はハンドルの左側部分とボルト80で固定され、右側のインナーカラー75はハンドルの右側部分とボルト81で固定される。
ハンドルにかかるライダの荷重が大きくなると、ブリッジに引張応力が発生し、ロードセル76にかかる荷重が小さくなる。一方、ハンドルにかかるライダの荷重が小さくなると、ブリッジに圧縮応力が発生し、ロードセル76にかかる荷重が大きくなる。ロードセル76の出力信号は増幅器(図示せず)により増幅され、MCU24に伝送される。
[ステップ荷重センサの構造]
図6を参照して、右又は左ステップ荷重センサ13又は14は、フットステップ82の付け根部分に貼付された歪みゲージ84,85を含む。歪みゲージ84は付け根部分の上面に貼付され、歪みゲージ85は付け根部分の下面に貼付される。
フットステップ82にかかるライダの荷重が大きくなると、フットステップ82の付け根部分に生じる曲げ応力が大きくなり、上面の歪みゲージ84で検知される引張応力が大きくなり、下面の歪みゲージ85で検知される圧縮応力も大きくなる。一方、フットステップ82にかかるライダの荷重が小さくなると、フットステップ82の付け根部分に生じる曲げ応力が小さくなり、上面の歪みゲージ84で検知される引張応力が小さくなり、下面の歪みゲージ85で検知される圧縮応力も小さくなる。歪みゲージ84,85はブリッジ回路(図示せず)に組み込まれ、その出力信号は増幅器(図示せず)により増幅され、MCU24に伝送される。
ここでは、フットステップ82にかかる荷重を歪みゲージ84により検知するようにしているが、スロットルグリップ回動トルクセンサ11やハンドル荷重センサ12と同様に、ロードセルを用いたセンサにより検知するようにしてもよい。
[車速センサの構造]
図7を参照して、後輪車速センサ16は、車体に取り付けられたステイ86と、ステイ86に固定された近接スイッチ88とを含む。近接スイッチ88は、磁性体が接近するとパルス信号を出力するもので、リアブレーキディスク90と所定の間隔をおいて配置される。近接スイッチ88の出力信号は増幅器(図示せず)により増幅され、MCU24に伝送される。
したがって、近接スイッチ88によりリアブレーキディスク90の穴数をカウントし、これにより後輪の回転速度を算出することができる。なお、前輪車速センサ15もこれと同様に構成される。
[ステアリング角センサの構造]
図8を参照して、ステアリング角センサ17は、ハンドルポスト92に埋設されたポテンショメータ94を含む。ポテンショメータ94の軸はハンドル96の回転軸と固定されている。したがって、ライダがハンドル96を左右に回動させると、これに連動してポテンショメータ94の軸も回動される。ポテンショメータ94の出力信号は増幅器(図示せず)により増幅され、MCU24に伝送される。
なお、このハンドル96にはブリッジ73が架け渡されており、このブリッジ73内に図5に示したハンドル荷重センサ12が挿入されている。
[スロットル駆動機構の構造]
図9(a)、図9(b)及び図9(c)を参照して、電動モータ22は、車体に取り付けられたステイ98に固定される。電動モータ22の軸にはプーリ100が装着され、スロットルポジションセンサ18の軸にもプーリ102が装着される。これらプーリ100,102の間にはワイヤ104が架けられ、ワイヤ104の張力はアジャスタボルト(図示せず)により調整される。スロットルポジションセンサ18の軸は、キャブレタ20のスロットルバルブを回動させるための軸と連結されている。
電動モータ22が駆動されると、プーリ100が回動され、ワイヤ104を介してプーリ102も回動され、これによりキャブレタ20のスロットルバルブが回動される。スロットルバルブの位置はスロットルポジションセンサ18により検知される。
ここでは電動モータ22の軸にプーリ100が直接装着されているが、この間に電動モータ22の回転数を減速する減速機を介在させてもよい。
[操縦制御装置の動作]
上述した操縦制御装置は次のとおり動作する。
スロットルグリップ回動トルクセンサ11及びスロットルグリップ回動トルク演算部34によりスロットルグリップの回動トルクが検出され、これによりスロットルグリップ回動トルク要素TH'が得られる。スロットルグリップ回動トルク要素TH'はスロットルグリップ疑似開度演算部36により積分され、スロットルグリップ疑似開度要素THが算出される。
したがって、ライダがスロットルグリップを手前側(スロットルを開けようとする方向)に回そうとすると(わずかに回すと)、スロットルグリップ疑似開度要素TH及びスロットルグリップ回動トルク要素TH'はともに増加し、目標スロットル開度THtargetを大きくする方向に貢献する。逆に、ライダがスロットルグリップを向こう側(スロットルを閉じようとする方向)に戻そうとすると(わずかに戻すと)、スロットルグリップ疑似開度要素TH及びスロットルグリップ回動トルク要素TH'はともに減少し、目標スロットル開度THtargetを小さくする方向に貢献する。
