JP2006082241A - 水蒸気バリアフィルム並びにこれを用いた画像表示素子用基板および有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

水蒸気バリアフィルム並びにこれを用いた画像表示素子用基板および有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 高いバリア性と透明性を有する水蒸気バリアフィルムを提供すること。
【解決手段】 基材フィルム上に少なくとも2層の無機ガスバリア層を有する水蒸気バリアフィルムにおいて、2層の無機ガスバリア層の間に少なくとも1層のアルカリ土類金属一酸化物からなる吸湿性層を設ける。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水蒸気バリアフィルムに関するものであり、特に各種デバイスの基板やデバイスの被覆フィルムに好適な積層型の水蒸気バリアフィルムに関し、さらに前記水蒸気バリアフィルムを用い耐久性およびフレキシブル性に優れた画像表示素子用基板および有機EL素子に関するものである。
従来から、プラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物薄膜を形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素など各種ガスの遮断を必要とする物品の包装や、食品、工業用品および医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、前記ガスバリア性フィルムは、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池またはエレクトロルミネッセンス(EL)の基板等にも使用されはじめている。特に、液晶表示素子、EL素子などへの応用が進んでいる透明基材は、軽量化や大型化という要求に加えて、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、および曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わっている。
近年、液晶表示素子やEL素子等の分野においては、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって、透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。また、透明プラスチック等のフィルム基材は上記要求に応えるだけでなく、ロールトゥロール(Roll to Roll)方式に適用することも可能であることから、ガラスよりも生産性がよくコストダウンの点でも有利である。しかし、透明プラスチック等のフィルム基材はガラスと比較してガスバリア性に劣るという問題がある。ガスバリア性が劣る基材を用いると、水蒸気や空気が浸透するため、例えば液晶表示素子に用いた場合には、液晶セル内の液晶を劣化させ、劣化部位が表示欠陥となって表示品位を劣化させてしまう。
このような問題を解決するために、上述のようなフィルム基板上に金属酸化物薄膜を形成してガスバリア性フィルムを透明基材として用いることが知られている。包装材や液晶表示素子に使用されるガスバリア性フィルムとしては、プラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着したもの(例えば、特許文献1参照)や、特酸化アルミニウムを蒸着したもの(例えば、特許文献2参照)が知られており、これらはいずれも1g/m2・day程度の水蒸気バリア性を有する。しかし、近年では液晶ディスプレイの大型化や高精細ディスプレイ等の開発により、フィルム基板の水蒸気バリア性は0.1g/m2・day程度まで要求されるようになってきている。
さらに、ごく近年においてはさらなるバリア性が要求される有機ELディスプレイや高精彩カラー液晶ディスプレイなどの開発が進んでおり、これらに使用可能な透明性を維持しつつもさらなる高バリア性、特に水蒸気バリア性で0.1g/m2・day未満の性能をもつ基材が要求されるようになってきた。
かかる要求に応えるために、より高いバリア性能が期待できる手段として、低圧条件下におけるグロー放電で生じるプラズマを用いて薄膜を形成するスパッタリング法やCVD法による成膜検討が行われている。また、有機層/無機層の交互積層構造を有するバリア膜を真空蒸着法により作製する技術が提案されている(例えば、特許文献3および非特許文献1参照)。
一方、単に外界からの水蒸気の進入を防ぐだけでなく、封止部材の内側面に吸湿剤を成膜して積極的に水を捕獲する技術も開示されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、係る技術においても封止剤や基板のバリア能が不十分であるため長時間経時において吸湿による膜変形が生じ、ディスプレイとしては致命的な画質の劣化を招くという問題があった。また吸湿性層を形成する金属イオンがデバイス製造工程または使用中に拡散して性能を劣化させてしまう問題があり、かかる意味においても透明で高い吸湿能と高バリア能を両立する技術の発現が望まれていた。
特公昭53−12,953号公報(第1頁〜第3頁) 特開昭58−217,344号公報(第1頁〜第4頁) 米国特許第6,413,645B1号公報(第4頁[2−54]〜第8頁[8−22]) 特開2000−260,562号公報(第3頁〜第5頁) Affinitoら著「Thin Solid Films」(1996)、P.290〜291(第63頁〜第67頁)
上述の諸問題を解決すべく、本発明は、高いバリア性と透明性を有する水蒸気バリアフィルムを提供することを目的とし、更に、長期間使用しても、吸湿による膜変形や透明性変化により画質が劣化することのない画像表示素子用基板および有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、下記方法によって本課題を解決できることを見いだした。
(1)基材フィルム上に少なくとも2層の無機ガスバリア層を有する水蒸気バリアフィルムにおいて、2層の無機ガスバリア層の間に少なくとも1層のアルカリ土類金属一酸化物からなる吸湿性層を有することを特徴とする水蒸気バリアフィルム。
