JP5969353B2 - セラミック焼結体,これを用いた耐食性部材およびフィルターならびにハレーション防止部材 - Google Patents

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Description

本発明は、セラミック焼結体,これを用いた耐食性部材およびフィルターならびにハレーション防止部材に関するものである。
現在、エンジン部品,溶湯金属用部材,切削工具などの産業用部品として窒化珪素質焼結体が使用されている。
このような窒化珪素質焼結体として、例えば、特許文献1では、ケイ素を含む原料を用い、窒素中においてケイ素を窒化せしめる反応焼結の行程を経た後、緻密化された窒化ケイ素基複合材料であって、(1)Zrの酸化物及び/又は窒化物が分散した状態で含まれている、かつ、(2)粒界相が少なくともAlとSiを含む酸化物または酸窒化物の非晶質相である窒化ケイ素基複合材料が提案されている。
特開2008−24579号公報
しかしながら、特許文献1で提案された窒化ケイ素基複合材料は、酸やアルカリ成分に曝されると機械的強度が低下しやすいことから、酸やアルカリ成分に対して耐食性がより高いものが求められていた。
本発明は上述のような課題を解決するために提案されたものであって、その目的は、酸やアルカリ成分に曝されても、粒界相が腐食しにくく、高い機械的強度を維持することができるセラミック焼結体,これを用いた耐食性部材およびフィルターならびにハレーション防止部材を提供するものである。
本発明のセラミック焼結体は、窒化珪素を全質量に対して80質量%以上含有してなり、前記窒化珪素の結晶の粒界相にモンティセライトおよびメルウィナイトの少なくともいずれか1種を含むことを特徴とするものである。
また、本発明の耐食性部材は、上記セラミック焼結体を用いたことを特徴とするものである。
また、本発明のフィルターは、上記セラミック焼結体からなることを特徴とするものである。
また、本発明のハレーション防止部材は、上記セラミック焼結体からなることを特徴とするものである。
本発明のセラミック焼結体によれば、窒化珪素を全質量に対して80質量%以上含有してなり、窒化珪素の結晶の粒界相にモンティセライトおよびメルウィナイトの少なくともい
ずれか1種を含むことから、酸やアルカリ成分に曝されても、機械的強度を高く維持することができる。
また、本発明の耐食性部材によれば、本発明のセラミック焼結体を用いていることから信頼性を向上することができる。
また、本発明のフィルターによれば、本発明のセラミック焼結体からなることから、酸やアルカリ成分に曝されても、機械的強度を高く維持できるとともに、捕集した被捕集物を取り除くために繰り返し熱処理を加えて被捕集物を燃焼除去しても、フィルターにクラックが生じにくい。
また、本発明のハレーション防止部材によれば、本発明のセラミック焼結体からなることから、酸やアルカリ成分に曝されても、機械的強度を高く維持できるとともに、効率よくハレーションを防止することができる。
本実施形態のセラミック焼結体を用いた耐食性部材の一例を示す、ヒーターチューブの縦断面図である。 本実施形態のセラミック焼結体を用いた一例である釣糸用ガイドリングおよびこの釣糸用ガイドリングを備えた釣糸用ガイドの一例を示す、(a)は釣糸用ガイドリングの平面図であり、(b)は(a)の釣糸用ガイドリングを備えた釣糸用ガイドの斜視図である。 本実施形態のセラミック焼結体からなるフィルターおよびそのフィルターを備える排ガス処理装置の一例を模式的に示す概略断面図である。
本実施形態のセラミック焼結体は、窒化珪素を全質量に対して80質量%以上含有してなり、窒化珪素の結晶の粒界相(以下、単に粒界相という)にモンティセライトおよびメルウィナイトの少なくともいずれか1種を含んでなる。なお、粒界相はモンティセライトおよびメルウィナイト以外の結晶相および非晶質相を含んでも構わない。
このようなセラミック焼結体は、粒界相にモンティセライト(CaMgSiO)およびメルウィナイト(CaMgSi)を含まないセラミック焼結体に比べて、粒界相に含まれる非晶質相が相対的に少なくなる。それゆえ、本実施形態のセラミック焼結体は、酸やアルカリ成分に曝されると腐食しやすい非晶質相が相対的に少ないため、酸やアルカリ成分に曝されても、機械的強度を高く維持することができる。また、本実施形態のセラミック焼結体は、高温時に特に溶出しやすい非晶質相が相対的に少ないことから、高温に曝されても変形しにくくなる。さらに、モンティセライトおよびメルウィナイトの結晶相は非晶質相に比べて熱伝導性が高いため、本実施形態のセラミック焼結体の放熱特性が高まる傾向がある。
本実施形態のセラミック焼結体は、窒化珪素を全質量に対して80質量%以上含有すればよく、特に85質量%以上含有すると放熱特性および機械的強度がより高まる傾向があるため好適である。なお、窒化珪素の含有量の測定は蛍光X線分析法またはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法を用いればよく、セラミック焼結体が含有する珪素の含有量を測定し、その珪素の含有量から窒化珪素の含有量に換算して求めればよい。ここで、粒界相において珪素を含む成分(窒化珪素を除く)が存在するものの、セラミック焼結体全体における成分としては微量であるため、窒化珪素の含有量の算出に当たっては、セラミック焼結体に含まれる珪素はすべて窒化珪素を構成するものとみなせばよい。また、その他の測定方法としては公知の方法を用いてセラミック焼結体中の窒素量を測定し、そ
の値から窒化珪素の量に換算することもできる。
また、セラミック焼結体を構成する各元素の含有量は、蛍光X線分析法またはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法によって求めることができる。また、セラミック焼結体に含有される成分の組成は、X線回折法またはエネルギー分散型X線分光法を用いて同定することができる。
