JP2006348246A - 熱可塑性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】 結晶性を向上させて耐熱性や成形サイクル性を高めることができ、さらに耐衝撃性を向上することができる熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 脂肪族ポリエステル樹脂、結晶性熱可塑性樹脂、ポリ(エチレン−stat−メタクリル酸グリシジル)−graft−ポリ(アクリロニトリル−stat−スチレン)を含有した熱可塑性樹脂組成物であり、この樹脂組成物を形成した成形品の結晶化度が50〜90%である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、脂肪族ポリエステル系の熱可塑性樹脂組成物及びこの熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形品に関するものである。
現在、人間活動による地球温暖化が問題になっており、温暖化の元凶の一部とされている二酸化炭素の削減が急務となっている。なかでも、人間活動に欠かせない材料となっているプラスチックは、1年間に1億t以上消費され、その多くは石油を原料としており、多くはリサイクルされないまま廃棄されるか焼却処分されているのが現状であり、二酸化炭素増大の一因となっている。
このような問題を解決するために、近年、二酸化炭素を放出しない天然由来のプラスチックの研究が盛んに行なわれつつある。しかし、天然由来のポリ乳酸をはじめとする脂肪族ポリエステル樹脂は、耐熱性、機械特性、成形性等に多くの課題を残しており、実用的な分野で用いるには未解決の問題が多いというのが現状である。
このような問題を解決する方法の一つとして、脂肪族ポリエステル樹脂を石油系樹脂とアロイ化し、脂肪族ポリエステル樹脂の特性を補強する方法が考えられる。このような例として、特許文献1に開示されている、熱可塑性ポリエステル樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂、ゴム成分、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体とアクリロニトリル−スチレン共重合体とのグラフト共重合体のアロイ化が参考になる。
特開平5−222266号公報
しかし特許文献1の発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂の耐衝撃性を向上させることが目的であり、結晶性を向上させて耐熱性や成形サイクル性を高めることにまでは至っていない。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、結晶性を向上させて耐熱性や成形サイクル性を高めることができ、さらに耐衝撃性を向上することができる熱可塑性樹脂組成物及び成形品を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係る熱可塑性樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル樹脂、結晶性熱可塑性樹脂、ポリ(エチレン−stat−メタクリル酸グリシジル)−graft−ポリ(アクリロニトリル−stat−スチレン)を含有した熱可塑性樹脂組成物であって、この樹脂組成物を形成した成形品の結晶化度が50〜90%であることを特徴とするものであり、これにより、結晶性を向上させて、成形性が良好で、熱変形温度が高く、高い耐衝撃性を有する熱可塑性樹脂組成物を提供することができるものである。
また請求項2の発明は、請求項1において、前記脂肪族ポリエステル樹脂が、ポリ乳酸であることを特徴とするものであり、これにより、熱可塑性樹脂を成形する際の高温の金型からの取り出し時の結晶性が良好となり、熱変形温度、成形が向上するものである。
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記結晶性熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー樹脂の少なくとも一方であることを特徴とするものであり、これにより、結晶性が良好となって、熱変形温度、成形性が向上するものである。
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、非晶質熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の少なくとも一方を含有することを特徴とするものであり、これにより、耐衝撃性が向上するものである。
また請求項5の発明は、請求項4において、前記非晶質熱可塑性樹脂が、アクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂をアロイ化したものから選ばれるものであることを特徴とするものであり、これにより、耐衝撃性が向上するものである。
また請求項6の発明は、請求項4又は5において、前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂であることを特徴とするものであり、これにより、耐衝撃性が向上するものである。
また本発明の請求項7に係る成形品は、請求項1乃至6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物が、押出し成形、圧空成形、真空成形、射出成形、ブロー成形、発泡成形から選ばれる方法で成形されたものであることを特徴とするものであり、これにより、結晶性を向上させて耐熱性や機械的特性に優れた成形品を得ることができるものである。
本発明によれば、結晶性を向上させて、耐熱性や成形サイクル性を高めることができ、さらに耐衝撃性を高めることができるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
