JP2020048261A - 電動車両 - Google Patents

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利紀 望月
幣彦 宮代
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幣彦 宮代
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Shinnosuke Ide
慎之助 井手
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Abstract

【課題】第1操作部材および第2操作部材の操作による多用な走行態様を実現可能な電動車両を提供する。【解決手段】電動二輪車1は、車両を駆動するための電動モータ10と、アクセルグリップ5Aと、操作レバー5Bと、アクセルポジションセンサ29と、レバーポジションセンサ28と、制御装置20とを含む。制御装置20は、センサ29,28の出力に基づいて、アクセル操作量およびレバー操作速度に応じた駆動力が出力されるように電動モータ10の駆動力を制御する。制御装置20は、アクセル操作量、レバー操作量、レバー操作速度に応じて電動モータ10の駆動力を制御してもよい。制御装置20は、さらに車速に応じて電動モータ10の駆動力を制御してもよい。【選択図】図2

Description

この発明は、電動モータによって駆動される電動車両に関する。
電動モータを駆動源として備える電動車両が開発されている。電動車両の一例である電動二輪車においては、アクセルグリップの操作量に応じて電動モータの出力トルクが制御される。下記特許文献1には、アクセルグリップの操作量に応じた加速指令と、調整レバーの操作量に応じた調整指令とに応じて、電動モータに供給する電力を調整する加速制御システムが開示されている。
国際出願公開WO2012/090251号
エンジンを駆動源とする自動二輪車(以下「エンジン車」という。)には、クラッチレバーを有するものがある。このようなエンジン車の操作に慣れた運転者は、特許文献1に記載された電動二輪車に乗車するとき、調整レバーの操作に対して、エンジン車と同様の車両挙動を期待するであろう。したがって、調整レバーの操作と、運転者が期待する車両挙動とが異なると違和感を生じるおそれがあり、場合によって、運転者が期待する車両挙動を実現できないこともあり得る。
たとえば、特許文献1の段落0079−0080には、調整レバーを急峻に調整レバー基準位置側に戻したときに、予め定められた時間の間、アクセルグリップの操作量に対応する供給電力よりも大きい瞬時電力を電動モータに与えることが記載されている。これにより、坂道を登る場合等において、出力トルク低下後に瞬時的に大きなトルクが必要な場合に利用することができる、と説明されている。
特許文献1の構成では、調整レバーを戻し操作するときの単位時間当たりの操作量が所定値以下である場合に、予め定める時間の間、たとえば、アクセルグリップの操作量に応じた供給電力の2〜3倍の瞬時電力が電動モータに供給される。したがって、一定以上の急峻なレバー操作に対して、電動モータへの供給電力が画一的に調整される。そのため、操作レバーの操作意図に応じた車両挙動が必ずしも得られない。
たとえば、公道外のダートコースでの走行に適するように設計されたエンジン車の運転者は、クラッチレバーの操作によって、意図的に後輪をスライドさせたり、意図的に前輪をリフトアップさせたりすることがある。特許文献1のような画一的な出力調整では、エンジン車両におけるクラッチ操作による多様な走行態様を必ずしも実現できない。
同様の課題は、電動二輪車のみならず、電動モータの出力を調整するための複数の操作部材を有する電動車両に共通する。すなわち、複数の操作部材の操作に応じて多用な走行態様を実現できれば、操作性に優れた電動車両を提供することができる。
そこで、この発明の一実施形態は、第1操作部材および第2操作部材の操作による多用な走行態様を実現可能であり、それに応じて操作性に優れた電動車両を提供する。
この発明の一実施形態は、車両を駆動するための電動モータと、運転者によって操作される第1操作部材と、運転者によって操作される第2操作部材と、前記第1操作部材の操作を検出する第1操作センサと、前記第2操作部材の操作を検出する第2操作センサと、前記第1操作センサおよび前記第2操作センサの出力に基づいて、前記第1操作部材の操作量である第1操作量と、前記第2操作部材の操作速度とに応じた駆動力が出力されるように前記電動モータの駆動力を制御する制御装置と、を含む、電動車両を提供する。
この構成によれば、第1操作部材の操作量(第1操作量)に応じて電動モータの駆動力が変動し、かつ第2操作部材の操作速度に応じて電動モータの駆動力が変動する。それにより、運転者は、第1操作部材の操作量だけでなく、第2操作部材の操作速度によって、電動モータから意図する駆動力を出力させることができるので、電動車両を多用な態様で走行させることができる。したがって、操作性に優れた電動車両を提供できる。
「第2操作部材の操作速度に応じた駆動力が出力される」とは、第2操作部材の操作速度に応じて3段階以上に駆動力の出力が変動することを意味する。第2操作部材の操作速度に対する駆動力の出力の変動は、段階的であってもよく、連続的または漸次的であってもよい。「駆動力の出力が変動する」とは、駆動力が3値以上に変動する場合のほか、一定の規則に従って駆動力が変化した状態の継続時間が3値以上に変動する場合も含む。
この発明の一実施形態では、前記電動車両が、前記第1操作量および前記第2操作部材の操作量である第2操作量に応じて前記電動モータが出力すべき目標駆動力を規定した駆動力マップを記憶した記憶装置をさらに含み、前記制御装置が、前記第1操作センサおよび前記第2操作センサの出力に基づいて前記記憶装置に記憶された前記駆動力マップを参照することにより、前記電動モータが出力すべき目標駆動力を演算し、前記第2操作部材の操作速度に応じて前記目標駆動力を増量補正した駆動力が出力されるように前記電動モータの駆動力を制御する。
この構成によれば、第1操作部材の操作量(第1操作量)および第2操作部材の操作量(第2操作量)に対応する目標駆動力が駆動力マップを参照することによって演算され、その目標駆動力に対して、第2操作部材の操作速度に応じた増量補正が行われる。この増量補正がされた目標駆動力は、第1操作量および第2操作量に応じて変動し、かつ第2操作部材の操作速度に応じて変動する。したがって、運転者は、第1操作部材の操作量、ならびに第2操作部材の操作量および操作速度を適切に調整することにより、意図する駆動力を電動モータから出力させることができる。それにより、操作性が一層向上し、一層多様な態様で電動車両を走行させることができる。
