JP3593535B2 - 多孔質体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔質体とその製造方法に関し、さらに詳しくは、高気孔率と高強度を同時に実現した、β型窒化珪素結晶を主結晶とする焼結体からなる多孔質体であって、特に、フィルタ、触媒担体、膜支持体等に好適に用いられる多孔質体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、多孔質セラミックスは耐熱性、断熱性、耐スポーリング性を利用した断熱材や流体透過性を利用したろ過材、高比表面積を利用した触媒担体等に用いられてきた。この多孔質セラミックスは、最近では高温ガスのろ過やごみ焼却炉排ガスフィルタ及び高効率石炭発電システムに用いられる粉塵フィルタとしての応用が注目されている。
このように集塵フィルタとして用いる場合にガス中の粉塵は数μmレベルである場合が多いが、このような微小粒子を捕集するためにフィルタの気孔径をそれらを捕集できるレベルにまで微細化すると、ガス自体の透過抵抗も飛躍的に上昇してしまうという問題があった。
【0003】
そこで、微粒子を捕集する微粒子フィルタとしては、例えば、内部に大きな気孔径を有し、表面に微細な気孔を有する表面層を配するとともに、微細気孔径の層を極力薄くして透過抵抗の上昇を抑え、捕集に無関係な内部及び捕集面と反対側の層は気孔径を大きくして、透過抵抗をできるだけ小さくし、機械的強度を保持できるようにする方法(特許第2997542号公報)等が提案されている。
この方法は、粒径分布を持たせたセラミック原料粉末をスラリー化し、円筒状の石膏型を用いて遠心沈降法にて型の壁面に着肉させチューブ状に成形するものであり、このとき原料粉末の粒径により沈降速度が異なることを利用し、チューブの内側から外側にかけて気孔径、粒子径が次第に大きくなるような成形体を得、これを焼成して気孔径が成形体と同様に分布した多孔質焼結体を得るものである。
【0004】
また、原料粉末に気孔形成材として可燃性粒子を加えて混合し、その混合粉末を泥漿鋳込み法により成形した後に焼成することによって可燃性粒子を酸化除去し、気孔を形成する方法(特開平3−257081号公報)等が報告されている。この方法は、気孔形成材の粒径やその量、沈降速度を調節することによって、緻密部分及び多孔質部分を任意の箇所に任意の割合で形成するものである。
【0005】
しかしながら、上記の多孔質焼結体を得る方法等では、気孔径を次第に変化させた多孔質体を得るのに、遠心沈降法により粉末成形体を得るため、成形体密度が上昇し、焼成すると緻密化が起こりやすくなるため、気孔率を高くすることが難しいため、透過抵抗が高くなるという問題があった。
また、工程が複雑で、コストアップにつながるという問題があった。
また、上記の方法では透過能を上げるために、高気孔率にするためには得られた成形体の焼成を仮焼レベルにとどめる必要があり、強度が低下するので、支持体部分を厚くする必要があり透過抵抗が更に増大してしまうという問題があった。
また、上記の気孔の形成方法等では、高気孔率を実現するためには、非常に多くの気孔形成材を用いる必要があり、工程が複雑になるとともに、コストが高くなってしまうという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の技術に鑑みて、従来の上記方法等のような問題のない新しい多孔質体とその製法を開発することを技術的課題としてなされたものであって、本発明は、高気孔率、高強度で、フィルタや膜支持体に適した多孔質体とそれを容易に製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の多孔質体は、所定の成形体の表面に焼結助剤の少ない被覆層を形成して焼成することによって、全体の収縮量を抑制することを可能とし、それにより、内部の焼結が進行しながらも高い気孔径が得られるとともに、表面部の気孔径が小さく、かついずれの部位でも略同一の気孔率を持つため、フィルタとしての機能が高く、高強度な多孔質体が得られるという知見に基づいて開発されたものである。
即ち、本発明の多孔質体窒化珪素結晶を主体とし、該窒化珪素結晶の粒界相と気孔とを有する焼結体からなり、前記粒界相の量が表面部よりも内部で多く、平均気孔径が表面部よりも内部で大きく、かつ前記表面部と前記内部との間に、粒界相の量及び気孔径が傾斜的に変化する傾斜部を具備してなることを特徴とするものであり、特に、前記焼結体が円柱体形状をなしていることが好ましい。これにより、本発明の多孔質体は、高気孔率と高強度を同時に実現することができ、フィルタや膜支持体に好適に用いることができる。