また、ハンドル荷重センサ12及びハンドル荷重演算部38によりハンドル荷重FFが検出されるとともに、右及び左ステップ荷重センサ13,14及び右及び左ステップ荷重演算部40,41により右及び左ステップ荷重FR,FLが検出され、さらに重心移動要素演算部42により重心移動要素Fが算出され、これによりライダの重心の移動量が検出される。
したがって、ライダが体重を前に移動すると、重心移動要素Fは増加し、目標スロットル開度THtargetを大きくする方向に貢献する。逆に、ライダが体重を後ろに移動すると重心移動要素Fは減少し、目標スロットル開度THtargetを小さくする方向に貢献する。
また、前輪車速センサ15及び前輪車速演算部44により前輪車速Vfが検出されるとともに、後輪車速センサ16及び後輪車速演算部45により後輪車速Vrが検出され、さらにトラクションコントロール要素演算部46により前輪車速Vfと後輪車速Vrとの差が算出され、これによりトラクションコントロール要素Vが算出される。
したがって、減速時等に前輪車速Vfが後輪車速Vrよりも速くなると、トラクションコントロール要素Vは増加し、目標スロットル開度THtargetを大きくする方向に貢献する。逆に、加速時等に後輪車速Vrが前輪車速Vfよりも速くなると、トラクションコントロール要素Vは減少し、目標スロットル開度THtargetを小さくする方向に貢献する。
また、ステアリング角センサ17及びステアリング角演算部48によりステアリング角δが検出される。ステアリング角δはコーナリング時にゼロ以外の値になり、その値は旋回半径が小さくなるに連れて大きくなる。したがって、旋回半径が小さいほど目標スロットル開度THtargetを大きくする方向に貢献し、逆に、旋回半径が大きいほど目標スロットル開度THtargetを小さくする方向に貢献する。
上述した各種の要素(TH,TH',F,V,δ)は重み係数乗算部51〜55により重み付けされ、目標スロットル開度設定部56により目標スロットル開度THtargetが決定される。したがって、目標スロットル開度THtargetには上述した各種の要素が反映される。
目標スロットル開度THtargetが現在のスロットル開度THcurrentよりも大きくなったり小さくなったりすると、その差がゼロになるまで電動モータ22が駆動され、キャブレタ20のスロットルバルブが開閉される。ここではPID制御が行われているため、現在のスロットル開度THcurrentは速やかに目標スロットル開度THtargetに収束する。
[第1の実施の形態の効果]
上述した操縦制御装置によれば、ライダによるスロットルワークだけでなく、体重移動にも応じてスロットル開度が制御される。すなわち、ライダが体重を前に移動するとスロットルが開く方向に動き、ライダが体重を後ろに移動するとスロットルが閉じる方向に動く。したがって、ライダが走行状況に適した体重移動を行っていない場合は駆動力を抑え、これによりライダに積極的な体重移動を促すことができる。たとえば加速しようとしているのに腰が引けている場合は加速しないようにすることができる。
また、トラクションコントロールも機能するので、前後輪をスリップさせることなく、グリップ走行を行うことができる。さらに、ステアリング角にも応じてスロットル開度が制御されるので、安定したコーナリングを行うことができる。
上記のように、初心者にとって難しいスロットルワークが自動的に車両によってアシストされるため、初心者でも安定した走行を行うことができる。また、ライダは走行状況に応じた適切な体重移動をインタラクティブに学ぶことができ、短時間でライディングスキルを向上させることができる。
[第2の実施の形態]
上記第1の実施の形態では各種要素に常に一定の重み係数を乗算しているが、入力される要素の大きさに応じて異なる重み係数を乗算するマップ演算を行うようにしてもよい。図10に示したグラフにおいて、横軸はマップ演算される前の入力要素の大きさを示し、縦軸はマップ演算された後の出力要素の大きさを示す。一定の重み係数を乗算する場合、出力要素の大きさは入力要素の大きさに比例する(図10中の符号106参照)。これに対し、マップ演算の場合、入力要素の大きさに応じて異なる重み係数が乗算されるので、出力要素の大きさは入力要素の大きさに比例せず、あらかじめ定められた関数に従って変化する(図10中の符号108参照)。ここでは、入力要素が大きくなるに連れて大きい重み係数が乗算される例が示されている。
なお、上記第1の実施の形態における重み係数の乗算を全てマップ演算に置き換えてもよいが、一部だけをマップ演算に置き換えてもよい。
[第3の実施の形態]