また、本実施形態のセラミック焼結体は、アルミニウムおよびカルシウムを粒界相に含んでもよい。
アルミニウムおよびカルシウムが粒界相に含まれると、これらの酸化物が形成される際に窒化珪素の結晶に含まれる酸素が粒界相に取り込まれることで、窒化珪素の結晶に生じる空隙が少なくなるためセラミック焼結体の放熱特性が高まる傾向があり好適である。
なお、本実施形態のセラミック焼結体は、アルミニウムの酸化物(Al)換算による含有量が、セラミック焼結体を構成する全成分100質量%に対して2質量%以上8質
量%以下、特に3質量%以上7質量%以下の範囲内、カルシウムの酸化物(CaO)換算による含有量が、2質量%以上8質量%以下、特に3質量%以上7質量%以下の範囲内にあると、モンティセライトまたはメルウィナイトの他にアルミニウムおよびカルシウムが粒界相として含まれやすくなる傾向がある。なお、本実施形態のセラミック焼結体は不可避不純物が含まれていても何ら差し支えないことはいうまでもない。
また、本実施形態のセラミック焼結体は、粒界相にゲーレナイト(CaAlSiO)およびカルシウムシリケート(CaSiO3,CaSiO4,CaSiO等)の少なくともいずれかを含むことが好適である。粒界相にゲーレナイトおよびカルシウムシリケートの少なくともいずれかを含むことによって、粒界相において酸やアルカリ成分により腐食しやすい非晶質相が相対的により少なくなるため、機械的強度をさらに高く維持することができる。また、粒界相において非晶質相が相対的により少なくなることから、高温に曝されてもさらに変形しにくくなる。さらに、ゲーレナイトおよびカルシウムシリケートの結晶相は、非晶質相よりも熱伝導性が高いので、セラミック焼結体の熱伝導率がより高くなる傾向となる。
また、本実施形態のセラミック焼結体は、表層において、X線回折法によって求められる回折角27°〜28°における窒化珪素のピーク強度Iに対する、回折角34°〜35°におけるモンティセライトおよびメルウィナイトのそれぞれのピーク強度IおよびIの合計の比率{(I+I)/I×100}が4%以上であることが好適である。このような
範囲であれば、より変形のしやすい表層において、粒界相の非晶質相が少なくなるため、耐食性に加えて耐磨耗性を向上することができる。なお、本実施形態における表層とは、表面および表面から深さ1mm未満の範囲にある部分である。
また、本実施形態のセラミック焼結体は、モンティセライトおよびメルウィナイトの各含有量の合計が、内部よりも表層の方が多いことが好適である。このような構成であれば、より変形のしやすい表層において、粒界相の非晶質相が相対的に少なくなっているため、耐食性に加えて耐磨耗性をより向上させることができる。なお、本実施形態における内部とはセラミック焼結体の表層以外の部分である。ここで、上記含有量の比較は例えば以下のようにすればよい。セラミック焼結体の表層および表面から1mm以上内側の部位(内部)において、X線回折法を用い、モンティセライトおよびメルウィナイトの各ピーク強度をそれぞれ測定し、それぞれ最も強度の高いピーク強度を合計し、このピーク強度の合計が高い方を含有量が多いとみなせばよい。
本実施形態のセラミック焼結体は、多孔体である場合に、フィルターやハレーション防止部材として用いることができる。なお、フィルターとは、例えば、内燃機関、焼却炉またはボイラー等から発生する排気ガス中に含まれる微粒子や水中の不純物を捕集するためのものであって、排気ガスや水をフィルターに通すことで、セラミック焼結体の気孔を形成する表面で、微粒子や不純物を捕集するというものである。また、ハレーション防止部材とは、ハレーション、すなわち、特に強い光が当たった部分の周囲が白くぼやけて写る現象を意味し、この現象の発生を防止するための部材である。ハレーション防止部材は、例えば、CCDカメラ等の光学機器を用いた品質検査装置に装着されて、電子部品等の検査に用いられる。また、セラミック焼結体が多孔体であることで、セラミック焼結体に対して入射した光の一部がセラミック焼結体の気孔内にも入射することで、セラミック焼結体外部に反射されにくくなるため、ハレーションが防止され、品質検査装置の誤認識、誤動作が低減される。なお、このようなフィルターやハレーション防止部材は、酸やアルカリ成分が含まれる雰囲気中で使用される場合があるため、酸やアルカリ成分に対して高い耐食性が求められる。
また、本実施形態のセラミック焼結体を多孔体とする場合は、気孔径の累積分布曲線における累積25体積%の気孔径(p25)に対する累積75体積%の気孔径(p75)の比(p75/p25)が1.1以上1.5以下とすることが好適である。比(p75/p25)がこのような範囲であるときは、気孔径のばらつきが小さくなる。したがって、例えば、このようなセラミック焼結体からなるフィルターは、耐熱衝撃性および機械的特性がともに高くなる傾向にあるため、捕集した被捕集物を取り除くために繰り返し熱処理を加えて被捕集物を燃焼除去しても、フィルターにクラックが生じにくい。また、このようなセラミック焼結体からなるハレーション防止部材は、部位による気孔数の偏りが低減されるため、セラミック部材に入射した光の一部が万遍なく気孔内部に入射し、それにより効率よくハレーションを防止することができる。
なお、本実施形態における多孔体とは、気孔率が、例えば、30体積%以上65体積%以下であるセラミック焼結体をいい、この気孔率は、水銀圧入法によって求めることができる。
また、セラミック焼結体の気孔の気孔径(p25)および(p75)は、例えば、セラミック焼結体の気孔径を以下の式(1)により求め、その累積分布曲線における累積25体積%および75体積%に相当する気孔径をそれぞれ気孔径(p25)および(p75)として求めればよい。なお、気孔径の累積分布曲線とは、2次元のグラフにおける横軸を気孔径、縦軸を気孔径の累積気孔体積の百分率とした場合、気孔径の累積分布を示す曲線をいい、気孔径の分布範囲を示すものである。
