JP2006228594A - アルカリ蓄電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ビッカース硬度が120Hv以下の引張応力に対する破断耐性が大きい極板芯体を用いても、電池出力の低下や内部短絡が生じにくいアルカリ蓄電池を提供する。
【解決手段】 本発明のアルカリ蓄電池は、極板芯体11は活物質ペーストが塗布された活物質塗布部11aと、活物質ペーストが塗布されない活物質非塗布部11bとを有するとともに、活物質塗布部11aの極板芯体11のビッカース硬度は120Hv以下で、活物質非塗布部11bの極板芯体11のビッカース硬度は200Hv以上であるようにしている。活物質塗布部11aの極板芯体11のビッカース硬度が120Hv以下であると、引張応力に対する破断耐性が大きくなる。活物質非塗布部11bの極板芯体11のビッカース硬度が200Hv以上の高硬度にすると、切断時の剪断変形や集電部品加圧溶接時の座屈変形が抑制されるようになる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、パンチングメタルなどの金属シートからなる極板芯体に水素吸蔵合金粉末を含有する活物質ペーストが塗布された負極を備えたアルカリ蓄電池に関する。
近年、二次電池(蓄電池)の用途が拡大して、携帯電話、ノートパソコン、電動工具、電動自転車、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)など広範囲にわたって用いられるようになった。このうち、特に、電動工具、電動自転車、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)などの高出力が求められる機器の電源としては、ニッケル−水素蓄電池やニッケル−カドミウム蓄電池などのアルカリ蓄電池が用いられている。このうち、より高エネルギー密度が要求される用途においてはニッケル−水素蓄電池が用いられるようになった。
ニッケル−水素蓄電池はパンチングメタルなどの金属シートからなる極板芯体に負極活物質となる水素吸蔵合金粉末を保持させた水素吸蔵合金負極と、導電性基材(例えば、ニッケル焼結基板)に正極活物質となる水酸化ニッケルを保持させたニッケル正極とを用いている。そして、これらの負極と正極との間にセパレータを介在させて電極群を構成し、この電極群をアルカリ電解液とともに電池容器(外装缶)内に収納された構造を有する。この種のニッケル−水素蓄電池に用いられる水素吸蔵合金負極は以下のようにして製造されるのが一般的である。
即ち、負極活物質となる水素吸蔵合金粉末に結着剤と水を混合して活物質ペーストを調製し、得られた活物質ペーストをパンチングメタルなどの金属シートからなる極板芯体の両面に塗付して、極板芯体の両面にペースト層を形成する。この後、乾燥炉内で乾燥してペースト層中の水分を蒸発させ、所定の厚みになるように圧延成形を行なった後、所定の形状に切断することにより水素吸蔵合金負極を作製するようにしている。
ところで、近年、さらなる高容量化の要望に応えるため、この種の水素吸蔵合金負極をより一層高密度化する(水素吸蔵合金粉末を極板芯体の両面に高密度に充填する)試みがなされるようになった。このため、ペースト層が形成された極板芯体は圧延成形時に高い押圧力で処理されるようになった。ところが、ペースト層が形成された極板芯体を高い押圧力で圧延成形すると、極板芯体は塑性変形されて大きな加工硬度を生じるようになって、極板芯体の柔軟性が低下するようになる。
このため、このように柔軟性が低下した水素吸蔵合金負極をセパレータを挟んでニッケル正極とともに渦巻状に捲回して電極群を作製することが困難になるという問題を生じた。また、水素吸蔵合金粉末が高密度に充填された水素吸蔵合金負極を用いる場合、得られた水素吸蔵合金負極を用いて電極群を作製する工程や、この電極群を電池容器内に収納する工程において、水素吸蔵合金を含むペースト層が剥離する恐れが生じた。このため、所定量の水素吸蔵合金量を有する水素吸蔵合金負極の作製が困難であるという問題も生じた。
そこで、特許文献1(特開平10−188994号公報)や特許文献2(特開2000−228201号公報)において、水素吸蔵合金粉末が高密度に充填された水素吸蔵合金負極の柔軟性を改善して、より良好な捲回特性を有し、かつ極板芯体と水素吸蔵合金を含むペースト層との圧着性(密着性)を高めて、ペースト層の剥離を抑制した水素吸蔵合金負極を備えたニッケル−水素蓄電池が提案されるようになった。
