JP2006247523A - 酸素還元触媒 - Google Patents

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Abstract

【課題】 酸素の4電子還元反応活性の高い大環状有機化合物系還元触媒を提供することを目的とする。
【解決手段】 フタロシアニンやポルフィリン等の酸素還元能を有する大環状有機化合物を導電性担体に担持させた酸素還元触媒であって、次式:A=酸素還元能を有する大環状有機化合物の被覆面積/導電性担体の表面積で定義されるAが、−0.5≦logA≦1の範囲にあることを特徴とする前記酸素還元触媒。
【選択図】なし

Description

本発明は、酸素を高効率で還元するポルフィリン系化合物を用いる電極触媒に関する。
燃料電池は、水素又は炭化水素等の燃料と酸素等の酸化剤とを供給し、その酸化還元反応によって得られる化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電システムである。燃料電池において酸素(O)は還元されると、1電子還元ではスーパーオキシドが、2電子還元では過酸化水素が、そして4電子還元では水が生成することが知られている。このような燃料電池は従来の発電システムと比較してクリーンなエネルギー源として注目されており、実用化に向けて幅広く研究されている。
酸素還元触媒としては白金(Pt)やパラジウム(Pd)等を用いる貴金属系電極触媒が広く用いられている。このような貴金属系電極触媒は一般的に酸素還元活性は高いものの、経済性の点において依然として課題が残る。
一方、フタロシアニンやポルフィリン等の大環状有機化合物が酸素還元能を有することも知られており、近年ではこのような大環状有機化合物を用いる酸素還元触媒の開発も進められている(例えば、特開昭57-208073号公報、特開昭57-208074号公報、特開平11-253811号公報、特開2000-157871号公報及び特開2003-109614号公報等)。
しかしながら、従来の大環状有機化合物を用いる酸素還元触媒は、前記貴金属系電極触媒と比較すると酸素還元活性が低く、4電子還元反応よりも2電子還元反応のほうに進みやすい等の問題があり、実用レベルには程遠いものであった。このような問題を解決するものとして、出願人はメソ位が低級アルキル基であるポルフィリン錯体を用いた酸素還元電極を出願している(特願2004-206148号)。
特開昭57-208073号公報 特開昭57-208074号公報 特開平11-253811号公報 特開2000-157871号公報 特開2003-109614号公報
本発明は、酸素の4電子還元反応活性の高い大環状有機化合物系還元触媒を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、酸素還元能を有する大環状有機化合物を導電性担体に対して特定の範囲の比率で担持させることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)酸素還元能を有する大環状有機化合物を導電性担体に担持させた酸素還元触媒であって、次式:
A=ポルフィリン錯体の被覆面積/導電性担体の表面積
で定義されるAが、
−0.5≦logA≦1
の範囲にあることを特徴とする前記酸素還元触媒。
(2)大環状有機化合物が式(I):
Figure 2006247523
[式中、
各Rは、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、水酸基、ニトロ基、フェニル基若しくはシアノ基であるか、又は隣接するRどうしが一緒になって炭素数2〜6のメチレン鎖又は芳香環を形成し;
各R’は、互いに独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基であり;
Mは、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Pb、Rh、Pd、Pt、Mn、Sn、Au、Mg、Cd、Al、In、Ge、Cr及びTiからなる群より選択される金属原子であって、ここで該Mはハロゲン原子、酸素原子、−OH、窒素原子、NO又は=COと結合していてもよい。]
で表されるポルフィリン錯体である前記(1)記載の酸素還元触媒。
(3)MがCoである前記(1)又は(2)に記載の酸素還元触媒。
(4)各R’が、互いに独立して、炭素数2〜4のアルキル基である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の酸素還元触媒。
