JP2010126643A - 耐衝撃性ポリ乳酸系樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】より耐衝撃性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物、及びその組成物から得られる成形品を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含むポリ乳酸系樹脂組成物であって、ポリ乳酸系樹脂の光学純度が99.0%以上であり、かつポリエステル系熱可塑性エラストマーの曲げ弾性率が50MPa以下であるポリ乳酸系樹脂組成物、及びその樹脂組成物から得られる射出成形品である。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐衝撃性のポリ乳酸系樹脂組成物、及びその組成物から得られる成形品の技術分野に属する。
環境対策技術の一つとして、資源循環型プラスチックが注目されている。その中でもポリ乳酸系樹脂の需要が高まりつつある。ポリ乳酸系樹脂は、植物から得ることができるため、非石油資源から製造されるカーボンニュートラルな素材として、循環型社会の構築に貢献し得るものである。また、ポリ乳酸系樹脂は、他の樹脂に比べて生分解性が高く、融点が140〜180℃と十分に高く、しかも透明性に優れるため、包装材料や透明性を生かした成形品等、幅広い分野での普及が期待されている。しかし、ポリ乳酸系樹脂は、その剛直な分子構造のために、強度は高い一方で、耐衝撃性に劣り脆いという欠点があった。
ポリ乳酸系樹脂の耐衝撃性を向上させる手段の一つとして、従来、組成物中にポリエステル系熱可塑性エラストマーを添加することが行われている。例えば、(特許文献1)には、ラクチド由来の構造単位を有するポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)と、ネオペンチルグリコールを含むジオール成分及び10個以上の炭素原子を有するジカルボン酸を含むジカルボン酸成分から誘導されるポリエステル構造単位(II)とを有するブロック共重合体、並びにポリ乳酸を含有してなるポリ乳酸樹脂組成物が開示されている。また、(特許文献2)には、光学純度95%以上の結晶性ポリ乳酸樹脂(A)と、ガラス転移温度が0℃以下の芳香族・脂肪族共重合ポリエステルあるいは脂肪族ポリエステル(B)と、平均粒径1〜8μmのタルク(C)とを構成成分とするポリ乳酸系成形体が開示されている。しかしながら、従来技術によって得られる耐衝撃性は不十分なものであり、さらなる改良の余地があった。
特開2006−348141号公報 特開2004−269588号公報
そこで本発明は、上記従来の状況に鑑み、より耐衝撃性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物、及びその組成物から得られる成形品を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者らは、高光学純度のポリ乳酸系樹脂に対し、曲げ弾性率の値が所定の範囲内であるポリエステル系熱可塑性エラストマーを添加することによって、耐衝撃性が向上することを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含むポリ乳酸系樹脂組成物であって、ポリ乳酸系樹脂の光学純度が99.0%以上であり、かつポリエステル系熱可塑性エラストマーの曲げ弾性率が50MPa以下であるポリ乳酸系樹脂組成物。
(2)ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、芳香族ポリエステルのハードセグメント及び脂肪族ポリエステルのソフトセグメントを有するブロック共重合体である上記(1)に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(3)ポリエステル系熱可塑性エラストマーの量が、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとポリ乳酸系樹脂の合計量に対して10〜20重量%である上記(1)又は(2)に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物から得られる射出成形品。
本発明により、ポリ乳酸系樹脂組成物の耐衝撃性を大幅に改善することができる。具体的には、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを10重量%添加した場合のシャルピー衝撃強度が20kJ/m、20重量%添加した場合のシャルピー衝撃強度が40kJ/mを超える射出成形品を得ることができる。
一般に、光学純度の高いポリ乳酸を使用すると、結晶化速度が大きくなり、結晶化度が上昇するため、耐熱性(熱変形温度:HDT)が向上することは予想し得るが、ポリ乳酸の光学純度が成形品の耐衝撃性に関わることは従来知られていない。実際に、光学純度が異なるポリ乳酸の衝撃試験値は大きく変わらず、むしろ、光学純度が高く、結晶化が進行することで、耐衝撃性が低下する例が報告されている。そのような中、本発明は、高光学純度のポリ乳酸系樹脂と、所定のポリエステル系熱可塑性エラストマーとを組み合わせることで耐衝撃性が顕著に向上し得ることを見出したものであり、産業上極めて有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、光学純度が99.0%以上であるポリ乳酸系樹脂と、曲げ弾性率が50MPa以下であるポリエステル系熱可塑性エラストマーとを含むことを特徴とする。
