JP2006239884A - 水蒸気バリアフィルム、および、これを用いた光学表示材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】ゴミ等の付着がなく高いバリア性を有する水蒸気バリアフィルムを提供すること。
【解決手段】基材フィルム上に、少なくとも二層の無機ガスバリア層と、少なくとも一層の抵抗が1012Ω(25℃・相対湿度60%)以下である導電性層と、を有する。無機ガスバリア層は、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、又はTaから選ばれる一種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物を含む。また、導電性層は、少なくとも一種の導電性無機金属素材、及び、又は、少なくとも一種の有機導電性素材を含む。基材フィルムとしてはTgが150℃以上のポリエステルフィルムあるいはスピロ構造またはカルド構造を有する樹脂を含むのが好ましい。かかる水蒸気バリアフィルムは、各種デバイスの基板やデバイスの被覆フィルムとして好適に使用できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、水蒸気バリアフィルムに関するものであり、特に各種デバイスの基板やデバイスの被覆フィルムに好適な積層型の水蒸気バリアフィルムに関する。さらに前記水蒸気バリアフィルムを用い耐久性およびフレキシブル性に優れた画像表示素子用基板および有機EL素子等の光学表示材料に関するものであり、特に静電気障害のない取り扱いに優れた画像表示素子用基板等の光学表示材料に関するものである。
従来から、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、または酸化珪素等の金属酸化物薄膜を形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素など各種ガスの遮断を必要とする物品の包装や、食品、工業用品および医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、前記ガスバリア性フィルムは、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池またはエレクトロルミネッセンス(EL)の基板等にも使用されはじめている。特に、液晶表示素子、EL素子などへの応用が進んでいる透明基材は、軽量化や大型化という要求に加えて、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、および曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わっている。
近年、液晶表示素子やEL素子等の分野においては、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって、透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。また、透明プラスチック等のフィルム基材は上記要求に応えるだけでなく、ロールトゥロール(Roll to Roll)方式に適用することも可能であることから、ガラスよりも生産性がよくコストダウンの点でも有利である。しかし、透明プラスチック等のフィルム基材はガラスと比較してガスバリア性に劣るという問題がある。ガスバリア性が劣る基材を用いると、水蒸気や空気が浸透するため、例えば液晶表示素子に用いた場合には、液晶セル内の液晶を劣化させ、劣化部位が表示欠陥となって表示品位を劣化させてしまう。
このような問題を解決するために、上述のようなフィルム基板上に金属酸化物薄膜を形成してガスバリア性フィルムを透明基材として用いることが知られている。包装材や液晶表示素子に使用されるガスバリア性フィルムとしては、プラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着したもの(例えば、特許文献1参照)や、酸化アルミニウムを蒸着したもの(例えば、特許文献2参照)が知られており、これらはいずれも1g/m2/day程度の水蒸気バリア性を有する。しかし、近年では液晶ディスプレイの大型化や高精細ディスプレイ等の開発により、フィルム基板の水蒸気バリア性は0.1g/m2/day程度まで要求されるようになってきている。
さらに、ごく近年においてはさらなるバリア性が要求される有機ELディスプレイや高精彩カラー液晶ディスプレイなどの開発が進んでおり、これらに使用可能な透明性を維持しつつもさらなる高バリア性、特に水蒸気バリア性で0.1g/m2/day未満の性能をもつ基材が要求されるようになってきた。かかる要求に応えるために、より高いバリア性能が期待できる手段として、低圧条件下におけるグロー放電で生じるプラズマを用いて薄膜を形成するスパッタリング法やCVD法による成膜検討が行われている。また、有機層/無機層の交互積層構造を有するバリア膜を真空蒸着法により作製する技術が提案されている(例えば、特許文献3および非特許文献1参照)。
一方、単に外界からの水蒸気の進入を防ぐだけでなく、封止部材の内側面に吸湿剤を成膜して積極的に水を捕獲する技術も開示されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、係る技術においても封止剤や基板のバリア能が不十分であるため長時間経時において吸湿による膜変形が生じ、ディスプレイとしては致命的な画質の劣化を招くという問題があった。また吸湿性層を形成する金属イオンがデバイス製造工程または使用中に拡散して性能を劣化させてしまう問題があり、かかる意味においても透明で高い吸湿能と高バリア能とを両立する技術の発現が望まれていた。
さらに、これらの基板の問題点としてその製造中に起因するゴミが付着し、基板性能(バリア性)を悪化することが問題となっている。また、その基板の取り扱い時に静電気帯電によりゴミの付着だけでなく、静電気発生により基板に静電気障害を発生しその特性障害を引き起こすことが問題となっている。
特公昭53−12953号公報(第1頁〜第3頁) 特開昭58−217344号公報(第1頁〜第4頁) 米国特許第6,413,645B1号公報(第4頁[2−54]〜第8頁[8−22]) 特開2000−260562号公報(第3頁〜第5頁) Affinitoら著「Thin Solid Films」(1996)、P.290〜291(第63頁〜第67頁)
上述の諸問題を解決すべく、本発明は、ゴミ等の付着がなく高いバリア性を有する水蒸気バリアフィルム、並びに、製造時または取り扱い時に静電気障害を発生することがなく、また長期間使用しても、吸湿による膜変形や透明性変化により画質が劣化することのない画像表示素子用基板および有機エレクトロルミネッセンス素子等の光学表示材料を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様により達成された。
(1) 基材フィルム上に、少なくとも二層の無機ガスバリア層と、少なくとも一層の抵抗が1012Ω(25℃・相対湿度60%)以下である導電性層と、を有することを特徴とする水蒸気バリアフィルム。
(2) 前記無機ガスバリア層が、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTaから選ばれる一種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物を含む層であることを特徴とする前記(1)に記載の水蒸気バリアフィルム。
(2’) 前記無機ガスバリア層が、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、または、プラズマCVD法で作製された層であることを特徴とする前記(2)に記載の水蒸気バリアフィルム。
(3) 前記基材フィルムが、ポリエステルフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、フルオレン環変性カーボネートフィルム、脂環変性ポリカーボネートフィルム、または、アクリロイル化合物フィルムであることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の水蒸気バリアフィルム。
(4) 前記基材フィルムが、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上であるポリエステルフィルムであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の水蒸気バリアフィルム。
(5) 前記基材フィルムが、下記一般式(1)で表されるスピロ構造を有する樹脂または下記一般式(2)で表されるカルド構造を有する樹脂を含むことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の水蒸気バリアフィルム。
Figure 2006239884
〔一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、2つの環はスピロ結合によって結合される。〕
Figure 2006239884
〔一般式(2)中、環βおよび環γは単環式または多環式の環を表し、2つの環γはそれぞれ同一若しくは異なっていてもよい。また、環βおよび環γは、環β上の1つの4級炭素原子によって連結される。〕
(6) 前記導電性層が、少なくとも一種の導電性無機金属素材、および/または、少なくとも一種の有機導電性素材、を含有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の水蒸気バリアフィルム。
(7) 前記導電性金属酸化物が、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、或いはこれらの金属元素を含む複合酸化物であり、さらに該金属酸化物が異種原子としてAl、In、Ta、Sb、Nb、Ag、Cl、BrまたはIを含有していてもよいことを特徴とする前記(6)に記載の水蒸気バリアフィルム。
(8) 前記二層の無機ガスバリア層の間に少なくとも一層の2属金属一酸化物からなる吸湿性層を有することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の水蒸気バリアフィルム。
(9) 前記無機ガスバリア層および/または吸湿性層に隣接する層の少なくとも一層に、隣接有機層を設けたことを特徴とする前記(8)に記載の水蒸気バリアフィルム。
(10) 前記吸湿性層が、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、または、Raのいずれかを含む金属酸化物を少なくとも一種含むことを特徴とする前記(8)または(9)に記載の水蒸気バリアフィルム。
(11) 前記(1)〜(10)のいずれかに記載の水蒸気バリアフィルムを含むことを特徴とする光学表示材料。
本発明の水蒸気バリアフィルムは、ゴミ等の付着がなく、高いバリア性を有する。また、本発明によれば透明性が高い水蒸気バリアフィルムを提供することができる。さらに、製造時または取り扱い時に静電気障害を発生しないようにすることがなく、また長期間使用しても、吸湿による膜変形や透明性変化により画質が劣化することのない画像表示素子用基板および有機エレクトロルミネッセンス素子等の光学表示材料を提供することもできる。
まず、以下に本発明の水蒸気バリアフィルムについて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
(水蒸気バリアフィルム)
本発明の水蒸気バリアフィルムは、基材フィルム上に、少なくとも二層の無機ガスバリア層と、少なくとも一層の抵抗が1012Ω(25℃・相対湿度60%)以下である導電性層と、を有することを特徴とする。
本発明の水蒸気バリアフィルムは、基材フィルム上に、少なくとも二層の無機ガスバリア層を有する水蒸気バリアフィルムである。本発明の水蒸気バリアフィルムは、更に前記二層の無機ガスバリア層の間に少なくとも一層の2属金属一酸化物からなる吸湿性層を有することが好ましく、これにより、更なる水蒸気バリア特性を発現することができる。また、本発明の水蒸気バリアフィルムは、積層型の水蒸気バリアフィルムであり、特に、少なくとも二層の無機ガスバリア層の間に2属金属一酸化物からなる吸湿性層を有することで、高いガスバリア能と高い吸湿能とをうる事ができる。
(無機ガスバリア層)
本発明における「無機ガスバリア層」とは、無機材料で構成されるガス分子の透過を抑制しうる緻密な構造の薄膜である層を意味し、例えば、金属化合物からなる薄膜(金属化合物薄膜)が挙げられる。前記無機ガスバリア層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。前記形成方法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などが適しており、具体的には、特許第3400324号、特開2002−322561号、特開2002−361774号各公報記載の形成方法を採用することができる。
前記無機ガスバリア層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTa等から選ばれる一種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物などを用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属酸化物が好ましく、特にSi、Al、Sn、Tiがから選ばれる金属酸化物が好ましい。
また、前記無機ガスバリア層の厚みに関しても特に限定されないが、前記厚みが厚すぎると曲げ応力によるクラックが発生する恐れがあり、薄すぎると膜が島状に分布するため、いずれも水蒸気バリア性が悪くなる傾向がある。このため、各無機ガスバリア層の厚みは、それぞれ5nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、10nm〜1000nmであり、最も好ましくは、10nm〜200nmである。また、二層以上の無機ガスバリア層は、各々が同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよく、特に制限はされない。この際、前記無機ガスバリア層は、炭素を含有する金属酸化物を含んでいてもよい。
本発明において、水蒸気バリア性と高透明性とを両立させるには前記無機ガスバリア層として、珪素酸化物や珪素窒化物または珪素酸化窒化物を用いるのが好ましい。前記無機ガスバリア層として珪素酸化物であるSiOxを用いる場合、良好な水蒸気バリア性と高い光線透過率とを両立させるためには、1.6<x<1.9であることが望ましい。前記無機ガスバリア層として珪素窒化物であるSiNyを用いる場合は、1.2<y<1.3であることが好ましい。yが1.2より大きければ着色が比較的小さくなる傾向があるため、ディスプレイ用途に好ましい。
また、前記無機ガスバリア層として珪素酸化窒化物であるSiOxyを用いる場合、密着性向上を重視するのであれば、酸素リッチの膜とすることが好ましく、具体的には1<x<2、および、0<y<1を満足することが好ましい。一方、水蒸気バリア性の向上を重視する場合には、窒素リッチの膜とすることが好ましく、具体的には0<x<0.8、および、0.8<y<1.3を満足することが好ましい。
(吸湿性層)
本発明における水蒸気バリアフィルムは、さらに「吸湿性層」を有することが好ましい。特に、前記二層の無機ガスバリア層の間に少なくとも一層の2属金属一酸化物からなる吸湿層を有することが好ましい。また、前記吸湿層は、前記2属金属一酸化物として、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、または、Raのいずれかを含む金属酸化物を少なくとも一種含むことが好ましい。本発明においては、前記2属金属一酸化物に含まれる2属金属として、上述の何れの2属金属をも使用することができるが、コスト、高純度材料の入手性、実用性を考慮すると、Mg、Ca、Sr、Baが好適である。さらに吸湿能や安全性の観点からはCa、Srが好ましく、Srが最も好ましい。
ここで「2属一酸化物」とは、2属金属1原子に酸素約1原子が結合した酸化物である。2属金属を「M」とすると、吸湿性層の組成は「MOz」と表記することができ、zは0.8<z<1.2を満足することが好ましく、0.9<z<1.1を満足することが最も好ましい。2属一酸化物は、十分に高い吸湿性と透明性とを両立し、かつ吸湿前後の体積変化が比較的小さいという特徴を有する。またアルカリ金属に比べて層内拡散が起こりにくく、イオン性金属の拡散を嫌うようなデバイス材料への適用には好適である。さらに、シリカゲルやゼオライトのような物理吸着ではなく分子内に水分子を取り込むものであるため、吸湿した水分子が再脱着することもなく本発明の目的には好適である。
前記吸湿性層の成膜法としては、例えば、2属金属一酸化物の分散物を塗設してから400℃以上の高温で焼結する方法を用いることができるが、この場合基材フィルムが耐熱性上の制約を受けたり、高吸湿性材料を不活性雰囲気下でハンドリングすることが困難になったりすることがある。従って、安定した性能を得る観点からは、前記吸湿性層は後述する真空成膜法により形成されることが好ましい。前記真空成膜法としては、例えば、2属金属一酸化物のソースを真空蒸着する方法、2属金属または同部分酸化物を酸化雰囲気で真空蒸着する方法、2属金属過酸化物を真空蒸着する方法等が挙げられる。また、上記真空成膜法においては、イオンアシストを組み合わせたイオンプレーティング法を用いてもよい。更に、前記真空成膜法としては、特開2000−26562号公報に記載されているような、ソースの取扱いが容易で品質のよい成膜が可能な2属金属過酸化物をターゲットとしたスパッタリング法が最も望ましい。
また、共蒸着法や共スパッタ法により、2属金属一酸化物にSiOx、SiNy、SiOxy、SiCなどの無機化合物を共存させた吸湿性層を形成したり、塗設法により無水酢酸・アセト酢酸を2属金属一酸化物に共存させた吸湿性層を形成してもよい。しかし、本発明においては、2属金属一酸化物を単独で成膜した吸湿性層が、均一性、透明性、酸素バリア性に優れている。
前記吸湿性層の厚みは、吸湿性、平滑性、透過性、屈曲耐性の観点から、10nm〜200nmが好ましく、10nm〜100nmがさらに好ましく、10nm〜50nmが特に好ましい。前記吸湿性層の厚みが、10nm以下となると2属金属一酸化物が連続層を形成することが困難になる場合があり、吸湿能力が不足して十分な効果が得られない場合がある。また、前記吸湿性層の厚みが200nm以下であれば欠陥が発生しにくくて、剥離破壊、白色化や光学干渉模様が生じにくいためディスプレイ材料用として好ましい。
また、前記吸湿性層は均一層であることが好ましい。特に、厚みが10nm〜200nmの均一層であることが好ましい。ここで「均一層」とは、層内の組成が均一である層を意味する。均一層であれば、力学的、光学的に不連続な境界が生じにくく、ディスプレイ材料として好適であるという利点がある。
(隣接有機層)
本発明の水蒸気バリアフィルムは、前記無機ガスバリア層および前記吸湿性層の脆性やバリア性を向上させる為に、各層に隣接した隣接有機層を設けることができる。前記隣接有機層は、紫外線もしくは電子線硬化性モノマー、オリゴマーまたは樹脂を、塗布または蒸着で成膜したのち、紫外線または電子線で硬化させた層であることが好ましい。前記隣接有機層は、前記無機ガスバリア層および/または吸湿性層に隣接する層の少なくとも一層に設けられることが好ましい。
前記隣接有機層について、モノマーを架橋させて得られた高分子を主成分として形成した隣接有機層を用いる場合を例に説明する。前記モノマーとしては、紫外線もしくは電子線の照射により架橋できる基を有するモノマーであれば特に限定は無いが、アクリロイル基またはメタクリロイル基、オキセタン基を有するモノマーを用いることが好ましい。上記有機層は、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどのうち、2官能以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーを架橋させて得られる高分子を主成分とすることが好ましい。
