JP4148794B2 - 蒸着膜用樹脂及びこれを用いたガスバリア性プラスチックフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学部材、エレクトロニクス部材、一般包装部材、薬品包装部材などの幅広い用途に応用が可能な透明でガスバリア性の高いプラスチックフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、エレクトロルミネッセンス(EL)基板等で使用されている。特に液晶表示素子やEL素子などへの応用が進んでいる透明基材には、近年、軽量化、大型化という要求に加え、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わり、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。また、プラスチックフィルムは上記要求に応えるだけでなく、ロールトゥロール方式が可能であることからガラスよりも生産性が良くコストダウンの点でも有利である。
【0003】
しかしながら、透明プラスチック等のフィルム基材はガラスに対しガスバリア性が劣るという問題がある。ガスバリア性が劣る基材を用いると、水蒸気や空気が浸透し、例えば液晶セル内の液晶を劣化させ、表示欠陥となって表示品位を劣化させてしまう。この様な問題を解決するためにフィルム基板上に金属酸化物薄膜を形成してガスバリア性フィルム基材とすることが知られている。包装材や液晶表示素子に使用されるガスバリア性フィルムとしてはプラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着したもの(特許文献1)や酸化アルミニウムを蒸着したもの(特許文献2)が知られており、いずれも1g/m2/day程度の水蒸気バリア性を有する。近年では、液晶ディスプレイの大型化、高精細ディスプレイ等の開発によりフィルム基板へのガスバリア性能について水蒸気バリアで0.1g/m2/day程度まで要求が上がってきている。これに応えるためにより高いバリア性能が期待できる手段としてスパッタリング法やCVD法による成膜検討が行われている。
【0004】
ところが、ごく近年においてさらなるバリア性を要求される有機ELディスプレイや高精彩カラー液晶ディスプレイなどの開発が進み、これに使用可能な透明性を維持しつつもさらなる高バリア性、特に水蒸気バリアで0.1g/m2/day未満の性能をもつ基材が要求されるようになってきた。これらの要求に対し、有機層/無機層の交互多層積層構造を有するバリア膜を真空蒸着法により作製する技術が特許文献3に提案されている。ドライプロセスである有機層の真空蒸着は、▲1▼溶媒を使用しないため高純度の有機物薄膜が得られる、▲2▼薄膜が容易に得られ膜厚制御性が良い、▲3▼異物などのコンタミが入りにくいなどの特徴を有している。また、有機層を真空下で形成できれば有機層/無機層を交互に積層する際に必要な常圧−真空を繰り返す工程を省くことができ、生産性も向上する。しかしながら、フレキシブル表示デバイスとしては曲面表示の要望もあり、有機層/無機層の交互多層積層構造を有するバリア膜の曲げに対するバリア性能は、まだ十分ではない。
また、蒸着膜用樹脂としては、トリプロピレングリコールジアクリレートや1,6−ヘキサンジオールジアクリレートなどを用いた例が非特許文献1や非特許文献2に示されているが、これらアクリレートは真空下での揮発性が高いために基材温度が高くなると蒸着効率が著しく低下するおそれがあった。
【0005】
【特許文献1】
特公昭53−12953公報
【特許文献2】
特開昭58−217344公報
【特許文献3】
WO 00/26973
【非特許文献1】
Journal of Coated Fabrics, 29, 58-74(1999)
【非特許文献2】
Society of Vacuum Coaters 36th Annual Technical Conference Proceedings, 348-352(1993)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、有機層/無機層の交互多層積層構造を有するバリア膜に適した蒸着膜用樹脂を提供するとともに、従来よりも高いガスバリア性能を持ちかつ曲げてもそのバリア性能が劣化しない透明フィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1)高分子材料からなる基材の少なくとも片面に、有機層と無機層とが交互に積層され少なくとも二層以上の無機層が形成されたガスバリア性プラスチックフィルムの製造方法であって、前記有機層が蒸着膜用樹脂を真空蒸着させて活性エネルギー線によって架橋させて形成し、前記無機層を真空成膜法で形成し、前記蒸着膜用樹脂が熱重量分析による5%重量減少温度が155℃〜300℃であり、かつ、数平均分子量が200〜1000であるエステル型ジアクリレートまたはエーテル型ジアクリレートであり、前記エステル型ジアクリレートがカプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、カプロラクトン変性ジシクロペンタジエニルジアクリレート、又はカプロラクトン変性ノルボルナンジメチロールジアクリレートであり、前記エーテル型ジアクリレートがネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、エピクロロヒドリン変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、エチレングリコール変性ジシクロペンタジエニルジアクリレート、プロピレングリコール変性ジシクロペンタジエニルジアクリレート、エチレングリコール変性ノルボルナンジメチロールジアクリレート、又はプロピレングリコール変性ノルボルナンジメチロールジアクリレートであるガスバリア性プラスチックフィルムの製造方法。