この発明の一実施形態では、前記制御装置は、前記第2操作部材の操作速度の増加に応じて単調に増加する増量補正値を前記目標駆動力に加算することによって、前記目標駆動力を増量補正した駆動力を算出する。
この構成によれば、運転者が第2操作部材を速く操作するほど、増量補正値が大きくなる。これにより、より一層運転者の意図する駆動力を電動モータから発生させやすくなるから、さらに操作性を向上でき、電動車両の多様な走行を実現することができる。
増量補正値は、第2操作部材の操作速度の増加に応じて3値以上に変化するように定められていることが好ましく、その変化は、段階的な単調増加であってもよく、連続的または漸次的な単調増加であってもよい。
この発明の一実施形態では、前記増量補正値が、前記第2操作部材の操作速度に対して線形または非線形の特性を有している。このように、増量補正値の特性を線形または非線形に定めることによって、第2操作部材の操作速度に対する駆動力の応答特性を適切に定めることができる。それにより、様々な操作特性を実現できるので、優れた操作性を実現できる。
この発明の一実施形態では、前記制御装置は、前記第2操作部材の操作速度および車速に応じて前記目標駆動力を増量補正した駆動力を算出する。この構成によれば、車速に応じた増量補正が行われるので、電動車両の走行状態に応じて、第2操作部材の操作速度に対する駆動力の応答を適切に変化させることができる。それにより、操作性に優れた電動車両を実現できる。
この発明の一実施形態では、前記制御装置は、所定の車速以上では、前記増量補正を無効化する。この構成によれば、車速が或る程度高い走行状態では、第2操作部材の操作速度に応答する駆動力の増量補正が無効になるので、適切な車速域において、駆動力の増量補正を行うことができる。それにより、操作しやすい、すなわち駆動力の調整をしやすい電動車両を提供できる。
この発明の一実施形態では、前記制御装置は、車速が大きいほど、前記増量補正を緩和する。この構成によれば、車速が大きいほど、第2操作部材の操作速度に対する駆動力の応答が低くなる。それにより、駆動力を車速に応じて適切に増量補正できるので、自然な操作性を得ることができる。
この発明の一実施形態では、前記記憶装置は、前記第2操作部材の操作速度に応じた増量補正値を規定した増量補正値マップをさらに記憶しており、前記制御装置は、前記増量補正値マップを参照して求めた増量補正値を前記目標駆動力に加算することによって、前記目標駆動力を増量補正した駆動力を算出する。
この構成によれば、増量補正値マップを参照して増量補正値が求められるので、増量補正値の演算が容易になり、それに応じて、第2操作部材の操作速度に速やかに応答して駆動力増加を得ることができる。それにより、操作性を一層向上できる。
この発明の一実施形態では、前記記憶装置は、前記第2操作部材の操作速度および車速に応じた増量補正値を規定した増量補正値マップをさらに記憶しており、前記制御装置は、前記増量補正値マップを参照して求めた増量補正値を前記目標駆動力に加算することによって、前記目標駆動力を増量補正した駆動力を算出する。
この構成によれば、増量補正値が、第2操作部材の操作速度だけでなく車速も加味されているので、電動車両の走行状態に応じた適切な増量補正値を容易に求めることができる。それにより、電動車両の走行状態に応じた適切な増量補正値が速やかに求まるので、第2操作部材の操作速度に対する適切な応答を得ることができ、操作性が向上する。
この発明の一実施形態では、前記制御装置は、前記第2操作部材の操作速度に応じて、前記目標駆動力の増量補正を継続する補正継続時間を定める。この構成によれば、増量補正の継続時間が第2操作部材の操作速度に応じて変動する。それにより、運転者の意図に応じた時間だけ電動モータの駆動力を増加させることができる。これにより、操作性を一層向上でき、かつ電動車両をより多様な態様で走行させることができる。
第2操作部材の操作速度に応じた補正継続時間の変動は、段階的であってもよいし、連続的または漸次的であってもよい。
この発明の一実施形態では、前記補正継続時間が、前記第2操作部材の操作速度に対して線形または非線形の特性を有している。このように、補正継続時間の特性を線形または非線形に定めることによって、第2操作部材の操作速度に対する駆動力の応答特性を適切に定めることができる。それにより、様々な操作特性を実現できるので、一層優れた操作性を実現できる。
前記補正継続時間は、前記第2操作部材の操作速度の増加に応じて単調に増加するように定められていてもよい。これにより、運転者が第2操作部材を速く操作するほど、駆動力が増量補正される時間が長くなる。これにより、より一層運転者の意図する駆動力を電動モータから発生させやすくなるから、さらに操作性を向上でき、電動車両の多様な走行を実現することができる。
前記補正継続時間は、第2操作部材の操作速度の増加に応じて、段階的または連続的もしくは漸次的に単調増加する特性に設定されていてもよい。
この発明によれば、第1操作部材および第2操作部材の操作による多様な走行態様を実現可能であり、それに応じて操作性に優れた電動車両を提供できる。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動二輪車の側面図である。 図2は、電動モータの出力の制御に関連する構成を説明するためのブロック図である。 図3は、アクセル操作量、レバー操作量および車速に応じた目標駆動力を規定する駆動力マップの例を示す。 図4Aおよび図4Bは、レバー操作速度に応じて行われる目標駆動力の増量補正を説明するための図である。 図5は、目標駆動力の算出に関する構成を説明するためのブロック図である。 図6は、駆動力の演算処理を説明するためのフローチャートである。 図7は、動作例を説明するためのタイムチャートである。 図8は、補正継続時間に関する特徴を説明するための図である。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