これらの2官能以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーは2種類以上を混合して用いてもよいし、また1官能の(メタ)アクリレートを混合して用いてもよい。また、前記オキセタン基を有するモノマーとしては、例えば、特開2002−356607号公報の一般式(3)〜(6)に記載されている構造を有するモノマーが好適に挙げられる。この場合、これらを任意に混合してもよい。
隣接有機層は、ディスプレイ用途に要求される耐熱性、耐溶剤性の観点から、特に架橋度が高く、ガラス転移温度が200℃以上である、イソシアヌル酸アクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートを主成分とすることがさらに好ましい。隣接有機層の厚みについても特に限定はされないが、隣接有機層の厚みが薄すぎると、厚みの均一性を得ることが困難となるため、無機ガスバリア層の構造欠陥を効率よく隣接有機層で埋めることができずに、バリア性の向上は見られない。また、逆に隣接有機層の厚みが厚すぎると、曲げ等の外力により隣接有機層がクラックを発生し易くなるためバリア性が低下してしまう不具合が発生してしまう。かかる観点から、上記隣接有機層の厚みは、10nm〜5000nmが好ましく、10nm〜2000nmさらに好ましく、10nm〜5000nmが最も好ましい。
本発明における隣接有機層の形成方法としては、まず、架橋性のモノマー等を含む塗膜を形成し、その後、該塗膜に電子線もしくは紫外線を照射して硬化させる方法が挙げられる。前記塗膜を形成する方法としては、例えば、塗布による方法、真空成膜法等を挙げることができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましく、有機物質モノマーの成膜速度を制御しやすい抵抗加熱蒸着法がより好ましい。ここで架橋性モノマー等の架橋方法に関しては特に制限はないが、電子線や紫外線等による架橋が、真空槽内に容易に取り付けられる点や架橋反応による高分子量化が迅速である点で望ましい。
塗布方式で前記塗膜を塗設する場合には、従来用いられる種々の塗布方法、例えば、スプレーコート、スピンコート、バーコート等の方法を用いることができる。前記塗膜の形成方法としては塗布法、蒸着法のいずれを用いてもよいが、直下の無機ガスバリア層成膜後に機械的な応力がかかりにくく、かつ薄膜形成に有利な真空成膜法を用いることが好ましい。
本発明において、前記吸湿性層は基材フィルム上の2つの無機ガスバリア層の間に設置してあれば、2つの無機ガスバリア層と隣接する位置、無機ガスバリア層と隣接有機層とに隣接する位置、2つの隣接有機層に隣接する位置のいずれに配置してもよいが、吸湿性層の脆弱性や吸湿後の体積膨張による変形の影響を少なくするという観点からは、2つの隣接有機層に隣接する形で2つの無機ガスバリア層の間に配置されることが最も望ましい。
(その他の機能層ならびに各層の構成)
本発明の水蒸気バリアフィルムは、基材フィルムと無機ガスバリア層との間に、公知のプライマー層または無機薄膜層を設置することができる。前記プライマー層としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂層、親水性樹脂共存下でゾルーゲル反応により形成する有機無機ハイブリッド層、無機蒸着層またはゾル−ゲル法による緻密な無機層を挙げることができる。前記無機蒸着層としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ等の蒸着層が好ましい。前記無機蒸着層は真空蒸着法、スパッタリング法等により形成することができる。
(基材フィルム)
本発明の水蒸気バリアフィルムに用いられる基材フィルムは、上記各層を保持できるフィルムであれば特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。好ましい基材フィルムは、少なくとも一種のポリエステルフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、フルオレン環変性カーボネートフィルム、脂環変性ポリカーボネートフィルム、アクリロイル化合物フィルムから選ばれた基材フィルムであることが好ましい。これらの基材フィルムとしては、具体的に、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性カーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
これらの樹脂のうち、好ましい例としては、ポリアリレート樹脂(PAr)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、フルオレン環変性カーボネート樹脂(BCF−PC:特開2000−227603号公報の実施例−4の化合物)、脂環変性ポリカーボネート樹脂(IP−PC:特開2000−227603号公報の実施例−5の化合物)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の実施例−1の化合物)等の化合物からなるフィルムが挙げられる。本発明における基材フィルムとしては、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上であるポリエステルフィルムであることが好ましく、特にポリエステルはそのガラス転移点(Tg)が150℃〜400℃であることが好ましい。
前記基材フィルムを構成する化合物としては、下記一般式(1)で表されるスピロ構造を有する樹脂または下記一般式(2)で表されるカルド構造を有する樹脂が好ましい。
Figure 2006239884
〔一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、2つの環はスピロ結合によって結合される。〕
Figure 2006239884
〔一般式(2)中、環βおよび環γは単環式または多環式の環を表し、2つの環γはそれぞれ同一若しくは異なっていてもよい。また、環βおよび環γは、環β上の1つの4級炭素原子によって連結される。〕
前記一般式(1)および(2)で表される樹脂は、高耐熱性、高弾性率かつ高い引張り破壊応力を有する化合物であるため、製造プロセスにおいて種々の加熱操作が要求され、かつ屈曲させても破壊しにくい性能が要求される有機EL素子等の基板材料として好適に用いることができる。
前記一般式(1)における環αは単環式または多環式の環を表し、例えば、インダン、クロマン、ベンゾフランが挙げられる。前記一般式(1)で表されるスピロ構造を有する樹脂の好ましい例としては、下記一般式(3)で表されるスピロビインダン構造を繰り返し単位中に含むポリマー、下記一般式(4)で表されるスピロビクロマン構造を繰り返し単位中に含むポリマー、下記一般式(5)で表されるスピロビベンゾフラン構造を繰り返し単位中に含むポリマーを挙げることができる。
Figure 2006239884
一般式(3)中、R31、R32、R33はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R31、R32、R33のそれぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R31およびR32はそれぞれ独立して、水素原子、メチル基またはフェニル基であることがさらに好ましい。また、R33としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基であることがさらに好ましい。
Figure 2006239884
一般式(4)中、R41およびR42はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R41およびR42のそれぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R41としては、水素原子、メチル基またはフェニル基がさらに好ましく、R42としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基がさらに好ましい。
Figure 2006239884
一般式(5)中、R51およびR52はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R51、R52のそれぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R51としては、水素原子、メチル基またはフェニル基が好ましい。また、R52としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基が好ましい。
また、前記一般式(2)における環βは、単環式または多環式の環を表し、例えばフルオレン、1,4−ビベンゾシクロヘキサンが挙げられる。また、環γは、単環式または多環式の環を表し、例えばベンゼン、ナフタレンが挙げられる。前記一般式(2)で表されるカルド構造を有する樹脂の好ましい例として、下記一般式(6)で表されるフルオレン構造を繰り返し単位中に含むポリマーを挙げることができる。
Figure 2006239884
一般式(6)中、R61およびR62はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R51、R52のそれぞれが連結して環を形成してもよい。jおよびkはそれぞれ独立に1〜4の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R51およびR52としては、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基であることがさらに好ましい。
前記一般式(3)〜(6)で表される構造を繰り返し単位中に含む樹脂は、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドまたはポリウレタンなど種々の結合方式で連結されたポリマーであってもよいが、一般式(3)〜(6)で表される構造を有するビスフェノール化合物から誘導されるポリカーボネート、ポリエステルまたはポリウレタンであることが好ましい。
以下に一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有する樹脂の好ましい具体例(樹脂化合物(I−1)〜(FL−13))を挙げる。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
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本発明における基材フィルムに用いることのできる好ましい一般式(1)および一般式(2)で表される構造を有する樹脂は、単独で用いてもよく、複数種混合して用いてもよい。また、ホモポリマーであってもよく、複数種構造を組み合わせたコポリマーであってもよい。前記樹脂をコポリマーとする場合、一般式(1)または(2)で表される構造を繰り返し単位中に含まない公知の繰り返し単位を本発明の効果を損ねない範囲で共重合することができる。なお、ホモポリマーとして用いた場合よりも溶解性および透明性の観点で優れている場合が多いことから、上記樹脂はコポリマーであることが好ましい。
本発明に用いることのできる一般式(1)および(2)で表される構造を有する樹脂の好ましい分子量は、重量平均分子量で1万〜50万が好ましく、2万〜30万がさらに好ましく、3万〜20万が特に好ましい。前記樹脂の分子量が低すぎる場合、フィルム成形が困難となりやすく、また力学特性が低下してしまう場合がある。また、分子量が高すぎる場合、合成上分子量のコントロールが困難となり、また溶液の粘度が高すぎて取扱いが難しくなる場合がある。なお、前記分子量は、これに対応する粘度を目安にすることもできる。
また、本発明における一般式(1)または一般式(2)で表される基材フィルムを構成する樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が150℃〜450℃の熱可塑性樹脂であることが好ましく、ガラス転移温度(Tg)が200℃〜430℃がさらに好ましく、特にはガラス転移温度(Tg)が250℃〜400℃の熱可塑性樹脂であることがさらに好ましい。
本発明における基材フィルムは、その性質上、水を取り込まないことが望ましい。すなわち水素結合性官能基を持たない樹脂から形成されていることが望ましい。前記基材フィルムの平衡含水率は0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0.05質量%以下であることが特に好ましい。
(導電性層)
本発明の水蒸気バリアフィルムは、少なくとも一層の抵抗が1012Ω(25℃・相対湿度60%)以下である導電性層を有することを特徴とする。前記導電性層は、抵抗が1×1011.5Ω以下であることが好ましく、1×1010Ω以下であることが更に好ましく、1×109Ω以下が特に好ましい。本発明においては、前記抵抗が温湿度の変化に対しても変動しないことが好ましく、例えば低温低湿から高温高湿度下においても上記の抵抗を有する層が好ましい。その場合の環境変化としては製造工程あるいは取り扱い時の環境を考えると、−30℃〜300℃でかつ相対湿度0〜100%などの広範囲な温湿度域でも、導電性が1012Ω以下であることが好ましい。ここで、導電性層の抵抗は導電性層自身を測定する場合は、一般的な表面抵抗で求めてもよいが、内部導電性層の場合はそのエッジ部から評価することが推奨される。すなわち、導電性層の両端部に銀ペイントを塗布し、導電性層の抵抗を測定することで抵抗値を求めることができる。
まず、本発明における導電性層は、少なくとも一種の導電性無機素材、および/または、少なくとも一種の有機導電性素材を含有する層であることが好ましい。さらには、前記導電性層が、導電性金属酸化物や導電性ポリマーを含むことが好ましい。なお、本発明における導電性層は、蒸着やスパッタリングにより形成された透明導電性膜でもよい。
前記導電性無機素材としては金属酸化物が挙げられ、該金属酸化物としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2またはV25、あるいは、これらの金属元素を含む複合酸化物等が好ましく、特にZnO、SnO2、Sb23またはV25が好ましい。前記複合酸化物の異種原子例としては、Al、In、Ta、Sb、Nb、Ag、Cl、Br、Iの添加が効果的であり、その添加量としては0.01mol%〜25mol%の範囲が好ましい。前記複合酸化物が異種原子を含む例としては、ZnOに対してはAl、In等の添加、SnO2に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等の添加、またTiO2に対してはNb、Ta等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01mol%〜30mol%の範囲が好ましいが、0.1mol%〜10mol%であれば特に好ましい。
また、これらの導電性を有する前記金属酸化物は粉体であることが好ましく、前記金属酸化物粉体の体積抵抗率は105Ωm以下が好ましく、さらには103Ωm以下であることが好ましく、特に10Ωm以下であることが好ましい。また、前記金属酸化物粉体の1次粒子サイズは50Å〜0.2μmであることが好ましく、特には50Å〜0.1μmであることが好ましい。また、これらの凝集体の高次構造の長径が100Å〜6μmである特定の構造を有する粉体(導電性微粒子)を、導電性層に体積分率で0.01%〜80%含んでいることが好ましい。この導電性微粒子の使用量は0.001〜5.0g/m2が好ましく、特に0.005〜1g/m2が好ましい。これらの酸化物については特開昭56−143431号、同56−120519号、同58−62647号各公報などに記載されている。さらに、特公昭59−6235号公報に記載のごとく、他の結晶性金属酸化物粒子あるいは繊維状物(例えば酸化球状カーブンブラック)に上記の金属酸化物を付着させた導電性素材を使用してもよい。該導電性素材の利用できる粒子サイズとしては10μm以下が好ましいが、2μm以下であると分散後の安定性がよく使用し易い。
また、本発明における導電性層には、光散乱性をできるだけ小さくする為に、0.5μm以下の導電性粒子を利用することが好ましい。これによって、導電性層を設けても支持体を透明に保つことが可能となる。また、導電性材料が繊維状の場合には、その繊維の長さは30μm以下で直径が2μm以下であることが好ましく、長さが25μm以下で直径0.5μm以下であり長さ/直径比が3以上であることが更に好ましい。特に好ましくは、結晶性金属酸化物であるSnO2/Sb23(または/Sb25)であり、一次粒子サイズが10〜50nmの平均径を有し二次凝集体として約0.01〜0.5μmである球形の導電性材料を挙げることができる。さらに、本発明においてはゾル状金属酸化物も使用でき、例えば酸化錫ゾル溶液、アルミナゾル溶液からなる導電性層を形成することができる。
また、本発明における導電性層は、イオン導電性物質を含んでいてもよい。前記イオン導電性物質とは、電気伝導性を示し、電気を選ぶ担体であるイオンを含有する物質のことを意味する。前記イオン導電性物質の例としては、イオン性高分子化合物と電解質とを含む金属酸化物ゾルを挙げることができる。前記イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、同49−23827号、同47−28937号各公報にみられるようなアニオン性高分子化合物;特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、同57−18175号、同57−18176号、同57−56059号各公報などにみられるような、主鎖中に解離基をもつアイオネン型ポリマー;特公昭53−13223号、同57−15376号、特公昭53−45231号、同55−145783号、同55−65950号、同55−67746号、同57−11342号、同57−19735号、特公昭58−56858号各公報、開61−27853、開62−9346にみられるような、側鎖中にカチオン性解離基をもつカチオン性ペンダント型ポリマー;等を挙げることができる。前記イオン性高分子化合物は、これを単独で用いてもよいし、あるいは数種類のイオン導電性物質を組み合わせて使用してもよい。そしてこのようなイオン性高分子化合物は0.005g〜2.0g/m2の範囲で用いられているのが好ましく、特に0.01g〜1.0g/m2の範囲で用いられるのが好ましい。
また、前記電解質としては、硝酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、過塩素酸カリウム、P−トルエンスルフォン酸などが挙げられる。また、電解質の含有量は、0.0001〜1.0g/m2が好ましく、更には0.005〜0.5g/m2が好ましい。
これらをさらに具体的に記すと、本発明に用いられる導電性高分子化合物としては、例えばポリビニルベンゼンスルホン酸塩類、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、米国特許第4,108,802号、同4,118,231号、同4,126,467号、同4,137,217号各明細書に記載の4級塩ポリマー類、米国特許第4,070,189号、OLS2,830,767号各明細書、特開昭61−296352号、同61−62033号各公報等に記載のポリマーラテックス等が好ましい。以下に本発明で用いることができる導電性高分子化合物の具体例を示すが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
