JP7326889B2 - 練り製品用改質剤および練り製品の製造方法 - Google Patents
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Description
食肉練り製品の品質を改善、向上させる技術も多く提案されており、たとえば、魚肉や豚肉、牛肉、羊肉等のくさみを改善するために、グルタチオンを添加して加工すること(特許文献1)、加熱工程や保存時に発生する歩留まりの低下、食感の硬化および食味の劣化を抑制する食肉用改質剤として、焼き塩に対し、グルタチオン、糖アルコールおよび澱粉誘導体を特定の重量比で含有する食肉用改質剤(特許文献2)、トランスグルタミナーゼおよび酸化還元酵素を添加して、喉ごしや歯ごたえ等の物性、食感に優れ、かつ好ましい色調および風味を呈するタンパク質含有食品を製造する方法(特許文献3)、かまぼこ等の水産練り製品、エビ加工食品等の水産加工品の物性を改善するために、グルコースオキシダーゼおよび金属含有酵母を添加して製造する方法(特許文献4)等が提案されている。
しかし、穀物練り製品の製造においても、その原材料を混練した状態で一時的に保存した場合に、穀物練り製品の物性が経時的に変化する現象が観察され、問題となっている。
同様に、穀物練り製品の製造時においても、製造ラインの停止その他の理由により、穀物練り製品の原材料を混練した状態で一定時間保存する必要が生じた際に、穀物練り製品の物性の経時的な変化を抑制し、食感や品質の低下を抑制することが望まれている。
また、本発明は、穀物練り製品の製造時に、製造ラインの停止その他の理由により、穀物練り製品の原材料を混練した状態で一定時間保存する必要が生じた際にも、穀物練り製品の物性の経時的な変化を抑制することができ、穀物練り製品の食感および品質を良好に維持することのできる穀物練り製品用改質剤を提供することを目的とした。
さらに、本発明者らは、穀物練り製品用改質剤においても、グルコースオキシダーゼとグルタチオンとを含有させることにより、穀物練り製品の原材料を混練した状態で一定時間保存した際の物性の経時的な変化が抑制され、穀物練り製品の食感および品質が良好に維持されることを見出し、本発明を完成した。
[1]食肉練り製品および穀物練り製品から選ばれる1種の練り製品用改質剤であって、グルコースオキシダーゼとグルタチオンとを含有する練り製品用改質剤。
[2]グルコースオキシダーゼとグルタチオンとを含有する、食肉練り製品用改質剤。
[3]グルタチオンとして、グルタチオンを含有する酵母エキスを含有する、[2]に記載の改質剤。
[4]グルコースオキシダーゼ活性1Uあたりのグルタチオンの含有量の比([グルタチオンの含有量(g)]/[グルコースオキシダーゼ活性(U)])が、0.000001~10である、[2]または[3]に記載の改質剤。
[5]さらにトランスグルタミナーゼを含有する、[2]~[4]のいずれかに記載の改質剤。
[6]魚肉練り製品用改質剤である、[2]~[5]のいずれかに記載の改質剤。
[7]畜肉練り製品用改質剤である、[2]~[5]のいずれかに記載の改質剤。
[8]グルコースオキシダーゼとグルタチオンとを含有する、穀物練り製品用改質剤。
[9]グルタチオンとして、グルタチオンを含有する酵母エキスを含有する、[8]に記載の改質剤。
[10]グルコースオキシダーゼ活性1Uあたりのグルタチオンの含有量の比([グルタチオンの含有量(g)]/[グルコースオキシダーゼ活性(U)])が、0.000001~10である、[8]または[9]に記載の改質剤。
[11]さらにトランスグルタミナーゼを含有する、[8]~[10]のいずれかに記載の改質剤。
[12]食肉練り製品および穀物練り製品から選ばれる1種の練り製品の製造方法であって、グルコースオキシダーゼとグルタチオンとを添加することを含む、練り製品の製造方法。
[13]グルコースオキシダーゼとグルタチオンとを添加することを含む、食肉練り製品の製造方法。
