JP2006233121A - 生分解性樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高荷重下においても熱変形温度が高く、耐熱性に優れると共に、機械的強度にも優れた生分解性樹脂組成物及びその成形体を得る。
【解決手段】 本発明の生分解性樹脂組成物は、ポリ乳酸を主成分とし、ポリエステルと無機質フィラーを含有するものとしている。また、本発明の生分解性樹脂組成物は、ポリ乳酸および/またはポリエステルと反応する反応基を分子内に有する助剤をさらに含有するものとしている。さらに、本発明の生分解性樹脂組成物の成形体は、前記本発明の生分解性樹脂組成物を成形してなるものとしている。
【選択図面】 なし
【解決手段】 本発明の生分解性樹脂組成物は、ポリ乳酸を主成分とし、ポリエステルと無機質フィラーを含有するものとしている。また、本発明の生分解性樹脂組成物は、ポリ乳酸および/またはポリエステルと反応する反応基を分子内に有する助剤をさらに含有するものとしている。さらに、本発明の生分解性樹脂組成物の成形体は、前記本発明の生分解性樹脂組成物を成形してなるものとしている。
【選択図面】 なし
Description
本発明は、ポリ乳酸を主成分とする耐熱性、ならびに機械的性能の優れた生分解性樹脂組成物及びその成形体に関するものである。
21世紀に入り、環境保全の見地からポリ乳酸をはじめとする生分解性樹脂が注目されている。生分解性樹脂のなかではポリ乳酸は耐熱性が高い樹脂である。また植物由来のデンプン等から生産でき、石油等と異なり再生可能な資源であることから有用性が高まってきている。
しかしながら、ポリ乳酸単体からなる樹脂は、既存のポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート等の非生分解性の汎用樹脂に比べると、耐熱性に劣り、もちろん機械的特性も固くて脆い。特に耐熱性に関しては、今後種々の用途展開の必要性から、その改質が強く望まれてきた。
一般に樹脂の耐熱性は荷重を加えたときの熱変形温度で表現できる。熱変形温度は、非晶質の熱可塑性樹脂では、ほぼガラス転移温度であるが、結晶質のものは試験荷重によって著しく変わる。たとえば、非晶質熱可塑性樹脂の代表としてポリスチレンの熱変形温度は高荷重(1.80MPa)で70℃、ポリスチレンのガラス繊維30%強化品で90℃〜104℃であること、結晶性の6−ナイロンではガラス繊維0%で66〜70℃、ガラス繊維30%強化品で205℃〜216℃であることが非特許文献1の表10.55に示されている。
一方、ポリ乳酸は結晶性樹脂ではあるが、その結晶速度の遅さから結晶化度の低い成形品しか得られず、結果的に耐熱性が低い。結晶性樹脂であるポリ乳酸と層状粘土鉱物からなる樹脂組成物が特許文献1に、ポリ乳酸とオスミウム塩で有機カチオン処理された層状珪酸塩からなる樹脂組成物が特許文献2に、ポリ乳酸とタルクなどの結晶核剤と、結晶化核剤の分散剤とからなる樹脂組成物が特許文献3に示されているが、いずれもポリ乳酸の結晶化速度を改善しポリ乳酸の耐熱性を高めるものである。また、ポリ乳酸とポリカーボネート樹脂との樹脂組成物が、ポリ乳酸の耐熱性を引き上げるとの報告が非特許文献2にされている。
しかしながら、これら樹脂組成物の耐熱性レベルは低く、まだまだ不十分なものであった。
化学便覧改訂3版応用編10章812頁(編者:社団法人日本化学会、発行:昭和55年3月15日) プラスチック成形加工学会「成形加工シンポジア‘04」(早田祐介、野寺明夫)413〜414頁 特開2003−73538号
特開2003−261756号
特開2003−253009号
化学便覧改訂3版応用編10章812頁(編者:社団法人日本化学会、発行:昭和55年3月15日) プラスチック成形加工学会「成形加工シンポジア‘04」(早田祐介、野寺明夫)413〜414頁
本発明は、上記の問題点を解決するものであり、高荷重下においても熱変形温度が高く、耐熱性に優れると共に、機械的強度にも優れた生分解性樹脂組成物及びその成形体を得ることを目的としてなされたものである。
そのため、本発明の生分解性樹脂組成物は、ポリ乳酸を主成分とし、ポリエステルと無機質フィラーを含有するものとしている。
また、本発明の生分解性樹脂組成物は、ポリ乳酸および/またはポリエステルと反応する反応基を分子内に有する助剤をさらに含有するものとしている。
そして、本発明の生分解性樹脂組成物は、ポリエステルの融点とポリ乳酸の融点の差が100℃以下であるものとしている。
また、本発明の生分解性樹脂組成物は、ポリエステルが芳香族ポリエステルであるものとしている。
また、本発明の生分解性樹脂組成物は、ポリエステルの含有量が、樹脂成分100質量部に対して10〜50質量部であるものとしている。