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本発明に用いられる導電性無機金属素材または有機導電性素材はバインダー中に分散または溶解させて用いられる。前記バインダーとしては、フィルム形成能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばゼラチン、カゼイン等の蛋白質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物、デキストラン、寒天、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体等の糖類、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸等の合成ポリマー等を挙げることができる。特に、ゼラチン(石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、酵素分解ゼラチン、フタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン等)、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリルアミド、デキストラン、SBRラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテクッス等が好ましい。
本発明に用いられる導電性無機金属素材または有機導電性素材をより効果的に使用して導電性層の抵抗を下げるために、導電性層中における導電性物質の体積含有率は高い方が好ましいが、層としての強度を十分に持たせるためには最低5%程度のバインダーが必要であるため、係る観点から、導電性無機金属素材または有機導電性素材の体積含有率は5〜95%の範囲が望ましい。本発明に用いる導電性無機金属素材または有機導電性素材の使用量は、1平方メートル当たり0.01〜2gが好ましく、特に0.01〜0.5gが好ましい。本発明に用いられる導電性無機金属素材または有機導電性素材を含有する導電性層は、基材フィルム上に構成層として少なくとも一層設けられる。前記導電性層は、例えば、表面保護層、バック層、下塗層などのいずれでもよいが、必要に応じて二層以上設けることもできる。
さらに前記導電性材料として、有機電子伝導性材料も好ましく、例えばポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアセチレン誘導体などを挙げることができる。これらの中でも特に好ましいのは、ポリピロールでありポリスチレンスルホン酸との塩が好ましい。また、前記有機電子伝導性材料は、少なくとも一種以の金または銀コロイドを含有することも好ましい。さらに耐候性の観点から銀とパラジウムとの合金が好ましいく、パラジウムの含有量としては5〜30質量%が好ましい。銀コロイド粒子の作製方法としては、通常の低真空蒸発法による微粒子の作製方法や金属塩の水溶液を還元する金属コロイド作製方法が挙げられる。これらの金属粒子の平均粒子サイズは1〜200nmが好ましい。導電性層は実質的に金属微粒子のみからなることが好ましく、バインダー等の非導電性のものを含有しないことが導電性の観点から好ましい。
本発明の水蒸気バリアフィルムに設置される導電性層は、機能層としてその導電性が確保できれば特にその位置は限定されないが、好ましい層構成としては下記を挙げることができる。湿性層の基材フィルムとは反対側、即ち、基材フィルムが設けられている側を内側とみなした際に、前記吸湿性層の外側に設置した無機ガスバリア層のさらに外側に、無機ガスバリア層・吸湿性層・隣接有機層を任意の順序で一層以上設置してもよい。また吸湿性層の外側に設置した無機ガスバリア層の外側または最外層にそれぞれ種々の機能層を設置してもよく、本発明では導電性層をこの部位に設置してもよい。
本発明における導電性層以外の機能層の例としては、反射防止層、偏光層、カラーフィルター、紫外線吸収層および光取出効率向上層等の光学機能層;ハードコート層や応力緩和層等の力学的機能層;防曇層;防汚層;被印刷層などが挙げられる。これらの機能層は無機ガスバリア層、吸湿性層および隣接有機層を設置した基材フィルムの反対側に設置してもよい。また、本発明の水蒸気バリアフィルムは、基材フィルムの両面に無機ガスバリア層、吸湿性層および隣接有機層などを設けることができる。さらに、吸湿性層の基材フィルムとは反対側に、少なくとも無機ガスバリア層と隣接有機層と無機ガスバリア層とがこの順に積層されたガスバリア性ラミネート層を設けることもできる。ガスバリア性ラミネート層は、フィルム反対面からの水分子の侵入を防ぐことでフィルム基板の寸法変化を抑制することでガスバリア層への応力集中や破壊を防止し、結果として耐久性の高いディスプレイを供給しうるという特徴を有する。
《光学表示材料》
本発明の水蒸気バリアフィルムの用途は特に限定されないが、光学特性と機械特性との双方に優れるため、画像表示素子の透明電極用基板などの光学表示材料として好適に用いることができる。ここでいう「画像表示素子」とは、円偏光板、液晶表示素子、タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などを意味する。
<円偏光板>
前記円偏光板は、本発明の水蒸気バリアフィルム上に、λ/4板と偏光板とを積層することで作製することができる。この場合、λ/4板の遅相軸と偏光板の吸収軸とが45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−865554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
<液晶表示素子>
前記液晶表示装置は、反射型液晶表示装置と透過型液晶表示装置とに大別することができる。
前記反射型液晶表示装置は、下方から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明の水蒸気バリアフィルムは、前記透明電極および上基板として使用することができる。前記反射型液晶表示装置にカラー表示機能をもたせる場合には、さらにカラーフィルター層を前記反射電極と前記下配向膜との間、または、前記上配向膜と前記透明電極との間に設けることが好ましい。
また、前記透過型液晶表示装置は、下方から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる構成を有する。このうち本発明の水蒸気バリアフィルムは、前記上透明電極および上基板として使用することができる。また、前記透過型液晶表示装置にカラー表示機能をもたせる場合には、さらにカラーフィルター層を前記下透明電極と前記下配向膜との間、または、前記上配向膜と前記透明電極との間に設けることが好ましい。
前記液晶層の構造は特に限定されないが、例えば、TN(Twisted Nematic)型、STN(Supper Twisted Nematic)型またはHAN(Hybrid Alligned Nematic)型、VA(Vertically Allignment)型、ECB(Electrically Controlled Birefringence)型、OCB(Optically Compensatory Bend)型、または、CPA(Continuous Pinwheel Allignment)型であることが好ましい。
<タッチパネル>
前記タッチパネルとしては、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載されたものの基板に本発明の水蒸気バリアフィルムを適用したものを用いることができる。
<有機エレクトロルミネッセンス素子>
本発明の基材として最も特徴を活かすことのできる有機エレクトロルミネッセンス素子につき詳細に説明する。本発明の発光素子は基板上に陰極と陽極とを有し、両電極の間に有機発光層(以下、単に「発光層」と称する場合がある。)を含む有機化合物層を有する。発光素子の性質上、陽極および陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
本発明における有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、または、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。尚、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
(陽極)
前記陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、またはこれらの混合物が好適に挙げられる。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
前記陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流または高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
前記有機エレクトロルミネッセンス素子において、陽極の形成位置は特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよい。また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
(陰極)
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、2属金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属や2属金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属または2属金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その一種または2種以上を同時または順次にスパッタ法等に従って行うことができる。陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属または2属金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、さらにITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
(有機化合物層)
前記有機化合物層について説明する。
前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有しており、前記発光層以外の他の有機化合物層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
−有機化合物層の形成−
前記有機エレクトロルミネッセンス素子において、有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
−有機発光層−
前記有機発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、または正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、または電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子との再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料と発光材料との混合層とした構成でもよい。
前記発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であってもよく、ドーパントは一種であっても2種以上であってもよい。
また、前記ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても2種以上であってもよく、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。また、発光層は一層であっても二層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
また、本発明に使用できる燐光発光材料は、例えば、遷移金属原子またはランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、および白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、および白金である。ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、およびガドリニウムが好ましい。
前記錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著「Comprehensive Coordination Chemistry」Pergamon Press社 1987年発行;H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社 1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
前記発光材料は、発光層中に、0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。また、本発明における発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するものおよびアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
前記発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。
(正孔注入層・正孔輸送層)
正孔注入層および正孔輸送層は、陽極または陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
具体的に、正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.5nm〜100nmであるのがより好ましく、1nm〜100nmであるのがさらに好ましい。正孔注入層および正孔輸送層は、上述した材料の一種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
(電子注入層・電子輸送層)
電子注入層および電子輸送層は、陰極または陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層および電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
電子注入層および電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々50nm以下であることが好ましい。具体的には、電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのがさらに好ましい。電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の一種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。正孔ブロック層は、上述した材料の一種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
(保護層)
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2等の金属酸化物、SiNx、SiNxy等の金属窒化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも一種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。本発明においては、保護層が導電性層として使用されてもよい。
(封止)
さらに、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。また、封止容器と発光素子との間の空間に水分吸収剤または不活性液体を封入してもよい。
前記水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。
前記不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、または直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。前記有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
《基板フィルムの製造方法》
次に本発明における基板フィルムには各種樹脂が用いられるが、前記一般式(1)または一般式(2)で表される樹脂からなる基板フィルムを例に前記基板フィルムの製造工程について説明する。しかし、樹脂については特に限定されるものではない。本発明における基板フィルムに好適に用いられる樹脂(例えば、一般式(1)または一般式(2)で表される樹脂;以下、「本発明における水蒸気バリア基板樹脂」と称する場合がある。)は、一般に有機溶媒に溶解して流延製膜される。本発明における水蒸気バリア基板樹脂を溶解する溶媒は、ハロゲン系有機溶媒でもよく、非ハロゲン系有機溶媒でもよい。
まず上記溶媒として好ましく用いられるハロゲン系有機溶媒について記述する。本発明の主溶媒として用いられるハロゲン系有機溶媒は、炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく、好ましくはジクロロメタンまたはクロロホルムであり、特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。
その場合は、ジクロロメタンは少なくとも50質量%以上使用することが必要であり、より好ましくは70質量%〜100質量%である。また塩素系有機溶媒と併用される溶媒としてはアルコールやケトン系有機溶媒、あるいはエステル系有機溶媒が好ましい。
前記アルコールとしては、直鎖であっても分枝を有していても環状のアルコールであってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素系アルコールであることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。
なお前記アルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。
さらに炭化水素としては、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。前記炭化水素としては、芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素とのいずれも用いることができる。前記脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。前記炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。さらに前記炭化水素としては、酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサン、炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルも好ましい。
前記塩素系有機溶媒に好ましく併用される非塩素系有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチル、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンが挙げられる。これらのハロゲン系有機溶媒以外の併用される有機溶媒は、50質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0〜40質量%であり、特に好ましくは5〜30質量%である。
