JP2006197812A - 食品の品質改良剤および品質改良方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 特にでんぷん質食品や蛋白質食品に対して優れた品質改良効果を発揮する、食品衛生上安全な品質改良剤および品質改良方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 グリアジンの加水分解物を有効成分として含有してなる食品の品質改良剤をでんぷん質食品や蛋白質食品等に添加することによって、食感の良好な食品が得られ、また、食品製造時における生地や素材の機械耐性や伸展性が増強して、作業性および生産性が向上することから、上記課題が解決できる。
【解決手段】 グリアジンの加水分解物を有効成分として含有してなる食品の品質改良剤をでんぷん質食品や蛋白質食品等に添加することによって、食感の良好な食品が得られ、また、食品製造時における生地や素材の機械耐性や伸展性が増強して、作業性および生産性が向上することから、上記課題が解決できる。
Description
この発明は、食品の品質改良剤および品質改良方法に関する。さらに詳しくは、主にでんぷん質食品や蛋白質食品などの食感、およびこれら食品の生地や素材の性質を改良するための品質改良剤および品質改良方法に関する。
パン、スポンジケーキ、麺類等のでんぷんを主素材とするでんぷん質食品や、かまぼこ、ちくわ、ハム、ソーセージ等の魚肉、蓄肉を主原料とする蛋白質食品には、それらの食感や風味を高め、保存時の品質劣化を防止する目的で、あるいは食品製造時における生地や素材の機械耐性を向上させる目的で、種々の品質改良剤が使用されている。
このような品質改良剤として、例えば、小麦グルテンのグリアジン分画物を利用し、麺質の優れた麺を製造する方法(特開平6−105662号公報:特許文献1)や、グリアジンまたはグルテニンと油脂および/または乳化剤を含有する食品の品質改良剤(特開平10−179048号公報:特許文献2)が提案されている。さらに、小麦グルテンより分画されたグリアジンを主成分とする分画物の粉末を100〜300℃で熱処理したものを小麦粉等の粉原料に混合して麺類を製造する方法(特開平8−336366号公報:特許文献3)、および小麦グルテンより分画されたグリアジンを主成分とする分画物の粉末を100〜300℃で熱処理したものを水産または畜産練り製品に混合して製造する方法(特開平9−215号公報:特許文献4)が提案されている。しかしながら、これらの公報には、グリアジンの加水分解物が食品の品質改良効果を有することについては記載されていない。
また、本出願人は、特定の物性を有する小麦グルテンなどの穀物蛋白質の部分分解物を有効成分とするでんぷん質食品の品質改良剤(特公平7−46958公報:特許文献5)を提案した。さらに、特定の物性を有する小麦グルテンなどの穀物蛋白質の部分分解物を蛋白質食品素材に対して0.05〜10重量%含有することで食感等が改良された蛋白質食品(特公平7−2095公報:特許文献6)を提案した。しかしながら、これらの公報には、グリアジンのみの加水分解物が顕著な食品の品質改良効果を有することについては記載されていない。
一方、グリアジンの加水分解物を含有することを特徴とする毛髪化粧料が提案されている(特開平9−77644号公報:特許文献7)
この発明は、特にでんぷん質食品や蛋白質食品に対して優れた品質改良効果を発揮する、食品衛生上安全な品質改良剤および品質改良方法を提供することを課題とする。
上記目的を達成するために、この発明の発明者は鋭意研究した結果、グリアジンの加水分解物を食品に添加した場合に、食感の改良効果や、食品製造時における生地や素材の改良効果、すなわち、生地や素材の機械耐性や伸展性を増強させる効果などの顕著な品質改良効果が得られることを見出した。さらにその品質改良効果が、グリアジン自体や、グリアジン、グルテニンなどが混在した小麦グルテンの加水分解物が有する品質改良効果に比べて極めて優れていることを見出し、この発明を完成させるに到った。
かくしてこの発明によれば、グリアジンの加水分解物を有効成分として含有してなる食品の品質改良剤が提供される。
また、この発明によれば、食品中にグリアジンの加水分解物を0.001〜5重量%含有させることを特徴とする食品の品質改良方法が提供される。
この発明の食品の品質改良剤を添加することによって、食感の良好な食品が得られ、また、食品製造時における生地や素材の機械耐性や伸展性が増強して、作業性および生産性が向上することから、産業上極めて有用である。
グリアジンとは、70%エタノールに可溶性の蛋白質で、小麦蛋白質の35〜40%に相当する。グリアジンは単一な蛋白質ではなく、分子量やアミノ酸組成の類似した蛋白質の混合物である。一般に小麦粉または小麦グルテンより、70%エタノールで抽出し、これを減圧濃縮して得られたシロップを、氷冷した1%食塩水に注いで生じる沈殿を70%エタノールで精製して得られる。
