JP2006244814A - 燃料電池システム及び固体高分子型燃料電池の運転方法 - Google Patents

燃料電池システム及び固体高分子型燃料電池の運転方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 実用的であり、電池性能が高く、かつ、耐久性に優れた燃料電池システム及び固体高分子型燃料電池の運転方法を提供すること。
【解決手段】 本発明に係る燃料電池システム10は、固体高分子電解質膜の両面に燃料極及び空気極が接合された膜電極接合体を備えた固体高分子型燃料電池20と、固体高分子型燃料電池20に水及び/若しくは水蒸気を供給し、並びに/又は、固体高分子型燃料電池20から排出される水及び/若しくは水蒸気を回収するための加湿経路70と、加湿経路70のいずれかに、自ら過酸化物又は過酸化物ラジカルと反応することによって、過酸化物を安定化させ又は過酸化物ラジカルを消滅させる機能を有する犠牲剤を供給する犠牲剤供給手段とを備えている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料電池システム及び固体高分子型燃料電池の運転方法に関し、さらに詳しくは、車載用動力源、定置型小型発電器、コジェネレーションシステム等として好適な燃料電池システム及び固体高分子型燃料電池の運転方法に関する。
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体(MEA)を基本単位とする。また、固体高分子型燃料電池において、電極は、一般に、拡散層と触媒層の二層構造をとる。拡散層は、触媒層に反応ガス及び電子を供給するためのものであり、カーボンペーパー、カーボンクロス等が用いられる。また、触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、一般に、白金等の電極触媒を担持したカーボンと固体高分子電解質(触媒層内電解質)との複合体からなる。
このようなMEAを構成する電解質膜あるいは触媒層内電解質には、耐酸化性に優れた全フッ素系電解質(高分子鎖内にC−H結合を含まない電解質。例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成(株)製)、フレミオン(登録商標、旭硝子(株)製)等。)を用いるのが一般的である。
また、全フッ素系電解質は、耐酸化性に優れるが、一般に極めて高価である。そのため、固体高分子型燃料電池の低コスト化を図るために、炭化水素系電解質(高分子鎖内にC−H結合を含み、C−F結合を含まない電解質)、又は部分フッ素系電解質(高分子鎖内にC−H結合とC−F結合の双方を含む電解質)の使用も検討されている。
しかしながら、固体高分子型燃料電池を車載用動力源等として実用化するためには、解決すべき課題が残されている。例えば、炭化水素系電解質は、全フッ素系電解質に比べて安価であるが、過酸化物ラジカルにより劣化しやすいという問題がある。
また、電極反応を効率よく進行させるためには、触媒層内に電極触媒、電解質及び反応ガスが共存する三相界面を確保する必要がある。しかしながら、特にカソード側では、電極反応により生成した水あるいは反応ガスに含まれる水によって三相界面が閉塞する、いわゆるフラッディングが生じ、反応効率が低下しやすいという問題がある。
さらに、固体高分子型燃料電池を安定に作動させるためには、電解質膜を適度な湿潤状態に保つ必要がある。そのため、固体高分子型燃料電池においては、一般に、反応ガスへの加湿が行われている。しかしながら、燃料電池の温度が0℃以下になると、MEA内で水が凍結してMEAを損傷させたり、あるいは、始動時において、反応ガスに含まれる水又は電極反応により生成した水がガス流路内で凍結することによってガス流路が閉塞し、発電継続が困難になる場合がある。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、炭化水素系電解質に酸化マンガン、酸化ルテニウム、酸化イリジウム等の遷移金属酸化物微粒子を分散させた高耐久固体高分子電解質が開示されている。同文献には、炭化水素系電解質膜中に酸化ルテニウム等を分散させることによって、膜の耐酸化性が向上する点が記載されている。
また、特許文献2には、炭化水素系固体高分子電解質膜に、酸化マンガン、酸化ルテニウム等の遷移金属酸化物触媒、あるいは、鉄フタロシアニン、銅フタロシアニン等の大環状金属錯体触媒を添加した固体高分子電解質膜が開示されている。同文献には、炭化水素系電解質に遷移金属酸化物触媒あるいは大環状金属錯体触媒を添加すると、電極反応の副反応により生じた過酸化水素が遷移金属酸化物触媒あるいは大環状金属錯体触媒によって分解され、炭化水素系電解質の耐酸化性が向上する点が記載されている。
また、特許文献3には、燃料電池を摂氏0度以下の状態で始動及び/又は停止させるときに、水の凝固点を降下させる化学物質(例えば、アルコール類)をカソードに供給する発電システムが開示されている。同文献には、始動及び/又は停止時に、カソードにアルコール類を供給することによって、発電により生成した水の凝固点が降下し、生成水の凍結を防止できる点が記載されている。
また、特許文献4には、触媒及び含フッ素イオン交換樹脂をアルコール類に分散又は溶解させることにより得られる粘性混合物を、イオン交換膜の表面又はシート状の基材に塗布するガス拡散電極の製造方法が開示されている。同文献には、粘性混合物の粘度が大きくなると、電極が触媒密度の大きい多孔体となり、触媒が効果的に働く点が記載されている。
また、特許文献5には、固体高分子型燃料電池を運転状態から停止させる場合において、燃料電池の温度が水の凝固点以下に下がる前に数秒間乾燥ガスを流すとともに、アノードに低凝固点の溶液を充填する固体高分子型燃料電池の運転方法が開示されている。同文献には、このような構成を採用することによって、凍結によるMEAの損傷、及び、再運転の際における性能低下を抑制できる点が記載されている。
また、特許文献6には、イミド系の素材で構成された中空糸膜によって気体中に含まれる水分を分離して、固体高分子型燃料電池に供給する燃料ガスを加湿する加湿器が開示されている。同文献には、中空糸膜を多価アルコールに浸漬処理することによって、耐凍結性が向上する点が記載されている。
また、特許文献7には、固体高分子電解質に対して非浸食性を備えた非水溶液(例えば、N−メチルアセトアミドなど)を、触媒層及び固体高分子電解質に含浸させた固体高分子型燃料電池が開示されている。同文献には、非水溶液として、水以下の凝固点を有する有機溶媒を用いると、水の凝固点以下の温度においても電池を運転できる点が記載されている。さらに、特許文献8には、フッ素系高分子電解質を保護する犠牲剤として、ラウリルアルコールを触媒層に添加したり、あるいは、燃料ガスに1%のメタノールを添加した例が記載されている。
特開2001−118591号公報 特開2000−106203号公報 特開2004−172049号公報 特開2004−126739号公報 特開2003−187847号公報 特開2002−289228号公報 特開2002−110192号公報 特開2003−109623号公報
Pt、Ru、Ir、Rh等の貴金属又はこれらの酸化物は、過酸化物を分解させる作用を有している。そのため、これらの粉末を炭化水素系電解質又は部分フッ素系電解質に添加すると、過酸化物ラジカルの発生が抑制され、耐酸化性を向上させることができる。しかしながら、貴金属は資源量が少なく、高価であるので、この方法は実用的ではない。
一方、大環状金属錯体や遷移金属酸化物は、過酸化水素を分解する作用があり、しかも、貴金属に比べて安価であるが、電子伝導性は低い。そのため、MEAの耐久性を向上させるためにこれらの化合物を電極に多量に添加すると、内部抵抗あるいは接触抵抗の上昇を招き、電池性能が低下するという問題がある。
また、全フッ素系電解質は、従来、過酸化物ラジカルに対する耐性が高く、過酸化物ラジカルが共存する環境下において長期間使用した場合であっても、劣化しないと考えられていた。しかしながら、本願発明者らは、全フッ素系電解質といえども、燃料電池の作動条件下で長時間使用すると、経時劣化することを見出した。そのため、要求される耐酸化性のレベルが高い用途に対しては、電解質の耐久性をさらに向上させることが望まれている。
さらに、過酸化物ラジカルが生成しやすい環境下であっても、生成した過酸化物ラジカルと電解質膜及び/又は触媒層内電解質とが反応する前に、過酸化物又は過酸化物ラジカルを消滅させることができれば電解質の劣化を抑制できると考えられる。しかしながら、特許文献8には、触媒層にラウリルアルコールを添加する例が開示されているが、長期間の犠牲作用を維持するためには、触媒層にラウリルアルコールを多量に添加する必要がある。また、多量に添加しても、ラウリルアルコールは低級アルコールより比較的水に難溶ではあるが、電池の作動中に徐々に溶出し、犠牲剤の効果は短寿命である。さらに、多量の添加は、電子伝導性の低下や触媒表面を覆い電池性能の低下を招く。また、犠牲剤として燃料ガスにメタノールを添加する例も開示されているが、我々の検討によれば、その効果は不十分なものであった。