このセラミック焼結体の気孔の気孔径(p25)および(p75)については、水銀圧入法に準拠して求めればよい。具体的には、まず、セラミック焼結体から質量が2g以上3g以下となるように試料を切り出す。次に、水銀圧入型ポロシメータを用いて、試料の気孔に水銀を圧入し、水銀に加えられた圧力と、気孔内に浸入した水銀の体積とを測定する。
この水銀の体積は気孔の体積に等しく、水銀に加えられた圧力と気孔径には以下の式(1)(Washburnの関係式)が成り立つ。
p=−4σcosθ/P・・・(1)
但し、p:気孔径(m)
P:水銀に加えられた圧力(Pa)
σ:水銀の表面張力(0.485N/m)
θ:水銀と気孔の表面との接触角(130°)
式(1)から各圧力Pに対する各気孔径pが求められ、各気孔径pの分布および累積気
孔体積を導くことができる。そして、累積気孔体積の百分率が25体積%および75体積%に相当するそれぞれの気孔径(p25),(p75)を求めればよい。
また、本実施形態のセラミック焼結体は、クロム,マンガン,鉄および銅の少なくともいずれか1種を含む珪化物である第1の珪化物を含むことが好適である。これらの第1の珪化物は、理由は明らかではないが、主結晶相および粒界相に対して残留応力を発生させると考えられ、破壊靱性を高くすることができるとともに、高温における破壊の形態である粒界滑りが発生する際に、窒化珪素の粒子の滑りを妨げる楔のような働きをすると考えられ、高温における強度および耐熱衝撃性を高くすることができる。さらに、これらの第1の珪化物は、焼成における液相成分の一つとして作用し、セラミック焼結体の焼結性を向上させることができる。ここで、本実施形態のセラミック焼結体における主結晶相とは、窒化珪素の結晶からなる相をいう。
なお、クロム,マンガン,鉄および銅の合計含有量は、セラミック焼結体を構成する全成分100質量%のうち、0.02質量%以上3質量%以下であることが好適である。
また、第1の珪化物は、粒界相中に粒径が2μm以上50μm以下、望ましくは粒径が2μm以上30μm以下の粒子として点在して、組成式がCrSi,CrSi,CrSi,CrSi,CrSi,MnSi,MnSi,MnSi,FeSi,FeSi,FeSi,FeSi,FeSi,FeSi,FeSi,FeSi,FeSi,FeSi,CuSi,CuSi,CuSiおよびCuSiの少なくともいずれかで表される珪化物として存在し、特にFeSi(JCPDS#35−0822)であることが好適である。
また、本実施形態のセラミック焼結体は、タングステンおよびモリブデンの少なくともいずれか1種を含む珪化物である第2の珪化物を含むことが好適である。第2の珪化物は、クロム,マンガン,鉄および銅を固溶しやすく、これらの金属元素を固溶することにより、金属元素の偏在を抑制し、この偏在に伴って生じる破壊のおそれが低減されることから、商品価値を向上させることができる。また、第2の珪化物を含有することでセラミック焼結体の表面を黒色化することができる。
なお、タングステンおよびモリブデンの合計含有量は、セラミック焼結体を構成する全成分100質量%のうち、0.02質量%以上3質量%以下であることが好適である。
また、第2の珪化物は、主結晶相内および粒界相中の少なくともいずれかに粒径が2μm以上50μm以下、望ましくは粒径が2μm以上30μm以下の粒子として点在して、組成式がWSi,WSi,WSi,MoSi,MoSiおよびMoSiの少なくともいずれかで表される珪化物として存在することが好ましく、特にWSi(JCPDS#81−1916)であることが好適である。
特に、第2の珪化物が、タングステンの珪化物を含む場合には、X線回折法によって求められるWSiの(101)面および(103)面におけるピーク強度I(WSi)に対するWSiの(411)面および(321)面におけるピーク強度I(WSi)の比率I(WSi)/I(WSi)は、0.1以上であることが好適であり、こ
の比率が0.1以上であると、セラミック焼結体の耐熱性が高くなる。
ここで、第2の珪化物の粒径は、JIS R 1670−2006で規定されるグレインサイズ測定方法における円相当径を採用すればよい。
前処理として、表層または断面を平均粒径が1μmのダイヤモンド砥粒が含まれるペー
ストで研磨し鏡面を得る。
そして、走査型電子顕微鏡を用いて、この鏡面における第2の珪化物の結晶粒子が20個以上になるように倍率を設定した後、反射電子像を用いて粒径を求めればよい。
また、本実施形態のセラミック焼結体は、アルミン酸マグネシウムを含むことが好適である。アルミン酸マグネシウムを含むときには、アルミン酸マグネシウムは窒化珪素よりもアルカリに対する耐食性が高まるため、アルカリに対する耐食性がさらに高くなる。
また、本実施形態のセラミック焼結体は、希土類金属の酸化物の合計含有量がセラミック焼結体を構成する全成分100質量%に対して2質量%以下であることが好適である。
希土類金属の酸化物の合計含有量がセラミック焼結体を構成する全成分100質量%に対
して2質量%以下であると、理由は不明であるが、酸に対する耐食性が高くなる傾向がある。特に、希土類金属の酸化物の合計含有量が0.1質量%以下であることが好適である。
本実施形態のセラミック焼結体の機械的特性は、4点曲げ強度が650MPa以上であり
、動的弾性率が300GPa以上であり、ビッカース硬度(Hv)が13GPa以上であり、
破壊靱性(K1C)が5MPam1/2以上であることが好適である。これら機械的特性が上記範囲であることにより、セラミック焼結体を溶湯金属用部材または耐磨耗性部材に用いた場合には、特に、耐クリープ性やヒートサイクルに対する耐久性を向上させることができるので、高い信頼性が得られるとともに長期間にわたって使用することができる。
なお、本実施形態のセラミック焼結体が多孔体である場合には、その機械的特性は、室温における4点曲げ強度が35MPa以上であり、800℃における4点曲げ強度が25MPa