(2)前記無機ガスバリア層の少なくとも1層と前記吸湿性層との間に少なくとも1層の有機層を有することを特徴とする(1)の水蒸気バリアフィルム。
(3)前記吸湿性層の基材フィルムとは反対側に、少なくとも前記無機ガスバリア層と前記有機層と前記無機ガスバリア層とがこの順に積層されたガスバリア性ラミネート層が形成されていることを特徴とする(1)または(2)の水蒸気バリアフィルム。
(4)前記吸湿性層が真空成膜法により形成されたことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの水蒸気バリアフィルム。
(5)前記吸湿性層が10nm〜200nmの厚みを有する均一層であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの水蒸気バリアフィルム。
(6)前記基材フィルムの平衡含水率が0.5質量%以下であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの水蒸気バリアフィルム。
(7)前記基材フィルムに隣接した帯電防止層を有し、前記帯電防止層の50℃・相対湿度30%における表面抵抗値が1×108Ω/□〜1×1013Ω/□であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかの水蒸気バリアフィルム。
(8)前記基材フィルムが、250℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする(1)〜(7)のいずれかの水蒸気バリアフィルム。
(9)(1)〜(8)のいずれかの水蒸気バリアフィルムを用いたことを特徴とする画像表示素子用基板。
(10)(1)〜(8)のいずれかの水蒸気バリアフィルムを用いたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明によれば、高いバリア性と透明性を有する水蒸気バリアフィルムを提供することができる。また、本発明によれば、長期間使用しても、吸湿による膜変形や透明性変化により画質が劣化することのない画像表示素子用基板および有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
以下において、本発明の水蒸気バリアフィルムについて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
《水蒸気バリアフィルム》
本発明の水蒸気バリアフィルムは、基材フィルム上に、少なくとも2層の無機ガスバリア層を有する水蒸気バリアフィルムにおいて、前記2層の無機ガスバリア層の間に少なくとも1層のアルカリ土類金属一酸化物からなる吸湿性層を有することを特徴とする。本発明の水蒸気バリアフィルムは積層型の水蒸気バリアフィルムであり、少なくとも2層の無機ガスバリア層の間にアルカリ土類金属一酸化物からなる吸湿性層を有することで、高いガスバリア能と高い吸湿能とを両立させることができる。
本発明の水蒸気バリアフィルムは、基材フィルム上に、少なくとも2層の無機ガスバリア層と、少なくとも1層の吸湿性層とを有し、更に、必要に応じて有機層や帯電防止層等を設けることができる。
(無機ガスバリア層)
本発明における「無機ガスバリア層」とは、無機材料で構成される、ガス分子の透過を抑制しうる緻密な構造の薄膜からなる層を意味し、例えば、金属化合物からなる薄膜(金属化合物薄膜)が挙げられる。前記無機ガスバリア層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。前記形成方法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などが適しており、具体的には特許第3400324号、特開2002−322561号、特開2002−361774号各公報記載の形成方法を採用することができる。
前記無機ガスバリア層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTa等から選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物などを用いることができる。
また、前記無機ガスバリア層の厚みに関しても特に限定されないが、厚みが厚すぎると曲げ応力によるクラックの恐れがあり、薄すぎると膜が島状に分布するため、いずれも水蒸気バリア性が悪くなる傾向がある。このため、各無機ガスバリア層の厚みは、それぞれ5nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、10nm〜1000nmであり、最も好ましくは、10nm〜200nmである。
また、2層以上の無機ガスバリア層は、各々が同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよく、特に制限はされない。
本発明において、水蒸気バリア性と高透明性とを両立させるには前記無機ガスバリア層として、珪素酸化物や珪素窒化物または珪素酸化窒化物を用いるのが好ましい。前記無機ガスバリア層として珪素酸化物であるSiOxを用いる場合、良好な水蒸気バリア性と高い光線透過率とを両立させるためには1.6<x<1.9であることが望ましい。前記無機ガスバリア層として珪素窒化物であるSiNyを用いる場合は、1.2<y<1.3であることが好ましい。y<1.2となると着色が大きくなることがあり、ディスプレイ用途に用いる場合には制約となる。
また、前記無機ガスバリア層として珪素酸化窒化物であるSiOxyを用いる場合、密着性向上を重視するのであれば、酸素リッチの膜とすることが好ましく、具体的には1<x<2および、0<y<1を満足することが好ましい。一方、水蒸気バリア性の向上を重視する場合には、窒素リッチの膜とすることが好ましく、具体的には0<x<0.8および0.8<y<1.3を満足することが好ましい。
(吸湿性層)