ここでは、電動車両の一例として、電動二輪車について説明する。この発明の一実施形態が適用可能な電動車両には、他の形態の電動車両、たとえば、電動四輪車、電動三輪車、電動雪上車なども含まれる。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動二輪車の側面図である。電動二輪車1は、転舵輪である前輪3と、駆動輪である後輪6とを含む。前輪3の車軸は、フロントフォーク2の下端に支持されている。フロントフォーク2の上部には、ステアリングハンドル5が固定されている。ステアリングハンドル5の後方に、乗員が跨がって着座するためのシート8が配置されている。このように電動二輪車1は、鞍乗り型の車両形態を有している。
電動二輪車1は、さらに、車両を駆動するための駆動力を発生する駆動源として、電動モータ10を含む。電動二輪車1は、電動モータ10に供給する電力を蓄えるバッテリ11をさらに含む。電動モータ10は、ギヤ、チェーンなどで構成される動力伝達経路を介して、後輪6に対して動力伝達可能に結合されている。電動モータ10は、車両の減速時には、後輪6からの回転力を動力として発電する発電機として機能する。このときに電動モータ10が出力する電力は、バッテリ11の充電に利用され、さらに、ヘッドライト等の他の電装品の駆動に利用される。すなわち、電動二輪車1は、減速時には、電動モータ10に対して、制動制御(回生制御)を実行する。回生とは、この明細書では、電動モータ10の発電機能により得られる電力をバッテリ11に供給することだけでなく、その電力を他の電装品に供給することも含む。
この実施形態では、バッテリ11は、シート8の前部の下方に配置されており、電動モータ10は、バッテリ11の下方に配置されている。電動モータ10は、モータケース13に収容されている。モータケース13の後方に後輪6が位置している。モータケース13から後方に向かってスイングアーム14が延びている。このスイングアーム14に後輪6の車軸が支持されている。バッテリ11および電動モータ10の配置は、この例に限らず、適宜変更されてもよい。
図2は、電動モータ10の出力の制御に関連する構成を説明するためのブロック図である。電動二輪車1は、ライダー(運転者)の操作を受けて、電動モータ10の出力(駆動力)を制御するための操作部材として、第1操作部材および第2操作部材を有している。この実施形態では、第1接続部材の一例として、アクセルグリップ5Aがステアリングハンドル5に設けられている。また、第2操作部材の一例として、操作レバー5Bがステアリングハンドル5に設けられている。この実施形態では、アクセルグリップ5Aは、ステアリングハンドル5の一端部(より具体的には、右端部)に回動操作可能に配置され、その反対側の端部(より具体的には左端部)に操作レバー5Bが配置されている。アクセルグリップ5Aは、ライダーから離れる回動方向に向かってばね付勢されており、ライダーはそのばね力に抗してアクセルグリップ5Aを手前に回動操作する。ライダーがアクセルグリップ5Aを解放すれば、アクセルグリップ5Aはばね力によって初期位置に戻る。操作レバー5Bは、ステアリングハンドル5から離れる方向にばね付勢されており、ライダーはそのばね力に抗して操作レバー5Bを手前に操作する。ライダーが操作レバー5Bを解放すれば、操作レバー5Bはばね力によって初期位置に戻る。
第1操作部材は、アクセルグリップ5Aに限らず、アクセルレバー、サムアクセル部材(親指で押すことができる操作部材)、アクセルペダルなどの他の形態を有していてもよい。第2操作部材についても同様に、操作レバー5Bに限らず、ボタン、回転可能なグリップ、ライダーが足で操作可能なフットレバーなどの他の形態を有していてもよい。
ステアリングハンドル5には、さらに、電動二輪車1に備えられた制動装置を作動させるためにライダーによって操作されるブレーキレバー5Cが設けられている。この実施形態では、ブレーキレバー5Cは、ステアリングハンドル5において、アクセルグリップ5Aと同じ側の端部に配置されている。
電動二輪車1は、さらに、アクセルグリップ5Aの操作量(回転位置)を検出するためのアクセルポジションセンサ29と、操作レバー5Bの操作量(位置)を検出するためのレバーポジションセンサ28とを有している。アクセルポジションセンサ29は第1操作センサの一例であり、レバーポジションセンサ28は第2操作センサの一例である。電動二輪車1は、さらに、車速を検出するための車速センサ27を有している。車速センサ27は、車両の速度(車体速度)を検出するように構成されていてもよいし、前輪3の回転に応じた信号を出力するように構成されていてもよいし、後輪6の回転に応じた信号を出力するように構成されていてもよい。また、車速センサ27は、電動モータ10と後輪6との間に設けられる動力伝達経路を構成するギヤの回転に応じた信号を出力するように構成されていてもよい。さらにまた、車速センサ27は、電動モータ10の回転に応じた信号を出力するように構成されていてもよい。つまり、「車速」は、車両の速度でもよいし、車両の速度に対応する速度、たとえば、前輪3の回転速度、後輪6の回転速度、電動モータ10の回転速度、動力伝達経路にあるギヤの回転速度などであってもよい。
電動二輪車1は、さらに、制御装置20を備えている。制御装置20は、記憶装置20Mと、記憶装置20Mに格納されているプログラムを実行するプロセッサ(CPU)20Pとを含む。記憶装置20Mは、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。車速センサ27、レバーポジションセンサ28およびアクセルポジションセンサ29の出力信号は、ディジタル信号に変換されて、プロセッサ20Pに入力される。プロセッサ20Pは、センサ27,28,29からの信号に基づいて、電動モータ10を制御する。
電動モータ10には、モータ駆動装置24が接続されている。制御装置20は、モータ駆動装置24に指令値を入力することにより、電動モータ10を制御する。モータ駆動装置24は、バッテリ11に蓄積されている電力を利用して、制御装置20から入力される指令値に応じた電力を電動モータ10に供給する。電動モータ10は、たとえば、三相交流モータである。モータ駆動装置24は、インバータを含み、バッテリ11から供給される直流電流を交流電流に変換して、電動モータ10に供給する。モータ駆動装置24は、車両の減速時に制動制御が実行されると、電動モータ10に発電させ、制御装置20からの指令値に応じた電力をバッテリ11および電動二輪車1が有するその他の電装品に供給する。モータ駆動装置24は、コンバータを含み、車両の減速時には、電動モータ10が発生する交流電流を直流電流に変換して、バッテリ11および他の電装品に供給する。