使用可能なポリ乳酸系樹脂としては、例えば、ポリ乳酸ホモポリマー、ポリ乳酸コポリマー、ポリ乳酸ホモポリマーとポリ乳酸コポリマーとのブレンド物等が挙げられる。ポリ乳酸ホモポリマーの場合には、光学純度が99.0%以上であることを条件として、L−乳酸またはD−乳酸由来のいずれのポリ乳酸も用いることができる。すなわち、L−乳酸単位またはD−乳酸単位がポリ乳酸を構成する全構造単位に対して99.0モル%の範囲内であることが必要である。光学純度が99.0%未満であると、ポリ乳酸系樹脂が十分に結晶化せず、耐衝撃性の効果が得られないため不適である。本発明では、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとポリ乳酸との界面で結晶が形成され、界面の結合力が高まるために衝撃強度が向上すると考えられる。このようなポリ乳酸の例として、トヨタ自動車(株)製のU’z S09(光学純度99.7%)が挙げられる。
上記のポリ乳酸ホモポリマーは、既知の任意の重合方法により得ることができる。具体的には、乳酸の無水環状二量体であるラクチドを開環重合する方法(ラクチド法)や、乳酸を直接縮合重合する方法等が挙げられる。例えば、開環重合法による場合は、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等と共に混合し、触媒を用いて重合させることによって得ることができる。ここでラクチドとしては、L−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチドが適用可能である。また、乳酸の直接縮合重合による場合は、L−乳酸もしくはD−乳酸を直接脱水縮重合することにより目的のポリマーを得ることができる。重合に用いる乳酸は、入手が容易であるため植物から誘導されるものが好ましく、あるいは微生物により生成されるものを使用することも可能である。また、L−またはD−乳酸メチル、L−またはD−乳酸エチル等の乳酸誘導体を原料にして製造しても良い。
また、ポリ乳酸コポリマーは、乳酸モノマー又はラクチドと、共重合可能な他の成分とが共重合されたものである。なお、ポリ乳酸コポリマーを用いる場合、「光学純度が99.0%以上」とは、コポリマー中のポリ乳酸部分において、L−乳酸またはD−乳酸由来の構造単位が99.0モル%以上を占めることを意味する。乳酸残基以外の他の構造単位の割合は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定することができる。一般的には、全構造単位中、他の構造単位が10モル%以下、特に5モル%以下であることが好ましい。このような他の構造単位としては、2個以上のエステル結合形成性の官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等、及びこれら種々の構成成分よりなる各種ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等を挙げることができる。
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
多価アルコールとしては、ビスフェノールにエチレンオキサイドを付加反応させたもの等の芳香族多価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエーテルグリコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシブチルカルボン酸等を挙げることができる。
ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−又はγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
上記ポリ乳酸ホモポリマーもしくはコポリマーの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ分析によるポリスチレン換算値の重量平均分子量(Mw)として、一般に50,000〜500,000程度、好ましくは100,000〜250,000程度であるが、これに限定されるものではない。分子量が小さ過ぎると、成形品の強度が低下したり、加水分解性の増大などに伴って安定性が低下する等、実用上必要な物性が得られにくく、逆に分子量が大き過ぎると、成形性が悪化する傾向があるため、これらを考慮して適宜設定される。
以上のようなポリ乳酸系樹脂に加えて、本発明の組成物は、曲げ弾性率が50MPa以下であるポリエステル系熱可塑性エラストマーを含有することを特徴とする。曲げ弾性率が50MPaを超えると、得られる成形品が十分な衝撃吸収機能を果たさないため不適である。ここで曲げ弾性率とは、ASTM D790に準拠した3点曲げ法によって得られる値をいう。使用するテストピースの仕様、試験条件は以下の通りである。
・試験片形状:長さ×幅×厚さ=127×12.7×6.4mm
・試験速度:2.5mm/min
・初期の最も傾斜の大きい傾きから計算された接線弾性率を使用する。
本発明においては、上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーの中でも、特に、芳香族ポリエステルのハードセグメント及び脂肪族ポリエステルのソフトセグメントを有するブロック共重合体が好ましく用いられる。