塩素系有機溶媒を主溶媒とする好ましい溶剤組成として、以下の具体例を挙げることができるが、本発明で用いることができる溶剤組成はこれらに限定されるものではない(下記の括弧内の数字は質量部を示す)。
(MC−1):ジクロロメタン(100)
(MC−2):ジクロロメタン/メタノール(95/5)
(MC−3):ジクロロメタン/アセトン(95/5)
(MC−4):ジクロロメタン/ブタノール(98/2)
(MC−5):ジクロロメタン/メチルエチルケトン/ブタノール(90/8/2)
(MC−6):ジクロロメタン/シクロペンタノン(90/10)
(MC−7):ジクロロメタン/酢酸メチル(95/5)
(MC−8):ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル(85/10/5)
次に、本発明における水蒸気バリア基板樹脂に用いられる非ハロゲン系有機溶媒について記述する。好ましい非ハロゲン系有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アミドから選ばれる溶媒が好ましい。前記エステル、ケトンおよび、エーテル、アミドは、環状構造を有していてもよい。前記エステル、ケトン、エーテル、アミドの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。炭素原子数が3〜12のアミド類の例には、N−メチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホンアミドなどを挙げることができる。
本発明において好ましい非ハロゲン系溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも一種あるいはそれらの混合液が挙げられ、さらに好ましくは酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチルあるいはこれらの混合物が挙げられる。
本発明で好ましいこれらの溶媒組み合わせの具体例として、以下のものを挙げることができる。括弧内の数値は、各成分の質量比を示す
(SL−1)酢酸メチル(100)
(SL−2)酢酸メチル/アセトン(95/5)
(SL−3)酢酸メチル/シクロペンタノン/タノール(90/5/5)
(SL−4)アセトン/アセト酢酸メチル(95/5)
(SL−5)アセトン/ブタノール(95/5)
(SL−6)酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)
(SL−7)酢酸メチル/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)
(SL−8)酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)
(SL−9)ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)
(SL−10)アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)
(SL−11)3ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/エタノール(55/20/10/5/5/5、質量部)
(SL−12)アセトン/メタノール/ブタノール(75/20/5、質量部)
(SL−13)アセトン/エタノール/イソプロパノール(80/10/10、質量部)
(SL−14)アセトン/エタノール/ブタノール(85/10/5、質量部)
(SL−15)アセトン/エタノール/ブタノール/ジクロロメタン (77/10/5/8、質量部)
これらの中でも、前記非ハロゲン系溶媒としては、特に酢酸メチル/アセトンの混合溶媒系が好ましく、特にSL−2、SL−6、SL−10、SL−12の組成を有する溶媒系などが好ましい。
本発明に用いられる溶媒(ドープ)には、上記有機溶媒以外に、メチレンクロライドを全有機溶媒量の10質量%以下含有させることもフィルムの透明性を向上させたり、溶解性を早めたりする上で好ましい。
前記基板フィルムの製造方法においては、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができる。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
好ましく添加される可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルまたはグリコール酸エステルが用いられる。
前記リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートが含まれる。
前記カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、が含まれる。
その他の前記カルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
前記グリコール酸エステルの例としては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなどがある。さらにトリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ジトリメチロールプロパンテトラプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート、ソルビトールトリアセテートトリプロピオネート、イノシトールペンタアセテート、ソルビタンテトラブチレート等も好ましく利用される。
中でもトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート、ソルビトールトリアセテートトリプロピオネート等が好ましく、特にトリフェニルホスフェート、ジエチルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート、ソルビトールトリアセテートトリプロピオネートが好ましい。これらの可塑剤は一種でもよいし2種以上併用してもよい。
前記可塑剤の添加量は水蒸気バリア基板樹脂に対して5〜30質量%以下、特に5〜16質量%が好ましい。
これらの可塑剤としては、特開平11−124445号公報記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−246704号公報記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報記載のクエン酸エステル類、特開平11−90946号公報記載の置換フェニルリン酸エステル類などを用いることもできる。
前記基板フィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止剤を添加してもよい。これらの劣化防止剤や紫外線防止剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。これらの添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を越えると、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。
特に好ましくは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有させることである。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、水蒸気バリア基板樹脂に対する不要な着色が少ないことから、好ましい。
好ましい紫外線防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。
前記紫外線防止剤としては、特に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が最も好ましい。
また、例えば、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどのヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどの燐系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、水蒸気バリア基板樹脂に対して質量割合で1ppm〜3.0%が好ましく、10ppm〜2%がさらに好ましい。
また、前記基板フィルムのレターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用してもよい。前記芳香族化合物は、前記水蒸気バリア基板樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。また、前記芳香族化合物は、本発明における水蒸気バリア基板樹脂100質量部に対して、0.05〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
前記芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
また、本発明における水蒸気バリア基板樹脂を溶解した溶液には添加剤として、シリカ、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナなどの無機微粒子、カルシウム、マグネシウムなど2属金属の塩などの熱安定剤、難燃剤、などを添加することができる。
(光学特性)
次に、前記基板フィルムの光学特性について説明する。
ここで光学特性評価は、前記基板フィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、フィルム表面に対し垂直方向および遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出させて実施した。
次に、前記水蒸気バリア基板樹脂の溶解工程について記述する。本発明における水蒸気バリア基板溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温で溶解させてもよく、さらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、超臨界溶解法さらにはこれらの組み合わせで実施される。室温溶解の場合は、温度0〜55℃で水蒸気バリア基板樹脂を溶媒や添加剤と混合し、溶解釜などの中で攪拌・混合して溶解される。溶解に関しては、水蒸気バリア基板樹脂粉体を溶媒で十分均一に浸すことが重要であり、所謂ママコ(溶媒が全く行き渡らない水蒸気バリア基板樹脂粉末部)を発生させないことが好ましい。そのため、攪拌容器の中に溶媒を予め添加しておき、その後に、溶解容器を減圧にして水蒸気バリア基板樹脂を添加することが好ましい場合もある。また、逆に攪拌容器の中に水蒸気バリア基板樹脂を予め添加しておき、その後に、溶解容器を減圧にして溶媒を添加することが好ましい場合もある。また、水蒸気バリア基板樹脂を予めアルコールなどの貧溶媒に湿らせておき、しかる後に本発明のハロゲン系有機溶媒を添加することも、好ましい溶液の作製方法である。
複数の溶媒を用いる場合は、その添加順は特に限定されない。例えば、主溶媒中に水蒸気バリア基板樹脂を添加した後に、他の溶媒(例えばアルコールなどのゲル化溶媒など)を添加してもよいし、逆にゲル化溶媒を予め水蒸気バリア基板樹脂に湿らせた後の主溶媒を加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。なお、攪拌に当たっては水蒸気バリア基板樹脂と溶媒とを混合した後、そのまま静置して十分に水蒸気バリア基板樹脂を溶媒で膨潤させて、続いて攪拌して均一な溶媒としてもよい。水蒸気バリア基板樹脂の量は、この混合物中に5〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。水蒸気バリア基板樹脂の量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。
次に前記冷却溶解法について記述する。本発明における水蒸気バリア基板樹脂溶液(ドープ)の調製は、冷却溶解法に従い実施されてもよく、詳細は以下に説明する。まず室温近辺の温度(−10〜40℃)で有機溶媒中に水蒸気バリア基板樹脂を撹拌しながら徐々に添加する。複数の溶媒を用いる場合は、その添加順は特に限定されない。例えば、主溶媒中に水蒸気バリア基板樹脂を添加した後に、他の溶媒(例えばアルコールなどのゲル化貧溶媒など)を添加してもよいし、逆にゲル化貧溶媒を予め水蒸気バリア基板樹脂に湿らせた後の主溶媒を加えてもよく、不均一溶解の防止(所謂ママコ防止)に有効である。水蒸気バリア基板樹脂の量は、この混合物中に5〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。水蒸気バリア基板樹脂の量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。この時実施する時間は特に限定されないが、1分〜3日が好ましく、2〜12時間が更に好ましく、特には2〜2時間が好ましい。
次に、混合物は−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃)に冷却される。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、水蒸気バリア基板樹脂と有機溶媒との混合物が固化する。前記冷却速度は、特に限定されないがバッチ式での冷却の場合は、冷却に伴い水蒸気バリア基板樹脂溶液の粘度が上がり、冷却効率が劣るために所定の冷却温度に達するために効率よい溶解釜とすることが必要である。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。冷却溶解方法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。この時実施する時間は特に限定されないが、1分〜3日が好ましく、2〜12時間が更に好ましく、特には2〜2時間が好ましい。
また本発明では高温溶解法も好ましく用いられる。本発明における水蒸気バリア基板樹脂溶液(ドープ)の調製は、高温溶解法に従い以下のように実施される。
まず室温近辺の温度(−10〜40℃)で有機溶媒中に水蒸気バリア基板樹脂を撹拌しながら徐々に添加する。複数の溶媒を用いる場合は、その添加順は特に限定されない。例えば、主溶媒中に水蒸気バリア基板樹脂を添加した後に、他の溶媒(例えばアルコールなどのゲル化溶媒など)を添加してもよいし、逆にゲル化溶媒を予め水蒸気バリア基板樹脂に湿らせた後の主溶媒を加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。本発明における水蒸気バリア基板樹脂溶液は、各種溶媒を含有する混合有機溶媒中に水蒸気バリア基板樹脂を添加し予め膨潤させることが好ましい。その場合、−10〜40℃でいずれかの溶媒中に、水蒸気バリア基板樹脂を撹拌しながら徐々に添加してもよいし、場合により特定の溶媒で予め膨潤させその後に他の併用溶媒を加えて混合し均一の膨潤液としてもよく、さらには2種以上の溶媒で膨潤させしかる後に残りの溶媒を加えてもよい。この時実施する時間は特に限定されないが、1分〜3日が好ましく、2〜12時間が更に好ましく、特には2〜2時間が好ましい。
次に有機溶媒混合液は、0.2MPa〜30MPaの加圧下で70〜240℃に加熱される(好ましくは80〜220℃、さらに好ましくは100〜200℃、最も好ましくは100〜190℃)。加熱は、例えば高圧蒸気でもよく電気熱源でもよい。高圧のためには耐圧容器あるいは耐圧ラインを必要とするが、鉄やステンレス製あるいは他の金属耐圧容器やラインのいずれでもよく、特に限定されない。次にこれらの加熱溶液はそのままでは塗布できないため、使用された溶媒の最も低い沸点以下に冷却する必要がある。その場合、−10〜50℃に冷却して常圧に戻すことが一般的である。冷却は水蒸気バリア基板樹脂溶液が内蔵されている高圧高温容器やラインを、室温に放置するだけでもよく、さらに好ましくは冷却水などの冷媒を用いて該装置を冷却してもよい。なお、溶解を早めるために加熱と冷却との操作を繰り返してもよい。溶解が十分であるかどうかは、目視により溶液の概観を観察するだけで判断することができる。高圧高温溶解方法においては、溶媒の蒸発を避けるために密閉容器を用いる。また、膨潤工程おいて、加圧や減圧にしたりすることでさらに溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器あるいはラインが必須である。この時実施する時間は特に限定されないが、1分〜3日が好ましく、2〜12時間が更に好ましく、特には2〜2時間が好ましい。
前述した方法により得られた水蒸気バリア基板樹脂溶液は、水蒸気バリア基板樹脂溶液として高濃度のドープが得られるのが特徴であり、濃縮という手段に頼らずとも高濃度でしかも安定性の優れた水蒸気バリア基板樹脂溶液が得られる。しかし、さらに溶解を短時間で達成するために低濃度で溶解してから、濃縮手段を用いて濃縮する方法も採用される。濃縮の方法としては、特に限定するものはないが、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて溶媒を蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(例えば、特開平4−259511号公報等)、加熱した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶媒をフラッシュ蒸発させるとともに、溶媒蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(例えば米国特許第2,541,012号、同第2,858,229号、同第4,414,341号、同第4,504,355号各明細書等などに記載の方法)等で実施できる。水蒸気バリア基板樹脂溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常10Pa・s〜2000Pa・sの範囲に調製されることが好ましく、特に30Pa・s〜400Pa・sが好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜70℃であり、より好ましくは−5〜55℃である。
次に、水蒸気バリア基板樹脂溶液のろ過について記述する。水蒸気バリア基板樹脂溶液は流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくのが好ましい。水蒸気バリア基板樹脂溶液の濾過には絶対濾過精度が0.005mm以上で、0.1mm以下のフィルターを用いられ、さらには絶対濾過精度が0.005mm未満、0.0005mm以上であるフィルターを用いることが好ましく用いられる。その場合、16kg/cm2 以下(好ましくは12kg/cm2以下、さらに好ましくは10kg/cm2以下、特に好ましくは2kg/cm2以下。)の濾過圧力で濾過して製膜することが好ましい。このろ過によりクロスニコル状態で認識される大きさが50μmを越える異物は面積250mm2当たり実質上0個が達成でき、さらには5〜50μmの異物が面積250mm2当たり200個以下が達成でき、偏光板用保護膜の商品価値を著しく上げることができる。
ここで、本発明で得られるフィルムはクロスニコル状態で配置した二枚の偏光板の間に置かれ、一方の偏光板の外側から光を当て、他方の偏光板の外側から顕微鏡(透過光源で倍率30倍)で認識し、その時の異物の数を10箇所にわたって測定し、この評価を5回繰り返した時の異物の数と定義したものである。
本発明における水蒸気バリア基板樹脂溶液を用いたフィルムの溶液流延の製造方法について述べる。本発明の前記基板フィルムを製造する方法および設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法および溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(水蒸気バリア基板樹脂溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡する工程などで最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の支持体の上に均一に流延され、支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。