記憶装置20Mには、アクセルグリップ5Aの操作量、操作レバー5Bの操作量および車速に対応させて、電動モータ10が出力すべき目標駆動力を規定する駆動力マップが格納されている。以下の説明において、アクセルグリップ5Aの操作量を「アクセル操作量」といい、操作レバー5Bの操作量を「レバー操作量」という。また、アクセル操作量は0%と100%との間で変化するものとし、レバー操作量も同様に0%と100%との間で変化するものとする。
アクセル操作量=0%は、アクセルグリップ5Aの無操作状態、すなわち最低出力要求に相当する。ライダーがアクセルグリップ5Aを手前に回動操作することにより、アクセル操作量が増大する。アクセル操作量=100%は、アクセルグリップ5Aの最大操作状態であり、最大出力要求に相当する。レバー操作量=0%は、操作レバー5Bの無操作状態に相当し、このとき、操作レバー5Bは、ステアリングハンドル5から前方に最も離れた位置にある。その状態から、ライダーがステアリングハンドル5とともに操作レバー5Bを握って、操作レバー5Bを手前に引き寄せることにより、レバー操作量が増大する。レバー操作量100%は、操作レバー5Bの最大操作状態である。
制御装置20は、アクセルポジションセンサ29によって検出されるアクセル操作量と、レバーポジションセンサ28によって検出されるレバー操作量と、車速センサ27によって検出される車速とに基づいて、電動モータ10が出力する駆動力を算出する。以下の説明において、とくに区別するときには、アクセルポジションセンサ29によって検出されるアクセル操作量を「実アクセル操作量」といい、レバーポジションセンサ28によって検出されるレバー操作量を「実レバー操作量」という。また、車速センサ27によって検出される車速を「実車速」という。
制御装置20は、実アクセル操作量、実レバー操作量および実車速に基づいて算出した目標駆動力に応じた指令値をモータ駆動装置24に出力する。モータ駆動装置24は、指令値に応じた電力を電動モータ10に供給する。
図3は、駆動力マップの例を示す。この駆動力マップMは、アクセル操作量、レバー操作量および車速(たとえばモータ回転速度)に応じた目標駆動力を規定する三次元マップである。より具体的には、駆動力マップMは、複数の異なるレバー操作量に対応して、アクセル操作量および車速に対応する目標駆動力を規定する第1駆動力マップM1、第2駆動力マップM2および第3駆動力マップM3を含んでいてもよい。第1駆動力マップM1は、第1レバー操作量L1(たとえば0%)に対応しており、第2駆動力マップM2は第2レバー操作量L2(たとえば50%)に対応しており、第3駆動力マップM3は第3レバー操作量L3(たとえば100%)に対応している。第1レバー操作量L1<第2レバー操作量L2<第3レバー操作量L3である。図3の例では、第1レバー操作量L1は最小レバー操作量(0%)であり、第3レバー操作量L3は最大レバー操作量(100%)であり、第2レバー操作量L2はそれらの間の中間レバー操作量である。
第1、第2および第3駆動力マップM1,M2,M3は、それぞれ、複数の異なるアクセル操作量A(たとえば、A=100%,80%,60%,40%,20%,0%)に対応して、車速に応じた目標駆動力の特性を表す複数の特性線を規定していてもよい。
制御装置20は、第1、第2および第3駆動力マップM1,M2,M3のうち、レバーポジションセンサ28によって検出される実レバー操作量に応じた駆動力マップを選択する。制御装置20は、実アクセル操作量および実車速に基づき、その選択した駆動力マップを参照して、目標駆動力を算出する。
たとえば、レバー操作量が取り得る値が複数の範囲に予め分割され、それらの複数の範囲に第1、第2および第3駆動力マップM1,M2,M3がそれぞれ対応付けられていてもよい。
たとえば、第1駆動力マップM1が第1の範囲に対応付けられ、第2駆動力マップM2が第2の範囲に対応付けられ、第3駆動力マップM3が第3の範囲に対応付けられてもよい。第1の範囲、第2の範囲および第3の範囲は、重なり領域のないように定められてもよい。すなわち、たとえば、第1の範囲が0%<実レバー操作量≦50%と定められ、第2の範囲が50%<実レバー操作量<100%と定められ、第3の範囲がレバー操作量=100%と定められていてもよい。この場合、実レバー操作量に応じて、第1、第2および第3駆動力マップM1,M2,M3のうちのいずれか一つが選択され、その一つの選択された駆動力マップが参照されて駆動力が定められる。
また、第1および第2の範囲が重なり領域を有するように定められてもよい。この場合、当該重なり領域では、2つの駆動力マップ、すなわち、第1および第2駆動力マップM1,M2が選択され、それらの2つの駆動力マップから実アクセル開度および実車速に応じた2つの目標駆動力が読み出される。それらの2つの読み出された目標駆動力に対して、第1レバー操作量L1および第2レバー操作量L2に対する実レバー操作量の内分比に応じた補間演算(たとえば線形補間演算)が行われて、実際に適用すべき目標駆動力が算出される。同様に、第2および第3の範囲が重なり領域を有するように定められてもよい。この場合、当該重なり領域では、2つの駆動力マップ、すなわち、第2および第3駆動力マップM2,M3が選択され、それらの2つの駆動力マップから実アクセル開度および実車速に応じた2つの目標駆動力が読み出される。そして、前述と同様の補間演算によって、実際に適用すべき目標駆動力が算出される。
むろん、ここで説明した駆動力マップMは一例であり、4つ以上の駆動力マップが用いられてもよいし、実質的に連続するレバー操作量に応じた目標駆動力を規定する連続3次元マップが構築されていてもよい。
駆動力とは、具体的には、電動モータ10が出力するトルクである。一般に、電動モータのトルクと、電動モータに供給される電流値は互いに対応する。すなわち、電流値が高くなると、電動モータのトルクは増大する。したがって、駆動力マップMは、具体的には、電動モータ10に供給する電流値(以下「供給電流値」という。)を規定する。制御装置20は、駆動力マップMを参照することにより、実アクセル操作量、実レバー操作量および実車速に応じた供給電流値を算出し、算出した供給電流値に対応する指令値をモータ駆動装置24に出力する。
