JP2006214083A - 道路、橋梁又は高架橋用伸縮継手 - Google Patents

道路、橋梁又は高架橋用伸縮継手 Download PDF

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Abstract

【課題】 下溝よりも内溝116側の被載置面の浮き上がりを軽減可能な伸縮継手を提供する。
【解決手段】 間隙Gを有して対向する第1の基礎2と第2の基礎6との間に配置される伸縮継手10に関し、Y方向に延在して通過面12に形成された内溝16と、内溝16よりも外側であって、Y方向に延在して通過面12に形成された外溝20と、内溝16と外溝20との間の略中央部であって、Y方向に延在して被通過面13に形成された下溝24と、Y方向に沿って端部30に並べて形成された各基礎2、6に固定される複数の被固定部28と、内溝16と外溝20との間であって、かつ下溝24よりも通過面12側に設けられた天板38とを有している。内溝16は、通過面12から内溝16の底部18までの距離d1が通過面12から外溝20の底部22までの距離d2と略同じ又はそれより大きく形成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、間隙を有して対向する基礎と基礎との間に配置される道路、橋梁又は高架橋用の伸縮継手に関し、とくに少なくとも一方の基礎に配置される側に二つの上溝と一つの下溝とが形成された伸縮継手に関する。
道路、橋梁又は高架橋用の伸縮継手は、間隙を有して対向する第1の基礎と第2の基礎との間に配置され、車両等の移動体が通過する通過面と、各基礎に載置される被載置面とを有する。また、温度による道路、橋梁桁又は高架橋の水平方向の伸縮を吸収するために、弾性部材を構成部材とするとともにこの弾性部材に溝が形成されている。とくに、水平方向に伸縮量が大きい場合には、少なくとも一方の基礎側の通過面に形成された二つの上溝と被通過面に形成された一つの下溝とを有するいわゆるダブル型伸縮継手が用いられる(例えば、特許文献1の段落〔0017〕、〔0018〕及び図4参照)。なお、「基礎」とは、伸縮継手が配置される道路、橋梁又は高架橋の基礎を意味する。
特開平11−131411号公報(段落〔0017〕、〔0018〕及び図4)
ところが、特許文献1の図4に開示されている伸縮継手が間隙を有して対向する第1の基礎と第2の基礎との間に配置された場合、高温時における各基礎の水平方向への膨張作用により、種々の問題点が発生する。なお、本明細書において、第1の基礎と第2の基礎とが間隙を有して対向する(即ち、移動体が通過する方向)をX方向(第1の方向)と称する。
ここで、発生する種々の問題点について、図5(a)及び(b)を参照しつつ説明する。なお、図5(a)は、第1の基礎側において、通過面に形成された二つの上溝と被通過面に形成された一つの下溝とを有する従来の伸縮継手のX方向に対して水平に直交する方向(以下、「Y方向」と称する。)に見た断面の概略図である。図5(b)は、図5(a)に図示される伸縮継手の底面が浮き上がった状態を示す概略図である。なお、他方の基礎側にも同様の溝が形成されているが、ここでは、便宜上、一方の溝のみを図示する。
図5(a)において、伸縮継手110は、被載置面13が第1の基礎2の載置面4に接面するように載置され、端部30に形成された被固定部28が第1の基礎2に固定されることにより、第1の基礎2に配置されている。また、被載置面13と反対側の面、即ち、車両等の移動体が通過する通過面12には、間隙Gに近い内溝(第1の溝)116と、内溝116に対して間隙Gと反対側(即ち、内溝116よりも端部30側)に形成される外溝(第2の溝)120とが形成されている。ここで、内溝116は、内溝116の深さが外溝120の深さよりも浅くなるように形成されている。ここで、「深さ」とは、伸縮継手110の通過面12に対して直交する方向(以下、「Z方向」と称する。)における通過面12と各溝116、120の底部118、122との距離を意味する。従って、図5(a)に図示されるように、外溝120の底部122を通過しかつX方向に伸びる仮想線L2が、内溝116の底部118を通過しかつX方向に伸びる仮想線L1よりも被載置面13側に位置することとなる。また、被載置面13には、X方向について内溝116と外溝120との間の略中央部に下溝(第3の溝)124が形成されている。さらに、内溝116と外溝120との間であってかつZ方向について下溝124よりも通過面12側には天板38が設けられている。