また、過酸化物ラジカルは、触媒層及び拡散層に含まれる炭素材料を劣化させる場合がある。しかしながら、炭素材料の劣化を積極的に抑制するための手段が提案された例は、従来にはない。
本発明が解決しようとする課題は、実用的であり、電池性能が高く、かつ、耐久性に優れた燃料電池システム及び固体高分子型燃料電池の運転方法を提供することにある。また、本発明が解決しようとする他の課題は、全フッ素系電解質を用いた燃料電池システム及び固体高分子型燃料電池の運転方法において、全フッ素系電解質の耐久性を向上させることにある。さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、過酸化物ラジカルによる炭素材料の劣化を抑制することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る燃料電池システムは、固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体を備えた固体高分子型燃料電池と、該固体高分子型燃料電池に水及び/若しくは水蒸気を供給し、並びに/又は、前記固体高分子型燃料電池から排出される水及び/若しくは水蒸気を回収するための加湿経路と、該加湿経路のいずれかに、自ら過酸化物又は過酸化物ラジカルと反応することによって、過酸化物を安定化させ又は過酸化物ラジカルを消滅させる機能を有する犠牲剤を供給する犠牲剤供給手段とを備えていることを要旨とする。
また、本発明に係る固体高分子型燃料電池の運転方法は、固体高分子型燃料電池に水及び/若しくは水蒸気を供給し、並びに/又は、前記固体高分子型燃料電池から排出される水及び/若しくは水蒸気を回収するための加湿経路のいずれかに、自ら過酸化物又は過酸化物ラジカルと反応することによって、過酸化物を安定化させ又は過酸化物ラジカルを消滅させる機能を有する犠牲剤を供給する犠牲剤供給工程を備えていることを要旨とする。
加湿経路のいずれかに、過酸化物を安定化させ又は過酸化物ラジカルを消滅させる機能を有する犠牲剤を供給すると、電極で副生した過酸化水素又はこれがラジカル分解することにより生ずる過酸化物ラジカルの少なくとも一部は、電解質膜及び/又は触媒層内電解質よりも先に犠牲剤を攻撃する。そのため、過酸化物ラジカルによる電解質膜及び/又は触媒層内電解質の劣化を抑制することができる。さらに、犠牲剤としてある種の有機物を用いると、炭素材料の劣化に起因する電池性能の低下を抑制することができる。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。図1に、燃料電池システムの一例を示す。図1において、燃料電池システム10は、固体高分子型燃料電池20と、燃料ガス供給装置30と、酸化剤ガス供給装置50と、加湿経路70とを備えている。
固体高分子型燃料電池20は、図示はしないが、固体高分子電解質膜の両面に電極(燃料極、空気極)が接合された膜電極接合体(MEA)と、MEAの両面を挟持するセパレータとを備えている。セパレータのMEA側表面には、燃料ガス又は酸化剤ガスを電極に供給するためのガス流路が設けられている。固体高分子型燃料電池20は、一般に、このようなMEAとセパレータからなるユニットセルが複数個積層されたものからなる。
燃料ガス供給装置30から供給される燃料ガス(例えば、水素ガス)は、吸気マニホールド(図示せず)を介して各MEAの燃料極側に分配され、各燃料極から排出されるガスは、排気マニホールド(図示せず)を介して排出されるようになっている。同様に、酸化剤ガス供給装置50から供給される酸化剤ガス(例えば、空気)は、吸気マニホールド(図示せず)を介して各MEAの空気極側に分配され、各空気極から排出されるガスは、排気マニホールド(図示せず)を介して排出されるようになっている。
さらに、固体高分子型燃料電池20には、その運転状態の監視・制御を行うための各種センサ(例えば、電圧測定装置22、温度測定装置24等)が設けられている。
MEAを構成する固体高分子電解質膜には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマや、各種炭化水素系電解質が用いられる。電極は、一般に、固体高分子電解質膜の表面に接合された触媒層と、その外側に接合された拡散層の二層構造をとる。拡散層は、一般に、カーボンペーパ、カーボンクロス等からなり、触媒層は、一般に、白金等の電極触媒を担持したカーボンと固体高分子電解質(触媒層内電解質)との複合体からなる。触媒層内電解質は、一般に、固体高分子電解質膜と同一の材料が用いられるが、異なる材料を用いても良い。さらに、セパレータには、一般にカーボンが用いられるが、Ti、ステンレス鋼、Sn合金等の金属材料の使用も検討されている。
燃料ガス供給装置30は、吸気系統と排気系統とを備えている。吸気系統は、燃料ガスである水素を貯蔵する水素ボンベ32と、水素ボンベ32と固体高分子型燃料電池20の燃料極側の吸気マニホールド(図示せず)とを繋ぐ水素吸気管34aとを備えている。水素吸気管34aには、水素ボンベ32から水素吸気管34aに流入する水素ガスの圧力を調整するための圧力調整バルブ34bと、燃料極側に供給される水素量を調節するための水素吸気バルブ34cが設けられている。
燃料ガス供給装置30の排気系統は、固体高分子型燃料電池20の燃料極側の排気マニホールド(図示せず)に繋がれた水素排気管36aと、水素排気管36aを介して排出される排ガスに含まれる水を分離するための水素気液分離器38と、水素オフガスを再循環して使うために、オフガスを昇圧するための水素ポンプ40とを備えている。
水素ポンプ40の下流側には、背圧を調整するためのバルブ36bが設けられている。水素ポンプ40及びバルブ36bを介して排出された排ガスは、空気極側の排ガスによって希釈され、大気中に排出されるようになっている。
また、水素気液分離器38には配水管40aが繋がれ、配水管40aにはこれを開閉するための開閉バルブ40bが設けられている。水素気液分離器30は、排ガスから分離された水を配水管40aから系外に排出する構造になっている。
さらに、水素吸気管34aの圧力調整バルブ34b−水素吸気バルブ34c間と、水素排気管36aの水素ポンプ40−バルブ36b間とは、逆止弁42bを備えた連結管42aで繋がれている。SUS製の逆止弁42bは、排気側からの大気の混入を防止するためのものである。
酸化剤ガス供給装置50は、吸気系統と排気系統とを備えている。吸気系統は、固体高分子型燃料電池20の空気極側の吸気マニホールド(図示せず)に繋がれた空気吸気管52と、空気吸気管52に流入した空気を加湿するための加湿器54と、加湿された空気を所定の圧力に加圧するための空気圧縮機56とを備えている。
酸化剤ガス供給装置50の排気系統は、固体高分子型燃料電池20の空気極側の排気マニホールド(図示せず)に繋がれた空気排気管58と、空気排気管58を介して排出される排ガスに含まれる水分を分離する空気気液分離器60とを備えている。水分が分離された空気極側の排ガスは、希釈水素の排気系に導かれるようになっている。
空気気液分離器60には、回収管62aを介して加湿器54に繋がれている。空気気液分離器60は、排ガスから分離された水を回収管62aに排出する構造になっている。また、回収管62aには、空気気液分離器60の水を加湿器54側又は排水側に切り替えるための三方弁62bと、回収管62aを開閉するための開閉バルブ62cが設けられている。
加湿経路70は、固体高分子型燃料電池20に水及び/若しくは水蒸気を供給し、並びに/又は、個体高分子型燃料電池20から排出される水及び/若しくは水蒸気を回収するためのものである。図1に例示する燃料電池システム10においては、加湿経路70は、空気吸気管52、加湿器54、空気圧縮機56、固体高分子型燃料電池20、空気排気管58、空気気液分離器60、回収管62a、三方弁62b、及び、開閉バルブ62cによって構成されている。
なお、図1に示す燃料電池システムにおいて、回収管62a及び開閉バルブ62cを省略しても良い。この場合、加湿経路70は、酸化剤ガス供給装置50の吸気系統及び固体高分子型燃料電池20のみにより構成される。
また、図1に示す燃料電池システム10において、水素吸気管34aのいずれかに、燃料ガスを加湿するための加湿器を設けてもよい。この場合、水素吸気管34a及び燃料極側の加湿器、並びに、水素吸気管34aに設けられた各種バルブは、加湿経路70の構成要素となる。
また、図1に示す燃料電池システム10において、燃料極側から排出される水を回収し、固体高分子型燃料電池20の加湿に用いるための循環経路を設けてもよい。この場合、燃料ガス供給装置30の吸気系統に加えて、排気系統の一部(例えば、水素排気管36a、水素気液分離器38、開閉バルブ40b、水素ポンプ40など)も、加湿経路70の構成要素となる。