この実施形態では、駆動力マップMは、電動モータ10に発電動作(回生動作)をさせるための目標制動力、すなわち、負の目標駆動力をも規定している。より具体的には、第1、第2および第3駆動力マップM1,M2,M3は、目標制動力(負の目標駆動力)を規定する運転領域をそれぞれ有している。運転領域は、具体的には、アクセル操作量、レバー操作量および車速によって規定される領域である。以下、正の目標駆動力が規定されている運転領域を「駆動運転領域」といい、電動モータ10の発電動作(回生動作)により生じさせるべき目標制動力(負の目標駆動力)が規定されている運転領域を「制動運転領域」という。
車両の運転領域が駆動運転領域にあるときには、制御装置20は、実アクセル操作量、実レバー操作量および実車速に応じて、前述の算出方法によって、電動モータ10が発生すべき目標駆動力を生成する。車両の運転領域が制動運転領域にあるときには、制御装置20は、実アクセル開度、実レバー操作量および実車速に応じて、駆動力マップMを参照することにより、電動モータ10が発生すべき目標制動力(負の目標駆動力)を算出する。具体的な算出方法は、前述の目標駆動力の算出方法と同様である。
一般に、電動モータから得られる制動力と、電動モータで発電される電力(バッテリ11等の電装品に供給される電力)の電流値とは互いに対応する。すなわち、電流値が高くなると、電動モータが発生する制動力は増大する。したがって、駆動力マップMは、電動モータ10の発電により得られる目標制動力として、電動モータ10からバッテリ11等に供給される電力の電流値(以下「回生電流値」という。)を規定してもよい。すなわち、車両の運転状態が制動運転領域にあるとき、制御装置20は、駆動力マップMを参照することにより、実アクセル操作量、実レバー操作量および実車速に応じた回生電流値を算出し、算出した回生電流値に応じた指令値をモータ駆動装置24に出力する。
操作レバー5Bは、クラッチ付のエンジン車におけるクラッチレバーに対応する位置に設けられている。そこで、エンジン車の運転に慣れたライダーは、操作レバー5Bの操作によって、エンジン車におけるクラッチレバーの操作時と同様の車両挙動を期待する。操作レバー5Bをステアリングハンドル5とともに握って手前に引き寄せる握り操作は、クラッチレバーによるクラッチ切断操作に類似している。そこで、図3の駆動力マップでは、レバー操作量が大きくなるほど、すなわち、操作レバー5Bが握り込まれるほど、目標駆動力が減少する特性となっている。反対に、操作レバー5Bを解放する戻し操作が行われると、レバー操作量が小さくなるので、目標駆動力が増大する。これは、エンジン車においてクラッチ戻し操作により駆動輪に伝達される動力が増大するのに類似している。
ライダーは、アクセルグリップ5Aを一定にしているときでも、操作レバー5Bの操作によって、駆動力を調整することができるので、出力トルクの微妙な調整を行うことができる。
図4Aは、電動二輪車1の運転領域が駆動運転領域にあるときに、操作レバー5Bの戻し方向の操作速度(以下「レバー操作速度」という。)に応じて行われる目標駆動力(供給電流値)の増量補正を説明するための図である。より具体的には、図4Aには、レバー操作速度および車速に応じた増量補正値マップCMが示されている。ただし、戻し操作の際のレバー操作速度は負の値であるので、図4Aにはレバー操作速度の絶対値に対する増量補正値を規定したマップが表されている。以下では、レバー操作速度の絶対値を単に「レバー操作速度」という。
この実施形態では、駆動力マップMに基づいて求められた目標駆動力に対して、増量補正値マップCMに基づいて求められた増量補正値が加算され、それによって、目標駆動力が補正される。
図4Aの例では、レバー操作速度の増加に応じて単調に増加するように増量補正値(トルク増加量)が定められている。さらに具体的には、図4Bに実線100で示すように、レバー操作速度の増加に対して増量補正値(トルク増加量)が線形に増加するように定められている。より具体的にはレバー操作速度に対して正比例するように増量補正値が定められている。レバー操作速度の増加に対する増量補正値の増加は線形である必要はなく、一点鎖線101および破線102で示すように、増量補正値の増加が非線形であってもよい。一点鎖線101の非線形特性では、レバー操作速度の比較的小さい領域において、レバー操作速度に対する増量補正値の変化率が大きく、レバー操作速度が大きくなるほど増量補正値の変化率が小さくなっている。また、破線102の非線形特性では、レバー操作速度の比較的小さい領域において、レバー操作速度に対する増量補正値の変化率が小さく、レバー操作速度が大きくなるほど増量補正値の変化率が大きくなっている。
また、図4Aに示されているように、増量補正値は、車速が大きいほど小さくなるように、すなわち、車速の増加に応じて単調減少するように定められている。車速の増加に対する増量補正値の減少は、線形であってもよいし、非線形であってもよい。さらに、図4Aに表れているように、一定の車速閾値VTを超える車速領域では、増量補正値を零として、目標駆動力の増量補正を無効化してもよい。
図5は、制御装置20による目標駆動力の算出に関する機能的な構成を説明するためのブロック図である。制御装置20は、プロセッサ20Pがプログラムを実行することによって、複数の機能を実現する。そのような複数の機能は、実アクセル操作量、実レバー操作量および実車速に基づいて駆動力マップMを参照して目標駆動力を演算する目標駆動力演算部30としての機能を含む。また、前記複数の機能は、レバー操作速度を求めるレバー操作速度演算部31としての機能と、求められたレバー操作速度に基づいて増量補正値マップCMを参照して増量補正値を求める増量補正値演算部32としての機能とを含む。さらに、前記複数の機能は、求められた増量補正値により目標駆動力を補正する目標駆動力補正部33としての機能を含む。レバー操作速度は、レバーポジションセンサ28の出力信号から求められる実レバー操作量の時間変化率として求めることができる。目標駆動力補正部33は、増量補正値を目標駆動力に加算することによって、補正された目標駆動力を求める。
このような構成により、制御装置20は、実アクセル操作量、実レバー操作量および実車速に応じた目標駆動力を演算し、かつレバー操作速度に応じた増量補正値を求める。そして、制御装置20は、目標駆動力に増量補正値を加算して、補正された目標駆動力を求め、その補正された目標駆動力に相当する指令値をモータ駆動装置24に供給する。こうして、実アクセル操作量、実レバー操作量、実車速およびレバー操作速度に応じた駆動力が電動モータ10から発生する。ただし、前述のとおり、目標駆動力の増量補正は、駆動運転領域において操作レバー5Bが戻し操作されたときに行われ、その他の状況では、増量補正は行われない。また、車速閾値VTを超える車速域では、増量補正は無効となる(図4A参照)。