本発明の多孔質体は、特に、前記窒化珪素結晶の粒子の平均短軸径が表面部で0.05μm〜1μm、内部で0.1μm〜8μmであることが好ましい。表面部の平均短軸径を上記の値にすることによって透過抵抗を小さくしてフィルタのろ過性能を高め、多孔質体の強度を高めることができる。また、内部の平均短軸径を上記の値にすることにより、多孔質体の強度を維持したまま、透過抵抗をさらに小さくすることが可能となる。
【0008】
さらに、前記内部及び前記表面部の気孔率が10〜80%であることが好ましく、特に、表面部と内部との気孔率が略同一であることが望ましい。この範囲に制御することで、強度と透過抵抗をさらに向上させることができる。
次に、本発明の多孔質体の製造方法は、窒化珪素粉末と焼結助剤とからなる原料粉末でコア成形体を作製し、該コア成形体の表面に、窒化珪素粉末と焼結助剤粉末とからなり、かつ焼結助剤含有量がコア成形体よりも少ない被覆層を形成し、しかる後、焼成することを特徴とするものである。また、本発明の多孔質体の製造方法は、窒化珪素粉末と焼結助剤とからなる原料粉末でコア成形体を作製し、該コア成形体の表面に、窒化珪素粉末からなる被覆層を形成し、しかる後、焼成することを特徴とするものである。
これにより、焼結中に、コア成形体から被覆層に焼結助剤が浸透して被覆層とコア成形体間の結合が形成され、より効果的に焼結体の高気孔率化を可能とし、高気孔率、高強度の多孔質体を容易に得ることができる。
被覆層を形成する方法は、適宜の方法でよく、制限されないが、特に、前記被覆層を構成する粉末を含有するスラリーを作製し、該スラリー中に前記コア成形体を浸漬し、被覆層を形成することが好ましい。これにより、強固に付着した被覆層を容易に形成することができ、また、その層構造、焼結助剤量分布等を自由に制御できるので、得られる多孔質体の構造を制御できる。
また、焼成後に前記被覆層の少なくとも一部を研削除等により除去することが好ましく、これにより、表面部の気孔径を任意の大きさにすることが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、図面に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の多孔質体の一例を示すものであり、図1(b)は、形状が円柱体形状の多孔質体の断面図である。本発明の多孔質体1は、窒化珪素結晶を主結晶とし、焼結助剤を含む粒界相と気孔からなる焼結体からなる。そして、粒界相の量が表面部2よりも内部3の方が多く、平均気孔径が表面部2よりも内部3で大きいことが重要である。これにより、内部3に気孔径が大きいながらも粒界相が多いため、窒化珪素結晶同士が強固に連結し、また、焼結時の窒化珪素柱状結晶粒子の成長が促進され、その絡み合いにより強度が向上し、得られる多孔質体の常温及び高温での強度を向上させることができる。この本発明の多孔質体の製造プロセスでは、窒化珪素粒子間の大きなネック成長を伴い、それにより、機械的強度が増強される。
また、表面及びその近傍からなる表面部2では、粒界相の量が最も少なく、かつ気孔径が小さいため、窒化珪素結晶粒子の粒成長が抑制され、その結果、小さな気孔径を有しており、これにより、微粒子を分離、排除することが可能となる。
【0010】
さらに、表面部2と内部3との間には、粒界相の量及び気孔径が傾斜的に変化している傾斜部4が存在することが重要であり、これにより、表面部2と内部3との異なった部位を一体として保ち、残留応力を低減することができる。
また、この粒界相の量は、焼結助剤の量に強く関連しているため、粒界相の量は、焼結助剤の量と同じ意味をなし、表面部2よりも内部3で焼結助剤の量が多く、かつ傾斜部4では傾斜的に変化していることと同じ意味であり、粒界相の量の大小は、焼結助剤の量、とりわけ、焼結助剤の一成分の含有量を調べれば容易に判断することができる。
なお、この場合、傾斜的に変化するとは、その変化が大局的に捉えた場合に、連続的及び/又は段階的に変化することを意味しており、局部的には一方向に対して僅かであれば数値の逆転などがあってもかまわない。