(2)前記反応性モノマーが下記式(1)に示されるネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレートであることを特徴とする(1)記載のガスバリア性プラスチックフィルムの製造方法。
(3)前記有機層の厚みが10nm〜5000nmである(1)又は(2)記載のガスバリア性プラスチックフィルムの製造方法。
(4)前記無機層が珪素酸化物または珪素窒化物または珪素窒化酸化物を主成分とする(1)〜(3)いずれか一項記載のガスバリア性プラスチックフィルムの製造方法。
(5)前記高分子材料からなる基材がノルボルネン系樹脂またはポリエーテルスルホンを主成分とする(1)〜(4)いずれか一項記載のガスバリア性プラスチックフィルムの製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における熱重量分析による5%重量減少温度とは、セイコー電子工業(株)製示差熱熱重量同時測定装置TG−DTA320を用いて、窒素ガス流量300mL/minの下、1分間に10℃の割合で温度を室温から上昇させた時に試料の重量が全体の5%減少した時点の温度を示している。本発明においては、反応性モノマーの熱重量分析による5%重量減少温度が155℃〜300℃である必要がある。好ましくは160℃〜280℃であり、さらに好ましくは165℃〜270℃である。反応性モノマーの熱重量分析による5%重量減少温度が155℃より低い場合、基材温度が上昇すると蒸着効率が著しく低下するおそれがある。一方、反応性モノマーの熱重量分析による5%重量減少温度が300℃を超えると揮発性が低いために蒸着困難となり、場合によっては蒸発する前に硬化してしまうおそれがある。
【0009】
本発明において、反応性モノマーの数平均分子量は200〜1000である必要がある。好ましくは250〜800であり、さらに好ましくは300〜700であり、最も好ましくは300〜600である。反応性モノマーの数平均分子量が200より低い場合、基材温度が上昇すると蒸着効率が著しく低下するおそれがある。一方、反応性モノマーの数平均分子量が1000を超えると揮発性が低いために蒸着困難となり、場合によっては蒸発する前に硬化してしまうおそれがある。
【0010】
本発明の反応性モノマーは、活性エネルギー線によって架橋できるモノマーであれば良く、熱重量分析による5%重量減少温度及び分子量以外に特に制限されるものはない。具体的にはアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーやエポキシ基を有するモノマーなどがあげられ、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、2官能のアクリロイル基を有するアクリレートが特に好ましい。2官能のアクリロイル基を有するアクリレートとしては、エステル型ジアクリレート、エーテル型ジアクリレート、イソシアヌレート型ジアクリレート、脂環式ジアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどが挙げられ、これらの中でも密着性等の面からエステル型ジアクリレート、エーテル型ジアクリレートが好ましい。本発明におけるエステル型ジアクリレートとは、アクリレート基以外に1つ以上のエステル結合を有していれば良く、水酸基等を含有していてもかまわない。例えば、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、カプロラクトン変性ジシクロペンタジエニルジアクリレート、カプロラクトン変性ノルボルナンジメチロールジアクリレート等が挙げられる。本発明におけるエーテル型ジアクリレートとは、エーテル結合を1つ以上有する構造であれば良く、水酸基等の官能基を有していてもかまわない。例えば、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、エピクロロヒドリン変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、エチレングリコール変性ジシクロペンタジエニルジアクリレート、プロピレングリコール変性ジシクロペンタジエニルジアクリレート、エチレングリコール変性ノルボルナンジメチロールジアクリレート、プロピレングリコール変性ノルボルナンジメチロールジアクリレートなどが挙げられる。これらの中でも透明性、耐熱性、密着性等の面から下記式(1)に示されるネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレートが特に好ましい。反応性モノマーは単独で用いても、2種類以上を混合しても良く、また1官能や3官能以上の反応性モノマーを併用して用いてもかまわない。