なお、被載置面13は、X方向について下溝124に対して内溝116側(即ち、下溝124よりも内溝116側を意味するが、下溝124よりも間隙G側ともいえる。)の被載置面14と、X方向について下溝124に対して間隙Gと反対側(即ち、下溝124よりも外溝120側)の被載置面15とを有する。
各基礎の水平方向への膨張作用により間隙Gが小さくなったとき、伸縮継手110に対してX方向の圧縮力Fが作用する。この圧縮力Fが所定値を超えると、図5(b)に図示されるように、下溝124よりも内溝116側の被載置面14が載置面4から浮き上がってしまう。即ち、下溝124に対して内溝116側の被載置面14と第1の基礎2の載置面4との間に間隙σが形成されてしまうこととなる。
このように、下溝124よりも内溝116側の被載置面14と第1の基礎2の載置面4との間に間隙σが形成された場合、先ず第1に、伸縮継手110の上を移動体が通過した場合に騒音が発生するという問題点が発生する。第2の、伸縮継手110の上を移動体が通過したとき、かかる移動体に乗車している者に対して衝撃が伝わり乗り心地が悪いという問題点が発生する。これらはいずれも、下溝124よりも内溝116側の被載置面14と第1の基礎2の載置面4とが激しく接触することに起因するものである。
ここで、下溝124よりも内溝116側の被載置面14と第1の基礎2との載置面との間に間隙σが形成される原因について考察する。伸縮継手110に対してX方向の圧縮力Fが作用したとき、各溝116、120、124は、それぞれ、X方向に変形することにより圧縮力Fを吸収する。このとき、Y方向に見た断面において、内溝116と下溝124と天板38と仮想線L1とに囲まれた領域(以下、「内側領域」と称する。)50の断面積が、下溝124と外溝120と天板38と仮想線L2とに囲まれた領域(以下、「外側領域」と称する。)52の断面積よりも小さいことが原因の一つであると考えられる。即ち、内側領域50の剛性が外側領域52の剛性よりも小さいことによって下溝124よりも内溝116側の被載置面14が載置面4から浮き上がり、この被載置面14と第1の基礎の載置面4との間に間隙σが発生するものと思われる。なお、下溝124よりも外溝120側の被載置面15と第1の基礎2の載置面4との間に間隙は発生しない。これは、伸縮継手110の端部30が被固定部28において第1の基礎2に固定されているからであると考えられる。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、間隙を有して対向する基礎と基礎との間に配置された伸縮継手に対して水平方向の大きな圧縮力が作用した場合において、下溝よりも内溝116側の被載置面の浮き上がりを軽減可能な伸縮継手を提供することを目的とする。
本発明において、以下の特徴は単独で、若しくは、適宜組合わされて備えられている。前記課題を解決するための本発明に係る伸縮継手は、間隙を有して対向する第1の基礎と第2の基礎との間に配置され、移動体が通過する通過面と第1の基礎及び第2の基礎に載置される被載置面とを有する伸縮継手であって、移動体が通過する第1の方向に対して略直交する第2の方向に延在して前記通過面に形成された第1の溝と、第1の方向について前記第1の溝に対して前記間隙の反対側であって、第2の方向に延在して前記通過面に形成された第2の溝と、第1の方向について前記第1の溝と前記第2の溝との間の略中央部であって、第2の方向に延在して前記被通過面に形成された第3の溝と、第1の方向について前記第2の溝に対して前記第1の溝の反対側であって、かつ第2の方向に沿って並べて形成された第1の基礎又は第2の基礎に固定される複数の被固定部と、第1の方向について前記第1の溝と前記第2の溝との間であって、かつ前記第3の溝よりも通過面側に設けられた板状部材とを有し、前記第1の溝は、前記通過面から前記第1の溝の底部までの距離が前記通過面から前記第2の溝の底部までの距離と同じ距離又はそれよりも大きい距離となるように形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、第1の溝、第2の溝及び第3の溝が延在する方向に見た断面において、第1の溝と第3の溝と板状部材と第1の溝の底部を通過しかつ第1の方向に伸びる仮想線とに囲まれた内側領域の面積が、第3の溝と第2の溝と板状部材と第3の溝の底部を通過しかつ第1の方向に伸びる仮想線とに囲まれた外側領域の面積よりも大きくなる。従って、内側領域の剛性が外側領域の剛性よりも大きくなる。