(5)導電性担体が炭素材料である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の酸素還元触媒。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の酸素還元触媒を用いる燃料電池電極触媒。
本発明により、過酸化水素抑制効果(耐ラジカル性)が高く、かつ高い酸素還元電流値が得られる酸素還元触媒が提供されるとともに、本発明の酸素還元触媒を電極として使用することにより発電効率に優れた燃料電池を提供することができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の酸素還元触媒は、酸素還元能を有する大環状有機化合物を導電性担体に対して特定の比率で担持させることを特徴とする。
酸素還元能を有する大環状有機化合物としては、例えば、特開昭57-208073号公報、特開昭57-208074号公報、特開平11-253811号公報、特開2000-157871号公報又は特開2003-109614号公報等に記載されているようなフタロシアニン系錯体及びポルフィリン系錯体等が挙げられる。
本発明では、好ましくはポルフィリン錯体が用いられ、特に、式(I):
Figure 2006247523
[式中、
各Rは、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、水酸基、ニトロ基、フェニル基若しくはシアノ基であるか、又は隣接するRどうしが一緒になって炭素数2〜6のメチレン鎖又は芳香環を形成し;
各R’は、互いに独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基であり;
Mは、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Pb、Rh、Pd、Pt、Mn、Sn、Au、Mg、Cd、Al、In、Ge、Cr及びTiからなる群より選択される金属原子であって、ここで該Mはハロゲン原子、酸素原子、−OH、窒素原子、NO又は=COと結合していてもよい。]
で表されるポルフィリン錯体が好ましい。
Rとしては、好ましくは水素原子、アルキル基である。あるいは、隣接するRどうしが一緒になって炭素数2〜6のメチレン鎖又は芳香環(例えば、ベンゼン環又はナフタレン環)を形成してもよい。
アルキル基としては、直鎖又は分枝鎖のいずれのものであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等を例示することができる。これらのアルキル基は、ハロゲン原子、アミノ基、水酸基等の置換基を有していてもよい。好ましくはR’は炭素数1〜5のアルキル基、さらに好ましくは炭素数2〜4のアルキル基である。
本発明で好ましく用いられるポルフィリン錯体は、上記のような基を有するポルフィリン骨格と金属原子MとがN4−キレート構造を形成したものである。前記金属原子Mとしては、例えば、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Pb、Rh、Pd、Pt、Mn、Sn、Au、Mg、Cd、Al、In、Ge、Cr又はTiが挙げられるが、Co、Fe等が好ましい。さらに、これらの金属原子Mには、ハロゲン原子、酸素原子、水酸基、窒素原子、NO又はCO等の配位子がさらに配位していてもよい。
本発明で使用される酸素還元能を有する大環状有機化合物は公知の製造方法により製造することができる。例えば、ポルフィリン錯体は以下のようにして製造することができる。
ポルフィリン骨格は、ピロール化合物とアルデヒド化合物とを用いて次のようにして製造できる。
Figure 2006247523
(式中、R及びR’は前記定義のとおりである。)
反応容器にピリジン等の塩基及びプロピオン酸等を加えて加温(例えば、50℃〜100℃程度)する。そこにピロール化合物とアルデヒド化合物とを添加して攪拌する。攪拌時間は反応温度にもよるが、通常1〜5時間程度である。反応終了後、反応溶液を水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液、次いで水で洗浄する。有機層を分離して硫酸マグネシウム等を用いて乾燥し、溶媒を留去する。次いで残渣を通常の精製手段、例えばクロマトグラフィー又は再結晶等により精製して、目的とするポルフィリン(I’)を得る。