[14]グルタチオンとして、グルタチオンを含有する酵母エキスを添加することを含む、[13]に記載の製造方法。
[15]グルコースオキシダーゼの添加量が食肉1gあたり、0.001U~100Uである、[13]または[14]に記載の製造方法。
[16]グルタチオンの添加量が食肉1重量部あたり、0.00001重量部~0.1重量部である、[13]~[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17]さらにトランスグルタミナーゼを添加することを含む、[13]~[16]のいずれかに記載の製造方法。
[18]トランスグルタミナーゼの添加量が食肉1gあたり、0.000001U~10Uである、[17]に記載の製造方法。
[19]魚肉練り製品の製造方法である、[13]~[18]のいずれかに記載の製造方法。
[20]畜肉練り製品の製造方法である、[13]~[18]のいずれかに記載の製造方法。
[21]グルコースオキシダーゼとグルタチオンとを添加することを含む、穀物練り製品の製造方法。
[22]グルタチオンとして、グルタチオンを含有する酵母エキスを添加することを含む、[21]に記載の製造方法。
[23]グルコースオキシダーゼの添加量が穀粉1gあたり、0.001U~100Uである、[21]または[22]に記載の製造方法。
[24]グルタチオンの添加量が穀粉1重量部あたり、0.00001重量部~0.1重量部である、[21]~[23]のいずれかに記載の製造方法。
[25]さらにトランスグルタミナーゼを添加することを含む、[21]~[24]のいずれかに記載の製造方法。
[26]トランスグルタミナーゼの添加量が穀粉1gあたり、0.000001U~10Uである、[25]に記載の製造方法。
また、本発明の穀物練り製品用改質剤により、穀物練り製品の製造時に、製造ラインの停止その他の理由により、穀物練り製品の原材料を混練した状態で一定時間保存する必要が生じた際にも、穀物練り製品の物性の経時的な変化を抑制することができ、穀物練り製品の食感および品質を良好に維持することができる。
本発明の食肉練り製品用改質剤は、グルコースオキシダーゼとグルタチオンとを含有する。
ここで、「食肉練り製品」とは、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、馬肉等の畜肉を挽肉とし、塩、香辛料等を加えて混練した後、成形し、焼く、煮る、蒸す、揚げる、燻す等の加熱処理を行って得られる畜肉練り製品、および、スケソウタラ、タイ、シログチ等の白身の魚や、サメ、ナガヅカ、イカ、エビ等のすり身に塩、調味料等を加えて混練し、成形して、焼く、煮る、蒸す、揚げる、燻す等の加熱処理を行って得られる魚肉練り製品をいう。
また、上記畜肉練り製品や魚肉練り製品の調製において、原材料を混練し成形した後、加熱処理を行わずに冷凍保存し、加熱処理を行って食される練り製品も含まれる。
畜肉練り製品としては、ソーセージ、ハム、ハンバーグ、メンチカツ、ミートボール、ミートローフ、つくね等が挙げられ、魚肉練り製品としては、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、さつま揚げ、ハンペン、つみれ、エビ団子等が挙げられる。
本発明の食肉練り製品用改質剤は、好ましくは魚肉練り製品用改質剤または畜肉練り製品用改質剤として提供される。
本発明の穀物練り製品用改質剤は、グルコースオキシダーゼとグルタチオンとを含有する。
ここで、「穀物練り製品」とは、穀物を挽いて調製した穀粉に塩等の調味料、香辛料等、水を加えて混練して生地を調製し、該生地を細切、成形等して得られ、焼く、煮る、蒸す、揚げる等の加熱処理を行って食される練り製品、あるいは、調製された前記生地を細切、成形等した後に、さらに前記加熱処理を行って得られる練り製品をいう。
穀粉としては、小麦、ライ麦、大麦、麦芽、トウモロコシ、エンバク、米等のイネ科穀物;そば等の擬穀類;片栗、くず、タピオカ等のイモ類および根菜類;大豆、緑豆等の豆類等の穀物を挽いて得られる穀粉が挙げられる。