【化2】
【0011】
本発明における有機層の形成に用いられる活性エネルギー線としては、紫外線(UV)、電子線等が挙げられる。活性エネルギー線が紫外線(UV)の場合、例えば、ラジカルやカチオン等を発生する光重合開始剤を添加する公知のラジカル重合またはカチオン重合を用いて架橋を行うことができる。
【0012】
本発明で用いられる光重合開始剤は特に限定されるものではない。光重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤やカチオン性重合開始剤等を用いることができるが、ラジカル重合開始剤がより好ましい。例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これら光重合開始剤は単独で用いても2種以上併用してもかまわない。
【0013】
本発明において、光重合開始剤の含有量は反応性モノマー100重量部に対し0.1〜10重量部が好ましい。より好ましくは0.5〜7重量部であり、最も好ましくは0.8〜5重量部である。光重合開始剤の含有量が0.1重量部より少なくなると硬化が不十分となるおそれがある。一方、光重合開始剤の含有量が10重量部を超えると硬化は起こるものの脆い有機層となるおそれがある。
【0014】
本発明によれば、高分子材料からなる基材上に熱重量分析による5%重量減少温度が155℃〜300℃で数平均分子量が200〜1000の反応性モノマーを蒸着により成膜し、直ちに活性エネルギー線によって架橋させることにより高分子の有機層を形成させ、次に有機層の表面に無機層を真空製膜法により形成させる工程を繰り返すことで大気下にフィルム表面を曝すことなく有機と無機の交互積層バリア膜を形成させることができる。この方法により無機層だけでは無くしきれない層構造の欠陥部分を有機層で埋める事が可能であるため、ガスバリア性を高めた透明フィルムを得ることができる。
【0015】
本発明の有機層の厚みは、10nm〜5000nmが好ましい。有機層の厚みが10nmより小さい場合は、有機層の厚みの均一性を得ることが困難となるため、無機層の構造欠陥を効率よく有機層で埋めることができない場合がある。また、5000nmを越える厚みの場合は、曲げ等の外力により有機層がクラックを発生し易くなるためバリア性が低下するおそれがある。
【0016】
本発明の無機層に関して特に制限はないが、例えばSi、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce等の1種以上を含む酸化物もしくは窒化物もしくは酸化窒化物などを用いることができる。無機層は厚すぎると曲げ応力によるクラックの恐れがあり、薄すぎると膜が島状に分布するため、いずれもガスバリア性が悪くなる。上記のことより、それぞれの無機層の厚みは5nm〜500nmの範囲が好ましいが、特に限定はしない。また、それぞれの無機層は同じ組成でも別の組成でも良く制限はない。ガスバリア性と高透明性を両立させるには無機層として珪素酸化物、珪素窒化物や珪素酸化窒化物を使うのが好ましい。また、無機層の形成方法としては抵抗加熱蒸着法、電子線蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法が適用でき、目的の無機酸化物、無機窒化物、無機窒化酸化物が得られる方法であれば制限はない。
【0017】
本発明の高分子材料からなる基材として特に制限はないが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン等を使用することができる。特に、ガラス転移温度が200℃以上のノルボルネン系樹脂やポリエーテルスルホンは光学特性が良好で耐熱性が高く、有機層無機層形成プロセスにおいて高温処理による変形や劣化が無いので好ましい。
【0018】
【実施例】
以下本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は、何ら下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
光重合開始剤(イルガキュアー907:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、5%重量減少温度:207.7℃)を3重量部含有するカプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(KAYARAD HX−220:日本化薬(株)製、5%重量減少温度:198.8℃、数平均分子量:540)100重量部を蒸着源に入れ、基材としてポリエーテルスルホンを真空槽内にセットした。真空槽内を10−4Pa台まで真空引きした後に、有機蒸着源の抵抗加熱を開始し、不純物の蒸発が完了したところで蒸着シャッターを開き2000nmの有機層を蒸着した。その後、500mJ/cm2の積算光量のUVを照射し、有機層を形成した。
【0019】
(実施例2)