さらに、図1に示す燃料電池システム10において、燃料源として水素ボンベ32を用いているが、これに代えて改質器システムを用いても良い。同様に、酸化剤ガスとして、空気を用いているが、これに代えて酸素や酸素+窒素の混合ガスを用いても良い。
加湿経路70の各構成要素には、目的に応じて、ステンレス鋼、Ti合金、Pb合金、セラミック材料、ガラス、耐熱エンジニアリングプラスチックス(例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂など)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PFA、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)など)等の各種の材料が用いられている。
本発明は、上述した燃料電池システム10において、加湿経路70のいずれかに、犠牲剤を供給する犠牲剤供給手段を備えていることを特徴とする。
本発明において、「犠牲剤」とは、自ら過酸化物又は過酸化物ラジカルと反応することによって、過酸化物を安定化させ又は過酸化物ラジカルを消滅させる機能を有するものをいう。電解質膜及び触媒層内電解質の劣化を抑制し、固体高分子型燃料電池の耐久性を向上させるためには、犠牲剤は、以下のような条件を備えているものが好ましい。
第1に、犠牲剤は、過酸化物又は過酸化物ラジカルとの反応性が固体高分子電解質膜及び触媒層内電解質より高いものが好ましい。過酸化物又は過酸化物ラジカルとの反応性が高い犠牲剤を用いると、固体高分子電解質膜及び/又は触媒層内電解質が攻撃されるより前に犠牲剤が攻撃される確率が高くなるので、少量の添加で固体高分子型燃料電池20の耐久性を向上させることができる。
第2に、犠牲剤は、固体高分子型燃料電池20の作動温度において、液体又は気体であるものが好ましい。燃料電池の作動温度において液体又は気体である犠牲剤を用いると、加湿経路70への犠牲剤の供給が容易化する。
なお、作動温度で固体であるものは、水溶性であることが好ましい。具体的には、作動温度における水に対し、0.01wt%以上溶解させることができるものが好ましい。この場合、運転停止時に水に溶解していた犠牲剤が触媒層や拡散層で析出し、電池性能に悪影響を及ぼさないように、過大な添加は避けるべきである。特に、(1)適時純水加温に切り替えて、MEAを洗浄する、(2)高負荷運転時に犠牲剤の添加を止め、生成水によって系外に排出する、等の施策をとることが好ましい。
第3に、犠牲剤は、ベンゼン環及び/又はハロゲンを含まない有機物が好ましい。ベンゼン環及び/又はハロゲンを含む有機物であっても、犠牲剤として機能するものがある。しかしながら、これらは、一般に、環境に対する負荷が大きいものが多い。従って、過酸化物又は過酸化物ラジカルとの反応に消費されなかった犠牲剤をそのまま大気中に放出するタイプ(開放型)の燃料電池システムにおいては、環境に対する負荷が相対的に小さい有機物(すなわち、ベンゼン環及び/又はハロゲンを含まない有機物)を用いるのが好ましい。
第4に、犠牲剤は、酸素、窒素又は硫黄を含む有機物が好ましい。酸素、窒素又は硫黄を含む有機物は、一般に、これらを含まない有機物に比べて過酸化物又は過酸化物ラジカルとの反応性が高いので、相対的に少量の添加で、固体高分子型燃料電池20の耐久性を大幅に向上させることができる。特に、酸素を含む有機物は、反応性が高いことに加えて、環境に対する負荷が小さいものが多いので、犠牲剤として好適である。
第5に、犠牲剤は、過酸化物又は過酸化物ラジカルとの反応で生成した劣化生成物が、固体高分子電解質膜及び/又は触媒層内電解質を再び攻撃せず、再度、過酸化物又は過酸化物ラジカルを消滅させる働きを持つものが好ましい。後述するように、メタノール及びギ酸は、劣化生成物が固体高分子電解質膜及び/又は触媒層内電解質を攻撃すると考えられるので、犠牲剤として用いるのは好ましくない。
第6に、犠牲剤は、過酸化物又は過酸化物ラジカルとの反応によりCOを生成しやすいものが好ましい。燃料電池を長期間運転すると、MEAに含まれる炭素材料の表面が酸化されることによって親水化し、あるいは、炭素材料がガス化して消耗し、電池性能が低下する。これに対し、犠牲剤としてCOが生成しやすいものを用いると、電極近傍のCO分圧が高くなり、炭素材料の劣化・消耗を抑制することができる。
このような犠牲剤としては、
(1) 炭化水素類、アルコール類、カルボン酸類、アミノ酸類、アミノカルボン酸類、アミノスルホン酸類、糖類、脂肪族アルデヒド類、テルペン類、
(2) 含硫黄有機化合物、
(3) 含酸素有機化合物、
などがある。
炭化水素類には、メタン(CH)、エタン(C)、プロパン(CH8)、ブタン(C10)、ペンタン(C12)、ヘキサン(C14)、ヘプタン(C14)、オクタン、イソオクタン(C18)、シクロヘキサン(C12)、イソプレン(C)、オクテン(C16)、ヘプテン(C14)、ヘキセン(C12)、シクロヘキセン(C10)などがある。
アルコール類には、
(1) エタノール(COH)、イソプロパノール((CH)CHOH)、n−プロパノール(CCHOH)、t−Buアルコール、n−Buアルコール(COH)、イソアミルアルコール((CH)CH(CH)OH)、n−へキサノール(C13OH)、シクロヘキサノール(C11OH)、n−ヘプタノール(CH(CH)OH)、n−オクタノール(CH(CH)OH)等のC2〜C8の1価アルコール、
(2) エチレングリコール(HOCHCHOH)、プロピレングリコール(CHCHOHCHOH)、1,6ヘキサンジオール(HO(CH)OH)、ジエチレングリコール(HO(CH)O(CH)OH)、ポリエチレングリコール(HO(CHCHO)H)、ポリプロピレングリコール(HO[CHCH(CH)O]H)、PE(ペンタエリストロール、C(CHOH))、TMP(トリメチロールプロパン、CHCHC(CHOH))、NPG(ネオペンチルグリコール、HOCHC(CH)CHOH)、1,4−シクロヘキサンジメタノール(HOCHCHOH)、マンニトール(HOCH(CHOH)CHOH)、グリセリン(CH(OH)CH(OH)CH(OH))、ソルビトール(HOCH(CHOH)CHOH)等の多価アルコール、
などがある。
カルボン酸類には、
(1) 酢酸(CHCOOH)、プロピオン酸(CHCHCOOH)、酪酸(CH(CH)COOH)等のC2以上の1価カルボン酸、
(2) シュウ酸((COOH))、マロン酸(CH(COOH))、フマール酸((CH)(COOH))、コハク酸((CH)(COOH))、グルタル酸((CH)(COOH)2)、アジピン酸((CH)(COOH))、ピメリン酸((CH)(COOH))、スベリン酸((CH)(COOH))、アゼライン酸((CH)(COOH))、セバシン酸((CH)(COOH))等の多価カルボン酸、
(3) 乳酸(CHCH(OH)COH)、クエン酸(HOCCHC(OH)(COH)CHCOH)、リンゴ酸(HOCCHCH(OH)COH)、酒石酸(HOCCH(OH)CH(OH)COH)等のヒドロキシカルボン酸、
などがある。
アミノ酸類には、アラニン(CNO)、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、トレオニン、アルギニン、ヒスチジン(スレオニン)、グリシン(CNO)、リジン、メチオニン、シスチン、イソロシイシン、ロイシン、プロリン、バリンなどがある。
アルミノカルボン酸のキレートには、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、NTA(ニトリロトリ酢酸)、CyDTA(トランス、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、EGTA(グリコールエーテルジアミン四酢酸)、TTHA(トリエチレンテトラミン六酢酸)、HIDA(ヒドロキシエチルイミノ二酢酸)、HEDTA(ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸)などがある。
キレート剤は化学的な安定性が比較的大きく、生物による分解が困難で環境負荷が大きい。そこで、GLDA(L−グルタミン酸二酢酸)、L−アスパラギン酸二酢酸、MGDA(メチルグリシン二酢酸)等の生分解性に優れるキレート剤が特に好ましい。これらキレート剤には、犠牲剤として働く作用の他に、Fe2+、Fe3+イオンに配位安定化(キレート化)し、・OHラジカルの生成速度を低下させる作用があるため、極少量の添加で電解質を保護する作用を有する。
アミノスルホン酸類には、タウリンなどがある。
糖類には、
(1)グルコース、フルクトース、ガラクトース等の6炭糖(C(HO))、
(2)スクロース(ショ糖)、マルトース、ラクトース、トレハロース等の二糖類、などがある。
脂肪族アルデヒドには、アセトアルデヒド、アニスアルデヒド、シトラールなどがある。