上記第1の実施の形態では、わずかな回動からそのトルクを検知するタイプのスロットルグリップが用いられているため、スロットルグリップ回動トルクセンサ11、スロットルグリップ回動トルク演算部34及びスロットルグリップ疑似開度演算部36が用いられているが、通常のスロットルグリップが用いられる場合は、これらの代わりに、図11に示すように、スロットルグリップ開度センサ110、スロットルグリップ開度演算部112及びスロットルグリップ回動トルク演算部114を用いてもよい。
スロットルグリップ開度センサ110はスロットルグリップに装着され、スロットルグリップの開度を検知するためのものである。スロットルグリップ開度演算部112は、スロットルグリップ開度センサ110の出力信号に基づいてスロットルグリップ開度要素(スロットルグリップの開度に比例する値)THを算出する。スロットルグリップ回動トルク演算部114は、算出されたスロットルグリップ開度要素を時間で微分してスロットルグリップ回動トルク要素TH'(スロットルグリップの回動トルクに比例する値)を算出する。
[その他の実施の形態]
上記実施の形態では、スロットル開度を決定するための要素としてスロットルグリップの開度及び回動トルクの両方を考慮に入れているが、いずれか一方だけを考慮に入れるようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、ハンドルにかかる荷重とフットステップにかかる荷重とのバランスに基づいて重心移動を検出するようにしているが、フロントサスペンションのストローク量とフロントサスペンションのストローク量とのバランスに基づいて重心移動を検出するようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、トラクションコントロール要素として前後輪の車速を検出し、かつコーナリングアシスト要素としてステアリング角を検出するようにしているが、これらの要素は必ずしも考慮に入れなくてもよく、また、ここに例示されていない他の要素を考慮に入れるようにしてもよい。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
本発明の第1の実施の形態による操縦制御装置の構成を示す機能ブロック図である。 図1に示した操縦制御装置の取り付け位置を示す自動二輪車の側面図である。 図1中のCPUによる演算処理の内容を示す機能ブロック図である。 図1〜図3中のスロットルグリップ回動トルクセンサの構造を示す断面図である。 図1〜図3中のハンドル荷重センサの構造を示す断面図である。 図1〜図3中の右又は左ステップ荷重センサの取り付け位置を示すフットステップの斜視図である。 図1〜図3中の後輪車速センサの取り付け位置を示す後輪の側面図である。 図1〜図3中のステアリング角センサの取り付け位置を示すハンドルの上面図である。 (a)は図1〜図3に示した操縦制御装置におけるスロットル駆動機構の構造を示す正面図であり、(b)は(a)中のスロットルポジションセンサの側面図であり、(c)は(a)中の電動モータの側面図である。 本発明の第2の実施の形態による操縦制御装置に用いられるマップ演算の特性を示すグラフである。 本発明の第3の実施の形態による操縦制御装置において、CPUによる演算処理の内容を示す機能ブロック図である。
符号の説明
11 スロットルグリップ回動トルクセンサ
12 ハンドル荷重センサ
13 右ステップ荷重センサ
14 左ステップ荷重センサ
15 前輪車速センサ
16 後輪車速センサ
17 ステアリング角センサ
18 スロットルポジションセンサ
34 スロットルグリップ回動トルク演算部
36 スロットルグリップ疑似開度演算部
38 ハンドル荷重演算部
40 右ステップ荷重演算部
41 左ステップ荷重演算部
42 重心移動要素演算部
44 前輪車速演算部
45 後輪車速演算部
46 トラクションコントロール要素演算部
48 ステアリング角演算部
51-55 重係数乗算部
56 目標スロットル開度設定部
58 スロットル開度演算部
110 スロットルグリップ開度センサ
112 スロットルグリップ開度演算部
114 スロットルグリップ回動トルク演算部

Claims (10)

  1. ライダが原動機の出力を制御するための操作子の操作量を検出する操作量検出手段と、
    ライダの重心の移動量を検出する重心移動量検出手段と、
    前記操作量検出手段により検出された操作量及び前記重心移動量検出手段により検出された重心の移動量に応じて原動機の出力を制御する出力制御手段とを備えたことを特徴とする鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置。
  2. 請求項1に記載の鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置であって、