実施例1で使用したカプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートの代わりに、ポリプロピレングリコールジアクリレート(アロニックスM−225:東亞合成(株)製、5%重量減少温度: 229.0℃、数平均分子量:536)を用いた他は実施例1と同様に蒸着膜作製を行った。
【0020】
(実施例3)
実施例1で使用したカプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートの代わりに、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート(KAYARAD R−604:日本化薬(株)製、5%重量減少温度:174.3℃、数平均分子量:326)を、光重合開始剤をイルガキュア−907の代わりにイルガキュア−651(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、5%重量減少温度:167.8℃)を用いた他は実施例1と同様に蒸着膜作製を行った。
【0021】
(実施例4)
抵抗加熱端子及び電子銃を備えた真空蒸着機内に高圧水銀UVランプを取り付け成膜装置とした。無機層として珪素窒化酸化物を用い、有機層として2官能のカプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(KAYARAD HX−220:日本化薬(株)製)100重量部に光重合開始剤(イルガキュア−907:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を1重量部添加した未硬化樹脂を用いた。樹脂基板として0.1mm厚のポリエーテルスルホンを真空槽内にセットし10−4Pa台まで真空引きした後に、電子線蒸着法により30nmの珪素窒化酸化物膜を形成した。その後、真空槽内の真空度が10−4Pa台で安定した状態で、有機蒸着源の抵抗加熱を開始し、不純物の蒸発が完了したところで蒸着シャッターを開き500nmの有機層を蒸着した。蒸着シャッターを戻した後にUVランプのシャッターを開き、500mJ/cm2の積算光量でモノマーを硬化した。その後さらに電子線蒸着法による30nmの珪素窒化酸化物膜形成を繰り返し、樹脂基板/無機層/有機層/無機層のガスバリア性プラスチックフィルムを成膜した。水蒸気透過度をJISK7129B法にて測定した。また、30mmφの棒に1回巻きつけた後、再度水蒸気透過度をJISK7129B法にて測定した。
【0022】
(実施例5)
実施例4で樹脂基板として使用したポリエーテルスルホンの代わりにノルボルネン樹脂(Promerus社製、Appear)を用いた他は実施例4と同様に樹脂基板/無機層/有機層/無機層のガスバリア性プラスチックフィルムを成膜した。水蒸気透過度の測定についても実施例4と同様に行った。
【0023】
(実施例6)
実施例4で使用したカプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートの代わりに、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート(KAYARAD R−604:日本化薬(株)製)を、光重合開始剤をイルガキュア−907の代わりにイルガキュア−651(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を用いた他は実施例4と同様に樹脂基板/無機層/有機層/無機層のガスバリア性プラスチックフィルムを成膜した。水蒸気透過度の測定についても実施例4と同様に行った。
【0024】
(実施例7)
実施例4で使用したカプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートの代わりに、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート(KAYARAD R−604:日本化薬(株)製)を、光重合開始剤をイルガキュア−907の代わりにイルガキュア−651(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を、樹脂基板としてポリエーテルスルホンの代わりにノルボルネン樹脂(Promerus社製、Appear)を用いた他は実施例4と同様に樹脂基板/無機層/有機層/無機層のガスバリア性プラスチックフィルムを成膜した。水蒸気透過度の測定についても実施例4と同様に行った。
【0025】
(比較例1)
実施例1で使用したカプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートの代わりに、トリプロピレングリコールジアクリレート(アロニックスM−220:東亞合成(株)製、5%重量減少温度: 152.0℃、数平均分子量:300)を、イルガキュア907の代わりにイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、5%重量減少温度:151.8℃)を用いた他は実施例1と同様に蒸着膜作製を行った。
【0026】
(比較例2)