また、本発明によれば、表面部2と内部3との気孔率が略同一であることが好ましい。即ち、多孔質体内に気孔率が変化すると透過抵抗が大きくなり、流体の透過率が低下してしまうため、どの部位においても気孔率が均一であることが好ましく、これにより、表面部2から内部3までの間で透過抵抗を小さく保つことができる。なお、この場合、気孔率が略同一とは、気孔率の差が5%以内であればよいことを意味する。
【0011】
さらに、本発明によれば、β型窒化珪素結晶を主結晶とするものであり、針状に結晶が成長する。そして、本発明の多孔質体は、この結晶粒子の平均短軸径が、内部3よりも表面部2において小さいことが好ましい。特に、窒化珪素結晶粒子の平均短軸径を、表面部2で0.05μm〜1μm、さらには0.05〜0.8μm、内部3で0.1μm〜8μm、さらには0.5〜5μmに設定することにより、ろ過性能を高めることができる。
また、気孔率は10〜80%であることが望ましい。気孔率が10%より低いと貫通孔が得られにくく、80%より高いと著しく強度が低下する傾向があるからである。特に、流体透過能と機械的強度をバランスの取れた範囲に保つために、気孔率は20〜75%、さらには40〜70%が好ましい。
このような条件を満たす場合、本発明の多孔質体は、強度や耐食性に強く、非対称構造を有するため高透過率であり、フィルタや膜支持体に適したものとなる。
【0012】
次に、本発明の多孔質体を製造する方法について説明する。
まず、原料粉末として、窒化珪素粉末及び焼結助剤を準備する。即ち、窒化珪素粉末としては、イミド法、直接窒化法、還元窒化法等のいずれの製造法によるものでもよく、α、β窒化珪素のいずれも使用可能であり、平均粒径は0.4〜3.0μmが好ましい。不純物の量については、特に限定しないが、多孔質体の要求特性に従って決定すればよい。
なお、所望により、窒化珪素粉末の一部を珪素粉末に代替して添加し、焼成に先立って窒化処理を行って珪素を窒化珪素に転換して用いてもよい。
焼結助剤としては、希土類元素酸化物、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムの群から選ばれる少なくとも1種が、液相を生じる点で好ましく、特に、高温強度の観点で希土類元素酸化物、例えば、酸化イットリウムや酸化イッテルビウムなどが好ましい。また、固相焼結助剤でも実施可能であるが、実施する場合は拡散距離が短いので成形時に助剤傾斜層を形成しておく方が好ましい。また、焼結助剤の種類、組成によって得られる多孔質体の特性が左右されるので、それに合わせて助剤種、組成は決定する。
【0013】
これらの原料を所望の組成に調合し、この調合粉末に対して、エタノールやイソプロピルアルコール等の有機溶剤とパラフィンワックス等の有機バインダーを添加した後、公知の方法、例えば、ボールミル、振動ミル等により、原料粉末を混合、粉砕する。得られたスラリーを乾燥し、メッシュパス等で整粒した粉末を得る。
これを各種の成形方法、例えば、プレス成形法、押し出し成形法、鋳込み成形法、射出成形法、テープ成形法等で成形し、コア成形体5(図1(b))を得る。
しかる後に、図1(b)に示すように、コア成形体5の表面に窒化珪素粉末と焼結助剤粉末とを含む被覆層6を被覆することが重要である。ただし、被覆層6を形成する原料中の焼結助剤量は、コア成形体5中の焼結助剤の量よりも少なくすることが必要であり、これにより、表面部2よりも内部3で収縮及び粒成長を促進させることができる。また、この場合、被覆層6として、焼結助剤を含まない被覆層を形成することもできる。
なお、上記の被覆層6は、CIP、ディップ、塗布法等の適宜の方法により形成することができる。このうち、好適には、ディップ法が、強固に付着した層を容易に形成することができ、また、その層構造、焼結助剤の量の分布等を自由に制御でき、その結果、多孔質体の構造を制御できるので好ましい。即ち、好適には、被覆層6を構成する粉末を含有するスラリーを作製し、該スラリー中にコア成形体5を浸漬し、被覆層6を形成する方法が例示される。
【0014】
また、被覆層6の厚みは所望の焼結体の性状に従って決定すればよい。また、固相焼結助剤、液相焼結助剤でも液相の粘度が高く、あまり拡散しない場合には、図2に示すように、コア成形体11の表面に、助剤比率を次第に変化させた原料粉末を順次被覆し、被覆層12〜14を形成する。これにより、複数の被覆層が多層に形成された積層構造とすることができる。被覆した後、さらに成形体の密度の調整のためにCIP等により加圧処理を加えてもよい。