まず、調製した水蒸気バリア基板樹脂溶液(ドープ)は、ソルベントキャスト法により前記基板フィルムが作製される際に、ドープをドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号、同2,739,070号、英国特許第640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましく用いられる。
本発明では得られた水蒸気バリア基板樹脂溶液を、支持体としての平滑なバンド上あるいはドラム上に単層液として流延してもよいし、二層以上の複数の水蒸気バリア基板樹脂液を流延してもよい。複数の水蒸気バリア基板樹脂溶液を流延する場合、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口から水蒸気バリア基板樹脂を含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つ以上の流延口から水蒸気バリア基板樹脂溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度水蒸気バリア基板樹脂溶液の流れを低粘度の水蒸気バリア基板樹脂溶液で包み込み、その高,低粘度の水蒸気バリア基板樹脂溶液を同時に押出す流延方法でもよい。
また、2個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成型したフィルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことによりフィルムを作製することもできる。例えば、特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延する水蒸気バリア基板樹脂溶液は同一の溶液でもよいし、異なる水蒸気バリア基板樹脂溶液でもよく特に限定されない。複数の水蒸気バリア基板樹脂層に機能を持たせるために、その機能に応じた水蒸気バリア基板樹脂溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらに本発明における水蒸気バリア基板樹脂溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光膜など)を同時に流延することも実施しうる。
詳細に本発明に有用な流延方法について記すと、調製されたドープを加圧ダイから支持体上に均一に押し出す方法、一旦支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法(例えば特開昭61−94724号、同61−148013号、特開平4−85011号、同4−286611号、同5−185443号、同5−185445号、同6−278149号、同8−207210号各公報などに記載の方法)を好ましく用いることができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
前記基板フィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。前記基板フィルムの製造に用いられる加圧ダイは、支持体の上方に1基あるいは2基以上の設置でもよい。好ましくは1基または2基である。2基以上設置する場合には流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液する。
前記基板フィルムの製造に係わる支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には支持体(ドラムあるいはベルト)の表面側、つまり支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラムあるいはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側の裏面から接触させて、伝熱によりドラムあるいはベルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の支持体の表面温度はドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何℃でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。
前記基板フィルムの乾燥工程における乾燥温度は40〜250℃、特に70〜220℃が好ましい。さらに残留溶剤を除去するために、50〜200℃で乾燥され、その場合逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましく用いられている。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量および乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。最終仕上がりフィルムの残留溶剤量は2質量%以下、さらに0.4質量%以下であることが、寸度安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。
支持体上に形成された前記基板フィルムは、支持体から剥離される。このときの、剥離荷重の最大値(最大剥離荷重)は1〜30g/cmであることが好ましく、1〜28g/cmであることがより好ましく、3〜25g/cmであることがさらに好ましい。また、水蒸気バリア基板樹脂溶液を支持体上にドープを流延した時点から剥離が開始するまでの時間は30〜600秒であることが好ましく、30〜400秒がより好ましく、30〜240秒がさらに好ましい。
支持体から剥離後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは巾方向に収縮しようとする。高温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式)が好ましい。
本発明においては、その物理特性を向上させるために積極的に幅方向に延伸する方法もあり、本発明では、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号各公報などに記載されている方法を適用できる。フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は特に限定されないが、フィルムのガラス転移温度前後であることが好ましく、一般には80〜400℃で実施され、特には100〜300℃である。特には、Tg(ガラス転移点)よりもさらに10〜20℃の温度が好ましい。前記基板フィルムの延伸は、一軸延伸でもよく2軸延伸でもよい。フィルムは、乾燥中の処理で延伸することができ、特に溶媒が残存する場合は有効である。例えば、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くするとフィルムは延伸される。フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。
フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。フィルムの延伸倍率(元の長さに対する延伸による増加分の倍率)は、1.03〜3倍あることが好ましく、さらに好ましいのは1.05〜2.5倍であり、より好ましくは1.05〜1.8倍である。この時、延伸方向は流延方向でもよいし、流延方向と直角な方向に延伸されてもよく、さらに場合によっては両方向に延伸されてもよい。この時、延伸は同時に実施されてもよく、一方方向に延伸してその後別方向に延伸されてもよい。これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。基板フィルムの製造に係わる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。完成後(乾燥後)の前記基板フィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常20〜500μmの範囲であり、さらに30〜250μmの範囲が好ましく、特に30〜150μmの範囲が最も好ましい。フィルム厚さの調製は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、支持体速度等を調節すればよい。
前記基板フィルムの延伸速度は5%/分〜1000%/分であることが好ましく、さらに10%/分〜500%/分であることが好ましい。前記延伸はヒートロールあるいは/および放射熱源(IRヒーター等)、温風により行なうことが好ましい。また、温度の均一性を高めるために恒温槽を設けてもよい。ロール延伸で一軸延伸を行なう場合、ロール間距離(L)と該位相差板のフィルム幅(W)との比であるL/Wが、2.0〜5.0であることが好ましい。さらに、テンター乾燥のウェブの発泡を防止し、離脱性を向上させ、発塵を防止するために、乾燥装置において乾燥器の熱風がウェブ両縁部に当たらないように、乾燥器の幅がウェブの幅よりも短く形成することも好ましい。また、テンターの保持部に乾燥風が当たらないようウェブ両側端部内側に遮風板をしてもよい。
本発明の水蒸気バリアフィルム用の基板フィルムは、また溶融製膜によって作製することも構わない。その際の作製方法を以下に記す。
(混練押出し)
溶融押し出し機に設置されている圧縮比を有する混練スクリューを用い、予熱過程で加熱された所望の溶融温度で、水蒸気バリア基板樹脂を混練する。すなわち、本発明ではダイスジを解消するために、本発明における水蒸気バリア基板樹脂の溶融温度を好ましくは180℃〜450℃、より好ましくは190℃〜400℃、さらに好ましくは200℃〜400℃に設定する。300℃以上の高い温度で溶融した場合は、本発明における水蒸気バリア基板樹脂は分解が生じ、該分解物がダイ内に残留することで発生するダイラインが引き起こす厚みムラを軽減できる。しかし、このように溶融温度を低下させると、溶融不良が発生し、これがブツを発生する原因となりやすい。即ち本発明では、低温でも不溶解を発生させないために、高圧縮比のスクリューを用いていることも推奨される。好ましい圧縮比は3〜15、より好ましくは4〜12、より好ましくは5〜10である。通常は3未満の圧縮比で溶融するのが一般的である。
この際には、溶融温度は一定温度で行ってもよく、いくつかに分割して制御して得られた溶融温度で実施してもよい。より好ましくは上流側(ホッパー側)の温度を下流側(T−ダイ側)の温度より1℃〜50℃、より好ましくは2℃〜30℃、さらに好ましくは3℃〜20℃高くするほうが、水蒸気バリア基板樹脂の分解をより抑制できて好ましい。好ましくは溶融を効率よく実施するために送液上流部をより高温にし、溶融された後は水蒸気バリア基板樹脂の分解を抑制するために、温度を低めにするものである。好ましい混練時間は2分〜60分であり、より好ましくは3分〜40分であり、さらに好ましくは4分〜30分である。さらに、溶融押出し機内を不活性(窒素等)気流中で実施するのも好ましい。
(キャスト)
溶融した水蒸気バリア基板樹脂は、ギヤポンプに通して押し出し機の脈動を除去される。その後に続いて、金属メッシュフィルター等でろ過を行い、製膜ダイ(T型)から搬送する冷却ドラム上にシート状に押し出すが、前述のように溶融温度より低い温度に制御したT−ダイから押出すことが好ましい。なお、溶融温度が溶融押出し機内で複数に分割し異なる温度にすることも可能であるが、その場合はT−ダイに最も近いところの溶融温度を基準にする。この後、上述のようにT−ダイとキャスティングドラムとの間を一定の距離(1〜50cmが好ましい)に保つ。この時、この間の温度変動が少ないよう、これらをケーシング内に入れることが好ましい。さらに本発明では、T−ダイの温度を溶融温度より5℃〜30℃低くすることが好ましい。これは、T−ダイ上で滞留し水蒸気バリア基板樹脂が分解し焦げつき、これがダイラインを引き起こすのを防ぐためである。通常の製膜では溶融混練機からT−ダイまで同じ温度あるいはそれ以上にし、溶融粘度を低くすることで、発生したダイラインをレベリング化するのが一般的であるが、熱分解しやすい水蒸気バリア基板樹脂を溶融製膜する場合は上記のように温度を下げることが有効である。
また、前記基板フィルムの横ダン(幅方向に発生する段々状のムラ)を解消するために、本発明ではT−ダイとキャスティングドラムとの間を2cm〜50cm離すことが好ましい。より好ましくは5cm〜40cm、さらに好ましくは7cm〜35cmである。通常はネックインを防ぐためにT−ダイとキャスティングドラムとの間はなるべく近づけるのが一般的であり、本発明では1〜3cmに近づけることが好ましい。本発明では水蒸気バリア基板樹脂がネックインしにくいため、上記のようにキャスティングドラムとT−ダイの間を広くとることが好ましい。この時のキャスティングドラムの温度は(Tg−30℃)〜Tgが好ましく、より好ましくは(Tg−20℃)〜(Tg−1℃)、さらに好ましくは(Tg−15℃)〜(Tg−2℃)である。さらにこのようにT−ダイ、キャスティングドラム間の距離を長くすることは、上記ダイ筋をレベリング化させ軽減させる効果も有する。なお、本発明における水蒸気バリア基板樹脂のTgは70℃〜180℃が好ましく、より好ましくは80℃〜160℃、さらに好ましくは90℃〜150℃である。
押出しは単層で行ってもよく、マルチマニホールドダイやフィールドブロックダイを用いて複数層押出してもよい。この後、適宜選ばれた直径(10〜200cmが好ましい)、本数(2〜20本が好ましい)、温度(Tg−30℃が好ましい)のキャスティングドラム上に押出す。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、キャスティングドラムと溶融押出ししたシートの密着を上げることが好ましい。このような密着向上法は、溶融押出しシートの前面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
次にT−ダイから押出された溶融された水蒸気バリア基板樹脂(メルト)は、キャスティングドラム上で冷却固化する時間をできるだけ長くすることが好ましい。即ち、T−ダイからTg以上で押出されたメルトがキャスティングドラム上でTg近傍以下になり収縮する。この時、面内方向の収縮はメルトとキャスティングドラムとの摩擦で抑制されるため、厚み方向の収縮が支配的になる。即ちここで面配向が形成され厚み方向のレターデーション(Rth)が発現する。この収縮が急激であると、Rthのムラを発現し易く、上記のようにゆっくり冷却することがポイントである。即ち(Tg+30℃)からTgの間を10℃/秒〜100℃/秒の速度(固化速度)で冷却し固化するのが好ましく、より好ましい固化速度は15℃/秒〜80℃/秒、さらに好ましくは20℃/秒〜60℃/秒で冷却するのが好ましい。通常の樹脂の場合は、300℃/秒以上で固化させるため、本発明の冷却における上記範囲は十分に遅い冷却速度である。そのために、キャスティングドラムとT−ダイの間を温調するのが好ましく、好ましい温度は(Tg−30℃)〜(Tg+50℃)、より好ましくは(Tg−20℃)〜(Tg+40℃)、さらに好ましくは(Tg−10℃)〜(Tg+30℃)である。
本発明では、好ましいキャスティングドラムの本数は2本〜10本、より好ましくは2本〜6本、さらに好ましくは3本〜5本である。これらのキャスティングドラムの温度は同じであってもよく、異なっていてもよいが、最上流のキャスティングドラムの温度を最下流のキャスティングドラムより低くすることがより好ましい。3本以上配置する場合は、これらの間のキャスティングドラム温度は、その前段のロールの温度より高くても低くても構わない。即ち、最上流の温度が最下流の温度より低くければよく、その間のロール温度は任意に設定してよい。これらのキャスティングドラムの直径は通常20cm〜200cmである。これらの製膜速度は、15m/分〜300m/分の速度で製膜することが好ましい。より好ましくは20m/分〜200m/分、さらに好ましくは30m/分〜100m/分である。
冷却した後、前記基板フィルムは、キャスティングドラムから剥ぎ取られ、ニップロールを経て、ニップロールで張力カットした後、0kg/cm2〜10kg/cm2で巻き取るのが好ましく、より好ましくは0.10kg/cm2〜9kg/cm2、さらに好ましくは0.10kg/cm2〜9kg/cm2である。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。製膜幅は好ましくは1.5m〜5m、より好ましくは1.6m〜4m、さらに好ましくは1.7m〜3mである。キャスティングドラムから剥ぎ取った直後のシートはTgに近い温度のため、巻き取り張力により延伸され面内のレターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)が発現し、これは中央部より端部において顕著になる。
このため、Re,Rthが放物線状のムラを発現する。キャスティングドラムの後にニップロールを設置し、巻き取り張力のカットする方法が挙げられるが、完全にはカットできず僅かに張力がキャスティングドラム剥ぎ取り後のシートまで伝播する。これが面状ムラやRe,Rthムラを引き起こす。このようなムラは、幅方向全域に渡っておこるため、小さなサイズでは検知し難く、大きなサイズを切り出したときに、問題となる。このため、上記のような弱い張力で巻き取ることがポイントである(通常は20kg/cm2以上で巻かれる)。このような低張力で巻くことで巻きズレが発生し易くなるが、これには両端にナーリング(厚みだし)加工を付与することで対策できる。このようにして得られた未延伸フィルムの厚みは30μm〜400μmが好ましく、より好ましくは40μm〜200μm、さらに好ましくは50μm〜150μmである。また、Re、Rthは0nm〜100nmが好ましく、より好ましくは0nm〜50nm、さらに好ましくは0nm〜25nmである。
以上は未延伸のフィルムに対し、このようにして得た未延伸フィルムを延伸することで、面状ムラ(厚みムラ)、Reムラ、Rthムラ、Re,Rthの湿度変動の小さな延伸フィルムを得ることができる。このようにして得たシートは両端をトリミングし、巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、あるいは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料としてまたは異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。また、巻き取り前に、少なくとも片面にラミネートフィルムを付けることも、傷防止の観点から好ましい。
(延伸)
前記溶融製膜で得られた基板フィルムは延伸することも好ましく、その場合の延伸はTg〜(Tg+50℃)で実施するのが好ましく、より好ましくは(Tg+1℃)〜(Tg+30℃)、さらに好ましくは(Tg+2℃)〜(Tg+20℃)である。好ましい延伸倍率は1%〜500%、より好ましくは3%〜400%、さらに好ましくは5%〜300%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。ここで云う延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
このような延伸は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸してもよく(縦延伸)、フィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向と直角方向)に広げてもよい(横延伸)。一般に延伸速度は10%/分〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20%/分〜1000%/分、さらに好ましくは30%/分〜800%/分である。