本発明において「吸湿性層」とは、アルカリ土類金属一酸化物から構成される層を意味する。前記アルカリ土類金属一酸化物に含まれるアルカリ土類金属としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raが挙げられる。本発明においては何れのアルカリ土類金属をも使用することができるが、コスト、高純度材料の入手性、実用性を考慮すると、Mg、Ca、Sr、Baが好適である。さらに吸湿能や安全性の観点からはCa、Srが好ましく、Srが最も好ましい。
前記「アルカリ土類一酸化物」とは、アルカリ土類金属1原子に酸素約1原子が結合した酸化物である。アルカリ土類金属を「M」とすると、吸湿性層の組成は「MOz」と表記することができ、zは0.8<z<1.2を満足することが好ましく、0.9<z<1.1を満足することが最も好ましい。
アルカリ土類一酸化物は、十分に高い吸湿性と透明性とを両立し、かつ吸湿前後の体積変化が比較的小さいという特徴を有する。またアルカリ金属に比べて層内拡散が起こりにくく、イオン性金属の拡散を嫌うようなデバイス材料への適用には好適である。更に、シリカゲルやゼオライトのような物理吸着ではなく結晶格子内に水分子を取り込むものであるため、吸湿した水分子が再脱着することもなく本発明の目的には好適である。
前記吸湿性層の成膜法としては、アルカリ土類金属一酸化物の分散物を塗設してから400℃以上の高温で焼結する方法を用いてもよいが、この場合、基材フィルムが耐熱性上の制約を受けたり、高吸湿性材料を不活性雰囲気下でハンドリングすることが困難になったりすることがある。従って、安定した性能を得る観点からは、前記吸湿性層は後述する真空成膜法により形成されることが好ましい。前記真空成膜法としては、例えば、アルカリ土類金属一酸化物のソースを真空蒸着する方法、アルカリ土類金属または同部分酸化物を酸化雰囲気で真空蒸着する方法、アルカリ土類金属過酸化物を真空蒸着する方法等が挙げられる。また、上記真空成膜法においては、イオンアシストを組み合わせたイオンプレーティング法を用いてもよい。また、前記真空成膜法としては、特開2000−26562号公報に記載されているような、ソースの取扱いが容易で品質のよい成膜が可能なアルカリ土類金属過酸化物をターゲットとしたスパッタリング法が最も望ましい。
共蒸着法や共スパッタ法により、アルカリ土類金属一酸化物にSiOx、SiNy、SiOxy、SiCなどの無機化合物を共存させた吸湿性層を形成したり、塗設法により無水酢酸・アセト酢酸をアルカリ土類金属一酸化物に共存させた吸湿性層を形成したりすることも技術的には可能である。しかし、これらの複合層に比して、本発明にしたがってアルカリ土類金属一酸化物を単独で成膜した吸湿性層は、均一性、透明性、酸素バリア性に優れている。不活性な共存物との間で物理的または化学的な変化を起こすとは考えにくいことから、本発明の吸湿性層がこのような特徴を有することは予想外であった。
前記吸湿性層の厚みは、吸湿性、平滑性、透過性、屈曲耐性の観点から、10nm〜200nmが好ましく、10nm〜100nmが更に好ましく、10nm〜50nmが特に好ましい。前記吸湿性層の厚みが、10nm以下となるとアルカリ土類金属一酸化物が連続層を形成することが困難になる場合があり、吸湿能力が不足して十分な効果が得られない場合がある。また、前記吸湿性層の厚みが200nmを超えると欠陥が発生しやすくなる場合があり、剥離破壊、白色化や光学干渉模様が確認されるようになってディスプレイ材料には致命的な欠陥となる場合がある。
また、前記吸湿性層は均一層であることが好ましい。特に、厚みが10nm〜200nmの均一層であることが好ましい。ここで「均一層」とは、層内の組成が実質的に均一である層を意味する。例えば、SrOからなる均一層はSrとOのみを元素として含む層であり、他の元素(Siなど)を含まない。均一層であれば、力学的、光学的に不連続な境界が生じにくく、ディスプレイ材料として好適であるという利点がある。
(有機層)
本発明の水蒸気バリアフィルムは、前記無機ガスバリア層および前記吸湿性層の脆性やバリア性を向上させる為に、各層に隣接した有機層を設けることができる。有機層は、紫外線もしくは電子線硬化性モノマー、オリゴマーまたは樹脂を、塗布または蒸着で成膜したのち、紫外線または電子線で硬化させた層であることが好ましい。
前記有機層について、モノマーを架橋させて得られた高分子を主成分として形成した有機層を用いる場合を例に説明する。前記モノマーとしては、紫外線もしくは電子線の照射により架橋できる基を有するモノマーであれば特に限定は無いが、アクリロイル基またはメタクリロイル基、オキセタン基を有するモノマーを用いることが好ましい。尚、本明細書においては、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」等の記載は、それぞれ「アクリレート又はメタクリレート」、「アクリロイル又はメタクリロイル」、「アクリル酸又はメタクリル酸」を表す。
上記有機層は、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどのうち、2官能以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーを架橋させて得られる高分子を主成分とすることが好ましい。これらの2官能以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーは2種類以上を混合して用いてもよいし、また1官能の(メタ)アクリレートを混合して用いてもよい。
また、前記オキセタン基を有するモノマーとしては、例えば、特開2002−356607号公報の一般式(3)〜(6)に記載されている構造を有するモノマーが好適に挙げられる。この場合、これらを任意に混合してもよい。
また、前記有機層は、ディスプレイ用途に要求される耐熱性、耐溶剤性の観点から、特に架橋度が高く、ガラス転移温度が200℃以上である、イソシアヌル酸アクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートを主成分とすることがさらに好ましい。前記有機層の厚みについても特に限定はされないが、前記有機層の厚みが薄すぎると、厚みの均一性を得ることが困難となるため、無機ガスバリア層の構造欠陥を効率よく有機層で埋めることができずに、バリア性の向上は見られない。また、逆に有機層の厚みが厚すぎると、曲げ等の外力により有機層がクラックを発生し易くなるためバリア性が低下してしまう不具合が発生してしまう。かかる観点から、上記有機層の厚みは、10nm〜5000nmが好ましく、10nm〜2000nmさらに好ましく、10nm〜500nmが最も好ましい。