請求項1に記載の発明によれば、伸縮継手は、内側領域の剛性が外側領域の剛性よりも大きくなるので、間隙を有して対向する基礎と基礎との間に配置されて水平方向の大きな圧縮力が作用した場合であっても、下溝よりも内溝側の被載置面の浮き上がりを軽減することが可能となる。
以下、本発明に係る伸縮継手の好適な実施形態の例について、各図を参照しつつ説明する。なお、図5に図示した従来例と同一又は相当する部分には同一符号を付して説明する。
図1は、本発明に係る伸縮継手が道路に配置された場合における概略断面の一例を示す斜視図である。図1において、第1の基礎2と第2の基礎6との間には、従来例における伸縮継手110に代わる伸縮継手10が間隙Gを跨いで配置されている。第1の基礎2及び第2の基礎6は、例えば、道路、橋梁又は高架橋の基礎となるコンクリートが該当する。なお、本実施形態において説明する伸縮継手10のX方向の長さHは、H=887mmである。
第1の基礎2及び第2の基礎6は、互いの間に間隙Gを有して対向しており、それぞれ、車両等の移動体が通過する通過面3、7と伸縮継手10を載置するための載置面4、8とを有する。載置面4、8は、第1の基礎2と第2の基礎6との間に伸縮継手10が配置された場合に、第1の基礎2及び第2の基礎6のそれぞれの通過面3、7と伸縮継手10の通過面12とが面一となるように、通過面3、7よりも低い位置に形成されている。
なお、伸縮継手10との間の衝撃を緩和するために、第1の基礎2及び第2の基礎6の載置面4、8に弾性部材が配置されることもある。この場合、かかる弾性部材に伸縮継手10が載置されるので、伸縮継手10が載置される弾性部材の面を載置面と称することができる。
伸縮継手10は、X方向の変位(伸縮)を吸収するために、弾性部材(例えばクロロプレンゴム)11を構成の主体としている。
伸縮継手10の通過面12には、一対の内溝(第1の溝)16が形成されている。内溝16は、Y方向に延在している。
X方向について内溝16に対して間隙Gと反対側の通過面12、即ち、間隙Gに対して内溝16よりも外側の通過面12には、Y方向に延在する一対の外溝20が形成されている。換言すれば、一対の外溝20は、一対の内溝16をX方向の両側から挟むように通過面12に形成されている。
さらに、X方向について内溝16と外溝20との間の中央部の被載置面13には、Y方向に延在する一対の下溝24が形成されている。換言すれば、一対の下溝24は、それぞれ、内溝16と外溝20との距離が同じとなるよう、これらの各溝16、20によって両側から挟まれるように被載置面13に形成されていることを意味する。この被載置面13は、X方向について下溝24よりも内溝16側の被載置面14と、X方向について下溝24よりも外溝20側の被載置面15とを有する。
これらの各溝16、20、24は、いずれも、伸縮継手10に対して作用するX方向の変位を吸収している。
ここで、内溝16の深さ及び外溝20の深さの相対的な関係について、図2を参照しつつ説明する。ここで、図2は、図1に図示される伸縮継手10についてY方向に見た断面を拡大した概略図である。
図2において、内溝16は、通過面12から内溝16の底部18までの距離d1が通過面12から外溝20の底部22までの距離d2よりも大きい距離となるように形成されている。ここで、「通過面12から内溝16の底部18までの距離d1」とは、内溝16の底部18から通過面12に向けたZ方向の距離を意味する。即ち、距離d1は、Z方向における内溝16の底部18と通過面12との最短距離を意味し、さらに換言すれば、通過面12からの深さを意味する。なお、「通過面12から外溝20の底部22までの距離d2」についても同様の意味である。また、後述するように、通過面12から内溝16の底部18までの距離d1と通過面12から外溝20の底部22までの距離d2とが同じ距離となるように内溝16及び外溝20が形成されている。