ハードセグメントである芳香族ポリエステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、4,4’−スルホニルジ安息香酸等の芳香族ジカルボン酸残基と、炭素数2〜12、好ましくは4〜10のジオール、具体的にはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2,2−ジメチルトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコールなどのジオール残基とから構成されるポリエステル、あるいはこれら2種以上のジカルボン酸あるいは2種以上のジオールを用いたコポリエステル、あるいはp−オキシ安息香酸、p−(β−ヒドロキシエトキシ)安息香酸等のオキシ酸から誘導されるポリエステル、1,2−ビス(4,4’−ジカルボキシメチルフェノキシ)エタン、ジ(4−カルボキシフェノキシ)エタンなどの芳香族エーテルジカルボン酸の残基と上述のジオール残基とから構成されるポリエーテルエステル、さらに上述のジカルボン酸、オキシ酸、ジオールを組み合わせたコポリエステル等が挙げられる。このような芳香族ポリエステルは、融点が150℃以上であり、ブロック共重合体中の芳香族ポリエステル単位の分子量(Mw)は特に限定するものではないが、例えば200〜8000、特に400〜6000であることが好ましい。特に好適に用いられる芳香族ポリエステルとしては、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
また、ソフトセグメントである脂肪族ポリエステルとしては、融点ないし軟化点が80℃以下であり、実質的に非晶状態を示すものが好ましく用いられる。ブロック共重合体中の脂肪族ポリエステル単位の分子量(Mw)は400〜6000程度、好ましくは600〜5000程度が適当であるがこれに限定されるものではない。脂肪族ポリエステルの例として、炭素数9〜12の脂肪族又は脂環族ジカルボン酸と、炭素数2〜10の脂肪族又は脂環族ジオールとのポリエステル又はコポリエステル、炭素数4〜10の脂肪族ラクトンのポリエステル又はコポリエステル、あるいは、脂肪族又は脂環族ジカルボン酸、脂肪族又は脂環族ジオール及び脂肪族ラクトンのコポリエステル等が挙げられる。具体的には、ポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンセバケート、ポチネオペンチルセバケート、ポリテトラメチレンドデカネート、ポリテトラメチレンアゼレート、ポリヘキサメチレンアゼレート、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ−メチル化ε−カプロラクトン、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリ−γ−ブチロラクトン、ポリ−δ−バレロラクトン、ポリエナントラクトン等を例示することができる。特に好適に用いられる脂肪族ポリエステルとしては、ポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリ−ε−カプロラクトン等が挙げられる。
ブロック共重合体における、芳香族ポリエステル(A)と、脂肪族ポリエステル(B)との比は、耐衝撃性の観点から、重量比で、A:B=5:90〜10:85の範囲であることが好ましく、15:80〜20:70の範囲であることがより好ましい。芳香族ポリエステルの比率が少な過ぎると、結晶性が低下してしまい、得られる成形品の耐熱性が低下する傾向にある。一方、脂肪族ポリエステルの比率が少な過ぎると、得られる成形品の剛性が低下する傾向にある。また、上記ブロック共重合体等のポリエステル系熱可塑性エラストマーの分子量(Mw)は、800〜12000、特に1000〜10000であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、通常の重縮合法によって製造することができる。例えば、芳香族ジカルボン酸又はそのジメチルエステルと、脂肪族ジカルボン酸と、低分子量の脂肪族ジオールとを、触媒の存在下に150〜260℃程度に加熱してエステル化反応又はエステル交換反応を行い、次いで真空下に過剰の低分子量ジオールを除去しつつ重縮合反応を行うことによりブロック共重合体を得る方法、あらかじめ調製した芳香族ポリエステルプレポリマー及び脂肪族ポリエステルプレポリマーに、それらのプレポリマー末端基と反応する2官能性の鎖延長剤を混合して反応させた後、高真空下で揮発成分を除去することによりブロック共重合体を得る方法等を挙げることができる。
なお、上記のブロック共重合体には、必要に応じて、芳香族ポリエステル及び脂肪族ポリエステル以外に、これらと共重合可能な化合物が含有されていても良い。このような共重合可能な化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI、ジフェニルエーテルジイソシアネート、オルソトリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリイソシアネートフェニルチオホスフェート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、メタキシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソフロピリデンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート基を有する化合物や、メチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、エポキシ化ポリブタジエン等のエポキシ化合物等が挙げられる。これらの化合物は、例えば、芳香族ポリエステルと、脂肪族ポリエステルとを反応させる際に、反応容器に仕込み、これらと共重合させれば良い。また、本発明におけるポリエステル系熱可塑性エラストマー中の、上記共重合可能な化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、80重量%以下とすることが好ましい。
