JP2006199561A - セラミックス多孔体及びその製造方法 - Google Patents

セラミックス多孔体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】表面性状の滑らかなサイアロンセラミックス多孔体、その製造方法及び用途を提供する。
【解決手段】βサイアロンを主成分とする表面性状が滑らかなサイアロンセラミックス多孔体であって、(1)βサイアロンの組成の一般式Si6−z Al8−zにおいて、そのZ値が0.1以上3以下、(2)アスペクト比が1以上4以下のβサイアロン結晶粒の割合がβサイアロン結晶粒全体に対し60%以上であり、好適には、気孔率が30%以上70%以下、平均気孔径が0.2ミクロン以上2ミクロン以下であることを特徴とするサイアロンセラミック多孔体、その製造方法、及び当該セラミックス多孔体からなる耐食性部材。
【効果】高気孔率と高強度を両立し、かつ表面性状の滑らかな特性を有するサイアロンセラミックス多孔体及びその部材を提供できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、表面性状の滑らかなサイアロンセラミックス多孔体、その製造方法及びその用途に関するものであり、更に詳しくは、βサイアロンを主成分として70%以上含有するサイアロンセラミックス多孔体であって、βサイアロンの組成の一般式Si6−z Al8−zにおいて、そのZ値が0.2以上3以下、アスペクト比1以上4以下のβサイアロン結晶粒の割合がβサイアロン結晶粒全体に対し60%以上、好適には、気孔率が30%以上70%以下、平均気孔径が0.2ミクロン以上2ミクロン以下である、ことを特徴とするサイアロンセラミックス多孔体、その製造方法、及び用途に関するものである。本発明は、従来材と比較して、表面の性状が滑らかで、他の部品とのすり合わせが容易であり、使用時においても、固体や液体との接触による表面の凹凸の増加が起こりにくく、表面の滑らかさが維持される優れた物性を有するサイアロンセラミックス多孔体及びその部材を提供するものである。
従来、多孔質セラミックスは、例えば、脱塵、ガス分離、固体分離等の各種フィルター材料、触媒担体、吸着材、吸音材、断熱材、センサー等として広く利用されてきた。このような多孔質セラミックスとしてよく知られているものに、アルミナ、シリカ、アルミナシリカ、チタニア、コーディライト等の酸化物系セラミックスと、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の非酸化物系セラミックスがある。これらのうち、酸化物系セラミックスは、一般に、化学的安定性に優れているが、耐熱性、耐熱衝撃性、及び強度に劣る場合が多い。一方、非酸化物系セラミックスの場合、窒化ケイ素セラミックスは、耐熱衝撃性や強度に優れているが、耐食性に劣り、また、炭化ケイ素セラミックスは、耐熱性、耐食性に優れているが、耐熱衝撃性、強度に劣る場合が多い。
サイアロンは、主としてSi、Al、O、Nで構成される化合物の総称である。このうち、最も代表的な化合物であるβサイアロンは、β窒化ケイ素の組成において、ケイ素をアルミニウムと、また、窒素を酸素と一部置換したものであり、βサイアロンの組成の一般式は、Si6−z Al8−zとなる。このβサイアロンは、一般に、耐酸化性、耐食性、及び耐クリープ性に優れるとされ、かつ熱膨張率が小さい等の優れた特徴を有している。
フィルタ材料、触媒担体等に用いられる多孔質セラミックスとしては、高温あるいは腐食性の強い環境下で用いられるアルミナ等の酸化物系セラミックスが例示される。これに対して、非酸化物系セラミックスからなる多孔質セラミックスとしては、例えば、窒化ケイ素基あるいは炭化ケイ素基の多孔体(特許文献1)、ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末の混合粉末を成形した後、窒化した多孔体(特許文献2)等が提案されているが、上記特許文献1に記載されている窒化ケイ素基の多孔体においては、その強度を維持するために、気孔率は30%未満である。セラミックスでは、一般に、強度は気孔率の増加に従って低下する傾向があり、気孔率と強度を両立させることが重要な課題となっていた。
