本発明の円偏光板は、λ/4位相差フィルム(A)、偏光子、λ/4位相差フィルム(B)がこの順で積層されており、それぞれのλ/4位相差フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が45°である円偏光板であって、それぞれのλ/4位相差フィルムが、正の固有複屈折を示すポリマー延伸型位相差フィルムであり、かつ該λ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)との遅相軸のなす角度が5°以下であり、湿度変動によるカール変動が10未満であり、さらに前記λ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)とが、いずれも可塑剤を含有するセルロースエステル樹脂フィルムであり、双方のλ/4位相差フィルムの厚さ方向における可塑剤含有比率の高い側の面が、共に偏光子から遠い側に配置されることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項5までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の円偏光板は、前記λ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)とが、いずれも可塑剤を含有するセルロースエステル樹脂フィルムであり、双方のλ/4位相差フィルムの厚さ方向における可塑剤含有比率の高い側の面が、共に偏光子から遠い側に配置されることが湿度変動によるカール変動耐性の観点から好ましい。
円偏光板の製造方法は、原反フィルムを作製した後に、それぞれの原反フィルムの厚さ方向における可塑剤含有比率の高い側の面を、一方は上に、他方は下にした状態で原反フィルムを斜め延伸してλ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)とを作製することが、円偏光板用のλ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)とのロールセットを簡便に連続製造できることから好ましい。
円偏光板の製造方法は、前記原反フィルムを作製した後に、それぞれの原反フィルムが厚さ方向における可塑剤含有比率の高い側の面を、一方は上に、他方は下にした状態で原反フィルムを斜め延伸してλ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)とを作製するときの配向角が、共に45°であることが好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に好適に具備され得る。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
<λ/4位相差フィルム>
本発明の円偏光板は、λ/4位相差フィルム(A)、偏光子、λ/4位相差フィルム(B)がこの順で積層されており、それぞれのλ/4位相差フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が45°である円偏光板であって、それぞれのλ/4位相差フィルムが、正の固有複屈折を示すポリマー延伸型位相差フィルムであり、かつ該λ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)との遅相軸のなす角度が5°以下であり、湿度変動によるカール変動が10未満であり、可塑剤を含有するセルロースエステル樹脂フィルムである。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、以下のように推察している。
円偏光板の連続生産は、2枚の長尺の円偏光板用保護フィルム(本発明においては、λ/4位相差フィルム(A)及び(B))とその間に配置されるように吸収型偏光子を同時に繰り出し、接着剤によりこれら三枚のフィルムの貼合が行われる。円偏光板用保護フィルムは、正の固有複屈折を持つポリマー延伸型位相差フィルムであるため、その弾性率は面内において異方性を持つ。繰り出しから貼合におけるプロセスにおいて搬送のための張力が位相差フィルムに付与されるため、弾性変形が起きた状態で貼合されるが、貼合後に張力がなくなると弾性変形状態から通常の状態への寸法収縮が起きる。2枚の円偏光板保護フィルムの遅相軸の方向を5°以内に合わせることは、異方的に起こる寸法収縮を上下の円偏光板保護フィルムで合致させることにより、偏光板のカール耐性を向上させることができる。
本発明に記載のλ/4位相差フィルムの素材は、波長分散特性の観点、偏光子への密着性や透明性の観点からセルロースエステルを用いる。
中でも、波長分散特性、湿度に対する位相差変動の抑制の観点から、下記式(1)及び(2)を満たすセルロースアシレートを含有することが好ましい。
式(1) 2.0≦Z1<3.0
式(2) 0.5≦X
(式(1)及び(2)において、Z1はセルロースアシレートの総アシル基置換度を表し、Xはセルロースアシレートのプロピオニル基置換度及びブチリル基置換度の総和を表す。)
本発明に記載の「λ/4位相差フィルム」とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(又は、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有するものをいう。λ/4位相差フィルムは、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、層の面内の位相差値Roが約1/4である。
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、波長550nmで測定したRo(550)が110〜170nmの範囲内でありRo(550)が120〜160nmであることが好ましく、Ro(550)が130〜150nmであることがさらに好ましい。
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、可視光の波長の範囲においてほぼ完全な円偏光を得るため、可視光の波長の範囲においておおむね波長の1/4のリターデーションを有する位相差板(フィルム)であることが好ましい。
「可視光の波長の範囲においておおむね1/4のリターデーション」とは、波長400から700nmにおいて長波長ほどリターデーションが大きく、波長450nmで測定した下記式(3)で表されるリターデーション値であるRo(450)と波長550nmで測定したリターデーション値であるRo(550)の比Ro(450)/Ro(550)の値が、0.72〜0.92であることが青色の再現にとって好ましく、0.77〜0.87であることが特に好ましい。また、波長550nmで測定したリターデーション値であるRo(550)と波長650nmで測定したリターデーション値であるRo(650)の比Ro(550)/Ro(650)の値が、0.84〜0.97であることが赤色の再現にとって好ましく、0.84〜0.92であることが特に好ましい。
式(3):Ro=(nx−ny)×d
式中、nx、nyは、23℃・55%RH、450nm、550nm又は650nmにおける屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう。)、ny(フィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率)であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。
Ro、Rtは自動複屈折率計を用いて測定することができる。自動複屈折率計KOBRA−WPR(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、各波長での複屈折率測定によりRoを算出する。
λ/4位相差フィルムの遅相軸と後述する偏光子の透過軸との角度が45°になるように積層すると円偏光板が得られる。「45°」とは、45±5°であることを意味する。λ/4位相差フィルムの面内の遅相軸と偏光子の透過軸との角度は、41〜49°であることが好ましく、42〜48°であることがより好ましく、43〜47°であることが更に好ましく、44〜46°であることが最も好ましい。
<円偏光板の湿度変動によるカール変動>
円偏光板を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の環境変動下での光漏れ改善において、前述した2枚の円偏光板保護フィルムの遅相軸の方向を5°以内に合わせることに加えて、円偏光板保護フィルムの吸脱湿に伴う寸法変化の速度とそれにより発生する応力の大きさにも着目した。湿度変動下に置かれた偏光板保護フィルムの吸湿を抑制すると、寸法の変化を緩やかする。緩やかな寸法変化は、偏光子に与える応力を低減させ、偏光子の配向乱れを抑制すると考えられる。これにより環境変動下での光漏れの抑制を達成できる。