また、本発明の生分解性樹脂組成物は、無機質フィラーの含有量が、樹脂成分100質量部に対して100質量部未満であるものとしている。
また、本発明の生分解性樹脂組成物は、助剤の含有量が、樹脂成分100質量部に対して0.05〜15質量部であるものとしている。
さらに、本発明の生分解性樹脂組成物の成形体は、前記本発明の生分解性樹脂組成物を成形してなるものとしている。
本発明は、以上のように構成されているので、ポリ乳酸を主成分とする耐熱性、ならびに機械的性能の優れた生分解性樹脂組成物及び成形体を比較的容易に得られる。すなわち、ポリ乳酸単体では実現できなかった耐熱性の高い強靱な特性を有する成形物を得ることができる。また、ポリ乳酸単体の有する生分解特性や、燃焼の際の低い燃焼熱を保持し続けることができ、ライフサイクルアセスメント(LCA)による高い評価を得るものとなる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明は、ポリ乳酸を主成分とし、ポリエステルと無機質フィラーを含有するものとしている。すなわち、ポリ乳酸とポリエステルを組み合わせ、さらに無機質フィラーの併用をすることにより、従来のポリ乳酸の熱変形温度を大幅に高めることができる。これは、ポリ乳酸にポリエステルを分散させる際、特定の分散を実現することにより、ポリ乳酸の結晶化あるいは結晶化度を高め、無機質フィラーによる剛性アップと相まって熱変形温度を驚異的に高めることができたものと考えられる。
本発明で用いられるポリ乳酸は、樹脂組成物の主成分となるものであり、樹脂成分100質量部に対して50質量部以上含有しており、生分解特性を保持するものとしている。前記ポリ乳酸は、光学純度が90モル%以上であり、融点が160℃以上であるポリ乳酸を用いるのが好ましい。光学純度が90モル%未満で、融点が160℃未満では、得られる樹脂組成物の耐熱性や機械特性が劣る。前記ポリ乳酸は、通常公知の溶融重合法、あるいは固層重合法を併用して製造される。
また、前記ポリ乳酸は、生分解特性を損なわない程度に、ヒドロオキシカルボン酸類、ラクトン類等との共重合体を用いてもよい。共重合可能なヒドロオキシカルボン酸類、ラクトン類等としては、グリコール酸、3−ヒドロオキシラク酸、4−ヒドロオキシラク酸、4−ヒドロオキシ吉草酸、ヒドロオキシカプロン酸、グリコリド、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。また、ジオールとジカルボン酸からなる脂肪族エステルを共重合してもよい。ジオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレン/プロピレングリコール、ジヒドロオキシエチルブタン、ポリプロピレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリヘキサンカーボネート、ポリオクタンカーボネート、ポリデカンカーボネート、ジカルボン酸としてはコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などが挙げられる。
本発明で用いられるポリエステルは、樹脂成分100質量部に対して10〜50質量部含有しており、ポリ乳酸より溶融温度の高い樹脂が用いられる。すなわち、前記ポリエステルは、ポリ乳酸より融点の高いものが用いられ、ポリエステルの融点とポリ乳酸の融点の差は100℃以下のものを用いるのが好ましい。融点の差が100℃を越えると、ポリエステルとポリ乳酸を混合する加工温度がポリ乳酸に悪影響をあたえる。好ましいポリエステルとしては、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステルがコストパフォーマンスに優れるが、特にこれらに限られることはない。これらのポリエステルは、ポリ乳酸との融点の関係を満足し、結晶性を損なわない程度であれば、共重合体であっても、これらの樹脂の混合物であってもよい。また、これらのポリエステルは、結晶化速度も速い。
さらに、本発明で用いられる無機質フィラーは、樹脂成分100質量部に対して100質量部未満含有している。無機質フィラーの含有量が100質量部を越えると、樹脂の靱性が低下し好ましくない。また、前記無機質フィラーは、タルク、スメクタイト、バーキュウムライト等の粘土類、膨潤性雲母などの層状珪酸塩、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミ、酸化チタン等の金属酸化物、窒化アルミ、窒化珪素、窒化チタン、窒化硼素等の窒化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム等の金属塩類、チタン酸カリウムウィスカー、ウォラストナイト、ガラス繊維、ガラス粉末、板状ガラス等が挙げられる。また、これらの混合物であってもよい。