本発明の樹脂組成物において、上記のポリエステル系熱可塑性エラストマーとポリ乳酸系樹脂との割合は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが少な過ぎると成形品の耐衝撃性が得られず、また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが多過ぎると弾性率が低下し、流動性も低下するので、これらのバランスを考慮して適宜設定される。具体的には、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの量が、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとポリ乳酸系樹脂の合計量に対して5〜30重量%、特に10〜20重量%とすることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じ、成形性の改善等を目的として、上記ポリ乳酸系樹脂及びポリエステル系熱可塑性エラストマーに加えて、他の樹脂をブレンドしてもよい。ブレンドする樹脂としては、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂等を挙げることができる。このような他の樹脂の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設定することができ、具体的には樹脂組成物中80重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
さらに、本発明の樹脂組成物には、結晶化速度を向上させ、成形品の耐熱性を改善すること等を目的として、造核剤を含有させることが好ましい。造核剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができ、無機系結晶核剤及び有機系結晶核剤のいずれも適用可能である。無機系結晶核剤の具体例としては、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、合成マイカ、硫化カルシウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、フェニルホスホネートの金属塩、ガラスフレーク、金属箔等を挙げることができる。これらの無機系結晶核剤は、組成物中での分散性を高めるために、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等の表面処理剤で処理されていてもよい。
有機系結晶核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレート等の有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウム等の有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)等のカルボン酸アミド、ベンジリデンソルビトール及びその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート等のリン化合物金属塩、2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、並びに、トリメシン酸トリス(シクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリス(3−メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリス(4−メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリス(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)等のトリメシン酸トリアミド化合物等を挙げることができる。
樹脂組成物中の造核剤の配合量は、造核剤の種類にもよるが、例えば0.1〜10重量%、特に0.5〜3重量%とすることが好ましい。
上記のポリ乳酸系樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及び造核剤等に加えて、本発明における樹脂組成物には、必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。添加剤の例としては、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、離型剤、可塑剤、香料、抗菌剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、充填剤等が挙げられる。これら添加剤の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定することができ、具体的には造核剤以外の添加剤の合計が、樹脂組成物全体に対して60重量%以下、特に0.1〜30重量%となるように設定することが好ましい。また、本発明における樹脂組成物には、各種フィラーを配合することもできる。各種フィラーの量は、樹脂組成物全体に対して60重量%以下、特に40重量%となるように設定することが好ましい。
上記各成分を混練することにより、本発明の樹脂組成物を得ることができる。各成分の混錬方法としては特に制限なく、従来公知の方法により混練することができる。例えば、V型ブレンダー、ヘルシェルミキサー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等に各成分を仕込んで混練するドライブレンド法、さらにドライブレンドしたものを1軸または2軸押出機、ニーダー、ロール等で溶融混練し、冷却して例えば球形、円柱形もしくは角柱形等にペレット化する方法、あるいは、各成分を溶媒に溶かし、混合した後に溶媒を除去する溶液ブレンド法等により行うことができる。混練する際の温度は、190〜250℃、好ましくは200〜230℃とする。
