JP4223933B2 - 炭化ケイ素多孔質体の製造方法 - Google Patents
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例えば、炭化ホウ素や硝酸塩等の焼結助剤を添加して焼結効率を向上し、焼結温度を下げることができる。しかしながら、焼結助剤を添加することによって、炭化ケイ素焼結体の純度が低下してしまう。
或いは、酸化物又は酸素雰囲気を用いた液相焼結法が知られている。例えば、シリカやマグネシア等の酸化物を炭化ケイ素に混合し、1400℃程度の比較的低い温度で原料中の酸化物の溶融により液相を生成させ、炭化ケイ素を液相焼結させることができる(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、かかる液相焼結法では、炭化ケイ素と酸化物とを均一に分散させることが困難であり、液相が不均一に分布しやすく、この場合には均一に焼結せずに強度が低下しやすい。
また、酸素雰囲気下において炭化ケイ素を焼結する場合には、炭化ケイ素と酸素の反応によって炭化ケイ素の一部に(特に表面において)酸化ケイ素が生成するため、これによって液相を生成させ、炭化ケイ素を液相焼結させる方法も提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
そこで本発明は、かかる従来の課題を解決すべく開発されたものであり、2000℃以下の比較的低い温度で高強度かつ高純度の炭化ケイ素多孔質体を製造する方法を提供することを目的とする。
次いで、第二焼成工程において、不活性雰囲気下で前記工程よりも高温条件下で焼成する。この工程では、炭化ケイ素が液相焼結可能な1300〜1500℃の比較的低い温度域において、前記部分的に酸化された(主に酸化ケイ素)部分の溶融で生じる液相により焼結される。このとき、不活性雰囲気下であるため、炭化ケイ素の酸化は進行しない。従って、本方法では、所定量の液相を形成可能であるとともに、酸化を抑制して液相焼結させることができる。
従って、本方法によれば、炭化ケイ素の部分酸化と液相焼結とを別工程で行うことを可能とし、酸化の割合を制御することができる。また、酸化(即ち、容積の膨張)と焼結(緻密化、即ち、容積の収縮)とが同時に起ることによるクラック発生等の機械的強度低下を防止し、強度の高い炭化ケイ素多孔質体を得ることができる。
さらに好ましくは、炭化ケイ素粉末を所定の形状に成形する工程と、得られた成形体を酸素含有雰囲気下において3〜8℃/分の速度で1000〜1200℃の最高焼成温度に昇温し、該温度にて3〜5時間保持する第一焼成工程と、該成形体を不活性雰囲気下において3〜8℃/分の速度で1300〜1500℃の最高焼成温度に昇温し、該温度にて3〜5時間保持する第二焼成工程と、を含む。
該方法では、炭化ケイ素粉末を成形する前に粉末状態のまま第一焼成工程において前記と同様な条件下に焼成し、炭化ケイ素粉末を部分的に酸化させてから、その後成形している。このため、前記方法と同様な効果が得られるとともに、成形前の炭化ケイ素粉末表面をより均一に酸化することができる。
さらに好ましくは、炭化ケイ素粉末を酸素含有雰囲気下において3〜8℃/分の速度で1000〜1200℃の最高焼成温度に昇温し、該温度にて3〜5時間保持する第一焼成工程と、前記処理された炭化ケイ素粉末を所定の形状に成形する工程と、得られた成形体を不活性雰囲気下において3〜8℃/分の速度で1300〜1500℃の最高焼成温度に昇温し、該温度にて3〜5時間保持する第二焼成工程と、を含む。
特に、CIPにより、高温(例えば、500℃以上)安定性の高い管状多孔質体を得ることができる。一方、炭化ケイ素粒子のスラリーキャスティング等によって、100nm未満、特に50nm未満の平均細孔径を有する膜状多孔質体を得ることができる。