図6は、制御装置20による駆動力の演算処理を説明するためのフローチャートである。この演算処理は、電動二輪車1の動作中、より具体的には制御装置20に動作電力が供給されているときに、所定の制御周期で繰り返し実行される。
制御装置20は、アクセルポジションセンサ29、レバーポジションセンサ28および車速センサ27の出力を取り込み、実アクセル操作量、実レバー操作量および実車速を求める(ステップS1,S2,S3)。さらに、制御装置20は、たとえば、前制御周期からの実レバー操作量の変化に基づいて、レバー操作速度を求める(ステップS4)。
制御装置20は、実アクセル操作量、実レバー操作量および車速に基づいて、駆動力マップMを参照し(ステップS5)、目標駆動力(負の場合には目標制動力に相当する。)を求める(ステップS6)。制御装置20は、さらに目標駆動力が0以上かどうか、すなわち、駆動運転領域かどうかを判断する(ステップS7)。駆動運転領域でなければ(ステップS7:NO)、増量補正なしの目標駆動力に相当する指令値をモータ駆動装置24に出力する(ステップS15)。
駆動運転領域であれば(ステップS7:YES)、制御装置20は、操作レバー5Bが戻し操作されたかどうかを判断する(ステップS8)。制御装置20は、たとえば、レバー操作速度が負であれば、すなわち、前制御周期に比較してレバー操作量が減少していれば、操作レバー5Bが戻し操作されたと判断する。操作レバー5Bが戻し操作されていれば(ステップS8:YES)、制御装置20は、レバー操作速度(絶対値)および実車速に基づいて、増量補正値マップCMを参照して(ステップS9)、増量補正値を求める(ステップS10)。そして、制御装置20は、その増量補正値を目標駆動力に加算し、補正された目標駆動力を求める(ステップS11)。制御装置20は、その補正された目標駆動力に相当する指令値をモータ駆動装置24に出力する(ステップS12)。制御装置20は、所定の補正継続時間(たとえば、数制御周期)に渡って増量補正した目標駆動力の出力を継続した後(ステップS13:YES)、目標駆動力を補正前の値に戻す(ステップS14)。そして、補正なしの目標駆動力に相当する指令値をモータ駆動装置24に出力する(ステップS15)。
操作レバー5Bが戻し操作されていなければ(ステップS8:NO)、制御装置20は、目標駆動力の補正は行わず、増量補正なしの目標駆動力に相当する指令値をモータ駆動装置24に出力する(ステップS15)。
図7は、動作例を説明するためのタイムチャートである。図7(a)は実アクセル操作量の変化を示し、図7(b)は実レバー操作量の変化を示し、図7(c)は駆動力(指令値)の変化を示し、図7(d)は実車速の変化を示す。この動作例は、アクセルグリップ5Aを無操作状態として電動二輪車1を惰行させている状態から、操作レバー5Bを握ってアクセルグリップ5Aを操作して出力減少を指令し、その後に操作レバー5Bを瞬時に離す戻し操作を行った場合を示す。エンジン車においてスロットルグリップおよびクラッチレバーに対して同様の操作を行うことにより、前輪を持ち上げるフロントアップや後輪を瞬時だけ滑らせる後輪瞬時スライドを行うことができる。
実アクセル操作量を0%として電動二輪車1を惰行させている期間には、電動モータ10の駆動力が零とされていて、参照符号71で示すように、実車速が漸減している。実操作量が0%の状態から、ライダーが操作レバー5Bを握ることにより、参照符号72で示すように、実レバー操作量が大きくなる。次いで、ライダーは、参照符号73で示すように、アクセルグリップ5Aを操作して、要求出力を増大させ、その後に、参照符号74で示すように、操作レバー5Bを瞬時に戻す操作を行う。すると、或るレバー操作量となる時刻t1において、参照符号75で示すように、電動モータ10の駆動力が急峻に立ち上がる。すなわち、実アクセル操作量、実レバー操作量および実車速に対応した目標駆動力よりも、レバー操作速度に応じた増量補正値ΔCだけ大きな駆動力が補正継続時間ΔTにわたって出力される。これにより、参照符号76で示すように、車速、より具体的には後輪6の車輪速が急峻に立ち上がる。それによって、前輪3を持ち上げるフロントアップ動作や、後輪6を極短時間だけスライドさせる後輪瞬時スライド動作を行うことができる。補正継続時間ΔTの経過後は、電動モータ10の駆動力は、補正なしの目標駆動力となる。
増量補正値ΔCは、レバー操作速度に応じて変動するので、操作レバー5Bの戻し操作の速さを加減することによって、ライダーの操作意図に応じた多様な車両挙動を得ることができる。
図8は、補正継続時間に関する特徴を説明するための図である。補正継続時間は、一定の時間(たとえば数制御周期分)であってもよいが、レバー操作速度に応じて変動するように定めてもよい。図8の例では、レバー操作速度の増加に応じて単調に増加するように補正継続時間が定められている。さらに具体的には、図8に実線200で示すように、レバー操作速度の増加に対して線形に増加するように、より具体的には正比例するように、補正継続時間が定められていてもよい。レバー操作速度の増加に対する補正継続時間の増加は線形である必要はなく、一点鎖線201および破線202で示すように、補正継続時間の増加が非線形であってもよい。一点鎖線201の非線形特性では、レバー操作速度の比較的小さい領域において、レバー操作速度に対する補正継続時間の変化率が大きく、レバー操作速度が大きくなるほど補正継続時間の変化率が小さくなっている。また、破線202の非線形特性では、レバー操作速度の比較的小さい領域において、レバー操作速度に対する補正継続時間の変化率が小さく、レバー操作速度が大きくなるほど補正継続時間の変化率が大きくなっている。
増量補正値および補正継続時間は、両方をレバー操作速度に応じて変化させてもよいし、一方を一定値とし、他方をレバー操作速度に応じて変化させてもよい。たとえば、増量補正値を一定としておく一方で、レバー操作速度に応じて補正継続時間を変化させてもよい。
