JP2006273941A - 防振ゴム組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた防振性能を得ることができる防振ゴム組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)〜(C)を必須成分とし、加硫剤として硫黄元素を含有しない防振ゴム組成物である。
(A)ジエン系ゴム。
(B)下記の一般式(1)で表されるビスマレイミド化合物。
【化1】
Figure 2006273941

(C)加硫促進剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、防振ゴム組成物に関するものであり、詳しくは、自動車等のエンジンの支持機能および振動伝達を抑制するためのエンジンマウント等に使用される防振ゴム組成物に関するものである。
従来より、防振ゴム組成物としては、例えば、天然ゴムや合成ゴム等のゴム材に対し、硫黄加硫剤や加硫促進剤等を添加したゴム組成物が用いられている。しかし、このようなゴム組成物は、長期使用(熱老化)後において、ゴムが硬くなり、防振性能が劣るという難点がある。
このような熱劣化の原因としては、(a)硫黄架橋の形態が、ポリスルフィド結合からジスルフィド結合やモノスルフィド結合へと変化することによる架橋密度の上昇、(b)ゴム材自身の酸化劣化、(c)硫黄加硫剤による架橋等が考えられる。
これらの問題に対して、(a)モノスルフィドリッチな架橋形態にする、(b)老化防止剤の添加、(c)硫黄加硫剤の配合量をできるだけ少なくする等の方法によって、対策を施してきたが、長期使用(熱老化)後におけるゴムの硬化を充分に抑制することができず、防振性能に劣っていた。
そこで、この防振性能の問題を解決すべく、加硫剤として、ビスマレイミド系化合物を用いたゴム組成物が種々提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特開平2−284935号公報 特開平4−136049号公報 特公平7−122006号公報
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載のゴム組成物は、いずれもビスマレイミド系化合物とともに、硫黄加硫剤を併用しているため、硫黄加硫剤によって架橋が進行する結果、ゴムが硬化し、充分な防振性能を得ることができないという難点がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、優れた防振性能を得ることができる防振ゴム組成物の提供をその目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の防振ゴム組成物は、下記の(A)〜(C)を必須成分とし、加硫剤として硫黄元素を含有しないという構成をとる。
(A)ジエン系ゴム。
(B)下記の一般式(1)で表されるビスマレイミド化合物。
Figure 2006273941
(C)加硫促進剤。
すなわち、本発明者らは、優れた防振性能を得ることができる防振ゴム組成物を得るべく、鋭意研究を重ねた。そして、加硫剤として特定のビスマレイミド化合物のみを用い、加硫剤として硫黄元素を含有しない加硫系に着目した。この加硫系においては、加硫剤としてのビスマレイミド化合物の架橋反応性を向上させるため、ビスマレイミド化合物とともに、加硫促進剤を併用する必要があることを突き止めた。その結果、ジエン系ゴムと、特定のビスマレイミド化合物と、加硫促進剤とを用い、加硫剤として硫黄元素を含有しない防振ゴム組成物が、所期の目的を達成できることを見いだし、本発明に到達した。
本発明の防振ゴム組成物は、特定のビスマレイミド化合物を加硫剤として含有するものであり、加硫剤として硫黄元素を含有しないとともに、加硫促進剤を用いているため、長期使用(熱老化)後におけるゴムの硬化を充分に抑制することができ、優れた防振性能を得ることができる。また、本発明の防振ゴム組成物は、特定のビスマレイミド化合物を加硫剤として含有するため、ジエン系ゴムとの架橋がC−C結合となり、硫黄架橋の場合のスルフィド結合に比べて結合エネルギーが大きく、耐熱性に優れている。
また、上記加硫促進剤のなかでも、特にチアゾール系加硫促進剤を用いると、架橋反応性が向上するという効果が得られる。
さらに、上記チアゾール系加硫促進剤のなかでも、特にジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)または2−(4−モルフォリノジチオ)ベンゾチアゾール(MDB)を用いると、架橋反応性がより一層向上するという効果が得られる。
また、上記加硫促進剤のなかでも、特にチウラム系加硫促進剤を用いると、スコーチタイムが長くなることから、未加硫ゴム状態での貯蔵安定性に優れるとともに、加硫時におけるゴム焼けをより抑制することができる結果、加工性に優れるという効果が得られる。
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の防振ゴム組成物は、ジエン系ゴム(A成分)と、特定のビスマレイミド化合物(B成分)と、加硫促進剤(C成分)とを用いて得ることができる。
本発明においては、加硫剤として特定のビスマレイミド化合物(B成分)のみを含有するのであって、加硫剤として硫黄元素を含有しないことが最大の特徴である。ここで、硫黄元素とは、通常のゴムの加硫に用いられる硫黄を意味する。
上記ジエン系ゴム(A成分)としては、特に限定はなく、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、防振性能、耐久性の点で、NRが好適に用いられる。
つぎに、上記ジエン系ゴム(A成分)とともに用いられる特定のビスマレイミド化合物(B成分)としては、下記の一般式(1)で表されるビスマレイミド化合物が用いられる。
Figure 2006273941
上記一般式(1)において、Xは、分子構造中に芳香環を有する炭化水素基または芳香族炭化水素基を示すが、上記炭化水素基としては、メチレン基等のアルキレン基があげられる。また、この炭化水素基の有する芳香環は、1個に限定されるものでなく、2個以上であっても差し支えなく、各芳香環は−O−、−S−、−SS−、−SO2 −等により結合されていても差し支えない。