窒化ケイ素多孔質材については、先行文献に、気孔率の高いセラミックス多孔体が提案されている(例えば、特許文献3参照)。これは、気孔率が30%以上で、アスペクト比が3以上のβ型窒化ケイ素6角柱状粒子を含み、β型窒化ケイ素6角柱状粒子の窒化ケイ素粒子全体に対する割合が60%以上で、希土類元素の化合物の少なくとも1種を含む窒化ケイ素質セラミックス多孔体であり、気孔率が高く、かつ強度の高いセラミックス多孔体を提供するものであり、この強度の実現のためには、窒化ケイ素の棒状結晶粒がアスペクト比3以上に伸張して絡み合った構造を有する組織の形成が必要とされている。また、サイアロン多孔質材については、先行文献に、高気孔率のサイアロン多孔体が提案されている(例えば、特許文献4参照)。これは、高気孔率を有し、しかも、耐熱性、耐食性及び機械的強度を有するサイアロン多孔体を提供するものである。この耐熱性、耐食性、及び強度を実現するために、粒界相が存在しない組織の形成が必要とされている。
上述したように、これまでの窒化ケイ素多孔体やサイアロン多孔体は、気孔率と強度を両立することに主眼が置かれていた。そのため、上記特許文献3には、アスペクト比が高い結晶粒が記述されている。また、上記特許文献4には、アスペクト比に関する記述はないが、粒界相が存在しない組織の形成が記述されている。一方、窒化ケイ素多孔体やサイアロン多孔体をフィルター等に使用する際には、表面性状が重要になる場合がある。表面性状が滑らかである場合、他の部品とのすり合せが容易であり、固体接触や流体による磨耗の影響を受けにくい、という利点が生じる。従来材では、気孔率が高く、かつ強度の高いセラミックス多孔体の開発例があるが、滑らかな表面性状を有する多孔材の開発はなされていない。
上述の滑らかな表面性状の実現には、窒化ケイ素やサイアロンの結晶粒のアスペクト比の低下が有効であると考えられる。しかし、高気孔率で、高強度で、かつ表面性状を改善した多孔材を作製することは極めて困難であることが容易に予測される。成分や焼成条件によりアスペクト比が高い結晶粒を形成しやすい場合、焼成後の焼き放し面では、表面では結晶粒同士のぶつかり合いがなく、内部組織でのアスペクト比以上に結晶粒が伸張しやすい傾向があることが知られていることから、表面の凹凸が大きくなるものと考えられる。加工仕上げ時には、結晶粒の脱落が起こるため、高アスペクト比の結晶粒が抜け落ちた場合には、表面の凹凸が大きくなるものと考えられる。使用時においても、固体や液体との接触により結晶粒の脱落が起こるが、この際にも、高アスペクト比の結晶粒の存在は、表面の凹凸を大きくする要因となると考えられる。
特開昭63−291882号公報 特開平1−188479号公報 特許第2683452号公報 特開2003−246676号公報
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術及び上記課題と知見に鑑みて、表面性状が滑らかな多孔体の作製には、低アスペクト比の結晶粒の実現が不可欠であるとの考えに至り、種々の材質候補のうち、既に優れた耐熱性、耐熱衝撃性、強度、及び耐食性が実現されている窒化ケイ素多孔体やサイアロン多孔体をもとに、表面性状の滑らかな多孔体を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、βサイアロンの組成の一般式Si6−z Al8−zにおいて、そのZ値を0.2以上3以下とし、焼結助剤の添加及び焼結条件を調整することにより、アスペクト比1以上4以下のβサイアロン結晶粒の割合がβサイアロン結晶粒全体に対し60%以上存在する組織を形成することで、高気孔率で、高強度で、かつ表面性状が滑らかな多孔体を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、高気孔率と高強度を実現し、かつ従来材と比べて表面性状が滑らかな物性を有するサアイアロンセラミックス多孔体、その製造方法及びその用途を提供することを目的とするものである。
上記課題を達成するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)βサイアロンを主成分として70%以上含有する表面性状が滑らかなサイアロンセラミックス多孔体であって、1)βサイアロンの組成の一般式Si6−z Al8−zにおいて、そのZ値が0.2以上3以下、2)アスペクト比が1以上4以下のβサイアロン結晶粒の割合がβサイアロン結晶粒全体に対して60%以上、であることを特徴とするサイアロンセラミックス多孔体。