また、本発明の生分解性樹脂組成物には、結晶化促進剤としての効果のある蓚酸ナトリウム、蓚酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、フタル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミドなどや、可塑剤、紫外線防止剤、光安定剤、防曇剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤、顔料、着色剤などを、樹脂特性を損なわない範囲で添加してもよい。
本発明の生分解性樹脂組成物の熱変形温度は、荷重1.80MPaにおけるISO 75に規定される方法で測定した。0.45MPaでの熱変形温度では実用の指標として必ずしも妥当でないことが分かった。すなわち、荷重1.80MPaにおける熱変形温度が100℃以上の生分解性樹脂組成物では実用的に有用な指標である。
さらに、本発明において、特にポリ乳酸および/またはポリエステルと無機質フィラーとの相互作用を強化するために、エポキシ基、イソシアネ−ト基、酸無水物基、アルコシシランよりなる群から選ばれた官能基を少なくとも1単位以上含有する反応性化合物を助剤として使用することが好ましい。前記助剤を樹脂成分100質量部に対して0.05〜15質量部するものとすると、ポリ乳酸および/またはポリエステルと無機質フィラーとの相互作用が高まり、耐熱性を挙げることができる。
エポキシ基を含む化合物としては、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−ビニルアセテート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−メチルアクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート−スチレン共重合体、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヤシ脂肪酸グリシジルエステル、エポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油のグリシジルエーテルおよびエステル等が挙げられる。
また、イソシアネ−ト基を含有する化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
酸無水物を含有する化合物としては、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、エチ
レン−無水マレイン酸共重合体、スチレンエチレン−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。
レン−無水マレイン酸共重合体、スチレンエチレン−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。
アルコキシシランを含有する化合物としては各種のアルキルトリアルコキシシランが用いられ、アルコシ基としてはメトキシ基やエトキシ基が挙げられる。アルキル基としてはグリシジル基やイソシアネート基で置換されるものが好んで用いられる。具体的には、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルメチルトリメトキシシランやこれらのオリゴマー等が挙げられる。
本発明の生分解性樹脂組成物を製造する方法としては、一般的な一軸押出機、二軸押出機等を用いてポリ乳酸、ポリエステル、無機質フィラー、助剤等を溶融混練する方法が挙げられるが、特にこの方法に限定するものでない。重合段階から一部あるいは全部の組成を添加して本発明の樹脂組成物を得る方法もある。
本発明において前記樹脂組成物を射出成形、押出成形等することによって成形体を得ることができる。射出成形、押出成形時のシリンダー温度は樹脂組成物の組成にもよるが、170℃〜280℃であり、成形温度が高すぎると樹脂の分解や、強度低下、着色等の問題を起こす。一方、金型温度は組成物の耐熱性を高める目的で、金型内で結晶化を促進させる場合は、ガラス転移温度(Tg)以上で融解温度(Tm)以下の温度で所定時間保った後金型から取り出す。金型の外で結晶化させる場合は、Tg以下の温度の金型内で樹脂を冷却し、型から取りだし後、Tg以上でTm以下の温度で所定時間熱処理する。
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、当然のことながら本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明の実施例に用いた成分は、以下のとおりである。