このように作製された被覆層6、12〜14を表面に設けたコア成形体5、11を、脱脂処理を施し、比較的高温で焼成する。即ち、コア成形体5、11を焼成したときに十分に焼結し、粒成長の結果、窒化珪素が柱状結晶に発達するような焼成温度を選択する。この焼成条件は、焼結助剤の種類と量、並びに多孔質体の特性に合わせて決定すればよい。
また、本発明によれば、被覆層6を窒化珪素粉末のみで構成することも可能である。これにより、傾斜部を具備した多孔質体が得られるが、それは、コア成形体5は、焼結助剤を含むため、焼成時に液相が形成され、この液相が被覆層6の粒子間を毛管現象によって拡散し、被覆層6の窒化珪素粒子間で物質移動が起こり、粒子同士がお互いに結合されるためである。
【0015】
また、焼成により助剤は助剤の少ない部分に浸透拡散し、助剤量が徐々に変化する結果、図1(a)の傾斜部4を形成する。被覆層6は、焼結助剤量が少ないために焼結が進行しない又は進行しにくく、コア成形体5の収縮を阻害するように作用する。この被覆層6による収縮阻害効果により、コア成形体5は緻密化を阻害され多孔質化する。また、助剤の働きにより内部では柱状粒子が成長するとともに、ネック成長が促進されて柱状粒子同士が強固に連結した強固な骨格が形成される結果、強度が向上する。なお、被覆層の厚みは、収縮阻害効果を発現させる上で全体の厚みの5〜100%、特に10〜80%、さらには20〜60%が好ましい。
焼成によって得られた焼結体は、図1(a)に示したように、内部3と傾斜部4と表面部2とを形成する。このうち、傾斜部4の微細組織を観察すると、助剤量は表面部から内部に行くに従って増加し、焼結粒子径が表面部から内部へと次第に増大し、その隙間の気孔径も次第に増加している。
本発明の多孔質体は、気孔が多孔質体全体にわたって存在するため、加工が容易で表面部の少なくとも一部は所望によって取り除かれ、形状を整えられた後種々の用途に供される。
【0016】
また、表面部2を除去し、かつ助剤量、気孔径、粒子径の徐々に変化する傾斜部4を任意の量だけ研削で除去して使用することにより、均一気孔径の高気孔率多孔質体としての用途に供することもできる。被覆層の少なくとも一部を除去する方法として、例えば、研削砥石や研磨材による研削加工などが例示されるが、それらに制限されない。
さらに、本発明の多孔質体は、焼結助剤が表面部から内部にかけて次第に増加するとともに、気孔径、粒子径も増大する構造を有している。従って、これにより、フィルタ機能としての微粒子捕集能力と流体透過性能を両立させることができる。即ち、表面部の微細気孔径部分が微粒子捕集機能を有し、内部3の大気孔径部分が機械的強度の維持と、流体透過能のアップを実現することができる。
【0017】
本発明の多孔質体を粉塵フィルタとして応用した場合について、以下に説明する。
図3は粉塵フィルタ装置を示す概略断面図である。微粒子粉塵を含む流体は、粉塵フィルタ装置の導入口51よりハウジング52内に導入され、フランジ53に接続されたフィルタエレメント54を透過する時に、粉塵を分離、除去し、微粒子を除去した流体がキャップ55を通過し、排出口56より装置外に排出される。なお、流体の流れを矢印で示した。
また、フィルタエレメント54は、図4に示したように、一端を封じた多孔質チューブからなり表面部61の微細孔で微粒子を捕集除去し、流体は表面部から傾斜部62及び内部63を通り、多孔質体を通過してフィルタエレメント内部64内に取り込まれ、外部へ排出される。
なお、本発明は、図3に示したフィルタエレメントの形状の他にも、微粒子を捕獲する板状フィルタ等においても有効であり、微粒子のろ過性能に関与するろ過面側の細孔を微細化することができ、微粒子に対する透過抵抗の低いろ過フィルタを実現できる。
また、このような組織は表層に更に粒径の細かい粒子を被覆して得られる、さらに小さい気孔を有する限外ろ過膜、精密ろ過膜、逆浸透膜等の分離膜の支持体としても有用である。
【0018】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は当該実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例