図1に戻って、伸縮継手10に関する他の構成について説明する。
X方向について一対の下溝24の間にはベース部材32が配置されている。このベース部材32はベース板34とベースブロック36とを有している。ベース板34は、間隙Gを跨ぎかつ一対の内溝16の底部18よりも被載置面13側に弾性部材11に被覆されて配置されている。ベースブロック36は、一対の内溝16に挟まれる位置にベース板34に載置されて固定されている。
内溝16と外溝20との間であって、かつ下溝24の底部26よりも通過面12側には、板状の天板(板状部材)38が弾性部材11に被覆されて配置されている。
伸縮継手10のX方向の端面42から外溝20側の被載置面15にかけて、これらの面42、13に沿うL字状又は逆L字状の側板40が弾性部材11に被覆されて配置されている。より詳しく言えば、側板40は、伸縮継手10のX方向の端面42から外溝20の底部22よりも紙面の下方側(即ち、被載置面15側)にかけて配置され、下溝24付近まで延在している。
また、伸縮継手10のX方向の両方の端部30であって、X方向について外溝20に対して内溝16と反対側(即ち、内溝16に対して外溝20よりも外側)かつ側板40に対して内溝16側(即ち、側板40よりも内側)には被固定部28が形成されている。この被固定部28は、Y方向に長い長穴が形成されていると共に、Y方向に沿って複数個並べて伸縮継手10に形成されている。伸縮継手10は、この被固定部28において、側板40及び弾性部材11を貫通するボルト(図示せず)によって第1の基礎2及び第2の基礎6との間の間隙Gを跨ぐと共に、X方向の両方の端部30で第1の基礎2及び第2の基礎6に固定されている。
次に、従来の伸縮継手110及び本発明に係る伸縮継手10が第1の基礎2と第の基礎6との間に配置され、かつ伸縮継手110、10に対してX方向の圧縮力が作用した場合における伸縮継手110、10の挙動をFEM解析にて評価したので、その結果について、図3及び図4を参照しつつ説明する。なお、本発明に係る伸縮継手10についてのFEM解析は、複数パターンの伸縮継手について行った。
図3は、本発明に係るパターン1〜パターン3の伸縮継手について、Y方向に見た断面を示した概略図であって、パターン1〜パターン3の各伸縮継手及びこれを構成する部分について、それぞれ、図1に図示される伸縮継手10に付した符号に添字a〜cを付して図示することとする。また、図5に図示される従来例の伸縮継手110の内溝116の底部118を通過するX方向の仮想線L1を、図3における基準の仮想線(以下、「基準線」と称する。)Lとする。さらに、図5と同様に、内溝16a〜16cの底部18a〜18cを通過するX方向の仮想線をL1、外溝20a〜20cの底部22a〜22cを通過するX方向の仮想線をL2とする。即ち、仮想線L1は内溝16a〜16cの深さが変わることによってZ方向の位置が変化するが、基準線Lは不変のものである。
ここで、図3(a)は、内溝16aの底部18a及び外溝20aの底部22aがいずれも基準線L上に位置するパターン1の伸縮継手10aの概略断面図である。この場合、仮想線L1及び仮想線L2は基準線Lと一致する。
図3(b)は、内溝16bの底部18bが基準線L上に位置し、外溝20bの底部22bがZ方向について基準線Lよりも通過面12b側に位置するパターン2の伸縮継手10bの概略断面図である。この場合、仮想線L1は基準線Lと一致するが、仮想線L2はZ方向について基準線Lよりも通過面12b側に位置する。なお、Z方向における仮想線L2と基準線Lとの距離k1は、k1≒1mmである。ただし、X方向の変位を外溝20で吸収することを考慮すれば、k1の許容範囲は、1≦k1≦10〔mm〕である。また、安全を見込むと、好ましくは、3≦k1≦5〔mm〕である。
図3(c)は、内溝16cの底部18cがZ方向について基準線Lよりも被載置面13c側に位置し、外溝20cの底部22cが基準線L上に位置するパターン3の伸縮継手10cの概略断面図である。この場合、仮想線L2は基準線Lと一致するが、仮想線L1はZ方向について基準線Lよりも被載置面13c側に位置する。なお、Z方向における仮想線L1と基準線Lとの距離k2は、k2≒1mmである。ただし、伸縮継手10cの製造上の問題を考慮すれば、k2の許容範囲は、1≦k2≦4〔mm〕である。また、安全を見込むと、好ましくは、2≦k2≦3〔mm〕である。