次に、上記のようにして得たポルフィリン(I’)と金属原子とでキレートを形成させてポルフィリン錯体を製造する。キレートを形成させるには、所望の金属原子の塩又は錯体等とポルフィリン(I’)とを混合することにより容易に形成される。例えば、コバルトポルフィリン錯体を得るには、DMF等の溶媒にポルフィリン(I’)を添加して十分溶解させた後、これに酢酸コバルト・四水和物を添加してアルゴン雰囲気下で加熱還流し、反応混合物を通常の方法により精製することにより目的とする錯体が得られる。
次に、本発明の酸素還元触媒の製造方法について説明する。
本発明の酸素還元触媒は上記のような酸素還元能を有する大環状有機化合物を導電性担体に通常の方法により担持させることにより形成される。より詳細には、導電性担体を含むスラリーやペースト、懸濁液を調製し、それに酸素還元性大環状有機化合物を添加し、次いで濾過、洗浄及び乾燥することにより本発明の酸素還元触媒を製造することができる。この時のスラリー、ペースト又は懸濁液の溶媒(担持溶媒)としては、クロロホルム、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒やアセトニトリル、テトラヒドロフラン、単環式芳香族炭化水素溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン)、C1−6の低級アルコール(例えば、プロパノール、ブタノール)等が挙げられる。
導電性担体としては特に限定されるものではなく、例えば、導電性が良好で安価であるという理由から、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等の炭素材料が好ましい。また、導電性担体は、単位重量当たりの表面積が大きいという理由から粉末状であることが望ましい。この場合、導電性担体の粒子の粒子径は0.03μm以上0.1μm以下とすることが望ましい。さらに、導電性担体の粒子は一次粒子が連結したストラクチャー構造を形成していることが望ましい。
なお、本発明の酸素還元触媒を製造するにあたり、酸素還元能を有する大環状有機化合物と導電性担体との配合比は、導電性担体の表面積に対する大環状有機化合物の表面積の比(担持比A)が、−0.5≦logA≦1(好ましくは−0.5≦logA≦0.5)の関係を満たす範囲になるようにすることが好ましい。logAが0、即ち担持比Aが1のとき、導電性担体の表面積と大環状有機化合物の総表面積は等しく、導電性担体表面に一様に大環状有機化合物の単層が形成される。logAが0を超えると、即ち担持比Aが1を超えると、導電性担体の表面積よりも大環状有機化合物の総表面積が大きくなり、この場合、導電性担体表面に大環状有機化合物の多重層が形成される。
大環状有機化合物一分子あたりの面積は、分子内の各原子間の結合距離を基に分子の大きさを算出して求めることもできるし、あるいはコンピュータによる量子化学的計算により求めることも可能である。また、導電性担体の表面積は市販の比表面積測定装置等を用いることにより測定できる。
本発明の酸素還元触媒には大環状有機化合物の他に、他の酸素4電子還元触媒(白金又はパラジウム等の貴金属触媒)も一緒に混合して、担体に担持してもよい。
場合により、上記のようにして得られた酸素還元触媒を熱処理してもよい。熱処理は以下のようにして行うことができる。石英管内に酸素還元触媒を置き、不活性ガスを通気しながら管内の温度を上昇させる。熱処理の際、管内の気圧は、特に限定されるものではないが、例えば0.8〜1.2気圧程度の常圧付近とすることが好ましい。また、熱処理の温度としては、好ましくは400℃以上であり、さらに好ましくは500℃以上であり、特に好ましくは550℃以上である。また、熱処理の温度の上限は通常1000℃以下であり、好ましくは800℃以下であり、特に好ましくは700℃以下である。熱処理の時間は、熱処理温度にもよるが、通常は1〜40時間であり、好ましくは1〜3時間である。本発明で使用できる不活性ガスとしては、希ガス(例えば、ヘリウム、ネオン及びアルゴン等)、窒素等、及びこれらの混合気体が挙げられる。熱処理後、室温まで冷却する。
本発明の酸素還元触媒は固体高分子型燃料電池等の燃料電池の電極触媒として用いることができる。本発明の酸素還元触媒を電解質を含む液に分散し、その分散液を電解質膜に塗布、乾燥することにより、電解質膜の表面に電極触媒を有する燃料電池電極触媒とする。さらに、その触媒層の表面にカーボンクロス等を熱圧接して電極−電解質構造体としてもよい。