ここで、特許文献1にて提案されたニッケル−水素蓄電池においては、負極芯材(極板芯体)として総厚みが20〜50μmのNiめっきを施した穿孔鋼板(パンチングメタル)を用い、この極板芯体を500〜700℃で一定時間熱処理している。これにより、ビッカース硬度(Hv)が70〜130Hvになるようにして、一定以上の引張強度と展性をもたせて、電極容量に寄与しない部分の体積を削減するようにしている。この結果、この種の電池の高エネルギー密度化を達成することが可能となるというものである。
また、特許文献2にて提案されたニッケル−水素蓄電池においては、水素吸蔵合金粉末および結着剤を含むペーストをパンチングメタルの両面に塗布し、乾燥して、さらに圧延することにより作製されたぺースト式負極を備えている。そして、この得られた負極と正極をそれらの間にセパレータを介在して渦巻状に捲回した電極群を有している。この場合、パンチングメタルは、穴あき芯材シートに防錆皮膜を被覆した構造を有するとともに、芯材シートのビッカース硬度が60〜100Hvで、防錆皮膜のビッカース硬度が80〜120Hvで芯材シートのそれより高くしている。これにより、ぺースト式負極の柔軟性が改善されて、良好な巻回特性を有し、芯材シートとぺースト層との密着性が向上してぺースト層の剥離が抑制できるようになるというものである。
特開平10−188994号公報 特開2000−228201号公報
上述した特許文献1,2にて提案されるように、極板芯体のビッカース硬度を60Hv〜130Hv程度に低硬度化すると、活物質(水素吸蔵合金粉末)の高密度充填化によるエネルギー密度向上や、活物質粒子が極板芯体に食い込むアンカー効果による導電性の向上や、引張応力に対する破断耐性が得られるようになる。
しかしながら、伸展柔軟性が高いが故に、逆に、加工処理を行う際に、変形が大きくなる。このため、活物質の非塗布部位を切断して短冊状の極板シートとする際に、切断時に切断ブレードから加わる剪断力に対する変形が大きくなるという問題を生じて、ショートを招く切断バリ(例えば、図3の符号14,15を参照のこと)が切断面に生じるという問題が生じた。
また、大電流の用途に適用される極板上部(極板下部)の活物質の非塗布部位と集電部品(集電体)とを加圧通電溶接するタイプの場合、高い伸展柔軟性に起因して、加圧時に集電部品と接する部位に座屈変形(例えば、図4のx部を参照のこと)が生じるようになる。このため、活物質の非塗布部位と集電部品との間の接触性が低下して、充分な導電性を有する溶接点が得られにくくなって、電池出力が低下するという問題を生じた。あるいは、溶接時に爆飛が発生して溶接ちりが電極群内に混入するようになって、内部短絡を招来するようになるという問題も生じるようになった。
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するためになされたものであって、ビッカース硬度が120Hv以下の引張応力に対する破断耐性が大きい極板芯体を用いても、切断バリが切断面に生じにくくかつ加圧時に集電部品と接する部位に座屈変形が生じないようにして、電池出力の低下や内部短絡が生じにくいアルカリ蓄電池を提供することを目的とする。
本発明のアルカリ蓄電池は、金属シートからなる極板芯体に水素吸蔵合金粉末を含有する活物質ペーストが塗布された負極を備えている。そして、上記目的を達成するため、極板芯体は活物質ペーストが塗布された活物質塗布部と、活物質ペーストが塗布されない活物質非塗布部とを有するとともに、活物質塗布部の極板芯体のビッカース硬度(Hv)は120Hv以下で、活物質非塗布部の極板芯体のビッカース硬度(Hv)は200Hv以上になるようになされている。
このように、活物質塗布部の極板芯体のビッカース硬度(Hv)が120Hv以下であると、引張応力に対する破断耐性が大きくなる。これにより、活物質を高密度に充填しても柔軟性が改善されて、良好な巻回特性が得られるようになるとともに、極板芯体と活物質ぺースト層との密着性も向上するため、電池出力も向上するようになる。この場合、活物質塗布部の芯体硬度が低すぎると、極板を所定厚みに圧延成形する際の加圧により芯体が破断しやすくなることを考慮すると、活物質塗布部の極板芯体のビッカース硬度(Hv)の下限値は60Hvとするのが望ましい。