以上のように、この実施形態によれば、アクセル操作量に応じて電動モータ10の駆動力が変動し、かつレバー操作量に応じて電動モータ10の駆動力が変動する。したがって、ライダーは、アクセルグリップ5Aの回動操作によって駆動力を調整でき、かつ操作レバー5Bの操作によって駆動力を調整できる。そのため、エンジン車におけるスロットルグリップ操作およびクラッチレバー操作に類似する操作によって、駆動力を調整でき、ライダーの意図に応じた多用な運転が可能になる。たとえば、操作レバー5Bを握り操作することによって、駆動力を瞬時に減少させることができる。また、操作レバー5Bの操作量を繰り返し増減することによって駆動力を加減して、微妙な速度調整を行うことができる。さらに、電動二輪車1の車体を傾けて走行しているリーン中に、アクセル操作量を中程度のパーシャル操作量としておく一方で、操作レバー5Bの操作量を加減することで、ライダーの意図に応じた適切な加速度を得ることができる。
さらに、この実施形態では、アクセル操作量およびレバー操作量だけでなく、操作レバー5Bの戻し操作の際には、レバー操作速度に応じて、目標駆動力が増量補正され、その増量補正された目標駆動力に応じて電動モータ10が制御される。増量補正値は、戻し操作の操作速度が大きいほど大きい。これにより、エンジン車に対するスロットルグリップおよびクラッチレバーの操作によって実現される様々な走行態様が可能となり、エンジン車に一層近似した走行特性を実現できる。
たとえば、前輪3を持ち上げるフロントアップを行うことができる。具体的には、操作レバー5Bを握り操作した状態でアクセル操作量を或る程度大きくしておき、操作レバー5Bを離して急峻な戻し操作を行うことにより、駆動力が急峻に立ち上がることで、フロントアップを行うことができる。
また、同様の操作によって、コーナーを通過するときに後輪6を瞬時だけスライドさせる後輪瞬時スライドを行うことができる。具体的には、操作レバー5Bを握り操作して車両を惰行させている状態でアクセル操作量を或る程度大きくしておき、操作レバー5Bを離して急峻な戻し操作を行うことにより、駆動力が急峻に立ち上がる。それにより、後輪6が大きな駆動力によって空転するので、後輪6をコーナー外側にスライドさせて、車両の向きを変えることができる。
さらに、急加速を行うことができる。具体的には、操作レバー5Bに対する握り操作と戻し操作とを繰り返し、戻し操作を急峻に行うことで大きな駆動力が発生する。そこで、ライダーは、後輪6のグリップ状態および車両のピッチングバランスを体感しながら、操作レバー5Bの握り操作および戻り操作を繰り返し、最大限の駆動力を地面に伝達しようとする。それにより、短時間で電動モータ10の最大駆動力を後輪6から地面へと伝達できる状態に移行でき、車両を急加速させることができる。
このように、レバー操作速度に応じて電動モータ10の駆動力が変動することによって、電動二輪車1を多用な態様で走行させることができ、とくに、エンジン車と類似した操作によってエンジン車と同様の多様な車体挙動を実現できる。このように、アクセルグリップ5Aおよび操作レバー5Bの操作によって電動二輪車1を多用な態様で走行させることができるので、操作性に優れた電動二輪車1を提供できる。
また、この実施形態では、アクセル操作量、レバー操作量および車速に応じた目標駆動力を規定した駆動力マップMが記憶装置20Mに記憶されている。そして、実アクセル操作量、実レバー操作量および実車速に基づいて駆動力マップMを参照することにより、目標駆動力が求められる。この目標駆動力に対して、レバー操作速度に応じた増量補正が行われる。したがって、増量補正された目標駆動力は、アクセル操作量、レバー操作量、車速およびレバー操作速度に応じて変動する値となる。そして、アクセル操作量、レバー操作量および車速に応じた目標駆動力を、駆動力マップMを参照して求めることにより、その演算を簡単にすることができる。それに応じて、操作に対する駆動力の応答が速くなるから、操作性を一層向上できる。
さらにこの実施形態では、レバー操作量および車速に応じた増量補正値を規定する増量補正値マップCMが記憶装置20Mに格納されており、これを参照して、増量補正値が演算される。したがって、増量補正値の演算を簡単にすることができる。それに応じて、レバー操作速度に速やかに応答して駆動力増加を得ることができるので、操作性を一層向上できる。
また、この実施形態では、増量補正値は、レバー操作速度の増加に応じて単調に増加する特性で定められる。そのため、レバー操作速度が大きいほど増量補正値が大きくなるので、ライダーの意図する駆動力を発生させやすくなる。したがって、優れた操作性で多様な走行態様を実現できる。
増量補正値は、レバー操作速度の増加に応じて3値以上に変化するように定められていることが好ましく、その変化は、段階的な単調増加であってもよく、連続的または漸次的な単調増加であってもよい。それにより、優れた操作性で、多様な走行態様を実現し易くなる。とくに、連続的または漸次的に単調増加する特性とすることにより、個々のライダーの意図を反映した走行態様を実現し易い。
前述の図4Bに示したとおり、増量補正値は、レバー操作速度に対して線形または非線形の特性を有していてもよい。このように、増量補正値の特性を線形または非線形に定めることによって、レバー操作速度に対する駆動力の応答特性を適切に定めることができる。それにより、様々な操作特性を実現できるので、それに応じて優れた操作性を実現できる。
また、この実施形態では、増量補正値は、レバー操作速度だけでなく、車速にも応じて変動する値をとる。つまり、目標駆動値に対して、車速に応じた増量補正が行われる。したがって、電動二輪車1の走行状態に応じて、レバー操作速度に対する駆動力の応答を適切に変化させることができる。それにより、操作性に優れた電動二輪車1を実現できる。
そして、図4Aを参照して前述したとおり、車速閾値VT以上の車速域では、増量補正値が零とされており、レバー操作速度に応じた目標駆動力の増量補正が無効化される。したがって、適切な車速域において、駆動力の増量補正を行うことができる。それにより、操作しやすい、すなわち駆動力の調整をしやすい電動二輪車1を提供できる。
また、図4Aに表れているように、車速が大きいほど、増量補正値が小さくなっており、目標駆動値に対する増量補正が緩和されるようになっている。すなわち、車速が大きいほど、レバー操作速度に対する駆動力増加の応答が低くなる。それにより、車速に応じて駆動力を適切に増量補正できるので、自然な操作性を得ることができる。