テルペン類には、α−イオノン、β−イオノン、ミント、ミルセン、ゲラニオール、リモネン、カルヴォン、カンファー、ピネン等のモノテルペン(unit monoterpenes C1016)、及び、α−テルピネオール、L−メンニトール等のアルコール、ヒノキチオールなどがある。
含硫黄有機化合物には、チオフェン(CS)、スルホラン(CSO)、テトラヒドロチオフェン(THT)、tert−ブチルメルカプタン(TBM)、硫化ジメチル(DMS)、硫化ジエチル(DES)、硫化アリルなどがある。
含酸素有機化合物には、エーテル類、エステル類、ケトン類、尿素類、アスコルビン酸などがある。
エーテル類には、
(1) ジメチルエーテル(CHOCH)、ジエチルエーテル(COC)、ジメトキシメタン(MeOCHOMe)、ジメトキシエタン(MeOCOMe)、ジエトキシエタン(COCOC)、イソプロピルエーテル([(CH)CH]O)、
(2) エチレングリコールモノメチルエーテル(CHOCHCHOH)、エチレングリコールモノエチルエーテル(COCHCHOH)、エチレングリコールモノブチルエーテル(COCHCHOH)、
(3) テトラヒドロフラン(CO)、メチルテトラヒドロフラン(C10O)、
(4) ジエチレングリコールモノメチルエーテル(DEGME、CHO(CHCHO)H)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(TEGME、CHO(CHCHO)H)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGEE、CO(CHCHO)H)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(TEGEE、CO(CHCHO)H)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE、CO(CHCHO)H)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGBE、CO(CHCHO)H)、
(5) ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、
などがある。
エステル類には、
(1) メチルホーメート(HCOOCH)、メチルアセテート(CHCOOCH)、メチルプロピオネート(CCOOCH)、エチルホーメート(HCOOC)、エチルアセテート(CHCOOC)、イソプロピルホーメート(HCOOC)、イソアミルアセテート(CHCOO(CH)CH(CH))、n−アミルアセテート、2−イソペンテニルアセテート、エチルプロピオネート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート(CHCOOCHCH(CH))、エチルイソブチレート、アミルプロピオネート、エチルカプロエート、アミルブチレート、エチルカプリレート、ヘキシルブチレート、エチルブチレート、エチルバレレート等の鎖状エステル、
(2) γ−ブチルラクトン(BL)、アセチルブチルラクトン(ABL)、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン(DL)、δ−ヘプタラクトン(HL)等のラクトン(環状エステル)、
(3) DMC(ジメチルカーボネート)、DEC(ジエチルカーボネート)、DPC(ジプロピルカーボネート)、DBC(ジブチルカーボネート)、EMC(エチルメチルカーボネート)、VC(ビニレンカーボネート)、炭酸ビニルエチレン、オルト炭酸テトラエチル等の鎖状炭酸エステル、
(4) MC(メチルカーボネート)、EC(エチルカーボネート)、PC(プロピレンカーボネート)等の環状炭酸エステル、
などがある。
ケトン類には、アセトン(CHCOCH)、メチルエチルケトン(CHCOC)、ジエチルケトン(CCOC)、メチルプロピルケトン(CH(CH)COCH)、ジブチルケトン(CCOC)等の低級アルキルケトンなどがある。
尿素類には、尿素(NHCONH)、アセチル尿素、1,3ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,ブチル−3,3−ジメチル尿素、tert−ブチル尿素、シクロヘキシル尿素、1,1−ジエチル尿素、1,3−ジメチル尿素、エチレン尿素、ヒドロキシ尿素、n−プロピル尿素、N−アセチルチオ尿素、N−ブチル尿素、N,N’−ジシクロヘキシル尿素、N,N’−ジメチル尿素、N−イソブチル尿素、テトラメチル尿素、エチル尿素、エチレン尿素、及びこれらの誘導体がある。
これらの犠牲剤は、それぞれ、単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
これらの中でも、アルコール類は、安価であり、取り扱いも容易であるので、犠牲剤として好適である。また、アルコール類の中でも、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のC2〜C8の1価アルコールは、その毒性及び環境負荷も小さく、容易に過酸化物ラジカルと反応するので、犠牲剤として特に好適である。さらに、C2〜C8の1価アルコール及び多価アルコールは、水への溶解度が相対的に高く、水中でのラジカルとの反応性が高いことに加え、ラジカルとの反応により生成した劣化生成物による電解質の攻撃が生じにくいので、犠牲剤として好適である。
また、上述した各種有機物の中でも含酸素有機化合物、中でも、エーテル類、エステル類(特に、炭酸エステル類、ラクトン類)、ケトン類、及び、尿素類は、中性分子であり、分子内にCO結合を含み、電極上で速やかに分解されてCOを生成するため、加湿系に添加する犠牲剤として好適である。なお、CO結合を含むカルボン酸(ギ酸、酢酸)は、COを供給するソースとしては、臭気、腐食性、毒性の観点から有機炭酸エステル、ラクトン類及びケトン類に比べて使用に難がある。また、ギ酸は、電解質の劣化を促進させる作用があるので、犠牲剤として用いるのは好ましくない。
有機炭酸エステルは、その構造から鎖状エステル、環状エステルに大別され、アルコールと結合する酸の種類に応じて、炭酸エステル、硝酸エステル、硫酸エステル等に分類されるが、本用途に適するものとしては、溶解度が大きく融点が低い低級環状エステル及び炭酸エステル、あるいは、それらの誘導体が好ましい。アルキル基の炭素数は、2〜5が好ましく、さらに好ましくは、2〜3である。芳香族化合物(アリル基、フェノール基、ナフチル基、ナフトール基等)は、環境負荷が大きいこと、及び、これらの分解生成物にも環境負荷が大きいものがあることから、上記誘導体の構成分子として含まないことが好ましい。アルキル基の炭素数が6を超えると、融点が非常に高くなり、加湿系への供給に難がある。
なお、アルキル基の炭素数が1の場合、
(1)分解生成物としてメタノールやギ酸を生成し、腐食性が大きいこと、
(2)これらに起因するラジカル活性が比較的大きく、電解質を攻撃しやすいこと、及び、
(3)メタノールやギ酸の分解がCO止まりになり、触媒を被毒するおそれがあること、
から、アルキル基の炭素数は、1でないこと(2以上であること)が好ましい。
さらに、尿素類は、COに加えて、分解生成するNHが水のpH低下を防ぎ、過酸化物のイオン分解速度を上げて、・OHラジカルによる炭素材料及び電解質へのアタックを抑制する利点がある。
犠牲剤供給手段の構造及び設置する位置は、特に限定されるものではなく、過酸化物又は過酸化物ラジカルと犠牲剤とが効率よく反応し、固体高分子電解質及び/又は触媒層内電解質の劣化を抑制できるものであればよい。犠牲剤供給手段には、具体的には、以下のようなものがある。
犠牲剤供給手段の第1の具体例は、電極(燃料極又は空気極)に供給される反応ガスの少なくとも一方に、犠牲剤のガス、蒸気又はミストを供給するものである。
過酸化物は、主として、空気極側で発生すると考えられているので、酸化剤ガスに犠牲剤を添加すると、効率よく過酸化物又は過酸化物ラジカルを消滅させることができる。また、過酸化物は、酸素が燃料極側にクロスオーバーすることによって燃料極側においても発生すると考えられているので、酸化剤ガスに代えて又はこれに加えて、燃料ガスに犠牲剤を供給しても良い。
例えば、図1に示す燃料電池システム10において、酸化剤ガス供給装置50の吸気系統は、空気吸気管52、加湿器54、及び、空気圧縮機56を備えている。酸化剤ガスに犠牲剤を供給する場合、犠牲剤供給手段は、空気吸気管52、加湿器54及び空気圧縮機56のいずれかの部分に設けるのが好ましい。
また、燃料ガス供給装置30は、水素ボンベ32、水素吸気管34a、圧力調整バルブ34b、及び、水素吸気バルブ34cを備えている。燃料ガスに犠牲剤を供給する場合、犠牲剤供給手段は、水素吸気管34aに設けるのが好ましい。
犠牲剤を供給する具体的方法は、犠牲剤の種類に応じて、最適な方法を選択する。