本発明の有機層の形成方法としては、まず、架橋性のモノマー等を含む塗膜を形成し、その後、該塗膜に電子線もしくは紫外線を照射して硬化させる方法が挙げられる。前記塗膜を形成する方法としては、例えば、塗布による方法、真空成膜法等を挙げることができる。前記真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましく、有機物質モノマーの成膜速度を制御しやすい抵抗加熱蒸着法がより好ましい。前記架橋性モノマー等の架橋方法に関しては特に制限はないが、電子線や紫外線等による架橋が、真空槽内に容易に取り付けられる点や架橋反応による高分子量化が迅速である点で望ましい。
塗布方式で前記塗膜を塗設する場合には、従来用いられる種々の塗布方法、例えば、スプレーコート、スピンコート、バーコート等の方法を用いることができる。
前記塗膜の形成方法としては塗布法、蒸着法のいずれを用いてもよいが、直下の無機ガスバリア層成膜後に機械的な応力がかかりにくく、かつ薄膜形成に有利な真空成膜法を用いることが好ましい。
(その他の機能層ならびに各層の構成)
本発明の水蒸気バリアフィルムは、基材フィルムと無機ガスバリア層との間に、公知のプライマー層または無機薄膜層を設置することができる。前記プライマー層としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂層、親水性樹脂共存下でゾルーゲル反応により形成する有機無機ハイブリッド層、無機蒸着層またはゾル−ゲル法による緻密な無機層を挙げることができる。前記無機蒸着層としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ等の蒸着層が好ましい。前記無機蒸着層は真空蒸着法、スパッタリング法等により形成することができる。
本発明において、前記吸湿性層は基材フィルム上の2つの無機ガスバリア層の間に設置してあれば、2つの無機ガスバリア層と隣接する位置、無機ガスバリア層と有機層とに隣接する位置、2つの有機層に隣接する位置のいずれに配置してもよいが、吸湿性層の脆弱性や吸湿後の体積膨張による変形の影響を少なくするという観点からは、吸湿性層は少なくとも1つの有機層に隣接する形で2つ無機ガスバリア層の間に配置されることが好ましく、2つの有機層に隣接する形で2つの無機ガスバリア層の間に配置されることが最も好ましい。
前記吸湿性層の基材フィルムとは反対側、即ち、基材フィルムが設けられている側を内側とみなした際に、前記吸湿性層の外側に設置した無機ガスバリア層のさらに外側に、無機ガスバリア層・吸湿性層・有機層を任意の順序で1層以上設置してもよい。また吸湿性層の外側に設置した無機ガスバリア層の外側または最外層にそれぞれ種々の機能層を設置してもよい。該機能層の例としては、反射防止層、偏光層、カラーフィルター、紫外線吸収層および光取出効率向上層等の光学機能層;ハードコート層や応力緩和層等の力学的機能層;帯電防止層や導電層などの電気的機能層;防曇層;防汚層;被印刷層などが挙げられる。これらの機能層は無機ガスバリア層、吸湿性層および有機層を設置した基材フィルムの反対側に設置してもよい。
また、本発明の水蒸気バリアフィルムは、基材フィルムの両面に無機ガスバリア層、吸湿性層および有機層などを設けることができる。
更に、前記吸湿性層の基材フィルムとは反対側に、少なくとも無機ガスバリア層と有機層と無機ガスバリア層とがこの順に積層されたガスバリア性ラミネート層を設けることもできる。ガスバリア性ラミネート層は、フィルム反対面からの水分子の侵入を防ぐことでフィルム基板の寸法変化を抑制することでガスバリア層への応力集中や破壊を防止し、結果として耐久性の高いディスプレイを供給しうるという特徴を有する。
(基材フィルム)
本発明の水蒸気バリアフィルムに用いられる基材フィルムは、上記各層を保持できるフィルムであれば特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記基材フィルムとしては、具体的に、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性カーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂のうち、好ましい例としては、ポリエステル樹脂で特にポリエチルナフタレート樹脂(PEN)、ポリアリレート樹脂(PAr)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、フルオレン環変性カーボネート樹脂(BCF−PC:特開2000−227603号公報の実施例−4の化合物)、脂環変性ポリカーボネート樹脂(IP−PC:特開2000−227603号公報の実施例―5の化合物)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の実施例−1の化合物)等の化合物からなるフィルムが挙げられる。
前記基材フィルムを構成する化合物としては、下記一般式(1)で表されるスピロ構造を有する樹脂または下記一般式(2)で表されるカルド構造を有する樹脂が好ましい。
Figure 2006082241
〔一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、2つの環はスピロ結合によって結合している。〕
Figure 2006082241
〔一般式(2)中、環βおよび環γは単環式または多環式の環を表し、2つの環γはそれぞれ同一若しくは異なっていてもよい。また、環βおよび環γは、環β上の1つの4級炭素原子によって連結される。〕
前記一般式(1)および(2)で表される樹脂は、高耐熱性、高弾性率かつ高い引張り破壊応力を有する化合物であるため、製造プロセスにおいて種々の加熱操作が要求され、かつ屈曲させても破壊しにくい性能が要求される有機EL素子等の基板材料として好適に用いることができる。