なお、Z方向における仮想線L2と基準線Lとの距離k1の許容範囲及び仮想線L1と基準線Lとの距離k2の許容範囲については、内溝16の深さd1の許容範囲及び外溝20の深さd2の許容範囲に置き換えて表現することができる。この場合、59.4≦d1≦64.6〔mm〕、さらに好ましくは、60.4≦d1≦62.6〔mm〕であり、また、50.4≦d2≦61.4〔mm〕、さらに好ましくは、55≦d2≦60〔mm〕である。
なお、図3(a)〜図3(c)に図示されるパターン1〜パターン3の各伸縮継手10a〜10cの内溝16a〜16cの溝幅h1及び外溝20a〜20cの溝幅h2は、いずれも同じ寸法である。なお、本実施形態においては、h1=h2=30mmとしているが、これに限られるものではない。
図4は、従来例の伸縮継手110及びパターン1〜パターン4の各伸縮継手10a、10b、10cにおいて、X方向の圧縮変位と内溝116、16a〜16c側の被載置面14、14a〜14cの浮き上がり量との関係を示すFEM解析結果である。
図4において、FEM結果によれば、従来例の伸縮継手110は、X方向の圧縮変位が23.0mmを超えると内溝116側の被載置面14の浮き上がりが開始した。また、パターン1の伸縮継手10aは、X方向の圧縮変位が43.13mmを超えると内溝16a側の被載置面14aの浮き上がりが開始した。即ち、パターン1の伸縮継手10aは、従来例の伸縮継手110に対して作用するX方向の圧縮力よりも大きな圧縮力でパターン1の伸縮継手10aに対して作用しなければ、被載置面14aと載置面4(8)との間に間隙σ(図5(b)参照)が形成されないこととなる。また、従来例の伸縮継手110のFEM解析結果とパターン1の伸縮継手10aのFEM解析結果とを比較すると、X方向の変位量が同じであっても、パターン1の伸縮継手10aの内溝16a側の被載置面14aの浮き上がり量が、従来例の伸縮継手110の内溝116側の被載置面14の浮き上がり量よりも小さいことが分かる。なお、23.0mm及び43.13mmは、それぞれ、伸縮継手110、10aの端面42、42aからX方向の中央部までの長さ(443.5mm)の約5.2%及び約9.7%である。
このように、パターン1の伸縮継手10aが従来の伸縮継手110に比して内溝16a側の被載置面14aの浮き上がり現象が発生し難いのは、次のような理由が考えられる。即ち、従来例の伸縮継手110においては、前述したように内側領域50の断面積が外側領域52の断面積よりも小さいのに対し、図3(a)に図示されるパターン1の伸縮継手10aにおいては、内側領域50aの断面積と外側領域52aの断面積とが略同じ(即ち、実質的に同じ)であるからと推察される。
一方、パターン2及びパターン3の伸縮継手10b、10cは、X方向の圧縮変位が48.88mmとなるまで圧縮させても内溝16b、16c側の被載置面14b、14cが浮き上がらないという結果が得られた。これは、図3(b)及び図3(c)に図示されるように、パターン2の伸縮継手10b及びパターン3の伸縮継手のいずれも、内側領域50b、50cの断面積が外側領域52b、50cの断面積よりも大きいからであると考えられる。ここで、48.88mmは、伸縮継手10b、10cの端面42b、42cからX方向の中央部までの長さ(443.5mm)の約11.0%である。
なお、図4には、伸縮継手の代表的なパターンについてのFEM解析を図示しているが、他にも、基準線Lと仮想線L2との距離k1及び基準線Lと仮想線L1との距離k2を適宜変更(即ち、内溝16及び外溝20の溝深さを適宜変更)してFEM解析を行っている。その結果によれば、内側領域50の断面積が外側領域52の断面積よりも大きい場合には、X方向の圧縮変位が48.88mmとなるまで圧縮させても、内溝16側の被載置面14が浮き上がらないという結果が得られた。とくに、内溝16の深さd1を外溝20の深さd2よりも大きくすることによって内側領域50の断面積が外側領域52の断面積よりも大きくされた場合には、図4に図示されるFEM解析結果より、伸縮継手10がX方向に圧縮された場合であっても内溝16側の被載置面14が浮き上がらないことが明らかである。