例えば、犠牲剤が室温において気体である場合、酸化剤ガス供給装置50及び/又は燃料ガス供給装置30の吸気系統のいずれかに、犠牲剤を充填したボンベを接続すればよい。この場合、犠牲剤の供給量は、犠牲剤を充填したボンベと吸気系統の間に設けられたバルブの開度を調節することにより行う。
また、例えば、犠牲剤が室温において液体又は固体である場合、酸化剤ガス供給装置50及び/又は燃料ガス供給装置30の吸気系統のいずれかに、犠牲剤の蒸気を発生するための蒸気発生器及び/又は犠牲剤のミストを発生するためのミスト発生器を接続すればよい。蒸気発生器及びミスト発生器の構造は、特に限定されるものではなく、公知のものをそのまま用いることができる。
犠牲剤供給手段として蒸気発生器を用いる場合、犠牲剤の供給量は、蒸気発生器と吸気系統の間に設けられたバルブの開度や、犠牲剤の加熱温度を調節することにより行う。
一方、犠牲剤供給手段としてミスト発生器を用いる場合、犠牲剤の供給量は、ミスト発生源の駆動エネルギ(例えば、超音波タイプの場合は、超音波振動子に印加する電圧、電圧印加時間等。ノズルタイプの場合は、ノズルに供給する液体の圧力、噴霧時間等。)を調節することにより行う。
犠牲剤供給手段の第2の具体例は、予め加湿用の水に犠牲剤を加えて溶液とし、この溶液の蒸気又はミストを電極(燃料極又は空気極)に供給される反応ガスの少なくとも一方に供給するものである。
この場合、犠牲剤は、加湿用の水に可溶である必要がある。犠牲剤の水への溶解度は、特に限定されるものではなく、少なくとも、過酸化物又は過酸化物ラジカルを消滅させるために必要な量を水(具体的には、少なくとも0.01wt%)に溶解させることができるものが好ましい。
なお、酸化剤ガスに犠牲剤を供給するのが好ましい点、燃料ガスに犠牲剤を供給しても良い点、蒸気又はミストを発生する手段として、公知の蒸気発生器及び/又はミスト発生器をそのまま用いることができる点は、第1の具体例と同様である。
第2の具体例において、犠牲剤の供給量は、加湿用の水に溶解させる犠牲剤の量を調節することにより行う。また、犠牲剤の供給量を固体高分子型燃料電池20の運転状態に応じて可変させる場合、犠牲剤の供給量は、犠牲剤濃度の異なる複数種類の加湿水を用意し、蒸気発生器及び/又はミスト発生器に供給する加湿水の種類を適宜切り替えるか、あるいは、犠牲剤の濃度の異なる2種以上の加湿水を所定の比率で混合することにより調整することができる。
犠牲剤供給手段の第3の具体例は、燃料ガス供給装置30及び/又は酸化剤ガス供給装置50の排気系統に、犠牲剤を供給するものである。
図1に示す燃料電池システム10において、空気極から排出された酸化剤ガスは、そのまま系外に排出されるが、空気極側から排出された水は、空気気液分離器60により分離され、加湿器54に戻される。このような加湿水を循環させるタイプの燃料電池システムにおいては、空気極で生成した過酸化物又は過酸化物ラジカルが加湿水に濃縮されやすい。このような場合には、排気系統のいずれか(例えば、空気排気管58、空気気液分離器60、空気回収管62aなど)に犠牲剤供給手段を設けても良い。
燃料ガスを加湿するための加湿器を備え、かつ、燃料極側から排出される水を加湿器に戻すタイプの燃料電池システムも同様であり、燃料極で生成した過酸化物又は過酸化物ラジカルが加湿水に濃縮される場合がある。このような場合には、排気系統のいずれか(例えば、水素排気管36a、水素気液分離器38、連結管42aなど)に犠牲剤供給手段を設けても良い。
なお、犠牲剤の供給方法として、犠牲剤を充填したボンベ、蒸気発生器、ミスト発生器等、種々の方法を用いることができる点、及び、犠牲剤の供給量は、バルブ開度等を用いて調整することができる点は、第1の具体例と同様である。
犠牲剤の供給量は、犠牲剤の種類、燃料電池システムの構造等に応じて最適な量を選択する。一般に、犠牲剤の供給量が少なすぎる場合には、実用上十分な耐久性は得られない。一方、犠牲剤の供給量が多すぎる場合には、電極触媒が被毒されることによって電池性能を低下させたり、あるいは、過剰の犠牲剤が大気に放出され、環境に悪影響を及ぼす場合がある。
例えば、犠牲剤を加湿水に溶解させ、これを電極に供給する場合、加湿水に添加する有機物の濃度は、1ppm〜10000ppm(1wt%)が好ましい。犠牲剤の添加量が1ppm未満では、耐久性の向上効果が小さい。一方、犠牲剤の添加量が1wt%を超えると、電極反応の阻害要因となり、電池性能を大きく低下させることがある。また、1wt%を超える供給は、電池系外へそのまま分解されずに排出されたり、アルデヒド、有機酸、ケトン等の環境負荷の大きい有機物となって排出されることがあるため好ましくない。また、これらの分子内にCO結合を含む有機物の高濃度の使用は、加湿経路のシール部、パッキング等に使われる高分子材料や触媒層に使用される高分子電解質や電解質膜にダメージを与えることがあるため、勧められない。
上述した各種の犠牲剤の中には、固体高分子型燃料電池20にとっては無害であるが、環境負荷が大きいものも含まれている。このような犠牲剤を用いる場合において、過剰の犠牲剤を供給するときには、排気系統に燃焼器を設け、排気ガスに含まれる過剰の犠牲剤を燃焼除去することもできる。しかしながら、排気系統に燃焼器を設けると、燃料電池システムが複雑化し、高コスト化を招く。また、犠牲剤の中には、環境だけでなく、固体高分子型燃料電池20にとっても有害なものもある。
従って、システムの高コスト化、電池性能の低下、及び/又は、環境に対する悪影響を抑制するためには、犠牲剤の供給量は、系内の過酸化物及び/又は過酸化物ラジカルを消滅させるのに必要かつ十分な量とするのが好ましい。
酸化剤ガスに供給する犠牲剤の必要かつ十分な量は、水素ガス当量から算出することができる。「水素ガス当量」とは、燃料極から固体高分子電解質膜を通り空気極へ透過(クロスオーバー)する水素ガスの量(モル数)を言う。
燃料極側から空気極側へ水素が透過すると、透過水素は、(1)式に示すように、空気極の触媒上において酸化され、プロトンと電子を生成する。
→ 2H+2e ・・・(1)
また、空気極側の酸素は、次の(2)式に示すように、(1)式のプロトン及び電子を受け取り、過酸化水素となる。すなわち、酸素が2電子還元されることにより、過酸化水素が生成する。
+2H++2e → H ・・・(2)
さらに、生成した過酸化水素は、次の(3)式に示すように、価数が変わる遷移金属イオンの存在下において、過酸化物ラジカル(・OOH、・OH)に分解する。
2H → HOO・+HO・+HO ・・・(3)
すなわち、1モルの透過水素から1モルの過酸化水素又は過酸化物ラジカルが生成することになる。空気極における過酸化水素の生成は、(1)式の反応が律速すると考えられるので、少なくとも水素ガス当量に相当する量の犠牲剤が供給されれば、系内の過酸化物又は過酸化物ラジカルを消滅させることができる。
例えば、膜厚約80μmのパーフルオロポリマの場合、80℃における開回路時の水素の膜透過速度は、水素の酸化電流に換算すると、5mA/cmとなる。
電極面積を13cmとすれば、単位時間当たりの過酸化物の生成速度は、(1)式及び(2)式、並びに、ファラディの法則から、0.0012モル/hrと計算される。
(3)式に示すように、1モルの過酸化水素から1モルの過酸化物ラジカルが生成し、かつ、1モルの犠牲剤が必要(1:1に反応して捕捉)と仮定すると、過酸化物ラジカルを消滅させるに必要な犠牲剤の供給速度は、0.0012モル/hrとなる。
加湿を1リットル/分、80℃フル加湿とすると、水分供給速度は、12.7g/hr(0.70モル/hr)となる。
従って、例えば、犠牲剤を予め加湿水中に添加し、電極に供給する場合、必要な犠牲剤のモル%は、
(0.0012/0.7)×100≒0.17モル% ・・・(4)
となる。また、犠牲剤がメタノール(分子量=32)である場合、加湿水中の濃度は、0.31wt%と計算される。
なお、上述の試算においては、犠牲剤と過酸化物又は過酸化物ラジカルとが1:1の割合で反応すると仮定されているが、1分子の犠牲剤が複数個の過酸化物又は過酸化物ラジカルと反応する場合には、必要かつ十分な犠牲剤の供給量は、上述の試算よりさらに少なくなる。
ここで、水素の膜透過は、開回路時、又は、閉回路から開回路に若しくは開回路から閉回路に切り替わる過渡応答時に多い。定常的な運転時(常時閉回路)の水素の膜透過速度は、開回路時又は過渡応答時の約1/100以下である。
従って、定置型燃料電池のように、一定負荷条件で運転する場合には、(4)式で得られる量の1/100程度(0.0017モル%、メタノールで30ppm)の犠牲剤を供給するだけで、触媒層内電解質や電解質膜の劣化を抑制することができる。
これに対し、燃料電池自動車のように、負荷のON/OFFが繰り返される場合には、定置型燃料電池に比べて水素透過量は多くなる。この場合には、開回路時又は過渡応答時の水素ガス当量以下に相当する量の犠牲剤を供給するのが好ましい。