また、活物質非塗布部の極板芯体のビッカース硬度(Hv)を200Hv以上の高硬度にすると、切断時の剪断変形や集電部品(集電体)の加圧溶接時の座屈変形が抑制されるようになる。この結果、切断性、溶接性が向上するようになり、バリの発生や溶接ちりによるショートの発生や溶接不良による電池出力の低下も防止できるようになる。この場合、活物質非塗布部の芯体硬度が高すぎると、渦巻状に捲回する際に電極体の中央部と端部の緊縛度差が大きくなり、捲回ズレが生じやすくなることを考慮すると、物質非塗布部の極板芯体のビッカース硬度(Hv)の上限値は300Hvとするのが望ましい。
そして、活物質塗布部の極板芯体のビッカース硬度(Hv)が120Hvよりも高くなると、活物質と極板芯体との充分な密着性が得られなくなる。このため、活物質の高密度充填が達成できなくなって、エネルギー密度が低下するという問題を生じる。一方、活物質非塗布部の極板芯体のビッカース硬度(Hv)が200Hv未満の場合は、充分な切断性や溶接性が得られなくなる。このため、活物質塗布部の極板芯体のビッカース硬度(Hv)は120Hv以下で、活物質非塗布部の極板芯体のビッカース硬度(Hv)は200Hv以上であるのが望ましいということができる。
なお、活物質非塗布部の極板芯体のビッカース硬度(Hv)を200Hv以上にする方法としては、アニール処理などで全体のビッカース硬度(Hv)を120Hv未満に軟化させた極板芯体を部分的にロール圧延などにより加工硬化させて、高硬度部位を形成するようにすればよい。
以下に、本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。なお、図1は本発明の水素吸蔵合金負極を模式的に示す図であり、図1(a)は活物質塗布前の極板芯体を模式的に示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)の極板芯体に活物質を塗布した状態を模式的に示す平面図である。図2は、図1の水素吸蔵合金負極とニッケル正極とセパレータからなる渦巻状電極群を外装缶内に収納してニッケル−水素蓄電池とした状態を模式的に示す断面図である。図3は水素吸蔵合金負極の製造時の切断工程において切断バリが生じた状態を模式的に示す平面図である。図4は水素吸蔵合金負極の極板芯体に集電部品を加圧した際に座屈変形が生じた状態を模式的に示す断面図である。
1.水素吸蔵合金負極
(1)極板芯体
穿孔部(後に、活物質塗布部となる)11aと非穿孔部(後に、活物質非塗布部となる)11bとを有する厚みが90μmのニッケルメッキを施した鋼板からなるパンチングメタル(ビッカース硬度は220Hv)11を用意する。ついで、これを所定の温度(例えば、500℃〜700℃)で熱処理(アニール処理)した。
この場合、パンチングメタル11の全体のビッカース硬度が110Hvになるようにアニール処理されものを基板αとした。また、パンチングメタル11の全体のビッカース硬度が120Hvになるようにアニール処理されものを基板βと、パンチングメタル11の全体のビッカース硬度が150Hvになるようにアニール処理されものを基板γと、パンチングメタル11の全体のビッカース硬度が180Hvになるようにアニール処理されものを基板δと、パンチングメタル11の全体のビッカース硬度が210Hvになるようにアニール処理されものを基板εとした。
次いで、上述のようにアニール処理されたパンチングメタル11(基板α〜ε)を用いて、非穿孔部(後に、活物質非塗布部となる)11bのみをロール圧延することにより、これらのパンチングメタル11(基板α〜ε)の非穿孔部11bを高硬度化した。この場合、基板αを用いて、非穿孔部11bのビッカース硬度が210Hvになるように高硬度化されたものを極板芯体11(a1)とした。同様に、非穿孔部11bのビッカース硬度が200Hvになるように高硬度化されたものを極板芯体11(b1)とし、非穿孔部11bのビッカース硬度が180Hvになるように高硬度化されたものを極板芯体11(u1)とし、非穿孔部11bのビッカース硬度が150Hvになるように高硬度化されたものを極板芯体11(v1)とした。なお、高硬度化されなかったものを極板芯体11(w1)とした。