穀物練り製品としては、うどん、ひやむぎ、素麺、中華麺、そば、パスタ、ビーフン、フォー等の麺類、パン、ケーキ、マントウ等が挙げられる。
本発明の穀物練り製品用改質剤は、穀粉として、小麦粉を用いた練り製品用の改質剤として好ましく用いられ、また、麺類用の改質剤として好ましく用いられる。
グルコースオキシダーゼは、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、ペニシリウム アマガサキエンシス(Penucillium amagasakiensis)等により産生されることが知られており、またハチミツ中にも存在する。
本発明の改質剤には、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、ペニシリウム アマガサキエンシス(Penucillium amagasakiensis)等から抽出し、精製等して用いることもできるが、天野エンザイム株式会社、新日本化学工業株式会社等から販売されている市販の製品を用いることもできる。
なお、グルコースオキシダーゼ活性は、たとえば、酸素存在下でグルコースを基質としてグルコースオキシダーゼを反応させ、生成される過酸化水素を、4-アミノアンチピリンおよびフェノール存在下でパーオキシダーゼを作用させて生じるキノン色素の呈色を505nmにて測定することにより、求めることができる。
グルコースオキシダーゼ活性については、37℃で1分間に1μmolのグルコースを酸化するのに要する酵素量を1ユニット(U)と定義される。
本発明において、グルタチオンは、動植物や酵母等から抽出し精製して用いてもよく、自体公知の方法に従い化学的または酵素反応により合成して用いてもよいが、和光純薬工業株式会社等から提供されている市販の製品を用いることもできる。
また、本発明においては、グルタチオンとして、「スーパー酵母エキス」(味の素株式会社)等、グルタチオンを1~10重量%程度含有する酵母エキスを用いることもできる。
トランスグルタミナーゼは、タンパク質中のグルタミン残基のアミノ基と第1級アミンを縮合させ、アミン上の置換基をグルタミン残基に転移させて、アンモニアが生成する反応を触媒する転移酵素(タンパク質-グルタミンγ-グルタミルトランスフェラーゼ)であり、通常は第1級アミンとしてタンパク質中のリジン残基のアミノ基が用いられ、架橋酵素として作用する。
微生物由来のカルシウム非依存性トランスグルタミナーゼとしては、ストレプトマイセス属に属する放線菌により産生されるトランスグルタミナーゼが挙げられ、特許第2572716号公報に記載された方法等に従って得ることができるが、味の素株式会社等から提供されている「アクティバTG-K」、「アクティバTG-S」等、市販の製品を用いることもできる。
本発明においては、トランスグルタミナーゼとしては、0.01U/g~10000U/gの活性を有するものを用いることが好ましく、0.1U/g~1000U/gの活性を有するものを用いることがより好ましい。
なお、トランスグルタミナーゼの酵素活性については、たとえば、ヒドロキサメート法により測定し、算出することができる。すなわち、ベンジルオキシカルボニル-L-グルタミニルグリシンとヒドロキシルアミンを基質として反応を行わせ、トリクロロ酢酸存在下で、前記反応で生成したヒドロキサム酸の鉄錯体を形成させた後、525nmの吸光度を測定して、ヒドロキサム酸の生成量を検量線より求めることにより、酵素活性を算出することができる。本明細書では、37℃、pH=6.0で1分間に1μmolのヒドロキサム酸を生成する酵素量を、1Uと定義した(特開昭64-027471号公報参照)。
上記添加物は、必要に応じて、1種または2種以上を含有させることができ、その含有量も、かかる添加物の通常の使用量に準じて設定することができる。
水としては、蒸留水、イオン交換水等の精製水、水道水等、食品製造用水として適合する水が用いられる。
