JP2006226051A - 傾斜地盤安定具及び傾斜地盤安定化工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】特に、山間部においては、集中豪雨などにより地表斜面が崩壊する土砂災害が毎年多く発生しており、この種の災害を防ぐため、傾斜地盤の支圧と地下水の排出とを同時に実施できる有効かつ簡便な器材を提供する。
【解決手段】筒状をなし、先端開口部が閉塞板2によって閉塞され、該閉塞板2に堀削刃3が固定されると共に、先端寄りの外周に一個又は複数個の螺旋翼4が固定され、周壁5には複数の透過6が形成され、頭部寄りの外周に雄ねじ12が形成されている鋼管製のアンカー体1と;前記アンカー体1の透孔6の孔径より小さい網目を有し、前記アンカー体1の内部空間に挿入されるメッシュ状筒体9と;中央に前記アンカー体1の頭部を挿通させる貫通孔11を有し、この貫通孔11の上面に前記アンカー体1の雄ねじ12に螺合するナット13を位置させた支圧盤10と;アンカー体1の頭部開口端を着脱自在に閉塞するキャップ14;とから傾斜地盤安定具。
【選択図】 図2

Description

この発明は土木工事用資材、詳しくは、崩壊の危険がある傾斜地盤を単に固定するだけではなく、地盤中の地下水を排出して地盤強度をより積極的に向上させることが出来る傾斜地盤安定具及びそれを用いた安定化工法に関するものである。
特に、山間部においては、集中豪雨などにより地表面の土砂が水分を含んで飽和状態となり、地表斜面が崩壊する土砂災害が毎年多く発生している。これら地表斜面の崩壊の約70%は地表面下2m前後で起きており、この崩壊土以深には安定した岩盤あるいは硬質土が存在していることは明らかである。又、地下水の上昇が地表面の崩壊要因の一つであることも従来より知られている。
特許第3033678号公報 なし
前記特許文献1には、掘削ドリルの先端にロックボルトを接続し、ロックボルトの先端に取付けられた掘削ビットにより、地表面の下層に位置した岩盤を掘削し、形成された掘削孔にグラウト材(セメントミルク)を充填し、グラウト材によってロックボルトと岩盤とを結合させてアンカー機能を持たせると共に、ロックボルトの頭部を地表上に突出させ、支圧盤に接続してロックボルトに緊張力を与え、支圧盤によって地盤を圧縮してこれを支持する傾斜面の安定化工法が開示されている。
この前記特許文献1に開示されている傾斜面安定化工法においては、岩盤を掘削し、掘削した穴にグラウト材(セメントミルク)を注入してロックボルトと岩盤とを固定する様にしているが、グラウト材の場合、硬化強度にバラツキが生じやすく、アンカーとしてのロックボルトの引張り強度を十分に確保できないばかりではなく、周辺の地下水汚染の原因となり、生活環境に悪影響を与えるおそれもあった。
又、岩盤を掘削した際には当然に掘削排土が生じるので、この掘削排土の処理に多大な手間と費用が必要であった。更には、アンカーは単に固定具としての機能しか持ち得なかったので、地盤中の地下水を積極的に排出することは出来ず、地下水をコントロールすることによる地盤強化はなし得なかった。
本発明者は、上述の通り、技術的に問題の多かった傾斜地盤の安定化を実現すべく鋭意研究を行った結果、傾斜地盤を安定的かつ確実に固定できると共に、地盤中の地下水を積極的に排出させることにより、地盤の強度をより一層高める事が出来る傾斜地盤安定具を開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
請求項1の発明は、筒状をなし、先端開口部が閉塞板2によって閉塞され、該閉塞板2に堀削刃3が固定されていると共に、先端寄りの外周には一個又は複数個の螺旋翼4が固定され、周壁5には複数の透過6が形成されており、頭部寄りの外周には雄ねじ12が形成されている鋼管製のアンカー体1と;前記アンカー体1の透孔6の孔径より小さい網目を有し、前記アンカー体1の内部空間に挿入されるメッシュ状筒体9と;中央に前記アンカー体1の頭部を挿通せしめる貫通孔11を有し、この貫通孔11の上面に前記アンカー体1の雄ねじ12に螺合するナット13が位置せしめられている支圧盤10と;アンカー体1の頭部開口端を着脱自在に閉塞するキャップ14;とから傾斜地盤安定具を構成した。