また、基板βを用いて非穿孔部11bのビッカース硬度が210Hvになるように高硬度化されたものを極板芯体11(c1)とした。また、基板γを用いて非穿孔部11bのビッカース硬度が210Hvになるように高硬度化されたものを極板芯体11(x1)とし、基板δを用いて非穿孔部11bのビッカース硬度が210Hvになるように高硬度化されたものを極板芯体11(y1)とし、基板εを用いて非穿孔部11bのビッカース硬度が210Hvになるように高硬度化されたものを極板芯体11(z1)とした。
(2)水素吸蔵合金負極
一方、ミッシュメタル(Mm)、ニッケル(Ni:純度99.9%)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、およびマンガン(Mn)の各粉末を混合した後、この混合物をアルゴンガス雰囲気の高周波誘導炉で誘導加熱して合金溶湯とした。この合金溶湯を公知の方法で鋳型に流し込み、冷却して、組成式がMmNiaCobAlcMnd(但し、3.7≦a≦4.2,0.1≦b≦0.9,0.1≦c≦0.6,0.1≦d≦0.6)で表される水素吸蔵合金のインゴットを作製した。なお、この例においては、MmNi4.0Co0.6Al0.5Mn0.2とした。
この水素吸蔵合金インゴットを機械的粉砕法により、所定の平均粒子径(例えば、25μm)になるまで粉砕して、水素吸蔵合金粉末とした。ついで、得られた水素吸蔵合金粉末に対して、結着剤としての0.6質量%のポリビニルピロリドン(PVP)と、0.5質量%のポリエチレンオキサイド(PEO)と、適量の水を混合して水素吸蔵合金ペーストを作製した。この水素吸蔵合金ペーストを上述のように作製した極板芯体11(a1〜c1,u1〜z1)の穿孔部11aの両面にそれぞれ塗布して活物質層12を形成した。この後、室温で乾燥させた後、所定の厚みに圧延し、所定の寸法(幅1.0mmの非穿孔部(活物質非塗布部)11bを有した幅が49.5mmで、長さが800mmになるように)に切断して水素吸蔵合金負極10(a〜c,u〜z)をそれぞれ作製した。
ここで、極板芯体11(a1)を用いたものを水素吸蔵合金負極10(a)とし、極板芯体11(b1)を用いたものを水素吸蔵合金負極10(b)とし、極板芯体11(c1)を用いたものを水素吸蔵合金負極10(c)とした。また、極板芯体11(u1)を用いたものを水素吸蔵合金負極10(u)とし、極板芯体11(v1)を用いたものを水素吸蔵合金負極10(v)とし、極板芯体11(w1)を用いたものを水素吸蔵合金負極10(w)とし、極板芯体11(x1)を用いたものを水素吸蔵合金負極10(x)とし、極板芯体11(y1)を用いたものを水素吸蔵合金負極10(y)とし、極板芯体11(z1)を用いたものを水素吸蔵合金負極10(z)とした。
2.焼結式ニッケル正極
多孔性ニッケル焼結基板21を硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸亜鉛の混合水溶液(含浸液)に浸漬して、多孔性ニッケル焼結基板21の細孔内に硝酸ニッケル、硝酸コバルトおよび硝酸亜鉛を保持させた。この後、この多孔性ニッケル焼結基板を高温アルカリ水溶液(25質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液)中に浸漬して、硝酸ニッケル、硝酸コバルトおよび硝酸亜鉛をそれぞれ水酸化ニッケル、水酸化コバルトおよび水酸化亜鉛に転換させた。
ついで、充分に水洗してアルカリ溶液を除去した後、乾燥を行って、多孔性ニッケル焼結基板21の細孔内に水酸化ニッケルを主成分とするニッケル活物質22を充填した。このような活物質充填操作を所定回数(例えば6回)繰り返して、多孔性焼結基板の細孔内に水酸化ニッケルを主体とするニッケル活物質の充填密度が2.5g/cm3になるように充填した。この後、室温で乾燥させた後、所定の寸法(幅1.0mmの活物質非充填部21bを有した幅が49.5mmで、長さが730mmになるように)に切断して焼結式ニッケル正極20を作製した。なお、得られた焼結式ニッケル正極20の端部には活物質非充填部21bが形成されるようにした。
3.ニッケル−水素蓄電池