脂肪族ポリエステル樹脂は、一般に結晶化速度が遅く、成形性に多くの問題がある。そこで本発明は、脂肪族ポリエステル樹脂に結晶性熱可塑性樹脂を添加することによって、脂肪族ポリエステル樹脂自体の結晶化を促進することができ、成形性や耐熱性を改善することができることを見出してなされたものである。しかし、脂肪族ポリエステル樹脂と結晶性熱可塑性樹脂は、成形体の系内で粗大な相分離構造をとるために、両樹脂の界面での表面積が小さく、界面剥離が発生して耐衝撃性の低下が生じてしまう。このために、両樹脂の相溶性を改善するために様々な相溶化剤を検討した結果、ポリ(エチレン−stat−メタクリル酸グリシジル)−graft−ポリ(アクリロニトリル−stat−スチレン)を添加することが有効であることを見出して、本発明を完成したものである。
すなわち、脂肪族ポリエステル樹脂に結晶性熱可塑性樹脂を添加することによって、結晶化度を高めて、成形性や耐熱性を向上することができ、またポリ(エチレン−stat−メタクリル酸グリシジル)−graft−ポリ(アクリロニトリル−stat−スチレン)を添加することによって、脂肪族ポリエステル樹脂と結晶性熱可塑性樹脂を相溶化させて、耐衝撃性を向上することができるものである。
本発明において、脂肪族ポリエステル樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、乳酸成分と脂肪族ポリエステル樹脂との共重合体、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート等を用いることができる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよいが、機械特性、成形性等の観点から、ポリ乳酸を単独で用いるか、あるいはポリ乳酸と他の脂肪族ポリエステル樹脂1種以上と混合して用いるのが好ましい。
また本発明において、結晶性熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリブチレンテレタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、シンジオタクチッチ・ポリスチレン樹脂、ポリエーテルエステルエラストマー樹脂等を用いることができる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。結晶性熱可塑性樹脂を添加することによって、脂肪族ポリエステル樹脂の結晶核剤効果を期待することができるものである。これらの中でも、結晶化速度が比較的速く、脂肪族ポリエステル樹脂とのアロイ化時の熱的安定性が高い観点から、溶融温度が比較的低いポリブチレンテレフタレート樹脂、あるいは熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー樹脂を用いるのが好ましい。
結晶性熱可塑性樹脂の添加量は、脂肪族ポリエステル樹脂の1〜40質量%の範囲が好ましい。1質量%未満であると、脂肪族ポリエステル樹脂の結晶性を向上させる効果を十分に得ることができず、40質量%を超えると、アロイ化や成形が難しくなるため、好ましくない。
本発明において、さらに結晶化を進めるために、結晶性熱可塑性樹脂以外に、造核剤を配合することもできる。添加する造核剤としては特に限定されないが、タルク、100nm以下の粒径の有機変性層状ケイ酸塩、シリカ、リン酸ビス2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸ビス(4−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、ロジン系結晶核剤、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムベンゾエート、カリウムベンゾエート、リチウムベンゾエート、ソジウムβ・ナフタレートソジウムシクロヘキサンカルボキシレート、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、EPR、ケブラー繊維、カオリン、モンモリロナイト、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、高融点ナイロン、ヒドロキシ−ジ(tert−ブチル安息香酸)アルミニウム等を用いることができる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
そして本発明は上記のように、脂肪族ポリエステル樹脂と結晶性熱可塑性樹脂を相溶化させるために、相溶化剤としてポリ(エチレン−stat−メタクリル酸グリシジル)−graft−ポリ(アクリロニトリル−stat−スチレン)[エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体とアクリロニトリル−スチレン共重合体とのグラフト共重合体]を添加する。このポリ(エチレン−stat−メタクリル酸グリシジル)−graft−ポリ(アクリロニトリル−stat−スチレン)の添加量は、脂肪族ポリエステル樹脂の1〜30質量%の範囲が好ましい。1質量%未満であると、相溶化が不十分になって、耐衝撃性等の機械的強度を向上する効果を十分に得ることができず、また30質量%を超えると、ポリ(エチレン−stat−メタクリル酸グリシジル)−graft−ポリ(アクリロニトリル−stat−スチレン)自体の機械的強度が低いために、成形体の機械的強度が低下すると共に耐熱性にも影響を及ぼすので、好ましくない。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、上記の脂肪族ポリエステル樹脂、結晶性熱可塑性樹脂、ポリ(エチレン−stat−メタクリル酸グリシジル)−graft−ポリ(アクリロニトリル−stat−スチレン)を必須成分とするが、さらに非晶質熱可塑性樹脂を添加することもできる。この非晶質熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂をアロイ化したもの、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、メタクリルスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、メタクリル樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂などを用いることができる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、混練や成形の容易さから、アクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂をアロイ化したものを用いるのが好ましい。また用途によっては、ガラスファイバー等の無機物や植物繊維等で強化されたものや、非臭素、非塩素、非アンチモン材料で難燃変性されたものを用いることもできる。