又、請求項2に係る発明は、筒状をなし、先端開口部が閉塞板2によって閉塞され、該閉塞板2に堀削刃3が固定されていると共に、先端寄りの外周には一個又は複数個の螺旋翼4が固定され、周壁5には複数の透過6が形成されており、頭部寄りの内周にはめねじ17が形成されている鋼管製のアンカー体1と;前記アンカー体1のめねじ17に螺合する雄ねじ19が外周に形成された延長用鋼管18と;前記アンカー体1の透孔6の孔径より小さい網目を有し、前記アンカー体1の内部空間に挿入されるメッシュ状筒体9と;中央に前記アンカー体1の頭部を挿通せしめる貫通孔11を有し、この貫通孔11の上面に前記延長用鋼管18の雄ねじ19に螺合するナット13が位置せしめられている支圧盤10と;アンカー体1の頭部開口端を着脱自在に閉塞するキャップ14;とから傾斜地盤安定具を構成した。
更に、請求項3に係る発明は、円柱状をなし、先端面には掘削刃3が取付けられていると共に、頭部側には截頭円錐形のテーパ状部32が形成されており、このテーパ状部32の端面中央からは同軸状に角柱状をなした接続係合用突起33が植設された掘削ビット31と;円筒状をなし、前記掘削ビット31のテーパ状部32の小径部分よりわずかに大きい内径を有し、先端側から軸芯方向に複数のスリット39が形成され、頭部寄りの外周には雄ねじ12が形成されている共に、周壁5には複数の透孔6が形成されている楔締用鋼管38と;前記楔締用鋼管38の透孔6の孔径より小さい網目を有し、前記アンカー体1の内部空間に挿入されるメッシュ状筒体9と;中央に前記アンカー体1の頭部を挿通せしめる貫通孔11を有し、この貫通孔11の上面に前記アンカー体1の雄ねじ12に螺合するナット13が位置せしめられている支圧盤10と;楔締用鋼管38の頭部開口端を着脱自在に閉塞するキャップ14;とから傾斜地盤安定具を構成した。
そして又、請求項4に係る発明は、円柱状をなし、先端面には掘削刃3が取付けられていると共に、頭部側には截頭円錐形のテーパ状部32が形成されており、このテーパ状部32の端面中央からは同軸状に角柱状をなした接続係合用突起33が植設された掘削ビット31と;円筒状をなし、前記掘削ビット31のテーパ状部32の小径部分よりわずかに大きい内径を有し、先端側から軸芯方向に複数のスリット39が形成され、頭部寄りの外周にはめねじ17が形成されている共に、周壁5には複数の透孔6が形成されている楔締用鋼管38と;前記楔締用鋼管38のめねじ17に螺合する雄ねじ19が外周に形成された延長用鋼管18と;
前記楔締用鋼管38の透孔6の孔径より小さい網目を有し、前記アンカー体1の内部空間に挿入されるメッシュ状筒体9と;中央に前記アンカー体1の頭部を挿通せしめる貫通孔11を有し、この貫通孔11の上面に前記アンカー体1の雄ねじ12に螺合するナット13が位置せしめられている支圧盤10と;楔締用鋼管38の頭部開口端を着脱自在に閉塞するキャップ14;とから傾斜地盤安定具を構成した。
アンカーとして作用する楔締用鋼管38又はアンカー体1は、岩盤40あるいは砂質土や粘性土などからなる支持地盤15に確実に固定され、十分な緊張力を支圧盤10に加えることが出来、傾斜地盤を確実かつ安定的に保持することが可能となる。又、この傾斜地盤安定具において用いられている鋼管を大径肉厚とした場合、鋼管は自立して地滑りの水平方向の動きにも十分抗することが出来る様になる。更に、グラウト材を用いて地盤に固定するのでない為、緊張力にバラツキが生じることがなく、面的な広がりを持った所望区域に均一な押圧力を加え、土砂崩壊を防ぐことが出来ると共に、地下水汚染のおそれもなくなり、環境保全上からも非常に有利である。