ついで、上述のようにして作製した水素吸蔵合金負極10(a〜c,u〜z)と焼結式ニッケル正極20とを用意した。この後、幅が51mmのポリプロピレン製不織布からなるセパレータ30を間にして、この両側に水素吸蔵合金負極10(a〜c,u〜z)と焼結式ニッケル正極20が配置されるようにした。ついで、これらを渦巻状に巻回して渦巻状電極群をそれぞれ作製した。この後、渦巻状電極群の下部に負極集電体13を配置するとともに、その上部に正極集電体23を配置した。ついで、水素吸蔵合金負極10(a〜c,u〜z)の非穿孔部(活物質非塗布部)11bと負極集電体13とを圧接するとともに、焼結式ニッケル正極20の活物質非充填部21bと正極集電体23とを圧接した。
このような状態で、水素吸蔵合金負極10(a〜c,u〜z)の非穿孔部(活物質非塗布部)11bと負極集電体13との圧接部を通電溶接するとともに、焼結式ニッケル正極20の活物質非充填部21bと正極集電体23との圧接部を通電溶接した。この後、これらを外装缶50内に挿入した後、負極集電体13と外装缶50の底部とを溶接した。また、正極蓋41と正極キャップ42とからなる封口体40を用意し、正極集電体23から延出する正極リード24を封口体40に設けられた正極蓋41の底部に溶接した。なお、正極蓋41と正極キャップ42からなる封口体40内には、正極蓋41に設けられた開口43を封止するための弾性弁体44と、これに押圧力を付与するスプリング45が配設されていて、電池内にガスが発生して所定の圧力に達すると、ガスが電池外に排出されるようになされている。
この後、外装缶50の上部外周面に溝入れ加工を施して環状溝部51を形成した。この後、金属製外装缶50内に電解液(例えば、30質量%の水酸化カリウム(KOH)水溶液)を注液し、封口体40の外周部に装着された封口ガスケット52を外装缶50の環状溝部51の上に載置するとともに、外装缶50の先端部53を封口体40側にカシメて封口して、ニッケル−水素蓄電池A〜C,U〜Zをそれぞれ組み立てた。ここで、水素吸蔵合金負極10(a)を用いたものを電池Aとし、水素吸蔵合金負極10(b)を用いたものを電池Bとし、水素吸蔵合金負極10(c)を用いたものを電池Cとした。また、水素吸蔵合金負極10(u)を用いたものを電池Uとし、水素吸蔵合金負極10(v)を用いたものを電池Vとし、水素吸蔵合金負極10(w)を用いたものを電池Wとし、水素吸蔵合金負極10(x)を用いたものを電池Xとし、水素吸蔵合金負極10(y)を用いたものを電池Yとし、水素吸蔵合金負極10(z)を用いたものを電池Zとした。
4.試験
この後、これらの各電池A〜C,U〜Zに120%の充電を行った後、70℃の高温を24時間維持した後、電池電圧が0.3Vになるまで放電させるという充放電サイクルを4サイクル繰り返して、これらの各電池A〜C,U〜Zをそれぞれ活性化した。
ついで、上述のように活性化した各電池A〜C,U〜Zを、25℃の温度雰囲気で、6000mA(1It)の充電電流で電池容量の50%まで充電した。この後、40A放電→40A充電→80A放電→80A充電→120A放電→120A充電→160A放電→160A充電の順で、それぞれ10分間の休止を挟みながら10秒間通電した。
そして、10秒目の電池電圧を放電電流に対してプロットして最小二乗法にて直線近似し、直線の傾きを電池抵抗(mΩ)として出力特性の指標としてとして求めると、下記の表1および表2に示すような結果が得られた。なお、この出力特性において、電池抵抗(mΩ)が低いほど出力特性が高いことを表している。また、ショートの発生個数(個)については、各電池A〜C,U〜Zをそれぞれ50個ずつ用い、これらの内でショートが発生した個数を示している。
Figure 2006228594
上記表1の結果から明らかなように、活物質塗布部11aのビッカース硬度が110Hvの極板芯体11の場合においては、活物質非塗布部11bのビッカース硬度が上昇するに伴って、出力特性が向上するとともに、ショートの発生個数が低下する傾向にあり、特に、活物質非塗布部11bのビッカース硬度が200Hv以上になると、出力特性がさらに向上し、ショートの発生個数が0になっていることが分かる。
ここで、出力特性が向上する理由としては、活物質非塗布部11bのビッカース硬度が高い極板芯体11においては、負極集電体13との圧接部に、図4に示すような座屈変形Xが生じにくいため、負極集電体13と活物質非塗布部11bとの溶接接合部の導通性が高くなったためと考えられる。