混練により得られた樹脂組成物は、公知の射出成形法を用いて種々の形状の成形品に容易に成形することができる。ここで射出成形には、狭義の射出成形の他、射出ブロー成形、射出押出ブロー成形、射出圧縮成形等も包含される。射出成形におけるシリンダー温度は210〜240℃、好ましくは225〜235℃、シリンダー内の樹脂組成物の滞留時間は0.5〜2分、好ましくは1.0〜1.5分とする。これにより、従来にない優れた耐衝撃性を有する成形品を得ることができる。また、得られる成形品は高強度で耐熱性にも優れたものとなる。
金型温度は40〜150℃、好ましくは80〜130℃とする。金型内における成形品の冷却時間は、ポリ乳酸系樹脂の種類や金型温度等によっても異なり、特に限定されるものではないが、一般的には10〜600秒、好ましくは20〜120秒程度である。
成形品は、必要に応じて、射出成形後にアニール処理を施すことができる。アニール処理により、ポリ乳酸の微結晶化が促進され、耐熱性等を向上させることができる。その場合のアニーリング条件は、一例を挙げると、80〜120℃で30〜120分程度であり、オーブン等を用いて行うことができる。
以上のようなポリ乳酸系樹脂組成物から得られる射出成形品は、優れた耐衝撃性を有するため、これまで石油資源に由来していた樹脂成形品の代替品として種々の分野に応用可能である。具体的には、自動車用部材(インパネやコンソール等の内装部品など)、家電用部材(パソコン、ステレオ等の筐体)、歯車、一般雑貨、農業資材、建築資材、土木資材、食器類、玩具類等の用途に好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
(実施例1〜2、比較例1〜4)
試料として、以下のものを用いた。
ポリ乳酸系樹脂:U’z S09(トヨタ自動車(株)製、光学純度99.7%)
ポリ乳酸系樹脂:レイシアH−100(三井化学(株)製、光学純度98.0%)
ポリエステル系熱可塑性エラストマー:ハイトレル3046(東レ・デュポン(株)製、曲げ弾性率23.5MPa)
ポリ乳酸系樹脂用造核剤:
A.12−ヒドロキシステアリルビスアミド(WX−1、川研ファインケミカル(株)製)
B.タルク(マイクロエースSG−95、日本タルク(株)製)
上記のポリ乳酸系樹脂(U’z S09、又はレイシアH−100)100〜80重量%と、ポリエステル系熱可塑性エラストマー0〜20重量%と、造核剤(A及びBを1phrずつ)とをドライブレンドにより混合した。続いて、混合した材料(ポリ乳酸系樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、造核剤)を2軸混練機で混練した。混練条件は、混練温度210℃、スクリュー回転数100〜200rpm、材料供給量5kg/hである。次に、混練物を射出成形し、成形品を得た。射出成形条件は、樹脂温度230℃、シリンダー内の樹脂滞留時間1分、金型温度100℃、冷却時間120秒とした。
得られた成形品について、耐衝撃性を評価するため、シャルピー衝撃試験(JIS K7111、ノッチ入り)を行った。さらに、荷重たわみ温度(HDT)測定(JIS K7191、低荷重0.45MPa、昇温温度2℃/分)を行い、成形品の耐熱性を調べた。その結果を表1及び図1に示す。
Figure 2010126643
表1及び図1に示すように、光学純度99.7%のポリ乳酸系樹脂に対し、曲げ弾性率が23.5MPaのポリエステル系熱可塑性エラストマーを混合した場合に、成形品の耐衝撃性が大幅に向上することが明らかとなった。
(比較例5〜6)
ポリ乳酸系樹脂として上述のレイシアH−100(光学純度98.0%)を用い、これにポリエステル系熱可塑性エラストマーとしてペルプレン(東洋紡績(株)製)、曲げ弾性率125MPa)10ないし20重量%混合した以外は、上記実施例1と同様にして成形品を製造し、シャルピー衝撃試験を行った。その結果、衝撃強度は、それぞれ2.35kJ/m(10重量%)及び2.68kJ/m(20重量%)であった。
実施例1〜2及び比較例1〜4についてのシャルピー衝撃試験及び荷重たわみ温度測定の結果を示すグラフである。

Claims (4)

  1. ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含むポリ乳酸系樹脂組成物であって、ポリ乳酸系樹脂の光学純度が99.0%以上であり、かつポリエステル系熱可塑性エラストマーの曲げ弾性率が50MPa以下であるポリ乳酸系樹脂組成物。
  2. ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、芳香族ポリエステルのハードセグメント及び脂肪族ポリエステルのソフトセグメントを有するブロック共重合体である請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  3. ポリエステル系熱可塑性エラストマーの量が、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとポリ乳酸系樹脂の合計量に対して10〜20重量%である請求項1又は2に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物から得られる射出成形品。
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