更に、アンカー体1及び楔締用鋼管38の周壁5には透孔6が設けられているので、地盤中の地下水はこの透孔6からアンカー体1及び楔締用鋼管38の内部に吸収され、地下水の滞溜及び水位上昇による地盤の強度低下が阻止され、傾斜地盤の固定がより一層強固となる。
支持地盤15や岩盤40に固定され、支圧機能を果たすアンカー体1又は楔締用鋼管38に透孔6を設け、透孔6を通してこれらの内部に地盤中の地下水を流入させる様にした点に本発明の最大の特徴が存在する。
図1はこの発明に係る傾斜地盤安定具の実施例1の正面図、図2は同じくその縦断面図である。
図中1は円筒状をなした鋼管製のアンカー体であり、円板状をなした閉塞板2によって先端開口部が閉塞されており、この閉塞板2には堀削刃3が固定されている。又、このアンカー体1の先端寄りの外周には螺旋翼4が固定されている。なお、この実施例1においては、螺旋翼4は一個だけ設けられているが、図3に示すものの様に、螺旋翼4を間隔をあけて複数個設けても良く、又、先端寄りに小径の螺旋翼4を、頭部寄りに大径の螺旋翼4を、という様に大きさの異なる螺旋翼4を複数個設けても良い。
又、このアンカー体1の周壁5には複数の透孔6があけられている。なお、この透孔6は、アンカー体1を地表7から地中に掘進させたとき、少なくとも地中の帯水層8に接触する箇所に設けられているが、アンカー体1の頭部から先端付近まで周壁5の全域にわたって設けても良い。
更に、このアンカー体1の頭部寄りの周壁5には、頭部開口端まで雄ねじ12が形成されている。又、9は前記透孔6の孔径より小さい網目を有する金属製あるいは合成樹脂製の円筒状をなしたメッシュ状筒体であり、アンカー体1の内側空間に内挿されている。
又、10は盤状をなした支圧盤であり、中央には前記アンカー体1の頭部側を挿通させる貫通孔11が形成されており、この貫通孔11の上面にはアンカー体1の雄ねじ12に螺合するナット13が位置せしめられている。なお、この実施例1においては、支圧盤10は円形の平面形状をなしているが、四角形などの多角形やヒトデ形など円形以外の平面形状のものを採用して良いことはもちろんである。更に、アンカー体1の頭部開口端にはキャップ14が着脱自在に嵌め込まれている。
この実施例1は上記の通りの構成を有するものであり、下記の要領により、傾斜地盤の固定に用いられる。即ち、アンカー体1の頭部に図示を省略した堀削ドリルを接続し、これによりアンカー体1を回転させ、螺旋翼4の螺旋前進力によってアンカー体1を地表7から地中にねじ込み、螺旋翼4が支持地盤15に達したなら堀削ドリルを分離し、地表7に突出しているアンカー体1の頭部に支圧盤10の貫通孔11を挿通させ、アンカー体1の雄ねじ12にナット13を螺合してこれを締め付け、アンカー体1に緊張力を付与すると共にアンカー体1の頭部開口部にキャップ14を嵌め込んで、設置を完了する。
このとき、アンカー体1の周壁5には透孔6が設けられていると共に、アンカー体1の内側空間にはメッシュ状筒体9が内挿されているので、支持地盤15の上部に地下水を含んだ帯水層8が存在している場合には、地下水はアンカー体1の透孔6及びメッシュ状筒体9を通ってアンカー体1の内部空間に流入し、これによって地下水の上昇は阻止され、地盤の安定化が図られる。
なお、通常は図6に示す場合の様に、地表7に対して斜め上方からアンカー体1を固定するが、排水機能を特に重視したい場合には、図17に示す様に、アンカー体1を略水平方向から固定する様にすれば良く、この場合にはアンカー体1内に流入した地下水はアンカー体1の頭部から外部へ自然排出されることになる。
又、排出機能と地盤の支圧機能を共に重視したい場合には、図18に示す様に、アンカー体1を略水平方向と斜め上方から交互に固定する様にすればよい。