まず、原料粉体として、平均粒径0.8μm、α型窒化珪素率99%、不純物酸素量0.8重量%の窒化珪素粉末と、焼結助剤として、平均粒径1.5μm、純度99.5%の希土類酸化物粉末及び平均粒径0.6μm、純度99.9%の酸化アルミニウム粉末を表1に示す組成に調合した。この混合原料とイソプロピルアルコールとをボールミルで30時間混合し、溶剤を乾燥除去した後、メッシュパスにてコア成形体用粉末を得た。なお、所望により、窒化珪素粉末の一部を純度99.9%の珪素粉末に代替して添加した。
また、被覆層を形成するために、上記と同じ窒化珪素粉末及び所望により焼結助材を用いて同様のボールミル、造粒工程を経てスラリーを作製し、その一部を乾燥、造粒して被覆層用粉末とした。
【0019】
成形はプレス成形法(P)又は押出成形法(O)を用いた。まず、プレス成形法では、コア成形体用粉末を長さ40mm、幅20mm、厚み5mmの角柱形状に成形した。また、押出成形法では原料粉末にバインダーとしてエチルセルロースを混合し、真空引きしながら混錬後、直径10mm、高さ20mmの円筒形状に成形し、弱酸化性雰囲気中で脱脂した。
また、被覆層の形成にはCIP(冷間等方プレス)法及びディップ法(D)を用いた。CIP法では、プレス法によって作製したコア成形体をより大きな型(長さ60mm、幅40mm、厚み55mm)中で被覆層用粉末で包み込み、CIPにより一体化し、焼結用サンプルとした。また、ディップ法では、スラリー中にコア成形体を浸漬し、その表面に被覆層を被覆し、乾燥して成形体を得、さらにCIPにより成形密度を調節して焼結用サンプルとした。
【0020】
さらに、ディップ法により多層からなる被覆層を作製した(DD)。即ち、IPA中に分散した助剤添加量を変化させた窒化珪素粉末をディップ法により成形体上に被覆した。1層目は2.5重量%、2層目は1.25重量%、3層目は0.5重量%、4層目は0重量%の酸化エルビウムをそれぞれ含んだ窒化珪素を各層約150μm厚になるように被覆した。この成形体を乾燥後、CIPにより一体化し焼結用サンプルを得た。
【0021】
次に、これらの焼結用サンプルをカーボンセッターの上に載せ、カーボンヒーター炉用いて、窒素雰囲気中において表1に示す条件で焼成した。得られた焼結体は超音波洗浄を行い、表面の未焼結部部を除去し、測定試料とした。なお、珪素粉末を添加した試料は、1400℃で窒化処理を1時間行った後、温度を上げてそのまま焼成を行った。また、被覆層を設けずに焼成した試料は、雰囲気条件を等しくするために被覆層用粉末の中に成形体を埋めて焼成を行った。
被覆層の厚みは、成形体を破断し、その断面から厚みを10点で測定し、平均値を算出した。また、気孔率は、まず、多孔質体をアルキメデス法にて測定し、次に、表面部と傾斜部とを除去した後に内部をアルキメデス法にて測定した。さらに、気孔径は、多孔質体を水銀圧入法により測定し、次に、表面部と傾斜部とを除去した後に内部のみを水銀圧入法により測定した。
強度は、JISR1601により3 点曲げにて、室温及び1400℃で測定した。表面部及び内部の粒子の短軸径は、試料を破断し、その破断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真で100個の粒子を測定し、平均値を算出した。
また、粒界相の量として希土類元素酸化物の含有量で代替した。希土類元素酸化物の含有量は、蛍光X線分析で行った。結果を表2に示した。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
本発明の試料No.1〜21及び29〜35は、いずれも表面部における気孔径が0.05〜0.21μm、内部における気孔径が0.25〜6.1μm、室温の抗折強度は150MPa以上であった。また、気孔率は、表面部及び内部のいずれも49%以上の高い値を示した。
一方、被覆層を設けず、気孔径が表面部と内部とでほぼ同一で低温で焼成した本発明の範囲外の試料No.22は、気孔率が50〜65%と高いものの、強度が100MPaに満たず、使用に耐えないものであった。