さらに、本発明の発明者は、内溝16が吸収できるX方向の変位量が外溝20が吸収できるX方向の変位量よりも大きい場合にも、内溝16側の被載置面14の浮き上がり現象を抑制できるのではないかと考え、FEM解析を行っている。ここで、各溝16、20が吸収できるX方向の変位量は、Y方向に見た各溝の断面積で決まると考えられている。そこで、外溝20の溝幅h2よりも内溝16の溝幅h1を大きく(h1>h2)した伸縮継手の内溝16側の被載置面14の浮き上がり量を確認すべくFEM解析を行った。しかしながら、従来例の伸縮継手110に比して内溝16側の被載置面14の浮き上がり現象についての改善は見られなかった。
また、同様に、内溝16の溝幅h1よりも外溝20の溝幅h2を大きく(h2>h1)した伸縮継手の内溝16側の被載置面14の浮き上がり量を確認すべくFEM解析を行ってみたところ、内溝16の深さと外溝20の深さとが同じであれば、パターン1の伸縮継手10aとほぼ同様の結果が得られた。さらに、内溝16の深さが外溝20の深さよりも大きくなれば内溝16側の被載置面14の浮き上がり現象は発生せず、内溝16の深さが外溝20の深さよりも小さくなれば内溝16側の被載置面14の浮き上がり現象が発生した。
これらの結果から、伸縮継手10の内溝16側の被載置面14の浮き上がり現象の発生は、各溝16、20が吸収できるX方向の変位量に依存するのではなく、内側領域50の断面積と外側領域52の断面積との相対的な関係に依存することが明らかであるといえる。
以上のように、間隙Gを有して対向する第1の基礎2と第2の基礎6との間に配置される本実施形態の伸縮継手10は、移動体が通過する通過面12と、第1の基礎2及び第2の基礎6に載置される被載置面13と、Y方向に延在して通過面12に形成された内溝16と、X方向について内溝16に対して間隙Gの反対側であって、Y方向に延在して通過面12に形成された外溝20と、X方向について内溝16と外溝20との間の略中央部であって、Y方向に延在して被通過面13に形成された下溝24と、X方向について外溝20に対して内溝16の反対側であって、かつY方向に沿って並べて形成された第1の基礎2及び第2の基礎6に固定される複数の被固定部28と、X方向について内溝16と外溝20との間であって、かつ下溝24よりも通過面12側に設けられた天板38とを有している。そして、パターン1に図示した伸縮継手10aの内溝16aは、通過面12aから内溝16aの底部18aまでの距離d1が通過面12aから外溝20aの底部22aまでの距離d2と略同じ距離となるように形成されている。従って、Y方向に見た内側領域50aの断面積と外側領域52aの断面積とが略同じとなるので、内側領域50aの剛性と外側領域52aの剛性とが略同じとなる。その結果、伸縮継手10aに対してX方向に圧縮力が作用した場合において、内溝16a側の被載置面14aの浮き上がり現象を軽減することができる。
また、パターン2及びパターン3に図示した伸縮継手10b、10cの内溝16b、16cは、通過面12b、12cから内溝16b、16cまでの距離d1が通過面12b、12cから外溝20b、20cの底部22b、22cまでの距離d2よりも大きくなるように形成されている。従って、Y方向に見た内側領域50b、50cの断面積が外側領域52b、52cの断面積よりも大きくなるので、内側領域50b、50cの剛性が外側領域52b、52cの剛性よりも大きくなる。その結果、伸縮継手10b、10cに対してX方向に大きな圧縮力が作用した場合であっても、内溝16b、16c側の被載置面14b、14cの浮き上がり現象を抑制することができる。
このように、伸縮継手10a〜10cの内溝16a〜16c側の被載置面14a〜14cの浮き上がり現象を軽減又は抑制することによって、伸縮継手10a〜10cの上を移動体が通過した場合における騒音が発生を軽減又は抑制できる。さらに、伸縮継手10a〜10cの上を移動体が通過した場合において、かかる移動体に乗車している者に対して伝わる衝撃を緩和又は抑制することもでき、乗り心地が悪いという問題点を解消することができる。