例えば、排気系統に犠牲剤を燃焼除去するための燃焼器がある場合、並びに/又は、固体高分子型燃料電池20及び/若しくは環境に対する負荷が相対的に小さい犠牲剤を用いる場合、開回路時又は過渡応答時の水素ガス当量に相当する一定量の犠牲剤を常時、供給しても良い。
また、例えば、負荷のON/OFFが繰り返される場合において、総運転時間に占める開回路時間及び過渡応答時間と閉回路(定常運転)時間との比率が既知又は推定可能であるときには、総運転時間内の平均の水素ガス当量に相当する一定量の犠牲剤を常時、供給しても良い。
また、例えば、負荷のON/OFFが繰り返される場合、水素ガス当量の変動に応じて、犠牲剤の供給量を変動させても良い。
また、例えば、負荷のON/OFFが繰り返される場合、開回路時または過渡応答時の水素ガス当量は、閉回路時(定常運転時)の水素ガス当量に比べて遙かに大きいので、開回路時及び/又は過渡応答時にのみ、水素ガス当量に相当する一定量の犠牲剤を供給しても良い。
また、我々の検討によれば、過酸化物ラジカルによる電解質の攻撃は、60℃以上で著しく増大すること、及び、この温度より低い場合には、ほとんど無視できることが認められた。そこで、犠牲剤の供給を、セル温度をモニターして調節し、温度に連動させて犠牲剤の量を増減させる(例えば、60℃以上の場合に犠牲剤を供給する)こととすれば、不要に犠牲剤を消費することが無く、経済的である。
一方、燃料ガスに供給する犠牲剤の必要かつ十分な量は、上述と同様の手順に従い、酸素ガス当量から算出することができる。「酸素ガス当量」とは、空気極から固体高分子電解質膜を通り燃料極へ透過(クロスオーバー)する酸素ガスの量(モル数)を言う。
しかしながら、一般に、膜中の酸素ガスの透過速度は、水素ガスの1/3〜1/4であり、酸素ガス当量は、水素ガス当量に比べて小さい。従って、燃料ガスに対し、少なくとも、開回路時又は過渡応答時の水素ガス当量以下に相当する量の犠牲剤を供給すれば、過酸化物ラジカルによる電解質膜及び/又は触媒層内電解質の劣化を抑制することができる。
また、閉回路時に比べて、開回路時又は過渡応答時の方が酸素ガス当量が多い点は、水素ガス当量と同様である。従って、酸化剤ガスに犠牲剤を供給する場合と同様の考え方に従い、燃料電池の運転状態や酸素ガス当量の変動に応じて、燃料ガスに供給する犠牲剤の量を変動させ、あるいは、犠牲剤の供給のON/OFF制御を行っても良い。
次に、本発明に係る燃料電池システムの作用について説明する。
過酸化水素は、価数が変わる遷移金属イオン(Mn+/M(n+1)+)の存在下において、過酸化物ラジカルに分解する。この反応は、次の(5)式及び(6)式で表される。
HOOH+M(n+1)+ → HOO・+H+Mn+ ・・・(5)
HOOH+Mn+ → HO・+OH+M(n+1)+ ・・・(6)
(5)式及び(6)式より、上述した(3)式が得られる。(3)式より、過酸化水素1モルから過酸化物ラジカル(HOO・、HO・)1モルが生成する事がわかる。
過酸化水素のラジカル攻撃作用とは、過酸化水素の分解により生成した過酸化物ラジカルが、電解質膜あるいは触媒層内電解質(有機物RX)を攻撃することを言う。
例えば、X=Fのフルオロポリマ(RX)と、・OHラジカルとが反応すると、次の(7)式のように分解してFイオン(HX)を放出する。分解により生成したアルコキシラジカル・ROは、互いに結合して安定な化合物(例えば、ROOR)になるか、あるいは、さらに安定な化合物(例えば、HO、COなど)へと変化する。
RX+・OH → ・RO+HX ・・・(7)
燃料電池の通常の運転条件下(開回路状態も含む)において、空気極における過酸化水素の生成は、上述した(1)式に示すアノード反応が律速すると考えられる。従って、燃料電池システムの耐久性を向上させるためには、如何にして燃料極から空気極への水素の膜透過速度を低下させるかが課題となる。
例えば、電解質膜の水素透過速度を低下させるために、電解質のすべて又は一部を水素透過速度の小さい炭化水素系電解質とし、比較的水素透過速度の大きなフルオロポリマと複合化することも考えられる。しかしながら、炭化水素系電解質は、過酸化水素に対し極めて脆弱であるため、単独の炭化水素系電解質はもちろんの事、過酸化水素を分解する作用を有する触媒を大量に加えて炭化水素系電解質とフルオロポリマとを複合化させても、十分な耐久性が得られないのが現状である。
これに対し、加湿経路のいずれかに犠牲剤を供給すると、燃料電池システムの耐久性が向上する。これは、以下のような理由によると考えられる。
すなわち、ある種の有機物(QH)は、過酸化物又は過酸化物ラジカルと反応し、これらを消滅させる作用がある。例えば、有機物(QH)と、過酸化物ラジカルの一種である・OHとの反応は、次の(8)式のように表せる。
QH+HO・ → Q・+HO ・・・(8)
反応により生成したQ・ラジカルは、それ自身が不安定であるため、互いに結合して安定な化合物(例えば、QQ)になるか、あるいは、さらに安定な化合物(例えば、アルコール、カルボン酸、CO、HOなど)に分解する。
過酸化物(例えば、H)や他の過酸化物ラジカル(・OOH)の場合も同様であり、ある種の有機物(QH)と反応させると、過酸化物や過酸化物ラジカルが消滅する。また、反応生物は、安定な化合物となる。
そのため、このような有機物(QH)を犠牲剤として燃料電池システムの加湿経路に供給すれば、過酸化物又は過酸化物ラジカルの少なくとも一部が犠牲剤によって捕捉され、電解質膜及び/又は触媒層内電解質の劣化を抑制することができる。特に、過酸化物又は過酸化物ラジカルとの反応性が電解質膜及び触媒層内電解質より高い有機物(QH)を犠牲剤として用いると、過酸化物又は過酸化物ラジカルは、電解質膜及び/又は触媒層内電解質を攻撃するより先に、犠牲剤を攻撃する確率が高くなる。そのため、燃料電池システムの耐久性が大幅に向上する。また、フッ素系電解質を用いた燃料電池システムにおいては、フッ素イオンの溶出が抑制される。
さらに、犠牲剤の供給量が過酸化物又は過酸化物ラジカルを捕捉するのに必要かつ十分な量である場合には、過剰供給による電極性能の低下が少ない。また、排気系統から排出される犠牲剤の量はごく僅かであるので、開放型の燃料電池システムに本発明を適用した場合であっても、環境に対する負荷が小さい。また、環境に対する負荷を小さくするために、排気系統に燃焼器を設ける必要もない。さらに、犠牲剤の種類や燃料電池システムの運転状況に応じて、犠牲剤の量を適宜増減させると、耐久性が向上すると同時に、電極性能の低下及び環境に対する負荷をさらに軽減することができる。
また、本願発明者らは、メタノールを加湿系に供給した場合において、メタノールの供給条件によっては、電解質膜の劣化が加速される場合があること、及び、カルボン酸の一種であるギ酸を加湿系に供給すると、むしろ電解質の劣化が加速されること、を見出している。これは、メタノールが過酸化物ラジカルと反応することにより、劣化生成物としてギ酸が生成すること、及び、ギ酸がさらに過酸化物ラジカルと反応することによって、活性の高いラジカル(例えば、CHO・)が生成するためと考えられる。
これに対し、犠牲剤として、C2〜C8の1価アルコールなどの特定の有機物を添加すると、活性の高い劣化生成物の生成が相対的に少なくなり、劣化生成物による電解質の劣化が抑制される。
また、本願発明者らは、加湿系の酸素極側に空気を用いた場合と、COを含まない酸素20vol%+窒素80vol%の混合ガスを用いた場合の耐久性を比較したところ、前者が後者よりやや良好であることを確認している。この劣化は、
(1) 炭素材料は、本来、高温の高電位状態では安定ではなく、COやCOガスとなって消耗する、
(2) 副生成する過酸化水素が炭素材料をアタックして、表面にC=OやC−OH、COOH等の親水性の官能基を生成し、撥水性を低下させる、
ためと考えられる。
高電位状態での炭素材料の酸化反応は、次の(9)式で表される。
C+2HO → CO+4H+4e ・・・(9)
ここで、25℃における(9)式の熱力学的な平衡電位E25℃は、プールベダイアグラム(Pouubaix diagram)より、次の(10)式で表される。
25℃=0.207−0.0591pH+0.0148logP(CO)
・・・(10)
すなわち、COの分圧が10倍になることで、Cの酸化電位は約15mV上昇する(酸化されにくくなる)。
ここで、燃料極の電位は、通常0V近傍であるので、異常な反応が起きない限り、炭素材料の消耗は無視できる。一方、空気極側の電位は、高電流密度で発電している時を除き、0.9〜0.3V程度であり、炭素材料の消耗が起こりうる。実際には、過電圧の存在では、(9)式の反応は、0.8V以上で起きることが知られている。しかも、室温〜60℃程度の低温では、この反応速度は、非常に小さい。すなわち、実質的に炭素材料の消耗が進行するのは、開回路(発電休止)状態で、しかも、60℃以上の空気極である。