従って、本発明の改質剤を用いることにより、食肉練り製品または穀物練り製品の物性を一定の範囲に制御することができ、これら練り製品の食感および品質を良好に維持することができる。
本発明の食肉練り製品の製造方法は、食肉にグルコースオキシダーゼとグルタチオンとを添加することを含む。
本発明の食肉練り製品の製造方法において、グルコースオキシダーゼおよびグルタチオンは、食肉練り製品用改質剤として、上記した固形状、液状または半固形状の形態で食肉に添加され得る。
本発明の食肉練り製品の製造方法において、グルコースオキシダーゼは、食肉1gあたり0.001U~100Uとなるように添加することが好ましく、0.01U~10Uとなるように添加することがより好ましい。
また、グルタチオンは、食肉1重量部に対し、0.00001重量部~0.1重量部添加することが好ましく、0.0001重量部~0.05重量部、あるいは0.00005重量部~0.05重量部添加することがより好ましい。
なお、グルコースオキシダーゼとグルタチオンとは、グルコースオキシダーゼ活性1Uに対するグルタチオンの添加量の比([グルタチオンの添加量(g)]/[グルコースオキシダーゼ活性(U)])が、0.000001~10となるように添加することが好ましく、0.00001~1となるように添加することがより好ましい。
本発明の製造方法において、トランスグルタミナーゼは、食肉1gあたり0.000001U~10Uとなるように添加することが好ましく、0.00001U~1Uとなるように添加することがより好ましい。
食肉とグルコースオキシダーゼおよびグルタチオン、またはさらにトランスグルタミナーゼ、その他の添加物との混合は、食肉練り製品の種類、使用する製造機器等に応じて適宜行うことができ、通常のミキサーにて、通常0℃~40℃、好ましくは0℃~15℃にて、通常1分間~60分間、好ましくは3分間~30分間行われる。
また、本発明の食肉練り製品の製造方法においては、食肉練り製品の製造において通常採用される工程、たとえば挽肉またはすり身とした食肉を混練する工程(荒摺り)、食肉に塩を加えて混練する工程(塩摺り)、成形する工程、加熱する工程、冷却する工程、冷凍する工程等が含まれ得る。
かかる加熱する工程は、食肉練り製品の種類、加熱手段、使用する調理機器等に応じて適宜行うことができ、通常70℃~300℃、好ましくは70℃~100℃にて、あるいは、通常60℃~300℃、好ましくは60℃~100℃にて、通常1分間~120分間、好ましくは5分間~60分間行うことができる。
また、冷凍する手段としても、食品の製造において採用される通常の冷凍手段、たとえばフリーザー中、-20℃~-40℃程度における冷凍、急速冷凍等の冷凍手段を採用することができる。保存期間中、食肉練り製品の品質を維持するという観点からは、急速冷凍を行うことが好ましい。
従って、本発明の食肉練り製品の製造方法においては、食肉その他の食肉練り製品の原材料に、グルコースオキシダーゼおよびグルタチオン、またはさらにトランスグルタミナーゼを加え、あるいはさらにその他の添加物を混合した後、成形する前に、または成形した後に、たとえば0℃~15℃、または15℃~25℃にて30分間~3時間程度保存しても、食肉練り製品の物性の経時的な変化が抑制され、食肉練り製品の食感や品質に与える影響を低減することができる。
本発明の穀物練り製品の製造方法は、穀粉にグルコースオキシダーゼとグルタチオンとを添加することを含む。
本発明の穀物練り製品の製造方法において、グルコースオキシダーゼおよびグルタチオンは、穀物練り製品用改質剤として、上記した固形状、液状または半固形状の形態で穀粉に添加され得る。
本発明の穀物練り製品の製造方法において、グルコースオキシダーゼは、穀粉1gあたり0.001U~100Uとなるように添加することが好ましく、0.01U~10Uとなるように添加することがより好ましい。