すなわち円偏光板の湿度変動によるカール変動は、フィルム厚さ方向での吸湿速度の均一性を向上することでより改善することを見出した。湿度変動条件下で、2枚の円偏光板保護フィルム内の水分は空気中に放出、若しくは空気中から水分が取り込まれるため、偏光板保護フィルムは収縮若しくは膨張する。この時に吸放出の速度に違いがあると環境変動下での偏光板保護フィルムのカール変動を引き起こす。円偏光板保護フィルムの厚さ方向における可塑剤含有比率を円偏光板の厚さ方向において対称的に配置することにより、吸脱湿の速度を均一に制御することができ、円偏光板の湿度変動でのカール変動をより一層抑制することができる。
以下、好ましい態様である、λ/4位相差フィルム(A)及びλ/4位相差フィルム(B)がいずれも可塑剤を含有するセルロースエステルであり、双方のλ/4位相差フィルムの厚さ方向における可塑剤含有比率が高い面側が、共に偏光子側又は共に偏光子から遠い側に配置される場合を、図を用いて説明する。
円偏光板の連続生産において、2枚の円偏光板厚さ方向における可塑剤分布及び各々のフィルムの遅相軸の関係を一種類の偏光板フィルムロールで達成することは困難であり、λ/4位相差フィルム(A)及びλ/4位相差フィルム(B)とからなる2枚の円偏光板保護フィルムのロールセットを用いることによりこの課題を解決することができる。図を用いてこの課題について、説明を行う。図1は円偏光板とλ/4位相差フィルムに関する模式図である。
図1(1)は厚さ方向に可塑剤含有比率の異なるλ/4位相差フィルム(A)1aとλ/4位相差フィルム(B)2aの厚さ方向の可塑剤含有比率の組み合わせに着目し、その分布を示した模式図である。図中太線は、可塑剤含有比率の高い面を模式的に表している。図1(1)から、パターンが(1−1)から(1−4)まで4種あることがわかる。
図1(2)、図1(3)は可塑剤含有比率に加えて、λ/4位相差フィルムの遅相軸も考慮した模式図である。
図1(2)に示されるように、可塑剤含有比率の高い面が上側の状態で測定した時のλ/4位相差フィルムの遅相軸が45°の同一のフィルムロール(A1)、(B1)を準備する。(A1)及び(B1)を繰り出し連続貼合した場合、(A1)、(B1)の表裏面を入れ替えて貼合した結果は、(A1+B1),(A1+B1R),(A1R+B1),(A1R+B1R)の4つに分類される。記号Rは、表裏面を入れ替えたことを表す。いずれの分類においても、遅相軸の方向が平行でかつ可塑剤の分布が貼合した厚さ方向に対して対称性を持つ配置は達成できない。なお図1(2)中、上部がフィルムロールA1、下部がフィルムロールB1を表している。
同様に、図1(3)から明らかなように、フィルムロールの組み合わせ(C1+D1R)及び(C1R+D1)において2枚の円偏光板保護フィルムの遅相軸が平行であり、かつ可塑剤の厚さ方向での分布が対称的な配置が達成できた。このようなλ/4位相差フィルム(A)及びλ/4位相差フィルム(B)とからなる2枚の円偏光板保護フィルムのロールセットを用いることが好ましい。なお図1(3)中、上部がフィルムロールC1、下部がフィルムロールD1を表している。
(可塑剤)
本発明に係るλ/4位相差フィルムにおいては、フィルム中に少なくとも一種の可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤とは、一般的には高分子中に添加することによって脆弱性を改良したり、溶融粘度を低下させたり、柔軟性を付与したりする効果のある添加剤であるが、例えば本発明における好ましい態様の樹脂の場合、セルロースエステルの親水性を改善し、光学フィルムの透湿度を改善するためにも添加されるため、透湿防止剤としての機能を有する。
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、以下に示すポリエステル樹脂、一般式(PEI)で表される化合物、一般式(PEII)で表される化合物、カルボン酸糖エステル化合物を可塑剤として好ましく含有することができる。
〈ポリエステル樹脂〉
本発明において用いることができるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールを重合することにより得られ、ジカルボン酸構成単位(ジカルボン酸に由来する構成単位)の70%以上が芳香族ジカルボン酸に由来し、かつジオール構成単位(ジオールに由来する構成単位)の70%以上が脂肪族ジオールに由来する。
芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位の割合は70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
脂肪族ジオールに由来する構成単位の割合は70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。ポリエステル樹脂は、二種以上を併用してもよい。
前記芳香族ジカルボン酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、3,4′−ビフェニルジカルボン酸等及びこれらのエステル形成性誘導体が例示できる。
ポリエステル樹脂には本発明の目的を損なわない範囲でアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や安息香酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸を用いることができる。
前記脂肪族ジオールとして、エチレングリコール、1,3−プロピレンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等及びこれらのエステル形成性誘導体が例示できる。
ポリエステル樹脂には本発明の目的を損なわない範囲でブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール等のモノアルコール類や、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類を用いることもできる。
ポリエステル樹脂の製造には、公知の方法である直接エステル化法やエステル交換法を適用することができる。ポリエステル樹脂の製造時に使用する重縮合触媒としては、公知の三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、酢酸チタン等のチタン化合物、塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物等が例示できるが、これらに限定されない。
好ましいポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキレート樹脂、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート−テレフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−テレフタレート−4,4′−ビフェニルジカルボキシレート樹脂、ポリ−1,3−プロピレン−テレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂等がある。
より好ましいポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート共重合樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂が挙げられる。
ポリエステル樹脂の固有粘度(フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=60/40質量比混合溶媒中、25℃で測定した値)は、0.7〜2.0dl/gが好ましく、より好ましくは0.8〜1.5dl/gである。固有粘度が0.7以上であるとポリエステル樹脂の分子量が充分に高いために、これを使用して得られるポリエステル樹脂組成物からなる成形物が成形物として必要な機械的性質を有すると共に、透明性が良好となる。固有粘度が2.0以下の場合、成形性が良好となる。
〈一般式(PEI)で表される化合物:芳香族基末端ポリエステル系化合物〉
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、下記一般式(PEI)で表される化合物(以下、「芳香族基末端ポリエステル系化合物」ともいう。)とセルロースエステル樹脂を含有することを特徴とする。本発明においては、当該一般式(PEI)で表される化合物を含有させることにより、位相差を自在にコントロールすることができて目的のλ/4位相差へのコントロールが容易、フィルムに硬度を付与しハードコートや防眩性ハードコートを表面加工した際の硬度が向上するという効果が得られる。
一般式(PEI):B−(G−A)n−G−B