前記一般式(1)における環αとしては、例えば、インダン、クロマン、ベンゾフランが挙げられる。前記一般式(1)で表されるスピロ構造を有する樹脂の好ましい例としては、下記一般式(3)で表されるスピロビインダン構造を繰り返し単位中に含むポリマー、下記一般式(4)で表されるスピロビクロマン構造を繰り返し単位中に含むポリマー、下記一般式(5)で表されるスピロビベンゾフラン構造を繰り返し単位中に含むポリマーを挙げることができる。
Figure 2006082241
一般式(3)中、R31、R32、R33はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R31、R32、R33のそれぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R31およびR32はそれぞれ独立して、水素原子、メチル基またはフェニル基であることが更に好ましい。また、R33としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基であることが更に好ましい。
Figure 2006082241
一般式(4)中、R41およびR42はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R41およびR42のそれぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R41としては、水素原子、メチル基またはフェニル基が更に好ましく、R42としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基が更に好ましい。
Figure 2006082241
一般式(5)中、R51およびR52はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R51、R52のそれぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R51としては、水素原子、メチル基またはフェニル基が好ましい。また、R52としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基が好ましい。
また、前記一般式(2)における環βとしては、例えばフルオレン、1,4−ビベンゾシクロヘキサンが挙げられ、環γとしては、例えばフェニレン、ナフタレンが挙げられる。前記一般式(2)で表されるカルド構造を有する樹脂の好ましい例として、下記一般式(6)で表されるフルオレン構造を繰り返し単位中に含むポリマーを挙げることができる。
Figure 2006082241
一般式(6)中、R61およびR62はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R51、R52のそれぞれが連結して環を形成してもよい。jおよびkはそれぞれ独立に1〜4の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R51およびR52としては、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基であることが更に好ましい。
前記一般式(3)〜(6)で表される構造を繰り返し単位中に含む樹脂は、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドまたはポリウレタンなど種々の結合方式で連結されたポリマーであってもよいが、一般式(3)〜(6)で表される構造を有するビスフェノール化合物から誘導されるポリカーボネート、ポリエステルまたはポリウレタンであることが好ましい。
以下に一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有する樹脂の好ましい具体例(樹脂化合物(I−1)〜(FL−11))を挙げる。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
Figure 2006082241
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本発明における基材フィルムに用いることのできる一般式(1)および一般式(2)で表される構造を有する樹脂は、単独で用いてもよく、複数種混合して用いてもよい。また、ホモポリマーであってもよく、複数種構造を組み合わせたコポリマーであってもよい。前記樹脂をコポリマーとする場合、一般式(1)または(2)で表される構造を繰り返し単位中に含まない公知の繰り返し単位を本発明の効果を損ねない範囲で共重合することができる。なお、ホモポリマーとして用いた場合よりも溶解性および透明性の観点で優れている場合が多いことから、上記樹脂はコポリマーであることが好ましい。
本発明に用いることのできる一般式(1)および(2)で表される構造を有する樹脂の好ましい分子量は、重量平均分子量で1万〜50万が好ましく、2万〜30万が更に好ましく、3万〜20万が特に好ましい。前記樹脂の分子量が低すぎる場合、フィルム成形が困難となりやすく、また力学特性が低下してしまう場合がある。また、分子量が高すぎる場合、合成上分子量のコントロールが困難となり、また溶液の粘度が高すぎて取扱いが難しくなる場合がある。なお、前記分子量は、これに対応する粘度を目安にすることもできる。
また、本発明における基材フィルムを構成する樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が250℃以上の熱可塑性樹脂であることが好ましく、ガラス転移温度(Tg)が300℃以上の熱可塑性樹脂であることがさらに好ましい。
本発明における基材フィルムは、その性質上、水を取り込まないことが望ましい。すなわち水素結合性官能基を持たない樹脂から形成されていることが望ましい。前記基材フィルムの平衡含水率は0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0.05質量%以下であることが特に好ましい。