また、上記一般式(1)において、Xは置換基を有していてもよく、例えば、上記炭化水素基が置換基を有していても、上記芳香環もしくは芳香族炭化水素基が置換基を有していても差し支えない。この置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基等の低級アルキル基)、−NO2 、−NH2 、−F、−Cl、−Br等があげられる。
また、上記一般式(1)において、R1 〜R4 で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基があげられる。
上記特定のビスマレイミド化合物(B成分)としては、例えば、下記の化学式(2)で表されるN,N′−m−フェニレンジマレイミド、下記の化学式(3)で表されるN,N′−(4,4−ジフェニル−メタン)ビスマレイミド、下記の化学式(4)で表されるビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、下記の化学式(5)で表される2,2′−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、下記の化学式(6)で表されるm−フェニレンビス(メチレン)ビスマレイミド、下記の化学式(7)で表されるm−フェニレンビス(メチレン)ビスシトラコンイミド等があげられる。
Figure 2006273941
Figure 2006273941
Figure 2006273941
Figure 2006273941
Figure 2006273941
Figure 2006273941
上記特定のビスマレイミド化合物(B成分)のなかでも、上記化学式(2)で表されるN,N′−m−フェニレンジマレイミドは、例えば、つぎのようにして製造することがでる。すなわち、無水マレイン酸のクロロホルム溶液に、m−フェニレンジマミンを所定量滴下し、得られたビス(マレイン酸)m−フェニレンアミドに、トリエチルアミンと酢酸ナトリウムとをアセトンに混合することにより、目的物を得ることができる。
上記特定のビスマレイミド化合物(B成分)の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100重量部(以下「部」と略す)に対して、0.3〜7部の範囲内が好ましく、特に好ましくは1〜5部の範囲内である。すなわち、B成分が0.3部未満であると、架橋反応性が劣る傾向がみられ、逆にB成分が7部を超えると、物性(破断強度、破断伸び)が低下し、耐久性が低下するおそれがあるからである。
上記A成分およびB成分とともに用いられる加硫促進剤(C成分)としては、特に限定はなく、例えば、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、アルデヒドアンモニア系、アルデヒドアミン系、グアニジン系、チオウレア系等の加硫促進剤があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、架橋反応性に優れる点で、チアゾール系加硫促進剤が好ましい。さらに、物性(破断強度、破断伸び)に優れる点で、チアゾール系加硫促進剤とチウラム系加硫促進剤との併用が好ましい。
上記チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−(4−モルフォリノジチオ)ベンゾチアゾール(MDB)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩(NaMBT)、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(ZnMBT)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、特に架橋反応性に優れる点で、MBTS、MDBが好適に用いられ、また、物性(破断強度、破断伸び)に優れる点で、MDBが好適に用いられる。
上記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)等があげられる。
上記チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)等があげられる。
上記加硫促進剤(C成分)の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して、0.3〜7部の範囲内が好ましく、特に好ましくは0.5〜5部の範囲内である。すなわち、C成分が0.3部未満であると、架橋反応性が劣る傾向がみられ、逆にC成分が7部を超えると、物性(破断強度、破断伸び)が低下するおそれがあるからである。
なお、本発明の防振ゴム組成物には、上記A〜C成分以外に、加硫助剤、老化防止剤、加工助剤、軟化剤等を必要に応じて適宜に配合することも可能である。
上記加硫助剤としては、特に限定はなく、例えば、亜鉛華(ZnO)、酸化マグネシウム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
このような加硫助剤の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して、1〜15部の範囲内が好ましく、特に好ましくは2〜10部の範囲内である。
また、上記老化防止剤としては、例えば、カルバメート系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ジフェニルアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、ワックス類等があげられる。
このような老化防止剤の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して、1〜7部の範囲内が好ましく、特に好ましくは2〜5部の範囲内である。
また、上記加工助剤としては、例えば、ステアリン酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、炭化水素系樹脂等があげられる。
このような加工助剤の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して、1〜5部の範囲内が好ましく、特に好ましくは1〜3部の範囲内である。