(Bは、ベンゼンモノカルボン酸残基を表す。Gは、炭素数2〜12のアルキレングリコール残基、炭素数6〜12のアリールグリコール残基、又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基を表す。Aは、炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。また、nは、0以上の整数を表す。)
一般式(PEI)中、Bで表されるアリールカルボン酸残基とGで表されるアルキレングリコール残基又はオキシアルキレングリコール残基又はアリールグリコール残基、Aで表されるアルキレンジカルボン酸残基又はアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル系化合物と同様の反応により得られる。
使用される芳香族基末端ポリエステル系化合物のアリールカルボン酸成分としては、例えば安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ一種又は二種以上の混合物として使用することができる。
用いることのできる芳香族基末端ポリエステル系化合物の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用される。
特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースエステルとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
また、上記芳香族基末端ポリエステル系化合物の炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用できる。
芳香族基末端ポリエステル系化合物の炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えばコハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ一種又は二種以上の混合物として使用される。
炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等がある。
本発明で使用される芳香族基末端ポリエステル系化合物は、nが1以上100以下であることが好ましく、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。
また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシ(水酸基)価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、ヒドロキシ(水酸基)価は15mgKOH/g以下のものである。
本発明に係る一般式(PEI)で表される芳香族基末端ポリエステル系化合物は、セルロースエステル樹脂に対して、0.5〜30質量%含有させることが好ましい。
以下に、本発明に用いることのできる芳香族基末端ポリエステル系化合物の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、位相差値の変動を抑制して、表示品位を安定化するために、糖エステル化合物を、セルロースエステルフィルムの0.5〜30質量%含むことが好ましく、特には、5〜30質量%含むことが好ましい。
一般式(PEI)で表される芳香族基末端ポリエステル系化合物と糖エステル化合物の含有量は、質量比で99:1〜1:99の範囲で選択することができ、両化合物の全体量は、セルロースエステル樹脂に対して、1〜40質量%であることが好ましい。
〈一般式(PEII)で表される化合物:ヒドロキシ基末端ポリエステル〉
本発明においては、従来、光学フィルムに含有されている種々のポリエステル化合物を用いることができる。例えばポリエステル化合物として、下記一般式(PEII)で表される様に化学構造式の末端部分にヒドロキシ基を有するポリエステル(「ヒドロキシ基末端ポリエステル」という。)を用いることもできる。
(式中、Bは、炭素数が2〜6の直鎖又は分岐のアルキレン、又はシクロアルキレン基を表す。Aは、炭素数が6〜14の芳香族環を表す。nは、2以上の自然数を表す。)
上式で表される化合物は、芳香環を有するジカルボン酸(「芳香族ジカルボン酸」ともいう。)と、炭素数が2〜6の直鎖又は分岐のアルキレン又はシクロアルキレンジオールから得られ、両末端がモノカルボン酸で封止されていないことが特徴である。
炭素数6〜16の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸、2,2′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、等が挙げられる。その中でも好ましくは、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸である。
炭素数が2〜6の直鎖若しくは分岐のアルキレン若しくはシクロアルキレンジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。その中でも、好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールである。
中でも、Aが置換基を有していてもよいナフタレン環若しくはビフェニル環であることが本発明の効果を得る上で好ましい。ここで置換基とは、炭素数1以上6以下のアルキル基、アルケニル機、アルコキシル基である。
本発明に係るポリエステル化合物のヒドロキシ(水酸基)価(OH価)としては、100mgKOH/g以上500mgKOH/g以下であることが望ましく、170〜400mgKOH/gであることがさらに望ましい。ヒドロキシ(水酸基)価がこの範囲より大きくても小さくても、低アセチル基置換度のセルロースアセテートとの相溶性が低下する。
この範囲より大きい場合はポリエステル化合物の疎水性が大きくなるため、この範囲より小さい場合はポリエステル化合物同士の分子間相互作用(水素結合等)が強くなるため、フィルム中での析出が進行するためだと考えられる。
またヒドロキシ(水酸基)価の測定は、日本工業規格 JIS K1557−1:2007に記載の無水酢酸法等を適用できる。
ポリエステル化合物の数平均分子量(Mn)は、下記式から計算することができる。
Mn=(分子中のヒドロキシ基の数)×56110/(ヒドロキシ(水酸基)価)
=2×56110/(ヒドロキシ(水酸基)価)
ポリエステル化合物は、常法により上記ジカルボン酸とジオールとのポリエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成できる。
以下に、本発明に係るポリエステル化合物を例示する。
一般式(PEII)で表される化合物はセルロースアセテートに対し、1質量%以上5質量%未満添加することが好ましい。
(カルボン酸糖エステル化合物)
本発明に係るλ/4位相差フィルムには、可塑剤として、カルボン酸糖エステル化合物を含有させることも好ましい。当該化合物はセルロースとの相溶性が優れ含有させることで、耐水性が向上するという効果を得ることができる。多量に含有させることができるので、他の添加剤で耐水性が不十分な場合はこの化合物で補完する。
なお、本願において、「カルボン酸糖エステル化合物」とは、糖類のヒドロキシ基とカルボン酸のカルボキシ基から導かれるエステル結合を有する化合物をいう。
カルボン酸糖エステル化合物を構成するカルボン酸構造単位としては、例えばメチル安息香酸(トルイル酸)等の芳香族カルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族置換脂肪族カルボン酸、ステアリン酸等の脂肪酸が挙げられ、これらカルボン酸は、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基で置換されていても良い。
好ましい芳香族カルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができ、より、具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
好ましい脂肪族カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
カルボン酸糖エステル化合物を構成する糖類としては、通常、単糖類(monosaccharide)、二糖類(disaccharides)、3〜6個の単糖類が結合したオリゴ糖類が挙げられ、これらの内、炭素数が6〜48の糖類が好ましく、単糖類及び二糖類が更に好ましい。単糖類としては具体的には、例えばグルコース、果糖、アラビノース、マンノース、ソルビトールが挙げられ、二糖類としては、ショ糖、マルトースが挙げられる。原料の供給面から、グルコース、果糖、ショ糖が特に好ましく、ショ糖が最も好ましい。
これら糖類は分子内に複数個のヒドロキシ基を有しており、前述のカルボン酸構造単位とエステル結合を形成することができる。