前記平衡含水率の低い基材フィルムを用いると、基材フィルムの帯電が起こりやすくなってしまう傾向がある。基材フィルムの帯電はパーティクルを吸着してバリア層の性能を損ねたり、接着によるハンドリング不良などの原因となり好ましくない。このため、係る問題を解決するために、基材フィルムの表面には、これに隣接して帯電防止層が設置されることが好ましい。
ここで、帯電防止層とは、50℃、相対湿度30%における表面抵抗値が1Ω/□〜1013 Ω/□である層をいう。前記帯電防止層の50℃、相対湿度30%における表面抵抗値は、1×108Ω/□〜1×1013Ω/□であることが好ましく、1×108/□〜1×1011Ω/□であることが好ましく、1×108Ω/□〜1×109Ω/□であることが特に好ましい。
《画像表示素子》
本発明の水蒸気バリアフィルムの用途は特に限定されないが、光学特性と機械特性と双方に優れるため、画像表示素子の透明電極用基板として好適に用いることができる。ここでいう「画像表示素子」とは、円偏光板・液晶表示素子、タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などを意味する。
<円偏光板>
前記円偏光板は、本発明の水蒸気バリアフィルム上に、λ/4板と偏光板とを積層することで作製することができる。この場合、λ/4の遅相軸と偏光板の吸収軸とが45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−865554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
<液晶表示素子>
前記液晶表示装置は、反射型液晶表示装置と透過型液晶表示装置とに大別することができる。
前記反射型液晶表示装置は、下方から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明の水蒸気バリアフィルムは、前記透明電極および上基板として使用することができる。前記反射型液晶表示装置にカラー表示機能をもたせる場合には、さらにカラーフィルター層を前記反射電極と前記下配向膜との間、または、前記上配向膜と前記透明電極との間に設けることが好ましい。
また、前記透過型液晶表示装置は、下方から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる構成を有する。このうち本発明の水蒸気バリアフィルムは、前記上透明電極および上基板として使用することができる。また、前記透過型液晶表示装置にカラー表示機能をもたせる場合には、さらにカラーフィルター層を前記下透明電極と前記下配向膜との間、または、前記上配向膜と前記透明電極との間に設けることが好ましい。
前記液晶層の構造は特に限定されないが、例えば、TN(Twisted Nematic)型、STN(Supper Twisted Nematic)型またはHAN(Hybrid Aligned Nematic)型、VA(Vertically Alignment)型、ECB(Electrically Controlled Birefringence)型、OCB(Optically Compensatory Bend)型、または、CPA(Continuous Pinwheel Alignment)型であることが好ましい。
<タッチパネル>
前記タッチパネルとしては、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載されたものの基板に本発明の水蒸気バリアフィルムを適用したものを用いることができる。
<有機エレクトロルミネッセンス素子>
本発明の水蒸気バリアフィルムを用いることのできる有機EL素子としては、例えば、特開平11−335661号、同11−335368号、特開2001−192651号、同2001−192652号、同2001−192653号、同2001−335776号、同2001−247859号、同2001−181616号、同2001−181617号、特開2002−181816号、同181617号、特開2002−056976号各公報に記載の内容と、特開2001−148291号、同2001−221916号、同2002−231443号各公報に記載の内容とを適宜組み合わせたものを好適に用いることができる。
すなわち、本発明の水蒸気バリアフィルムを有機EL素子に採用する場合には、有機EL素子の基材フィルムおよび/または保護フィルムとして用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
基材フィルム上に無機ガスバリア層、吸湿性層、有機層および帯電防止層を設けたバリアフィルム(試料No.1〜17)を下記の手順にしたがって作製した。各バリアフィルムの構造の詳細は表1および表2に記載されるとおりである。
1.基材フィルムの作製
上述の樹脂化合物(I−1)を、濃度が15質量%になるようにジクロロメタン溶液に
溶解し、該溶液をダイコーティング法によりステンレスバンド上に流延した。次いで、バンド上から第一フィルムを剥ぎ取り、残留溶媒濃度が0.08質量%になるまで乾燥させた。乾燥後、第一フィルムの両端をトリミングし、ナーリング加工した後巻き取り、厚み100μmの基材フィルムhを作製した。
また、樹脂化合物(I−1)の代わりに下記表1に記載される樹脂化合物を用いて同じ
工程を実施することにより、基材フィルムi〜nを作製した。
なお、基材フィルムa〜gは、厚み100μmのPET(東レ(株)製、ルミラーT60)である。
2.無機ガスバリア層の形成
図1に示すロールトゥーロール方式のスパッタリング装置(1)を用いて、表1における基材フィルム上に無機ガスバリア層を形成した。図1に示すように、スパッタリング装置(1)は、真空槽(2)を有しており、その中央部にはプラスチックフィルム(6)を表面に接触させて冷却するためのドラム(3)が配置されている。また、上記真空槽(2)にはプラスチックフィルム(6)を巻くための送り出しロール(4)および巻き取りロール(5)が配置されている。送り出しロール(4)に巻かれたプラスチックフィルム(6)はガイドロール(7)を介してドラム(3)に巻かれ、さらにプラスチックフィルム(6)はガイドロール(8)を介して巻き取りロール(5)に巻かれる。真空排気系としては排気口(9)から真空ポンプ(10)によって真空槽(2)内の排気が常に行われている。成膜系としてはパルス電力を印加できる直流方式の放電電源(11)に接続されたカソード(12)上にターゲット(図示せず)が装着されている。この放電電源(11)は制御器(13)に接続されており、さらに制御器(13)は真空槽(2)へ配管(15)を介して反応ガス導入量を調整しながら供給するガス流量調整ユニット(14)に接続されている。また、真空槽(2)には一定流量の放電ガスが供給されるよう構成されている(図示せず)。