以上であり、動的弾性率が35GPa以上であり、ビッカース硬度(Hv)が13GPa以上であり、破壊靱性(K1C)が5MPam1/2以上であることが好適である。
ここで、4点曲げ強度については、JIS R 1601−2008(ISO 17565:2003(
MOD))に準拠して測定すればよい。ただし、セラミック焼結体の厚みが薄く、セラミック焼結体から切り出した試験片の厚みを3mmとすることができない場合には、セラミック焼結体の厚みをそのまま試験片の厚みとして評価するものとし、その結果が上記数値を満足することが好適である。
また、セラミック焼結体の動的弾性率は、JIS R 1602−1995で規定される超音波パルス法に準拠して測定すればよい。ただし、セラミック焼結体の厚みが薄く、セラミック焼結体から切り出した試験片の厚みを10mmとすることができない場合には、片持ち梁共振法を用いて評価するものとし、その結果が上記数値を満足することが好適である。
ビッカース硬度(Hv)および破壊靱性(K1C)については、それぞれJIS R 1610−2003(ISO 14705:2000(MOD))およびJIS R 1607−1995に規定さ
れる圧子圧入法(IF法)に準拠して測定すればよい。なお、セラミック焼結体が多孔体である場合には、ビッカース硬度(Hv)については、ナノインデンテーション法を用いればよい。また、セラミック焼結体の厚みが薄く、セラミック焼結体から切り出した試験片の厚みをそれぞれJIS R 1610−2003およびJIS R 1607−1995の圧子圧入法(IF法)で規定する0.5mmおよび3mmとすることができないときには、セラミック
焼結体の厚みをそのまま試験片の厚みとして評価して、その結果が上記数値を満足することが好適である。ただし、そのままの厚みで評価して上記数値を満足することができないほどにセラミック焼結体の厚みが薄いとき、例えば0.2mm以上0.5mm未満のときには、セラミック焼結体に加える試験力および押込荷重をいずれも0.245Nとし、試験力および
押込荷重を保持する時間をいずれも15秒としてビッカース硬度(Hv)および破壊靱性(K1C)を測定すればよい。
本実施形態のセラミック焼結体の電気的特性は、体積抵抗率が、常温で1014Ω・cm以上であって、300℃で1012Ω・cm以上であることが好適である。この体積抵抗率は
、JIS C 2141−1992に準拠して測定すればよい。ただし、セラミック焼結体が小さく、セラミック焼結体からJIS C 2141−1992で規定する大きさとすることができない場合には、2端子法を用いて評価するものとし、その結果が上記数値を満足することが好適である。
図1は、本実施形態のセラミック焼結体を用いた耐食性部材の一例として、溶湯金属用部材の一例であるヒーターチューブの縦断面図である。図1に示すように、ヒーターチューブ1は、溶湯金属中に浸漬され、熱源供給電源2に接続されたヒーター3の保護に用いられるものである。そして、このヒーターチューブ1として本実施形態のセラミック焼結体を用いることにより、酸やアルカリ成分に曝されても、機械的強度を高く維持することができ、信頼性が高くなるので、ヒーター3の保護に好適に用いることができる。特に、アルミニウム溶湯中において好適に用いることができる。具体的には、溶湯金属の中にはアルカリ金属塩を形成しヒーターチューブ等の溶湯金属部材を腐食するものがあるが、本実施形態のヒーターチューブ1は、そのような溶湯金属と接触しても、粒界相において、酸やアルカリ成分により腐食しやすい非晶質相が相対的に少ないため、長期にわたって機械的強度を高く維持することができる。また、ヒーターチューブ1は、固体の金属を溶湯金属にするために高温に曝されたとしても、熱により溶出しやすい非晶質相が相対的に少ないため長期にわたって機械的強度を高く維持することができる。
図2は、本実施形態のセラミック焼結体を用いた一例である釣糸用ガイドリングおよびこの釣糸用ガイドリングを備えた釣糸用ガイドの一例を示す、(a)は釣糸用ガイドリングの平面図であり、(b)は(a)の釣糸用ガイドリングを備えた釣糸用ガイドの斜視図である。
図2に示す例の釣糸用ガイドリング4は、その内周側に釣糸(図示しない)を挿通して案内するものであり、釣糸用ガイド5は、釣糸用ガイドリング4を保持する保持部6を備え、この保持部6の支持部7および釣竿(図示しない)に固定する固定部8が一体的に形成された枠体9に釣糸用ガイドリング4を備えたものである。この釣糸用ガイドリング4は酸やアルカリ成分に曝されても、機械的強度が損なわれにくい本実施形態のセラミック焼結体を用いることにより、信頼性が高くなるので、釣糸の挿通および案内に好適に用いることができる。具体的には、海水のpHは弱アルカリ性のため、従来の釣糸用ガイドは海水が付着した状態で、釣糸が繰り返して摺動すると劣化し易いという問題があるものの、本実施形態のセラミック焼結体を用いた釣糸用ガイドリング4は、粒界相において、酸やアルカリ成分により腐食しやすい非晶質相が相対的に少ないため、長期間にわたって機械的強度を高く維持することができる。また魚を釣った際、釣糸と釣糸用ガイドリング4との摩擦で摩擦熱が生じたとしても釣糸用ガイドリング4は、粒界相において、熱により溶出しやすい非晶質相が相対的に少ないため長期間にわたって機械的強度を高く維持することができる。
図3は、本実施形態のセラミック焼結体からなるフィルターおよびそのフィルターを備えるガス処理装置の一例を模式的に示す概略断面図である。
図3に示す例のガス処理装置10は、本実施形態のセラミック焼結体からなるハニカム状のフィルター11を備え、流通孔の封止されていない一端(101)を流入口とし、この他の
流通孔の封止されていない他端(102)を流出口として排気ガス(EG)を通過させるこ
とによって、排気ガス中の微粒子を隔壁部14で捕集するガス処理装置である。