延伸フィルムは所定の厚さにすべき延伸倍率を選定すればよい。また、延伸することにより平面性などの面状の改良が達成でき好ましい工程である。さらに、厚みのムラをより小さくするために、上述のようなムラの少ない原反を用いることに加えて、延伸温度に幅方向に勾配を持たせるのが好ましい。即ち縦延伸の場合でも、横延伸の場合でも両端部の延伸が進みやすく厚みムラが発現し易いため、中央部より端部の温度を高くすることが好ましい。端部とは、全幅に対し10%の領域を指し、ここを中央部より6℃〜40℃、より好ましくは7℃〜30℃、さらに好ましくは8℃〜25℃高くすることで達成できる。このように両端の温度を上げるには、両端部に熱源(パネルヒーター、赤外線ヒーター等)を増設してもよく、熱風の噴出し口を増設してもよい。このように敢えて温度分布を付与することで、一定の温度で延伸するより一層均一な延伸が達成できる。このような減少は前記基板フィルム特有の現象である。
延伸後の膜厚は10〜500μmが好ましく、20μm〜400μmより好ましく、30μm〜300μmが特に好ましい。また製膜方向(長手方向)と、フィルムの配向軸の遅相軸とのなす角度θが0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。即ち、縦延伸の場合は0°に近いほど好ましく、0±3°が好ましく、より好ましくは0±1.5°、さらに好ましくは0±0.5°である。横延伸の場合は、90±3°あるいは−90±3°が好ましく、より好ましくは90±1.5°あるいは−90±1.5°、さらに好ましくは90±0.5°あるいは−90±0.5°である。
ここで、熱処理後の冷却温度は、熱処理温度やフィルム厚みによって異なるが、通常、−40℃〜(Tg−10)℃の温度範囲において空冷する。好ましくは、0〜40℃である。この際、フィルムの表面と裏面を冷却する空気等の冷却媒体の温度差が、得られる(二軸)延伸フィルムの非熱変形性に影響を及ぼす。冷却気体の温度差が大き過ぎると、得られる(二軸)延伸フィルムの表裏両面の熱収縮率差が大きくなり、加熱時にフィルムが歪み、ソリが生じ易くなり、変形が大きくなる。かかる点を考慮すると、フィルムの表面と裏面を冷却する空気等の冷却媒体の温度差は小さい方が好ましいが、本発明の目的を達成するためには、該温度差を5℃以内に調整することが重要である。
これらの延伸前、延伸後の前記基板フィルムは、150℃、5時間での縦および横の寸法収縮率は±0.1%以下であることが好ましく、80℃・相対湿度90%における寸法収縮率が縦および横とも±0.5%未満であることが好ましく、ヘイズは0.6%以下であることが好ましく、引き裂き強度は縦、横とも10g以上であることが好ましく、引っ張り強度が縦、横とも50N/mm2以上であることが好ましく、弾性率が縦、横とも3kN/mm2以上であることが好ましい。
これらの未延伸、延伸前記基板フィルムは単独で使用してもよく、これらと偏光板組み合わせて使用してもよく、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用してもよい。
延伸後の前記基板フィルムの厚みムラは厚み方向、幅方向いずれも0%〜2%が好ましく、より好ましくは0%〜1.5%、さらに好ましくは0%〜1%である。このような延伸フィルムは、上記特性を有する上記未延伸フィルムを延伸することで達成できる。
(基板フィルムの改質)
次に本発明における基板フィルムについて、さらに機能を付与する場合の好ましい態様を記述する。まず前記基板フィルムの表面処理方法について記述する。
前記基板フィルムは、場合により表面処理を行なうことによって、前記基板フィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。グロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことも示すが、大気圧下でのグロー放電処理でもよい。
まず、低圧下でのグロー放電処理は、米国特許第3,462,335号、同3,761,299号、同4,072,769号および英国特許第891,469号各明細書に記載されている。また不活性ガス、酸化窒素類、有機化合物ガス等の特定のガス等を導入することも行われる。水蒸気バリアフィルムの表面をグロー放電処理する際には大気圧でもよいし減圧下で実施されてもよい。グロー放電処理の雰囲気に酸素、窒素、ヘリウムあるいはアルゴンのような種々のガスや水を導入しながら実施してもよい。グロー放電処理時の真空度は0.005〜20Torrが好ましく、より好ましくは0.02〜2Torrである。また、電圧は500〜5000Vの間が好ましく、より好ましくは500〜3000Vである。使用する放電周波数は、直流から数千MHz、より好ましくは50Hz〜20MHz、さらに好ましくは1KHz〜1MHzである。放電処理強度は、0.01KV・A・分/m2〜5KV・A・分/m2が好ましく、より好ましくは0.15KV・A・分/m2〜1KV・A・分/m2である。
次に紫外線照射法も本発明では好ましく用いられる。使用される水銀灯は石英管からなる高圧水銀灯で、紫外線の波長が180〜380nmの間であるものが好ましい。紫外線照射の方法については、光源は前記基板フィルムの表面温度が150℃前後にまで上昇することが支持体性能上問題なければ、主波長が365nmの高圧水銀灯ランプを使用することができる。低温処理が必要とされる場合には主波長が254nmの低圧水銀灯が好ましい。またオゾンレスタイプの高圧水銀ランプ、および低圧水銀ランプを使用する事も可能である。処理光量に関しては処理光量が多いほど前記基板フィルムと被接着層との接着力は向上するが、光量の増加に伴い支持体が着色し、また支持体が脆くなるという問題が発生する。従って、365nmを主波長とする高圧水銀ランプで、照射光量20〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは50〜2000(mJ/cm2)である。254nmを主波長とする低圧水銀ランプの場合には、照射光量100〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは300〜1500(mJ/cm2)である。
次に前記基板フィルムの表面処理としてコロナ放電処理も好ましく、コロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。処理は空気中、常圧で行なうことができる。処理時の放電周波数は、5〜40KV、より好ましくは10〜30KVであり、波形は交流正弦波が好ましい。電極と誘電体ロールのギャップクリアランスは0.1〜10mm、より好ましくは1.0〜2.0mmである。放電は、放電帯域に設けられた誘電サポートローラーの上方で処理し、処理量は、0.3〜0.4KV・A・分/m2、より好ましくは0.34〜0.38KV・A・分/m2である。
次に火炎処理について記述すると、用いられるガスは天然ガス、液化プロパンガス、都市ガスのいずれでもかまわないが、空気との混合比が重要である。天然ガス/空気の好ましい混合比は容積比で1/6〜1/10が好ましく、さらに好ましくは1/7〜1/9である。また、液化プロパンガス/空気の場合は1/14〜1/22が好ましく、さらに好ましくは1/16〜1/19、都市ガス/空気の場合は1/2〜1/8が好ましく、さらに好ましくは1/3〜1/7である。
また、火炎処理量は1〜50Kcal/m2、より好ましくは3〜20Kcal/m2の範囲で行なうとよい。
また、前記基板フィルムの表面処理として好ましく用いられるアルカリケン化処理を具体的に説明する。前記基板フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの濃度は0.1mol/L〜4.0mol/Lであることが好ましく、0.5mol/L〜3.5mol/Lであることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温〜90℃の範囲が好ましく、40℃〜70℃がさらに好ましい。次に一般には水洗され、しかる後に酸性水溶液を通過させた後に、水洗して表面処理した前記基板フィルムを得る。
この時、酸としては塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、蟻酸、クロロ酢酸、シュウ酸などであり、その濃度は0.01mol/L〜3.0mol/Lであることが好ましく、0.05mol/L〜2.0mol/Lであることがさらに好ましい。アルカリケン化時間は、20〜600秒で実施されるがことが好ましくは、さらには30〜300秒が好ましく、特には40〜210秒であることが好ましい。また中和は、20〜600秒で実施されることが好ましく、より好ましくは30〜250秒、特には40〜180秒であるであることが好ましい。さらに水洗については、20〜400秒で実施されることが好ましく、より好ましくは30〜300秒、特には40〜210秒であるであることが好ましい。
これらの方法で得られた固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社 1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができ、接触角法を用いることが好ましく、水の接触角が10〜50°、さらには10〜40°が好ましく、特には10〜30°が好ましい。
前記基板フィルムと機能性層とを接着するために、表面活性化処理をしたのち、直接前記基板フィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦任意の表面処理をした後、または、表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法と、がある。下塗層の構成としても種々の工夫が行われており、第一層として支持体によく隣接する層(以下、「下塗第一層」と略す)を設け、その上に第二層として機能層とよく接着する下塗り第二層を塗布する所謂重層法がある。
単層法においては、前記基板フィルムを膨張させ、下塗層素材と界面混合させることによって良好な接着性を達成している場合が多い。本発明に使用する下塗ポリマーとしては、水溶性ポリマー、水蒸気バリア基板樹脂、ラテックスポリマー、水溶性ポリエステルなどが例示される。水溶性ポリマーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ナトリウム、でんぷん、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体などであり、水蒸気バリア基板樹脂としてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどである。ラテックスポリマーとしては塩化ビニル含有共重合体、塩化ビニリデン含有共重合体、アクリル酸エステル含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体、ブタジエン含有共重合体などである。重層法における下塗第一層では、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合体を始めとして、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチン、ニトロセルロース、等のオリゴマーもしくはポリマーなどがある。
また前記基板フィルムの好ましい態様としては、偏光子と接着するための親水性バインダー層が設けられることである。例えば、−COOM基含有の酢酸ビニル−マレイン酸共重合体化合物、または親水性セルロース誘導体(例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等)、ポリビニルアルコール誘導体(例えば酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリビニルベンザール等)天然高分子化合物(例えばゼラチン、カゼインアラビアゴム等)、親水基含有ポリエステル誘導体(例えばスルホン基含有ポリエステル共重合体)が挙げられる。
前記基板フィルムに場合により施される下塗り層には、機能層の透明性などを実質的に損なわない程度に無機または、有機の微粒子をマット剤として含有させることができる。無機の微粒子のマット剤としてはシリカ(SiO2),二酸化チタン(TiO2),炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどを使用することができる。有機の微粒子マット剤としては、ポリメチルメタクリレ−ト、セルロ−スアセテ−トプロピオネ−ト、ポリスチレン、米国特許第4,142,894号明細書に記載されている処理液可溶性のもの、米国特許第4,396,706号明細書に記載されているポリマ−などを用いることができる。これらの微粒子マット剤の平均粒子サイズは0.01〜10μmのものが好ましい。より好ましくは、0.05〜5μmである。また、その含有量は0.5〜600mg/m2が好ましく、さらに好ましくは、1〜400mg/m2である。
下塗液は、一般によく知られた塗布方法、例えばディップコ−ト法、エア−ナイフコ−ト法、カ−テンコ−ト法、ロ−ラ−コ−ト法、ワイヤ−バ−コ−ト法、グラビアコ−ト法、スライドコート法、あるいは、米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコ−ト法により塗布することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
基材フィルム上に無機ガスバリア層、吸湿性層、隣接有機層および帯電防止層を設けたバリアフィルム(試料1−1〜試料1−8)を下記の手順にしたがって作製した。。
(1)基材フィルムの作製
(1−1)基材フィルム溶液の調製
下記組成を用い、基材フィルム溶液を調製した。
〔組成〕
・ジクロロメタン 80質量部
・樹脂化合物(上記FL−13;Tg≧250℃) 20質量部
・クエン酸ジエチルエステル 0.05質量部
・二酸化ケイ素(一次粒子サイズ15nm、モース硬度約7) 0.05質量部
攪拌羽根を有する500Lのステンレス性溶解タンクに、前記溶媒をよく攪拌しつつ、樹脂化合物(FL−13)粉体(フレーク)を徐々に添加し、全体が300kgになるように調製した。なお、溶媒はその含水率が0.2質量%以下のものを使用した。樹脂化合物(FL−13)粉末を、分散タンクに紛体を投入して、攪拌剪断速度を最初は5m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および、中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2)で攪拌する条件下で30分間分散した。分散の開始温度は25℃であり、最終到達温度は34℃となった。分散終了後、高速攪拌は停止し、アンカー翼の周速を0.5m/secとしてさらに100分間攪拌し、樹脂化合物(FL−13)フレークを膨潤させた。膨潤終了までは窒素ガスでタンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際のタンク内の酸素濃度は2体積%未満であり防爆上で問題のない状態を保ち基材フィルム溶液(ドープ)を調製した。またドープ中の水分量は0.5質量%以下であることを確認し、本実験では0.3質量%であった。
(1−2)溶解・濾過
膨潤した基材フィルム溶液をタンクから、ジャケット付配管で50℃まで加熱し、さらに2MPaの加圧化で90℃まで加熱し、完全溶解した。加熱時間は15分であった。次に36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を通過させた。この際、濾過1次圧は1.5MPa、2次圧は1.2MPaとした。高温にさらされるフィルター、ハウジング、および配管はハステロイ合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の熱媒を流通させるジャケットを有するものを使用した。
(1−3)濃縮・濾過
このようにして得られた濃縮前基材フィルム溶液を80℃で常圧のタンク内でフラッシュさせて、蒸発した溶剤を凝縮器で回収分離した。フラッシュ後の基材フィルム溶液の固形分濃度は、28.8質量%となった。なお、凝縮された溶剤は調製工程の溶剤として再利用すべく回収工程に回された(回収は蒸留工程と脱水工程などにより実施されるものである)。フラッシュタンクには中心軸にアンカー翼を有して周速0.5m/secで攪拌して脱泡を行った。タンク内の基材フィルム溶液の温度は25℃であり、タンク内の平均滞留時間は50分であった。この基材フィルム溶液を採集して25℃で測定した剪断粘度は剪断速度10(sec-1)で130(Pa・s)であった。
つぎに、この基材フィルム溶液に対して弱い超音波照射することで泡抜きを実施した。その後、1.5MPaに加圧した状態で、最初公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルターを通過させ、ついで、同じく10μmの焼結繊維フィルターを通過させた。それぞれの一次圧は、1.5MPaおよび1.2MPaであり、二次圧は1.0MPaおよび0.8MPaであった。ろ過後の基材フィルム溶液温度を、36℃に調整して500Lのステンレス製のストックタンク内に貯蔵した。ストックタンクは中心軸にアンカー翼を有して周速0.3m/secで常時攪拌された。なお、濃縮前基材フィルム溶液からろ過後の基材フィルム溶液を調製する際に、ドープ接液部には、腐食などの問題は全く生じなかった。
(1−4)流延
続いてストックタンク内の基材フィルム溶液を1次増圧用のギアポンプで高精度ギアポンプの1次側圧力が0.8MPaになるようにインバーターモーターによりフィードバック制御を行い送液した。高精度ギアポンプは容積効率99.2%、吐出量の変動率0.5%以下の性能であった。また、吐出圧力は1.5MPaであった。流延ダイは、幅が1.8mであり共流延用に調整したフィードブロックを装備して、主流のほかに両面にそれぞれ積層して3層構造のフィルムを成形できるようにした装置を用いた。以下の説明において、主流から形成される層を中間層と称し、支持体面側の層を支持体面と称し、反対側の面をエアー面と称する。なお、基材フィルム溶液の送液流路は、中間層用,支持体面用,エアー面用の3流路を用いた。最外層用の支持体側ドープとエアー面側ドープとは、(1−1)で作製したドープを、メチレンクロライド267溶媒を配管に設置したインラインでスタチックミキサーおよびスルーザミキサーを連結して希釈し用いた。希釈は元のドープを支持体側ドープは97%の濃度に、またエアー側ドープは元のドープに対して95%の濃度になるように実施した。
完成した基板フィルムのエアー面,中間層,支持体面の膜厚はそれぞれ4μm,92μm,4μmであり、厚みが100μmとなるように、流延幅を1500mmとしてそれぞれのダイ突出口の基材フィルム溶液流量を調整して流延を行った。ドープの温度を36℃に調整するため、流延ダイにジャケットを設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の入口温度を36℃とした。ダイ、フィードブロック、配管はすべて作業工程中に36℃に保温した。ダイはコートハンガータイプのダイであり、厚み調整ボルトが20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。このヒートボルトは予め設定したプログラムにより高精度ギアポンプの送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、製膜工程内に設置した赤外線厚み計のプロファイルに基づいた調整プログラムによってフィードバック制御も可能な性能を有するものである。流延エッジ部20mmを除いたフィルムで50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向厚みの最小値で最も大きな差が3μm/m以下となるように調整した。また、各層の平均厚み精度は両外層が±2%以下、主流が±1%以下に制御され、全体厚みは±1.5%以下に調整した。