以下、無機ガスバリア層の形成時における具体的な条件を示す。
ターゲットとしてSiをセットし、放電電源(11)としてパルス印加方式の直流電源を用意した。また、プラスチックフィルム(6)として厚み100μmの基材フィルム(PETフィルムまたは上記方法で作製した基材フィルム)を用意し、これを送り出しロール(4)に掛け、巻き取りロール(5)まで通した。スパッタリング装置(1)への基材の準備が終了した後、真空槽(2)の扉を閉めて真空ポンプ(10)を起動し、真空引きとドラムとの冷却を開始した。到達圧力が4×10-4Pa、ドラム温度が5℃になったところで、プラスチックフィルム(6)の走行を開始した。放電ガスとしてアルゴンを導入して放電電源(11)をONし、放電電力5kW、成膜圧力0.3PaでSiターゲット上にプラズマを発生させ、3分間プレスパッタを行った。この後、反応ガスとして酸素を導入し、放電が安定してからアルゴンおよび酸素ガス量を徐々に減らして成膜圧力を0.1Paまで下げた。0.1Paでの放電の安定を確認してから、一定時間酸化ケイ素の成膜を行った。成膜終了後、真空槽(2)を大気圧に戻して酸化ケイ素(無機ガスバリア層)を成膜したフィルムを取り出した。無機ガスバリア層の膜厚は約50nmであった。尚、下記表2における各構造内容に従って、吸湿性層または有機層上に無機ガスバリア層を形成する場合においても同様の方法によって無機ガスバリア層を形成した。
3.有機層の形成
50.75mLのテトラエチレングリコール・ジアクリレートと14.5mLのトリプロピレングリコールモノアクリレートと7.25mLのカプロラクトンアクリレートと10.15mLのアクリル酸と10.15mLの「EZACURE」(Sartomer社製、ベンゾフェノン混合物光重合開始剤)とのアクリルモノマー混合物を、固体物であるN、N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン粒子36.25gmと混合し、20kHz超音波ティッシュミンサーで約1時間撹拌した。約45℃に加熱し、沈降を防ぐために撹拌した混合物を内径2.0mm、長さ61mmの毛管を通して1.3mmのスプレーノズルにポンプで送り込んだ。そこで25kHzの超音波噴霧器によって小滴噴霧し、約340℃に維持された前記無機ガスバリア層または吸湿性層表面に落とした。次いで、ドラム表面温度約13℃の低温ドラムに接触させた基板フィルムの無機ガスバリア層または吸湿性層上に蒸気をクライオ凝結させた後、高圧水銀灯ランプによりUV硬化させ(積算照射量約2000mJ/cm2)、有機層を形成した。膜厚は約500nmであった。
4.吸湿性層の形成
上記無機ガスバリア層もしくは有機層上に、下記表1に従ってそれぞれ過酸化ストロンチウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウムのターゲット(豊島製作所(株)製)を用い、Arガスを導入、放電電力100W、成膜圧力0.8Paで3分間のプレスパッタの後にそのまま成膜を行った。吸湿性層の膜厚は約20nmであり、元素分析の結果SrとOとの比率、CaとOとの比率およびBaとOとの比率はほぼ1:1であった。尚、表2における構造Gにおいては基材フィルム上に吸湿性層を直接設けた。
また、比較用として上記SrO2ターゲットとSiO2ターゲットとを組み合わせて、RF電源を用いて放電電力100W、0.8Paで成膜した。SrとSiとの組成比はほぼ1:1、膜厚は約40nmであった。
5.ラミネート層の形成
上記吸湿性層の基材フィルムとは反対側に、上記2、3に記載した方法にて、無機ガスバリア層、有機層、無機バリア層の3層からなるガスバリア性ラミネート層を形成した(表2における構成E)
6.帯電防止層の形成
上記基材フィルムを真空チャンバー内に導入し、上記無機ガスバリア層を設ける側とは反対側の面に、IZOターゲット(出光興産(株)製)を用いて、DCマグネトロンスパッタリングにて厚み20nm相当のIZO薄膜からなる帯電防止層を形成した(表2における構成F)。
7.バリアフィルムの物性評価
下記装置を用いてバリアフィルムの諸物性を評価した。
・層構成(膜厚):(株)日立製作所製、走査型電子顕微鏡「S−900型」
・水蒸気透過率(g/m2・day):MOCON社製、「PERMATRAN−W3/31」
(条件:40℃・相対湿度90%)
・バリアフィルムの光線透過率(%):島津製作所(株)製、分光光度計「UV3100PC」
・基材フィルムバック面(バック面に耐電防止層が設けられているときは帯電防止層)の表面抵抗値(Ω/□):JIS K 6911、および、JIS K 7194に準ずる。
8.有機EL素子の作製
上記各バリアフィルムを真空チャンバー内に導入し、IZOターゲット(出光興産(株)製)を用いて、DCマグネトロンスパッタリングにより、厚み0.2μmのIZO薄膜からなる透明電極を形成した。透明電極(IZO)より、アルミニウムのリ−ド線を結線し、積層構造体を形成した。
前記透明電極の表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水性分散液(BAYER社製、Baytron P:固形分1.3質量%)をスピンコートした後、150℃で2時間真空乾燥し、厚み100nmのホール輸送性有機薄膜層を形成した。これを基板Xとした。
一方、厚み188μmのポリエーテルスルホン(住友ベークライト(株)製、スミライトFS−1300)からなる仮支持体の片面上に、下記組成を有する発光性有機薄膜層用塗布液を、スピンコーターを用いて塗布し、室温で乾燥することにより、厚み13nmの発光性有機薄膜層を仮支持体上に形成した。これを転写材料Yとした。