本実施形態のフィルター11は、その外周を断熱材13に保持された状態でケース15に収容され、断熱材13は、例えばセラミックファイバー,ガラスファイバー,カーボンファイバーおよびセラミックウィスカーの少なくとも1種から形成されている。また、ケース15は、例えば、SUS303,SUS304およびSUS316等のステンレスからなり、その中央部
が円筒状に、両端部が円錐台状にそれぞれ形成され、排気ガスが供給されるケース15の流入口17aおよび排気ガスが排出される流出口17bにはそれぞれパイプ18a,18bが接続されている。
このようなガス処理装置10の流入側には、ディーゼルエンジン,ガソリンエンジン等の内燃機関(図示しない)が接続され、この内燃機関が作動して生じた排気ガスがパイプ18aからケース15に供給されると、フィルター11の流入路20bの中に、排気ガスが導入されるが、流出側に形成された封止材19bによってその流出が遮られる。流出が遮られた排気ガスは、通気性を有する隔壁部14を通過して、隣接する流出路20aに導入される。排気ガスが隔壁部14を通過するとき、隔壁部14の壁面や隔壁部14の気孔の表面で排気ガス中の微粒子が捕集される。微粒子が捕集された排気ガスは、浄化された状態で、流出路17bから
パイプ18bを介して外部に排出される。
このようなガス処理装置10は、前述の通り、耐熱衝撃性および機械的特性がともに高くなる傾向にあるセラミック焼結体からなるフィルター11を備えるため、捕集した微粒子を取り除くために繰り返し熱処理を加えて微粒子を燃焼除去しても、フィルターにクラックが生じにくい。
次に、本実施形態のセラミック焼結体の製造方法について説明する。
まず、金属シリコンの粉末と、β化率が20%以下である窒化珪素の粉末とを準備して、(金属シリコンの粉末)/(窒化珪素の粉末)の質量比が1以上10以下となるように混合して混合粉末を得る。ここで、金属シリコンの粉末の粒径によっては、窒化不足および焼結不足の原因となるおそれがあるので、金属シリコンの粉末は、粒度分布曲線の累積体積の総和を100%としたときの累積体積が90%となる粒径(D90)を10μm以下、好まし
くは6μm以下のものを用いる。
窒化珪素の粉末のβ化率は、本実施形態のセラミック焼結体の強度および破壊靱性値に影響する。β化率が20%以下の窒化珪素の粉末を用いるのは、強度および破壊靱性値をともに高くすることができるからである。β化率が20%を超える窒化珪素の粉末は、焼成工程で粒成長の核となって、粗大で、しかもアスペクト比の小さい結晶となりやすく、強度および破壊靱性値とも低下するおそれがある。そのため、特に、β化率が10%以下の窒化珪素の粉末を用いるのが好適である。
ところで、窒化珪素には、その結晶構造の違いにより、α型およびβ型という2種類の窒化珪素が存在する。α型は低温で、β型は高温で安定であり、1400℃以上でα型からβ型への相転移が不可逆的に起こる。ここで、β化率とは、X線回折法で得られたα(102
)回折線とα(210)回折線との各ピーク強度の和をIα、β(101)回折線とβ(210)
回折線との各ピーク強度の和をIβとしたときに、下記(2)式によって算出される値である。
β化率={Iβ/(Iα+Iβ)}×100 (%) (2)
また、焼結助剤としては、酸化アルミニウム,酸化珪素および酸化ジルコニウムの少なくともいずれか1種からなる金属酸化物,炭酸カルシウムならびにアルミン酸マグネシウムの各粉末を準備する。これらの粉末を焼結助剤として用いることによって、焼結性が向
上したセラミック焼結体が得られ、機械的特性を高めることができる。なお、前記金属酸化物,炭酸カルシウムおよびアルミン酸マグネシウムの各粉末の含有量は、混合粉末および各粉末の合計を100質量%としたとき、13質量%以上23質量%以下とすることが好適で
ある。
なお、粒界相にゲーレナイトおよびカルシウムシリケートの少なくともいずれかを含むセラミック焼結体を得るには、上記金属酸化物のうち、少なくとも酸化アルミニウムを用いればよい。なお、酸化アルミニウムの量を適宜調整することで、ゲーレナイトおよびカルシウムシリケートの含有量を調整することができる。具体的には、酸化アルミニウムの量を少なくすると、ゲーレナイトの含有量は減少傾向となり、カルシウムシリケートの含有量が増加傾向となる。なお、酸化アルミニウムの量を調整することでゲーレナイトまたはカルシウムシリケートのみを粒界相に含むセラミック焼結体を作製することもできる。
また、クロム,マンガン,鉄および銅の少なくともいずれか1種を含む珪化物である第1の珪化物を含むセラミック焼結体を得るには、酸化クロム,酸化マンガン,酸化第2鉄および酸化銅の少なくともいずれか1種の粉末を、混合粉末と焼結助剤の粉末との合計100質量部に対して0.02質量部以上4質量部以下添加すればよい。添加された酸化クロム,
酸化マンガン,酸化第2鉄および酸化銅の各粉末は、焼成時に珪素と反応して、酸素を脱離し、粒界相に熱力学的に安定した珪化物が生成される。
また、タングステンおよびモリブデンの少なくともいずれか1種を含む珪化物である第2の珪化物を含むセラミック焼結体を得るには、酸化タングステンおよび酸化モリブデンの少なくともいずれか1種の粉末を、混合粉末と焼結助剤の粉末との合計100質量部に対
して0.5質量部以上1質量部以下添加すればよい。添加された酸化タングステンおよび酸
化モリブデンの各粉末は、焼成時に珪素と反応して、酸素を脱離し、粒界相に熱力学的に安定した珪化物が生成される。
次に、所定量秤量した各粉末を溶媒とともに、旧知の方法、例えばバレルミル,回転ミル,振動ミル,ビーズミル,サンドミル,アジテーターミルなどによって混合・粉砕してスラリーとする。この粉砕で用いる粉砕用メディアとしては、窒化珪素質焼結体、酸化ジルコニウム質焼結体、酸化アルミニウム質焼結体等からなるものが使用可能であるが、混入したときに不純物となる影響を少なくするにあたり、作製するセラミック焼結体と同じ材料組成または近似組成の窒化珪素質焼結体からなる粉砕用メディアを用いることが好適である。