この発明において、グリアジンとしては、生グルテン、活性グルテンなどの小麦グルテンより抽出されたグリアジンを主成分とする分画物であってもよい。該分画物の場合には、グリアジンが乾燥重量中、50重量%以上含まれていることが好ましく、70〜100重量%含まれていることがさらに好ましい。
グリアジンの抽出は、一般に知られている50〜70%エタノール抽出法、10〜30%イソプロピルアルコール抽出法、および酸性エタノール水溶液抽出法などのアルコール水溶液抽出法または20〜50%アセトン抽出法などの方法によることができるが、いずれの抽出法により得られるものであってもよい。
この発明において、グリアジンの加水分解物は、グリアジンまたは上記グリアジンを主成分とする分画物を、酸、アルカリ剤、および酵素から選ばれた少なくとも1種によって加水分解処理に付すことにより得られる。この加水分解物は、加水分解条件により、主として脱アミド化物、ポリペプチド、またはオリゴペプチドよりなる。
この発明におけるグリアジンの加水分解物は、ゲル濾過法での重量平均分子量Mw3,000〜100,000のものが適しており、品質改良効果の点で5,000〜60,000のものが好ましい。なお、Mwが3,000未満では実質的にアミノ酸やそのオリゴマーが主体となって効果が低下し、また100,000を越えると未分解のものの性状に近く効果が低いため適さない。なお、これらの分子量は標準物質として1,600、6,500、16,000、65,000、88,000の分子量を有するポリスチレンスルホン酸ソーダを用い、ファルマシア社製のセファデックスG−75又はG−100を担体として用いたゲル濾過法によって測定した値である。
グリアジンには、上記のごとく種々の分子量を有する蛋白質が混在するため、分解率も考慮すべきである。かかる点から、上記分子量範囲内でかつ、分解後の重量平均分子量Mwと分解前の重量平均分子量Moとの比率(Mw/Mo)が0.024〜0.88、好ましくは0.04〜0.72のものを用いるのが適している。
この発明において、グリアジンまたはグリアジンを主成分とする分画物を酸により加水分解する場合は、希酸水溶液中で加熱して行なうのが適している。通常、分解対象物の水溶液や水分散液を塩酸、硫酸等の無機酸や酢酸等の有機酸の存在下、約60〜120℃下、約10〜600分攪拌して行なうのが適している。
一方、グリアジンまたはグリアジンを主成分とする分画物をアルカリ剤により加水分解する場合は、希アルカリ水溶液中で加熱することにより行なうのが適している。通常、分解対象物の水溶液又は水分散液を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ剤の存在下、約60〜180℃下、約10〜600分攪拌して行なうのが適している。
さらに、グリアジンまたはグリアジンを主成分とする分画物を酵素により加水分解する場合は、プロテアーゼ活性を有する酵素の希水溶液中で行なうのが適しており、通常、分解対象物の水溶液や水分散液にペプシン、アルカリプロテアーゼ、パパイン等の酵素を少量存在させた状態でこの酵素の至適pH条件下で約10〜60℃下、約60〜600分行なうのが適している。
この発明において、上記加水分解処理は、単独のみならず二種以上を組合せて行なってもよい。特に、塩酸と水酸化ナトリウムとを組合せて加水分解処理を行なうのが、食品の品質改良効果に優れたグリアジンの加水分解物を得る点から好ましい。
この発明のグリアジンの加水分解物は、品質改良効果の点から食品中に0.001 〜5重量%、好ましくは0.005〜1重量%含有させるとよい。食品への添加方法は、食品の原材料に直接添加してもよく、製造工程中の水に予め溶解し、これを添加してもよい。また、食品製造工程の途中で添加してもよい。
この発明の対象となる食品としては、パン、スポンジケーキ、麺類、クッキーなどのでんぷん質食品、かまぼこ、ちくわ等の魚肉を主原料とした動物性蛋白質食品、ハム、ソーセージ、ミートボール等の蓄肉を主原料とした動物性蛋白質食品などが挙げられる。
この発明においては、この発明の効果を阻害しない限り、大豆蛋白および小麦グルテンなどの植物性蛋白およびそれらの部分分解物、リン酸架橋でんぷん、でんぷん加水分解物および有機酸を付加したでんぷんなどの加工でんぷんや通常のα・βタイプのでんぷんなどを併用してもよい。
この発明を以下の試験例により具体的に説明するが、これらがこの発明の範囲を限定するものではない。
調製例(グリアジンの酸及びアルカリによる加水分解物の調製)
塩化水素換算で2gに相当する塩酸水溶液100gの入ったフラスコにグリアジン(「グリアA」アサマ化成(株)製)20g加え、100℃、60分間加熱撹拌した。その後、水酸化ナトリウムで中和し、純水を加えて総量200gにした。次にその100gをフラスコに取り、水酸化ナトリウムを2g加え、100℃、60分加熱撹拌した。これを塩酸にて中和し、噴霧乾燥して、グリアジン加水分解物を得た。平均分子量は7,000であった。平均分子量は標準物質としてポリスチレンスルホン酸ナトリウムを用いたGPC法によって測定した値である。