従って、加湿系に添加する犠牲剤として、ラジカルとの反応により速やかに分解されてCOを発生しやすいものを用いると、過酸化物ラジカルによる電解質及び炭素材料の劣化を抑制できることに加えて、電極でのCO分圧をさらに高くすることができるので、炭素材料の劣化(親水化、消耗等)を抑制することができる。また、少なくとも高温の開回路状態の空気極にのみこのような機能を有する犠牲剤を供給すると、電解質及び炭素材料の劣化を抑制すると同時に、環境に対する負荷も軽減できる。
(実施例1〜4、比較例1〜5)
1wt%の過酸化水素とFe10ppm相当の塩化第1鉄を含む水溶液(比較例5)、及び、これにさらに種々の有機物を所定濃度となるように加えた水溶液(実施例1〜4、比較例1〜4)を作製した。これらの水溶液200mlに、膜厚45μm、大きさ7.2cm×7.2cmのフッ素系電解質1枚を入れ、100℃×8hrの浸漬試験を行った。浸漬試験終了後、水溶液中に溶出したFイオンの濃度をオリオン社製のイオン選択電極で調べた。また、浸漬試験前後で80℃×2hrの真空乾燥処理を行い、浸漬試験での膜重量減少を求めた。表1に、その結果を示す。
Figure 2006244814
エタノールを添加した実施例1〜3及び酢酸を添加した実施例4においては、有機物無添加の比較例5よりF濃度が低下し、重量減少も抑制された。他方、ギ酸を添加した比較例1及びメタノールを0.01wt%添加した比較例4においては、有機物無添加の比較例5よりF濃度が増加した。これは、ギ酸に、F濃度を増加させる作用があること、及び、メタノールが劣化することによりギ酸が生成することに基づくと考えられる。
(実施例5、比較例6、7)
添加剤の劣化生成物の影響を調べるために、実施例1と同じ材質、同じ大きさのフッ素系電解質を用い、実施例1と同様の試験を2回行い、溶出したFイオン濃度を測定した。
すなわち、1wt%の過酸化水素及びFe10ppm相当の塩化第1鉄、並びに、0.1wt%相当のC2〜C8の1価アルコールを含む水溶液200mlに、フッ素系電解質1枚を入れ、100℃×8hrの浸漬試験を行った。次に、フッ素系電解質を含む浸漬試験後の水溶液に、さらに1wt%相当の過酸化水素を追加し、100℃×8hrの条件で2回目の浸漬試験を行った。2回目の浸漬試験後の水溶液中に溶出したFイオン濃度をオリオン社製のイオン選択電極で測定した。図2に、その結果を示す。なお、図2には、1回目の浸漬試験後のFイオン濃度も併せて示した。
図2より、無添加(比較例6)及びメタノール添加(比較例7a)、並びに、C9以上の1価アルコール(比較例7b)の場合、2回目の浸漬試験の際にF排出が大幅に増えているのに対し、C2〜C8の1価アルコールを添加した場合、2回目の浸漬試験でも、Fイオン濃度が相対的に低いことがわかる。これは、C2〜C8の1価アルコールは、メタノールに比べて、ラジカルとの反応により生成した劣化生成物による悪影響が小さいためと考えられる。
(実施例6、比較例8、9)
1wt%の過酸化水素とFe10ppm相当の塩化第1鉄を含む水溶液(比較例9)、及び、これに0.1wt%相当のイソプロピルアルコール(実施例6)又はラウリルアルコール(比較例8)を加えた水溶液を作製した。これらの水溶液に、膜厚45μm、大きさ7.2cm×7.2cmのフッ素系電解質1枚を入れ、40℃、60℃、80℃又は100℃×8hrの浸漬試験を行った。浸漬試験終了後、水溶液中に溶出したFイオンの濃度をオリオン社製のイオン選択電極で調べた。図3に、その結果を示す。
図3より、無添加及びラウリルアルコール添加は、イソプロピルアルコール添加に比べて、60℃以上での反応が顕著であることがわかる。
ラウリルアルコールのF排出抑制効果がイソプロピルアルコールに比べて小さいのは、ラウリルアルコールの水への溶解度がイソプロピルアルコールより小さく、水中のラジカルとの反応性が乏しいためと考えられる(図4(http://www.chemikalienlexikon.de/aroimfo/0375-aro.htm)参照)。
(実施例7〜54、比較例10、11)
1wt%の過酸化水素とFe10ppm相当の塩化第1鉄を含む水溶液(比較例10)、及び、これに0.1wt%相当のアルコール以外の有機物(実施例7〜54)又はラウリルアルコール(比較例11)を加えた水溶液を作製した。これらの水溶液に、膜厚45μm、大きさ7.2cm×7.2cmのフッ素系電解質1枚を入れ、100℃×8hrの浸漬試験を行った。浸漬試験終了後、水溶液中に溶出したFイオンの濃度をオリオン社製のイオン選択電極で調べた。また、浸漬試験前後で80℃×2hrの真空乾燥処理を行い、浸漬試験での膜重量減少を求めた。表2に、その結果を示す。表2より、1価アルコール以外の有機物であっても、F排出抑制効果があることがわかる。
なお、実施例7〜10は脂肪族炭化水素、実施例11は単環式アルコール、実施例12〜13はテルペン環アルコール(テルペノール)、実施例14〜20は多価アルコール、実施例21〜23はヒドロキシカルボン酸、実施例24はアスコルビン酸、実施例25〜28は多価カルボン酸、実施例29はアミノスルホン酸、実施例30〜35はアミノカルボン酸、実施例36〜39はキレート剤、実施例40〜48は硫黄含有有機化合物、実施例49〜53はテルペン類、実施例54は糖類の例を示す。
Figure 2006244814
(実施例55〜56、比較例12)
60wt%Pt/C触媒0.5gに蒸留水2.0g、エタノール2.5g、プロピレングリコール1.0g、22wt%ナフィオン(登録商標)溶液(デュポン社製)0.9gをこの順で加え、超音波ホモジナイザーで分散させて触媒インクを作製した。これをポリテトラフルオロエチレンシート上に塗布、乾燥して転写電極を得た。Pt使用量は、カソードが0.5〜0.6mg/cm、アノードが0.3〜0.4mg/cmの範囲で一定とした。これらの電極を36mm角に切り出し、フッ素系電解質膜の片面に熱圧着(120℃、50kgf/cm(4.9MPa))して、膜電極接合体(MEA)を作製した。
得られたMEAについて、耐久試験を行った。耐久試験は、アノードガス:H(100ml/min)、カソードガス:Air(100ml/min)、セル温度:90℃、加湿器温度:90℃(アノード側、カソード側ともに)での24時間の開回路耐久試験とした。カソードから回収された水に溶出したFイオン濃度を島津製作所製イオンクロマト装置PIA−1000で測定し、単位時間、単位面積当たりのF排出速度(μg/cm/hr)を算出した。
なお、実施例55の場合、カソード側加湿水には、イソプロパノールを30ppm加えたイオン交換水を用い、アノード側加湿水には、イオン交換水を用いた。また、実施例56の場合、カソード側加湿水には、イオン交換水を用い、アノード側加湿水には、イソプロパノールを30ppm加えたイオン交換水を用いた。さらに、比較例12の場合、カソード側加湿水及びアノード側加湿水には、それぞれ、イオン交換水を用いた。表3に、その結果を示す。
Figure 2006244814
表3より、加湿水にイソプロパノールを添加した実施例55、56は、いずれも無添加の比較例12に比べて、Fイオン溶出速度が著しく低下していることがわかる。これは、加湿水に添加したイソプロパノールが、過酸化水素又は溶液内で発生した過酸化物ラジカルを捕捉し、電解質膜及び/又は触媒層内電解質を保護するための犠牲剤として機能しているためと考えられる。また、イソプロパノールをアノードに添加した実施例56でもカソードからのFイオン溶出が減少した理由は、イソプロパノールが膜内部をクロスオーバーし、カソードに添加したのと同様の効果を奏したためと考えられる。
(実施例57〜78、比較例21)
ポリテトラフルオロエチレン内筒の容器に1wt%のH及びFe10ppm相当の塩化第1鉄を含む水溶液200mlを入れ、これに各種含酸素有機化合物及び含硫黄有機化合物0.2gを添加した。これらの水溶液に、それぞれ、厚さ45μm、大きさ7.2×7.2cmのフッ素系電解質膜1枚を入れ、100℃×8hrの浸漬試験を行った。浸漬試験終了後、水溶液中に溶出したFイオンの濃度をオリオン社製のイオン選択電極で調べた。また、浸漬試験前後で80℃×2hrの真空乾燥処理を行い、浸漬試験での膜重量減少を求めた。表4に、その結果を示す。
Figure 2006244814
なお、実施例57〜62は尿素及びその誘導体、実施例63は脂肪族ケトン、実施例64〜68は脂肪族エーテル、実施例69〜75は炭酸エステル、実施例76〜78は脂肪族エステルの例を示す。
表4より、ここで示した各種化合物は、いずれも無添加の場合に比べて、重量減少を抑え、かつ、Fイオンの溶出を抑制する効果があることがわかる。
(実施例79〜80、比較例22)
加湿水に加える有機物として、γ−ブチロラクトン又は炭酸ジエチルを用いた以外は、実施例55〜56と同一の条件下で、耐久試験を行った。
なお、実施例79の場合、カソード側加湿水には、γ−ブチロラクトンを30ppm加えたイオン交換水を用い、アノード側加湿水には、イオン交換水を用いた。
また、実施例80の場合、カソード側加湿水には、炭酸ジエチルを30ppm加えたイオン交換水を用い、アノード側加湿水には、イオン交換水を用いた。さらに、比較例22の場合、カソード側加湿水及びアノード側加湿水には、それぞれ、イオン交換水を用いた。表5に、その結果を示す。