なお、この湿式で行なう粉砕は、焼結性の向上および結晶組織の柱状化の点から、粒径(D90)が3μm以下となるまで行なうことが好適である。なお、得ようとする粒度分布とするには、粉砕用メディアの外径,量,粉砕時間等を調整すればよい。以上の粉砕を短時間で行なうには、予め累積体積が50%となる粒径(D50)が1μm以下の粉末を用いることが好適である。
また、パラフィンワックス、PVA(ポリビニルアルコール)、PEG(ポリエチレングリコール)などの有機バインダを、混合粉末と混合粉末に添加した前記各粉末との合計100質量部に対して1質量部以上10質量部以下秤量してスラリーに混合することで成形性
を向上させることができる。さらに、増粘安定剤,分散剤,pH調整剤,消泡剤等を添加してもよい。
次に、スラリーをASTM E11−61に記載されている粒度番号が200のメッシュまた
はこのメッシュより細かいメッシュの篩いに通した後に、噴霧乾燥造粒装置を用いて造粒して顆粒を得る。
次に、得られた顆粒をプレス成形またはCIP成形(Cold Isostatic Pressing)など
によって相対密度45〜60%の所望の形状を有する成形体とする。成形圧力は50〜100MP
aの範囲であれば、成形体の密度の向上や顆粒の潰れ性の観点から好適である。
また、鋳込み成形,射出成形,テープ成形,粉末圧延などの成形方法であってもよい。また、それぞれの成形方法で成形した後に、成形体を切削したり、積層したり、接合したりすることによって所望の形状としてもよい。
次に、炭化珪素製または表面が窒化珪素質の焼結結晶粒子で覆われたカーボン製のこう鉢中に得られた成形体を載置して、窒素または真空中などで脱脂する。脱脂する温度は添加した有機バインダの種類によって異なるが900℃以下であることが好適である。特に、
好ましくは450℃以上800℃以下である。なお、このように成形体から有機バインダなどの脂質の成分を取り除くことを脱脂といい、この脱脂したものを脱脂体という。
次に、窒素雰囲気中において、脱脂したときの温度からさらに温度を上げて焼成する。このとき、添加した金属シリコン粉末における金属シリコン(Si)が窒素ガス(N)と窒化反応することで窒化珪素(Si)となり、このときの窒化反応により相対密度が55〜70%まで上昇し、その後の焼成収縮率が小さくなることから、焼成変形を抑制することができる。
なお、上述した窒化反応は、以下のように進行させるのがよい。金属シリコン(Si)を含む脱脂体は、窒化工程において脱脂体の表面に存在するSiから窒化が始まり、時間の経過とともに脱脂体の内部に存在するSiが窒化される。そのため、特に脱脂体の内部における窒化不足を生じさせないためには、低温での窒化(第1の窒化工程)の後、高温での窒化(第2の窒化工程)を行なうことが好適である。
まず、第1の窒化工程として、窒素分圧を10〜200kPaとし、1000〜1200℃の温度で15〜25時間保持することで、脱脂体中のシリコンの10〜70質量%を窒化する。次に、第2
の窒化工程として、第1の窒化工程の温度から1400℃の間の温度で5〜15時間保持することで脱脂体中のシリコンの残部を窒化させる。ここで、第2の窒化工程の温度は第1の窒化工程の温度よりも高く、第1の窒化工程と第2の窒化工程とは連続して実施することが好適である。
そして、昇温を続け、焼成温度を1700℃以上1800℃未満とし、窒素の圧力を常圧として、6〜14時間保持し、モンティセライトを含むセラミック焼結体を得る場合には、時間当たり210℃以上230℃未満,メルウィナイトを含むセラミック焼結体を得る場合には、時間当たり190℃以上210℃未満の速度で冷却すればよい。
また、モンティセライトおよびメルウィナイトとも含むセラミック焼結体を得るには、時間当たり170℃以上190℃未満の速度で冷却すればよい。
また、モンティセライトおよびメルウィナイトの各含有量の合計が、内部よりも表層の方が多いセラミック焼結体を得るには、焼成温度を1750℃以上1800℃未満として、11時間以上14時間保持すればよい。
また、上述した製造方法によって得られたセラミック焼結体は、必要に応じて研磨や研削等の加工を施し、本実施形態の耐食性部材として用いることができる。
ここで、多孔体のセラミック焼結体を作製する場合を以下で説明する。
上記セラミック焼結体の製造方法と同様に混合粉末を作製し、混合粉末と混合粉末に添加した前記各粉末との合計100質量部に対して、ポリメタクリル酸メチル(PMMA),
ポリビニルブチラール,グラファイト,澱粉,フェノール樹脂,ポリスチレン樹脂またはポリエチレン樹脂等の造孔剤とを1質量部以上13質量部以下添加し、さらに、例えば、メチルセルロース,カルボキシルメチルセルロース,ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類、ポリビニルアルコールなどのアルコール類、リグニンスルホン酸塩などの塩、パラフィンワックス,マイクロクリスタリンワックス等のワックスおよびポリビニルアルコール(PVA),エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA),液晶ポリマー,エンジニアリングプラスチックなどの熱可塑性樹脂等の成形助剤,可塑剤および潤滑剤を水に加えて混合体とし、この混合体を万能攪拌機,回転ミルまたはV型攪拌機等に投入して混練物を作製する。なお、気孔径の比(p75/p25)が1.1以上1.5以下であるセラミック焼結体を得るには、形状が球状であって、粒径の累積分布曲線における累積25体積%の粒径(d25)に対する累積75体積%の粒径(d75)の比(d75/d25)が1.05以上1.45以下である造孔剤を用いればよい。
そして、この混練物を三本ロールミルや混練機等を用いて混練し、可塑化した坏土を押出成形機を用いて成形することにより任意の形状をした成形体を得る。得られた成形体を上記セラミック焼結体の製造方法と同様に焼成することにより多孔体のセラミック焼結体を得ることができる。また、本実施形態のフィルターやハレーション防止部材は、セラミック焼結体を公知の方法で加工したり、成形体の成形方法を適宜変更したりすることで作製することができる。