特に、糖類としてショ糖を用いる場合、ショ糖分子内には8個のヒドロキシ基が存在するが、平均のエステル結合の数(「平均エステル置換度」ともいう。)としては、1.0以上あればよく、好ましくは3.0〜7.5であり、更に好ましくは3.0〜6.0である。
本発明においては、特に、下記一般式(4)で表される、総平均置換度が3.0〜6.0の範囲内である化合物を含有させることが好ましい。
なお、一般式(4)中、R
1〜R
8は、水素原子、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、又は、置換若しくは無置換のアリールカルボニル基を表し、R
1〜R
8は、同じであっても、異なっていてもよい。
一般式(4)で表される化合物の好ましい具体例としては、表1に示す化合物が挙げられる。なお、下表中に記載のRは、R1〜R8のうちのいずれかを表す。アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基の置換基としては、下表に示すアルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基が有するフェニル基、アルコキシ基等の置換基が好ましい。
当該一般式(4)で表される化合物、及び参考化合物を、以下に記載するが、これらに限定されない。
(合成例:一般式(4)で表される化合物)
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸180.8g(0.8モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×10
2Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×10
2Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4及びA−5の混合物を得た。得られた混合物をHPLC及びLC−MASSで解析したところ、A−1が7質量%、A−2が58質量%、A−3が23質量%、A−4が9質量%、A−5が3質量%であった。なお、得られた混合物の一部を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA−1、A−2、A−3、A−4及びA−5を得た。
本発明でλ/4位相差フィルムに添加される、一般式(1)で表される化合物の総平均置換度は3.0〜7.5であるが、当該置換度の範囲は3.0〜6.0であることが好ましい。置換度分布は、エステル化反応時間の調節、又は置換度違いの化合物を混合することにより目的の置換度に調整してもよい。
(その他添加剤)
本発明に係るλ/4位相差フィルムには、上記可塑剤以外に種々の化合物等を添加剤として含有させることができる。例えば位相差発現剤、酸化防止剤、酸捕捉剤、光安定剤、紫外線吸収剤、光学異方性制御剤、マット剤、帯電防止剤、剥離剤、等を含有させることができる。
(位相差発現剤)
本発明では、位相差(「リターデーション」ともいう。)発現剤を含んでいてもよい。位相差(リターデーション)発現剤は、例えば0.5〜10質量%の割合で含有させることができ、さらには、2〜6質量%の割合で含有させることが好ましい。位相差(リターデーション)発現剤を採用することにより、低延伸倍率で高いRe発現性を得られる。位相差(リターデーション)発現剤の種類としては、特に定めるものではないが、棒状又は円盤状化合物からなるものを挙げることができる。上記棒状又は円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を位相差(リターデーション)発現剤として好ましく用いることができる。棒状化合物からなる位相差(リターデーション)発現剤の添加量は、セルロースエステルを含むポリマー成分100質量部に対して0.5〜10質量部であることが好ましく、2〜6質量部であることがさらに好ましい。
円盤状の位相差(リターデーション)発現剤は、前記セルロースエステルを含むポリマー成分100質量部に対して、0.5〜10質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜8質量部の範囲で使用することがより好ましく、2〜6質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
二種類以上の位相差(リターデーション)発現剤を併用してもよい。
位相差(リターデーション)発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
ここで、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、縮合ベンゼン環、ビフェニール類が好ましい。特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が好ましく用いられる。
位相差(リターデーション)発現剤が有する芳香族環の炭素数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。
〈紫外線吸収剤〉
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、紫外線吸収剤を含有することもできる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
前記紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。
この他、1,3,5−トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
本発明において、セルロースエステル溶液は紫外線吸収剤を二種以上含有することが好ましい。また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号公報記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、λ/4位相差フィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、λ/4位相差フィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
〈酸化防止剤〉
酸化防止剤は、例えば、λ/4位相差フィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりλ/4位相差フィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、前記λ/4位相差フィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、前記重合体(A)とセルロースエステルの総質量に対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
(マット剤)
本発明に係る熱可塑性樹脂基材には、作製されたフィルムがハンドリングされる際に、傷が付いたり、搬送性が悪化することを防止するために、マット剤として、微粒子を添加することも好ましい。
微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等を挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが、濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜400nmが好ましく、更に好ましいのは10〜300nmである。これらは主に粒径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されていてもよく、平均粒径80〜400nmの粒子であれば凝集せずに一次粒子として含まれていることも好ましい。フィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.01〜1質量%であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成のλ/4位相差フィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
樹脂の例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがλ/4位相差フィルムのヘイズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明に係るλ/4位相差フィルムにおいては、少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0であることが好ましい。
<円偏光板の製造方法>