さらに、目標駆動力に対する増量補正は一定の補正継続時間に渡って行われてもよいが、図8を参照して前述したとおり、レバー操作速度に応じて変化させてもよい。それにより、ライダーの意図に応じた時間だけ電動モータ10の駆動力を増加させることができる。それに応じて、操作性が一層向上し、かつ電動二輪車1を一層多用な態様で走行させることができる。図8に示した特性例では、補正継続時間は、レバー操作速度の増加に応じて単調に増加するように定められているので、ライダーが操作レバー5Bを速く操作するほど、駆動力が増量補正される時間が長くなる。これにより、ライダーの意図する駆動力を電動モータ10からより一層発生させやすくなるから、さらに操作性を向上でき、電動二輪車1の多様な走行態様を実現することができる。
レバー操作速度に応じた補正継続時間の変動は、段階的であってもよいし、連続的または漸次的であってもよい。より具体的には、補正継続時間は、レバー操作速度の増加に応じて、段階的または連続的もしくは漸次的に単調増加する特性に設定されていてもよい。とくに、連続的または漸次的に単調増加する特性とすることにより、個々のライダーの意図を反映した走行態様を実現し易い。
前述の図8に示したとおり、補正継続時間は、レバー操作速度に対して線形または非線形の特性を有していてもよい。このように、補正継続時間の特性を線形または非線形に定めることによって、レバー操作速度に対する補正継続時間の特性を適切に定めることができる。それにより、様々な操作特性を実現できるので、それに応じて優れた操作性を実現できる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、以下に例示するとおり、この発明は、さらに他の形態で実施することができる。
前述の実施形態では、駆動力マップMを参照して目標駆動力を演算しているが、マップを用いずに目標駆動力を演算してもよい。同様に、増量補正値マップCMを用いない演算によって増量補正値を求めてもよい。
前述の実施形態では、目標駆動力を求め、その目標駆動力を増量補正値で補正しているが、補正後の目標駆動力に対応する値を、実アクセル操作量、実レバー操作量、実車速および実レバー操作速度に基づいて求めてもよい。より具体的には、アクセル操作量、実レバー操作量、車速およびレバー操作速度に対応する目標駆動力を規定する4次元マップが用いられてもよい。
また、レバー操作量を用いずに、たとえば、アクセル操作量のみまたはアクセル操作量および車速に応じた目標駆動力を求め、その目標駆動力をレバー操作速度に応じた増量補正値で補正してもよい。
さらに、車速を用いずに、レバー操作速度のみに応じた増量補正値を求めてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1 電動二輪車、5 ステアリングハンドル、5A アクセルグリップ(第1操作部材)、5B 操作レバー(第2操作部材)、10 電動モータ、11 バッテリ、20 制御装置、20M 記憶装置、20P プロセッサ、24 モータ駆動装置、27 車速センサ、28 レバーポジションセンサ、29 アクセルポジションセンサ、30 目標駆動力演算部、31 レバー操作速度演算部、32 増量補正値演算部、33 目標駆動力補正部、M 駆動力マップ、M1 第1駆動力マップ、M2 第2駆動力マップ、M3 第3駆動力マップ、CM 増量補正値マップ、VT 車速閾値、ΔC 増量補正値、ΔT 補正継続時間

Claims (11)

  1. 車両を駆動するための電動モータと、
    運転者によって操作される第1操作部材と、
    運転者によって操作される第2操作部材と、
    前記第1操作部材の操作を検出する第1操作センサと、
    前記第2操作部材の操作を検出する第2操作センサと、
    前記第1操作センサおよび前記第2操作センサの出力に基づいて、前記第1操作部材の操作量である第1操作量と、前記第2操作部材の操作速度とに応じた駆動力が出力されるように前記電動モータの駆動力を制御する制御装置と、を含む、電動車両。
  2. 前記第1操作量および前記第2操作部材の操作量である第2操作量に応じて前記電動モータが出力すべき目標駆動力を規定した駆動力マップを記憶した記憶装置をさらに含み、
    前記制御装置が、前記第1操作センサおよび前記第2操作センサの出力に基づいて前記記憶装置に記憶された前記駆動力マップを参照することにより、前記電動モータが出力すべき目標駆動力を演算し、前記第2操作部材の操作速度に応じて前記目標駆動力を増量補正した駆動力が出力されるように前記電動モータの駆動力を制御する、請求項1に記載の電動車両。
  3. 前記制御装置は、前記第2操作部材の操作速度の増加に応じて単調に増加する増量補正値を前記目標駆動力に加算することによって、前記目標駆動力を増量補正した駆動力を算出する、請求項2に記載の電動車両。
  4. 前記増量補正値が、前記第2操作部材の操作速度に対して線形または非線形の特性を有している、請求項3に記載の電動車両。
  5. 前記制御装置は、前記第2操作部材の操作速度および車速に応じて前記目標駆動力を増量補正した駆動力を算出する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の電動車両。
  6. 前記制御装置は、所定の車速以上では、前記増量補正を無効化する、請求項2〜5のいずれか一項に記載の電動車両。
  7. 前記制御装置は、車速が大きいほど、前記増量補正を緩和する、請求項2〜6のいずれか一項に記載の電動車両。
  8. 前記記憶装置は、前記第2操作部材の操作速度に応じた増量補正値を規定した増量補正値マップをさらに記憶しており、
    前記制御装置は、前記増量補正値マップを参照して求めた増量補正値を前記目標駆動力に加算することによって、前記目標駆動力を増量補正した駆動力を算出する、請求項2〜7のいずれか一項に記載の電動車両。
  9. 前記記憶装置は、前記第2操作部材の操作速度および車速に応じた増量補正値を規定した増量補正値マップをさらに記憶しており、
    前記制御装置は、前記増量補正値マップを参照して求めた増量補正値を前記目標駆動力に加算することによって、前記目標駆動力を増量補正した駆動力を算出する、請求項2〜7のいずれか一項に記載の電動車両。
  10. 前記制御装置は、前記第2操作部材の操作速度に応じて、前記目標駆動力の増量補正を継続する補正継続時間を定める、請求項2〜9のいずれか一項に記載の電動車両。
  11. 前記補正継続時間が、前記第2操作部材の操作速度に対して線形または非線形の特性を有している、請求項10に記載の電動車両。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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