以下に説明する実施例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
(1−1)実施例1.1
1μmの平均粒径を有する炭化ケイ素粉末を用いた。この炭化ケイ素粉末にバインダー、水を混ぜて混練した。これを50MPaの圧力でディスク状のペレットに成形した。ペレットの直径は3cmで、その厚さは2mmであった。この炭化ケイ素ペレットを密閉系の窯炉に入れ、空気中1000℃にて熱処理(第一焼成工程)を行った。昇温及び冷却速度は5℃/分で、最高熱処理温度での保持時間は3時間であった。酸素含有率は、質量変化により測定したところ、約7.6質量%であった。
次いで、得られたペレットを前記窯炉から取り出し、外部から所定のガス種を連続供給可能な窯炉(ガス流通炉)に入れ、炉内に窒素を供給しつつ、得られたペレットを窒素雰囲気下において1400℃で焼結(第二焼成工程)を行った。このときの窒素の流速は150ml/分であった。昇温及び冷却速度は5℃/分で、最高焼結温度での保持時間は3時間であった。
また、H2及びN2ガスを用いて室温において1×105Paの圧力差でのガス透過性を測定した。即ち、試験は次のようにして行った。図1にそのガス透過性試験装置1の模式図を示す。一方向に流通可能なガス通路3を形成した2つの蓋体5において、ガス通路3にサンプルとなるペレット7を配置して蓋体5間に挟み、両蓋体5をネジ9によって固定した。尚、図2にそのII−II部分断面図を示すように、ガス通路3に流通するガスが蓋体5とペレット7との隙間から漏れずにペレット7を通過するように、各蓋体5とペレット7の間にはO−リング11を配置してシールした。一方のガス通路3入口3aにH2又はN2ガスボンベ13を設け、2×105Paの圧力(即ち、大気圧が1×105Paであるので、その圧力差は1×105Paとなる)でH2又はN2ガスを流し込み、ペレット7を通過したガスの流量を他方のガス通路3出口3bに設けられたガス流量測定装置15において測定した。
これらの結果は、次の通りであった。即ち、平均細孔径は218nm、気孔率は50.2%、酸素含有率は約7.5質量%、N2ガス透過性は1mmの厚さに対して9×10−6モル/m2.s.Pa、H2ガス透過性は1mmの厚さに対して25×10−6モル/m2.s.Paであった。
用いた炭化ケイ素及び製造手順は、実施例1.1と同様に行った。但し、本実施例では、気孔率50.2%の直方体バー形状(サイズ3mm×4mm×40mm)の炭化ケイ素多孔質体を製造し、JISに基づく三点曲げ強度試験を行った。測定された強度は、51.7MPaであった。
(1−3)実施例1.3
熱処理(第一焼成工程)温度及び保持時間を1050℃及び5時間としたことを除いて、実施例1.2と同様の手順により気孔率44.6%の同形状の炭化ケイ素多孔質体を製造した。JISに基づく三点曲げ強度試験で測定された強度は66.7MPaであった。
1μmの平均粒径を有する炭化ケイ素粉末を用いた。この炭化ケイ素粉末を実施例1で使用した密閉系の窯炉において空気中1000℃にて熱処理(第一焼成工程)を行った。昇温速度及び最高熱処理温度での保持時間は実施例1.1と同様であった。得られた炭化ケイ素粉末の酸素含有率は、質量変化により測定したところ、約10質量%であった。次いで、この炭化ケイ素粉末にバインダー、水を混ぜて混練した。これを用いて、実施例1.1と同様にディスク状ペレットを成形した。得られたサンプルを実施例1.1と同様の条件にて窒素雰囲気下において焼結(第二焼成工程)させた。