以下、本実施形態の実施例を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、平均粒径(D50)が3μmである金属シリコンの粉末と、平均粒径(D50)が1μmである、β化率が10%(即ち、α化率が90%)の窒化珪素の粉末とを準備して、(金属シリコンの粉末)/(窒化珪素の粉末)の質量比が5.4であるように混合して混合
粉末を得た。ここで、金属シリコンの粉末は、粒度分布曲線の累積体積の総和を100%と
したときの累積体積が90%となる粒径(D90)を5μmとした。
次に、焼結助剤として、表1に示す金属酸化物,炭酸カルシウムおよびアルミン酸マグネシウムの各粉末をそれぞれ、上記混合粉末,水および窒化珪素質焼結体からなる粉砕用メディアとともにバレルミルに入れて、粒径(D90)が1μm以下となるまで混合粉砕した。ここで、表1に示す金属酸化物,炭酸カルシウムおよびアルミン酸マグネシウムの各粉末の含有量は、混合粉末および前記各粉末の合計100質量%に対して、それぞれ表1
に示す含有量,11.3質量%,2.6質量%とした。
その後、有機バインダであるポリビニルアルコール(PVA)を、混合粉末と金属化合物の粉末との総和100質量部に対して5質量部添加して混合することによりスラリーを得
た。スラリーをASTM E11−61に記載されている粒度番号が200のメッシュの篩いに
通した後に、噴霧乾燥造粒装置を用いて造粒した顆粒を得た。
次に、得られた顆粒をCIP成形して、さらに切削加工を施して、外径および内径がそれぞれ180mm,157mmであり、長さが1205mmの図1に示すヒーターチューブ4となる形状の成形体を得た。
次に、炭化珪素製のこう鉢中に成形体を載置し、窒素雰囲気中500℃で5時間保持する
ことにより脱脂した。続けて、さらに温度を上げて、実質的に窒素からなる150kPaの
窒素分圧中にて、1050℃で20時間、1250℃で10時間順次保持して窒化した。そして、さらに昇温して、表1に示す焼成温度で12時間保持し、窒素の圧力を常圧として、焼成し、表1に示す降温速度で冷却することにより、外径および内径がそれぞれ150mm,130mmであり、長さが1000mmの試料No.1〜15のセラミック焼結体からなる溶湯金属用部材であるヒーターチューブ4を得た。
そして、試料No.1〜15のセラミック焼結体における粒界相に存在する結晶を、X線回折法を用いて同定した。表1に同定された成分を示す。なお、モンティセライト,メルウィナイト,ゲーレナイトおよびカルシウムシリケートが同定されなかった場合は棒線で示す。また、試料No.1〜15に含まれる珪素の含有量をICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法により測定し、珪素の含有量から窒化珪素の含有量に換算したところ、いずれの試料も窒化珪素の含有量が80質量%以上であることを確認した。
また、試料No.1〜15をそれぞれ30質量%塩酸,60質量%硝酸,95質量%硫酸および30質量%水酸化ナトリウム溶液に100時間浸漬した後の単位面積当たりの質量の減少量を
調べた。その値を表1に示す。なお、上記各液体の温度は、いずれも90℃とした。
表1に示す通り、試料No.2〜7,9〜11,13〜15は、窒化珪素を全質量に対して80質量%以上含有してなり、窒化珪素の結晶の粒界相にモンティセライトおよびメルウィナイトの少なくともいずれか1種を含むことから、上記各液体に100時間浸漬しても試料N
o.1,8および12に比べて質量の減少量が少ない。
また、試料No.2〜7は、上記成分に加えてゲーレナイトおよびカルシウムシリケートの少なくともいずれかを含むことから、上記各液体に100時間浸漬したときの質量の減
少量は特に少ない。
この結果から、試料No.2〜7,9〜11,13〜15は、粒界相において、酸やアルカリ成分により腐食しやすい非晶質相が試料No.1,8および12に比べて少なくなっているので、酸やアルカリ成分に曝されても機械的強度を高く維持できるといえる。
まず、表層において、比率{(I+I)/I×100}が4%以上となる試料No.16,17を、それぞれ試料No.2,4を作製した方法と同様の方法で作製し、いずれも厚
みが5mmで15mm角の基板状とした。
但し、成形方法は、CIP成形法ではなく、1軸プレス成形法を用いた。
また、比率{(I+I)/I×100}が4%未満である試料No.17を以下のよう
に作製した。まず、試料No.17の成形体は、試料No.16の成形体を作製した方法と同じ方法で作製した。次に、炭化珪素製のこう鉢中に試料No.17の成形体を載置し、窒素雰囲気中500℃で5時間保持することにより脱脂した。続けて、さらに温度を上げて、実
質的に窒素からなる150kPaの窒素分圧中にて、1050℃で20時間、1250℃で10時間順次
保持して窒化した。そして、さらに昇温して、1730℃で10時間保持し、窒素の圧力を常圧として、焼成し、時間当たり220℃で冷却することにより厚みが5mmで15mm角の基板
状の試料No.18を作製した。
そして、各試料の表層において、窒化珪素、モンティセライトおよびメルウィナイトの各ピーク強度I,I,IをX線回折法により測定して、比率{(I+I)/I
×100}を算出した。
次に、JIS R 1610−2003(ISO 14705:2000(MOD))に準拠して、試験
力およびその保持時間をそれぞれ9.8N,15秒として、各試料のビッカース硬度を測定し
た。上記比率およびビッカース硬度を表2に示す。
表2に示す結果からわかるように、試料No.16,17は、上記比率が4%以上であることから、この比率が4%未満である試料No.18よりもビッカース硬度が大きく、耐磨耗性が高いことがわかった。
まず、モンティセライトが内部よりも表層の方が多い試料No.19を、試料No.16を作製した方法と同様の方法で作製し、厚みが5mmで15mm角の基板状とした。