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に示すが、本発明の範囲は本実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1:5,10,15,20-テトラエチルポルフィリンの合成
Figure 2006247523
以下のようにして、4つのメソ位が全てエチル基で置換されたポルフィリンを合成した。
2Lのビーカーにプロピオン酸1Lとピリジン10mlを加えて90℃に加熱し、これにピロール(0.9ml、13mmol)とプロピオンアルデヒド(1.08ml、12mmol)とを10分間隔で15回添加した。反応終了後、反応溶液を冷却して吸引ろ過し、濾液を水、水酸化ナトリウム水溶液、水でそれぞれ2回ずつ洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(5cmφ×50cm)にかけてクロロホルムで溶出し、目的生成物を含む画分を集めて溶媒を留去し、得られた結晶をクロロホルム/ヘキサンから再結晶して標題の化合物を得た(270mg:収率1.3%)。生成物はUV測定(島津製作所:UV−2100)、H−NMR(JNM AL−300)及びFAB−MASS(JEOL JMS−SX102A)により同定した。
UV−vis(CHCl):λmax=417nm
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm):-2.6(s,2H、NH),2.1(t,12H、Et),5.0(q,8H、Et),9.4(s,8H、Py)。
実施例2:コバルトポルフィリン(CoTEtP)の合成
Figure 2006247523
以下のようにして、実施例1で得たテトラエチルポルフィリンを用いてコバルトポルフィリン錯体を合成した。
50mlの丸底フラスコにDMF30mlと実施例1で得たテトラエチルポルフィリン50mgとを添加して溶解させた。これに酢酸コバルト4水和物(121mg、0.486×mmol)を添加し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(5cmφ×30cm)にかけてクロロホルムで溶出し、目的生成物を含む画分を集めて溶媒を留去して標題の化合物を得た(53mg、94.0%)。生成物はUV測定(島津製作所:UV−2100)及びFAB−MASS(JEOL JMS−SX102A)により同定した。
実施例3:ポルフィリン錯体の導電性担体への担持
酸素還元能を有する大環状有機化合物としてCoTEtPを用いた。また、導電性担体としてカーボンブラックを用いた。
クロロホルム250mlにカーボンブラック(Ketjen Black)を入れ、20分間超音波をかけて分散させた。カーボンブラックのクロロホルム懸濁液をメディア型撹拌装置を用いて撹拌し(10000rpm、1.5時間)、58℃になるまで昇温した。次いで、カーボンブラックのクロロホルム懸濁液に、下記の表1に示す担持比でCoTEtP(Mw:479)を添加し、降温速度0.23℃/分で30℃まで冷却しながら3時間撹拌した。撹拌終了後、ひだ付濾紙で濾過し、濾液の色が無色になるまでクロロホルムで洗浄した。次いで、減圧乾燥(120℃、6時間、0.1MPa)し、瑪瑙乳鉢で粉砕した。最後に、不活性ガス中で5600℃で2時間熱処理して酸素還元触媒を得た。
Figure 2006247523
実施例4:電気化学的測定
実施例3で得たポルフィリン錯体(CoTEtP)担持カーボンブラックのそれぞれについて電気化学的測定(E1/2(V vs SCE)、Ik(mA/cm2)及びn(-))を行った。
修飾電極の作製
電極としてエッジ面パイロリティックグラファイト電極(半径:3.00mm、面積0.28cm)を使用した。電極を耐水研磨紙(1000番)で研磨して前処理し、次いでイオン交換水中で超音波洗浄した。実施例4で作製したポルフィリン錯体担持カーボンブラック10mgをナフィオン(登録商標)の5重量%溶液1.25mlに分散させた。この溶液の20μlを分取して電極表面にキャストした。
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定による酸素還元特性の評価
CV測定により各種修飾電極の酸素還元特性を評価した。測定は室温において酸素又はアルゴン雰囲気下で行い、第一回目の掃引を記録した。具体的な測定条件は以下のとおりである。
使用装置:ポテンショスタット(日厚計測 DPGS−1)
ファンクションジェネレーター(日厚計測 NFG−5)
X−Yレコーダー(理研電子 D−72DG)
セル溶液:1.0M HClO
作用極 :修飾電極