得られた炭化ケイ素多孔質体を用いて、実施例1と同様にその特性を測定した。結果は、次の通りであった。即ち、平均細孔径は210nm、気孔率は48%、酸素含有率は約9.2質量%であった。
炭化ケイ素ペレットサンプルを実施例1.1と同様に成形した。このサンプルをガス流通炉中に保持した。最初に、空気を150ml/分の速度で炉に流通させた。まず、サンプルを5℃/分の速度で1000℃に昇温させて該温度で3時間熱処理(第一焼成工程)した。この熱処理の後、炉内のガスを交換した。即ち、脱気し、N2を炉中に流通させた。窒素の流速は150ml/分であった。そして、温度を1000℃から1400℃に5℃/分の速度で昇温させ、1400℃にて5時間加熱した。サンプルを室温まで5℃/分の速度で冷却した。得られた炭化ケイ素多孔質体の平均細孔径は180nm、気孔率は45%、酸素含有率は約15質量%であった。
7μmの平均粒径を有する炭化ケイ素粉末を用いた。この炭化ケイ素粉末にバインダー、水を混ぜて混練した。これを50MPaの圧力でディスク状のペレットに成形した。ペレットの直径は3cmで、その厚さは2mmであった。このサンプルを密閉系の窯炉において空気中1200℃にて熱処理(第一焼成工程)を行った。昇温及び冷却速度は5℃/分で、最高熱処理温度での保持時間は5時間であった。
次いで、サンプルを窯炉から取り出し、ガス流通炉に入れ、炉内に窒素を供給しつつ窒素雰囲気下において1400℃でサンプルの焼結(第二焼成工程)を行った。窒素の流速は150ml/分であった。昇温及び冷却速度は5℃/分で、最高焼結温度での保持時間は5時間であった。
得られた炭化ケイ素多孔質体の平均細孔径は、2.1μm、気孔率は39.2%、酸素含有率は約20質量%であった。
300nmの平均粒径を有する炭化ケイ素粉末を用いた。この炭化ケイ素粉末にバインダー、水を混ぜて混練した。これを50MPaの圧力でディスク状のペレットに成形した。ペレットの直径は3cmで、その厚さは2mmであった。このサンプルを密閉系の窯炉において空気中1000℃にて熱処理(第一焼成工程)を行った。昇温及び冷却速度は5℃/分で、最高熱処理温度での保持時間は1時間であった。次いで、サンプルを窯炉から取り出し、ガス流通炉に入れ、炉内に窒素を供給しつつ窒素雰囲気下において1400℃で焼結(第二焼成工程)を行った。窒素の流速は150ml/分であった。昇温及び冷却速度は5℃/分で、最高焼結温度での保持時間は5時間であった。
得られた炭化ケイ素多孔質体の平均細孔径は、80.6nm、気孔率は45.1%、酸素含有率は約12.6質量%であった。
300nmの平均粒径を有する炭化ケイ素粉末を用いた。この炭化ケイ素粉末をトルエン溶媒中にボールミルによって懸濁させてスラリーを製造した。このスラリーをペトリ皿にキャスティングした。又、このスラリーを実施例4で得られたペレット表面にディップコートした。これらスラリー成形物及び塗布されたペレットを60℃で乾燥させた。乾燥したスラリー成形物並びにスラリーが塗布されたサンプルを密閉系の窯炉において空気中1000℃にて熱処理(第一焼成工程)を行った。昇温及び冷却速度は5℃/分で、最高熱処理温度での保持時間は1時間であった。次いで、これらサンプルを窯炉から取り出し、ガス流通炉に入れ、炉内に窒素を供給しつつ窒素雰囲気下において1400℃で焼結(第二焼成工程)を行った。窒素の流速は150ml/分であった。昇温及び冷却速度は5℃/分で、最高焼結温度での保持時間は5時間であった。
得られた炭化ケイ素多孔質体の平均細孔径はいずれも49.7nm、気孔率は32.1%、酸素含有率は約18.3質量%、スラリーが塗布されたペレット由来の炭化ケイ素多孔質体のN2ガス透過性はペレット1mmの厚さに対して2.98×10−6モル/m2.s.Paであり、一方、H2ガス透過性はペレット1mmの厚さに対して1.1×10−5モル/m2.s.Paであった。従って、H2とN2のガス透過比(H2/N2)は、3.69であった。