本発明の円偏光板の製造方法は、原反フィルムを作製した後に、それぞれの原反フィルムが厚さ方向における可塑剤含有比率の高い側の面を、一方は上に、他方は下にした状態で原反フィルムを斜め延伸してλ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)とを作製することが好ましい。このように作製すると、前述したように、可塑剤含有比率が厚さ方向で、偏光子に対して対称で、かつλ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)遅相軸を容易に揃えることができる。
本発明では、このように、原反フィルムから、一方は上に、他方は下にした状態で原反フィルムを斜め延伸して得られた、λ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)とからなるロールセットを用いることが好ましい。
更に、λ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)とで構成される円偏光板保護フィルム用のロール状フィルムセットであって、それぞれのλ/4位相差フィルムが可塑剤を含有している延伸フィルムであり、かつ前記λ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)とを、それぞれ、前記可塑剤含有比率が厚さ方向で高い側の面を上面にしたとき、当該λ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)との遅相軸が、相互に、直交する円偏光板保護フィルム用のロール状フィルムセットを用いることが好ましい。
用いる原反フィルムは一種でも二種でもかまわないが、同一原反フィルムから、二種のλ/4位相差フィルムを作製することが、厚さ方向における可塑剤含有比率の対称性、膜厚などをよりコントロールできるため好ましい。
また図1(1)中、(1−2)及び(1−3)で示した配置は円偏光板の厚さ方向の可塑剤含有比率が対称となり好ましい。特に(1−2)で示した配置では外側の面(表面)が可塑剤含有比率の高い面となるため、疎水性となり、外部の湿度変動に対してカール変動を小さくすることができ好ましい。
可塑剤含有比率は、例えば飛行時間型二次イオン質量分析装置(ToF−SIMS)(フィジカルエレクトロニクス(株)製)を用いて、フィルム断面における対象物質の濃度を測定することにより求めることができる。厚み方向において位相差フィルムを二分割し、それぞれの領域における対象物質の濃度の平均値から可塑剤含有比率の高い面及び低い面を決定することができる。
本発明では、斜め延伸装置を用いて製造することが好ましい。斜め延伸装置は、フィルムの初期搬送方向に対してほぼ45度方向に屈曲させることにより長尺フィルムの長手方向に対して、遅相軸が平行でない位相差フィルムを作製する装置である。
長尺フィルムの遅相軸と長尺フィルムの長手方向のなす角度を45°及び−45°とするためには屈曲角度を変更する必要がある。しかしながら、このような大きな屈曲角度の変更は、装置コストのアップや屈曲角変更時の歩留まり低下等を引き起こす大きな課題となる。
厚さ方向における可塑剤分布のある原反フィルムを作製し、これらのフィルムを斜め延伸装置に導入する際に、可塑剤含有比率の高い面を上及び下に配置して製造したロールセットを用いて偏光版を製造することは上記の課題を改善することができ、好ましい態様である。
また配向角を45°とすることで、遅相軸を等しくすることと、偏光子の吸収軸とのなす角度を45°にすることが容易で好ましい。
<長尺延伸フィルムの製造方法>
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、斜め延伸されて製造された長尺延伸フィルムであることが好ましい。長尺原反フィルムを斜め延伸することによって、フィルムの延長方向に対して任意の角度に面内遅相軸を付与することができる。
ここで長尺とは、フィルムの幅に対し、少なくとも5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管又は運搬される程度の長さを有するもの(フィルムロール)としうる。長尺のフィルムの製造方法では、フィルムを連続的に製造することにより、所望の任意の長さにフィルムを製造しうる。なお、長尺延伸フィルムの製造方法は、長尺原反フィルムを製膜した後に一度巻芯に巻取り、巻回体にしてから斜め延伸工程に供給するようにしてもよいし、製膜後の原反フィルムを巻き取ることなく、製膜工程から連続して斜め延伸工程に供給してもよい。製膜工程と斜め延伸工程を連続して行うことは、延伸後の膜厚や光学値の結果をフィードバックして製膜条件を変更し、所望の長尺延伸フィルムを得ることができるので好ましい。
長尺延伸フィルムの製造方法では、フィルムの幅手方向に対して0°を超え90°未満の角度に遅相軸を有する長尺延伸フィルムを製造することができる。ここで、フィルムの幅手方向に対する角度とは、フィルム面内における角度である。遅相軸は、通常延伸方向又は延伸方向に直角な方向に発現するので、フィルムの延長方向に対して0°を超え90°未満の角度で延伸を行うことにより、かかる遅相軸を有する長尺延伸フィルムを製造しうる。
長尺延伸フィルムの延長方向と遅相軸とがなす角度、すなわち配向角は、0°を超え90°未満の範囲で、所望の角度に任意に設定することができるが、より好ましくは40°〜50°であり、具体例としては45°とすることができる。
<長尺原反フィルムの製造方法>
長尺延伸フィルムを作製するために用いられる長尺原反フィルムは、公知の方法、例えば溶液キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などによって得ることができる。これらのうち溶液キャスト成形法はフィルムの平面性、透明度に優れ、押出成形法は斜め延伸後の厚さ方向のリターデーションRtを小さくすることが容易となり、残留揮発性成分量が少なくフィルムの寸法安定性にも優れるので好ましい。この長尺原反フィルムは、単層若しくは2層以上の積層フィルムであってもよい。積層フィルムは共押出成形法、共流延成形法、フィルムラミネイション法、塗布法などの公知の方法で得ることができる。これらのうち共押出成形法、共流延成形法が好ましい。
本発明では、延伸に供給される長尺原反フィルムの流れ方向の厚さムラσmは、後述する斜め延伸テンター入口でのフィルムの引取張力を一定に保ち、配向角やリターデーションといった光学特性を安定させる観点から、0.30μm未満、好ましくは0.25μm未満、さらに好ましくは0.20μm未満である必要がある。長尺原反フィルムの流れ方向の厚さムラσmが0.30μm以上となると長尺延伸フィルムのリターデーションや配向角といった光学特性のバラツキが顕著に悪化する。
長尺原反フィルムの流れ方向の厚さムラσmを上記範囲とするためには、押出成形法の場合は、特開2004−233604号公報に記載されているような、冷却ドラムに密着させる時の溶融状態の熱可塑性樹脂を安定な状態に保つ方法により達成可能である。具体的には、1)溶融押出法で長尺原反フィルムを製造する際に、ダイスから押し出されたシート状の熱可塑性樹脂を50kPa以下の圧力下で冷却ドラムに密着させて引き取る方法;2)溶融押出法で長尺原反フィルムを製造する際に、ダイス開口部から最初に密着する冷却ドラムまでを囲い部材で覆い、囲い部材からダイス開口部又は最初に密着する冷却ドラムまでの距離を100mm以下とする方法;3)溶融押出法で長尺原反フィルムを製造する際に、ダイス開口部から押し出されたシート状の熱可塑性樹脂より10mm以内の雰囲気の温度を特定の温度に加温する方法;4)関係を満たすようにダイスから押し出されたシート状の熱可塑性樹脂を50kPa以下の圧力下で冷却ドラムに密着させて引き取る方法;5)溶融押出法で長尺原反フィルムを製造する際に、ダイス開口部から押し出されたシート状の熱可塑性樹脂に、最初に密着する冷却ドラムの引取速度との速度差が0.2m/s以下の風を吹き付ける方法;が挙げられる。
また、長尺原反フィルムとして、幅方向の厚さ勾配を有するフィルムが供給されてもよい。延伸が完了した位置におけるフィルム厚さを最も均一なものとしうるような長尺原反フィルムの厚さの勾配は、実験的に厚さ勾配を様々に変化させたフィルムを延伸することにより、経験的に求めることができる。長尺原反フィルムの厚さの勾配は、例えば厚さの厚い側の端部の厚さが、厚さの薄い側の端部よりも0.5〜3%程度厚くなるように調整することができる。
長尺原反フィルムの幅は、特に限定されないが、500〜4000mm、好ましくは1000〜2000mmとすることができる。また、長尺原反フィルムの総膜厚は、特に限定されないが、20〜400μm、好ましくは20〜200μmの範囲内であることが好ましい。
また、上記長尺原反フィルムの幅調整方法として、溶液キャスト成形法、押出成形法にて得られたフィルムを幅手方向に横延伸、若しくは搬送方向に縦延伸をしてもよい。