この非晶質熱可塑性樹脂の添加量は、特に限定されるものではないが、脂肪族ポリエステル樹脂の10〜40質量%の範囲が好ましい。非晶質熱可塑性樹脂を添加することによって、耐衝撃性等の機械的強度を向上させることができるものであり、10質量%未満であると、この効果を十分に得ることができず、40質量%を超えると、熱加工時の熱履歴が上昇し、脂肪族ポリエステル樹脂の熱分解が起こるおそれがあるため好ましくない。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物にはさらに熱硬化性樹脂を添加することもできる。この熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などを挙げることができる。これらの中でも特に、脂肪族ポリエステル樹脂の末端水酸基と反応することが容易であり、機械的特性を向上させ易いという観点から、エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。このエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を挙げることがでる。また用途によっては、非臭素、非塩素、非アンチモン材料で難燃変性されたものを用いることもできる。
この熱硬化性樹脂の添加量は、特に限定されるものではないが、脂肪族ポリエステル樹脂の0.1〜5質量%の範囲が好ましい。熱硬化性樹脂を添加することによって、耐衝撃性などの機械的強度を向上させることができるものであり、0.1質量%未満であると、この効果を十分に得ることができず、5質量%を超えると、熱加工時にゲル化が進むおそれがあるため好ましくない。
本発明において、酸化分解を抑制するために、酸化防止剤を添加することもできる。酸化防止剤としては特に限定されるものではないが、一般的なフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を用いることができる。
また本発明において、光劣化を抑制するために、各種の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤などを添加することもできる。
また本発明において、難燃性を付与するために、難燃剤を添加することもできる。難燃剤としては、特に限定されるものではないが、非臭素、非塩素、非アンチモンの観点から、リンを含む難燃剤である、レゾルシノールビス(ジ−2,6−ジメチルフェニルホスフェート)、ホスファゼン系化合物、ポリリン酸メラミン系化合物、リン酸グアニジン系化合物、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート、各種芳香族縮合リン酸エステル化合物、10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、ポリリン酸アンモニウム、赤燐等を使用することができ、また水和物を含む無機系難燃剤である、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性硫酸マグネシウム水和物等を使用することができる。さらに他の無機物として層状黒鉛等も使用することができる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
また本発明では、必要に応じて難燃助剤を用いることもできる。難燃助剤としては特に限定されるものではないが、例えばシリコン、シリコーン系アクリル強化剤、ホウ酸亜鉛、ポリテトラフルオロエチレンなどを用いることができる。
また本発明では、耐衝撃性向上のために必要に応じて、ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸ブチル−ポリジメチルシロキサン共重合体、ポリメタクリル酸アルキル−ポリブタジエン−ポリスチレン共重合体、各種熱可塑性エラストマーを添加することができる。
さらに本発明では、必要に応じて加水分解防止剤を添加することができる。加水分解防止剤としては、特に限定されるものではないが、カルボジイミド系化合物、エポキシ樹脂等を用いることができる。
さらに本発明では、金型離型性を向上させるために、外部滑剤を添加することができる。この滑剤としては、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル共重合体物、脂肪族アルコールとジカルボン酸のエステル、グリセリン及びその他の短鎖長脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル、脂肪酸、脂肪酸アミド、金属石鹸、オリゴマー脂肪酸エステル、脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル、モンタン酸及びエステルとソープ、極性ポリエチレンワックス、非極性ポリエチレンワックス、フッ素系ポリマー、天然及び合成ワックスなどを用いることができる。