塩化水素換算で2gに相当する塩酸水溶液100gの入ったフラスコにグリアジン(「グリアA」アサマ化成(株)製)20g加え、100℃、60分間加熱撹拌した。その後、水酸化ナトリウムで中和し、純水を加えて総量200gにした。次にその100gをフラスコに取り、水酸化ナトリウムを2g加え、100℃、60分加熱撹拌した。これを塩酸にて中和し、噴霧乾燥して、グリアジン加水分解物を得た。平均分子量は7,000であった。平均分子量は標準物質としてポリスチレンスルホン酸ナトリウムを用いたGPC法によって測定した値である。
試験例1(食パンの品質改良効果確認試験)
調製例で得られたグリアジン加水分解物あるいは各比較供試薬剤を用いて、70%中種法により食パンを作った。配合は表1に示した処方を用い、工程は表2に従って行なった。小麦粉は全量900gで、グリアジン加水分解物あるいは各比較供試薬剤は、小麦粉に対しての重量%を中種に添加した。焼成後、室温で90分間放冷した後、それぞれビニール袋に包装し、室温で2日間保存した保存した食パンについて、柔らかさ、しっとり感、口溶け、生地改良の4項目について10名のパネラーによる官能評価試験を行った。その結果を表4に示す。なお、評価基準は10点法で点数の多いものほど良好である。
調製例で得られたグリアジン加水分解物あるいは各比較供試薬剤を用いて、70%中種法により食パンを作った。配合は表1に示した処方を用い、工程は表2に従って行なった。小麦粉は全量900gで、グリアジン加水分解物あるいは各比較供試薬剤は、小麦粉に対しての重量%を中種に添加した。焼成後、室温で90分間放冷した後、それぞれビニール袋に包装し、室温で2日間保存した保存した食パンについて、柔らかさ、しっとり感、口溶け、生地改良の4項目について10名のパネラーによる官能評価試験を行った。その結果を表4に示す。なお、評価基準は10点法で点数の多いものほど良好である。
イーストフード:「Cオリエンタルフード」(オリエンタル酵母工業(株)製)
脱脂粉乳:明治乳業(株)製
ショートニング:「日清ドーナツオイル35」(日清オイリオ(株)製)
比較供試薬剤
グルテン分解物:「グルパール30」((株)片山化学工業研究所製)
グリアジン:「グリアA」(アサマ化成(株)製)
グルテン:「AグルG」(グリコ栄養食品(株)製)
モノグリセリン脂肪酸エステル:「MM−100」(理研ビタミン(株)製)
脱脂粉乳:明治乳業(株)製
ショートニング:「日清ドーナツオイル35」(日清オイリオ(株)製)
比較供試薬剤
グルテン分解物:「グルパール30」((株)片山化学工業研究所製)
グリアジン:「グリアA」(アサマ化成(株)製)
グルテン:「AグルG」(グリコ栄養食品(株)製)
モノグリセリン脂肪酸エステル:「MM−100」(理研ビタミン(株)製)
試験例2(中華麺の官能試験)
調製例で得られたグリアジン加水分解物あるいは各比較供試薬剤を用いて、表4に示す処方、表5に示す条件により中華麺を調製し、硬さ、生地改良の2項目について10名のパネラーによる官能評価試験を行った。その結果を表6に示す。なお、評価基準は10点法で点数の多いものほど良好である。
調製例で得られたグリアジン加水分解物あるいは各比較供試薬剤を用いて、表4に示す処方、表5に示す条件により中華麺を調製し、硬さ、生地改良の2項目について10名のパネラーによる官能評価試験を行った。その結果を表6に示す。なお、評価基準は10点法で点数の多いものほど良好である。
小麦粉:麺用小麦粉
かん粉:炭酸ナトリウムと炭酸カリウムの1:1混合物
比較供試薬剤
グルテン分解物:「グルパール30」((株)片山化学工業研究所製)
グリアジン:「グリアA」(アサマ化成(株)製)
かん粉:炭酸ナトリウムと炭酸カリウムの1:1混合物
比較供試薬剤
グルテン分解物:「グルパール30」((株)片山化学工業研究所製)
グリアジン:「グリアA」(アサマ化成(株)製)
Claims (2)
- グリアジンの加水分解物を有効成分として含有してなる食品の品質改良剤。
- 食品中にグリアジンの加水分解物を0.001〜5重量%含有させることを特徴とする食品の品質改良方法。
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JP2005010474A JP2006197812A (ja) | 2005-01-18 | 2005-01-18 | 食品の品質改良剤および品質改良方法 |
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JP2013051955A (ja) * | 2011-08-05 | 2013-03-21 | Okuno Chemical Industries Co Ltd | シュー皮改質剤 |
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2005
- 2005-01-18 JP JP2005010474A patent/JP2006197812A/ja active Pending
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