・ポリ乳酸(PLA)は、ユニチカ社製TP-4000 (D体=1.3%,Tm=169℃)を用いた。
・ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、三菱エンプラ社製5010R3(Tm=224 ℃) を用いた。
・タルクは、林化成社製HWSTを用いた。
・ガラス繊維(GF)は、日本電気硝子社製 T-124を用いた。
・助剤は、住友化学社製ボンドファースト2B(エポキシ基を有するグリシジルメタクリレートとのエチレンコポリマーおよびエチレンターポリマー) を用いた。
・ポリ乳酸(PLA)は、ユニチカ社製TP-4000 (D体=1.3%,Tm=169℃)を用いた。
・ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、三菱エンプラ社製5010R3(Tm=224 ℃) を用いた。
・タルクは、林化成社製HWSTを用いた。
・ガラス繊維(GF)は、日本電気硝子社製 T-124を用いた。
・助剤は、住友化学社製ボンドファースト2B(エポキシ基を有するグリシジルメタクリレートとのエチレンコポリマーおよびエチレンターポリマー) を用いた。
前記各成分を表1に示した実施例1〜6、表2に示した比較例1〜6の組成となるよう配合し、ブレンダーで均一に混合した。この混合物をスクリュー径48mmのL/D=35の2軸押出機を使用して2ベント方式(真空)で、シリンダー温度240℃、スクリュー回転170rpm で押出し、チップを得た。得られたチップを結晶化、乾燥し、各測定用3mm厚の試験片を射出成形した。射出成形の金型温度はすべて110℃とし、冷却時間は全て2.5分として金型内での結晶化を促した。
本発明の実施例および比較例の評価に用いた測定法は、以下のとおりである。
・融点は、示差走査熱量計を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
・熱変形温度は、ISO 75に基づき荷重1.80MPaにおける熱変形温度を測定した。
・アイゾット衝撃強度は、 ISO 180に基づき測定した。
・融点は、示差走査熱量計を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
・熱変形温度は、ISO 75に基づき荷重1.80MPaにおける熱変形温度を測定した。
・アイゾット衝撃強度は、 ISO 180に基づき測定した。
これらの測定結果について、それぞれ表1、表2に示す。
実施例1、2ではPBTが増えるに従い熱変形温度が高くなることが分かる。また実施例1と4、実施例3と6では助剤をポリマー系に添加することにより熱変形温度はわずかに低下するが、それよりましてアイゾット衝撃強度が高くなり力学的に強靱性が増す。
比較例1、2、4、5、6はPBTを含まない場合、無機質フィラーを含んでも、熱変形温度は105℃未満で全く耐熱性に劣ったものであった。比較例3はPBTを含んでも、無機質フィラーを含まない場合、耐熱的に全く低いレベルの組成物しか得られないことが分かる。
Claims (8)
- ポリ乳酸を主成分とし、ポリエステルと無機質フィラーを含有する生分解性樹脂組成物。
- ポリ乳酸および/またはポリエステルと反応する反応基を分子内に有する助剤をさらに含有する請求項1記載の生分解性樹脂組成物。
- ポリエステルの融点とポリ乳酸の融点の差が100℃以下である請求項1または請求項2記載の生分解性樹脂組成物。
- ポリエステルが芳香族ポリエステルである請求項1から3のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物。
- ポリエステルの含有量が、樹脂成分100質量部に対して10〜50質量部である請求項1から4のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物。
- 無機質フィラーの含有量が、樹脂成分100質量部に対して100質量部未満である請求項1から5のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物。
- 助剤の含有量が、樹脂成分100質量部に対して0.05〜15質量部である請求項2から6のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物。
- 請求項1から7のいずれかの記載の生分解性樹脂組成物を成形してなる生分解性樹脂組成物の成形体。
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