上記の各成分を混合して混練することによって、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を得ることができるものであり、混練は例えば二軸押出機やニーダーなどを用いて行なうことができる。混練の方法としては、一度に各成分を混練するようにしてもよいが、脂肪族ポリエステル樹脂は230℃以上では熱分解を起こし易いため、まず結晶性熱可塑性樹脂と、非晶質熱可塑性樹脂熱可塑性樹脂と、ポリ(エチレン−stat−メタクリル酸グリシジル)−graft−ポリ(アクリロニトリル−stat−スチレン)とを230〜260℃の温度範囲で一次混練して軟化し易くし、この一次混練品と脂肪族ポリエステル樹脂とを230℃未満の温度で二次混練して、熱劣化のない熱可塑性樹脂組成物を調製するようにするのが好ましい。
そして、このように調製した熱可塑性樹脂組成物を、押出し成形、圧空成形、真空成形、射出成形、ブロー成形、発泡成形のいずれかの方法で成形することによって、成形品を得ることができるものである。成形温度は、150〜220℃の範囲に設定するのが好ましい。成形温度がこの範囲未満であると、充填不良などショートが発生したりして成形が不安定になったり、また射出成形機などの成形機内が過負荷に陥り易くなり、成形温度がこの範囲を超えると、熱可塑性樹脂組成物に熱分解が起こって、得られる成形品の強度が低下したり、着色が生じたりするおそれがある。また金型温度は、20〜120℃の範囲が好ましい。この温度範囲の中でも、90〜120℃では結晶化が短時間で進み、成形品の熱変形温度も高いという利点があり、20〜90℃では金型離型性が良いという利点がある。
そして本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を上記のように成形することによって、結晶化度が50〜90%の範囲の成形品を得ることができるものである。成形品の結晶化度が50質量%未満であると、耐熱性、耐衝撃性等の特性が不十分になる。また成形品の結晶化度が90%を超えるようにするためには、成形条件等の制約が大きくなって生産性に問題が生じるので、実用的ではない。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
結晶性熱可塑性樹脂としてポリブチレンテレフタレート樹脂(東レ社製「トレコン1200S」)を25質量部、非晶質熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂をアロイ化したもの(日本エイアンドエル社製「テクニエースT−105」)を78質量部、ポリ(エチレン−stat−メタクリル酸グリシジル)−graft−ポリ(アクリロニトリル−stat−スチレン)(日本油脂社製「モディパーA4400」)を32.5質量部配合し、一次混練として240℃で混練した。次に、脂肪族ポリエステル樹脂としてポリ乳酸(三井化学社製「レイシアH−100J」)を100質量部、タルク(竹原化学社製「TTタルク」)を1.25質量部、酸化防止剤(旭電化社製「アデカスタブAO330」)を0.5質量部、酸化防止剤(旭電化社製「アデカスタブ2112」)を0.5質量部、造核剤(旭電化社製「アデカスタブNA−11」)を0.5質量部、外部滑剤(三菱レイヨン社製「メタブレンL−1000」)を0.5質量部、ノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ社製「EPICLON N695」)を0.5質量部を配合し、さらに上記の一次混練品を配合し、210℃で混練することによって、熱可塑性樹脂組成物を得た。この混練は、ニーダ(栗本鉄工所製「S−1ニーダ」)を用い、吐出量3〜4kg/hrの条件で行なった。
得られた熱可塑性樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業社製、160t)を用いて射出成形した。射出成形機のシリンダ温度は、ノズル部210℃、前部210℃、中間部210℃、後部200℃とし、金型温度は90℃あるいは25℃に設定した。金型温度を90℃に設定した場合には、金型に射出した後に60秒で成形品を取り出した。また金型温度を25℃に設定した場合には、金型に射出した後に30秒で成形品を取り出し、さらに成形品を100℃で10分間エージングした。
(実施例2)
結晶性熱可塑性樹脂として熱可塑性ポリエーテルエステル樹脂(東レデュポン社製「ハイトレル5557」)を47.3質量部、ポリ(エチレン−stat−メタクリル酸グリシジル)−graft−ポリ(アクリロニトリル−stat−スチレン)(日本油脂社製「モディパーA4400」)を50質量部配合し、一次混練として240℃で混練した。次に、脂肪族ポリエステル樹脂としてポリ乳酸(三井化学社製「レイシアH−100J」)を100質量部、タルク(竹原化学社製「TTタルク」)を16.7質量部、酸化防止剤(旭電化社製「アデカスタブAO330」)を0.67質量部、酸化防止剤(旭電化社製「アデカスタブ2112」)を0.67質量部、造核剤(旭電化社製「アデカスタブNA−11」)を0.67質量部、外部滑剤(三菱レイヨン社製「メタブレンL−1000」)を0.67質量部、ノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ社製「EPICLON N695」)を0.67質量部、難燃剤としてポリリン酸メラミン系化合物(旭電化社製「アデカスタブFP2100」)を116.7質量部配合し、さらに上記の一次混練品を添加し、210℃で混練することによって、熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様にして射出成形した。
(実施例3)
実施例1において非晶質熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂をアロイ化したものの代りに、アクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂(UMG ABS社製「サイコラックABS TJ3L」)を用いるようにした他は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様にして射出成形した。