(2)気孔率が30%以上70%以下、平均気孔径が0.2ミクロン以上2ミクロン以下である、前記(1)に記載のサイアロンセラミックス多孔体。
(3)焼結及びβサイアロン結晶粒の伸長を抑制する成分として、炭化ケイ素を1重量%以上30重量%以下含有する、前記(1)に記載のサイアロンセラミックス多孔体。
(4)前記(1)から(3)のいずれかに記載の表面性状の改善されたサイアロンセラミック多孔体から成ることを特徴とする耐食性部材。
(5)部材が、フィルター部材である、前記(4)に記載の耐食性部材。
(6)βサイアロンを製造する原料粉末が、金属シリコン、窒化ケイ素、サイアロン、酸化ケイ素、金属アルミニウム、窒化アルミニウム、及び酸化アルミニウムの少なくとも一部を含む混合物から成り、かつ焼結助剤として金属酸化物を含み、当該原料粉末を成形し、焼成することにより、1)βサイアロンの組成の一般式Si6−z Al8−zにおいて、そのZ値が0.2以上3以下、2)アスペクト比が1以上4以下のβサイアロン結晶粒の割合がβサイアロン結晶粒全体に対して60%以上、であるサイアロンセラミックス多孔体を得ることを特徴とするサイアロンセラミックス多孔体の製造方法。
(7)原料粉末中に、炭素あるいは炭化ケイ素を添加し、炭素を添加した場合は、焼成中に炭化ケイ素に転化する、前記(6)に記載のサイアロンセラミックス多孔体の製造方法。
(8)炭素あるいは炭化ケイ素を1〜30重量%添加する、前記(7)に記載のサイアロンセラミックス多孔体の製造方法。
(9)成形体の焼成を非酸化物雰囲気中で行う、前記(6)に記載のサイアロンセラミックス多孔体の製造方法。
(10)気孔率が30%以上70%以下、平均気孔径が0.2ミクロン以上2ミクロン以下であるサイアロンセラミックス多孔体を得る、前記(6)に記載のサイアロンセラミックス多孔体の製造方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、表面性状の滑らかなサイアロンセラミックス多孔体とその用途、及びその製造方法を提供するものであり、本発明は、βサイアロンを主成分として70%以上含有する表面性状が滑らかなセラミックス多孔体であって、βサイアロンの組成の一般式Si6−z Al8−zにおいて、そのZ値を0.2以上3以下とし、焼結助剤の添加及び焼結条件を調整することにより、アスペクト比1以上4以下のβサイアロン結晶粒の割合がβサイアロン結晶粒全体に対し60%以上、気孔率が30%以上70%以下、平均気孔径が0.2ミクロン以上2ミクロン以下である組織を形成したことを特徴としている。本発明において、表面性状が滑らかとは、結晶粒レベルでの凹凸が従来材と比較して顕著に少ないことを意味している。
βサイアロン作製の原料粉末として、本発明では、金属シリコン、窒化ケイ素、サイアロン、酸化ケイ素、金属アルミニウム、窒化アルミニウム、及び酸化アルミニウムの少なくとも一部を含む混合粉末が用いられる。本発明では、βサイアロン作製の原料粉末として、これらの原料を任意に使用することができるが、これらと同効のものであれば同様に使用することができる。これらのうち、金属シリコン及び金属アルミニウムは、例えば、平均粒径30μm以下の粉末が好適である。また、窒化ケイ素粉末は、例えば、α型結晶構造を持ち、平均粒径10μm以下のものが好適である。また、サイアロンは、例えば、β型結晶構造を持ち、平均粒径1μm以下のものが好適である。更に、酸化ケイ素、窒化アルミニウム、及び酸化アルミニウム粉末は、例えば、平均粒径10μm以下のものが好適である。
本発明においては、好適には、例えば、原料粉末中に焼結助剤として、金属酸化物を添加する。添加される焼結助剤としては、例えば、イットリア、イッテルビアなどの酸化物が好適なものとして例示される。また、焼結助剤の量は、1重量%以下が望ましい。これは、焼結助剤の量が多い場合、緻密化が起こり過ぎるためである。原料粉末は、一般式Si6−z Al8−zにおいて、そのZ値が0.2以上3以下のサイアロンセラミックスになるように各粉末を混合したものを用いる。原料粉末の混合方法は、任意であり、好適には、例えば、ボールミル混合が例示できる。