参照極 :飽和カロメル電極(SCE)
対 極 :白金電極
掃引速度:100mV/s
掃引範囲:600〜−600mV
回転ディスク電極(RDE)測定による酸素還元反応の拡散限界電流値の測定
電極を回転させることによって、その時のディスク電流により酸素還元反応の拡散限界電流値を評価した。測定は室温において酸素雰囲気下で行った。測定条件は以下のとおりである。
使用装置:ポテンショスタット(日厚計測 DPGS−1)
ファンクションジェネレーター(日厚計測 NFG−5)
X−Yレコーダー(理研電子 D−72DG)
セル溶液:1.0M HClO
作用極 :修飾電極
参照極 :飽和カロメル電極(SCE)
対 極 :白金電極
掃引速度:5mV/s
掃引範囲:600〜−600mV
電極回転速度:100、200、400、600、900、1000及び2500rpmから4〜5種類
上記の電気化学的測定により求められた各ポルフィリン錯体修飾電極についてのE1/2(V vs SCE)、Ik(mA/cm2)及びn(-)の結果を図1及び2に示す。
図1において「E1/2(V vs SCE)」は還元開始電位を示し、本発明の酸素還元触媒を用いた場合、−0.5≦logA≦1.0となる担持比において、還元開始電位が向上していることが分かる。また、酸素還元電流値Ik(mA/cm2)もこの範囲の担持比において顕著に増加していることが分かる。
「n(-)」は酸素一分子あたりについての酸素還元反応に費やされた電子数の平均値である。従って、酸素4電子還元のみが起これば反応電子数n=4となって酸素は水まで還元され、2電子還元反応のみが起これば反応電子数n=2となって酸素は過酸化水素までしか還元されない。実際の酸素還元反応では酸素2電子還元反応と酸素4電子還元反応との両方が起こり、nは2〜4の間の数値となる。燃料電池等に用いられる酸素還元触媒としては酸素4電子還元反応の選択性が高い触媒、即ちnの値が4に近いものであるほど好ましい。
図2に示した結果から明らかなように、本発明の酸素還元触媒では、−0.5≦logA≦1.0となる担持比においてnは4に近い値を示しており、過酸化水素抑制効果(耐ラジカル性)が高く、効率的に酸素4電子還元反応が行われていることがわかる。
本発明で用いられるポルフィリン錯体は高い酸素4電子還元活性を有し、燃料電池の電極触媒等として有用である。
本発明の酸素還元触媒を用いた電極の担持比と還元開始電位及び酸素還元電流との関係を示す図である。 本発明の酸素還元触媒を用いた電極の担持比と酸素還元活性n(-)との関係を示す図である。

Claims (6)

  1. 酸素還元能を有する大環状有機化合物を導電性担体に担持させた酸素還元触媒であって、次式:
    A=酸素還元能を有する大環状有機化合物の被覆面積/導電性担体の表面積
    で定義されるAが、
    −0.5≦logA≦1
    の範囲にあることを特徴とする前記酸素還元触媒。
  2. 大環状有機化合物が式(I):
    Figure 2006247523
    [式中、
    各Rは、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、水酸基、ニトロ基、フェニル基若しくはシアノ基であるか、又は隣接するRどうしが一緒になって炭素数2〜6のメチレン鎖又は芳香環を形成し;
    各R’は、互いに独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基であり;
    Mは、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Pb、Rh、Pd、Pt、Mn、Sn、Au、Mg、Cd、Al、In、Ge、Cr及びTiからなる群より選択される金属原子であって、ここで該Mはハロゲン原子、酸素原子、−OH、窒素原子、NO又は=COと結合していてもよい。]
    で表されるポルフィリン錯体である請求項1記載の酸素還元触媒。
  3. MがCoである請求項1又は2記載の酸素還元触媒。
  4. 各R’が、互いに独立して、炭素数2〜4のアルキル基である請求項1〜3のいずれか1項記載の酸素還元触媒。
  5. 導電性担体が炭素材料である請求項1〜4のいずれか1項記載の酸素還元触媒。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の酸素還元触媒を用いる燃料電池電極触媒。
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