また、同被覆層を設けず、気孔径が表面部と内部とでほぼ同一で本発明の範囲外の試料No.24〜28は、気孔率が45%以下と低く、内部の平均気孔径が小さいため、透過抵抗が高いものと予想された。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、高気孔率を維持したままで、内部の気孔径を大きく、かつ表面部の気孔径を小さくし、強度の改善された高い窒化珪素多孔質焼結体を簡便な方法で得ることができ、微粒子のろ過性能や多孔質膜の支持体として特性の優れた多孔質体が得られる。所定の成形体の表面に焼結助剤の少ない被覆層を形成して焼成することによって、全体の収縮量を抑制して、表面部の気孔径が小さく、かついずれの部位でも略同一の気孔率を持つ、高強度な多孔質体を製造することができる。それにより、高気孔率と高強度を同時に実現した多孔質体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の(a)多孔質体の概略断面図と(b)その成形体を示す斜視図である。
【図2】本発明の多孔質体の他の成形体を示す斜視図である。
【図3】本発明の多孔質体を用いた粉塵フィルタの概略断面図である。
【図4】本発明の多孔質体を用いたフィルタエレメントの構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1・・・多孔質体
2・・・表面部
3・・・内部
4・・・傾斜部
5、11・・・コア成形体
6、12〜14・・・被覆層
A・・・成形体
Claims (9)
- 所定の成形体の表面に焼結助剤の少ない被覆層乃至焼結助剤を含まない被覆層を形成することによって作製された、高気孔率と高強度を同時に実現した窒化珪素多孔質焼結体であって、窒化珪素結晶を主体とし、該窒化珪素結晶の粒界相と気孔とを有する焼結体からなり、前記粒界相の量が表面部よりも内部で多く、平均気孔径が表面部よりも内部で大きく、前記内部及び前記表面部の気孔率が10〜80%であり、かつ前記表面部と前記内部との間に、粒界相の量及び気孔径が傾斜的に変化する傾斜部を具備してなることを特徴とする多孔質体。
- 前記焼結体が円柱体形状をなしていることを特徴とする請求項1記載の多孔質体。
- 前記窒化珪素結晶の粒子の平均短軸径が表面部で0.05μm〜1μm、内部で0.1μm〜8μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の多孔質体。
- 前記内部及び前記表面部の気孔率が20〜75%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の多孔質体。
- 前記内部と前記表面部とにおいて、気孔率が略同一であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の多孔質体。
- 所定の成形体の表面に焼結助剤の少ない被覆層を形成することによって、高気孔率と高強度を同時に実現した窒化珪素多孔質焼結体を製造する方法であって、窒化珪素粉末と焼結助剤とからなる原料粉末でコア成形体を作製し、該コア成形体の表面に、窒化珪素粉末と焼結助剤粉末とからなり、かつ焼結助剤含有量がコア成形体よりも少ない被覆層を形成し、しかる後、焼成することによって、窒化珪素結晶を主体とし、該窒化珪素結晶の粒界相と気孔とを有し、前記粒界相の量が表面部よりも内部で多く、平均気孔径が表面部よりも内部で大きく、前記内部及び前記表面部の気孔率が10〜80%であり、かつ前記表面部と前記内部との間に、粒界相の量及び気孔径が傾斜的に変化する傾斜部を具備してなる焼結体を得ることを特徴とする多孔質体の製造方法。
- 所定の成形体の表面に焼結助剤を含まない被覆層を形成することによって、高気孔率と高強度を同時に実現した焼結助剤を含まない多孔質焼結体を製造する方法であって、窒化珪素粉末と焼結助剤とからなる原料粉末でコア成形体を作製し、該コア成形体の表面に、窒化珪素粉末からなる被覆層を形成し、しかる後、焼成することによって、窒化珪素結晶を主体とし、該窒化珪素結晶の粒界相と気孔とを有し、前記粒界相の量が表面部よりも内部で多く、平均気孔径が表面部よりも内部で大きく、前記内部及び前記表面部の気孔率が10〜80%であり、かつ前記表面部と前記内部との間に、粒界相の量及び気孔径が傾斜的に変化する傾斜部を具備してなる焼結体を得ることを特徴とする多孔質体の製造方法。
- 前記被覆層を構成する粉末を含有するスラリーを作製し、該スラリー中に前記コア成形体を浸漬することによって被覆層を形成することを特徴とする請求項6又は7記載の多孔質体の製造方法。
- 焼成後に前記被覆層の少なくとも一部を除去することを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の多孔質体の製造方法。
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