    前記出力制御手段は、ライダの重心が輸送機器の前部に移動するに従って原動機の出力を上げ、ライダの重心が輸送機器の後部に移動するに従って原動機の出力を下げることを特徴とする鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置。
  3. 請求項1に記載の鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置であって、
    前記操作量検出手段は、
    スロットルグリップの回動トルクを検出する回動トルク検出手段を含むことを特徴とする鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置。
  4. 請求項3に記載の鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置であって、
    前記操作量検出手段はさらに、
    前記回動トルク検出手段により検出された回動トルクを時間で積分してスロットルグリップの疑似開度を算出するスロットルグリップ疑似開度演算手段を含むことを特徴とする鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置。
  5. 請求項1に記載の鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置であって、
    前記操作量検出手段は、
    スロットルグリップの開度を検出するスロットルグリップ開度検出手段を含むことを特徴とする鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置。
  6. 請求項5に記載の鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置であって、
    前記操作量検出手段はさらに、
    前記スロットルグリップ開度検出手段により検出されたスロットルグリップの開度を時間で微分してスロットルグリップの回動トルクを算出するスロットルグリップ回動トルク演算手段を含むことを特徴とする鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置。
  7. 請求項1に記載の鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置であって、
    前記重心移動量検出手段は、
    ハンドルにかかる荷重を検出するハンドル荷重検出手段と、
    フットステップにかかる荷重を検出するステップ荷重検出手段と、
    前記ハンドル荷重検出手段により検出された荷重と前記ステップ荷重検出手段により検出された荷重との差を算出する重心移動要素演算手段とを含むことを特徴とする鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置。
  8. 請求項1に記載の鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置であってさらに、
    前輪の回転速度に基づいて輸送機器の速度を検出する前輪車速検出手段と、
    後輪の回転速度に基づいて輸送機器の速度を検出する後輪車速検出手段と、
    前記前輪車速検出手段により検出された速度と前記後輪車速検出手段により検出された速度との差を算出するトラクションコントロール要素演算手段とを備え、
    前記出力制御手段は、前記前輪車速検出手段により検出された速度が前記後輪車速検出手段により検出された速度よりも速くなるに従って原動機の出力を上げ、前記前輪車速検出手段により検出された速度が前記後輪車速検出手段により検出された速度よりも遅くなるに従って原動機の出力を下げることを特徴とする鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置。
  9. 請求項1に記載の鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置であってさらに、
    ステアリング角を検出するステアリング角検出手段を備え、
    前記出力調整手段は、前記ステアリング角検出手段により検出されたステアリング角が大きくなるに従って原動機の出力を上げ、ステアリング角が小さくなるに従って原動機の出力を下げることを特徴とする鞍乗り型輸送機器用操縦制御装置。
  10. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の操縦制御装置を備えた鞍乗り型輸送機器。

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