本発明では、前項に述べた原料粉末に、炭素あるいは炭化ケイ素を添加し、焼結及びβサイアロン結晶粒の伸長を抑制することが可能である。炭素を添加した場合は、焼成中に炭化ケイ素に転化する。炭素あるいは炭化ケイ素は、好適には、含有量が1重量%以上30重量%以下となるように混合する。次に、混合した原料粉末の成形を行う。この場合、必要に応じて、バインダー、分散剤及びその他の成分を適宜選択して添加する。成形方法は任意であり、好適には、例えば、スリップキャスト法、金型成形法、及び押し出し成形法が例示できる。この場合、成型密度により焼成後の多孔体密度が変化するので、適切な成形体密度が得られるように適宜調整を行う。これにより、所定の成形体を得ることができるが、必要であれば、成形後にグリーン加工を行うことも可能である。
次に、成形体の焼成を非酸化性雰囲気中で行う。非酸化性雰囲気としては、例えば、アルゴンや窒素ガス等の不活性ガス、水素ガスや一酸化炭素ガス等の還元性ガス、又はそれらの混合ガスが例示されるが、好適には、窒素ガス雰囲気下での焼成が望ましい。また、焼成時に分解が生じることがあるが、その際には、分解を防止するために、窒素ガス加圧雰囲気下での焼成を行うことが有効である。例えば、混合した原料粉末中に、金属シリコン及び金属アルミニウムが含まれる場合、それらは、窒素雰囲気中での加熱により、次式のように窒化ケイ素及び窒化アルミニウムへと窒化される。
3 Si+ 2 N → Si
2 Al+ N → 2 AlN
また、窒化ケイ素及び窒化アルミニウムを経ずに、直接βサイアロンが生成される場合もある。混合された原料粉末は、高温での焼成により、一般式Si6−z Al8−zで表されるβサイアロンを生成する。βサイアロン生成の反応式として、例えば、
(6−Z) Si+Z AlN+Z Al → 3 Si6−z Al8−z
(4−Z) Si+2Z AlN+Z SiO → 2 Si6−z Al8−z
2SiO+4Al+2N → Si Al
等がよく知られている。本発明では、βサイアロン生成のプロセスは、特に制限されるものではなく、任意のプロセスを採用することができる。
成形体の焼成については、1400℃以上の温度、より好ましくは1500〜1900℃の温度範囲において、10分〜20時間焼結することが望ましい。焼成温度が低過ぎる場合、サイアロンの生成が充分に起らない。また、焼成温度が高過ぎる場合、あるいは焼成時間が長過ぎる場合、緻密化が進行し過ぎて気孔率の低下が生じ、気孔率が30%以下となることや、結晶粒の伸張が促進されて、アスペクト比が4を超える結晶粒が結晶粒全体に対し60%以上形成されることがある。焼成条件は、これらを考慮して好適な範囲に設定される。また、平均気孔径は、原料組成、昇温速度、焼成温度、及び焼成時間に依存するので、使用目的、製品の種類、組成及び大きさ等に応じて適切な気孔径が得られるようにそれらの条件を適宜選択し、決定する。
本発明では、以上の工程により、表面性状の滑らかなサイアロンセラミックス多孔体を得ることができる。焼成後の焼き放し面での滑らかさが不足の場合、適宜加工を行い、より滑らかな表面を得ることもできる。本発明では、βサイアロンの組成の一般式Si6−z Al8−zにおいて、そのZ値が0.2以上3以下、アスペクト比が1以上4以下のβサイアロン結晶粒の割合がβサイアロン結晶粒全体に対して60%以上であることが重要であり、それにより、従来の窒化ケイ素多孔体に比べて、滑らかな表面性状を有するサイアロン多孔体を作製することが可能となる。上記Z値の値、上記アスペクト比の値及び上記アスペクト比の範囲のβサイアロン結晶粒の割合が上述の範囲を外れた場合には、上記表面性状が滑らかな特性を得ることが困難である。本発明の多孔材は、高耐食性であり、使用時においても、粒子の脱落がなく、該多孔材の滑らかな表面性状は、流水下に放置後も、従来の窒化ケイ素多孔体に比べて、安定に保持される。
βサイアロンセラミックス多孔体において、そのZ値及びアスペクト比を上記特定の範囲に調整することにより、従来材と比べて、滑らかな表面性状が得られることは、本発明者らによってはじめて解明された新規知見である。本発明のサイアロンセラミックス多孔体は、好適には、気孔率が30%以上70%以下、平均気孔径が0.2ミクロン以上2ミクロン以下であるが、これらは、使用目的、部材の種類、組成等によって所定の範囲に任意に設定することができる。また、本発明の製造方法における、原料組成、配合、焼結助剤、バインダー、混合、成形、焼成等の条件については、使用目的、目的製品の種類等に応じて任意に設計することができる。