また、グルタチオンは、穀粉1重量部に対し、0.00001重量部~0.1重量部添加することが好ましく、0.00005重量部~0.05重量部添加することがより好ましい。
なお、グルコースオキシダーゼとグルタチオンとは、グルコースオキシダーゼ活性1Uに対するグルタチオンの添加量の比([グルタチオンの添加量(g)]/[グルコースオキシダーゼ活性(U)])が、0.000001~10となるように添加することが好ましく、0.00001~1となるように添加することがより好ましい。
本発明の穀物練り製品の製造方法において、トランスグルタミナーゼは、穀粉1gあたり0.000001U~10Uとなるように添加することが好ましく、0.00001U~1Uとなるように添加することがより好ましい。
食用油脂、調味料、つなぎ、その他の一般的な食品添加物については、本発明の食肉練り製品の製造方法において上記した通りである。
穀粉とグルコースオキシダーゼおよびグルタチオン、またはさらにトランスグルタミナーゼ、その他の添加物との混合は、穀物練り製品の種類、使用する製造機器等に応じて適宜行うことができ、通常のミキサーにて、通常0℃~50℃、好ましくは20℃~30℃にて、通常1分間~60分間、好ましくは2分間~30分間、より好ましくは5分間~30分間行われる。
また、本発明の穀物練り製品の製造方法においては、穀物練り製品の製造において通常採用される工程、たとえば穀粉とその他の原材料を混練する工程、穀粉に水を加えて混練する工程、生地を細切または成形する工程、加熱する工程、冷却する工程、冷凍する工程等が含まれ得る。
加熱、冷却、冷凍等の工程については、食肉練り製品の製造方法について上記した通りである。
従って、本発明の穀物練り製品の製造方法においては、穀粉その他の原材料に、グルコースオキシダーゼおよびグルタチオン、またはさらにトランスグルタミナーゼを加え、あるいはさらにその他の添加物を混合した後、成形する前に、または成形した後に、たとえば0℃~30℃にて30分間~3時間程度保存しても、穀物練り製品の物性の経時的な変化が抑制され、穀物練り製品の食感や品質に与える影響を低減することができる。
表1に示す原材料を表1に示す配合量にて用いて、次の通り、魚肉練り製品(全量2100g)を製造した。なお、対照として、いずれの酵素製剤も、またグルタチオンを含有する酵母エキスも添加せずに同様に魚肉練り製品を製造した。
(1)表1中のスケソウタラのすり身をミキサーに入れ、4℃にて2分間混合した(荒摺り)。
(2)少量の水を加え、食塩を添加して6℃にて3分間混合した(塩摺り)。
(3)植物油、馬鈴薯澱粉、調味料、各酵素製剤および酵母エキスを添加して、8℃にて3分間混合した(本摺り)。
(4)ケーシングに充填し、湯煎にて40℃で20分間加温し、次いで85℃で20分間加熱した。
(5)氷水で急冷した後、急速冷凍した。
上記実施例および比較例ならびに対照の製造において、(4)の工程中、ケーシング充填後に5℃~15℃にて一定の時間(0分間、30分間、60分間および180分間)静置して保存した後、次の加温および加熱処理を実施した。(4)の工程中に静置した時間を「置き身時間」と称し、その物性に及ぼす影響を次の通り評価した。
解凍後の魚肉練り製品のしなやかさ、硬さおよび嗜好性について、5名の専門パネラーにより下記評価基準に従って評価させ、5名の評点の合計点を求め、図1~3に示した。
<評価基準>
(i)しなやかさについては、魚肉練り製品を噛み切るまでの距離感により、下記のように評価させた。
非常にしなやかである:5点
しなやかである:4点
ややしなやかである:3点
ややしなやかでない:2点
しなやかでない:1点
(ii)硬さについては、魚肉練り製品を噛み切るための力により、下記のように評価させた。
非常に硬い:5点
硬い:4点
やや硬い:3点
やや柔らかい:2点
柔らかい:1点
(iii)嗜好性については、魚肉練り製品(蒲鉾)として好ましいか否かにより、下記のように評価させた。
好ましい:5点
やや好ましい:4点
どちらでもない:3点
やや好ましくない:2点
好ましくない:1点