斜め延伸時の延伸温度での好ましい弾性率は、ヤング率で表して、0.01MPa以上5000MPa以下、更に好ましくは0.1MPa以上500MPa以下である。弾性率が低すぎると、延伸時・延伸後の収縮率が低くなり、シワが消えにくくなり、また高すぎると、延伸時にかかる張力が大きくなり、フィルムの両側縁部を保持する部分の強度を高くする必要が生じ、後工程のテンターに対する負荷が大きくなる。
<斜め延伸テンターによる延伸>
本実施形態に係る製造方法における延伸に供される長尺の長尺原反フィルムに斜め方向の配向を付与するために、斜め延伸テンターを用いる。本実施形態で用いられる斜め延伸テンターは、レールパターンやフィルム把持具の搬送速度を多様に変化させることにより、フィルムの配向角を自在に設定でき、さらに、フィルムの配向軸をフィルム幅方向に渡って左右均等に高精度に配向させることができ、かつ、高精度でフィルム厚さやリターデーションを制御できるフィルム延伸装置であることが好ましい。
図2(a)、(b)は本実施形態に係る長尺延伸フィルムの製造方法に用いられる斜め延伸可能なテンターの模式図である。ただし、これは一例であって本発明はこれに限定されるものではない。
テンター入り口側のガイドロール12−1によって方向を制御された長尺原反フィルム4は、外側のフィルム保持開始点8−1、内側のフィルム保持開始点8−2の位置で把持具(クリップつかみ部ともいう)によって把持される。
左右一対のフィルム把持具は互いに等速度で、斜め延伸テンター6にて外側のフィルム把持手段の軌跡7−1、内側のフィルム把持手段の軌跡7−2で示される斜め方向に搬送、延伸され、外側のフィルム把持終了点9−1、内側のフィルム把持終了点9−2によって把持を解放され、テンター出口側のガイドロール12−2によって搬送を制御されて斜め延伸フィルム5が形成される。図中、長尺原反フィルムは、フィルムの送り方向14−1に対して、フィルムの延伸方向14−2の角度(繰出し角度θi)で斜め延伸される。
図2(a)、(b)において、把持具の走行速度は適宜選択できるが、通常、1〜100m/分である。
また、左右一対のフィルム把持具が互いに等速度とは実質的に、左右一対の把持具の走行速度の差として走行速度の1%以下であることを意味する。
一般的なテンター装置等では、チェーンを駆動するスプロケットの歯の周期、駆動モーターの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これらは本発明の実施形態で述べる速度差には該当しない。
本発明の実施形態に係る長尺延伸フィルムの製造方法は、上記斜め延伸可能なテンターを用いて行う。このテンターは、長尺原反フィルムを、オーブンによる加熱環境下で、その進行方向(フィルム幅方向の中点の移動方向)に対して斜め方向に拡幅する装置である。このテンターは、オーブンと、フィルムを搬送するための把持具が走行する左右で一対のレールと、該レール上を走行する多数の把持具とを備えている。フィルムロールから繰り出され、テンターの入口部に順次供給されるフィルムの両端を、把持具で把持し、オーブン内にフィルムを導き、テンターの出口部で把持具からフィルムを開放する。把持具から開放されたフィルムは巻芯に巻き取られる。一対のレールは、それぞれ無端状の連続軌道を有し、テンターの出口部でフィルムの把持を開放した把持具は、外側を走行して順次入口部に戻されるようになっている。
なお、図2(a)、(b)で代表されるように、テンターのレール形状は、製造すべき長尺延伸フィルムに与える配向角θ、延伸倍率等に応じて、左右で非対称若しくは左右対称な形状となっており、手動で又は自動で微調整できるようになっている。本発明においては、長尺の熱可塑性樹脂フィルムを延伸し、配向角θが延伸後の巻取り方向に対して、好ましくは10°〜80°の範囲内で任意の角度に設定できるようになっている。
また、左右の把持具の走行速度差については、テンターの延伸方式により適宜選択される。
また、本発明の実施形態に係る製造方法で用いられる斜め延伸テンターでは、各レール部及びレール連結部の位置を自由に設定できることが好ましい。したがって、斜め延伸テンターは、任意の入り口幅及び出口幅を設定すると、これに応じた延伸倍率にすることができる(下記、図2の○部は連結部の一例である。)。
本発明の実施形態に係る製造方法で用いられる斜め延伸テンターにおいて、特に図2(a)、(b)のようにテンター内部において、把持具の軌跡を規制するレールには、しばしば大きい屈曲率が求められる。急激な屈曲による把持具同士の干渉、あるいは局所的な応力集中を避ける目的から、屈曲部では把持具の軌跡が円弧を描くようにすることが望ましい。
図2(a)で示される斜め延伸テンターにおいては、長尺原反フィルムのテンター入口での進行方向14−1は、延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向と異なっている。繰出し角度θiは、テンター入口での進行方向14−1と延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向14−2とのなす角度である。
図2(b)で示される斜め延伸テンターにおいては、長尺原反フィルムのテンター入口での進行方向14−1は、テンター内で繰出し角度θiにてテンター入口での進行方向とは異なる方向に転換され搬送される。その後さらに搬送方向が転換され、最終的には延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向一致するような軌跡をとる。本発明においては、上述のように好ましくは10°〜80°の配向角θを持つフィルムを製造するため、繰出し角度θiは、10°<θi<60°、好ましくは15°<θi<50°で設定される。繰出し角度θiを前記範囲とすることにより、得られるフィルムの幅方向の光学特性のバラツキが良好となる(小さくなる)。
図2(a)(b)で示されるような本発明の実施形態において、テンターの左右の把持具は、前後の把持具と一定間隔を保って、一定速度で走行するようになっている。
斜め延伸テンター内を走行するフィルムは、フィルムが走行するレールパターンに応じて、テンター内に予熱ゾーン、横延伸ゾーン、斜め延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン等に区分けされたオーブンを通過する。ただし、必ずしも上記ゾーンの全てを上記順序でフィルムを搬送させる必要はなく、例えば下記組み合わせ例のように、上記ゾーンの一部のみを使用したり、上記ゾーンのうち任意のゾーンを数回使用したりしてもよい。
予熱ゾーン/斜め延伸ゾーン/保持ゾーン/冷却ゾーン
予熱ゾーン/横延伸ゾーン/斜め延伸ゾーン/保持ゾーン/冷却ゾーン
予熱ゾーン/斜め延伸ゾーン/横延伸ゾーン/保持ゾーン/冷却ゾーン
予熱ゾーン/横延伸ゾーン1/斜め延伸ゾーン/横延伸ゾーン2/保持ゾーン/冷却ゾーン
予熱ゾーン/横延伸ゾーン1/斜め延伸ゾーン1/横延伸ゾーン2/斜め延伸ゾーン2/保持ゾーン/冷却ゾーン
予熱ゾーンとは、オーブン入口部において、フィルムの両端を把持した把持具の間隔が一定の間隔を保ったまま走行する区間をさす。
横延伸ゾーンとは、フィルムの両端を把持した把持具の間隔が開きだし、所定の間隔になるまでの区間をさす。このとき、両端の把持具が走行するレールの開き角度は、両レールともに同じ角度で開いてもよいし、各々異なる角度で開いてもよい。
斜め延伸ゾーンとは、フィルムの両端を把持した把持具が、把持具間隔を一定に保ったままあるいは広がりながら、屈曲するレール上を走行し始めてから両把持具がともに再度直線レール上を走行し始めるまでの区間をさす。
保持ゾーンとは、横延伸ゾーンあるいは斜め延伸ゾーンより後の把持具の間隔が再び一定となる期間において、両端の把持具が互いに平行を保ったまま走行する区間をさす。
冷却ゾーンとは、保持ゾーンより後の区間において、ゾーン内の温度がフィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg℃以下に設定される区間をさす。
このとき、冷却によるフィルムの縮みを考慮して、あらかじめ対向する把持具間隔を狭めるようなレールパターンとしてもよい。
各ゾーンの温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、予熱ゾーンの温度はTg〜Tg+30℃、延伸ゾーンの温度はTg〜Tg+30℃、冷却ゾーンの温度はTg−30〜Tg℃に設定することが好ましい。
なお、幅方向の厚さムラの制御のために延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差をつけてもよい。延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差をつけるには、温風を恒温室内に送り込むノズルの開度を幅方向で差をつけるように調整する方法や、ヒーターを幅方向に並べて加熱制御するなどの公知の手法を用いることができる。
<円偏光板>