本発明において、滑らかな表面性状というのは、結晶粒レベルでの凹凸を意味している。したがって、結晶粒レベルでの凹凸を規定するには、結晶粒レベルのアスペクト比が重要となる。一方、機械加工での表面粗さには、加工時の粒子の脱落が関与する。アスペクト比の高い粒子が多い場合、粒子が絡み合った塊が脱落し、結果として表面が粗くなる。後記する実施例の図2及び図3での測定結果は、粒子がまとまって脱落した後の部分を示している。本発明において、滑らかな表面性状の特性を決める要件は、βサイアロンの組成とアスペクト比によって実現されると考えられる。一般に、セラミックスの強度は気孔率の増加に従って低下する傾向があり、従来、高気孔率と高強度を両立させることが重要課題とされており、従来材では、高気孔率で、高強度で、かつ滑らかな表面性状を有する多孔材を作製することは困難と考えられていたが、本発明は、上述のように、βサイアロン組成の一般式におけるZ値の値と所定のアスペクト比のβサイアロン結晶粒の割合を特定の範囲に規定することにより、高気孔率と高強度を両立し、かつ表面性状の改善された多孔材の開発を可能としたものであり、これらは、従来材及び先行文献から予期し得るものではなく、実際に多孔材を作製し、その性質を多角的に検証してはじめて知見され得るものである。
本発明により、(1)高気孔率、高強度で、かつ表面性状の滑らかな物性を有するサイアロンセラミックス多孔体、その製造方法及びその用途を提供することができる、(2)従来材では、なし得なかった高気孔率及び高強度を両立し、かつ結晶粒レベルでの凹凸を低減させた多孔材を製造し、提供することができる。(3)該セラミックス多孔体は、焼成後の焼き放し面が滑らかである、あるいは加工仕上げ後の表面が滑らかであることから、他の部品とのすり合せが容易である、(4)該多孔体は、使用時においても、高耐食性であり、固体や液体との接触による表面の凹凸の増加が起こりにくく、表面の滑らかさが安定に維持される、(5)上記サイアロンセラミックス多孔体は、耐食性部材、特に、フィルター部材、触媒担体等として有用である、という効果が奏される。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は当該実施例によって何ら限定されるものではない。
βサイアロン多孔体の作製に用いる原料として、α窒化ケイ素粉末(宇部興産(株)製SN−E10)、窒化アルミニウム粉末((株)トクヤマ製Type−F)、及び酸化アルミニウム粉末(大明化学工業(株)TM−DAR)を使用し、βサイアロンの組成の一般式Si6−z Al8−zにおいて、そのZ値が0.2、0.5、1.0、2.0、3.0となるよう秤量した。これに、0.1wt%のYを焼結助剤として加えた。これらの粉末を、ボールミルにより湿式混合を行った。混合後、乾燥、ふるいがけ、金型成型を行った。これらを、5気圧加圧下の窒素雰囲気中において、1750℃及び1800℃において焼成し、βサイアロンセラミックス多孔体を得た。得られた多孔体の特性を表1に示す。
得られた多孔体は、いずれもアスペクト比1以上4以下のβサイアロン結晶粒の割合がβサイアロン結晶粒全体に対し60%以上、気孔率が30%以上70%以下、平均気孔径が0.2ミクロン以上2ミクロン以下の組織を有し、表面性状が滑らかな特性を有していた。
上記実施例1における、Z値が1.0及び2.0の原料に対し、アモルファスカーボン1重量%を外掛けで添加した。混合、焼成は、実施例1と同様に行い、焼成温度は1750℃のみとした。得られた多孔体の特性を表2に示す。
得られた多孔体は、いずれもアスペクト比1以上4以下のβサイアロン結晶粒の割合がβサイアロン結晶粒全体に対し60%以上、気孔率が30%以上70%以下、平均気孔径が0.2ミクロン以上2ミクロン以下の組織を有し、表面性状が滑らかな特性を有していた。また、カーボン由来で生成した微量の炭化ケイ素を含有していた。
上記実施例1における、Z値が1.0で、焼成を1750℃で行ったサイアロン多孔体について、表面を2000番砥石で研削加工を行った後、表面性状のSEM観察及び表面粗さの測定を行った。また、比較のために、α窒化ケイ素粉末(宇部興産(株)製SN−E10)に5重量%の酸化イットリウム粉末を加え、同条件で作製した多孔体についても同様の測定を行った。表面性状のSEM観察結果を図1に、表面粗さの測定結果を図2に示す。本発明によるサイアロン多孔体は、従来の窒化ケイ素多孔体に比べて、滑らかな表面性状を有していることが分かった。