実施例1で使用したカプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートの代わりに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(東亞合成(株)製、5%重量減少温度: 142.6℃、数平均分子量:226)を、イルガキュア907の代わりにイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、5%重量減少温度:151.8℃)を用いた他は実施例1と同様に蒸着膜作製を行った。
【0027】
(比較例3)
実施例1で使用したカプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートの代わりに、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(アロニックスM−400:東亞合成(株)製、5%重量減少温度: 382.3℃、数平均分子量:578)を用いた他は実施例1と同様に蒸着膜作製を行った。
【0028】
(比較例4)
抵抗加熱端子及び電子銃を備えた真空蒸着機内に高圧水銀UVランプを取り付け成膜装置とした。無機層として珪素窒化酸化物を用いた。樹脂基板として0.1mm厚のポリエーテルスルホンを真空槽内にセットし10−4Pa台まで真空引きした後に、電子線蒸着法により30nmの珪素窒化酸化物膜を形成し、樹脂基板/無機層のガスバリア性プラスチックフィルムを成膜した。水蒸気透過度の測定については実施例4と同様に行った。
【0029】
(比較例5)
比較例4で樹脂基板として使用したポリエーテルスルホンの代わりにノルボルネン樹脂(Promerus社製、Appear)を用いた他は比較例4と同様に樹脂基板/無機層のガスバリア性プラスチックフィルムを成膜した。水蒸気透過度の測定については実施例4と同様に行った。
【0030】
(結果)
結果を表1及び表2に示す。
本発明の実施例では、何れも基材温度に係わらず2000nmの膜厚で有機層を蒸着でき、曲げ処理後の水蒸気透過度も良好に保たれていた。これに対し、熱重量分析による5%重量減少温度が152℃の比較例1では、基材温度35℃で、また熱重量分析による5%重量減少温度が142.6℃の比較例2では、何れの基材温度でもほとんど蒸着させることができなかった。さらに、熱重量分析による5%重量減少温度が382.3℃の比較例3では、樹脂が揮発せず、蒸着源のところで硬化した。
また、樹脂基板に直接無機層を積層させた比較例4及び5では、本発明の請求項6に対応する実施例4〜7に比し、水蒸気透過度が高く、特に曲げ処理後の水蒸気透過度は著しく上昇した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【発明の効果】
本発明は、有機層/無機層の交互多層積層構造を有するバリア膜に適した蒸着膜用樹脂を提供することができる。また、本発明の蒸着膜用樹脂を用いて形成した有機層を用いることにより、従来よりも高いガスバリア性能を持ちかつ曲げてもそのバリア性能が劣化しない透明フィルムを提供することができる。本発明のフィルムをたとえば表示素子用基板として適用すれば、軽くて割れないディスプレイが実現できる。
Claims (5)
- 高分子材料からなる基材の少なくとも片面に、有機層と無機層とが交互に積層され少なくとも二層以上の無機層が形成されたガスバリア性プラスチックフィルムの製造方法であって、前記有機層が蒸着膜用樹脂を真空蒸着させて活性エネルギー線によって架橋させて形成し、前記無機層を真空成膜法で形成し、前記蒸着膜用樹脂が熱重量分析による5%重量減少温度が155℃〜300℃であり、かつ、数平均分子量が200〜1000であるエステル型ジアクリレートまたはエーテル型ジアクリレートであり、前記エステル型ジアクリレートがカプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、カプロラクトン変性ジシクロペンタジエニルジアクリレート、又はカプロラクトン変性ノルボルナンジメチロールジアクリレートであり、前記エーテル型ジアクリレートがネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、エピクロロヒドリン変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、エチレングリコール変性ジシクロペンタジエニルジアクリレート、プロピレングリコール変性ジシクロペンタジエニルジアクリレート、エチレングリコール変性ノルボルナンジメチロールジアクリレート、又はプロピレングリコール変性ノルボルナンジメチロールジアクリレートであるガスバリア性プラスチックフィルムの製造方法。
- 前記有機層の厚みが10nm〜5000nmである請求項1又は2記載のガスバリア性プラスチックフィルムの製造方法。
- 前記無機層が珪素酸化物または珪素窒化物または珪素窒化酸化物を主成分とする請求項1〜3いずれか一項記載のガスバリア性プラスチックフィルムの製造方法。
- 前記高分子材料からなる基材がノルボルネン系樹脂またはポリエーテルスルホンを主成分とする請求項1〜4いずれか一項記載のガスバリア性プラスチックフィルムの製造方法。
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