本発明の円偏光板は、λ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)との遅相軸のなす角度が5°以内である。この角度は両者の角度差を意味し、それぞれの遅相軸がほぼ一致する場合、すなわち0〜2°であることがより好ましい。
また、長尺状λ/4位相差フィルム(延伸フィルム)を、長尺状の偏光子の両方の面に積層して形成される長尺状偏光板とすることが好ましい。
本発明の偏光板は、偏光子としてヨウ素、又は二色性染料をドープしたポリビニルアルコールを延伸したものを使用し、λ/4位相差フィルム(A)/偏光子/λ/4位相差フィルム(B)の構成で貼合して製造することができる。
偏光子の膜厚は、5〜40μm、好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。
偏光板は、一般的な方法で作製することができる。アルカリ鹸化処理したλ/4位相差フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
偏光板は、更に当該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
<有機エレクトロルミネッセンス表示装置>
以下に、本発明の有機EL画像表示装置の構成の一例を示すがこれに限定されるものではない。
ガラスやポリイミド等を用いた基板上に順に金属電極、TFT、発光層、透明電極(ITO等)、絶縁層、封止層、透明シート(省略可)を有する有機EL素子上に、偏光子を二種のλ/4位相差フィルムによって挟持した円偏光板を設けて、有機EL画像表示装置を構成する。円偏光板の表面には保護フィルムや硬化層が積層されていることが好ましい。硬化層は、有機EL画像表示装置の表面のキズを防止するだけではなく、円偏光板による反りを防止する効果を有する。更に、硬化層上には、反射防止層を有していてもよい。上記有機EL素子自体の厚さは1μm程度である。
一般に、有機EL画像表示装置は、透明基板上に金属電極と発光層と透明電極とを順に積層して発光体である素子(有機EL素子)を形成している。ここで、発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、及び電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機EL画像表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
有機EL画像表示装置においては、発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」「質量%」を表す。
<参考例1>
<λ/4位相差フィルムの作製>
原反フィルム作製
<ドープ液組成>
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースエステル(セルロースアセテートプロピオネート:アセチル基置換度1.5、プロピオニル基0.9、総置換度2.4;重量平均分子量19万) 100質量部
糖エステル化合物A 7.0質量部
ポリエステルB 2.5質量部
TINUVIN928(BASFジャパン社製) 1.5質量部
微粒子添加液1 3.5質量部
なお、上記組成中に記載されたセルロースエステルは固有複屈折が正の樹脂である。
微粒子添加液1は以下に示す方法で作製した。
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 50質量部
微粒子分散液1 50質量部
ポリエステル化合物Bは以下の方法で作製したものを用いた。
(ポリエステルBの作製)
窒素雰囲気下、テレフタル酸ジメチル4.85g、1,2−プロピレングリコール4.4g、p−トルイル酸6.8g、テトライソプロピルチタネート10mgを混合し、140℃で2時間攪拌を行った後、更に210℃で16時間攪拌を行った。次に、170℃まで降温し、未反応物の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、ポリエステルBを得た。
酸価 :0.1mgKOH/g
数平均分子量:490
分散度 :1.4
分子量300〜1800の成分含有率:90%
ヒドロキシ(水酸基)価:0.1mgKOH/g
ヒドロキシ基含有量:0.04%
ポリエステルBはジカルボン酸に対してモノカルボン酸が2倍モル使用されているので末端がトルイル酸エステルになっている。
(糖エステル化合物Aの調製)
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸240g(0.8モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×102Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×102Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、糖エステル化合物Aを得た。平均置換度は7.3、オクタノール・水分配係数(logP値)は12.43であった。
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、2000mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力110N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
剥離したセルロースエステルフィルムを、160℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に1%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は15%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。
以上のようにして、乾燥膜厚110μmの長尺のロール状の原反フィルムAを得た。
<斜め延伸>
ロール状の長尺状原反フィルムAを、図2(a)の装置のスライド可能な繰出装置にセットし、斜め延伸機に供給した。そのとき、斜め延伸装置の入口部に最も近いガイドロール12−1の主軸と斜め延伸装置の把持開始点(クリップつかみ部)8−1、8−2との距離を80cmとした。クリップは搬送方向の長さが2インチのものを、上記ガイドロールは直径10cmのものを使用した。テンターで延伸温度200℃、延伸倍率1.8倍で巾手方向に延伸を行い、その後、レールが45°屈曲する際に延伸と垂直方向に0.71倍に収縮した。延伸後のフィルムは、斜め延伸テンター出口側ロール12−2で測定した張力の変動を引取モーター回転数に反映させるフィードバック制御を行って、引取張力の変動が3%未満となるように制御した。その後、フィルム両端をトリミングして、エアーフローロールからなる搬送方向変更装置で搬送方向を変更し、スライド可能な巻取装置で巻取り、2000mm幅のロール状の長尺状延伸位相差フィルムを得た。
また、フィルムの幅方向に渡って温度制御をするための加熱装置を使用して延伸を行った。加熱装置は延伸後のフィルム幅方向のフィルムの厚さが、延伸前の幅方向フィルム厚さ分布と同程度になるように温度制御を行った。
得られた配向角が45°の長尺状の延伸フィルムであるλ/4位相差フィルム(A)は、フィルム長手方向に対し均一なものであった。
上記の同様の手法で、レールの屈曲角を変化させ配向角を47°と48°に変化させた長尺状のλ/4位相差フィルム(A)を得た。同様に配向角を45°44°と43°35°に変化させた長尺状のλ/4位相差フィルム(B)を得た。
<円偏光板1〜5の作製>
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、沃素1kg、ホウ酸4kgを含む水溶液100kgに浸漬し50℃で6倍に延伸して長尺の偏光膜を作った。
この偏光膜を偏光子として、完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として用い、以下のアルカリケン化処理を行った配向角の異なる長尺状の位相差フィルムを偏光子とそれぞれ貼り合わせ、λ/4位相差フィルム(A)、偏光子、λ/4位相差フィルム(B)の構成からなる円偏光板1〜4を表1に示した組み合わせで作製した。
〈アルカリケン化処理〉
ケン化工程 2N−NaOH 50℃ 90秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
中和工程 10質量%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
上記条件でフィルム試料をケン化、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで80℃で乾燥を行った。