Figure 2006244814
表5より、加湿水にγ−ブチロラクトン又は炭酸ジエチルを添加した実施例79、80は、いずれも無添加の比較例22に比べて、Fイオン溶出速度が著しく低下していることがわかる。これは、加湿水に添加したγ−ブチロラクトン又は炭酸ジエチルが、過酸化水素又は溶液内で発生した過酸化物ラジカルを捕捉し、電解質膜及び/又は触媒層内電解質を保護するための犠牲剤として機能しているためと考えられる。
(実施例81〜84、比較例23)
60wt%Pt/C触媒0.5gに蒸留水2.0g、エタノール2.5g、プロピレングリコール1.0g、22wt%ナフィオン(登録商標)溶液(デュポン社製)0.9gをこの順で加え、超音波ホモジナイザーで分散させて触媒インクを作製した。これをポリテトラフルオロエチレンシート上に塗布、乾燥して転写電極を得た。Pt使用量は、カソードが0.5〜0.6mg/cm、アノードが0.3〜0.4mg/cmの範囲で一定とした。これらの電極を36mm角に切り出し、フッ素系電解質膜の片面に熱圧着(120℃、50kgf/cm(4.9MPa))して、膜電極接合体(MEA)を作製した。
得られたMEAについて、耐久試験を行った。耐久試験は、アノードガス:H(100ml/min)、カソードガス:Air(100ml/min)、セル温度:90℃、加湿器温度:90℃(アノード側、カソード側ともに)で開回路1分、0.1A/cmを1分とするサイクル試験を150時間行った。耐久試験前後で0.8A/cmにおける電圧値の低下割合を比較した。
なお、実施例81の場合、カソード側加湿水には、γ−ブチロラクトンを30ppm加えたイオン交換水を用い、アノード側加湿水には、イオン交換水を用いた。また、実施例82〜84の場合、カソード側加湿水には、酢酸(実施例82)、β−ピネン(実施例83)、又は、1,3−ジエトキシエタン(実施例84)を30ppm加えたイオン交換水を用い、アノード側加湿水には、イオン交換水を用いた。さらに、比較例23の場合、カソード側加湿水及びアノード側加湿水には、それぞれ、イオン交換水を用いた。表6に、その結果を示す。
Figure 2006244814
表6より、γ−ブチロラクトン、酢酸、β−ピネン、又は、1,3−ジエトキシエタンを添加した実施例81〜84は、いずれも無添加の比較例23に比べて、電圧の低下が抑制されていることがわかる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る燃料電池システムは、車載用動力源、定置型小型発電器、コジェネレーションシステム等に使用することができる。
加湿経路を備えた燃料電池システムの概略構成図である。 過酸化水素及び各種有機物を含む水溶液にフッ素系電解質を入れ、100℃×8h保持する浸漬試験(1回目及び2回目)において、水溶液中に添加した各種有機物と、浸漬試験後に水溶液中に溶出したFイオン濃度との関係を示す図である。 過酸化水素及び各種有機物を含む水溶液にフッ素系電解質を入れ、所定温度で保持する浸漬試験において、浸漬試験の温度と、浸漬試験後に水溶液中に溶出したFイオン濃度との関係を示す図である。 各種アルコールの室温における水の溶解度を示す図である。
符号の説明
10 燃料電池システム
20 固体高分子型燃料電池
70 加湿経路

Claims (17)

  1. 固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体を備えた固体高分子型燃料電池と、
    該固体高分子型燃料電池に水及び/若しくは水蒸気を供給し、並びに/又は、前記固体高分子型燃料電池から排出される水及び/若しくは水蒸気を回収するための加湿経路と、
    該加湿経路のいずれかに、自ら過酸化物又は過酸化物ラジカルと反応することによって、過酸化物を安定化させ又は過酸化物ラジカルを消滅させる機能を有する犠牲剤を供給する犠牲剤供給手段とを備えた燃料電池システム。
  2. 前記犠牲剤供給手段は、前記電極に供給される反応ガスの少なくとも一方に、前記犠牲剤のガス、蒸気又はミストを供給するものである請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記犠牲剤供給手段は、予め加湿用の水に前記犠牲剤を加えて溶液とし、該溶液の蒸気又はミストを前記電極に供給される反応ガスの少なくとも一方に供給するものである請求項1に記載の燃料電池システム。
  4. 前記犠牲剤供給手段は、開回路時、又は、閉回路から開回路に若しくは開回路から閉回路に切り替わる過渡応答時における、前記燃料極から前記固体高分子電解質膜を通り前記空気極へ透過する水素ガス当量以下に相当する量の前記犠牲剤を供給するものである請求項1から3までのいずれかに記載の燃料電池システム。
  5. 前記犠牲剤供給手段は、開回路時、又は、閉回路から開回路に若しくは開回路から閉回路に切り替わる過渡応答時に前記犠牲剤を供給するものである請求項1から4までのいずれかに記載の燃料電池システム。
  6. 前記犠牲剤供給手段は、閉回路時に前記犠牲剤を供給するものである請求項1から5までのいずれかに記載の燃料電池システム。
  7. 前記犠牲剤供給手段は、前記水素ガス当量に応じて、前記犠牲剤の供給量を増減させるものである請求項1から6までのいずれかに記載の燃料電池システム。
  8. 前記犠牲剤供給手段は、前記固体高分子型燃料電池の作動温度に連動させて、前記犠牲剤の供給量を増減させるものである請求項1から7までのいずれかに記載の燃料電池システム。
  9. 前記犠牲剤は、前記過酸化物又は前記過酸化物ラジカルとの反応性が前記固体高分子電解質膜及び/又は前記電極に含まれる触媒層内電解質より高いものである請求項1から8までのいずれかに記載の燃料電池システム。
  10. 前記犠牲剤は、前記固体高分子型燃料電池の作動温度において液体若しくは気体であり、又は、前記固体高分子型燃料電池の作動温度の水に対し、0.01wt%以上溶解させることができる有機物である請求項1から9までのいずれかに記載の燃料電池システム。
  11. 前記犠牲剤は、炭化水素類、アルコール類、カルボン酸類、アミノ酸類、アミノカルボン酸類、アミノスルホン酸類、糖類、ヒドロキシカルボン酸類、脂肪族アルデヒド類、及びテルペン類から選ばれる1種又は2種以上である請求項1から10までのいずれかに記載の燃料電池システム。
  12. 前記犠牲剤は、含硫黄有機化合物である請求項1から11までのいずれかに記載の燃料電池システム。
  13. 前記犠牲剤は、含酸素有機化合物である請求項1から12までのいずれかに記載の燃料電池システム。
  14. 前記含酸素有機化合物は、エーテル類、エステル類、ケトン類、及び、尿素類から選ばれる1種又は2種以上である請求項13に記載の燃料電池システム。
  15. 前記犠牲剤は、C2〜C8の1価アルコール、L−メントール、α−テルピネオール、酢酸、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、D−ソルビトール、D−マンニトール、DL−トレハロース、クエン酸、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、タウリン、グリシン、DL−アラニン、DL−トリプトファン、DL−グルタミン酸、DL−ヒスチジン、DL−メチオニン、CyDTA、NTA、ジメチルスルホキシド、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ジメチルスルホン、ジメチルスルファイド、ジメチルスルホキシド、ジメチルジスルファイド、アリルスルファイド、及び、スルホランから選ばれる1種又は2種以上である請求項1から14までのいずれかに記載の燃料電池システム。
  16. 前記犠牲剤は、尿素、アセトン、ジメトキシメタン、1,2ジメトキシエタン、1,2ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸テトラエチル、γブチロラクトン、二炭酸ジ−tブチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、酢酸エチル、及び酢酸ブチルから選ばれる1種又は2種以上である請求項1から15までのいずれかに記載の燃料電池システム。
  17. 固体高分子型燃料電池に水及び/若しくは水蒸気を供給し、並びに/又は、前記固体高分子型燃料電池から排出される水及び/若しくは水蒸気を回収するための加湿経路のいずれかに、自ら過酸化物又は過酸化物ラジカルと反応することによって、過酸化物を安定化させ又は過酸化物ラジカルを消滅させる機能を有する犠牲剤を供給する犠牲剤供給工程を備えた固体高分子型燃料電池の運転方法。
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