テクスチャーアナライザー島津小型卓上試験機EZTest(EZ-SX)(株式会社島津製作所)を用いて、下記測定条件により、魚肉練り製品の破断強度および破断距離を測定した(n=10)。破断に要するエネルギー量は、前記測定により得られたグラフ上の面積から、すなわち破断強度と破断距離との積に基いて求めた。測定結果は図4~6に示した。
<測定条件>
(i)プランジャー:直径=3mmの球状プランジャー
(ii)クリアランス:ダウン1mm/sec、アップ5mm/sec
(iii)測定温度:品温=10℃
トランスグルタミナーゼ、グルコースオキシダーゼおよびグルタチオンを含有する酵母エキスを添加して製造した魚肉練り製品(実施例1)では、しなやかで適度な硬さを有すると評価され、嗜好性についても高い評価が得られた。また、置き身時間が長くなっても、前記評価結果には、ほとんど変化は見られなかった。
一方、トランスグルタミナーゼのみを添加して製造した魚肉練り製品(比較例1)では、置き身時間の増加とともに硬さの顕著な増加が認められた。また、トランスグルタミナーゼとグルコースオキシダーゼとを添加して製造した魚肉練り製品(比較例2)においても、置き身時間の増加に伴い、硬さが増加する傾向が認められた。
さらに、比較例1および2の魚肉練り製品においては、置き身時間の増加に伴い、嗜好性の評価が向上する傾向が見られた。これらの魚肉練り製品については、嗜好性についてある程度の評価を得るには、一定の置き身時間を設ける必要があることが示唆された。
トランスグルタミナーゼ、グルコースオキシダーゼおよびグルタチオンを含有する酵母エキスを添加して製造した魚肉練り製品(実施例1)は、適度な破断強度と高値の破断距離を示し、しなやかな物性が得られることが認められた。また、それらの物性値は、置き身時間によりほぼ変動しないことが認められた。
一方、トランスグルタミナーゼのみを添加して製造した魚肉練り製品(比較例1)、およびトランスグルタミナーゼとグルコースオキシダーゼとを添加して製造した魚肉練り製品(比較例2)では、置き身時間により破断強度および破断距離が変動することが認められ、置き身時間が長くなるにつれ、前記各物性値が高くなる傾向が認められた。特に、比較例1の魚肉練り製品では、置き身時間が180分の場合の各物性値は、適度であると評価される範囲を逸脱するものであった。
表2に示す原材料を表2に示す配合量にて用いて、次の通り、ソーセージ(全量2500g)を製造した。なお、対照として、いずれの酵素製剤も、またグルタチオンを含有する酵母エキスも添加せずに同様にソーセージを製造した。
(1)豚肉の余分なスジや脂を取り除き、15℃にて2cm角に切り、挽き肉機にて、塊径5.2mmの挽き肉とした。
(2)表2中Bの原材料を添加し、多機能スタンドミキサー(「キッチンエイド」(株式会社エフ・エム・アイ)で5分間混合した(3℃~6℃、撹拌速度=60rpm~70rpm)。
(3)表2中CおよびDの原材料を添加し、多機能スタンドミキサー(「キッチンエイド」(株式会社エフ・エム・アイ)で5分間混合した(7℃~10℃、撹拌速度=60rpm~70rpm)。
(4)混合した原材料を真空袋に入れて真空とし、コラーゲンケーシングに充填して、氷水中で保存した。
(5)60℃で30分間乾燥した後60℃で10分間燻煙し、次いで75℃で30分間蒸し煮を行った。
(6)3分間散水し、次いで10分間放冷した後、冷蔵庫で一晩静置して冷却した。
上記した対照、比較例3、4および実施例2のソーセージの製造において、(4)の工程と(5)の工程の間に、25℃で30分間、60分間、120分間および180分間の置き身時間を設けた場合と、かかる置き身時間を設けない(置き身時間=0分)場合の物性の相違を、破断強度の測定により評価した。
破断強度の測定は、各ソーセージを3cm幅に切って試料とし、湯煎にて温めた後に、テクスチャーアナライザー島津小型卓上試験機EZTest(EZ-SX)(株式会社島津製作所)を用いて、下記測定条件により、測定した(n=10)。測定結果は図7に示した。