なお、アンカー体1の内部には透孔6の孔径より小さい網目を有するメッシュ状筒体9が内挿されているので、このメッシュ状筒体9の濾過機能によってアンカー体1内への土砂の流入は阻止され、目詰りをおこすことはなく、長期間にわたってスムースに地下水の流入が行われる。又、アンカー体1の頭部開口端にはキャップ14が嵌め込まれているので、頭部開口端からの土砂の流入も阻止される。なお、アンカー体1内に流入した地下水はアンカー体1内にそのまま滞溜させても良いが、地下水をより一層減少させたい場合には、キャップ14をはずしてアンカー体1の頭部開口端からパイプを挿入し、ポンプでアンカー体1の内部に滞溜している水を積極的に吸い上げる様にしても良い。
この様に、この実施例1においては、アンカー体1の固定機能は地下水の吸収によって強化され、従来のものに比べ、はるかに強力に傾斜地盤の固定を実施することが出来る。
図4はこの発明に係る傾斜地盤安定具の実施例2の正面図、図5は同じくその縦断面図である。
この実施例2においては、アンカー体1の頭部寄りの内側周壁にはめねじ17が形成されており、このめねじ17に延長用鋼管18の外周壁に形成されている雄ねじ19を螺合させることにより、アンカー体1の頭部に延長用鋼管18を長さ調整自在に接続出来る様になっている。そして、この延長用鋼管18は支圧盤10の貫通孔11に挿通され、ナット13によって支圧盤10に固定される様になっている。なお、他の部分は上述の実施例1と同じであるので同一符号を付してその説明を省略する。
この実施例2も、上述の実施例1と同じ要領により地中に設置して傾斜地盤固定の用に供するものであるが、アンカー1は延長用鋼管18を介して支圧盤10に固定される様になっており、延長用鋼管18のねじ込み量を調整することによりアンカー体1の実質的長さを自由に変更することが出来るので、図6に示す様に硬質で安定した支持地盤15が不陸(ふりく)状態であっても、地表7へ突出する延長用鋼管18の頭部の長さをほぼ同一になる様にそろえることが出来、レベル調整の為にその頭部を削り揃える手間がなく、作業性が極めて良好である。又、この実施例においても、図17及び図18に示す様な固定方法を用いることが出来る。
なお、上述の実施例1及び2においては、メッシュ状筒体9は単層構造のものを用いたが、図7に示す様に、金属製あるいは合成樹脂製の濾過機能を有するメッシュ状外筒20内に金属製あるいは合成樹脂製の多孔管21を内装した二層構造のメッシュ状筒体9を用いても良く、この場合はメッシュ状筒体9の剛性を向上させることが出来る。
図8はこの発明に係る傾斜地盤安定具の実施例3の正面図、図9はその縦断面図である。
図中31は堀削ビットであり、堅牢な金属を素材とし、図10に詳記する様に円柱状をなし、その先端側端面には掘削刃3が取付けられていると共に、頭部側には截頭円錐形のテーパ状部32が一体的に形成されており、このテーパ状部32の端面中央からは同軸状部角柱状をなした接続係合用突起33が突設されている。
又、図10において、34は延長シャフトであり、前記掘削ビット31より若干小さい外径を有する円柱状をなしており、その先端側の端面には前記掘削ビット31の接続係合用突起33と係合する接続係合用凹穿部35が同軸状に形成されており、頭部側には掘削ドリル7に接続させる為の雄ねじ37が同軸状に突設されている。
図8及び図9において、38は楔締用鋼管であり、図11に詳記する様に、円筒状をなしており、その内径は前記掘削ビット31のテーパ状部32の小径部分よりわずかに大きく形成されていると共に、先端側からは長手方向即ち軸芯に沿って複数条のスリット39が形成されている。
又、その周壁5には複数の透孔6が形成されていると共に、頭部寄りの部分には雄ねじ12が形成されている。
又、図9において、9はこの楔締用鋼管38の内部空間に挿入されるメッシュ状筒体であり、このメッシュ状筒体9は前述の実施例1のものと全く同じである。他の部分は前述の実施例1のものと全く同じであり、同一符号を付してその説明を省略する。