(実施例4)
実施例1において非晶質熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂をアロイ化したものの代りに、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック社製「ユーピロンS3000」)を用いるようにした他は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様にして射出成形した。
(実施例5)
実施例2において、ノボラック型エポキシ樹脂を配合しないようにした他は、実施例2と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様にして射出成形した。
(比較例1)
実施例1において、ポリ(エチレン−stat−メタクリル酸グリシジル)−graft−ポリ(アクリロニトリル−stat−スチレン)を配合せず、その代りに、これと同質量部のポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂をアロイ化したものを追加するようにし(従ってポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂をアロイ化したものの配合量は110.5質量部になる)、その他は実施例1と同じ配合成分の全量を、実施例1と同じニーダーを用いて混練温度240℃で一度に混練することによって、熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物を、射出成形機のシリンダ温度をノズル部230℃、前部230℃、中間部220℃、後部220℃に設定する他は、実施例1と同様にして射出成形した。
(比較例2)
実施例1において結晶性熱可塑性樹脂のポリブチレンテレフタレート樹脂を配合せず、その代りに、これと同質量部のポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂をアロイ化したものを追加するようにした(従ってポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂をアロイ化したものの配合量は103質量部になる)。その他は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様にして射出成形した。
(比較例3)
実施例2において結晶性熱可塑性樹脂の熱可塑性ポリエーテルエステル樹脂を配合せず、その代りに、非晶質熱可塑性樹脂のアクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂を同質量部配合するようにした他は、実施例2と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様にして射出成形した。
(比較例4)
実施例1で得られた熱可塑性樹脂組成物について、実施例1と同様にして射出成形した。このとき、金型温度を40℃に設定し、金型に射出した後に60秒で成形品を取り出すようにした。
上記の実施例1〜5及び比較例1〜4で得た成形品について、アイゾット衝撃強度(ASTM D256に準拠)、熱変形温度(ASTM D648に準拠、昇温速度2℃/分、0.45MPa荷重)を測定した。また実施例1〜5及び比較例1〜3について、金型温度を95℃に設定した場合についての成形品取り出し可能所用時間を測定した。
さらに、各成形品について結晶化度を測定した。結晶化度は、実施例1〜5及び比較例1〜3では、95℃の金型に射出した後の、表1に示す取り出し時間(冷却時間)によるポリ乳酸の結晶化エネルギーをDSC法で測定することによって、また比較例4では、40℃の金型に射出した後の、表1に示す取り出し時間(冷却時間)によるポリ乳酸の結晶化エネルギーをDSC法で測定することによって、それぞれ求めた。
Figure 2006348246
表1にみられるように、実施例1〜5のものは、結晶化度がいずれも50〜90%の範囲であり、アイゾット衝撃強度、熱変形温度が高く、また成形品取り出し可能所用時間が短く成形サイクル性を高めることができるものであった。

Claims (7)

  1. 脂肪族ポリエステル樹脂、結晶性熱可塑性樹脂、ポリ(エチレン−stat−メタクリル酸グリシジル)−graft−ポリ(アクリロニトリル−stat−スチレン)を含有した熱可塑性樹脂組成物であって、この樹脂組成物を形成した成形体の結晶化度が50〜90%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記脂肪族ポリエステル樹脂が、ポリ乳酸であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記結晶性熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂、熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー樹脂の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 非晶質熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記非晶質熱可塑性樹脂が、アクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン樹脂をアロイ化したものから選ばれるものであることを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項4又は5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物が、押出し成形、圧空成形、真空成形、射出成形、ブロー成形、発泡成形から選ばれる方法で成形されたものであることを特徴とする成形品。
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