<測定条件>
(i)プランジャー:直径=5mmの球状プランジャー
(ii)試験速度:1.0mm/sec
(iii)測定温度:品温=50℃~60℃
トランスグルタミナーゼ、グルコースオキシダーゼおよびグルタチオンを含有する酵母エキスを添加して製造したソーセージ(実施例2)は、適度な破断強度を示し、置き身に伴う破断強度の変動は小さいものであった。
一方、トランスグルタミナーゼのみを添加して製造したソーセージ(比較例3)、およびトランスグルタミナーゼとグルコースオキシダーゼとを添加して製造したソーセージ(比較例4)では、置き身に伴う破断強度の若干の変動が認められた。
表3に示す原材料を表3に示す配合量にて用いて、次の通り、うどん麺(全量451.5g~453.3g)を製造した。なお、対照として、いずれの酵素製剤も、またグルタチオンを含有する酵母エキスも添加せずに同様にうどん麺を製造した(全量450g)。
(1)表3中の小麦粉を混練機(フードプロセッサーMK-K81(パナソニック株式会社))の専用のボウルに入れ、酵素製剤と、あらかじめ食塩を水に溶解して調製した食塩水を加えて、20℃にて、ボウルの縁に付着した生地をゴムベラでこそぎ落としながら、混合した(低速モードにて2分間)。
(2)生地の小片を手で集め、塊状にまとめて、約80gずつ等分し、パスタマシン(インペリアSP-150(インペリア社))にて圧延した(ダイヤル6(2.0mm)、5回)。
(3)生地に打ち粉をし、綿棒で圧延し(4.0mm)、4mm幅に麺切りして、うどん麺を得た。
上記した対照、比較例5、6および実施例3のうどん麺の製造において、(2)の工程と(3)の工程の間に、24℃で30分間、60分間、120分間および180分間の置き身時間を設けた場合と、かかる置き身時間を設けない(置き身時間=0分)場合の物性の相違を、硬さの測定により評価した。なお、前記置き身時間の間、調製した生地は、チャック付きポリエチレン製袋(ユニパック(株式会社生産日本社))に入れて、24℃の恒温室内に静置した。
硬さの測定は、各うどん麺を沸騰した湯で20分間茹でた後、冷水で洗浄して試料とし、テクスチャーアナライザー島津小型卓上試験機EZTest(EZ-SX)(株式会社島津製作所)を用いて、下記測定条件により測定した(n=10)。測定結果は図8に示した。
<測定条件>
(i)プランジャー:楔形冶具
(ii)試験速度:1.0mm/sec
(iii)測定温度:25℃
グルコースオキシダーゼを含有するトランスグルタミナーセ製剤に加えて、グルタチオンを含有する酵母エキスを添加して製造した実施例3のうどん麺は、置き身時間にかかわらずほぼ一定で適切な硬さを示した。
一方、トランスグルタミナーゼを添加して製造した比較例5のうどん麺では、置き身時間により硬さの変動が見られた。
また、グルコースオキシダーゼとトランスグルタミナーゼを添加して製造した比較例6のうどん麺では、置き身時間の増加に伴い、硬さが増す傾向が認められた。
また、本発明により、穀物練り製品の製造時に、製造ラインの停止その他の理由により、穀物練り製品の原材料を混練した状態で一定時間保存する必要が生じた際にも、穀物練り製品の物性の経時的な変化を抑制することができ、穀物練り製品の食感および品質を良好に維持することができる穀物練り製品用改質剤、および穀物練り製品の製造方法を提供することができる。
Claims (18)
- グルコースオキシダーゼ、グルタチオンおよびトランスグルタミナーゼを含有する、食肉練り製品の物性の経時的な変化を抑制するための食肉練り製品用改質剤であって、グルコースオキシダーゼ活性1Uあたりのグルタチオンの含有量の比([グルタチオンの含有量(g)]/[グルコースオキシダーゼ活性(U)])が0.00001~1で、グルコースオキシダーゼ活性1Uに対するトランスグルタミナーゼの酵素活性比([トランスグルタミナーゼの酵素活性(U)]/[グルコースオキシダーゼ活性(U)])が0.00001~100であり、前記物性の経時的な変化が、食肉練り製品の原材料を混練した状態で保存することによるものである、改質剤。