また、ダイの1次側には減圧するためのチャンバーを設置した。この減圧チャバーの減圧度は流延ビードの前後で1Pa〜5000Paの圧力差を印加できるようになっていて、流延スピードに応じて調整が可能なものである。その際に、ビードの長さが2mm〜50mmになるような圧力差に設定した。またチャンバーの温度は流延部周囲のガスの凝縮温度よりも高く設定できる機構を具備したものであった。ビード前部、後部にラビリンスを設けた。また両端には開口部を設けた。さらに、そこから、ビード両縁の流れの乱れを調整するためにエッジ吸引装置が取り付けられているものを用いた。
(1−5)流延ダイ
ここで、ダイの材質は析出硬化型のステンレス鋼であり、熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下の素材であり、電解質水溶液での強制腐食試験で「SUS316」と略同等の耐腐食性を有する素材を使用した。また、ジクロロメタン、メタノール、水の各溶液に3ヶ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有する素材を使用した。さらに、鋳造後1ヶ月以上経時したものを研削加工することとし、基材フィルム溶液の面状を一定に保った。流延ダイおよびフィードブロックの接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは自動調整により0.5mm〜3.5mmまで調整可能であった。本実施例では、1.5mmで実施した。ダイリップ先端の接液部の角部分について、Rはスリット全巾に亘り50μm以下になるように加工した。ダイ内部での剪断速度は1(1/sec)〜5000(1/sec)の範囲であった。
また、流延ダイのリップ先端には、硬化膜が設けられているものを用いた。硬膜を設ける手段としては、セラミックスコーティング、ハードクロムメッキ、窒化処理などがある。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削でき気孔率が低く脆くなく耐腐食性がよく、かつダイと密着性がないものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC),Al23,TiN,Cr23などがあり、特に好ましくはWCである。なお、本発明では、溶射法によりWCコーティングを形成したものを用いた。
さらにダイのスリット端には流出するドープが、局所的に乾燥固化することを防止するために、ドープを可溶化する溶剤である混合溶媒(ジクロロメタン/メタノール=95/5)をビード端部とスリットとの気液界面に片側で0.5ml/分で供給した。この液を供給するポンプの脈動率は5%以下であった。また、減圧チャンバーによりビード背面の圧力を150Pa低くした。また、減圧チャンバーの温度を一定にするために、ジャケットを取り付けた。そのジャケット内に35℃に調整された伝熱媒体を供給した。エッジ吸引風量は、1L/分〜100L/分の範囲で調整可能なものを用い、本実施例では30L/分〜40L/分の範囲で適宜調整した。
(1−6)金属支持体
支持体として幅2.1mで長さが70mのステンレス製のエンドレスバンドを利用した。そして、バンドの厚みは1.5mmであり、表面粗さは0.05μm以下になるように研磨したものを使用した。材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有するものとした。バンドの全体の厚みムラは0.5%以下であった。バンドは2個のドラムにより駆動するタイプを用い、その際のバンドのテンションは1.5×104kg/mに調整し、バンドとドラムとの相対速度差が0.01m/分以下となるものであった。また、バンド駆動の速度変動は0.5%以下であった。また1回転の巾方向の蛇行は1.5mm以下に制限するようにバンドに両端位置を検出して制御した。また、流延ダイ直下における支持体表面のドラム回転に伴う上下方向の位置変動は200μm以下にした。支持体は、風圧振動抑制手段を有したケーシング内に設置されている。この支持体上にダイから3層の基材フィルム溶液を共流延した。
流延部のドラムは支持体を冷却するように内部に伝熱媒体(冷媒)を循環させる設備を有しているものを用いた。また、他方のドラムが乾燥のための熱を供給するために伝熱媒体が通水できるものである。それぞれの伝熱媒体の温度は5℃(流延ダイ側)と36℃とした。流延直前の支持体中央部の表面温度は15℃であった。両端の温度差は6℃以下であった。なお、ドラムを直接流延支持体とすることも可能なものであり、この場合には回転ムラが0.2mm以下の精度で回転させた。ドラムにおいても表面の平均粗さは0.01μm以下であり、クロム鍍金処理により十分な硬度と耐久性とを有したものである。ドラム、バンドのいずれにおいても表面欠陥はあってはならないものであり、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m2以下、10μm以下のピンホールは2個/m2以下である支持体を使用した。
(1−7)流延乾燥
前記流延ダイおよび支持体などが設けられている流延室の温度は、35℃に保った。バンド上に流延されたドープは、最初に平行流の乾燥風を送り乾燥した。乾燥する際の乾燥風からのドープへの総括伝熱係数は24kcal/m2・hr・℃であった。乾燥風の温度はバンド上部の上流側を135℃とし、下流側を140℃とした。また、バンド下部は、65℃とした。それぞれのガスの飽和温度は、いずれも−8℃付近であった。支持体上での乾燥雰囲気における酸素濃度は5体積%に保持した。なお、酸素濃度を5体積%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。また、流延室内の溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサー)を設け、その出口温度は、−10℃に設定した。
流延後5秒間は遮風装置により乾燥風が直接基材フィルム溶液に当たらないようにして流延ダイ直近の静圧変動を±1Pa以下に抑制した。基材フィルム溶液中の溶剤比率が乾量基準で50質量%になった時点で流延支持体からフィルムとして剥離した。この時の剥離テンションは10kgf/mであり、支持体速度に対して剥ぎ取り速度(剥取りロールドロー)は100.1%〜110%の範囲で適切に剥ぎ取れるように設定した。また、剥ぎ取ったフィルムの表面温度は15℃であった。支持体上での乾燥速度は平均60質量%乾量基準溶剤/分であった。乾燥して発生した溶剤ガスは凝縮装置に導かれ、−10℃で液化し、回収して仕込み用の溶剤として再利用した。溶剤を除去された乾燥風は再度加熱して乾燥風として再利用された。その際に、溶剤に含まれる水分量を0.5%以下に調整して再使用した。
剥ぎ取ったフィルムを多数のローラーが設けられている渡り部で搬送した。渡り部には、3本のローラーを備え、また渡り部の温度は、40℃に保持した。渡り部のローラーで搬送している際に、フィルムに16N〜160Nのテンションを付与した。
(1−8)テンター搬送・乾燥
剥ぎ取られたフィルムは、クリップを有したテンターで両端を固定されながらテンターの乾燥ゾーン内を搬送され、乾燥風により乾燥した。クリップには、20℃の伝熱媒体を供給して冷却した。テンターの駆動はチェーンで行い、そのスプロケットの速度変動は0.5%以下であった。また、テンター内を3ゾーンに分け、それぞれのゾーンの乾燥風温度を上流側から90℃,100℃,110℃とした。乾燥風のガス組成は−10℃の飽和ガス濃度とした。テンター内での平均乾燥速度は120質量%(乾量基準溶剤)/分であった。テンターの出口ではフィルム内の残留溶剤の量は10質量%以下となるように調整し、本実験では7質量%となるように乾燥ゾーンの条件を調整した。テンター内では搬送しつつ幅方向に延伸も行った。なお、テンターに搬送された際の幅を100%としたときの拡幅量を103%とした。
剥ぎ取りローラーからテンター入口に至る延伸率(テンター駆動ドロー)は、102%とした。テンター内の延伸率はテンター噛み込み部から10mm以上離れた部分における実質延伸率の差異が10%以下であり、かつ20mm離れた任意の2点における延伸率の差異は5%以下であった。ベース端のうちテンターで固定している長さの比率は90%とした。また、テンタークリップの温度は50℃を超えないように冷却しつつ搬送した。テンター部分で蒸発した溶剤は−10℃の温度で凝縮させ液化して回収した。凝縮回収用に凝縮器(コンデンサー)を設け、その出口温度は−8℃に設定した。溶剤に含まれる水分量を0.5質量%以下に調整して再使用した。
そして、テンター出口から30秒以内に両端の耳切りを行った。NT型カッターにより両側50mmの耳をカットし、カットした耳はカッターブロワ−によりクラッシャーに風送されて平均80mm2程度のチップに粉砕した(このチップは再度調製用原料として樹脂化合物(FL−13)フレークと共に仕込み工程で原料として利用できるものであった)。テンター部の乾燥雰囲気における酸素濃度は5体積%に保持した。なお、酸素濃度を5体積%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。後述するローラー搬送ゾーンで高温乾燥させる前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥ゾーンでフィルムを予備加熱した。
(1−9)後乾燥
前述した方法で得られた耳切り後の基板フィルムをローラー搬送ゾーンで高温乾燥した。ローラー搬送ゾーンを4区画に分割して、上流側から100℃,12℃,145℃,170℃の乾燥風を給気した。このとき、フィルムのローラー搬送テンションは100N/巾として、最終的に残留溶剤量が0.05質量%になるまでの約60分間乾燥した。該ローラーのラップ角度は、90°および180°を用いた。該ローラーの材質はアルミ製もしくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロム鍍金を施した。ローラーの表面形状はフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。ローラーの回転による振れは全て50μm以下であった。また、テンション100N/巾でのローラー撓みは0.5mm以下となるように選定した。
搬送中のフィルム帯電圧は、常時−3kV〜3kVの範囲となるように工程中に強制除電装置(除電バー)を設置した。また巻き取り部では、帯電がー1.5kV〜1.5kVになるように、除電バーだけでなく、イオン風除電も設置した。乾燥風に含まれる溶剤ガスは吸着剤を用いて吸着回収除去した。吸着剤は活性炭であり、脱着は乾燥窒素を用いて行った。回収した溶剤は水分量0.3質量%以下に調整して仕込み溶剤として再利用した。乾燥風には溶剤ガスの他、可塑剤、UV吸収剤、その他の高沸点物が含まれるので冷却除去する冷却器およびプレアドソーバーでこれらを除去して再製循環使用した。
そして、最終的に屋外排出ガス中のVOCは10ppm以下となるよう、吸脱着条件を設定した。また、全蒸発溶剤の内凝縮法で回収する溶剤量は90質量%であり、残りの大部分は吸着回収により回収した。乾燥されたフィルムを第1調湿室に搬送した。ローラー搬送ゾーンと第1調湿室との間の渡り部には、105℃の乾燥風を給気した。第1調湿室には、温度50℃,露点が20℃の空気を給気した。さらに、フィルムのカールの発生を抑制する第2調湿室にフィルムを搬送した。
(1−10)後処理、巻き取り
乾燥後の基板フィルムは、30℃以下に冷却して両端耳切りを行いさらにフィルムの両端にナーリングを行った。ここで、耳切りはレーザー光を当てて耳屑が出ないようにして実施した。またナーリングは片側からエンボス加工を行なうことで付与し、ナーリングする幅は10mmであり、最大高さは平均厚みよりも平均12μm高くなるように押し圧を設定した。
そして、得られたフィルムを巻き取り室に搬送した。巻き取り室は、室内温度25℃,湿度60%に保持した。このようにして得られた基板フィルム(厚さ100μm)の幅は、1475mmとなった。巻き芯の径は169mm巻き始めテンションは360N/巾であり、巻き終わりが250N/巾になるようなテンションパターンとした。巻き取り全長は300mであった。また、巻き取りロールにプレスロールを押し圧50N/巾に設定した。巻き取り時のフィルムの温度は25℃、含水量は1.4質量%、残留溶剤量は0.1質量%以下であった。また巻き緩み、シワもなく、巻きずれが生じなかった。ロール外観も良好であった。以上の工程を経て本発明における基板フィルム試料−1を製膜した。
本発明における基板フィルム試料−1の一部を25℃・相対湿度55%の貯蔵ラックに1ヶ月間保管して、さらに上記と同様に各種の検査を実施した結果、外観や特性上の有意な変化は認められなかった。さらにロール内においても接着も認められなかった。また、フィルム試料−1を製膜した後に、金属支持体であるエンドレスベルト上にはドープから形成された流延膜の剥げ残りなどは全く見られなかった。
(1−11)評価と結果
得られた本発明における基板フィルム試料−1の各工程での評価方法について、下記に示しその結果を記述する。
(i)溶液の安定性
(1−2)で得られた基板フィルム溶液のろ過,濃縮後のドープを採取し、30℃で静置保存したまま観察し以下のA〜Dの4段階で評価しところ、Aレベルであり優れた溶液安定性であった。
A: 20日間経時でも透明性と液均一性とを示した。
B: 10日間経時まで透明性と液均一性とを保持しているが、20日で少し白濁が
見られた。
C: 液作製終了時では透明性と均一性とを保持しているが、一日経時するとゲル化し 不均一な液となった。
D: 液は膨潤・溶解が見られず不透明性で不均一な溶液状態であった。
(ii)剥離荷重
15℃に保温したステンレス板(SUS板)上に水蒸気バリア基板樹脂溶液を流延し、経時により溶媒を蒸発させてSUS板上に基板フィルム試料−1を形成した後、200mm/秒の速度で基板フィルム試料−1をSUS板から剥ぎ取る際の荷重をロードセルで測定した。また、この際に基板フィルム試料−1の残存溶剤量を、剥ぎ取り時のフィルムの質量と、そのフィルムを120℃にて3時間乾燥した後の質量から計算して求めた。剥離荷重は、8g/cmであり、剥離抵抗の殆ど見られないものであった。
(iii)剥ぎ段ムラ
剥ぎ段ムラの有無は、剥ぎ取りフィルムの片面を、例えば黒インク等にてムラ無く均等に塗りつぶし、塗布した面とは反対側の面から透過光の反射像を、角度を変えて目視にて観察し、直線状のスジやムラが観察されるか否かで判断した。評価は以下のA〜Dの4段階で評価した。本発明における基板フィルム試料−1はAランクであり、剥ぎ段は見られず優れた面状を有するものであった。
A: 剥ぎ段ムラは全く認められなかった。
B: 剥ぎ段ムラが微かに認められたが実害はなかった。
C: 剥ぎ段ムラが弱く認められ、問題が顕在するレベルであった。
D: 剥ぎ段ムラが全面に強く認められ、問題であった。
(iv)フィルム面状
フィルムを目視で観察し、その面状を以下のA〜Dの4段階で評価したところ、本発明における基板フィルム試料−1はAランクであり、異物はなく優れた面状を有するものであった。
A: フィルム表面は平滑であった。
B: フィルム表面は平滑であるが、少し異物が見られた。
C: フィルム表面に弱い凹凸が見られ、異物の存在がはっきり観察された。
D: フィルムに凹凸が見られ、異物が多数見られた。
(v)フィルムの耐湿熱性
試料1gを折り畳んで15ml容量のガラス瓶に入れ、温度90℃、相対湿度100%の条件下で調湿した後、密閉した。これを90℃で経時して10日後に取り出した。フィルムの状態を目視で確認し、以下のA〜Dの4段階で評価した。樹脂化合物(FL−13)からなる本発明における基板フィルム試料−1はAランクであり、異物はなく優れた耐湿熱性を有するものであった。
A: 特に異常が認められなかった
B: かすかな分解臭が認められた
C: かなりな分解臭が認められた
D: 分解臭と分解による形状の変化が認められた
ここで本発明における基板フィルム試料−1は、ヘイズが0.01%、透明度(透明性)が93.9%、Reは1.2nm、Rthは540nmであり、軸ズレ(分子配向軸)は0.1°、弾性率は長手方向が2.1GPa,幅方向が2.2GPa、伸長率は長手方向が20%,幅方向が21%であり、キシミ値(静止摩擦係数)は0.45、キシミ値(動摩擦係数)は0.42、カール値は相対湿度25%で−0.1,ウェットでは−0.0であった。また、含水率は0.3質量%であり、残留溶剤量は0.05質量%であり、熱収縮率は長手方向が−0.01%以下であり幅方向が−0.01%以下であった。異物はリントが3個/m未満であった。また、輝点は、0.02mm〜0.05mmが5個/3m未満、0.05〜0.1mmが3個/3m未満、0.1mm以上はなかった。これらは、光学用途に対しては優れた特性を有するものであった。また、塗布後の接着も見られず(○)、透湿度は非常に小さくて良好(○)であった。光学特性は、Reは32nm(流延方向)、Rthは560nmであった。
(2)水蒸気バリアフィルムの形成
(2−1)無機ガスバリア層の形成
図1に示すロールトゥーロール方式のスパッタリング装置1を用いて、本発明における基板フィルム試料−1上に無機ガスバリア層を形成した。図1に示すように、スパッタリング装置1は、真空槽2を有しており、その中央部にはプラスチックフィルム6を表面に接触させて冷却するためのドラム3が配置されている。また、上記真空槽2にはプラスチックフィルム6を巻くための送り出しロール4および巻き取りロール5が配置されている。送り出しロール4に巻かれたプラスチックフィルム6はガイドロール7を介してドラム3に巻かれ、さらにガイドロール8を介して巻き取りロール5巻き取られる。
真空排気系としては排気口9から真空ポンプ10によって真空槽2内の排気が常に行われている。成膜系としてはパルス電力を印加できる直流方式の放電電源11に接続されたカソード12上にターゲット(図示せず)が装着されている。この放電電源11は制御器13に接続されており、さらに制御器13は真空槽2へ配管15を介して反応ガス導入量を調整しながら供給するガス流量調整ユニット14に接続されている。また、真空槽5には一定流量の放電ガスが供給されるよう構成されている(図示せず)。
以下、無機ガスバリア層の形成時における具体的な条件を示す。
ターゲットとしてSiをセットし、放電電源11としてパルス印加方式の直流電源を用意した。また、プラスチックフィルム6として厚み100μmの基材フィルム(PETフィルムまたは上記方法で作製した基材フィルム)を用意し、これを送り出しロール4に掛け、巻き取りロール5で通した。スパッタリング装置1への基材の準備が終了した後、真空槽2の扉を閉めて真空ポンプ10を起動し、真空引きとドラムとの冷却を開始した。到達圧力が4×10-4Pa、ドラム温度が5℃になったところで、プラスチックフィルム6の走行を開始した。
放電ガスとしてアルゴンを導入して放電電源11をONし、放電電力5kW、成膜圧力0.3PaでSiターゲット上にプラズマを発生させ、3分間プレスパッタを行った。この後、反応ガスとして酸素を導入し、放電が安定してからアルゴンおよび酸素ガス量を徐々に減らして成膜圧力を0.1Paまで下げた。0.1Paでの放電の安定を確認してから、一定時間酸化ケイ素の成膜を行った。成膜終了後、真空槽2を大気圧に戻して酸化ケイ素(無機ガスバリア層)を成膜したフィルムを取り出した。無機ガスバリア層の膜厚は約50nmであった。
(2−2)隣接有機層の形成