本発明の防振ゴム組成物は、例えば、上記ジエン系ゴム(A成分)、特定のビスマレイミド化合物(B成分)、および加硫促進剤(C成分)に、加硫助剤等の添加剤を必要に応じて配合し、これらをロール、バンバリーミキサー等を用いて混練することにより調製することができる。
このようにして得られる本発明の防振ゴム組成物の用途としては、特に限定はなく、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ等の防振材料として、好適に用いられる。
本発明の防振ゴム組成物を用いてなる防振ゴムは、例えば、前述のようにして調製した防振ゴム組成物を、所定の条件でプレス加硫して、所定形状に成形することにより作製することができる。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
〔ジエン系ゴム〕
天然ゴム
〔ジエン系ゴム〕
ブタジエンゴム(BR)
〔ジエン系ゴム〕
スチレン−ブタジエンゴム(SBR)
〔老化防止剤A〕
N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(精工化学社製、オゾノン6C)
〔老化防止剤B〕
2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノリン(精工化学社製、ノンフレックスRD)
〔カーボンブラック〕
FEF級カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストSO)
〔軟化剤〕
ナフテン系鉱物油
〔ビスマレイミド化合物A〕
前記化学式(2)で表されるN,N′−m−フェニレンジマレイミド(大内新興化学工業社製、バルノップPM)
〔ビスマレイミド化合物B〕
前記化学式(3)で表されるN,N′−(4,4−ジフェニル−メタン)ビスマレイミド(三井化学ファイン社製、BMI−S)
〔ビスマレイミド化合物C〕
前記化学式(4)で表されるビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(ケイアイ化成社製、BMI−70)
〔ビスマレイミド化合物D〕
前記化学式(5)で表される2,2′−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン(ケイアイ化成社製、BMI−80)
〔ビスマレイミド化合物E〕
前記化学式(6)で表されるm−フェニレンビス(メチレン)ビスマレイミド
〔ビスマレイミド化合物F〕
前記化学式(7)で表されるm−フェニレンビス(メチレン)ビスシトラコンイミド
〔加硫剤〕
硫黄
〔加硫促進剤(MBTS)〕
三新化学工業社製、サンセラーDM
〔加硫促進剤(CBS)〕
三新化学工業社製、サンセラーCM
〔加硫促進剤(TMTD)〕
三新化学工業社製、サンセラーTT
〔加硫促進剤(MDB)〕
大内新興化学工業社製、ノクセラーMDB
つぎに、これらの材料を用い、つぎのようにして防振ゴム組成物を調製した。
〔実施例1〜17、比較例1,2〕
後記の表1〜表3に示す各成分を、同表に示す割合で配合し、これらをバンバリーミキサーを用いて混練し、防振ゴム組成物を調製した。
このようにして得られた実施例品および比較例品の防振ゴム組成物を用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表1〜表3に併せて示した。
〔加工性〕
各防振ゴム組成物を用いて、JIS K 6300の試験方法に準じて、試験温度125℃におけるスコーチタイム(t5 )を測定し、加工性の評価を行った。評価は、スコーチタイム(t5 )が13分より長いものを◎、13分以下のものを○とした。
〔初期物性〕
各防振ゴム組成物を、160℃×30分の条件でプレス加硫し、JIS5号ダンベルで打ち抜き、厚み2mmの防振ゴムシートを作製した。そして、この防振ゴムシートを用い、JIS K 6251に準拠して、破断強度、破断伸び、および硬度(JIS A)を測定した。
〔熱老化物性〕
上記と同様にして作製した防振ゴムシートを用い、100℃×500時間老化後の破断伸びおよび硬度(JIS A)を測定し、破断伸びについては変化率(%)を、硬度については初期との差を求めた。
〔ばね変化〕
上記と同様にして作製した防振ゴムシートを用い、JIS K 6251に準拠して、100%伸長時の応力を測定し、100%モジュラス変化率(%)を求めた。
〔耐久性〕
各防振ゴム組成物を160℃×30分の条件でプレス加硫して試験片を作製し、JIS K 6260に準拠して屈曲試験を行い、亀裂の大きさが5mmに達するまでの屈曲回数を測定した。
Figure 2006273941
Figure 2006273941
Figure 2006273941
上記結果から、実施例品は、加工性、初期物性、熱老化物性および耐久性に優れていた。
これに対して、比較例1品は、加硫剤としてビスマレイミド化合物を含有せず、硫黄加硫剤のみを含有しているため、熱老化後の破断伸び変化率や硬度変化が大きく、ばね変化が大きいことから防振性能に劣っていた。比較例2品は、加硫剤としてビスマレイミド化合物を含有しているが、硫黄加硫剤を併用しているため、ばね変化が大きく、防振性能に劣っていた。
本発明の防振ゴム組成物は、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ等の防振材料として、好適に用いられる。

Claims (4)

  1. 下記の(A)〜(C)を必須成分とし、加硫剤として硫黄元素を含有しないことを特徴とする防振ゴム組成物。
    (A)ジエン系ゴム。
    (B)下記の一般式(1)で表されるビスマレイミド化合物。
    Figure 2006273941
    (C)加硫促進剤。
  2. 上記(C)成分の加硫促進剤が、チアゾール系加硫促進剤である請求項1記載の防振ゴム組成物。
  3. 上記チアゾール系加硫促進剤が、ジベンゾチアジルジスルフィドまたは2−(4−モルフォリノジチオ)ベンゾチアゾールである請求項2記載の防振ゴム組成物。
  4. 上記(C)成分の加硫促進剤が、チウラム系加硫促進剤である請求項1記載の防振ゴム組成物。
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