- グルタチオンとして、グルタチオンを含有する酵母エキスを含有する、請求項1に記載の改質剤。
- 魚肉練り製品用改質剤である、請求項1または2に記載の改質剤。
- 畜肉練り製品用改質剤である、請求項1または2に記載の改質剤。
- グルコースオキシダーゼ、グルタチオンおよびトランスグルタミナーゼを含有する、穀物練り製品の物性の経時的な変化を抑制するための穀物練り製品用改質剤であって、グルコースオキシダーゼ活性1Uあたりのグルタチオンの含有量の比([グルタチオンの含有量(g)]/[グルコースオキシダーゼ活性(U)])が0.00001~1で、グルコースオキシダーゼ活性1Uに対するトランスグルタミナーゼの酵素活性比([トランスグルタミナーゼの酵素活性(U)]/[グルコースオキシダーゼ活性(U)])が0.00001~100であり、前記物性の経時的な変化が、穀物練り製品の原材料を混練した状態で保存することによるものである、改質剤。
- グルタチオンとして、グルタチオンを含有する酵母エキスを含有する、請求項5に記載の改質剤。
- グルコースオキシダーゼを食肉1gあたり0.01U~10U、グルタチオンを食肉1重量部あたり0.00005重量部~0.05重量部、およびトランスグルタミナーゼを食肉1gあたり0.00001U~1Uとなるように添加することを含む、物性の経時的な変化の抑制された食肉練り製品の製造方法であって、前記物性の経時的な変化が、食肉練り製品の原材料を混練した状態で保存することによるものである、製造方法。
- グルタチオンとして、グルタチオンを含有する酵母エキスを添加することを含む、請求項7に記載の製造方法。
- 魚肉練り製品の製造方法である、請求項7または8に記載の製造方法。
- 畜肉練り製品の製造方法である、請求項7または8に記載の製造方法。
- グルコースオキシダーゼを穀粉1gあたり0.01U~10U、グルタチオンを穀粉1重量部あたり0.00005重量部~0.05重量部、およびトランスグルタミナーゼを穀粉1gあたり0.00001U~1Uとなるように添加することを含む、物性の経時的な変化の抑制された穀物練り製品の製造方法であって、前記物性の経時的な変化が、穀物練り製品の原材料を混練した状態で保存することによるものである、製造方法。
- グルタチオンとして、グルタチオンを含有する酵母エキスを添加することを含む、請求項11に記載の製造方法。
- グルコースオキシダーゼを食肉1gあたり0.01U~10U、グルタチオンを食肉1重量部あたり0.00005重量部~0.05重量部、およびトランスグルタミナーゼを食肉1gあたり0.00001U~1Uとなるように添加することを含む、食肉練り製品の物性の経時的な変化の抑制方法であって、前記物性の経時的な変化が、食肉練り製品の原材料を混練した状態で保存することによるものである、抑制方法。
- グルタチオンとして、グルタチオンを含有する酵母エキスを添加することを含む、請求項13に記載の抑制方法。
- 魚肉練り製品の物性の経時的な変化の抑制方法である、請求項13または14に記載の抑制方法。
- 畜肉練り製品の物性の経時的な変化の抑制方法である、請求項13または14に記載の抑制方法。
- グルコースオキシダーゼを穀粉1gあたり0.01U~10U、グルタチオンを穀粉1重量部あたり0.00005重量部~0.05重量部、およびトランスグルタミナーゼを穀粉1gあたり0.00001U~1Uとなるように添加することを含む、穀物練り製品の物性の経時的な変化の抑制方法であって、前記物性の経時的な変化が、穀物練り製品の原材料を混練した状態で保存することによるものである、抑制方法。
- グルタチオンとして、グルタチオンを含有する酵母エキスを添加することを含む、請求項17に記載の抑制方法。
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