また、ショートの発生個数が減少した理由としては、活物質非塗布部11bのビッカース硬度が高い極板芯体11においては、図3に示すような切断バリ14,15が生じにくいために、この切断バリ14,15がセパレータ30を貫通してニッケル正極20と接触するのが抑制されたためと考えられる。さらに、図4に示すような座屈変形Xが生じにくいために、負極集電体13との溶接通電時の密着性が高まり、溶接ちりの発生が抑制されて、溶接ちりに起因するショートの発生が抑制されたためと考えられる。
Figure 2006228594
また、上記表2の結果から明らかなように、活物質非塗布部11bのビッカース硬度が210Hvの極板芯体11の場合においては、活物質塗布部11aのビッカース硬度が低下するに伴って出力特性が向上し、特に、活物質塗布部11aのビッカース硬度が120Hv以下になると、出力特性がさらに向上していることが分かる。また、ショートの発生個数については、活物質塗布部11aのビッカース硬度の低下にかかわらず変化がないことが分かる。
ここで、出力特性が向上する理由としては、活物質塗布部11aのビッカース硬度の低下することで、活物質粒子(水素吸蔵合金粉末)が活物質塗布部11aの芯体に食い込むアンカー効果により、活物質粒子(水素吸蔵合金粉末)と極板芯体11との間の導電性が向上したためと考えられる。一方、ショートの発生個数が減少した理由としては、活物質非塗布部11bのビッカース硬度が210Hvと高いために、図3に示すような切断バリ14,15が生じにくく、この切断バリ14,15がセパレータ30を貫通してニッケル正極20と接触するのが抑制されたためと考えられる。
上述したように、本発明においては、負極10の極板芯体11は活物質ペーストが塗布された活物質塗布部11aと、活物質ペーストが塗布されない活物質非塗布部11bとを有するとともに、活物質塗布部11aの極板芯体11のビッカース硬度(Hv)は120Hv以下で、活物質非塗布部11bの極板芯体11のビッカース硬度(Hv)は200Hv以上となされているので、引張応力に対する破断耐性が大きくなるとともに、切断時の剪断変形や集電部品加圧溶接時の座屈変形が抑制されるようになる。この結果、切断性、溶接性が向上するようになり、バリの発生や溶接ちりによるショートの発生や溶接不良による電池出力の低下を防止できるようになる。
本発明の水素吸蔵合金負極を模式的に示す図であり、図1(a)は活物質塗布前の極板芯体を模式的に示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)の極板芯体に活物質を塗布した状態を模式的に示す平面図である。 図1の水素吸蔵合金負極とニッケル正極とセパレータからなる渦巻状電極を外装缶内に収納してニッケル−水素蓄電池とした状態を模式的に示す断面図である。 水素吸蔵合金負極の製造時の切断工程において切断バリが生じた状態を模式的に示す平面図である。 水素吸蔵合金負極の極板芯体に集電部品を加圧した際に座屈変形が生じた状態を模式的に示す断面図である。
符号の説明
10…水素吸蔵合金負極、11…極板芯体、11a…穿孔部(活物質塗布部)、11b…非穿孔部(活物質非塗布部)、12…活物質層、13…負極集電体、20…ニッケル正極、21…多孔性ニッケル焼結基板、21b…活物質非充填部、22…正極活物質、23…正極集電体、24…正極リード、30…セパレータ、40…封口体、41…正極蓋、42…正極キャップ、43…開口、44…弾性弁体、45…スプリング、50…外装缶、51…環状溝部、52…封口ガスケット、53…先端部

Claims (2)

  1. 金属シートからなる極板芯体に水素吸蔵合金粉末を含有する活物質ペーストが塗布された負極を備えたアルカリ蓄電池であって、
    前記極板芯体は前記活物質ペーストが塗布された活物質塗布部と、前記活物質ペーストが塗布されない活物質非塗布部とを有するとともに、
    前記活物質塗布部の前記極板芯体のビッカース硬度(Hv)は120Hv以下で、前記活物質非塗布部の前記極板芯体のビッカース硬度(Hv)は200Hv以上であることを特徴とするアルカリ蓄電池。
  2. 前記活物質塗布部の前記極板芯体のビッカース硬度(Hv)は60Hv以上、120Hv以下であり、
    前記活物質非塗布部の前記極板芯体のビッカース硬度(Hv)は200Hv以上で、300Hv以下であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ蓄電池。
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