この様に、この実施例3は掘削ビット31、楔締用鋼管38、支圧盤10、メッシュ状筒体9などにより構成されており、下記の要領によって傾斜地盤の固定に用いられる。
即ち、図12に示す様に、掘削ドリル36の先端に延長シャフト34を接続し、更にこの延長シャフト34の先端側の凹穿部35に掘削ビット31の接続係合用突起33を係合させ、延長シャフト34に掘削ビット31を固定し、掘削ビット31の掘削刃3を回転させ、傾斜地盤下層の岩盤40を掘削し、掘削孔41を形成する。なお、岩盤40は通常地表7から2m前後の位置にあるので、延長シャフト34は掘削ビット31がこれに届くに足る十分な長さとする。
この様にして、岩盤40に掘削孔41を形成したなら、延長シャフト34から掘削ドリル36を分離撤去し、図13に示す様に、延長シャフト34をガイドとして楔締用鋼管38を掘削ビット31に被せる。そして、この状態において、楔締用鋼管38の頭部端面をハンマー等によって打撃する。すると、楔締用鋼管38は図14に矢印で示す様に、掘削孔41の底の方へ向って前進し、この楔締用鋼管38の先端側にはスリット39が形成されているので、楔締用鋼管38は掘削ビット31のテーパ状部32によって内側から強制的に押し拡げられ、掘削ビット31の外周と掘削孔41との間の隙間に嵌り込み、この楔締用鋼管38はその拡張力によって岩盤40に形成された掘削孔41に強固に楔締され、アンカーとして作用することになる。
この状態において、延長シャフト34を引き抜き、図9に示す様に楔締用鋼管38の内部空間にメッシュ状筒体9を挿入し、地表7から突出している楔締用鋼管38の頭部に支圧盤10の貫通孔11を挿通させ、楔締用鋼管38の雄ねじ12にナット13を螺合し、これを締め付け、楔締用鋼管38に緊張力を付与して傾斜地盤の固定を行う。
このとき、楔締用鋼管38の周壁5には透孔6が設けられていると共に、楔締用鋼管38の内側空間にはメッシュ状筒体9が内挿されているので、支持地盤15の上部に地下水を含んだ帯水層8が存在している場合には、地下水は楔締用鋼管38の透孔6及びメッシュ状筒体9を通ってその内部空間に流入し、地下水の上昇は阻止され、地盤の安定化が図られる。
なお、楔締用鋼管38の内部には透孔6の孔径より小さい網目を有するメッシュ状筒体9が内挿されているので、このメッシュ状筒体9の濾過機能によって楔締用鋼管38内への土砂の流入は阻止され、目詰りをおこすことはなく、長期的にわたってスムースに地下水の流入が行われる。
なお、楔締用鋼管38内に流入した地下水は楔締用鋼管38内にそのまま滞溜させても良いが、地下水をより一層減少させたい場合にはキャップ14をはずして、楔締用鋼管38の頭部開口端からパイプを挿入し、ポンプで楔締用鋼管38の内部の水を積極的に吸い上げる様にしても良い。この様に、この実施例3においては、楔締用鋼管38のアンカー機能と地下水の排出とによって、従来のものに比べ、はるかに強力に傾斜地盤の固定を実施することが出来る。又、この実施例3においても、図17及び図18に示す様な固定方法を用いることが出来る。
図15はこの発明に係る傾斜地盤安定具の実施例4の正面図、図16はその縦断面図である。
図中31は堀削ビットであり、堅牢な金属を素材とし、円柱状をなし、図10に示す様に、その先端側端面には掘削刃3が取付けられていると共に、頭部側には截頭円錐形のテーパ状部32が一体的に形成されており、このテーパ状部32の端面中央からは同軸状に角柱状をなした接続係合用突起33が突設されている
又、図15及び図16において、図中38は楔締用鋼管、18は延長用鋼管であり、円筒状をなしており、その内径は前記掘削ビット31のテーパ状部32の小径部分よりわずかに大きく形成されていると共に、先端側からは長手方向即ち軸芯に沿って複数条のスリット39が形成されている。又、その周壁5には複数の透孔6が設けられていると共に、頭部寄りの内側周壁にはめねじ17が形成されており、このめねじ17に延長用鋼管18の外周壁に形成されている雄ねじ19を螺合させることにより、アンカー体1の頭部に延長用鋼管18が長さ調整自在に接続される様になっている。そして、この延長用鋼管18は支圧盤10の貫通孔11に挿通され、ナット13によって支圧盤10に固定される様になっている。