1μmの平均粒径を有する炭化ケイ素粉末を用いて、例えば、ガス透過膜の支持体として好ましい管状多孔質体を作製した。即ち、先ず、150MPaの加圧によりCIPに基づいて管状ペレットを形成した。この管の外径は15mm、内径は12mmであった。この後の熱処理手順は実施例1.1と同様に行った。こうして得られた管状炭化ケイ素多孔質体の平均細孔径は223nm、気孔率は43.2%、酸素含有率は約6.3質量%であった。
次いで、得られた管状炭化ケイ素多孔質体を熱サイクル安定性試験に供した。試験温度は500℃、昇温及び冷却速度は200℃/分、サイクル数10回で行った。この試験の結果、平均細孔径及び気孔率は、熱サイクル試験前に測定した値と同様であり、この炭化ケイ素多孔質体が優れた耐熱性、機械的強度を有することが確認された。このことから、ここで開示された方法により、得られた管状体は、例えば、高温及び/又は高圧条件下に使用されるガス透過膜その他の多孔質セラミック材の支持体として好適に用いられることが理解される。従って、本発明は、前記第一焼成工程と第二焼成工程と成形工程とを含む炭化ケイ素多孔質支持体の製造方法を提供する。また、該方法により得られた管状その他の支持体を提供する。
1μmの平均粒径を有する炭化ケイ素粉末を用いた。この炭化ケイ素粉末にメチルセルロース系バインダーと、潤滑剤と、水を配合し、よく混練した。これを押出成形機にて外径6mm、内径4mmの寸法の生成形体に成形した。この生成形体をマイクロ波又はローラにて60〜80℃で15分間乾燥させた後、ガス流通炉中に保持した。最初に、空気を150ml/分の速度で炉に流通させた。そして、空気中1200℃にて3時間熱処理(第一焼成工程)を行った。昇温速度は5℃/分であった。次いで、この熱処理の後、炉内のガス交換を行った。即ち、脱気し、窒素を炉内に流通させた。そして、窒素雰囲気下において1850℃、1900℃、又は2000℃で5時間焼結(第二焼成工程)を行った。窒素の流速は150ml/分であった。昇温速度は5℃/分、冷却速度は5℃/分であった。
得られた炭化ケイ素多孔質体を用いて、気孔率、平均細孔径、及びXRD(X線回折パターン)を測定した。気孔率及び平均細孔径は、前記実施例と同様に測定した。結果を表1及び図3に示す。即ち、表1は、焼結温度に対する得られた炭化ケイ素多孔質体の平均細孔径及び気孔率を示す。図3は、1900℃で焼結された炭化ケイ素多孔質体のXRD測定パターンである。
Claims (4)
- 炭化ケイ素粉末を所定の形状に成形する工程と、
得られた成形体を酸素含有雰囲気下において、800〜1200℃の温度範囲で処理する第一焼成工程と、
該成形体を不活性雰囲気下において、1300〜1500℃の温度範囲で処理して炭化ケイ素を液相焼結させる第二焼成工程と、を含む炭化ケイ素多孔質体の製造方法。 - 炭化ケイ素粉末を酸素含有雰囲気下において、800〜1200℃の温度範囲で処理する第一焼成工程と、
前記処理された炭化ケイ素粉末を所定の形状に成形する工程と、
得られた成形体を不活性雰囲気下において、1300〜1500℃の温度範囲で処理して炭化ケイ素を液相焼結させる第二焼成工程と、を含む炭化ケイ素多孔質体の製造方法。 - 前記第一焼成工程により、炭化ケイ素焼成物中の酸素含有率を1〜40質量%に制御する、請求項1又は2記載の方法。
- 前記炭化ケイ素粉末の平均粒径が、0.05〜5μmの範囲である、請求項1〜3のうちのいずれかに記載の方法。
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