上記実施例3において、測定に用いたサイアロン多孔体と比較材を流速10m/秒の水が角度45度であたる条件下で100時間放置した後、それらの表面粗さを測定した。本発明によるサイアロン多孔体は、流水下での放置後も、従来の窒化ケイ素多孔体に比べて、滑らかな表面性状を安定に有していた。
以上詳述したように、本発明は、サイアロンセラミックス多孔体、その製造方法及び用途に係るものであり、本発明により、高気孔率で、高強度で、かつ表面性状の滑らかな特性を持つサイアロンセラミックス多孔体を提供することができる。本発明により、従来材では達成することが困難な優れた特性を有するサイアロンセラミックス多孔体を提供することができる。本発明のサイアロンセラミックス多孔体は、焼成後の焼き放し面が滑らかであり、また、加工仕上げ後の表面が滑らかであることから、該サイアロンセラミックス多孔体からなる部材は、他の部品とのすり合わせが容易であり、使用時においても、高耐食性であり、固体や液体との接触による表面の凹凸の増加が起りにくく、固体接触や流体による磨耗の影響を受けにくく、表面の滑らかさが安定に維持される。本発明のサイアロンセラミックス多孔体は、特に、フィルター部材、触媒担体等に好適に使用することができる。
焼成後の加工面性状のSEM観察比較を示す。上段は、本発明により作製したサイアロン多孔体であり、下段は、比較用に作製した窒化ケイ素多孔体である。 焼成後の加工面における粗さ比較を示す。上段は、本発明により作製したサイアロン多孔体であり、下段は、比較用に作製した窒化ケイ素多孔体である。 流水下放置後の面における粗さ比較(流速10m/秒、角度45度)を示す。上段は、本発明により作製したサイアロン多孔体であり、下段は、比較用に作製した窒化ケイ素多孔体である。

Claims (10)

  1. βサイアロンを主成分として70%以上含有する表面性状が滑らかなサイアロンセラミックス多孔体であって、(1)βサイアロンの組成の一般式Si6−z Al8−zにおいて、そのZ値が0.2以上3以下、(2)アスペクト比が1以上4以下のβサイアロン結晶粒の割合がβサイアロン結晶粒全体に対して60%以上、であることを特徴とするサイアロンセラミックス多孔体。
  2. 気孔率が30%以上70%以下、平均気孔径が0.2ミクロン以上2ミクロン以下である、請求項1に記載のサイアロンセラミックス多孔体。
  3. 焼結及びβサイアロン結晶粒の伸長を抑制する成分として、炭化ケイ素を1重量%以上30重量%以下含有する、請求項1に記載のサイアロンセラミックス多孔体。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の表面性状の改善されたサイアロンセラミック多孔体から成ることを特徴とする耐食性部材。
  5. 部材が、フィルター部材である、請求項4に記載の耐食性部材。
  6. βサイアロンを製造する原料粉末が、金属シリコン、窒化ケイ素、サイアロン、酸化ケイ素、金属アルミニウム、窒化アルミニウム、及び酸化アルミニウムの少なくとも一部を含む混合物から成り、かつ焼結助剤として金属酸化物を含み、当該原料粉末を成形し、焼成することにより、(1)βサイアロンの組成の一般式Si6−z Al8−zにおいて、そのZ値が0.2以上3以下、(2)アスペクト比が1以上4以下のβサイアロン結晶粒の割合がβサイアロン結晶粒全体に対して60%以上、であるサイアロンセラミックス多孔体を得ることを特徴とするサイアロンセラミックス多孔体の製造方法。
  7. 原料粉末中に、炭素あるいは炭化ケイ素を添加し、炭素を添加した場合は、焼成中に炭化ケイ素に転化する、請求項6に記載のサイアロンセラミックス多孔体の製造方法。
  8. 炭素あるいは炭化ケイ素を1〜30重量%添加する、請求項7に記載のサイアロンセラミックス多孔体の製造方法。
  9. 成形体の焼成を非酸化物雰囲気中で行う、請求項6に記載のサイアロンセラミックス多孔体の製造方法。
  10. 気孔率が30%以上70%以下、平均気孔径が0.2ミクロン以上2ミクロン以下であるサイアロンセラミックス多孔体を得る、請求項6に記載のサイアロンセラミックス多孔体の製造方法。
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