又、9はこの楔締用鋼管38の内部空間に挿入されるメッシュ状筒体であり、このメッシュ状筒体9は前述の実施例1のものと全く同じである。他の部分は前述の実施例3のものと全く同じであり、同一符号を付してその説明を省略する。
この実施例4も、上述の実施例3と同じ要領により地中に設置して傾斜地盤固定の用に供するものであるが、楔締用鋼管38は延長用鋼管18を介して支圧盤10に固定される様になっており、延長用鋼管18のねじ込み量を調整することにより楔締用鋼管38の実質的長さを自由に変更することが出来るので、図6に示す様に硬質で安定した支持地盤15が不陸(ふりく)状態であっても、地表7へ突出する延長用鋼管18 の頭部の長さをほぼ同一になる様にそろえることが出来、レベル調整の為にその頭部を削り揃える手間がなく、作業性が極めて良好である。なお、この実施例4においても、図17及び図18に示す様な固定方法を用いることが出来る。
又、上述の実施例3及び4においては、メッシュ状筒体9は単層構造のものを用いたが、図7に示す様に金属製あるいは合成樹脂製の濾過機能を有するメッシュ状外筒20内に金属製あるいは合成樹脂製の多孔管21を内装した二層構造のメッシュ状筒体9を用いても良く、この場合はメッシュ状筒体9の剛性を向上させることが出来る。
各種土木工事、特に防災工事の分野において広く利用可能である。
この発明に係る傾斜地盤安定具の実施例1の正面図。 同じく、その縦断面図。 同じく、螺旋翼4を複数個設けた実施例の部分正面図。 この発明に係る傾斜地盤安定具の実施例2の正面図。 同じく、その縦断面図。 不陸状態の地盤に実施例2を施工した状態の断面図。 本発明の構成要素の一つであるメッシュ状筒体9の他の実施例の一部を切欠いて描いた側面図。 この発明に係る傾斜地盤安定具の実施例3の正面図。 同じく、その縦断面図。 実施例3の施工に用いる延長シャフト34と掘削ドリル36とを掘削ビット31から分離して描いた正面図。 実施例3の構成要素の一つである楔締用鋼管38の斜視図。 図10に示した延長シャフト34と掘削ドリル36とを掘削ビット31に結合した状態の正面図。 実施例3を岩盤40に打ち込む直前の状態の部分半截縦断面図。 同じく、岩盤40に打ち込み、延長シャフト34を抜き取る前の状態の半截縦断面図。 この発明に係る傾斜地盤安定具の実施例4の正面図。 同じく、その縦断面図。 排水機能を重視する場合のアンカー体1あるいは楔締用鋼管38の固定要領を示した断面図。 排出機能と支圧機能を共に重視した場合のアンカー体1あるいは楔締用鋼管38の固定要領を示した断面図。
符号の説明
1 アンカー体
2 閉塞板
3 堀削刃
4 螺旋翼
5 周壁
6 透孔
7 地表
8 帯水層
9 メッシュ状筒体
10 支圧盤
11 貫通孔
12 雄ねじ
13 ナット
14 キャップ
15 支持地盤
17 めねじ
18 延長用鋼管
19 雄ねじ
20 メッシュ外筒
21 多孔管
31 堀削ビット
32 テーパ状部
33 接続係合用突起
34 延長用シャフト
35 接続係合用凹穿部
36 堀削ドリル
37 雄ねじ
38 楔締用鋼管
39 スリット
40 岩盤
41 掘削孔

Claims (7)