また、モンティセライトが表層よりも内部の方が多い試料No.20を以下のように作製した。まず、試料No.20の成形体は、試料No.19の成形体を作製した方法と同じ方法で作製した。次に、炭化珪素製のこう鉢中に試料No.20の成形体を載置し、窒素雰囲気中500℃で5時間保持することにより脱脂した。続けて、さらに温度を上げて、実質的に
窒素からなる150kPaの窒素分圧中にて、1050℃で20時間、1250℃で10時間順次保持し
て窒化した。そして、さらに昇温して、1730℃で10時間保持し、窒素の圧力を常圧として、焼成し、時間当たり220℃で冷却することにより厚みが5mmで15mm角の基板状の試
料No.20を作製した。
なお、試料No.19および試料No.20においてモンティセライトの含有量が内部より表層の方が多いかどうかは発明を実施するための形態で述べたとおりに測定して確認した。
次に、耐磨耗性を確認するため作製した試料No.19およびNo.20のビッカース硬度をJIS R 1610−2003(ISO 14705:2000(MOD))に準拠して、試験力およ
びその保持時間をそれぞれ9.8N,15秒として測定した。
結果は、試料No.19が13.8GPa、No.20が12.7GPaであり、モンティセライトの含有量が内部より表層の方が多い試料No.19は、モンティセライトの含有量が表層より内部の方が多い試料No.20より耐磨耗性が良好であることがわかった。
まず、実施例1で作製した混合粉末、酸化アルミニウム,炭酸カルシウムおよびアルミン酸マグネシウムの各粉末の合計100質量部に対して、造孔剤として澱粉を5質量部添加
し、成形助剤,可塑剤および潤滑剤を水に加えて混合体とし、この混合体を万能攪拌機に
投入して混練物を作製した。なお、造孔剤である澱粉は、形状が球状であって、粒径の累積分布曲線における累積25体積%の粒径(d25)に対する累積75体積%の粒径(d75)の比(d75/d25)を表3に示す通りとした。
次に、図3に示すフィルター11を得るための成形型が装着された横型押出成形機に坏土を投入し、圧力を加えてハニカム状に成形し、乾燥させてから、所定長さに切断して成形体を得た。
そして、電気炉の中で焼成台上に成形体を試料毎に流入口を下側にして、焼成温度および保持時間をそれぞれ1700℃,6時間として焼成することによって、外径,高さ,隔壁部の厚さおよび軸方向Aに対する垂直な断面における流入路20bと流出路20aを併せた個数がそれぞれ144mm,152mm,0.2mm,300CPIであるハニカム状のフィルターからなる
試料No.21〜26を得た。なお、流入路20bの直径は、流出路20aの直径に対して、1.4
倍とし、隔壁部14の気孔率および平均気孔径は、いずれの試料もそれぞれ45体積%,14μmとした。
また、耐熱衝撃性を評価するために、フィルター11の流出口(102)のみを加熱し、フ
ィルター11にクラックが発生したときの流入口(101)および流出口(102)の各温度を測
定し、その温度差を耐熱衝撃温度として表3に示した。
表3に示す結果からわかるように、気孔径の比(p75/p25)が1.1以上1.5以下である試料No.21〜25は、気孔径のばらつきが抑制されていることから、上記比(p75/p25)が1.5を超える試料No.26よりも耐熱衝撃温度が高く、熱処理に繰り返し用いても、
クラックが生じにくいと言える。
1:ヒーター用チューブ
2:熱電供給電源
3:ヒーター
4:釣糸用ガイドリング
5:釣糸用ガイド
6:保持部
7:支持部
8:固定部
9:枠体
10:ガス処理装置
11:フィルター
13:断熱材
14:隔壁部
15:ケース
17a:流入口
17b:流出口
18:パイプ
19a,19b:封止材
20a:流出路
20b:流入路

Claims (8)

  1. 窒化珪素を全質量に対して80質量%以上含有してなり、前記窒化珪素の結晶の粒界相にモンティセライトおよびメルウィナイトの少なくともいずれか1種を含むことを特徴とするセラミック焼結体。
  2. 前記粒界相にゲーレナイトおよびカルシウムシリケートの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載のセラミック焼結体。
  3. 表層において、X線回折法によって求められる回折角27°〜28°における前記窒化珪素のピーク強度Iに対する、回折角34°〜35°における前記モンティセライトおよび前記メルウィナイトのそれぞれのピーク強度IおよびIの合計の比率{(I+I)/
    ×100}が4%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラ
    ミック焼結体。
  4. 前記モンティセライトおよび前記メルウィナイトの各含有量の合計が、内部よりも前記表層の方が多いことを特徴とする請求項3に記載のセラミック焼結体。
  5. 多孔体であって、気孔径の累積分布曲線における累積25体積%の気孔径(p25)に対する累積75体積%の気孔径(p75)の比(p75/p25)が1.1以上1.5以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のセラミック焼結体。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のセラミック焼結体を用いたことを特徴とする耐食性部材。
  7. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のセラミック焼結体からなることを特徴とするフィルター。
  8. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のセラミック焼結体からなることを特徴とするハレーション防止部材。
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