〔組成〕
・ポリビニルカルバゾール:40質量部
(Mw=63000、アルドリッチ社製)
・トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体(オルトメタル化錯体):1質量部
(ケミプロ化成(株)製)
・ジクロロエタン:3200質量部
前記基板Xのホール輸送性有機薄膜層の上面に転写材料Yの発光性有機薄膜層側を重ね、一対の熱ローラーを用い160℃、0.3MPa、0.05m/minで加熱・加圧し、仮支持体を引き剥がすことにより、基板Xの上面に発光性有機薄膜層を形成した。これを基板XYとする。
また、25mm角に裁断した厚み50μmのポリイミドフイルム(UPILEX−50S、宇部興産(株)製)片面上に、パターニングした蒸着用のマスク(発光面積が5mm×5mmとなるマスク)を設置し、約0.1mPaの減圧雰囲気中でAlを蒸着し、膜厚0.3μmの電極を形成した。Al23ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、Al23をAl層と同パターンで蒸着し、膜厚3nmとした。Al電極よりアルミニウムのリード線を結線し、積層構造体を形成した。得られた積層構造体の上に下記組成を有する電子輸送性有機薄膜層用塗布液をスピンコーター塗布機で塗布し、80℃で2時間真空乾燥することにより、厚み15nmの電子輸送性有機薄膜層をLiF上に形成した。これを基板Zとする。
〔組成〕
・ポリビニルブチラール2000L:10質量部
(Mw=2000、電気化学工業(株)製)
・1−ブタノール:3500質量部
・下記構造を有する電子輸送性化合物:20質量部
(特開2001−335776に記載の方法により合成した。)
Figure 2006082241
前記基板XYと前記基板Zとを用い、電極同士が発光性有機薄膜層を挟んで対面するように重ね合せ、一対の熱ローラーを用い160℃、0.3MPa、0.05m/minで加熱・加圧し、貼り合せ、2枚の基板フィルムを、上記発光性有機薄膜層(有機EL層)を取り囲むように市販の有機EL用UV硬化性封止材で封止した。さらに得られた積層構造体のリード線部以外の部分をスパッタリング法により窒化珪素で覆って有機EL素子を得た。
得られた有機EL素子にソースメジャーユニット2400型(東洋テクニカ(株)製)を用いて、直流電流を印加し発光させたところ、何れの素子試料も良好に発光した。
次にガスバリアフィルムNo.1〜18を用いた有機EL素子を素子作製後、60℃・相対湿度90%下に500時間放置して同様にして発光させ、全体における発光部分の面積(非発光部分はダークスポット)を、日本ポラデジタル(株)製マイクロアナライザーを用いて求めた。結果を下記表1に示す。
Figure 2006082241
Figure 2006082241
なお、フィルム試料自身の水蒸気透過率はいずれも0.005g/m2・day以下であった。
本実施例からもわかるように、本発明により形成された試料は良好な透明性とバリア性を有することが認められた。
本発明の水蒸気バリアフィルムは、優れた透明性とバリア性を有するため、各種デバイスの基板やデバイスの被覆フィルムとして好適に用いられる。また、本発明の画像表示素子用基板および有機EL素子は、高い耐久性およびフレキシブル性を有する。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
実施例において用いたスパッタリング装置を示す説明図である。
符号の説明
1 スパッタリング装置
2 真空槽
3 ドラム
4 送り出しロール
5 巻き取りロール
6 プラスチックフィルム
7 ガイドロール
8 ガイドロール
9 排気口
10 真空ポンプ
11 放電電源
12 カソード
13 制御器
14 ガス流量調整ユニット
15 配管

Claims (10)

  1. 基材フィルム上に少なくとも2層の無機ガスバリア層を有する水蒸気バリアフィルムにおいて、2層の無機ガスバリア層の間に少なくとも1層のアルカリ土類金属一酸化物からなる吸湿性層を有することを特徴とする水蒸気バリアフィルム。
  2. 前記無機ガスバリア層の少なくとも1層と前記吸湿性層との間に少なくとも1層の有機層を有することを特徴とする請求項1に記載の水蒸気バリアフィルム。
  3. 前記吸湿性層の基材フィルムとは反対側に、少なくとも前記無機ガスバリア層と前記有機層と前記無機ガスバリア層とがこの順に積層されたガスバリア性ラミネート層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の水蒸気バリアフィルム。
  4. 前記吸湿性層が真空成膜法により形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルム。
  5. 前記吸湿性層が10nm〜200nmの厚みを有する均一層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルム。
  6. 前記基材フィルムの平衡含水率が0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルム。
  7. 前記基材フィルムに隣接した帯電防止層を有し、前記帯電防止層の50℃・相対湿度30%における表面抵抗値が1×108Ω/□〜1×1013Ω/□であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルム。
  8. 前記基材フィルムが、250℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルム。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルムを用いたことを特徴とする画像表示素子用基板。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルムを用いたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
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