  1. 筒状をなし、先端開口部が閉塞板2によって閉塞され、該閉塞板2に堀削刃3が固定されていると共に、先端寄りの外周には一個又は複数個の螺旋翼4が固定され、周壁5には複数の透過6が形成されており、頭部寄りの外周には雄ねじ12が形成されている鋼管製のアンカー体1と;前記アンカー体1の透孔6の孔径より小さい網目を有し、前記アンカー体1の内部空間に挿入されるメッシュ状筒体9と;中央に前記アンカー体1の頭部を挿通せしめる貫通孔11を有し、この貫通孔11の上面に前記アンカー体1の雄ねじ12に螺合するナット13が位置せしめられている支圧盤10と;アンカー体1の頭部開口端を着脱自在に閉塞するキャップ14;とからなることを特徴とする傾斜地盤安定具。
  2. 筒状をなし、先端開口部が閉塞板2によって閉塞され、該閉塞板2に堀削刃3が固定されていると共に、先端寄りの外周には一個又は複数個の螺旋翼4が固定され、周壁5には複数の透過6が形成されており、頭部寄りの内周にはめねじ17が形成されている鋼管製のアンカー体1と;前記アンカー体1のめねじ17に螺合する雄ねじ19が外周に形成された延長用鋼管18と;前記アンカー体1の透孔6の孔径より小さい網目を有し、前記アンカー体1の内部空間に挿入されるメッシュ状筒体9と;中央に前記アンカー体1の頭部を挿通せしめる貫通孔11を有し、この貫通孔11の上面に前記延長用鋼管18の雄ねじ19に螺合するナット13が位置せしめられている支圧盤10と;アンカー体1の頭部開口端を着脱自在に閉塞するキャップ14;とからなることを特徴とする傾斜地盤安定具。
  3. 円柱状をなし、先端面には掘削刃3が取付けられていると共に、頭部側には截頭円錐形のテーパ状部32が形成されており、このテーパ状部32の端面中央からは同軸状に角柱状をなした接続係合用突起33が植設された掘削ビット31と;円筒状をなし、前記掘削ビット31のテーパ状部32の小径部分よりわずかに大きい内径を有し、先端側から軸芯方向に複数のスリット39が形成され、頭部寄りの外周には雄ねじ12が形成されている共に、周壁5には複数の透孔6が形成されている楔締用鋼管38と;前記楔締用鋼管38の透孔6の孔径より小さい網目を有し、前記アンカー体1の内部空間に挿入されるメッシュ状筒体9と;中央に前記アンカー体1の頭部を挿通せしめる貫通孔11を有し、この貫通孔11の上面に前記アンカー体1の雄ねじ12に螺合するナット13が位置せしめられている支圧盤10と;楔締用鋼管38の頭部開口端を着脱自在に閉塞するキャップ14;とからなることを特徴とする傾斜地盤安定具。
  4. 円柱状をなし、先端面には掘削刃3が取付けられていると共に、頭部側には截頭円錐形のテーパ状部32が形成されており、このテーパ状部32の端面中央からは同軸状に角柱状をなした接続係合用突起33が植設された掘削ビット31と;円筒状をなし、前記掘削ビット31のテーパ状部32の小径部分よりわずかに大きい内径を有し、先端側から軸芯方向に複数のスリット39が形成され、頭部寄りの外周にはめねじ17が形成されている共に、周壁5には複数の透孔6が形成されている楔締用鋼管38と;前記楔締用鋼管38のめねじ17に螺合する雄ねじ19が外周に形成された延長用鋼管18と;前記楔締用鋼管38の透孔6の孔径より小さい網目を有し、前記アンカー体1の内部空間に挿入されるメッシュ状筒体9と;中央に前記アンカー体1の頭部を挿通せしめる貫通孔11を有し、この貫通孔11の上面に前記アンカー体1の雄ねじ12に螺合するナット13が位置せしめられている支圧盤10と;楔締用鋼管38の頭部開口端を着脱自在に閉塞するキャップ14;とからなることを特徴とする傾斜地盤安定具。
  5. メッシュ状筒体9が、メッシュ状外筒20の内側に金属製あるいは合成樹脂製の多孔管21を内挿せしめた二層構造になっていることを特徴とする請求項1乃至4記載の傾斜地盤安定具。
  6. 請求項1乃至4に記載する傾斜地盤安定具を略水平方向から傾斜地盤に固定したことを特徴とする傾斜地盤安定化工法。
  7. 請求項1乃至4に記載する傾斜地盤安定具を略水平方向及び斜め上方から傾斜地盤に固定したことを特徴とする傾斜地盤安定化工法。
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