なお、本発明は、上記の好ましい実施形態に記載されているが、本発明はそれだけに限られない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が可能である。例えば、上述の実施形態において、各溝16、20、24は、それぞれ、第1の基礎2と第2の基礎6との両方に形成されているが、いずれか一方の基礎にのみ形成されるものであっても良い。即ち、これは、必ずしも間隙Gに対して一対の溝が形成されていることに限定されないことを意味する。
また、上述の実施形態において、内溝16、外溝20及び下溝24は、いずれもY方向に延在しているが、これらの各溝16、20、24が延在する方向は、X方向に厳密に直交する方向に限定されるものではなく、略直交する方向をも含む。即ち、X方向に実質的に直交していれば良い。
さらに、内溝16、外溝20及び下溝24は、それぞれ、互いに平行することとなるが、物理的に完全に平行である場合のみならず、略平行をも含む。即ち、内溝16、外溝20及び下溝24が互いに実質的に平行であれば良い。これは、Y方向が、X方向に対して厳密な意味で直交することのみを意味するのではなく、実質的に直交する方向をも含むことを意味する。
また、上述の実施形態において、第1の基礎2と第2の基礎6との間に伸縮継手10が配置された場合に、第1の基礎2及び第2の基礎6のそれぞれの通過面3、7と伸縮継手10の通過面12とが面一となっている。ここで、「面一」とは、物理的に完全に面一の場合のみならず、略面一をも含む。即ち、第1の基礎2及び第2の基礎6のそれぞれの通過面3、7と伸縮継手10の通過面12とが実質的に面一であれば良い。
また、上述の実施形態において、伸縮継手10の下溝24は、X方向について内溝16と外溝20との間の中央部の被載置面13に形成されている。ここで、「内溝16と外溝20との間の中央部」とは、物理的に完全に中央部の場合のみならず、略中央部をも含む。即ち、内溝16と外溝20との間であって実質的に中央部であれば良い。
本発明に係る伸縮継手が道路に配置された場合における概略断面の一例を示す斜視図である。 図1に図示される伸縮継手10についてY方向に見た断面を拡大した概略図である。 本発明に係るパターン1〜パターン3の伸縮継手について、Y方向に見た断面を示した概略図である。 従来例の伸縮継手及びパターン1〜パターン4の各伸縮継手において、X方向の圧縮変位と内溝側の被載置面の浮き上がり量との関係を示すFEM解析結果である。 (a)は、従来例の伸縮継手のY方向に見た断面の概略図であって、(b)は、(a)に図示される伸縮継手の底面が浮き上がった状態を示す概略図である。
符号の説明
2 第1の基礎
6 第2の基礎
10、10a〜10c 伸縮継手
12 通過面
13 被載置面
16 内溝(第1の溝)
18 底部
20 外溝(第2の溝)
22 底部
24 下溝(第3の溝)
26 底部
28 被固定部
38 天板(板状部材)
d1 通過面から内溝の底部までの距離
d2 通過面から外溝の底部までの距離
G 第1の基礎と第2の基礎との間の間隙

Claims (1)

  1. 間隙を有して対向する第1の基礎と第2の基礎との間に配置され、移動体が通過する通過面と第1の基礎及び第2の基礎に載置される被載置面とを有する伸縮継手であって、
    移動体が通過する第1の方向に対して略直交する第2の方向に延在して前記通過面に形成された第1の溝と、
    第1の方向について前記第1の溝に対して前記間隙の反対側であって、第2の方向に延在して前記通過面に形成された第2の溝と、
    第1の方向について前記第1の溝と前記第2の溝との間の略中央部であって、第2の方向に延在して前記被通過面に形成された第3の溝と、
    第1の方向について前記第2の溝に対して前記第1の溝の反対側であって、かつ第2の方向に沿って並べて形成された第1の基礎又は第2の基礎に固定される複数の被固定部と、
    第1の方向について前記第1の溝と前記第2の溝との間であって、かつ前記第3の溝よりも通過面側に設けられた板状部材とを有し、
    前記第1の溝は、前記通過面から前記第1の溝の底部までの距離が前記通過面から前記第2の溝の底部までの距離と同じ距離又はそれよりも大きい距離となるように形成されていることを特徴とする伸縮継手。
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