50.75質量部のテトラエチレングリコール・ジアクリレートと14.5質量部のトリプロピレングリコールモノアクリレートと7.25質量部のカプロラクトンアクリレートと10.15質量部のアクリル酸と10.15質量部の「EZACURE」(Sartomer社製、ベンゾフェノン混合物光重合開始剤)とのアクリルモノマー混合物を、固体物であるN、N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン粒子0.03625質量部と混合し、20kHz超音波ティッシュミンサーで約1時間撹拌した。約45℃に加熱し、沈降を防ぐために撹拌した混合物を内径2.0mm、長さ61mmの毛管を通して1.3mmのスプレーノズルにポンプで送り込んだ。そこで25kHzの超音波噴霧器によって小滴噴霧し、約340℃に維持された前記無機ガスバリア層または吸湿性層表面に落とした。次いで、ドラム表面温度約13℃の低温ドラムに接触させた基板フィルムの無機ガスバリア層または吸湿性層上に蒸気をクライオ凝結させた後、高圧水銀灯ランプによりUV硬化させ(積算照射量約2000mJ/cm2)、有機層を形成した。膜厚は約500nmであった。
(2−3)吸湿性層の形成
上記無機ガスバリア層、その上に付与した隣接有機層上に、さらに(2−1)の無機ガスバリア層、さらに隣接有機層を順に付与した表面に、過酸化ストロンチウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウムのターゲット(豊島製作所(株)製)を用い、Arガスを導入、放電電力100W、成膜圧力0.8Paで3分間のプレスパッタの後にそのまま成膜して吸湿性層を付与した。吸湿性層の膜厚は約20nmであり、元素分析の結果SrとOとの比率、CaとOとの比率およびBaとOとの比率はほぼ1:1であった。さらにこの吸湿性層の上に(2−1)の無機ガスバリア層を付与した。
(2−4)ラミネート層の形成
上記吸湿性層の基材フィルムとは反対側に、上記(2−2)、(2−3)に記載した方法にて、無機ガスバリア層、隣接有機層、無機バリア層の3層からなるガスバリア性ラミネート層を形成した。
(2−5)導電性層の形成
上記(2−4)で得られたフィルムの(2−3)で作製した無機ガスバリア層面側に、下記の酸化スズ−酸化アンチモン複合物からなる導電性層をバーコーターで塗布することにより作製した。また、導電性材料の添加量を変えることで、導電性のことなる各種試料を作製した。
〔導電性層の組成〕
・平均一次粒子サイズ15nmの酸化スズ−酸化アンチモン複合物(酸化アンチモン含有量10mol%、比抵抗は5Ω・cm、微粒子粉末のアセトン分散物(2次凝集粒子サイズ約60nm)
(固形分塗布量は表1に記載)
・トリアセチルセルロース(酢化度2.60、重合度305) 0.05g/m2
・ポリ(重合度10)オキシエチレン−ステアリルエーテル 0.001g/m2
前記導電性溶液は、アセトン中でトリアセチルセルロースが5体積%になるように作製した。所望の塗布量になるように適切なバーコーターで塗布して、表1の酸化スズ−酸化アンチモン複合物塗布量になるように実施した。
(2−6)バリアフィルムの物性評価
下記装置を用いてバリアフィルムの諸物性を評価した。
(i)層構成(膜厚)
走査型電子顕微鏡(日立(株)製「S−900型」)を用いて、試料の断面の厚さから求めた。
(ii)水蒸気透過率(g/m2・day)
MOCON社製、「PERMATRAN−W3/31」を用いて、40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率を測定した。
(iii)フィルムの光線透過率(%)
島津製作所(株)製の分光光度計「UV3100PC」で、25℃・60%相対湿度下で測定した。
(2−7)有機EL素子の作製
上記各バリアフィルムを真空チャンバー内に導入し、IZOターゲット(出光興産(株)製)を用いて、DCマグネトロンスパッタリングにより、厚み0.2μmのIZO薄膜からなる透明電極を形成した。透明電極(IZO)より、アルミニウムのリ−ド線を結線し、積層構造体を形成した。前記透明電極の表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水性分散液(BAYER社製、Baytron P:固形分1.3質量%)をスピンコートした後、150℃で2時間真空乾燥し、厚み100nmのホール輸送性有機薄膜層を形成した。これを基板Xとした。
一方、厚み188μmのポリエーテルスルホン(住友ベークライト(株)製、スミライトFS−1300)からなる仮支持体の片面上に、下記組成を有する発光性有機薄膜層用塗布液を、スピンコーターを用いて塗布し、室温で乾燥することにより、厚み13nmの発光性有機薄膜層を仮支持体上に形成した。これを転写材料Yとした。
〔組成〕
・ポリビニルカルバゾール: 40質量部
(Mw=63000、アルドリッチ社製)
・トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体(オルトメタル化錯体):1質量部
(ケミプロ化成(株)製)
・ジクロロエタン: 3200質量部
前記基板Xのホール輸送性有機薄膜層の上面に転写材料Yの発光性有機薄膜層側を重ね、一対の熱ローラーを用い160℃、0.3MPa、0.05m/minで加熱・加圧し、仮支持体を引き剥がすことにより、基板Xの上面に発光性有機薄膜層を形成した。これを基板XYとする。また、25mm角に裁断した厚み50μmのポリイミドフイルム(UPILEX−50S、宇部興産(株)製)片面上に、パターニングした蒸着用のマスク(発光面積が5mm×5mmとなるマスク)を設置し、約0.1mPaの減圧雰囲気中でAlを蒸着し、膜厚0.3μmの電極を形成した。Al23ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、Al23をAl層と同パターンで蒸着し、膜厚3nmとした。Al電極よりアルミニウムのリード線を結線し、積層構造体を形成した。得られた積層構造体の上に下記組成を有する電子輸送性有機薄膜層用塗布液をスピンコーター塗布機で塗布し、80℃で2時間真空乾燥することにより、厚み15nmの電子輸送性有機薄膜層をLiF上に形成した。これを基板Zとする。
〔組成〕
・ポリビニルブチラール2000L: 10質量部
(Mw=2000、電気化学工業(株)製)
・1−ブタノール: 3500質量部
・下記構造を有する電子輸送性化合物: 20質量部
(特開2001−335776に記載の方法にて合成)
Figure 2006239884
前記基板XYと前記基板Zとを用い、電極同士が発光性有機薄膜層を挟んで対面するように重ね合せ、一対の熱ローラーを用い160℃、0.3MPa、0.05m/minで加熱・加圧し、貼り合せ、2枚の基板フィルムを、上記発光性有機薄膜層(有機EL層)を取り囲むように市販の有機EL用UV硬化性封止材で封止した。さらに得られた積層構造体のリード線部以外の部分をスパッタリング法により窒化珪素で覆って有機EL素子を得た。
得られた有機EL素子にソースメジャーユニット2400型(東洋テクニカ(株)製)を用いて、直流電流を印加し発光させたところ、良好に発光した。次に前記ガスバリアフィルムを用いた有機EL素子を素子作製後、60℃・相対湿度90%下に500時間放置して同様にして発光させ、全体における発光部分の面積(非発光部分はダークスポット)を、日本ポラデジタル(株)製マイクロアナライザーを用いて求めた。該フィルム光線透過率(550nm)は88.5%であり、有機EL試料の経時後の発光面積率は100%であり優れたものであった。
(2−8)導電性特性の評価
前記の方法にて作製された試料1−1〜1−8の導電性とその帯電防止特性を調べた。
(i)内部導電性評価
25℃/相対湿度60%環境下で、試料を1cm×5cmに裁断し、長辺エッジ部に銀ペイントを塗布し十分に乾燥した。その後銀ペイント部に電極端子を設置し、その間の抵抗を抵抗計で測定した。
(ii)ゴミ付評価
20cm×20cmの試料を作製し、25℃/相対湿度25%環境下にて3日間調湿した。この調湿済みの試料の導電性の付与した面に、ナイロン布(5cm×5cm)に全体で1kgの分銅を掛け、試料表面(10cm×5cm)を10回擦って静電荷を付与した。得られた試料を5秒後に、予め採集したタバコの灰の上に1cmの距離に擦った面を置いて、タバコの灰の付着状態を目視で確認し、以下のA〜Dの4段階で評価した。A、B,C、Dの順に帯電防止特性が優れていることを示す。
A: 特にタバコの付着は認められなかった
B: かすかにタバコの付着が認められた
C: かなりなタバコの付着が認められた
D: タバコの付着が著しく認められた
(iii)フィルム付着評価
20cm×20cmの試料を作製し、25℃/相対湿度60%環境下または25℃/相対湿度10%環境下で3日間調湿した。同環境条件下で調湿済みの試料の両面を接触し、全体に5kgの分銅を掛けて試料を一方方向に5cm搬送し、計10回擦って静電荷を付与した。得られた試料を縦方向に設置し、一方のフィルムに対して、他方のフィルムが落下する状態を目視で確認し、以下のA〜Dの4段階で評価した。A、B,C、Dの順に帯電防止特性が優れていることを示す。
A: 他方のフィルムは瞬時に落下した
B: 他方のフィルムは短時間で落下した
C: 他方のフィルムが少しずれたが付着した状態であった
D: 他方のフィルムがしっかりと付着した状態であった
(iv)結果
下記表1に示すように、導電性金属酸化物を全く含まない試料1−1、あるいはその含有量の低い比較用試料1−2〜1−4は、抵抗値が高くゴミつき、フィルム付着が悪く取り扱い性の悪いものであった。これに対して、本発明の導電性を示す本発明の試料1−5〜1−8はゴミつきおよびフィルム付着性に優れるものであった。特に低湿度環境下でもフィルム付着は優れたものであった。また、本発明の試料の水蒸気透過率はすべて0.005g/m2・day以下であり、優れた特性を有するものであった。
Figure 2006239884
[実施例2]
実施例1の試料1−7において、その層構成を下記にする以外は、実施例1と同様にして、本発明の試料2−1〜2−7を作製した。それぞれの特性評価を実施し、上記表1に結果を示す。上記表1からわかるように得られた本発明の試料は全て導電性とゴミつきおよびフィルム付着性に優れたものであった。
(i)試料2−1の構成:基材フィルム/無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)/隣接有機層(500nm)/無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)/導電性層
(ii)試料2−2の構成:基材フィルム/無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)/吸湿性層/隣接有機層(500nm)/無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)/導電性層
(iii)試料2−3の構成:基材フィルム/無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)/吸湿性層/{(隣接有機層(500nm)/無機ガスバリア層(50nm))×2/隣接有機層(500nm)/導電性層
(iv)試料2−4の構成:基材フィルム/{無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)}×2/吸湿性層/{隣接有機層(500nm)/無機ガスバリア層(50nm)}×2/導電性層
(v)試料2−5の構成:無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)/無機ガスバリア層(50nm)/基材フィルム/{無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)}×2/吸湿性層/{隣接有機層(500nm)/無機ガスバリア層(50nm)}×2/導電性層
(vi)試料2−6の構成:基材フィルム/{無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)}×2/吸湿性層/隣接有機層(500nm)/導電性層
(vii)試料2−7の構成:基材フィルム/吸湿性層/隣接有機層(500nm)/{無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)}×2/導電性層
[実施例3]
実施例1の試料1−7において、(1−1)基材フィルム溶液の調製の組成中における樹脂化合物を上述のI−1、F−4、FL−1、FL−5およびFL−10(いずれもTgは250℃以上)に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の試料3−1〜3−5を作製した。それぞれの特性評価を実施し、結果を上記表1に示す。表1からわかるように、得られた本発明の試料は全て導電性とゴミつきおよびフィルム付着性とに優れたものであった。
[実施例4]
実施例1の試料1−7において、(2−5)導電性層の形成を下記に変更した以外は、実施例1と全く同様にして、本発明の試料4−1〜4−4を作製した。それぞれの特性評価を実施し、上記表1に結果を示す。表1からわかるように、得られた本発明の試料は全て導電性とゴミつきおよびフィルム付着性とに優れたものであった。
(i)試料4−1の導電性層の形成
・平均一次粒子サイズ12nmの酸化インジウム−酸化アンチモン複合物(酸化アンチモン含有量5mol%、比抵抗は1Ω・cm、微粒子粉末のアセトン分散物(2次凝集粒子サイズ約45nm)
・トリアセチルセルロース(酢化度2.60、重合度305) 0.05g/m2
・ポリ(重合度10)オキシエチレン−ステアリルエーテル 0.001g/m2
該導電性溶液は、アセトン中でトリアセチルセルロースが5体積%になるように作製した。所望の塗布量になるように適切なバーコーターで塗布した。
(ii)試料4−2の導電性層の形成
・酸化スズ−酸化アンチモン複合物ゾル(酸化アンチモン含有量5mol%、比抵抗は1Ω・cm、微粒子粉末のメタノール/水(9/1質量比))0.9g/m2(固形分)
・トリアセチルセルロース(酢化度2.60、重合度305) 0.05g/m2
・ポリ(重合度10)オキシエチレン−ステアリルエーテル 0.001g/m2
該導電性溶液は、アセトン中でトリアセチルセルロースが5体積%になるように作製した。所望の塗布量になるように適切なバーコーターで塗布した。
(iii)試料4−3の導電性層の形成
・平均短軸長5nm、平均長軸長0.5μmの五酸化バナジウム−銀複合物(銀含有量7mol%、比抵抗は2Ω・cm、微粒子粉末のアセトン分散物
・トリアセチルセルロース(酢化度2.60、重合度305) 0.05g/m2
・ポリ(重合度10)オキシエチレン−ステアリルエーテル 0.001g/m2
該導電性溶液は、アセトン中でトリアセチルセルロースが5体積%になるように作製した。所望の塗布量になるように適切なバーコーターで塗布した。
(iv)試料4−4の導電性層の形成
・平均一次粒子サイズ18nmのポリアニリン(比抵抗は5500Ω・cm、微粒子粉末のアセトン分散物(2次凝集粒子サイズ約86nm)
・トリアセチルセルロース(酢化度2.60、重合度305) 0.05g/m2
・ポリ(重合度10)オキシエチレン−ステアリルエーテル 0.001g/m2
該導電性溶液は、アセトン中でトリアセチルセルロースが5体積%になるように作製した。所望の塗布量になるように適切なバーコーターで塗布した。
[実施例5]
実施例1の試料1−7において、(1−1)基材フィルム溶液の調製におけるジクロロメタン80質量部を、酢酸メチル/アセトン/ブタノール(68/10/2、質量部)、またはアセトン/シクロペンタノン(70/10、質量部)に変更した以外は、実施例1と全く同様にして、本発明の試料5−1、5−2を作製した。それぞれの特性評価を実施し、結果を上記表1に示した。上記表1からわかるように得られた本発明の試料は全て導電性とゴミつきおよびフィルム付着性とに優れたものであった。
本発明の水蒸気バリアフィルムは、優れた透明性とバリア性とを有しかつ帯電防止特性に優れるため、各種デバイスの基板やデバイスの被覆フィルムとして好適に用いられる。また、本発明の画像表示素子用基板および有機EL素子等の光学表示材料は、高い耐久性およびフレキシブル性を有し、帯電防止に優れており、本発明は産業上の利用可能性が高い。
実施例において用いたスパッタリング装置を示す説明図である。
符号の説明
1 スパッタリング装置
2 真空槽
3 ドラム
4 送り出しロール
5 巻き取りロール
6 プラスチックフィルム
7 ガイドロール
8 ガイドロール
9 排気口
10 真空ポンプ
11 放電電源
12 カソード
13 制御器
14 ガス流量調整ユニット
15 配管

Claims (11)

  1. 基材フィルム上に、少なくとも二層の無機ガスバリア層と、少なくとも一層の抵抗が1012Ω(25℃・相対湿度60%)以下である導電性層と、を有することを特徴とする水蒸気バリアフィルム。
  2. 前記無機ガスバリア層が、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTaから選ばれる一種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物を含む層であることを特徴とする請求項1に記載の水蒸気バリアフィルム。
  3. 前記基材フィルムが、ポリエステルフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、フルオレン環変性カーボネートフィルム、脂環変性ポリカーボネートフィルム、または、アクリロイル化合物フィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の水蒸気バリアフィルム。
  4. 前記基材フィルムが、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上であるポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルム。
  5. 前記基材フィルムが、下記一般式(1)で表されるスピロ構造を有する樹脂または下記一般式(2)で表されるカルド構造を有する樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルム。
    Figure 2006239884
    〔一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、2つの環はスピロ結合によって結合される。〕
    Figure 2006239884
    〔一般式(2)中、環βおよび環γは単環式または多環式の環を表し、2つの環γはそれぞれ同一若しくは異なっていてもよい。また、環βおよび環γは、環β上の1つの4級炭素原子によって連結される。〕
  6. 前記導電性層が、少なくとも一種の導電性無機金属素材、および/または、少なくとも一種の有機導電性素材、を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルム。
  7. 前記導電性金属酸化物が、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、或いはこれらの金属元素を含む複合酸化物であり、さらに該金属酸化物が異種原子としてAl、In、Ta、Sb、Nb、Ag、Cl、BrまたはIを含有していてもよいことを特徴とする請求項6に記載の水蒸気バリアフィルム。
  8. 前記二層の無機ガスバリア層の間に少なくとも一層の2属金属一酸化物からなる吸湿性層を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルム。
  9. 前記無機ガスバリア層および/または吸湿性層に隣接する層の少なくとも一層に、隣接有機層を設けたことを特徴とする請求項8に記載の水蒸気バリアフィルム。
  10. 前記吸湿性層が、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、または、Raのいずれかを含む金属酸化物を少なくとも一種含むことを特徴とする請求項8または9に記載の水蒸気バリアフィルム。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルムを含むことを特徴とする光学表示材料。
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