円偏光板5は、λ/4位相差フィルム(A)として、前記手法により作製したセルロースエステルフィルムを用い、λ/4位相差フィルム(B)として正の固有複屈折を持つ市販のポリカーボネートλ/4位相差フィルム(ピュアエースWRS(帝人株式会社製))を原材料とし、斜め延伸装置を用いて長尺λ/4位相差フィルムを作製した後、紫外線硬化樹脂を用いて接着し円偏光板を作製した。
〈評価〉
(1)配向角θ、面内方向リターデーションRo
位相差測定装置(王子計測社製、KOBRA−WPR)を用いて、遅相軸の配向角θ、及び550nmにおけるRoを求めた。また、可視域に於ける波長分散を測定した。なお、遅相軸の角度は長尺フィルムの長手方向を0°基準とし、時計回り方向が+、反時計まわり方向を−として角度を記載した。なお、偏光子の長手方向の吸収軸は0°であった。
(2)偏光板カール
偏光板試料から直径5cmの試料を切り出し、温度23℃、55%RHの恒温恒湿室にて24時間放置した後、平板上に置き、曲率スケールを用いて、試料と合致するカーブを有する曲率半径r(m)から1/rを求め、これをカールの大きさの尺度とした。カールの大きさと取り扱い易さを下記のようにランク評価した。
◎:0〜5未満
○:5〜10未満
×:10以上
ここで、◎、○は取り扱い易さが実用可であるが、×は取り扱いが極めて困難になる。
表1に、円偏光板1〜5のリターデーション値(Ro(550nm))、λ/4位相差フィルム(A)及びλ/4位相差フィルム(B)の遅相軸と偏光子とのなす角、及びλ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)との遅相軸のなす角、偏光板カールの評価結果を記載する。
なお表中、WRSはピュアエースWRS(帝人株式会社製)を表す。また以下の表中、以下の略号を用いた。
(A)(B)の遅相軸のなす角度:λ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)の遅相軸のなす角度
遅相軸と吸収軸のなす角度:λ/4位相差フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸のなす角度
表1から明らかなように、
参考例の試料1〜3及び試料5は偏光板カール特性に優れた円偏光板であった。λ/4フィルム(A)及びλ/4フィルム(B)の遅相軸のなす角を5°以下とすることにより、円偏光板作製時に掛る弾性のび状態から復元による歪みのバランスが改善され偏光板カールの良好な結果が得られた。
<実施例2>
<原反フィルムの作製>
参考例1と同様の手法で流延製膜によりセルロースエステルからなる長尺原反フィルム(B)を得た。なお、ロール状の長尺原反フィルムB作製の際には、<ドープ液組成>中のセルロースエステル(セルロースアセテートプロピオネート:アセチル基置換度1.5、プロピオニル基0.9、総置換度2.4;重量平均分子量19万)に変えて、セルロースエステル(セルロースアセテートプロピオネート:アセチル基置換度1.9、プロピオニル基0.7、総置換度2.6;重量平均分子量16万)を使用した。
<λ/4フィルム(A)及びλ/4フィルム(B)の作製>
長尺原反フィルム(B)ロールからの繰り出し時にA面を上(可塑剤含有比率の多い側を下面)にした状態とB面を上(可塑剤含有比率の多い面側を上面)として参考例1と同様の斜め延伸機を用いてλ/4位相差フィルムのロールセットを作製した。
<円偏光板の作製>
上記と同様の手法により、可塑剤含有量の高い面及び遅相軸の関係を種々変更したロールセットを用い、参考例1に記載の円偏光板の作製と同様の手法で、λ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)の可塑剤含有比率の異なる面の組み合わせを表2のλ/4位相差フィルムの配置の欄に記載のように変えてλ/4(A)、偏光子、λ/4(B)の構成からなる円偏光板(試料11〜26)を作製した。λ/4位相差フィルムの配置の番号は図1(1)の配置に対応する。
<有機エレクトロルミネッセンス表示装置の作製>
図3に示すように、ガラス基板上1b上にスパッタリング法によって厚さ80nmのクロムからなる反射電極2b、反射電極上に陽極としてITOをスパッタリング法で厚さ40nmに成膜し、陽極上に正孔輸送層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)をスパッタリング法で厚さ80nm、正孔輸送層上にシャドーマスクを用いて、図3に示すようにRGBそれぞれの発光層3bR、3bG、3bBを100nmの膜厚で形成した。赤色発光層3bRとしては、ホストとしてトリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq3)と発光性化合物[4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran](DCM)とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。緑色発光層3bGとしては、ホストとしてAlq3と、発光性化合物クマリン6とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。青色発光層3bBとしては、ホストとしてBAlqと発光性化合物Peryleneとを共蒸着(質量比90:10)して厚さ100nmで形成した。
さらに、発光層上に電子が効率的に注入できるような仕事関数の低い第1の陰極としてカルシウムを真空蒸着法により4nmの厚さで成膜し、第1の陰極上に第2の陰極としてアルミニウムを2nmの厚さで成膜した。ここで、第2の陰極として用いたアルミニウムはその上に形成される透明電極4bをスパッタリング法により成膜する際に、第1の陰極であるカルシウムが化学的変質をすることを防ぐ役割がある。以上のようにして、有機発光層を得た。次に、陰極上にスパッタリング法によって透明導電膜を80nmの厚さで成膜した。ここで透明導電膜としてはITOを用いた。さらに、透明導電膜上にCVD法によって窒化珪素を200nm成膜することで、絶縁膜5bとした。
上記で得られた有機エレクトロルミネッセンス素子11bの絶縁層とλ/4位相差フィルム(B)7b、偏光子8b、λ/4位相差フィルム(A)9bからなる円偏光板10bとを接着層6bを介して固定化し有機エレクトロルミネッセンス表示装置を作製した。
円偏光板11〜26及びこれらを用いたそれぞれ対応する有機エレクトロルミネッセンス表示装置11〜26に以下の評価を行った。
〈評価〉
(3)湿度変動によるカール変動
上記、参考例1に記載の偏光板カールの値を測定した後、温度23℃、80%RHの恒温恒湿室槽の中に試料を入れ2時間後、再度偏光板カールの値を参考例1で記載の方法で測定しその差をとって評価を行った。
◎:湿度変動により、偏光板カール(1/r)の変化が2未満。
○:湿度変動により、偏光板カール(1/r)の変化が2以上5未満。
△:湿度変動により、偏光板カール(1/r)の変化が5以上10未満。
×:湿度変動により、偏光板カール(1/r)の変化が10以上
(4)(有機EL素子の光漏れ)
有機エレクトロルミネッセンス素子を23℃、55%RHの恒温恒湿室にて2時間点灯させた後、消灯させ表面の反射率の測定を行った。次いで、23℃、80%RHの条件に変更し有機エレクトロルミネッセンス素子を2時間点灯させた後、消灯させ表面の反射率の測定を行った。前後の反射率の変化から以下の基準に従い評価を行った。
◎:最初の測定値を基準として、反射率の変化が50%未満である。
○:最初の測定値を基準として、反射率の変化が50%以上100%未満である。
△:最初の測定値を基準として、反射率の変化が100%以上150%未満である。
×:最初の測定値を基準として、反射率の変化が150%以上である。
表2中、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の光漏れを光漏れと記載した。また(A)(B)の配置は、λ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)の厚さ方向の可塑剤含有比率の配置の組み合わせを表し、番号は図1(1)の配置に対応する。
本発明試料はカール耐性に優れていることがわかる。更にλ/4位相差フィルムの配置が(1−2)、(1−3)のように、λ/4位相差フィルム(A)とλ/4位相差フィルム(B)との厚さ方向における可塑剤含有比率を円偏光板の厚さ方向において対称的に配置されたロールセットから作製された有機エレクトロルミネッセンス表示装置12、14、24、26が光漏れが少なく好ましい。またこれら4種の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、簡易に生産出来る観点からも好ましい。さらに可塑剤含有比率高い側の面が、共に偏光子から遠い側に配置される(1−2)の配置のロールセットから作製された有機エレクトロルミネッセンス表示装置14、26が吸脱湿に伴う寸法変化の速度を低下させるためより好ましいことがわかる。